(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
糖類、アミノ酸類、ビタミン類、補酵素類、及びミネラル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の毛髪色素増強剤。
【背景技術】
【0002】
従来、老化(加齢)に伴う白髪化に対し、髪を黒髪へと変化させる方法として、染毛が主として行われてきた。ところが近年においては、白髪化は、頭皮の毛包中の毛髪色素細胞が老化やストレスにより機能が低下することで起こることが分かってきた。そして、白髪化については、毛髪色素細胞におけるメラニン産生を促進させる成分が見出され、そのような成分を用いた白髪防止用組成物が提案されている(特許文献1〜5参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、オタネニンジン、田七人参、タンジン、ユッカ、ビワ、およびキンギンカ等から選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物を主成分とするメラニン産生促進剤及びそのメラニン産生促進剤からなる白髪改善剤が記載されている。
また、特許文献2には、植物抽出物を有効成分として含んでなるチロシナーゼ活性促進用組成物ないしは白髪防止用組成物であって、その有効成分が、アキノタムラソウ属(Salvia)、ハナスゲ属(Anemarrhena)及びサツマイモ属(Ipomoea)からなる群より選ばれる属に属する植物由来の抽出物の少なくとも1種からなる組成物が記載されている。
また、特許文献3には、6−ベンジルアミノプリン及び該物質を含むナンバンゲ抽出物が、白髪防止用外用剤の有効成分として有用である旨記載されている。
また、特許文献4には、ステルビン及び該物質を含むヤーバサンタ及びカワラヨモギ抽出物が、白毛の予防・改善用に有用である旨記載されている。
特許文献5には、ペオノール及び該物質を含むボタンピ抽出物がメラニン産生能を有し、これを配合することで白髪防止改善効果に優れた外用剤を提供することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載のようなメラニン産生促進剤や白髪防止組成物は、メラニン産生促進効果等の一定の効果を有するものの、未だ白髪を防止・改善するには十分ではなく、さらに優れた白髪防止・改善効果を有する素材の出現が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、毛髪色素形成に関与する細胞に作用して毛髪色素の生成を促し、従来のメラニン産生促進剤や白髪防止組成物に比べて、より優れた白髪防止・改善能を発揮することができる、毛髪色素増強剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来、没食子酸およびその誘導体は、鉄塩等と黒色の錯体を形成させて染毛する薬剤としての使用(特開2001-270812号参照)、養育毛剤としての使用(特開平7-206644号、同2003-321330号)、またはシミ防止(美白)剤としての使用(特公平5-28203号、同2004-175688号)が報告されているが、没食子酸およびその誘導体のみでの白髪防止効果について具体的に述べた報告はなかった。前記の特開2003-321330号において、本文中に白髪改善効果の一般的記載があるが、実施例等でその効果を裏付ける記載はなかった。
【0008】
本発明者らは、今回、高い毛髪色素増強能を有する薬剤の探索の一環として、没食子酸類を含むポリフェノール化合物類についてヒト皮膚三次元培養モデルを利用した試験系で鋭意検討したところ、没食子酸やその誘導体が、毛髪色素形成に関与する細胞を活性化して毛髪色素形成を促進する薬剤であるという試験結果を得た。そしてヒト試験を行ったところ白髪防止・改善効果があるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の毛髪色素増強剤は、有効成分として、没食子酸及び没食子酸誘導体の少なくとも1種を含む、一剤型であることを特徴とする。本発明の毛髪色素増強剤は、上記有効成分を含むことにより、頭皮に付与することで白髪防止・改善効果が得られる。
【0010】
前記没食子酸誘導体としては、より具体的には、下記一般式(I)で表される化合物、又は加水分解型タンニンであることが好ましい。当該加水分解型タンニンとしては、タラタンニン、チェストナットタンニン、ミラボラムタンニン、五倍子タンニン(タンニン酸)、オークタンニン、及び茶タンニンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の加水分解型タンニンであることが好ましい。
