(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
無線通信方式の一つであるスペクトラム拡散通信(Spread Spectrum:SS)方式において、拡散符号を用いてデータをより広い帯域に拡散して送信し、受信信号を拡散と同一の符号を用いて逆拡散することで元のデータを再生する方式を直接拡散(DS)方式と呼ぶ。DS/SS通信方式は、ノイズ、干渉、妨害、混信に強く、秘話性、秘匿性が高いという特徴がある。
【0003】
図13は、背景技術のDS/SS通信方式を用いて通信を行う通信装置の構成を示す模式図である。
図13はX個のデータを多重化して送受信する場合の構成例を示している。
図13に示すように、背景技術の通信装置は、送信機として、乗算器11、変調回路12、発振器13及び空中線14を備え、受信機として、空中線15、発振器16、復調回路17及び乗算器18を備えた構成である。
乗算器11は、送受信対象であるX個のデータ(入力データ)をそれぞれ異なる拡散符号を用いて符号化することで拡散する。拡散されたX個のデータは不図示の加算器により加算されて多重化される。発振器13は、データの送受信に用いる搬送波(キャリア)の周波数信号を生成する。変調回路12は、発振器13で生成された周波数信号を用いて拡散後のデータを変調する。変調された信号は無線信号として空中線14から送信される。
復調回路17は、空中線15で受信した無線信号を発振器16で生成された周波数信号を用いて復調する。乗算器18は、復調回路17で復調されたデータを送信機と同じ拡散符号を用いて逆拡散することで元のデータを再生する。
【0004】
上述したDS/SS通信方式において、拡散に用いる拡散符号にはPN(Pseudo Noise:疑似雑音)系列が用いられる。PN系列は周期性とランダム性とを併せ持つ性質を備える。また、PN系列は自己相関によるピークが1周期に1度だけある自己相関特性を有する。PN系列では、1周期において「1」と「0」がランダムに発生し、それらの発生確率がほぼ同じである。このPN系列の代表的な例として、M系列(最大長シフトレジスタ系列:Maximum-length shift-register sequence)が知られている。
【0005】
しかしながら、M系列は、生成可能な異なる系列の数に限りがあるため、多くのユーザ収容数を必要とする場合(多くの多重数を必要とする場合)に、拡散符号として用いることができる系列数が不足する。そのため、背景技術のDS/SS通信方式では、より多くの拡散符号を確保できる、2つのM系列を組み合わせて生成されるGold系列が利用されてきた。但し、Gold系列も2つのM系列の組合せで生成されるため、M系列と同様に生成可能な系列数には限りがある。そのため、将来予想されるユーザ収容数のさらなる増加に対応するには、十分な数とは言い難い。したがって、DS/SS通信方式では、限られた数の拡散符号を有効に利用するための技術が望まれている。
【0006】
なお、ユーザ収容数の増大に対応する方法として、1つの拡散符号をビットシフトさせて複数の拡散符号を生成する方法が考えられる。しかしながら、そのようにして得られた拡散符号を用いるDS/SS通信方式では、通常、多重数が増えるほど、各チャンネルで異なる拡散符号を用いる場合よりもチャンネル間の相関干渉が大きくなる。
1つの拡散符号をビットシフトさせて複数の拡散符号を生成する方法において、チャンネル間の相関干渉を低減するための手法は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1では、拡散符号にバイアスを印加することでチャンネル間の干渉(相関干渉)が低減できることを示すと共に、拡散符号にバイアスを印加するための具体的な回路例を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1には、拡散符号にバイアスを印加するために、送信するデータを通過または非通過させるゲート(スイッチ)をチャンネル毎に設け、拡散符号にしたがって送信するデータよりも高速に該ゲートをオン・オフさせることで、該データを拡散変調する技術が記載されている。このような構成は、直流電圧を生成して拡散符号にバイアスする手法と比べて、簡易な構成でチャンネル間の干渉(相関干渉)を低減できる。
