【文献】
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【文献】
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【文献】
Milori,D.M.B.P.,Organic matter study of whole soil samples using laser-induced fluorescense spectroscopy.,Soil ScienceSociety of America Journal,2006年,70,57-63
【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記推定部は、前記計測部から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差のうち一又は複数の項目であって分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質と相関を有する項目に基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定する、請求項1に記載の土壌分析装置。
前記推定部において、前記計測部から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値並びに当該項目の周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方の少なくとも何れかに基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定するための項目を抽出する、請求項1に記載の土壌分析装置。
前記推定部は、前記検出信号から前記励起信号に対する複素振幅比を求め、前記記憶部に記憶された異なる複数の土壌における前記土壌地力形質の定量値と対応する検出信号の複素振幅比との間の回帰分析に基づく回帰式により前記土壌地力形質を推定する、請求項1に記載の土壌分析装置。
前記複素振幅比は絶対振幅比と位相差又は実部と虚部で表され、前記回帰式は絶対振幅比と位相差又は実部と虚部をそれぞれ独立変数とする、請求項4に記載の土壌分析装置。
前記推定部は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と前記センサにより交番磁界を印加して前記計測部を用いて処理した検出信号とから、PLS(Partial Least Squares)回帰分析をして前記記憶部に記憶するデータを生成する、請求項1に記載の土壌分析装置。
前記推定部は、前記計測部から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差のうち一又は複数の項目であって分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質と相関を有する項目に基いて、かつ、前記光計測部で計測した蛍光のスペクトルデータのうち、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質と相関を有するデータに基いて、分析対象となる土壌の土壌地力形質を推定する、請求項7に記載の土壌分析装置。
前記推定部は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と、前記センサにより交番磁界を印加して前記計測部を用いて処理した検出信号と、前記光照射部により励起光が照射され、前記光計測部で計測した蛍光のスペクトルデータとから、PLS回帰分析をして前記記憶部に記憶するデータを生成する、請求項7に記載の土壌分析装置。
前記複素振幅比は、絶対振幅比と位相差又は実部と虚部で表され、前記回帰式は絶対振幅比と位相差又は実部と虚部をそれぞれ独立変数とする、請求項11に記載の土壌分析方法。
前記回帰式は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と前記土壌を透過した磁界による検出信号から、PLS回帰分析をして生成する、請求項11又は12に記載の土壌分析方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蛍光スペクトルの解析によって推定される塩基置換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)は、可給態窒素、可給態リン酸、全炭素、全窒素、CN比などの他の土壌地力形質と同程度に精度良く求められていないという課題がある。また、土壌からの蛍光を計測するため、水等の分散媒質を用いる際、濁り等があると、蛍光を上手く測定できないという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、土壌の地力を評価するための指標としてのCECを含む土壌地力形質を精度よく求められる土壌分析装置及び土壌分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のコンセプトを有する。
[1] コイルを有するセンサと、
分析対象となる土壌へ交番磁界を印加するために、前記コイルに入力する励起信号を周波数毎に生成すると共に、分析対象となる土壌へ交番磁界を印加することにより前記コイルから出力される検出信号を処理する計測部と、
成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と前記センサ及び前記計測部を用いて計測した処理後の検出信号から求めたCECを含む土壌地力形質の推定値との相関に関するデータを記憶する記憶部と、
分析対象となる土壌に対して前記センサにより交番磁界を印加して前記計測部を用いて処理した検出信号に基いて、前記記憶部に記憶されているデータを用いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定する推定部と、
を備える、土壌分析装置。
[2] 前記推定部は、前記計測部から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差のうち一又は複数の項目であって分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質と相関を有する項目に基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定する、前記[1]に記載の土壌分析装置。
[3] 前記推定部において、前記計測部から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値並びに当該項目の周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方の少なくとも何れかに基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定するための項目を抽出する、前記[1]に記載の土壌分析装置。
