特許第6562459号(P6562459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562459
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】金属イオンの吸着分離方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20190808BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20190808BHJP
   C08F 226/02 20060101ALI20190808BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20190808BHJP
   B01J 45/00 20060101ALI20190808BHJP
   B01J 47/02 20170101ALI20190808BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20190808BHJP
   B01J 47/10 20170101ALI20190808BHJP
【FI】
   C02F1/28 B
   C08F8/12
   C08F226/02
   B01J20/26 E
   B01J45/00
   B01J47/02
   C02F1/42 H
   B01J47/10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-200033(P2015-200033)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2017-70909(P2017-70909A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 愛子
(72)【発明者】
【氏名】本多 剛
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特表平8−503015(JP,A)
【文献】 特開2002−239380(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/068806(WO,A1)
【文献】 特開平6−122728(JP,A)
【文献】 特開平6−238270(JP,A)
【文献】 特開昭61−51007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J 20/26
B01J 45/00
B01J 47/02
B01J 47/10
C02F 1/42
C08F 8/12
C08F 226/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ビニルカルボン酸アミドと架橋性単量体を含有する塩水中であり、該塩の添加率が水に対し50〜90質量%の範囲である塩水中で、分散剤存在下、懸濁重合して得た架橋重合体粒子を加水分解して製造して得たポリビニルアミン架橋重合体粒子を水中に添加することを特徴とする金属イオンの吸着分離方法。
【請求項2】
N−ビニルカルボン酸アミドと架橋性単量体を含有する塩水中で分散剤であり、該分散剤が、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物あるいはジメチルジアリルアンモニウム塩化物を重合したもの、及びこれらカチオン性モノマーと非イオン性モノマーとの共重合体から選択される一種以上である分散剤存在下、懸濁重合して得た架橋重合体粒子を加水分解して製造して得たポリビニルアミン架橋重合体粒子を水中に添加することを特徴とする金属イオンの吸着分離方法。
【請求項3】
前記架橋性単量体が、芳香族ポリビニル化合物あるいはアリルエーテル類から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の金属イオンの吸着分離方法。
【請求項4】
前記金属イオンが重金属イオンであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の金属イオンの吸着分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリビニルアミン架橋重合体粒子を用いた水中の金属イオンの吸着分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業排水に含まれる金属、特に人体に有害な影響を与える水銀、カドミウム、銅、亜鉛、等の金属については厳しい排水規制が設けられ、より一層の処理効果が求められている。又、近年では金属資源の需要が高まっており、特に希少金属や貴金属は半導体レーザーや電池材料等、各種分野において必須材料として用いられており、埋蔵量が少なく、供給量が制限されていることから廃棄物や廃液からの金属の回収が要望されている。
これらの状況において、排水中にキレート剤、キレート樹脂を添加することにより金属イオンを処理する試みが行われている。これまでに様々なキレート剤、キレート樹脂が考案されており、例えば、特許文献1では、アミノリン酸型キレート樹脂の製造方法が、特許文献2では、イミノジ酢酸又はN−メチル−D−グルカミン又はポリエチレンイミンから選択される官能基を有するキレート剤、特許文献3では、糖側鎖を有するポリアリルアミン誘導体からなる半金属吸着剤、特許文献4では、アシル化ポリアリルアミンの製造方法、特許文献5では、ポリN−ビニルアミン類を主体とする重合体に半金属と錯体を形成し得る官能基を導入した吸着剤、特許文献6では、ポリアミン型キレート樹脂と金属溶解液を接触させ、該金属溶解液から金属成分を除去する方法、特許文献7では、電解質溶液からの電解質の吸着又は分離方法として、ポリビニルアミン構造を有する架橋共重合体を使用する方法がそれぞれ開示されている。これら特許文献から一級アミノ基を有する重合体が金属イオン吸着に対して有効であることが示唆される。しかし、現在、汎用されているキレート樹脂は、コスト面での問題があったり、満足な吸着効果が得られなかったりする場合がある。そこで、従来の金属イオン吸着に用いられているキレート樹脂に対して、簡便に効率良く製造でき、効率的に吸着して分離することが可能なキレート樹脂が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−320233号公報