しかしながら、特許文献1に記載された技術でも、相関干渉を無くすためにはチャンネル毎に高速に動作するゲート(スイッチ)や該ゲートを駆動するための回路等を含むある程度規模が大きな回路を備える必要がある。そのため、小型・軽量化が厳しく要求される近年の通信装置では採用できない場合が多い。
【0009】
本発明は上述したような背景技術の問題を解決するためになされたものであり、相関干渉を低減するための大規模な回路が不要であり、多重数の増大にも対応可能な通信装置及びその拡散符号生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の通信装置は、スペクトル直接拡散通信方式を用いて通信を行う通信装置であって、
同期信号を拡散及び逆拡散するための第1の拡散符号を生成する第1の符号発生回路と、
前記第1の拡散符号とは系列が異なる、送受信対象である複数のデータを拡散及び逆拡散するための第2の拡散符号及び複数の第3の拡散符号をそれぞれ生成する第2の符号発生回路と、
を有し、
前記第2の符号発生回路は、
前記第2の拡散符号を異なるシフト数でそれぞれビットシフトさせることで、前記複数の第3の拡散符号を生成するシフト制御回路を備え
、
前記シフト制御回路は、
前記第2の拡散符号または前記第3の拡散符号の自己相関値に、前記自己相関値のピーク値以外の正の最大値が存在し、
前記第2の拡散符号または前記第3の拡散符号の自己相関値に−1以外の負の値が存在しないシフト数で、前記第2の拡散符号をそれぞれビットシフトさせることで複数の前記第3の拡散符号を生成する。
【0011】
一方、本発明の拡散符号生成方法は、スペクトル直接拡散通信方式を用いて通信を行う通信装置で実行する拡散符号生成方法であって、
同期信号を拡散及び逆拡散するための第1の拡散符号を生成し、
前記第1の拡散符号とは系列が異なる、送受信対象である複数のデータを拡散及び逆拡散するための第2の拡散符号及び複数の第3の拡散符号をそれぞれ生成し、
前記第2の拡散符号を異なるシフト数でそれぞれビットシフトさせることで、前記複数の第3の拡散符号を生成
し、
前記第2の拡散符号または前記第3の拡散符号の自己相関値に、前記自己相関値のピーク値以外の正の最大値が存在し、
前記第2の拡散符号または前記第3の拡散符号の自己相関値に−1以外の負の値が存在しないシフト数で、前記第2の拡散符号をそれぞれビットシフトさせることで複数の前記第3の拡散符号を生成する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、相関干渉を低減するための大規模な回路が不要であり、多重数の増大にも対応可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明について図面を用いて説明する。
DS/SS通信方式では、拡散符号の自己相関によるピークを検出することで、送信側で用いる拡散符号と受信側で用いる逆拡散用の拡散符号との時間ずれを一致させる同期処理を実施する。上述したように、1つの拡散符号からビットシフトさせて複数の拡散符号を生成する場合、ビットシフトさせた拡散符号を用いる各チャンネルでそれぞれ相関干渉が発生し、多重数が多くなるほど、その影響が大きくなる。この相関干渉によるノイズが大きくなると、同期タイミングとして用いる自己相関によるピークが該ノイズに埋もれてしまうことで同期がとれなくなってしまう。
【0015】
そこで、本発明では、2つの異なる系列のGold符号を用意し、一方を同期用の拡散符号(第1の拡散符号)として使用し、他方を多重用の拡散符号(第2の拡散符号)として使用する。このように、同期用の拡散符号と多重用の拡散符号とで異なる系列のGold符号を用いることで、相関干渉の影響により同期がとれなくなることを抑制する。また、多重用の拡散符号(第2の拡散符号)を異なるシフト数でそれぞれビットシフトさせることで、送受信対象である複数のデータの拡散及び逆拡散に用いる複数の拡散符号(第3の拡散符号)を生成する。このとき、ビットシフトさせるシフト数(シフト位置)を適切に設定することで、チャンネル間の相関干渉を低減する。
【0016】
図1は、DS/SS通信方式を用いて通信を行う本発明の通信装置の一構成例を示す模式図である。
図1はX個のデータを多重化して送受信する場合の構成例を示している。
図1に示すように、本発明の通信装置は、送信機として、乗算器21、変調回路22、発振器23及び空中線24を備え、受信機として、空中線25、発振器26、復調回路27及び乗算器28を備えた構成である。