[4] 前記推定部は、前記検出信号から前記励起信号に対する複素振幅比を求め、前記記憶部に記憶された異なる複数の土壌における前記土壌地力形質の定量値と対応する検出信号の複素振幅比との間の回帰分析に基づく回帰式により前記土壌地力形質を推定する、前記[1]に記載の土壌分析装置。
[5] 前記複素振幅比は、絶対振幅比と位相差または実部と虚部で表され、前記回帰式は絶対振幅比と位相差または実部と虚部をそれぞれ独立変数とする、前記[4]に記載の土壌分析装置。
[6] 前記推定部は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と前記センサにより交番磁界を印加して前記計測部を用いて処理した検出信号とから、PLS(Partial Least Squares)回帰分析をして前記記憶部に記憶するデータを生成する、前記[1]に記載の土壌分析装置。
[7] コイルを有するセンサと、
分析対象となる土壌へ交番磁界を印加するために、前記コイルに入力する励起信号を周波数毎に生成すると共に、分析対象となる土壌へ交番磁界を印加することにより前記コイルから出力された検出信号を処理する計測部と、
分析対象となる土壌に励起光を照射する光照射部と、
前記光照射部の照射により分析対象となる土壌からの蛍光を計測する光計測部と、
成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と、前記センサ及び前記計測部を用いて計測した処理後の検出信号及び前記光照射部及び前記光計測部を用いて計測した蛍光のスペクトルデータから求めたCECを含む土壌地力形質の推定値と、の相関に関するデータを記憶する記憶部と、
分析の対象となる土壌に対して前記センサにより交番電界を印加して前記計測部を用いて処理した検出信号と前記光照射部により励起光を照射して前記光計測部で計測した蛍光のスペクトルデータとに基いて、前記記憶部に記憶されているデータを用いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定する推定部と、
を備える、土壌分析装置。
[8] 前記推定部は、前記計測部から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差のうち一又は複数の項目であって分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質と相関を有する項目に基いて、かつ、前記光計測部で計測した蛍光のスペクトルデータのうち、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質と相関を有するデータに基いて、分析対象となる土壌の土壌地力形質を推定する、前記[7]に記載の土壌分析装置。
[9] 前記推定部において、
前記計測部から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値並びに当該項目の周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方の少なくとも何れかに基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定するための項目を抽出し、
前記光計測部から出力された蛍光のスペクトルデータの周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方に基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定するための蛍光のスペクトルデータを抽出する、前記[7]に記載の土壌分析装置。
[10] 前記推定部は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と、前記センサにより交番磁界を印加して前記計測部を用いて処理した検出信号と、前記光照射部により励起光が照射され、前記光計測部で計測した蛍光のスペクトルデータとから、PLS回帰分析をして前記記憶部に記憶するデータを生成する、前記[7]に記載の土壌分析装置。
[11] 任意の周波数毎に励起信号を発生させ、分析対象となる土壌に対して交番磁界を照射させるステップと、
前記土壌を透過した磁界による検出信号から、前記励起信号に対する複素振幅比を求めるステップと、
予め記憶された、異なる複数の土壌におけるCECを含む土壌地力形質の定量値と対応する検出信号の複素振幅比との間の回帰分析に基づく回帰式により、CECを含む土壌地力形質の推定値を求めるステップを含む、土壌分析方法。
[12] 前記複素振幅比は、絶対振幅比と位相差または実部と虚部で表され、前記回帰式は絶対振幅比と位相差又は実部と虚部をそれぞれ独立変数とする、前記[11]に記載の土壌分析方法。
[13] 上記回帰式は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と上記土壌を透過した磁界による検出信号から、PLS回帰分析をして生成する、前記[11]又は[12]に記載の土壌分析方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、土壌の地力を評価するための指標としてのCECを含む土壌地力形質を精度よく求められる土壌分析装置及び土壌分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の範囲において適宜変更して実施することが制限されるものではない。
【0011】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る土壌分析装置の構成図である。第1実施形態に係る土壌分析装置1は、センサ10と、計測部20と、データ処理部30とを備えて構成される。
【0012】
センサ10は、コイルとしての励起コイル11及び検出コイル12と、磁路形成部13とを備える。センサ10は、外部磁界を遮断するために例えば金属製のセンサ保持部14内に収容され、センサ保持部14の開口部にサンプル収容部15が配置される。センサ10は、例えば、センサ保持部14内で図示しない非磁性の隙間充填物で支持されている。磁路形成部13は、例えば底部13aと円筒部13bと軸部13cとからなり、底部13aが円筒部13bと軸部13cとを支持して構成される。励起コイル11と検出コイル12とが軸部13cに装着されている。センサ10は、励起コイル11と磁路形成部13とで形成される磁路に検出コイル12及びサンプル収容部15が配置されるため、サンプル収容部15内の分析対象の透磁率等に応じて検出コイル12で検出される信号に影響を与えることができる。センサ10は一例であって同様な作用を有するものでもよい。例えば、励起コイル11と検出コイル12とが一つのコイルで構成されてもよい。
【0013】