【特許文献2】特開2005−2414号公報
【特許文献3】特開2000−279803号公報
【特許文献4】特開平9−286816号公報
【特許文献5】特開2005−325269号公報
【特許文献6】特開2007−302938号公報
【特許文献7】特開平6−238270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、産業廃水等から金属イオンを効率良く吸着除去することである。更には、簡便に効率良く製造でき、金属イオンに対して優れた吸着能を有するキレート樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために鋭意検討した結果、塩水中でN−ビニルカルボン酸アミドを架橋性単量体と分散剤存在下、懸濁重合することにより、ポリビニルカルボン酸アミド架橋重合体粒子が得られ、塩等を水洗除去後、加水分解することにより得られたポリビニルアミン架橋重合体粒子が金属イオン吸着に有効なことを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、N−ビニルカルボン酸アミドと架橋性単量体を塩水中で分散剤存在下、懸濁重合しポリビニルカルボン酸アミド架橋重合体粒子を得た後に、該架橋重合体を加水分解することにより得られたポリビニルアミン架橋重合体粒子の金属イオン吸着処理用途に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有機溶媒を使用することなく、簡便に効率良く得られるポリビニルアミン架橋重合体粒子を使用することで水中の金属イオンを効率的に吸着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子の製造方法について説明する。製造の手法としては、先ず一般的に使用される懸濁重合を適用する。即ち、本発明における塩水中での懸濁重合は、N−ビニルカルボン酸アミド、架橋性単量体、必要に応じてN−ビニルカルボン酸アミドと共重合が可能なモノマー、重合開始剤、及び分散剤を塩水中で懸濁させ、任意の強度で撹拌することによりモノマー液滴を発生させ、ラジカル重合することにより行うことができる。モノマー液滴の粒径は分散剤、撹拌強度で制御されるが、0.01mm〜10mm、好ましくは0.1mm〜5mmである。
【0010】
本発明で使用するN−ビニルカルボン酸アミドのモノマーの例としては、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−メチル−N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルブチルアミド、N−ビニルイソブチルアミド等が挙げられ、好ましくはN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドである。N−ビニルカルボン酸アミドのモノマー以外にN−ビニルカルボン酸アミドと共重合が可能なモノマーを使用しても良く、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリメチルアンモニウム塩、(メタ)アクリロイルオキシアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、N−ビニルピロリドン、ジアリル−ジアルキルアンモニウム塩、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルペンジルトリアルキルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられ、これらの中の1種のみ使用しても良く、2種以上を組み合わせても良い。特にアクリロニトリルが好ましい。
【0011】
架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族ポリビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等を用いることもできる。しかし、ポリ(メタ)アクリレートやメチレンビスアクリルアミド等は加水分解され易いので、芳香族ジビニル化合物を用いるのが好ましい。最も好ましいのはジビニルベンゼンである。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、テトラアリロキシエタンや、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、およびペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等のアリルエーテル類、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等も使用が挙げられる。これらの中ではアリルエーテル類が好適に使用できる。添加率はモノマーに対して0.1〜50質量%の範囲であり、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。5質量%を越えるとN−ビニルカルボン酸アミドのみでは球状粒子が得られ難くなるので、N−ビニルカルボン酸アミドと共重合が可能なモノマーを使用した方が好ましい。共重合が可能なモノマーの添加率は、全モノマーに対して0.1〜50質量%の範囲で使用する。特にアクリロニトリルを使用するのが好ましい。
【0012】
重合開始剤としては、アゾ系やパーオキサイド系の重合開始剤、例えば2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2、2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、4、4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩等、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。これらの中で、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)等の油溶性開始剤が好ましい。又、開始剤二種以上を併用しても差し支えない。添加率はモノマーに対し通常0.02〜5質量%、好ましくは0.05〜2質量%である。
