特許第6562462号(P6562462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562462
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電極箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/055 20060101AFI20190808BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20190808BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20190808BHJP
   C25F 3/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01G9/055
   H01G9/048 G
   H01G9/00 290D
   C25F3/04 C
   C25F3/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-231990(P2015-231990)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-98500(P2017-98500A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 康幸
(72)【発明者】
【氏名】小尾 勇
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−324252(JP,A)
【文献】 特開昭54−120250(JP,A)
【文献】 特開平07−249550(JP,A)
【文献】 米国特許第05503718(US,A)
【文献】 米国特許第04213835(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/055
C25F 3/04
H01G 9/00
H01G 9/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解エッチングにより箔体から電解コンデンサ用電極箔を製造する電解コンデンサ用電極箔の製造方法であって、
エッチング溶液中で前記箔体の表面に直流電流を印加することにより、前記箔体の表面に前記直流電流の初期電流値に応じた数のピットを発生させる第1工程と、
前記ピットの表面積の増加に応じて前記直流電流を前記初期電流値からピーク電流値まで増加させることにより、前記ピットを深さ方向および該深さ方向に直交する前後左右方向の5方向に成長させ、前記ピーク電流値に応じたピット径を有する方形ピットを形成する第2工程と、
前記ピーク電流値まで増加させた前記直流電流を制限電流値まで絞り込むことにより、前記方形ピットの成長方向を前記5方向から前記深さ方向に切り替える第3工程と、
前記制限電流値まで絞り込んだ後の前記直流電流により、前記方形ピットを前記深さ方向に成長させ、所定のピット長を有するトンネルピットを形成する第4工程と、を含み、
前記第2工程では、エッチング時間に対して前記直流電流を前記初期電流値から前記ピーク電流値まで二次関数的に増加させる
ことを特徴とする電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程、前記第2工程および前記第3工程のエッチング時間の和は、前記第4工程のエッチング時間よりも短い
ことを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程では、前記直流電流を所定の時間間隔で算出した目標値に一致させるように増加させ、
前記目標値を、前記ピットの表面積あたりの電流値と、前記ピットの発生数と、前記ピット1個の表面積との積に基づいて算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
【請求項4】
前記箔体は、アルミニウム箔であり、
前記第1工程および前記第2工程のエッチング時間の和は、0.001〜5秒であり、
前記ピーク電流値は、0.1〜30A/cmであり、
前記制限電流値は、前記ピーク電流値の10〜90%である
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用電極箔の製造方法に関し、特に、トンネルピットを有する電解コンデンサ用電極箔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トンネルピットを有する電解コンデンサ用電極箔の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1に記載の方法では、塩酸または硫酸などのエッチング溶液中でアルミニウム箔の表面に、初期電流値を1.5A/cm以上の最大電流密度とする直流電流を印加し、その後、上記直流電流を0.1A/cm以下に急激に低下させる。