計測部20は、発振部21と信号処理部22と制御部23とを備える。発振部21は、或る周波数の信号を繰り返し発生し、信号の周波数を段階的に増加したり減少したりする。発振部21から発振した信号は、励起信号と参照信号とに分岐され、励起信号は励起コイル11に伝達されると共に信号処理部22に参照信号として出力される。信号処理部22は、検出コイル12からの検出信号について、発振部21からの参照信号を用いて、励起信号に対する検出信号の時間的変化を算出する。信号処理部22はフーリエ変換機能を有しており、時間軸の信号を周波数軸の信号に変換する。また、信号処理部22は、センサ10からの検出信号のデジタル化を行い、データ処理部30に出力する。制御部23は、データ処理部30との間でデータ及び各種制御信号を入出力すると共に、発振部21及び信号処理部22を制御する。
【0014】
本実施形態では、データ処理部30は、信号処理部22で処理した検出信号についてのデジタルデータから土壌地力形質の一つである土壌のCECの推定を行う。データ処理部30は、制御部23とのインターフェースをする入出力インターフェース部31と、主記憶装置及び補助記憶装置を備える記憶装置32と、四則演算等の演算処理を行う演算装置と、記憶装置及び演算装置を制御する制御装置とを備えるコンピュータで構成され、データ処理プログラムが補助記憶装置に格納されており、データ処理プログラムが演算装置に展開されて実行されることにより、データ処理部30は
図1に示すような記憶部33及び推定部34を機能的に備える。
【0015】
記憶部33は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECの定量値とセンサ10及び計測部20を用いて計測した処理後の検出信号から求めたCECの推定値との相関に関するデータを記憶する。
【0016】
推定部34は、分析対象となる土壌に対してセンサ10により交番磁界を印加し、計測部20を用いて処理した検出信号に基いて、記憶部33に記憶されているデータを用いて、分析対象となる土壌のCECを推定する。
【0017】
推定部34において、計測部20から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差のうち一又は複数の項目であって分析対象となる土壌のCECと相関を有する項目に基いて、分析対象となる土壌のCECを推定することが好ましい。
【0018】
推定部34では、更に、計測部20から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値並びに当該項目の周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方の少なくとも何れかに基いて、分析対象となる土壌のCECを推定するための項目を抽出することが好ましい。即ち、推定部34において、分析対象となる土壌のCECを推定するための項目を抽出する基準として、第1に、計測部20から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値を用いても、第2に、その当該項目の周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方を用いても、それらの双方を用いてもよい。
【0019】
推定部34は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECの定量値とセンサ10により交番磁界を印加し、計測部20を用いて処理した検出信号とから、PLS回帰分析をして記憶部33に記憶するデータを生成する。このことから、推定部34は、回帰分析部と呼んでもよい。
【0020】
本発明の実施形態に係る土壌分析装置1を用いた土壌分析方法について説明する。先ず、一つの土壌又は成分の異なる複数の土壌を準備し、風乾した後、乳鉢を用いて粉砕し、その風乾粉砕土を土壌試料とする。そして各土壌試料について、例えばショーレンベルガー法によりCECの定量値を求める。ショーレンベルガー法は、非特許文献1に開示されているため、ここでは詳細を省略する。
【0021】
図1に示すサンプル収容部15に各土壌試料を入れ、制御部23の制御の下、発振部21から指定の周波数範囲(例えば数kHz〜数百kHz)において任意の間隔周波数(例えば数kHz)毎に周波数を段階的に増加させながら、各周波数の信号を発振し、励起コイル11に出力する。各周波数の信号毎に、検出コイル12により検出した信号を信号処理部22により処理し、デジタル信号に変換し、データ処理部30に出力する。推定部34において、処理後の検出信号とCECの定量値との間の相関関係を求め、PLS回帰分析を行う。その結果を記憶部33に記憶しておく。相関関係を求める際には、検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値並びに当該項目の周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方の少なくとも何れかに基いてCECを推定するための項目を抽出する。以上により、分析のための準備が完了する。
【0022】
分析対象である土壌について、同様に、風乾した後に乳鉢を用いて粉砕し、サンプル収容部15に収容する。制御部23の制御の下、発振部21から指定の周波数範囲(例えば数kHz〜数百kHz)において任意の間隔周波数(例えば数kHz)毎に周波数を段階的に増加させながら、各周波数の信号を発振し、励起コイル11に出力する。各周波数の信号毎に、検出コイル12により検出した信号を信号処理部22により処理し、デジタル信号に変換し、データ処理部30に出力する。推定部34により、信号処理部22から出力された処理後の検出信号と記憶部33に記憶されているデータとに基いて、分析対象となる土壌のCECを推定する。
【0023】
推定部34では、分析対象である土壌について計測部20からの処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差のうち一又は複数の項目であって、CECと相関を有する項目に基いて、CECの推定値を求める。記憶部33には、異なる複数の土壌についてのCECの定量値と、それらの土壌について信号処理部22で処理された検出信号そのもの、振幅比、位相差の各項目に関する回帰式、平均値等が格納されている。よって、分析しようとする土壌について信号処理部22で処理された検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差が信号処理部22から入力されるので、CECの統計値(例えば平均値)からどの程度、各項目がずれているかを求め、CECの統計値からのずれを加算すれば、CECの値を推定することができる。
【0024】
CECの推定は次のようにしてもよい。計測部20において、発振部21による励起信号がe
in=E
ine
j(2πft)と表され、信号処理部22にセンサ10から入力される検出信号がe
out=E
oute
j(2πft+φ)、と表されるとする。