【0011】
【化1】
【0012】
本発明の毛髪色素増強剤は、さらに、サポニン類の少なくとも1種を含むことが好ましい。サポニン類を含むことで、白髪防止・改善効果をより向上することができる。
【0013】
本発明の毛髪色素増強剤は、さらに、糖類及び/又はアミノ酸類の少なくとも1種を含むことが好ましい。それらを含むことで、白髪防止・改善効果をより向上することができる。
【0014】
本発明の毛髪色素増強剤は、さらに、ビタミン類及び/又は補酵素類の少なくとも1種を含むことが好ましい。それらを含むことで、白髪防止・改善効果をより向上することができる。
【0015】
本発明の毛髪色素増強剤は、さらに、ミネラル類の少なくとも1種を含むことが好ましい。ミネラル類を含むことで、白髪防止・改善効果をより向上することができる。
【0016】
本発明の毛髪色素増強剤は、さらに、マメ亜科ムクナ属植物の植物エキスを含むことが好ましい。マメ亜科ムクナ属植物の植物エキスを含むことで、白髪防止・改善効果をより増強することができる。
【0017】
本発明の毛髪色素増強剤において、没食子酸や没食子酸誘導体は、メラニン形成に関与する色素幹細胞、毛包幹細胞、メラノサイト、毛母細胞、毛乳頭細胞、メラノソーム等の細胞に作用して毛髪色素の生成を促し、それを含有する溶液、ジェル、ムース、クリーム等の一剤型の形態での優れた白髪防止・改善用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
まず、本発明の毛髪色素増強剤によって奏される作用効果について説明する。毛髪色素には、主に黒褐色の真性メラニン(ユーメラニン)と、黄橙色の亜メラニン(フェオメラニン)の2種類のメラニン色素がある。その割合と量で黒髪、栗毛、金髪、赤毛になる。二つのメラニン色素形成に関与するのは、色素幹細胞、毛包幹細胞、メラノサイト、毛母細胞、毛乳頭細胞、メラノソーム等の細胞であり、本発明の毛髪色素増強剤によれば、それらの細胞に作用して毛髪色素の生成を促し、すなわち毛髪色素の増強を促すことができる。これにより、白髪を防止したり、白髪の状態を改善したりすることができる。なお、本明細書において、白髪の防止や改善とは、通常当業者に理解されるのと異ならずに、具体的には、防止とは、例えば、黒髪、栗毛、金髪、赤毛等の状態の毛髪やその頭皮部に予防的に適用して、その適用を受けた毛髪が白髪やより退色した状態になるのを防ぐこと等を意味し、改善とは、例えば、白髪や退色した状態となった毛髪やその頭皮部に適用して、もとの黒髪、栗毛、金髪、赤毛等の状態にしたり、より有色に着色した状態にしたりすること等を意味している。
【0021】
よって、本発明における有効成分とは、上記毛髪色素増強の機能性を発揮することができる成分のことであり、色素幹細胞、毛包幹細胞、メラノサイト、毛母細胞、毛乳頭細胞、メラノソーム等の毛髪色素に関与するいずれかの細胞に作用して、その毛髪色素の産生を促進する成分である。
【0022】
本発明において、毛髪色素増強剤は溶液、ジェル、ムース、クリーム等のいずれかで一剤型の形態で用いられるが、好ましくは溶液(分散液を含む)の一剤型の形態(例えばトニックやローション)で用いられる。尚、一剤型の形態とは、複数の薬剤を頭皮にかけて効果を発揮させるのではなく、本発明の毛髪色素増強剤を含む単一の薬剤を溶液、ジェル、ムース、クリーム等の形態で用いることを意味する。
【0023】
本発明における有効成分は、没食子酸及び没食子酸誘導体の少なくとも1種であるがそれらについて説明する。没食子酸は3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸またはその塩であり、下記(1)の構造を有する化合物である。ヒドロン(H
+)以外のX
+は、有機もしくは無機のカチオンである。代表的なものはアンモニウムイオンもしくはアルカリ金属イオンである。
【0025】
没食子酸誘導体は、没食子酸から誘導される化合物を指すが、それらは化学合成による誘導体でも、天然物から単離される誘導体でも構わない。本発明の没食子酸誘導体は加水分解により没食子酸を遊離できる化合物であることが好ましい。化学合成で誘導できる本発明の好ましい化合物は下記一般式(I)で表される。
【0027】
一般式(I)におけるArは、置換、無置換のアリール基を表し、好ましくは置換、無置換のフェニル基である。置換のアリール基の場合、有してもよい置換基に特に制限はないが加水分解して生ずるフェノールが生体に悪影響を与えないものであることが好ましい。有してもよい置換基の好ましい具体例をあげれば、アルキル基、アリール基、水酸基、カルボン酸基、もしくはエステル基であり、特に好ましい基は水酸基もしくはカルボン酸基である。置換基は同一のものもしくは異なるものがアリール基に複数置換していてよい。
