【実施例】
【0023】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。先ず、本発明におけるポリビニルアミン重合体粒子を製造し、金属イオンの吸着能を評価した。比較品は、キレート樹脂として重金属イオン吸着に用いられている汎用品であり、特開2007−302938号公報にも記載されている三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20を用いた。
【0024】
(製造例1)
500mLの4つ口フラスコに脱塩水100g、硫酸アンモニウム64.0g、ポリアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物水溶液(ポリマー濃度20質量%、重量平均分子量80万)1.00gを投入し、撹拌し、溶解させ、重合浴とした。N−ビニルホルムアミド33.4g、ジビニルベンゼン2.80g、アクリロニトリル4.00g、アゾ系重合開始剤2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業(株)製)0.12gを混合し、モノマー溶液とした。モノマー溶液と重合浴を混合、窒素でフラスコ内を置換しながら180rpmで撹拌した。30分後昇温し、40℃で3時間、続いて70℃で2時間重合した。重合後濾過、水洗、濾過し、含水状態の重合体球状粒子35.1gを得た。固形分率は42.4%であった。このようにして得られた反応生成物23.5gを4
つ口フラスコに入れ、48質量%水酸化ナトリウム水溶液23.40gを加え、撹拌しながら80℃で5時間加水分解した。水洗、濾過し、含水状態のポリビニルアミン球状粒子19.7gを得た。顕微鏡観察の結果、50μm〜2mmの球状粒子が観察された。このようにして得られた重合体粒子をキレート樹脂1とする。
【0025】
(製造例2)
500mLの4つ口フラスコに脱塩水100g、硫酸アンモニウム64.0g、ポリアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物水溶液(ポリマー濃度20質量%、重量平均分子量80万)1.00gを投入し、撹拌し、溶解させ、重合浴とした。N−ビニルホルムアミド33.4g、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ネオアリルP−30、ダイソー(株)製)1.00g、アクリロニトリル1.00g、アゾ系重合開始剤2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業(株)製)0.12gを混合し、モノマー溶液とした。モノマー溶液と重合浴を混合、窒素でフラスコ内を置換しながら180rpmで撹拌した。30分後昇温し、40℃で3時間、続いて70℃で2時間重合した。重合後濾過、水洗、濾過し、含水状態の重合体球状粒子210gを得た。固形分率は15.7%であった。このようにして得られた反応生成物150gを4
つ口フラスコに入れ、48質量%水酸化ナトリウム水溶液14.0gを加え、撹拌しながら80℃で5時間加水分解した。水洗、濾過し、含水状態のポリビニルアミン球状粒子253gを得た。顕微鏡観察の結果、50μm〜2mmの球状粒子が観察された。このようにして得られた重合体粒子をキレート樹脂2とする。
【0026】
(実施例1)白金イオンの吸着試験
テトラ塩化白金酸カリウムをイオン交換水に溶かし、10ppm溶解液を1L調整した後、500mLずつに分割した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1及び2を、前記白金イオン溶解液にそれぞれ10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、白金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0027】
(比較例1)白金イオンの吸着試験
テトラ塩化白金酸カリウムをイオン交換水に溶かし、10ppm溶解液を500mL調整した。水にて湿潤状態の三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20(比較品)を、前記白金イオン溶解液に10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、白金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0028】
(実施例2)パラジウムイオンの吸着試験
酢酸パラジウムを少量のアセトンに溶解した後、イオン交換水を用いて10ppmに調整した。前記パラジウム溶解液500mLずつをビーカーに測りとり、水にて湿潤状態のキレート樹脂1及び2をそれぞれ10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、パラジウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定し、パラジウムイオンの残量をICP発光分析により測定した。試験結果を表1に示す。
【0029】
(比較例2)パラジウムイオンの吸着試験
酢酸パラジウムを少量のアセトンに溶解した後、イオン交換水を用いて10ppmに調整した。前記パラジウム溶解液500mLに水にて湿潤状態の比較品を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、パラジウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。
試験結果を表1に示す。
【0030】
(実施例3)ルテニウムイオンの吸着試験
ICP発光分析用ルテニウム1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を1L調整して塩酸を用いてpH4に調整し、不溶解分を濾過除去後、500mLずつに分割した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1及び2をそれぞれの前記ルテニウム溶解液に10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、ルテニウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0031】
(比較例3)ルテニウムイオンの吸着試験
ICP発光分析用ルテニウム1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を500mL作成し、塩酸を用いてpH4に調整し、不溶解分を濾過除去した。前記ルテニウム溶解液に水にて湿潤状態の比較品を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、ルテニウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0032】
(実施例4)金イオンの吸着試験
ICP発光分析用金1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を1L調整し塩酸を用いてpH4に調整した後、500mLずつに分割した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1及び2をそれぞれの前記金溶解液に10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。試験結果を表1に示す。
【0033】
(比較例4)金イオンの吸着試験
ICP発光分析用金1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を500mL作成し、塩酸を用いてpH4に調整した。前記金溶解液に水にて湿潤状態の比較品を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0034】
(実施例5)イリジウムイオンの吸着試験
ICP発光分析用イリジウム1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を500mL作成し、塩酸を用いてpH4に調整した。前記イリジウム溶解液に水にて湿潤状態のキレート樹脂2を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、イリジウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0035】
(比較例5)イリジウムイオンの吸着試験
ICP発光分析用イリジウム1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を500mL作成し、塩酸を用いてpH4に調整した。前記イリジウム溶解液に水にて湿潤状態の比較品を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、白金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0036】
(表1)
【0037】
キレート樹脂1及び2は撹拌開始24時間後で、いずれも比較品と比べて多くの金属イオンを吸着している。中でも白金イオン、パラジウムイオン、金イオンでは、キレート樹脂1の撹拌開始2時間後における吸着量が多く、吸着速度が速い特長があることが分かった。
【0038】
(実施例6)銅イオンの吸着試験
硫酸銅5水和物をイオン交換水に溶かし、銅イオン113.6ppm溶解液を500mL調製した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1を、前記銅イオン溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の銅イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0039】
(比較例6)銅イオンの吸着試験
硫酸銅5水和物をイオン交換水に溶かし、銅イオン113.6ppm溶解液を500mL調製した。水にて湿潤状態の三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20(比較品)を、前記銅イオン溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の銅イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0040】
(実施例7)銅イオンの吸着試験
硫酸銅5水和物と塩化カルシウム(無水)をイオン交換水に溶かし、銅イオン79.7ppm、カルシウムイオン100ppm溶解液を500mL調整した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1を、前記溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の銅イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0041】
(比較例7)銅イオンの吸着試験
硫酸銅5水和物と塩化カルシウム(無水)をイオン交換水に溶かし、銅イオン79.7ppm、カルシウムイオン100ppm溶解液を500mL調整した。水にて湿潤状態の三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20(比較品)を、前記溶解液20
0gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の銅イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0042】
(実施例8)亜鉛イオンの吸着試験
塩化亜鉛をイオン交換水に溶かし、亜鉛イオン61.7ppm溶解液を500mL調製した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1を、前記亜鉛イオン溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の亜鉛イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0043】
(比較例8)亜鉛イオンの吸着試験
塩化亜鉛をイオン交換水に溶かし、亜鉛イオン61.7ppm溶解液を500mL調製した。水にて湿潤状態の三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20(比較品)を、前記亜鉛イオン溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の亜鉛イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0044】
(表2)
【0045】
本発明におけるキレート樹脂を添加した場合は、比較品と比べて銅イオン及び亜鉛イオンの吸着量が高いことが確認できた。