乗算器21は、同期用の信号である同期信号を同期用のGold符号を用いて符号化することで拡散する。また、乗算器21は、送受信対象であるX個のデータをそれぞれ多重用のGold符号を用いて符号化することで拡散する。拡散された同期信号及びX個のデータは不図示の加算器により加算されて多重化される。発振器23は、同期信号やデータの送受信に用いる搬送波(キャリア)の周波数信号を生成する。変調回路22は、発振器23で生成された周波数信号を用いて拡散後のデータを変調する。変調された信号は無線信号として空中線24から送信される。
復調回路27は、空中線25で受信した無線信号を発振器26で生成された周波数信号を用いて復調する。乗算器28は、復調回路27で復調されたデータを送信機と同じ拡散符号を用いて逆拡散することで元のデータ(同期信号及びX個のデータ)を再生する。
【0017】
図2は、
図1に示した通信装置の具体的な構成例を示す回路図である。
図2は、多重数をXとし、送受信対象であるデータ1〜XがチャンネルCH1〜CHXを用いて送受信される場合の構成例を示している。
図2に示すように、送信側において、同期信号はGold符号Aを用いて乗算器31Aにより拡散される。データ1はGold符号B1を用いて乗算器31B1により拡散される。データ2は、Gold符号B1をd1ビットシフトさせたGold符号B2を用いて乗算器31B2により拡散される。データ3は、Gold符号B1をd2ビットシフトさせたGold符号B3を用いて乗算器31B3により拡散される。同様に、データ4〜Xは、Gold符号B1をそれぞれ異なるシフト数でビットシフトさせた符号を用いて乗算器31B3〜31BXにより拡散される。拡散後の同期信号及びデータ1〜Xは加算器32にて加算されて多重化される。
受信側において、復調された受信信号は、Gold符号Aを用いて乗算器39Aにより逆拡散されて同期信号が取り出される。同様に、復調された受信信号は、Gold符号B1〜BXを用いて乗算器39B1〜39BXにより逆拡散されてデータ1〜Xが取り出される。Gold符号B1に対するGold符号B2〜BXのシフト数d1〜d(X−1)の決定方法については後述する。
【0018】
次に
図2に示した拡散処理及び逆拡散処理で用いるGold符号の生成方法について説明する。
Gold符号は、プリファードペアと呼ばれる相互相関が低い2つのM系列を組み合わせることで生成される。M系列とは、ある段数のシフトレジスタによって生成される符号系列の中で最も周期が長く、符号長が最大となる系列である。M系列を生成するM系列発生回路が備えるシフトレジスタの段数をnとすると、最長の符号長NはN=2
n−1となる。
【0019】
図3は、M系列発生回路の一構成例を示す模式図である。
図3に示すように、M系列発生回路401は、n段のシフトレジスタ43と複数の排他的論理和回路(XOR)41とを備える。
シフトレジスタ43の各段(ビット)an−1,an−2,an−3,…,a1,a0には、オール「0」以外の初期値が設定される。an−1,an−2,an−3,…,a1,a0に適切な初期値を設定しないと、M系列発生回路401から出力されるデータ系列がPN系列としての性質を満たさない。
図3のh1,h2,h3,…,hn−1で表されるシフトレジスタ43の出力(帰還タップ42)はXOR41を介してシフトレジスタ43の入力へ帰還される。
図3に示すM系列発生回路401では、全ての帰還タップ42がシフトレジスタ43の入力に対する帰還経路として用いられるわけでない。M系列の生成に最適な帰還タップ42は周知の「原始多項式」に基づいて決定される。
【0020】
図4は、Gold符号発生回路の一構成例を示す模式図である。
図4に示すように、Gold符号発生回路501は、2つのM系列発生回路401、発生タイミング制御回路51及び排他的論理和52を備える。M系列発生回路401には、
図3に示したM系列発生回路401が用いられる。発生タイミング制御回路51は、2つのM系列発生回路401で生成される周期NのM系列がプリファードペアとなるように、各々のシフトレジスタ43の初期値及び使用する帰還タップ42を設定する。
図4に示す回路において、2つのM系列発生回路401で生成されたM系列をチップ毎に排他的論理和52で合成して得られる周期Nの系列がGold系列と呼ばれる。この系列を拡散符号として使用するため、Gold符号と呼ばれる。本発明では、