【0013】
塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等が挙げられ、これらのうちでは、硫酸アンモニウムが特に好ましい。また、これらのものを単独で用いても、混合して用いてもよい。添加率は水に対し30〜100質量%の範囲であり、30質量%より少ないとN−ビニルカルボン酸アミドが二相に分離せず、100質量%で塩による効果が十分得られており、100質量%を越えて添加しても不経済である。好ましくは50〜90質量%であり、更に好ましくは60〜90質量%である。
【0014】
分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤としては、イオン性あるいは非イオン性とも使用可能であるが、好ましくはイオン性である。イオン性高分子としては、カチオン性モノマーである(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物などを重合したものであるが、これらカチオン性モノマーと非イオン性モノマーとの共重合体も使用可能である。非イオン性モノマーの例としては、アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N、N’−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。非イオン性高分子分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールポリアクリルアミド等が挙げられる。イオン性高分子分散剤の重量平均分子量としては、5000〜500万、好ましくは5万〜300万である。また、非イオン性高分子分散剤の重量平均分子量としては、1000〜10万、好ましくは1000〜5万である。添加率は水に対し通常0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
【0015】
重合反応は、通常、温度30℃〜100℃、時間は1時間〜15時間で行う。
【0016】
重合後、水洗により塩、分散剤、未反応モノマー等を除去することができる。
【0017】
共重合体粒子は上述の方法で精製され、次いで加水分解に供される。N−ビニルカルボン酸アミド架橋重合体粒子の加水分解は、塩基性、酸性条件下で行うことができるが、遊離型ポリビニルアミン架橋重合体粒子を得るには、塩基性条件下で加水分解することが好ましい。塩型のポリビニルアミン架橋重合体粒子を得るには、酸性条件下で加水分解することが好ましい。
【0018】
加水分解のために適当な塩基としては、加水分解の際にpHを8〜14の範囲とすることができれば制限はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの水溶液を用いることが最も好ましい。添加率は、ポリマーのホルミル基に対し0.05〜2.0、更に好ましくは0.4〜1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0019】
加水分解のために適当な酸としては、加水分解の際にpHを0〜5の範囲とすることができれば制限はなく、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸といった無機酸、炭素数1〜5の範囲のモノおよびジカルボン酸、スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸といった有機酸が例示でき、特にハロゲン化水素酸およびハロゲン化水素のガスを用いることが好ましく、ハロゲン化水素酸を用いることが最も好ましい。添加率は、ポリマーのホルミル基に対し0.05〜2.0、更に好ましくは0.4〜1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0020】
加水分解後水等により洗浄することにより、ポリビニルアミン架橋重合体粒子を得ることができる。塩基加水分解の場合には遊離型精製ポリビニルアミン架橋重合体粒子が、酸加水分解の場合には塩型精製ポリビニルアミン架橋重合体粒子が得られる。
【0021】
次に、本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子による金属イオンの吸着分離方法に関して説明する。本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子は、キレート樹脂として一般的な水処理用途に適用される。一般的にはカラムに充填して排水等を通液し金属イオンを吸着させる。他には、対象液に添加した後、乱流、層流等の任意の撹拌条件により混合され、対象物を吸着する。即ち、各種産業・工程廃水中の金属イオンに対して高い吸着能を示すが、他にも酸性物質、ホルムアルデヒド類、有機化合物等の吸着処理も可能である。又、本発明における架橋重合体粒子は球状であることが好ましく、球状であると金属イオンの吸着能が高い傾向にあり、吸着剤としてカラムで使用する場合には、充填効率が高く流路が安定になり分離効率が高まり処理能力が向上する等の利点がある。
【0022】
本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子は、金属イオンの吸着能が高いが、金属イオンの中でも白金イオン、パラジウムイオン、ルテニウムイオン、金イオン、銅イオン等の重金属イオンに対してより高い吸着能を示す。
【実施例】
【0023】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。先ず、本発明におけるポリビニルアミン重合体粒子を製造し、金属イオンの吸着能を評価した。比較品は、キレート樹脂として重金属イオン吸着に用いられている汎用品であり、特開2007−302938号公報にも記載されている三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20を用いた。
【0024】