【0028】
一般式(I)で表される好ましい化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0030】
天然物から単離される没食子酸誘導体の中で、本発明において特に好ましい化合物は加水分解型タンニンである。タンニンの語源は、「皮なめし(tanning)」に由来している。生皮から皮革への皮なめし効果は、生皮のコラーゲンとタンニンとの相互作用(表面に難溶性複合体皮膜を形成)に基づくものである。タンニンは、タンパク質や多糖体などの高分子化合物、アルカロイドなどの塩基性化合物、重金属などに強い親和性を示し、それらとの複合体を形成しやすい性質を持つ天然ポリフェノール群である。そのタンニンには縮合型タンニンと加水分解型タンニンがある。その中で加水分解型タンニンは加水分解により没食子酸を遊離するものであり、本発明において好ましいタンニンである。(参照:有機合成化学協会誌、2004、62、94-101)
【0031】
本発明において好ましい加水分解型タンニンは、タラタンニン、チェストナットタンニン、ミラボラムタンニン、五倍子タンニン(タンニン酸)、オークタンニン、茶タンニン等であり、特に好ましい加水分解型タンニンは、タラタンニンと五倍子タンニン(タンニン酸)である。タラタンニンは、南米ペルーで生育するタラ(学名:Caesalpinia spinosa Kuntze. 英語:Tara 西語:Tara)というマメ科の植物の実のさや(莢)から抽出される加水分解型タンニンであり、五倍子タンニンは、ウルシ科の落葉小喬木、ヌルデ並びに同属植物にアブラムシ科の昆虫(ヌルデニミミブシアブラムシ)が刺傷を作ることによって生じた虫こぶを乾燥させたものから得られる加水分解型タンニンである。両者とも多くの化合物の混合物であるが(概略の構造を下記に示した)、いずれもアリールエステルの形で結合した没食子酸部位を含有することが特徴である。
【0033】
本発明の毛髪色素増強剤において、没食子酸および没食子酸誘導体(タラタンニンやタンニン酸など)の含有量には特に制限はないが、溶液(例えばトニックやローション)の形態の場合、0.01〜20質量%であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜10質量%である。ジェル又はクリームの形態の場合は、沈殿等の問題がないためより高い含有量が可能となるが、好ましくは0.05〜50質量%であり、特に好ましくは0.1〜30質量%である。
【0034】
本発明の毛髪色素増強剤が一剤型の溶液(分散液を含む)、ジェル、ムース、クリーム等の形態で用いられる場合、サポニン類の少なくとも一つを含有することがその白髪防止・改善効果を向上させるために好ましい。サポニンとはサポゲニンと糖から構成される配糖体の総称であり、オレアナン系、ダンマラン系、およびステロイド系サポニンに大別される。
【0035】
オレアナン系サポニンとしては、オンジ、モクツウ、キキョウ、サイコ、セネガ、カンゾウ、ゴシツ、チクセツニンジンV、およびキラヤ等のサポニンがあり、ダンマラン系サポニンとしては、ニンジン、タイソウ、チクセツニンジンIII、トラガント、およびオウギ等のサポニンがあり、ステロイド系サポニンとしては、ヤマノイモ、チモ、バクモンドウ、ジギタリス、およびサルサ等のサポニンがある。
【0036】
本発明において、好ましいサポニンはサイコサポニン、キラヤサポニン、チクセツニンジンサポニンおよびサルササポニンであり、特に好ましくはキラヤサポニンとサルササポニンである。これらの添加量は、0.05〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜8質量%である。
【0037】
本発明の毛髪色素増強剤の効果をさらに高めるためには、糖類、アミノ酸類、ビタミンおよび補酵素類、ミネラル類、あるいはピルビン酸等を含有することも好ましい。ここで糖類には、単糖類、二糖類および多糖類があるが、単糖類と二糖類が好ましく、特に好ましいものとして、グルコース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、スクロース、マルトース等を挙げることができる。また、アミノ酸類としては、必須アミノ酸と非必須アミノ酸があるが、好ましいアミノ酸として、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−リシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アルギニン、L−シスチン、L−グルタミン、L−セリン、L−チロシン等を挙げることができる。これらの添加量は、好ましくは0.05〜20質量%であり、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0038】