図4に示したGold符号発生回路501で生成されたGold符号を同期用のGold符号A(第1の拡散符号)として用いる。
【0021】
図5は、多重用のGold符号を生成する多重用Gold符号発生回路の一構成例を示す模式図である。
図5に示すように、多重用Gold符号発生回路601は、Gold符号発生回路501及びシフト制御回路61を備える。Gold符号発生回路501には、
図4に示したGold符号発生回路501が用いられる。
Gold符号発生回路501は、発生タイミング制御回路の制御により、同期用のGold符号Aとは異なる系列のGold符号B1(第2の拡散符号)を生成する。シフト制御回路61は、Gold符号発生回路501で生成されたGold符号B1をビットシフトさせて多重用の複数の拡散符号(第3の拡散符号)を生成する。例えば、多重数がXの場合、シフト制御回路61は、Gold符号発生回路501で生成されたGold符号B1から(X−1)個のGold符号B2〜BXを生成する。
【0022】
図3に示したM系列発生回路401、
図4に示したGold符号発生回路501、
図5に示した多重用Gold符号発生回路601、並びに後述する
図8に示す自己相関値の算出回路は、例えばプログラムにしたがって処理を実行するCPU(Central Processing Unit)やDSP(digital signal processor)、メモリ等を備えた情報処理装置あるいは情報処理用のLSI(Large-Scale Integration)等で実現できる。
【0023】
図6は、
図4に示したGold符号発生回路501で生成される同期用のGold符号A、並びに
図5に示した多重用Gold符号発生回路601で生成される多重用のGold符号B1〜BXの信号波形の一例を示している。
図6では、同期用のGold符号A及び多重用のGold符号B1〜BXを2値(1/−1)の系列で示している。
図6に示すように、多重用のGold符号B2〜BXは、Gold符号B1からシフト数d1〜d(X−1)だけビットシフトさせることで生成される。
【0024】
次に、
図5に示したシフト制御回路61による多重用のGold符号B2〜BXの生成方法について図面を用いて説明する。
図7は、
図5に示したシフト制御回路の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7に示すように、シフト制御回路61は、まずGold符号発生回路501で生成されたGold符号B1の自己相関値を求める(ステップS51)。
【0025】
自己相関値は、例えば
図8に示す回路で求めることができる。
図8は、自己相関値の算出回路の一構成例を示す模式図である。
図8に示すように、自己相関値を求めるには、符号長と等しいN個のXOR(排他的論理和)回路81、並びにNビットのレジスタ82及び83を用意し、Nビットのレジスタ82及び83にそれぞれ同じ拡散符号を入力する。そして、N個のXOR回路81によりレジスタ82及び83の同一ビット毎の値の排他的論理和をそれぞれ出力し、XOR回路81の各出力を加算器84で加算する。加算器84は、各XOR回路81の出力「0」を「+1」とし、「1」を「−1」として加算する。
ここで、一方のレジスタ82をシフトレジスタとし、該レジスタ82の各ビット値を1ビットずつシフトさせながら、シフト動作毎に加算器84の出力値をそれぞれ取得する。自己相関値は、レジスタ82のビットシフトをN回(1周期)繰り返して得られる加算器84の出力結果である。
【0026】
図9は、
図5に示した多重用Gold符号発生回路で生成されるGold符号の一例を示す表である。
図9は、ビットシフトしていないチャンネルCH1で用いるGold符号B1の一例を示している。また、
図9では、Gold符号発生回路501の出力「0」を「+1」で示し、「1」を「−1」で示している。Gold符号B1の符号長は63とする。
図10は、
図9に示したGold符号の自己相関値を示す表である。
図10は、
図9に示したGold符号B1において、
図8に示した回路で得られるGold符号B1の自己相関値の一例を示している。本発明では、この自己相関値に基づいて、チャンネルCH2〜CHXで用いる複数の拡散符号(第3の拡散符号)をそれぞれ生成する。チャンネルCH1で用いる拡散符号は、上述したように