(製造例1)
500mLの4つ口フラスコに脱塩水100g、硫酸アンモニウム64.0g、ポリアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物水溶液(ポリマー濃度20質量%、重量平均分子量80万)1.00gを投入し、撹拌し、溶解させ、重合浴とした。N−ビニルホルムアミド33.4g、ジビニルベンゼン2.80g、アクリロニトリル4.00g、アゾ系重合開始剤2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業(株)製)0.12gを混合し、モノマー溶液とした。モノマー溶液と重合浴を混合、窒素でフラスコ内を置換しながら180rpmで撹拌した。30分後昇温し、40℃で3時間、続いて70℃で2時間重合した。重合後濾過、水洗、濾過し、含水状態の重合体球状粒子35.1gを得た。固形分率は42.4%であった。このようにして得られた反応生成物23.5gを4口フラスコに入れ、48質量%水酸化ナトリウム水溶液23.40gを加え、撹拌しながら80℃で5時間加水分解した。水洗、濾過し、含水状態のポリビニルアミン球状粒子19.7gを得た。顕微鏡観察の結果、50μm〜2mmの球状粒子が観察された。このようにして得られた重合体粒子をキレート樹脂1とする。
【0025】
(製造例2)
500mLの4つ口フラスコに脱塩水100g、硫酸アンモニウム64.0g、ポリアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物水溶液(ポリマー濃度20質量%、重量平均分子量80万)1.00gを投入し、撹拌し、溶解させ、重合浴とした。N−ビニルホルムアミド33.4g、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ネオアリルP−30、ダイソー(株)製)1.00g、アクリロニトリル1.00g、アゾ系重合開始剤2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業(株)製)0.12gを混合し、モノマー溶液とした。モノマー溶液と重合浴を混合、窒素でフラスコ内を置換しながら180rpmで撹拌した。30分後昇温し、40℃で3時間、続いて70℃で2時間重合した。重合後濾過、水洗、濾過し、含水状態の重合体球状粒子210gを得た。固形分率は15.7%であった。このようにして得られた反応生成物150gを4口フラスコに入れ、48質量%水酸化ナトリウム水溶液14.0gを加え、撹拌しながら80℃で5時間加水分解した。水洗、濾過し、含水状態のポリビニルアミン球状粒子253gを得た。顕微鏡観察の結果、50μm〜2mmの球状粒子が観察された。このようにして得られた重合体粒子をキレート樹脂2とする。
【0026】
(実施例1)白金イオンの吸着試験
テトラ塩化白金酸カリウムをイオン交換水に溶かし、10ppm溶解液を1L調整した後、500mLずつに分割した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1及び2を、前記白金イオン溶解液にそれぞれ10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、白金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0027】
(比較例1)白金イオンの吸着試験
テトラ塩化白金酸カリウムをイオン交換水に溶かし、10ppm溶解液を500mL調整した。水にて湿潤状態の三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20(比較品)を、前記白金イオン溶解液に10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、白金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0028】
(実施例2)パラジウムイオンの吸着試験
酢酸パラジウムを少量のアセトンに溶解した後、イオン交換水を用いて10ppmに調整した。前記パラジウム溶解液500mLずつをビーカーに測りとり、水にて湿潤状態のキレート樹脂1及び2をそれぞれ10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、パラジウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定し、パラジウムイオンの残量をICP発光分析により測定した。試験結果を表1に示す。
【0029】
(比較例2)パラジウムイオンの吸着試験
酢酸パラジウムを少量のアセトンに溶解した後、イオン交換水を用いて10ppmに調整した。前記パラジウム溶解液500mLに水にて湿潤状態の比較品を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、パラジウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0030】
(実施例3)ルテニウムイオンの吸着試験
ICP発光分析用ルテニウム1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を1L調整して塩酸を用いてpH4に調整し、不溶解分を濾過除去後、500mLずつに分割した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1及び2をそれぞれの前記ルテニウム溶解液に10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、ルテニウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0031】
(比較例3)ルテニウムイオンの吸着試験
ICP発光分析用ルテニウム1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を500mL作成し、塩酸を用いてpH4に調整し、不溶解分を濾過除去した。前記ルテニウム溶解液に水にて湿潤状態の比較品を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、ルテニウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0032】