ビタミンおよび補酵素類としては、ビタミンA,ビタミンD,ビタミンE、ビタミンB1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)、B6(ピリドキシン)、B8(葉酸)、B12(コバラミン)、ビオチン、コリン、リポ酸、イノシトール等を挙げることができ、好ましいものとして、ビタミンB1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)、B6(ピリドキシン)、B8(葉酸)、ビオチン、コリン、リポ酸、イノシトール、ミオイノシトール等を挙げることができる。これらの添加量は、好ましくは0.01〜2質量%であり、特に好ましくは0.05〜1質量%である。
【0039】
ミネラル類としては、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等の塩化物、塩酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩等を挙げることができる。これらの中で、カルシウムが特に重要で、50ppm以上が好ましく、100〜500ppmがより好ましい。また、ミネラル類の総含量としては0.3〜12質量%が好ましく、特に好ましくは0.5〜8質量%である。
【0040】
本発明の毛髪色素増強剤の効果をさらに高めるためには、マメ亜科トビカズラ属植物の植物エキスを含有することも好ましい。マメ亜科トビカズラ属植物としては、その中でもムクナ属が好ましく、特に、例えば、ムクナプルリエンス(学名:mucuna pruriens,和名:ビロード豆)、ハッショウ豆(学名:Stizolobium hassjoo)、猫豆(学名:Mucuna cochinchinensis)、トビカズラ(学名:Mucuna japonica)等が好ましい。植物エキスは、花、葉、茎、根等すべての部位の抽出物が利用されるが、種子の抽出物が最も有効である。植物エキスの調製のための抽出は、適宜当業者に周知の方法に準じて行うことができ、例えば、未乾燥もしくは乾燥した種子を粉砕し、これに水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ジオール類(プロピレングリコール、ブチレングリコール等)もしくはそれらの混合溶媒を添加して、その抽出処理後に溶媒を留去する、等の方法が挙げられる。これらムクナ属植物の植物エキスの添加量は、そのエキス中の有効成分量によっても変動するが、好ましくは0.05〜10質量%であり、特に好ましくは0.1〜3質量%である。
【0041】
本発明では必要に応じてさらに他の成分、例えば、界面活性剤、浸透促進剤、保湿剤、血行促進剤、抗炎症剤、抗酸化剤、紫外線防止剤、抗菌剤、細胞増殖促進剤、細胞分化誘導剤、香料、油脂、オイル、酵素、清涼剤等を添加してもよい。例えば、ピペリンおよびカプサイシンなどの血行促進剤、ナリンゲニンなどの細胞増殖促進剤、フォルスコリンなどの細胞分化誘導剤、椿油およびスクワランなどのオイル、チロシナーゼなどの酵素等である。好ましい他の成分の添加量は0.01〜10質量%であり。好ましくは0.1〜5質量%である。
【0042】
本発明の毛髪色素増強剤が溶液(分散液を含む)の場合、用いられる主要な溶媒は水であるが、前記添加物が水に溶解しにくい場合は化粧料に添加することが認められている有機溶媒を使用することができる。例えばエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコールもしくはグリセリンなどの有機溶媒を使用することができるが、その使用量は20質量%未満であることが好ましい。
【0043】
本発明の毛髪色素増強剤の効果は、重金属イオン、とりわけ鉄イオンの存在によって阻害される。重金属イオンが存在すると、おもにその鉄イオンが着色錯体を形成して没食子酸や没食子酸誘導体が不溶化し、それらの毛穴からの吸収が阻害されてしまうためと思われる。本発明の溶液(分散液を含む)、ジェル、ムース、クリーム等の形態においては、実質的に重金属イオンを含まないことが好ましい。
【0044】
本発明の毛髪色素増強剤への添加物が水に極めて難溶解な化合物の場合、水にナノ分散して溶液にすることが必要になる。体積平均粒径200nm以下にナノ分散させると頭皮から毛根への浸透性が向上し、その機能を好適に使用することができる。体積平均粒径は、浸透性向上の観点から100nm以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1〜14、比較例1〜4]〜ヒト皮膚三次元培養モデルを用いたメラニン色素生成試験〜