ここで、E
in、E
outは、励起信号の振幅、検出信号の振幅、fは周波数、tは時間、φは位相差、eは自然対数、jは虚数単位である。すると、励起信号に対する検出信号の振幅比はE
out/E
inで示され、励起信号に対する検出信号の位相差はφで示される。データ処理部30では、検出信号そのもの、E
oute
j(2πft+φ)の実部又は虚部、又は検出信号/励起信号から、振幅比及び位相差が得られるので、検出信号そのもの、振幅比、位相差のうち、1又は複数の項目について、n(≧1)階周波数で微分し、それらの値からCECの相関係数が高いものを選択する。これにより、CECの推定値が次式で求まる。
【0025】
CECの推定値=f(Real(e
in),Ima(e
in),E
out/E
in,φ,
d
ne
out/df
n,d
n(E
out/E
in)/df
n,d
nφ/df
n)
【0026】
このように、推定値が、Real(e
in),Ima(e
in),E
out/E
in,φ,
d
ne
out/df
n,d
n(E
out/E
in)/df
n,d
nφ/df
nの7つのパラメータのうち相関あるパラメータの関数として示される。
【0027】
(センサによる土壌のCECの推定の実証)
次に、本発明の実施形態に係る土壌分析装置1を用いてセンサ10により土壌の透磁率を検出信号として計測することで、土壌のCECの値を精度よく推定することができることを実証する。
【0028】
サンプル収容部15としてPET容器を用いて、風乾粉末土壌を10g量り取り、
図1に示すようにセンサ10にセットした。計測部20の発振部21において、5kHz毎に10kHz〜200kHzの範囲で発振信号を生成し、励起コイル11に出力し、検出コイル12からの検出信号を信号処理部22により取得した。信号処理部22では、検出信号そのもの、振幅比及び位相差に関し、一つの周波数に対して3つ、39個の周波数についてのデータを取得できた。つまり、一サンプル当たりのパラメータ毎に39個であり、一サンプル当たり117個のデータを取得した。
【0029】
次に、このデータについて、10kHz〜100kHzの5kHz毎の間隔での微分値を算出した。つまり、一サンプル当たりのパラメータ毎に19個であり、一サンプル当たり57個のデータを取得した。
【0030】
次に、算出した一次微分値を説明変数とし、ショーレンベルガー法で測定したCECの定量値を目的変数として、PLS回帰分析をした。各n(≧1)個有る検出信号そのもの、位相差、振幅比の値、この値を基にした数値(例えば微分値)を説明変数とし、求める変数を目的変数とすると、目的変数と各説明変数の差の二乗のn個の和を最小化するような目的変数を求める。求められた目的変数をシュレンベルガー法による一つの土壌の具体的数値(CEC値)で規格化すると、他の(n-1)個の土壌のCECの推定値が求まる。
【0031】
図2(a)は検出信号そのものの周波数に関する一次微分値に対するCECの相関係数を示すグラフ、(b)は振幅比の一次微分値に対するCECの相関係数を示すグラフ、(c)は位相差の一次微分に対するCECの相関係数を示すグラフである。これらの値を算出し、CEC推定値を算出した。
図3は、CECの推定値xと定量値yとの関係を示す図である。サンプル数nが29個、潜在変数が5、相関関係はy=x−9×10
−13であり、決定係数R
2が0.8725、二乗平均平方根誤差RMSE(Root Mean Squared Erzror)が1.69であった。
【0032】
さらに、周波数を10kHz〜200kHzまで変化させて同様にPLC回帰分析をした結果、
図4に示すCECの推定値xと定量値yとの関係を示す図が得られ、サンプルが30個、潜在変数が6、相関関係はy=x−2×10
−13であり、決定係数R
2が0.9641、RMSEが0.961であった。よって、周波数の範囲をより好ましい範囲に設定することにより、精度が良くなった。
【0033】
[第2実施形態]
図5は本発明の第2実施形態に係る土壌分析装置の構成図である。第2実施形態に係る土壌分析装置2は、センサ10と、計測部20と、データ処理部40とを備える。第2実施形態に係る土壌分析装置2は
図1に示す土壌分析装置1とは次の構成で異なる。
【0034】
センサ10は暗箱16に収容され、暗箱16内には、光照射部17と光計測部18とがサンプル収容部15に対向するように配置され、インターフェース部19が備えられる。サンプル収容部15中の土壌に対して、励起光を照射して蛍光を計測することができ、かつ、励起コイル11による磁界の印加及び検出コイル12による検出が可能であればよい。例えば、
図1に示すように、サンプル収容部15を挟んで一方にセンサ10を他方に光照射部17及び光計測部18が配置されればよい。特に、サンプル収容部15は土壌を収容しても蓋がされないため、上方に光照射部17及び光計測部18が配置され、下方にセンサ10が配置される。
【0035】
光照射部17は、励起光を発する光源を備えており、サンプル収容部15内の試料に対し、励起光を照射する。光計測部18は、例えば分光器及び光検出器を備えており、サンプル収容部15内の土壌からの蛍光を測定する。インターフェース部19は、光照射部17及び光計測部18を制御すると共に、光計測部18で計測した蛍光スペクトルのデータをデータ処理部40に出力する。
【0036】
データ処理部40は、計測部20の信号処理部22で処理された検出信号のデータと、光計測部18で処理された蛍光スペクトルのデータとを処理する。データ処理部40は、制御部23及びインターフェース部19とのインターフェースをする入出力インターフェース部41と、主記憶装置及び補助記憶装置を備える記憶装置42と、四則演算等の演算処理を行う演算装置と、記憶装置及び演算装置を制御する制御装置とを備えるコンピュータで構成され、データ処理プログラムが補助記憶装置に格納されており、演算装置に展開してデータ処理プログラムが実行されることにより、データ処理部40は
図5に示すような記憶部43及び推定部44を機能的に備える。また、計測制御部45を備え、光照射部17及び光計測部18の制御を行う。
【0037】
記憶部43は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と、センサ10及び計測部20を用いて計測した処理後の検出信号及び光照射部17及び光計測部18を用いて計測した蛍光のスペクトルデータから求めたCECを含む土壌地力形質の推定値との相関に関するデータを記憶する。
【0038】
推定部44は、分析の対象となる土壌に対して、センサ10により交番電界を印加して計測部20を用いて処理した検出信号と、光照射部17により励起光を照射して光計測部18で計測した蛍光のスペクトルデータと、に基いて、記憶部43に記憶されているデータを用いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定する。
【0039】