これにより、特許文献1に記載の方法によれば、ピット長の揃ったトンネルピットを有する電解コンデンサ用電極箔を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−282299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、トンネルピットのピット径が不揃いになるため、電解コンデンサ用電極箔の単位面積あたりの静電容量を向上させることが困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、トンネルピットのピット径を揃えることが可能な電解コンデンサ用電極箔の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電解コンデンサ用電極箔の製造方法は、
電解エッチングにより箔体から電解コンデンサ用電極箔を製造する電解コンデンサ用電極箔の製造方法であって、
エッチング溶液中で前記箔体の表面に直流電流を印加することにより、前記箔体の表面に前記直流電流の初期電流値に応じた数のピットを発生させる第1工程と、
前記ピットの表面積の増加に応じて前記直流電流を前記初期電流値からピーク電流値まで増加させることにより、前記ピットを深さ方向および該深さ方向に直交する前後左右方向の5方向に成長させ、前記ピーク電流値に応じたピット径を有する方形ピットを形成する第2工程と、
前記ピーク電流値まで増加させた前記直流電流を制限電流値まで絞り込むことにより、前記方形ピットの成長方向を前記5方向から前記深さ方向に切り替える第3工程と、
前記制限電流値まで絞り込んだ後の前記直流電流により、前記方形ピットを前記深さ方向に成長させ、所定のピット長を有するトンネルピットを形成する第4工程と、を含み、
前記第2工程では、エッチング時間に対して前記直流電流を前記初期電流値から前記ピーク電流値まで二次関数的に増加させることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1工程および第2工程における直流電流をピットの表面積の増加に応じて制御することによりピット径を制御することができる。さらに、この構成によれば、第3工程および第4工程における直流電流を制御することによりピット長を制御することができる。
【0008】
前記第1工程、前記第2工程および前記第3工程のエッチング時間の和は、前記第4工程のエッチング時間よりも短い
ことが好ましい。
【0010】
前記第2工程では、前記直流電流を所定の時間間隔で算出した目標値に一致させるように増加させ、
前記目標値を、前記ピットの表面積あたりの電流値と、前記ピットの発生数と、前記ピット1個の表面積との積に基づいて算出する
よう構成できる。
【0011】
上記電解コンデンサ用電極箔の製造方法では、例えば、
前記箔体は、アルミニウム箔であり、
前記第1工程および前記第2工程のエッチング時間の和は、0.001〜5秒であり、
前記ピーク電流値は、0.1〜30A/cmであり、
前記制限電流値は、前記ピーク電流値の10〜90%である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トンネルピットのピット径を揃えることが可能な電解コンデンサ用電極箔の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は、本発明で使用する直流電流の波形図である。(B)は、(A)のエッチング時間Tにおける直流電流の拡大波形図である。
図2】本発明におけるトンネルピットが形成されるまでの一連の状態を示す図である。
図3】(A)は、50ミリ秒電解エッチングを行った場合のアルミニウム箔表面のSEM写真である。(B)は、100ミリ秒電解エッチングを行った場合のアルミニウム箔表面のSEM写真である。
図4】(A)は本発明の実施例1で使用した直流電流の波形図である。(B)は、従来例1で使用した直流電流の波形図である。
図5】実施例1における電解コンデンサ用電極箔のSEM写真であって、(A)は表面写真、(B)は断面写真、(C)は裏面写真である。
図6】従来例1における電解コンデンサ用電極箔のSEM写真であって、(A)は表面写真、(B)は断面写真、(C)は裏面写真である。
図7】(A)は本発明の実施例2で使用した直流電流の波形図である。(B)は、従来例2で使用した直流電流の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電解コンデンサ用電極箔の製造方法の実施形態について説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサ用電極箔の製造方法は、直流電流を使用した電解エッチングにより、箔体から複数のトンネルピットを有する電解コンデンサ用電極箔を製造するものである。箔体は、例えば、アルミニウム箔である。また、電解エッチングで使用するエッチング溶液は、例えば、硫酸などを含む酸性溶液である。
【0016】
本実施形態に係る製造方法では、上記直流電流を電流制御電源で制御することにより、ピット径およびピット長の揃ったトンネルピットを有する電解コンデンサ用電極箔を製造することができる。電流制御電源で下記のように制御した直流電流を、以下、「制御電流」という。
