【実施例】
【0015】
以下に本発明の一実施例による栽培中作物の生育状態測定装置について説明する。
図1(a)は本発明の一実施例による栽培中作物の生育状態測定装置を示すブロック図、
図1(b)は同生育状態測定装置が測定対象とする植物の測定部位を示す図、
図1(c)は、同測定部位に装着する生体保持構造体を示す図である。
【0016】
本実施例による栽培中作物の生育状態測定装置は、植物1の測定部位1a、1b、1cに対する照射光を発生する光源11と、光源11の照射タイミングを制御する投光制御部12と、測定部位1a、1b、1cからの検出光を受光する受光部13と、受光部13の受光タイミングを制御する受光制御部14と、受光部13で受光した検出光から、植物1の栄養状態を示す成分量を算出する演算部15と、演算部15で算出した成分量を時刻情報とともに記憶する記憶部16とを備えている。
また、本実施例による栽培中作物の生育状態測定装置は、植物1の測定部位1a、1b、1cに装着する生体保持構造体20と、光源11で発生させた照射光を測定部位1a、1b、1cに導く投光ファイバ17と、測定部位1a、1b、1cからの検出光を受光部13に導く受光ファイバ18とを備えている。
【0017】
ここで、測定対象となる植物1は、収穫前の生育段階にある栽培中作物であり、測定部位1aは茎、測定部位1bは果柄、測定部位1cは葉柄である。
光源11には、ウォーミングアップ時間が無く、時間応答性の高い発光ダイオードを用いることが好ましく、波長の異なる複数の発光ダイオードを用いる。
【0018】
受光部13に分光器を用いる場合には、投光制御部12では、複数の発光ダイオードの照射タイミングを同じとする。受光部13に分光器を用い、複数の発光ダイオードの照射タイミングを同じとすることで、限られた時間で投光時受光信号を得ることができるため、環境光の変化の影響を受けにくい。
受光部13にフォトダイオードを用いる場合には、投光制御部12では、それぞれの発光ダイオードの照射タイミングを異ならせる。受光部13に簡易なフォトダイオードを用いることで安価に装置を構成できる。
【0019】
投光制御部12での光源11の照射時間(パルス幅)は、環境光の変動に対応するために十分に早い時間、例えば1/10秒〜1/1000秒の時間とすることが好ましい。さらに、一回の受光測定時間は、前述の照射時間で瞬時に完結するため、複数回の測定データを積算化、又は平均化することにより測定データの精度を向上できる。
非投光時受光信号の検出は、照射タイミングに限りなく近い時間が好ましいが、照射タイミングの直前は一つ前の照射時間の後、照射タイミングの直後は一つ後の照射時間の前であればよい。
【0020】
植物1の栄養状態を示す成分量には、硝酸態窒素量、炭水化物量、タンパク質量、ミネラル成分量、抗酸化物質量、及び水分量の少なくともいずれか一つを含む。
【0021】
演算部15では、光源11の照射タイミングでの検出光による投光時受光信号と、照射タイミングの直前又は直後での検出光による非投光時受光信号との差分を用いて演算処理する。このことで、特に栽培環境下で最も強いノイズである太陽光(直流光)の影響をキャンセルでき、環境光とのS/Nを向上させることができるので、収穫前の生育段階にある栽培中作物に対して、非接触・非破壊で、植物1の栄養状態を連続測定できる。
【0022】
図2は、本実施例による生育状態測定装置における投光制御部での出力信号と、受光部での受光信号を示している。
図2(a)は投光制御部での出力信号、
図2(b)は外乱光によるノイズが影響する場合の受光部での受光信号、
図2(c)は昼間の太陽光が影響する場合の受光部での受光信号、
図2(d)は夜間の受光部での受光信号をそれぞれ示している。
演算部15では、投光時受光信号から、照射タイミングの直前又は直後での非投光時受光信号を減算することで、外乱光や太陽光の影響をキャンセルできる。
【0023】
図3は、受光部にフォトダイオードを用いた場合の本実施例による生育状態測定装置における投光制御部での出力信号と、受光部での受光信号を示している。