推定部44は、計測部20から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差のうち一又は複数の項目であって分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質と相関を有する項目に基いて、かつ、光計測部18で計測した蛍光のスペクトルデータのうち、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質と相関を有するデータに基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定する。
【0040】
推定部44において、計測部20から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値並びに当該項目の周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方の少なくとも何れかに基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定するための項目を抽出することが好ましい。また、推定部44において、光計測部18から出力された蛍光のスペクトルデータの周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方に基いて、分析対象となる土壌のCECを含む土壌地力形質を推定するための蛍光のスペクトルデータを抽出することが好ましい。
【0041】
推定部44は、成分の異なる複数の土壌に関し、CECを含む土壌地力形質の定量値と、センサ10により交番磁界を印加して計測部20を用いて処理した検出信号と、光照射部17により励起光が照射され、光計測部18で計測した蛍光のスペクトルデータとから、PLS回帰分析をして記憶部43に記憶するデータを生成する。このことから、推定部44は、回帰分析部と呼んでもよい。
【0042】
本発明の実施形態に係る土壌分析装置2を用いた土壌分析方法について説明する。この方法では、土壌地力形質としてCECのみならず、可給態窒素、可給態リン酸、全窒素、全炭素、CN比の何れか又は複数の組み合わせを求めることができる。最初に、分析対象となる土壌のCECを推定する方法について説明する。
【0043】
先ず、
図1に示す土壌分析装置1を用いた土壌分析方法と同様、一つの土壌又は成分の異なる複数の土壌を準備し、風乾した後、乳鉢を用いて粉砕し、その風乾粉砕土を土壌試料とする。そして各土壌試料について、例えばショーレンベルガー法によりCECの定量値を求める。ショーレンベルガー法は、非特許文献1に開示されているため、ここでは詳細説明を省略する。
【0044】
図5に示すサンプル収容部15に各土壌試料を入れ、制御部23の制御の下、発振部21から指定の周波数範囲(例えば数kHz〜数百kHz)において任意の間隔周波数(例えば数kHz)毎に周波数を段階的に増加させながら、各周波数の信号を発振し、励起コイル11に出力する。各周波数の信号毎に、検出コイル12により検出した信号を信号処理部22により処理し、デジタル信号に変換し、データ処理部40に出力する。
【0045】
またそれと相前後して、サンプル収容部15中の各土壌試料に光照射部17から励起光(例えば一又は複数の波長の紫外線)を照射し、光計測部18により土壌試料からの蛍光のスペクトル(例えば紫外から可視領域のスペクトル)を計測する。蛍光のスペクトルデータはインターフェース部19及び入出力インターフェース部41を経由してデータ処理部40の図示しないバッファーに一時保存される。取得した蛍光スペクトルが離散的である場合には、隣接する波長で移動平均をとってスムージングなどしてもよい。また、蛍光のスペクトルデータを所定の波長間隔毎の離散データになるようデータ処理する。
【0046】
その後、推定部44において、処理後の検出信号と任意の励起光に対する蛍光のスペクトルデータのうち一又は複数の蛍光強度との組み合わせと、CECの定量値との間の相関関係を求め、PLS回帰分析を行う。その結果を記憶部43に記憶しておく。相関関係を求める際には、検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値並びに当該項目の周波数に対する一次微分の値、二次微分の値の何れか又は双方の少なくとも何れかに基いてCECを推定するための項目を抽出する。以上により、分析のための準備が完了する。
【0047】
分析対象である土壌について、同様に、風乾した後に乳鉢を用いて粉砕し、サンプル収容部15に収容する。制御部23の制御の下、発振部21から指定の周波数範囲(例えば数kHz〜数百kHz)において任意の間隔周波数(例えば数kHz)毎に周波数を段階的に増加させながら、各周波数の信号を発振し、励起コイル11に出力する。各周波数の信号毎に、検出コイル12により検出した信号を信号処理部22により処理し、デジタル信号に変換し、データ処理部40に出力する。
【0048】
それと相前後して、サンプル収容部15中の各土壌試料に光照射部17から励起光(例えば一又は複数の波長の紫外線)を照射し、光計測部18により土壌試料からの蛍光のスペクトルデータ(例えば紫外から可視領域のスペクトルデータ)を計測する。蛍光のスペクトルデータについては、インターフェース部19及び入出力インターフェース部41を経由してデータ処理部40の図示しないバッファーに一時保存される。取得した蛍光スペクトルが離散的である場合には、隣接する波長で移動平均をとってスムージングなどしてもよい。また、蛍光のスペクトルデータを所定の波長間隔毎の離散データになるようデータ処理する。
【0049】
その後、推定部44が、信号処理部22から出力された処理後の検出信号と、光計測部18から出力された蛍光のスペクトルデータに基いて、記憶部43に記憶されているデータを用いて、分析対象となる土壌のCECを推定する。
【0050】
推定部44では、分析対象である土壌について計測部20からの処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差のうち一又は複数の項目であって、CECと相関を有する項目に基いて、かつ、蛍光のスペクトルデータのうち、CECと相関を有する項目に基いて、CECの推定値を求める。記憶部43には、異なる複数の土壌についてのCECの定量値と、それらの土壌について信号処理部22で処理された検出信号そのもの、振幅比、位相差の各項目に関する回帰式、平均値等が格納されている。よって、分析しようとする土壌について信号処理部22で処理された検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差が信号処理部22から入力され、かつ光計測部18からの蛍光のスペクトルデータが入力されるので、CECの統計値(例えば平均値)からどの程度、検出信号に関する各項目がずれているかを求め、かつ蛍光強度がどの程度ずれているかを求めることで、CECの統計値からのずれを加算すれば、CECの値を推定することができる。CECの推定値は、