【0017】
図1(A)に、制御電流の波形図を示し、図1(B)にエッチング時間Tにおける制御電流の拡大波形図を示す。図1(A)に示すように、電解エッチングの全エッチング時間は、約5秒である。このエッチング時間は、箔体の種類や、得ようとするピット径およびピット長の大きさなどに応じて適宜変わる。
【0018】
電解エッチングは、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とで構成されるが、図1(B)に示すように、電解エッチングの初期に第1工程、第2工程および第3工程が連続的に行われ、電解エッチングの大部分は第4工程となる。言い換えれば、第1工程、第2工程および第3工程のエッチング時間の和は、第4工程のエッチング時間よりも短くなる。
【0019】
第1工程は、半球状のピットを発生させる工程である(図2(A)参照)。半球状のピットは、電解エッチングの開始時に箔体の表面に形成される。具体的には、半球状のピットは、エッチング溶液中で箔体の表面に制御電流を印加することにより形成される。ピットの発生数は、制御電流の初期電流値に応じて決まるので、電流制御電源で制御電流の初期電流値を制御することで、ピットの発生数を制御することができる。箔体がアルミニウム箔の場合、制御電流の初期電流値は、0.1〜10[A/cm]である。
【0020】
箔体の表面に制御電流を印加し続けると、半球状のピットは方形ピットになる(図2(B)参照)。ここで、本発明における「方形ピット」とは、箔体の表面に対して深さ方向(下方向)および該深さ方向に直交する前後左右方向の5方向に成長するピットをいう。なお、方形ピットは、半立方体形状になる場合もあるが、半立方体が歪んだ形状になる場合や、半球に近い形状になる場合もある。半立方体形状または半立方体が歪んだ形状の場合、箔体表面における方形ピットの一辺の長さがピット径となり、半球に近い形状の場合、箔体表面における方形ピットの直径がピット径となる。
【0021】
第2工程は、方形ピットを前後左右方向および深さ方向の5方向に成長させる工程である。第2工程では、全方形ピットが均一に成長するように、方形ピットの表面積の増加に応じて、電流制御電源で制御電流を初期電流値からピーク電流値まで増加させる。方形ピットは、前後左右下の5つの面全てが面積を拡大しようとし、各面の一辺の長さが一定の速度で拡大しようとする。すなわち、各方形ピットの面積は、エッチング時間に対して二次関数的に増大する。このため、第2工程では、エッチング時間に対して制御電流を二次関数的に増加させることが好ましい。
【0022】
箔体に印加する電流が不足している場合、各方形ピットは必然的に電流を奪い合うこととなり、成長に必要な電流を得ることができなかった一部の方形ピットは成長が停止してしまう。その結果、成長が停止した方形ピットと成長を継続した方形ピットとが混在し、方形ピットのピット径が不揃いになってしまう。
【0023】
第2工程では、箔体がアルミニウム箔の場合、制御電流のピーク電流値が、0.1〜30[A/cm]となり、ピーク電流値に到達するまでのエッチング時間(第1工程および第2工程のエッチング時間の和)が、0.001〜5[秒]となる。
【0024】
予め、予備エッチング実験を行い、ピット形状観察より時間的に変化する制御電流の「目標値」を決定し、電流制御電源にて、制御電流を「目標値」に一致させるように増加させる。制御電流の「目標値」は、下記の式(1)で算出される。
【数1】
すなわち、電流制御電源は、制御電流の「目標値」を、方形ピットの「ピット表面積あたりの電流値」と、方形ピットの「ピット発生数」と、「方形ピット1個の表面積」との積に基づいて算出する。式(1)における「方形ピット1個の表面積」は、下記の式(2)で算出される。
【数2】
式(1)に式(2)を代入すると、「目標値」が「エッチング時間」の2次関数であることが分かる。なお、式(1)および式(2)において、「ピット表面積あたりの電流値」、「ピット発生数」、「ピット成長速度」、「初期ピット径」は、時間的に変化しない定数である。
【0025】
「目標値」は、箔体の投影面積あたりの必要電流(ピットの成長に必要な電流)であり、単位は例えば[mA/cm]である。「ピット表面積あたりの電流値」は、ピット表面積あたりの必要電流であり、単位は例えば[mA/μm]である。「ピット発生数」は、箔体の投影面積あたりのピット数(ピット密度)であり、単位は例えば[個/cm]である。「方形ピット1個の表面積」は、方形ピットの5つの面(前後左右下の面)の表面積の総計であり、単位は例えば[μm/個]である。「ピット成長速度」は、方形ピット各面の一辺の長さの成長速度であり、単位は例えば[μm/秒]である。「エッチング時間」は、電解エッチングの時間(変数)であり、単位は例えば[秒]である。「初期ピット径」は、ピット発生直後、すなわち電解エッチング開始時のピット径であり、単位は例えば[μm]である。
【0026】