(1)メラニン色素生成用皮膚外用剤の調製
各実施例及び各比較例の試料溶液(表1参照)を下記の組成で調製した。
・有効成分 表1に記載の添加量
・プロピレングリコール 5質量%
・水 全量が100質量%になるように調整
タラタンニンは、川村通商製タラタンニンを用いた。
キラヤサポニンは、丸善製薬製キラヤニンD−100を、また、サルササポニンは、丸善製薬製サラキープALSを用いた。なお、キラヤニンD−100は、キラヤサポニン:25質量%、プロピレングリコール:15質量%、及び水:60質量%からなり、サラキープALSは、サルササポニン:7.5質量%、水:42.5質量%、エタノール:50質量%からなるため、純分換算を行った。
また、その他の有効成分は市販試薬を使用した。
【0047】
[ヒト皮膚三次元培養モデルの培養]
MatTek社製ヒト皮膚三次元培養モデルMEL−300A(8mm)及び培地としてEPI-100NMM113を用い、5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で3週間培養した。その間、第1日目から1日おきに試料溶液を50μlずつ添加すると共に培地を交換した。
【0048】
[吸光度の測定]
ヒト皮膚三次元培養モデルを3週間培養後、培養カップ中のメンブレンを打ち抜き、1N−水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加え、90℃の湯浴中で3時間激しく振とうして細胞を分解した。0.45μのフィルターを通して濾過し、濾液をマイクロプレートリーダーで吸光度測定した(波長:405nm)。
【0049】
【表1】
【0050】
結果を表1に示したが、タラタンニン、タンニン酸は高い吸光度を示し、高濃度に発色したことが分かる。特に、タラタンニンとキラヤサポニンを併用したものは、さらに高い吸光度を示した。また、没食子酸と没食子酸フェニルも比較的高い吸光度を示した。
【0051】
一方、
図1に示すように、実施例4,6,7,8,11及び比較例1,3におけるヒト皮膚三次元培養モデルMEL−300Aカップ写真の結果から、実施例4,6,7,8,11は、比較例1,3よりも発色濃度が極めて高いことが分かる。
【0052】
[実施例15〜18、比較例5〜6]〜ヒト試験〜
「ヘアートニックの調製」
(1)タラタンニン2gを水200mlで希釈してヘアートニックAを調製した(タラタンニンとして1質量%溶液)。
(2)タラタンニン2gとキラヤニンD−100溶液(丸善製薬製キラヤサポニン25%、水60%、プロピレングリコール15%水溶液)8gを水200mlで希釈してヘアートニックBを調製した(タラタンニンおよびキラヤサポニンとして1質量%溶液)。
(3)有効成分を用いない水溶液を用いてヘアートニックCを調製した。
【0053】
[ヒト試験]
頭髪の1/5〜1/4が白髪化した40〜60歳の男女各15名を10名ずつの3つのグループ(各グループは男性5名と女性5名とからなる)に分けた。実施例15においては男性5名に対して前記ヘアートニックAを用い、実施例16においては女性5名に対して前記ヘアートニックAを用いた。また、実施例17においては男性5名に対して前記ヘアートニックBを用い、実施例18においては女性5名に対して前記ヘアートニックBを用いた。さらに、比較例5においては、男性5名に対して前記ヘアートニックCを用い、比較例6においては女性5名に対して前記ヘアートニックCを用いた。
各実施例・比較例において、毎日、入浴後就寝前と起床後の2回/日、各ヘアートニックを1ml/回、3ヶ月間、頭頂部に塗布、塗布部のマッサージを行って頭皮に浸透させた。
【0054】
効果の判定は、試験前後に、毛根に近い部分(頭皮から3cmの範囲)の写真撮影を行い、白毛が黒化した割合を測定して80%以上黒化した時は◎、30〜80%が黒化した時は○、30%未満の場合は×とした。
【0055】
【表2】
【0056】
結果を表2に示したが、本発明のタラタンニンおよびタラタンニン/キラヤサポニンの有無により明確な差異が認められ、本発明のタラタンニンが白髪改善効果を有することが認められた。特に、タラタンニンにキラヤサポニンを併用した場合に顕著な白髪改善効果が認められた。また、男女間で有意な差は認められなかった。
【0057】
[実施例19]毛髪色素増強剤分散液の調製とヒト試験