図1を参照して説明した手法について、励起光毎の蛍光データの波長毎の強度そのもの、強度の周波数に関する微分値の関数でもあるとして、求められる。
【0051】
CECの推定値=f(Real(e
in),Ima(e
in),E
out/E
in,φ,
d
ne
out/df
n,d
n(E
out/E
in)/df
n,d
nφ/df
n,I(λ),
d
nI(λ)/df
n)
【0052】
このように、推定値が、Real(e
in),Ima(e
in),E
out/E
in,φ,
d
ne
out/df
n, d
n(E
out/E
in)/df
n,d
nφ/df
n,I(λ),
d
nI(λ)/df
n)の9つのパラメータのうち相関あるパラメータの関数として示される。ここで、I(λ)は波長の蛍光強度である。
【0053】
図5に示す土壌分析装置2では、センサ10による透磁率の測定データのみならず、励起光による蛍光のスペクトルデータを測定するため、CECのみならず、可給態窒素、可給態リン酸、全窒素、全炭素、CN比の各指標についてもそれぞれ同様に求めることで、土壌の複数の土壌地力形質についても簡便に求めることができる。
【実施例1】
【0054】
図6は、実施例1に係る分析フロー図である。サンプルとして風乾粉砕土壌10gを量り取り、サンプル収容部15に入れてセットした(STEP1−1)。先ず、センサ10を用いて5kHz間隔で、10kHz〜100kHzの間の検出データそのものを取得した(STEP1−2)。また、サンプル収容部15中のサンプルに392nmと375nmの励起光を照射し、450nm〜700nmの蛍光スペクトルデータを取得した(STEP1−3)。
【0055】
センサ10による検出データについては次のようにした。即ち、二次微分値を算出し(STEP1−4)、その後、ショーレンベルガー法によるCEC定量値と5kHz〜90kHzについての二次微分値との間と相関係数を求め、その相関係数が高いデータをセンサ由来の説明変数とした。その結果、30kHz、35kHzの値2個を抽出した(STEP1−5)。
【0056】
蛍光スペクトルデータについては次のようにした。即ち、取得した蛍光スペクトルデータのうち、隣り合う5つの波長データで移動平均してスムージングした(STEP1−6)。そして、蛍光スペクトルを5nm間隔のデータになるように加工し、5nm間隔の蛍光強度とし、一次微分値を算出した(STEP1−7)。その後、ショーレンベルガー法によるCEC定量値と、スペクトルの一次微分値との間で相関係数を求め、その相関係数が高いデータを、蛍光データ由来の説明変数とした。その結果、375nm励起によって得られたスペクトルと、392nm励起により得られたスペクトルをそれぞれ6個及び10個抽出した(STEP1−8)。
【0057】
その後、PLS回帰分析によりCECの推定をした。CEC定量値を目的変数とし、各パラメータ毎に抽出した一次微分値、二次微分値の計18個を説明変数としてCEC推定値を算出した。PLS回帰分析により検量線を構築する際、最適な潜在変数の数は、クロスバリデーション法を用いて決定した。
【0058】
図7は、センサ10からの検出データについての説明変数の絞り込みについての説明図である。
図7(a)に示す原スペクトルの周波数依存性から、
図7(b)に示すように一次微分値を算出し、
図7(c)に示すように二次微分値を算出する。その後、
図7(d)に示すような二次微分値とCEC定量値との単相関を求め、
図7(c)に矢印で示すように相関係数の高い2つのデータ(30nmと35nmのデータ)を抽出するようにする。
図7では決定係数R
2の周波数依存性から求めており、
図7(d)に示すように、決定係数R
2の全体のばらつきに対して閾値が決められ、その閾値を超える指定数の周波数を選択する。
【0059】
図8は、蛍光のスペクトルデータについての説明変数の絞り込みについての説明図である。
図8(a)に示すように、LEDの392nmの励起光による蛍光スペクトルについての一次微分値の周波数依存性から、矢印(↓)を付した一次微分値を抽出する。
図8(b)に示すように、LEDの375nmの励起光による蛍光スペクトルについての一次微分値の周波数依存性から、矢印を付した一次微分値を抽出する。
図8(c)に示す一次微分値とCEC定量値の決定係数R
2との関係から、R
2が閾値以上となったもののみ抽出したものである。
【0060】
このように、蛍光由来の変数16個とセンサ由来の変数2個の合計18を説明変数とした。
【0061】
図9は、実施例1の結果であり、変数の絞り込みをしたときのCECについての推定値と定量値との関係を示す図である。CECの推定値xと定量値yとの関係は、y=xとなり、決定係数R
2は、0.85であった。
【0062】
(比較例1)
図10は、比較例1として、蛍光データのみを使用して変数の絞り込みをしたときのCECについての推定値と定量値との関係を示す図である。CECの推定値xと定量値yとの関係は、y=x−1×10
−12となり、決定係数R
2は、0.41であった。
【0063】
(比較例2)
図11は、比較例2として、蛍光データのみを使用して変数の絞り込みをしなかったときのCECについての推定値と定量値との関係を示す図である。CECの推定値xと定量値yとの関係は、y=x−1×10
−12となり、決定係数R
2は、0.51であった。
【0064】
図9乃至
図11を比較すると、実施例1の場合が、決定係数R
2が1に近く、CECの推定値が精度よく算出されていることが分かった。
【実施例2】
【0065】
図12は、実施例2に係る分析フロー図である。サンプルとして風乾粉砕土壌を10g量り取り、サンプル収容部15に入れてセットした(STEP2−1)。先ず、センサ10を用いて5kHz間隔で、10kHz〜100kHzの間の検出データのうち、データそのものと振幅比のデータを取得した(STEP2−2)。また、サンプル収容部15中のサンプルに392nmと375nmの励起光を照射し、450nm〜700nmの蛍光スペクトルデータを取得した(STEP2−3)。
【0066】
センサ10による検出データのうち取得した検出データと振幅比のデータについては次のようにした。即ち、検出データそのものの二次微分値を算出した(STEP2−4)。5kHz間隔で取得した振幅のデータを選択した(STEP2−5)。
【0067】
蛍光スペクトルデータについては次のようにした。即ち、取得した蛍光スペクトルデータのうち、隣り合う5つの波長データで移動平均してスムージングした(STEP2−6)。そして、蛍光スペクトルを5nm間隔のデータになるように加工し、5nm間隔の蛍光強度とし、一次微分値を算出した(STEP2−7)。
【0068】
その後、PLS回帰分析によりCECの推定をした。CEC定量値を目的変数とし、蛍光スペクトルデータの一次微分値52個のデータと、二次微分値17個のデータと、振幅比の19個のデータとを説明変数としてCEC推定値を算出した(STEP2−8)。