投光制御部12では、それぞれの発光ダイオードの照射タイミングを異ならせることで、それぞれの発光ダイオードによる投光時受光信号を得ることができる。この場合にも、演算部15では、発光ダイオードaによるLEDa投光時受光信号から、LEDa投光時受光信号の直前での非投光時受光信号を減算し、発光ダイオードbによるLEDb投光時受光信号から、LEDb投光時受光信号の直前での非投光時受光信号を減算し、発光ダイオードcによるLEDc投光時受光信号から、LEDc投光時受光信号の直前での非投光時受光信号を減算することで、外乱光や太陽光の影響をキャンセルできる。
【0024】
図4は、本実施例による生育状態測定装置に用いる生体保持構造体を示す構成図である。
図4(a)は、細い茎、果柄、又は葉柄を配置した状態、
図4(b)は、太い茎、果柄、又は葉柄を配置した状態を示している。
生体保持構造体20は、第1V溝21Aを形成した第1構造体22Aと、第2V溝21Bを形成した第2構造体22Bと、第1構造体22Aと第2構造体22Bとを連結する連結部材23とを有し、照射光を導く投光ファイバ17の端部17aを第1V溝21Aの頂部21xに配置し、検出光を導く受光ファイバ18の端部18aを第2V溝21Bの頂部21yに配置している。
測定部位1a、1b、1cである茎、果柄、又は葉柄は、第1V溝21A及び第2V溝21Bに配置する。
【0025】
第1構造体22Aと第2構造体22Bとは、連結部材23によって、
図4(a)に示すように当接させることも、また
図4(b)に示すように、離間させることもできる。
このように、投光ファイバ17の端部17aを第1V溝21Aの頂部21xに配置し、受光ファイバ18の端部18aを第2V溝21Bの頂部21yに配置することで、測定部位1a、1b、1cを透過した照射光を、検出光として測定に用いることができる。
【0026】
図5は、本実施例による生育状態測定装置に用いる生体保持構造体の他の実施例を示す構成図である。
図5に示す実施例では、照射光を導く投光ファイバ17の端部17aを第1V溝21Aの頂部21xに配置し、検出光を導く受光ファイバ18の端部18aを第1V溝21Aの斜辺に配置し、測定部位1a、1b、1cで反射した照射光を、検出光としている。本実施例によれば、測定部位1a、1b、1cで反射した照射光を測定に用いることができる。
なお、特に本実施例では、第1V溝21Aを45°にすることが好ましい。第1V溝21Aを45°とすることで、投光ファイバ17からの照射光に対して、45°の角度で検出光を受光ファイバ18で受けることができる。
【0027】
図6は、第1V溝のV溝角度と投光ファイバの最大出射角、及び第2V溝のV溝角度と受光ファイバの最大入射角との関係を示す説明図である。
図6(a)は、投光ファイバ17の最大出射角θmax又は受光ファイバ18の最大入射角θmaxと、光の広がりWとの関係を示している。
なお、投光ファイバ17又は受光ファイバ18のNAと最大出射角θmax又は最大入射角θmaxとの関係は、NA=sinθmaxである。
図6(b)に示すように、測定部位1a、1b、1cである茎、果柄、又は葉柄の直径をDとすると、光の広がりWが直径Dより小さい場合には、投光ファイバ17からの照射光を全て植物1の測定部位1a、1b、1c内に照射することができ、また植物1の測定部位1a、1b、1cを透過ないしは反射した参照光を効率よく受光し、同時に測定部位以外から回り込む外乱光の受光を極力避けることができる。
従って、
図6(c)に示すように、第1V溝21AのV溝角度θvを、投光ファイバ17の最大出射角θmaxより大きくし、又は検出光を導く受光ファイバ18の端部18aを第2V溝21Bの頂部21yに配置する場合には、第2V溝21BのV溝角度θvを、受光ファイバ18の最大入射角θmaxより大きくすることで、効果的な測定を行える。
なお、第1V溝21AのV溝角度θv、及び第2V溝21BのV溝角度θvを45°とした場合には、投光ファイバ17の最大出射角θmax、及び受光ファイバ18の最大入射角θmaxを45°より小さくする。
【0028】
本実施例による生体保持構造体20によれば、植物1を傷つけることなく、測定部位1a、1b、1cである茎、果柄、又は葉柄に装着することができ、収穫前の生育段階にある栽培中作物に対して、非破壊で植物1の栄養状態を連続測定できる。