図5に示したGold符号発生回路501から出力されるGold系列B1を用いればよい。
なお、本実施形態では、符号長が63のGold符号を例にして説明するが、本発明は符号長が他の値のGold符号にも適用可能である。
【0027】
Gold符号B1の自己相関値が求まると、シフト制御回路61は、自己相関値がピーク値以外の値であり、既に確定した各拡散符号の自己相関値を合算した合算値が正(プラス)で最大となるシフト数を求め(ステップS52)、さらに、その中から既に確定した拡散符号のシフト数以外で最小となるシフト数(シフト位置)を求める(ステップS53)。
【0028】
例えば、
図10に示した例では、自己相関値のピーク値が「63」であり、それ以外の値で正の最大となる自己相関値は「+15」である。また、
図10に示した例では、チャンネルCH1で用いる拡散符号しか確定していないため、自己相関値が「+15」となる最小のシフト数(シフト位置)は「4」である。したがって、シフト制御回路61は、チャンネルCH2で用いる符号の候補として、チャンネルCH1で用いる拡散符号を4ビットシフトしたものを選択する。
【0029】
次に、シフト制御回路61は、既に拡散符号が確定した全てのチャンネルのうち、いずれかのチャンネルの拡散符号の自己相関値に「−1」以外の負(マイナス)の自己相関値が存在するか否かを判定する(ステップS54)。「−1」以外の負の自己相関値が存在する場合、シフト制御回路61は、ステップS53の処理で求めたシフト位置を次のチャンネルで用いる拡散符号のシフト位置として採用しない(ステップS55)。その場合、シフト制御回路61は、ステップS53の処理へ再度移行し、その次に最小となるシフト数(シフト位置)を求める。「−1」以外の負の自己相関値が存在しない場合、シフト制御回路61は、ステップS53で求めたシフト数を、次のチャンネルで用いる拡散符号のシフト数(シフト位置)として決定する(ステップS56)。
すなわち、シフト制御回路61は、既に確定した他の拡散符号の自己相関値に、該自己相関値のピーク値以外で正の最大値が存在し、かつ「−1」以外の負の値が存在しないシフト数を、チャンネルCH2〜CHXで用いる複数の拡散符号(第3の拡散符号)のシフト数として決定する。
【0030】
本出願人の検討によれば、ビットシフトさせて複数の拡散符号を生成する場合、他のチャンネルで用いる拡散符号に「−1」以外の負の自己相関値が存在するシフト位置を任意のチャンネルで用いる拡散符号のシフト位置として採用すると、以降のチャンネルで用いる拡散符号のシフト位置も「−1」以外の負の自己相関値が存在する傾向がある。
拡散符号の自己相関によるピーク位置は該拡散符号の先頭位置と一致するため、シフト位置に他の拡散符号の自己相関値で負の大きな値が存在すると、該ピークが相殺されて判別し難くなる可能性がある。すなわち、他のチャンネルとの相関干渉の影響により自チャンネルの拡散符号の自己相関によるピークが判別し難くなってしまう。そのため、他のチャネルで用いる拡散符号に「−1」以外の負の自己相関値が存在するシフト位置は避けるようにする。
一方、他の拡散符号の自己相関値に、ピーク値以外で正の最大値が存在する場合、自チャンネルの拡散符号の自己相関によるピークに該最大値が加算されることで、該ピークがより判別し易くなる。そのため、他のチャネルで用いる拡散符号にピーク値以外で正の最大値が存在するシフト位置を、ビットシフトさせて生成する拡散符号のシフト位置として採用する。
【0031】
ステップS56にてシフト位置が決定すると、シフト制御回路61は、確定した全てのチャンネルで用いる拡散符号の自己相関値の合算値を求める(ステップS57)。続いて、シフト制御回路61は、ステップS57で求めた合算値に含まれる負(マイナス)の最大値と、予め設定された閾値とを比較する(ステップS58)。合算値に含まれる負の最大値(絶対値)が閾値以下である場合、シフト制御回路61は、ステップS52〜S58の処理を繰り返し、さらに次のチャンネルで用いる拡散符号を生成する。合算値に含まれる負の最大値(絶対値)が閾値よりも大きい場合、シフト制御回路61は、Gold符号B1を用いたさらなる拡散符号の生成を停止し、それまで確定した拡散符号数を最大シフト多重数として決定する(ステップS59)。閾値は、自己相関値のピーク値よりも小さい値であり、該ピーク値と加算したときでも該ピークが判別できるような値に設定すればよい。例えば、符号長が「63」のGold符号はピーク値が「63」であるため、「63」よりも小さな値、例えば「50」や「45」等に設定すればよい。