【0069】
このPLS回帰分析で算出される回帰係数の絶対値が比較的大きい波長域、周波数域における説明変数を抽出した。即ち、375nm励起によって得られたスペクトル13個、392nm励起によって得られたスペクトル13個、検出データ8個、振幅比4個を抽出した(STEP2−9)。
【0070】
次に、CEC定量値を目的変数とし、STEP2−9で抽出した蛍光データの一次微分値、実部データの二次微分値、振幅の実数値の計38個を説明変数としてPLS回帰分析をしてCEC推定値を求めた(STEP2−10)。
【0071】
図13は、
図12に示すフロー図でのデータ処理の工程の一部を説明するための図である。
図13(a)に示す振幅比の周波数依存性から、
図13(b)に示す振幅比の一次微分の周波数依存性を求め、さらに、
図13(c)に示す振幅比の二次微分の周波数依存性を求めた。
【0072】
図14は、実施例2の結果を示す図である。CECの推定値xと定量値yとの関係はy=x−9×10
−14となり、潜在変数は6、決定係数R
2は0.90、RMSEは1.63であった。
【実施例3】
【0073】
図15は、実施例3に係る分析フロー図である。サンプルとして風乾粉砕土壌を10g量り取り、サンプル収容部15に入れてセットした(STEP3−1)。先ず、センサ10を用いて5kHz間隔で、25kHz〜200kHzの間の検出データそのものを取得した(STEP3−2)。また、サンプル収容部15中のサンプルに392nmと375nmの励起光を照射し、450nm〜700nmの蛍光スペクトルデータを取得した(STEP3−3)。
【0074】
蛍光スペクトルデータについては次のようにした。即ち、取得した蛍光スペクトルデータのうち、隣り合う5つの波長データで移動平均してスムージングした(STEP3−4)。そして、蛍光スペクトルを5nm間隔のデータになるように加工し、5nm間隔の蛍光強度とし、一次微分値を算出した(STEP3−5)。
【0075】
各パラメータを基準化した(STEP3−6)。即ち、CEC定量値、25kHz〜200kHzの間の検出データそのもの、振幅比、位相差と、蛍光スペクトルデータの一次微分値のデータと、を基準化した。各基準値は、データから平均値との差を標準偏差で割って求めた。
【0076】
基準化したCEC定量値を目的変数とし、基準化した各パラメータを説明変数としてPLS回帰分析をした(STEP3−7)。検出データのそのもの振幅比、位相差について各39個、375nm励起による蛍光のスペクトルデータの一次微分データ26個、392nm励起による蛍光のスペクトルデータの一次微分データ26個の合計169個を説明変数とした。
【0077】
このPLS回帰分析で算出される、回帰係数の絶対値が比較的大きいものを抽出した(STEP3−8)。即ち、検出データそのものについて6個、振幅比について11個、375nm励起による蛍光のスペクトルデータの一次微分データ9個、392nm励起による蛍光のスペクトルデータの一次微分データ16個の合計42個を説明変数とした。
【0078】
次に、基準化したCEC定量値を目的変数とし、STEP3−8で抽出された領域における基準化前のデータ(蛍光データの一次微分値、蛍光データそのものの実数値、振幅比)計42個を説明変数としてPLS回帰分析をしてCEC推定値を求めた(STEP3−9)。
【0079】
すると、CECの推定値xと定量値yとの関係について、
図14と同様の結果を得た。
【0080】
[第3実施形態]
次に、第1実施形態よりも簡便な方法でCECを推定する方法について、併せてCEC以外の土壌地力形質の測定方法について説明する。
CEC以外の土壌地力形質として、全炭素(T−C)、全窒素(T−N)、可給態リン酸(Av−P)、全リン(P)、また、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、植物栄養の上で重要な元素としてK(カリウム)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)等の推定ができる。
まず、第1実施形態では、推定部34は計測部20から出力された処理後の検出信号そのもの、励起信号と検出信号との振幅比及び位相差の一又は複数の項目の値並びに当該項目の周波数に対する一次微分の値又は二次微分の値、あるいは一次微分の値と二次微分の値のパラメータを用いて、回帰分析及びCECの推定を行ったが、本第3実施形態では励起信号に対する検出信号の実部と虚部のみをパラメータとして回帰分析及び推定を行う。すなわち、土壌地力形質の推定値は以下のように簡略化される。
土壌地力形質の推定値=f’(Real(e
out/e
in),Ima(e
out/e
in))
ここでは励起信号に対する検出信号を実部と虚部で表される複素数表示としているが、同じ複素量を表すものであれば絶対振幅と位相で表示するものであってもよい。
推定部34は、第1の実施の形態と同様、各土壌地力形質の定量値とセンサ10により交番磁界を印加し、計測部20を用いて処理した検出信号とから、PLS回帰分析をして記憶部33に記憶するデータを生成する。なお、各土壌地力形質定量値の測定方法は以下のとおりである。
CEC:ショーレンベルガー法
全炭素(T−C):C/Nコーダーを使用した燃焼法
全窒素(T−N):C/Nコーダーを使用した燃焼法
可給態リン酸(Av−P):トルオーグ法
Fe,Al,Ca,K,Na、Mg:エネルギー分散型蛍光X線分析
【0081】
推定部34では、予め求めておいたCECを含む土壌地力形質の定量値を利用して、対象となる土壌の土壌地力形質を以下の分析フローに従って分析することができる。
図16は、第3実施形態に係る分析フローを示す図である。
図16に示すように、分析は以下のステップで行われる。
(1)先ず、任意の周波数毎に励起信号を発生させ、分析対象となる土壌に対して交番磁界を照射する(STEP101)。
(2)次に、前記土壌を透過した磁界による検出信号から、前記励起信号に対する複素振幅比を求める(STEP102)。
(3)さらに予め記憶された、異なる複数の土壌におけるCECを含む土壌地力形質の定量値と対応する検出信号の複素振幅比との間の回帰分析に基づく回帰式により、CECを含む土壌地力形質の推定値を求める(STEP103)。
ここで複素振幅比とは、振幅と位相が互いに異なる2つの信号の(絶対)振幅比と位相差または実部と虚部で表される比率をいう。以下、第3実施形態の実施例4を詳細に説明する。
【実施例4】
【0082】
第1実施形態と同様に周波数を10kHzから200kHzまで5kHz毎に変化させて土壌に照射し、透過した磁界を分析装置1の検出コイル12を経て信号処理部22により取得した。第1実施形態の
図2では、検出信号の一次微分の値を用いてPLS相関係数を求めたが、実施例4では、簡便な方法として、検出信号から一次微分をしないで直接実部と虚部によりPLS相関係数を求めた。
先ず、全体傾向を俯瞰するために、各土壌地力形質の上記定量値について、