「ピット表面積あたりの電流値」および「ピット成長速度」は、温度などのエッチング条件で決まる一定値であり、一定の直流電流で電解エッチングしたときに発生したピットを観察すること、例えば、アルミニウム箔を用いて1000[mA/cm]の直流電流で、50ミリ秒、100ミリ秒と時間を刻んで電解エッチングを行い、アルミニウム箔に形成されたピットを電子顕微鏡で観察することで実験的に算出することができる。
【0027】
ここで、「ピット表面積あたりの電流値」は、
ピット表面積あたりの電流値=1視野あたりの面積に与えた電流/ピット表面積の総計
となり、「ピット成長速度」は、
ピット成長速度=平均ピット径(差)/エッチング時間(差)
となる。平均ピット径およびピット表面積の総計は、その時点で成長を続けている方形ピットの平均ピット径およびピット表面積の総計であり、エッチング途中に成長が止まってしまったものは対象外とする。
【0028】
図3(A)にエッチング時間が50ミリ秒の場合、図3(B)にエッチング時間が100ミリ秒の場合におけるアルミニウム箔表面のSEM写真を示す。一定の直流電流で電解エッチングを行った場合、必然的に電流の奪い合いとなるので、アルミニウム箔には、十分な電流を得て生き残った大径の方形ピット(成長を継続した方形ピット)と電流が不足して成長が停止した小径の方形ピットとが混在する。方形ピットは、成長が一旦停止すると、その後再び成長を開始することはない。図3(A)および図3(B)を見ると、エッチング時間内いっぱいに成長を続けた方形ピットは、ピット径が比較的揃っていることが分かる。また、「ピット表面積あたりの電流値」は一定であり、直流電流が1000[mA/cm]一定という条件の下では「1視野あたりの面積に与えた電流」も一定であるため、成長を継続することができる方形ピットの「ピット表面積の総計」は50ミリ秒の場合も100ミリ秒の場合も同じになる。
【0029】
上記のことを踏まえて、まず、図3(B)に示す100ミリ秒のSEM写真からピット解析を行う。具体的には、全方形ピットのうちサイズの大きい上位10%の方形ピットを、成長を継続している方形ピットとして対象ピットとし、対象ピットのピット解析を行う。図3(B)の場合、全ピット数が263[個]であるため、対象ピット数を26[個]とすると、対象ピットの「平均ピット径」は0.32[μm]となり、対象ピットの「ピット表面積の総計」は6.27[μm]となる。
【0030】
次に、図3(A)に示す50ミリ秒のSEM写真についてピット解析を行う。上記のとおり、成長を継続することができる方形ピットの「ピット表面積の総計」は50ミリ秒の場合も100ミリ秒の場合も同じになるので、「ピット表面積の総計」が6.27[μm]に近づくように、サイズの大きい上位から対象ピットを選択し、選択した対象ピットのピット解析を行う。図3(A)の場合、全ピット数243[個]のうち対象ピット数は90[個]となり、対象ピットの「ピット表面積の総計」は6.27[μm]となる。また、対象ピットの「平均ピット径」は0.17[μm]となる。
【0031】
これらの解析結果から、「1視野あたりの面積に与えた電流」を1.23×10−6[A]とすると、「ピット表面積あたりの電流値」は、
ピット表面積あたりの電流値=1.23×10−6[A]/6.27×10−8[cm]≒19.6[A/cm
となり、「ピット成長速度」は、
ピット成長速度=(0.32−0.17)[μm]/(0.1−0.05)[秒]=3[μm/秒]
となる。また、X軸にエッチング時間[秒]、Y軸にピット径[μm]をとり、エッチング時間に対するピット径をグラフ化した場合、エッチング時間に対するピット径は一次関数(Y=3X+0.02)で表わすことができ、この一次関数の傾きが「ピット成長速度」となり、切片が「初期ピット径」となる。
【0032】
再び図1および図2を参照して、第3工程は、方形ピットの成長方向を5方向から深さ方向に切り替える工程である。第3工程では、方形ピットが所望のピット径まで成長した時点で、すなわち制御電流がピーク電流値に到達した時点で、制御電流を制限電流値まで絞り込む。制御電流を絞り込むことで、方形ピットの成長面5つの合計面積のうち、深さ方向を除く4方向の面の合計面積にあたる比率分を絞り込むことにより、深さ方向を除く4方向の成長が止まることで、方形ピットの成長方向が5方向から深さ方向に切り替わる。これにより、下記の第4工程では、方形ピットは深さ方向にのみ成長する。
【0033】
箔体がアルミニウム箔の場合、制限電流値は、ピーク電流値の10〜90%であり、好ましくは10〜30%である。制御電流がピーク電流値から制限電流値になるまでの時間(以下、「絞り時間」という。)は、0.001〜5[秒]である。
【0034】
第4工程は、所定のピット長を有するトンネルピットを形成する工程である(図2(C)参照)。第4工程では、制御電流を第3工程よりも緩やかな傾きで制限電流値から徐々に低下させた後、ほぼ一定に維持する。方形ピットが所望の深さまで成長した時点で、すなわち所望のピット長を有するトンネルピットが形成された時点で第4工程を終了させる。これにより、ピット径およびピット長の揃ったトンネルピットを有する電解コンデンサ用電極箔が製造される。
【0035】