【0032】
一つの拡散符号からビットシフトさせることで複数の拡散符号を生成する場合、生成する拡散符号の数(多重数)を増やしていくと、各拡散符号の自己相関値の合算値に含まれる負の値も徐々に大きな値となる。上述したように、自己相関値の合算値に含まれる負の値は、自己相関のピークの検出に影響するため、該負の値が自己相関値のピーク値を超えるような数の拡散符号を生成することはできない。そのため、上記閾値を用いて最大シフト多重数を決定する。
【0033】
図11は、
図7に示した処理手順により確定した各チャネンルで用いる拡散符号のシフト位置をそれぞれ示す表である。上述したように、シフト制御回路61は、自己相関値がピーク値(+63)以外で正の最大値(+15)となり、かつシフト数が最小となる符号をチャンネルCH2で用いる拡散符号として決定する。
図11に示す例では、チャンネルCH1で用いる拡散符号を4ビットシフトしたものがチャンネルCH2で用いる拡散符号となる。
また、シフト制御回路61は、自己相関値がピーク値(+63)以外の値であり、チャンネルCH1及びCH2の自己相関値の加算値が正の最大相関値(+30)となり、かつシフト数が最小となる符号をチャンネルCH3で用いる拡散符号として決定する。
図11に示す例では、チャンネルCH1で用いる拡散符号を8ビットシフトしたものがチャンネルCH3で用いる拡散符号となる。同様の処理により、シフト制御回路61はチャンネルCH4及びCH5で用いる拡散符号をそれぞれ決定する。
【0034】
上記
図7に示したステップS52の処理を採用すると、チャンネルCH6で用いる拡散符号はチャンネルCH1で用いる拡散符号を
17ビットシフトしたものとなる
。
上述したように、ビットシフトさせて複数の拡散符号を生成する場合、他のチャンネルで用いる拡散符号に「−1」以外の負の自己相関値が存在するシフト位置は任意のチャンネルで用いる拡散符号のシフト位置として避けるようにする。図11に示す例では、例えばシフト数が20のとき、チャンネルCH1で用いる拡散符号の自己相関値が「−17」であり、「−1」以外の値となる。
【0035】
同様の処理により、チャンネルCH1〜CH8(多重数8)で用いる各拡散符号のシフト位置を示したのが
図12である。
図12に示す例では、チャンネルCH1で用いる拡散符号を
21ビットシフトしたものがチャンネルCH7で用いる拡散符号となり、チャンネルCH1で用いる拡散符号を
25ビットシフトしたものがチャンネルCH8で用いる拡散符号となる。
図12に示す点線で囲った数値は各チャンネルの自己相関値のピーク値を示し、実線で囲った数値は該ピーク値のシフト位置における他チャンネルの自己相関値も含む合算値を示している。この実線で囲った合算値の絶対値が、他の自己相関値の絶対値に対して十分に大きな差を有していれば、チャンネル毎の自己相関によるピークをそれぞれ検出できる。
【0036】
本発明によれば、同期用と多重用とで異なる系列のGold符号を用いるため、多重用の拡散符号を用いて拡散された他のデータによる、同期用の拡散符号を用いて拡散された同期信号に対する相関干渉の影響を大きく低減できる。そのため、多重用の拡散符号をビットシフトさせて生成する場合でも、送信側と受信側とで拡散符号の同期を確実にとれるようになる。
また、自己相関のピークが相関干渉の影響により検出し難くならないように拡散符号毎のシフト数(シフト位置)を設定することで、相関干渉の影響を最小限に抑制できる。したがって、相関干渉を低減するための大規模な回路が不要になる。
【0037】
さらに、本発明では、少なくとも2つの異なる系列のGold符号を用いて通信を行うことができるため、拡散符号として用いる異なる系列のGold符号数を節約できる。通常、拡散符号として用いる異なる系列のGold符号の数が増えると、通信時の設定項目が増えるため、ユーザによる設定作業の負担が増大する。本発明では、拡散及び逆拡散に用いる、異なる系列のGold符号数を低減できるため、ユーザによる設定作業の簡略化も実現できる。また、多重用のGold符号として、異なる系列のGold符号を複数用意すれば、さらなる多重数の増大にも対応可能になる。