1.0gのタラタンニンと水に極めて難溶なフォルスコリン(細胞分化誘導剤)0.1gをエタノール5gに溶解した後、0.45μmのミクロフィルター(ザルトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除きa液(6.1g)を調製した。次に、ノニオン系界面活性剤である1.0gのキラヤサポニン(東京化成製サポニンを使用)を蒸留水(92.9g)に溶解した後、0.45μmのミクロフィルター(ザルトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除きIb液(93.9g)とした。Ia液とb液とをT字型マイクロミキサーを用いて下記の手順でナノ分散を行った。すなわち、等価直径250μmのT字型マイクロミキサーの二つの入り口に1/16インチのテフロン(登録商標)チューブを接続し、その先にそれぞれIa液とIb液を入れたシリンジを繋ぎ、シリンジポンプにセットした。出口には1/16インチのテフロンチューブを接続し、その出口には捕集用のサンプル瓶をセットした。Ia液を0.20g/min、Ib液を3.12g/minの送液速度にて20分間送り出した。サンプル瓶の捕集された透明な分散液を試料15とした。試料15におけるタラタンニンの濃度は1.0質量%、フォルスコリンの濃度は0.1質量%、キラヤサポニンの濃度は1.0質量%、そしてエタノールの濃度は5.0質量%である。試料15の粒子径測定を行ったところ体積平均粒径Mvは28nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.25であった。
【0058】
[比較例7]
上記a液からタラタンニンを除く以外は同様にしてフォルスコリンを含むエタノール溶液であるa’液(5.1g)を調製した。さらに、水を1g増量する以外は同様にしてキラヤサポニンを含むb’液(94.9g)を調製した。それらを上記と同様にT字型マイクロミキサーにセットしてIa’液を0.17g/min、Ib’液を3.15g/minの送液速度にて20分間送り出した。サンプル瓶の捕集された透明な分散液を比較試料5とした。比較試料5におけるフォルスコリンの濃度は0.1質量%、キラヤサポニンの濃度は1.0質量%、そしてエタノールの濃度は5.0質量%である。比較試料5の粒子径測定を行ったところ体積平均粒径Mvは27nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.26であった。
【0059】
[ヒト試験]
実施例19の試料15と比較例7の比較試料5を用いて、実施例15〜18に記載の方法と同様にしてヒト試験を行った。その結果、試料15を使用した場合は90%の黒化が観測され効果の評価は◎レベル、比較試料5を使用した場合は65%の黒化にとどまり効果の評価は○レベルであった。この結果より、タラタンニンを添加することにより白髪防止能が増強されることが明らかとなった。
【0060】
[実施例20〜32、比較例8]〜中規模ヒト試験(試験期間3ヶ月)〜
(1)ヘアートニックの調製
表3に示す各種有効成分を適宜選択し、その表に示す各成分の含有量となるように、精製水150mlおよびブチレングリコール50mlに溶解させて、後述の表4に示すヘアートニックA’、B’,D〜Nを調製した。なお、表3、4において、タラタンニンをTT,キラヤサポニンをQS、糖類をS、アミノ酸類をAA、ビタミンおよび補酵素類をV、ミネラル類をM、ムクナプルリエンス種子エキスをMPと表記した。
【0061】
(2)比較溶液の調製
精製水150mlおよびブチレングリコール50mlの混合物を調製してヘアートニックC’とした。
【0062】
【表3】
【0063】
[ヒト試験]
頭髪の1/3〜2/3が白髪化した50〜65歳の女性140名を10名ずつの14のグループに分けた。実施例20〜32において、表4のヘアートニックA’、B’,D〜〜Nを用い、比較例8においては、有効成分を含まないヘアートニックC’を用いた。
各実施例・比較例において、毎日、入浴後就寝前と起床後の2回/日、各ヘアートニックを1ml/回、3ヶ月間、白髪部に塗布、塗布部のマッサージを行って頭皮に浸透させた。
【0064】
効果の判定は、試験前後に、毛根に近い部分(頭皮から3cmの範囲)の写真撮影を行い、白毛が黒化した割合を測定して50%以上黒化した時は◎、20〜50%が黒化した時は○、20%未満の場合は×とした。
【0065】
【表4】
【0066】
結果を表4に示したが、白髪率の高い高齢女性においても、本発明のタラタンニンが明確な白髪改善効果を有することが認められた。また、キラヤサポニン、糖類、アミノ酸類、ビタミン類、補酵素類、ミネラル類などの添加により、白髪改善効果が向上することが認められた。さらに、マメ亜科ムクナ属植物であるムクナプルリエンスの種子エキスを併用すると白髪改善効果が一層増強されることが認められた。