(実施例4)金イオンの吸着試験
ICP発光分析用金1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を1L調整し塩酸を用いてpH4に調整した後、500mLずつに分割した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1及び2をそれぞれの前記金溶解液に10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。試験結果を表1に示す。
【0033】
(比較例4)金イオンの吸着試験
ICP発光分析用金1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を500mL作成し、塩酸を用いてpH4に調整した。前記金溶解液に水にて湿潤状態の比較品を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0034】
(実施例5)イリジウムイオンの吸着試験
ICP発光分析用イリジウム1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を500mL作成し、塩酸を用いてpH4に調整した。前記イリジウム溶解液に水にて湿潤状態のキレート樹脂2を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、イリジウムイオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0035】
(比較例5)イリジウムイオンの吸着試験
ICP発光分析用イリジウム1000ppm標準試料を10ppmになるよう希釈した溶液を500mL作成し、塩酸を用いてpH4に調整した。前記イリジウム溶解液に水にて湿潤状態の比較品を10.0mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始2時間後、及び24時間後に上澄み液をサンプリングし、溶液を0.2μmフィルターで濾過、得られた液の1%分の王水を加えた後、白金イオンの残量をICP発光分析装置(ICPS−7510、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表1に示す。
【0036】
(表1)
【0037】
キレート樹脂1及び2は撹拌開始24時間後で、いずれも比較品と比べて多くの金属イオンを吸着している。中でも白金イオン、パラジウムイオン、金イオンでは、キレート樹脂1の撹拌開始2時間後における吸着量が多く、吸着速度が速い特長があることが分かった。
【0038】
(実施例6)銅イオンの吸着試験
硫酸銅5水和物をイオン交換水に溶かし、銅イオン113.6ppm溶解液を500mL調製した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1を、前記銅イオン溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の銅イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0039】
(比較例6)銅イオンの吸着試験
硫酸銅5水和物をイオン交換水に溶かし、銅イオン113.6ppm溶解液を500mL調製した。水にて湿潤状態の三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20(比較品)を、前記銅イオン溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の銅イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0040】
(実施例7)銅イオンの吸着試験
硫酸銅5水和物と塩化カルシウム(無水)をイオン交換水に溶かし、銅イオン79.7ppm、カルシウムイオン100ppm溶解液を500mL調整した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1を、前記溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の銅イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0041】
(比較例7)銅イオンの吸着試験
硫酸銅5水和物と塩化カルシウム(無水)をイオン交換水に溶かし、銅イオン79.7ppm、カルシウムイオン100ppm溶解液を500mL調整した。水にて湿潤状態の三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20(比較品)を、前記溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の銅イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0042】
(実施例8)亜鉛イオンの吸着試験
塩化亜鉛をイオン交換水に溶かし、亜鉛イオン61.7ppm溶解液を500mL調製した。水にて湿潤状態のキレート樹脂1を、前記亜鉛イオン溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の亜鉛イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0043】
(比較例8)亜鉛イオンの吸着試験
塩化亜鉛をイオン交換水に溶かし、亜鉛イオン61.7ppm溶解液を500mL調製した。水にて湿潤状態の三菱化学製ポリアミン型キレート樹脂CR20(比較品)を、前記亜鉛イオン溶解液200gに100mg添加し、撹拌子を用いて40rpmにて撹拌した。撹拌開始24時間後に上澄み液をサンプリングし、0.2μmフィルターで濾過、得られた液の亜鉛イオンの残量を原子吸光分光光度計(AA−6800、(株)島津製作所製使用)にて測定した。試験結果を表2に示す。
【0044】
(表2)
【0045】
本発明におけるキレート樹脂を添加した場合は、比較品と比べて銅イオン及び亜鉛イオンの吸着量が高いことが確認できた。