次に、下記の比較実験1および2に基づいて、本実施形態に係る電解コンデンサ用電極箔の製造方法をより具体的に説明する。比較実験1および2において、実施例1および2は、本実施形態に係る電解コンデンサ用電極箔の製造方法であり、従来例1および2は、従来の電解コンデンサ用電極箔の製造方法である。
[比較実験1]
比較実験1では、箔体としてアルミニウム箔を使用した。アルミニウム箔は、予めリン酸浸漬処理(リン酸1.5wt%、常温、浸漬時間3分)を施している。また、エッチング溶液は、酸性溶液を使用した。
【0036】
図4(A)は、実施例1における制御電流の波形図である。実施例1では、第1工程において制御電流の初期電流値を約0.1[A/cm]とし、第2工程において方形ピットの表面積の増加に応じて制御電流を約3.2[A/cm]のピーク電流値まで増加させ、第3工程において制御電流をピーク電流値から約1.0[A/cm]の制限電流値まで一気に絞り込み、第4工程において制御電流を約0.5[A/cm]まで徐々に低下させた後、約0.5[A/cm]に維持した。
【0037】
図4(B)は、従来例1における直流電流の波形図である。従来例1では、直流電流の初期電流値を約1.0[A/cm]とし、その後直流電流を約0.5[A/cm]まで徐々に低下させ、約0.5[A/cm]に維持した。
【0038】
図5(A)〜(C)は、実施例1における電解コンデンサ用電極箔の表面・断面・裏面のSEM写真である。一方、図6(A)〜(C)は、従来例1における電解コンデンサ用電極箔の表面・断面・裏面のSEM写真である。
【0039】
図5(A)と図6(A)を比較すると、実施例1ではピット径が約1.5[μm]に揃っているのに対して、従来例1ではピット径が揃っていない。これは、実施例1では、第2工程において制御電流をピットの表面積の増加に応じて二次関数的に増加させるように制御することで、全ての方形ピットに均一に電流を与え、前後左右方向および深さ方向の5方向に均一に成長させたためである。
【0040】
図5(B)、(C)と図6(B)、(C)を比較すると、実施例1では、ほぼ全ての方形ピットが深さ方向に成長し、ピット長の揃ったトンネルピットが形成されているのに対して、従来例1では、横方向への成長など不規則に成長している方形ピットが多く見られる。これは、実施例1では、第3工程において制御電流を制限電流値まで絞り込むことで、具体的には制御電流を電流ピーク値から電流値が約1/3になる制限電流値まで絞り込むことで、方形ピットの成長方向が5方向から深さ方向に切り替わり、第4工程において方形ピットが深さ方向にのみ成長したためである。
【0041】
下記の表1に、実施例1と従来例1の比較結果を示す。
【表1】
表1から明らかなように、実施例1は、従来例1よりもピット径の変動係数およびピット長の変動係数が大幅に減少している。すなわち、実施例1に係る製造方法によれば、ピット径およびピット長が均一に揃ったトンネルピットを有する電解コンデンサ用電極箔を製造することができる。
[比較実験2]
比較実験2では、箔体としてマスク加工されたアルミニウム箔を使用した。マスク加工されたアルミニウム箔は、予めリン酸浸漬処理(リン酸1.5wt%、常温、浸漬時間3分)を施している。エッチング溶液は、酸性溶液を使用した。また、マスクは、開口径1.7[μm]、開口ピッチ2.3[μm]のSiOハードマスクを使用した。
【0042】
図7(A)は、実施例2における制御電流の波形図である。実施例2では、第1工程において制御電流の初期電流値を約3.0[A/cm]とし、第2工程において方形ピットの表面積の増加に応じて制御電流を約16.0[A/cm]のピーク電流値まで増加させ、第3工程において制御電流をピーク電流値から約5.0[A/cm]の制限電流値まで一気に絞り込み、第4工程において制御電流を約0.5[A/cm]まで徐々に低下させた後、約0.5[A/cm]に維持した。
【0043】
図7(B)は、従来例2における直流電流の波形図である。従来例2では、直流電流の初期電流値を約5.0[A/cm]とし、その後約0.5[A/cm]まで徐々に低下させて、約0.5[A/cm]に維持した。
【0044】
下記の表2に、実施例2と従来例2の比較結果を示す。
【表2】
表2から明らかなように、実施例2は、従来例2よりもピット径の変動係数が減少し、かつピット長の変動係数が大幅に減少している。すなわち、実施例2に係る製造方法によれば、ピット径およびピット長が均一に揃ったトンネルピットを有する電解コンデンサ用電極箔を製造することができる。また、実施例2に係る製造方法によれば、ピット発生率を向上させることもできる。
【0045】
以上、本発明に係る電解コンデンサ用電極箔の製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、本発明では、アルミニウム箔(マスク加工されたアルミニウム箔を含む)以外のものを、箔体として使用してもよい。
【0047】
また、本発明における電解エッチングは、第1工程、第2工程、第3工程および第4工程を含むのであれば、制御電流の電流波形を適宜変更してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7