図2の一次微分値の代わりに実部のPLS相関係数を測定した結果を
図17、虚部を
図18に示す。
図17及び18より明らかなように、相関が顕著な周波数が元素によって異なる。以下、各土壌地力形質ごとに詳細に説明する。
【0083】
(鉄の推定)
鉄の濃度が異なるサンプルを用いて、分析装置1により複素振幅比を求めた。
図19は、鉄の含有量が異なる3つのサンプルのそれぞれの透過磁界による検出信号から得た、実部(a)と虚部(b)の振幅を10kHz〜200kHzまで10kHz毎に表示した周波数スペクトラムの一例を示す図である。
図19の横軸は周波数である。
図19には、鉄の含有量が異なる3つのサンプルで得た実部と虚部を示しており、最大値をS13、中央値をS11及び最小値をS17として示している。なお、
図19では、検出回路固有の周波数特性を予め差し引いて表示している。
図19(a)に示すように、鉄の含有量が異なる3つのサンプルの実部は、鉄の含有量が大きくなるにつれて振幅が大きくなることが分かる。さらに、
図19(b)に示すように、鉄の含有量が異なる3つのサンプルの虚部も、鉄の含有量が大きくなるにつれて振幅が大きくなることが分かる。
【0084】
鉄の含有量が異なる30のサンプル、つまりサンプル数30として
図16に示すSTEP103の分析を行った
図20は、実施例4の鉄の推定値xと定量値yとの関係を示す図である。
図20に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が4、相関関係はy=x−4×10
−13であり、決定係数R
2が0.9643、RMSEが0.23であった。以下のCECを含む土壌地力形質も、鉄の推定と同様に分析をした。
【0085】
(全炭素の推定)
図21は、実施例4の全炭素の推定値xと定量値yとの関係を示す図である。この図に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が8、相関関係はy=x−6×10
−14であり、決定係数R
2が0.9984、RMSEが0.08であった。
【0086】
(全窒素の推定)
図22は、実施例4の全窒素の推定値xと定量値yとの関係を示す図である。この図に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が6、相関関係はy=x−2×10
−13であり、決定係数R
2が0.9858、RMSEが0.02であった。
【0087】
(CECの推定)
図23は、実施例4のCECの推定値xと定量値yとの関係を示す図である。
図23に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が5、相関関係はy=xであり、決定係数R
2が0.9751、RMSEが0.80であった。
【0088】
(可給態リン酸の推定)
図24は、実施例4の可給態リン酸の推定値xと定量値yとの関係を示す図である。
図24に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が12、相関関係はy=x+1×10
−13であり、決定係数R
2が1、RMSEが0.21であった。
【0089】
(全リンの推定)
図25は、実施例4の全リンの推定値xと定量値yとの関係を示す図である。
図25に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が14、相関関係はy=x−6×10
−14であり、決定係数R
2が1、RMSEが6.9×10
−5であった。
【0090】
(カリウムの推定)
図26は、実施例4のカリウムの推定値xと定量値yとの関係を示す図である。
図26に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が4、相関関係はy=x−4×10
−13であり、決定係数R
2が0.898、RMSEが0.06であった。
【0091】
(カルシウムの推定)
図27は、実施例4のカルシウムの推定値xと定量値yとの関係を示す図である。この図に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が3、相関関係はy=x−7×10
−14であり、決定係数R
2が0.742、RMSEが0.46であった。
【0092】
(マグネシウムの推定)
図28は、実施例4のマグネシウムの推定値xと定量値yとの関係を示す図である。
図28に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が2、相関関係はy=x+4×10
−13であり、決定係数R
2が0.196、RMSEが0.10であった。
【0093】
(アルミニウムの推定)
図29は、実施例4のアルミニウムの推定値xと定量値yとの関係を示す図である。図に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が3、相関関係はy=x−10
−12であり、決定係数R
2が0.8067、RMSEが0.62であった。
【0094】
(Fe,Al,Ca,K,Na、Mgの合計値の推定)
図30は、実施例4のFe,Al,Ca,K,Na、Mgの合計値の推定値xと定量値yとの関係を示す図である。これらの元素は陽イオンになり得る元素であり、Alイオンは植物に対して毒性を有しているが、土壌中の結晶性の粘度鉱物の重要な構成元素である。
図30に示すように、サンプル数nが30個、潜在変数が3、相関関係はy=x+8×10
−13であり、決定係数R
2が0.9496、RMSEが0.52であった。
【0095】
上記実施例4により、分析対象である土壌に磁界を印加しセンサ10で検出することで、土壌の透磁率などのデータを取得し、土壌のCECを含む土壌地力形質として、全炭素、全窒素、可給態リン酸、全リン、鉄、アルミニウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムや、陽イオンとなり得る元素(Fe,Al,Ca,K,Na、Mg)の合計等の値を精度良く推定できることが分かった。
【0096】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、分析対象である土壌に磁界を印加し検出コイル12で検出することで、土壌の透磁率などのデータを取得し、土壌のCECを含む土壌地力形質の値を精度良く推定することができる。CECの値は、電気的にマイナスの土壌が最大限どの程度の塩基(Ca,Mg,K,Na,アンモニウム、Hなど)の陽イオンを吸着することができるかの指標であり、肥効養分を蓄えておける量及び緩衝力を示す数値である。本発明の実施形態では、このようなCECを含む土壌地力形質に関する指標を簡便に高精度に求めることができるため、土壌の管理をし易くなり、ひいては農作物の生産性を向上させることができる。
【0097】
本発明の実施形態、特に実施例で説明したデータ処理の手法は一例であり、通常のプログラミングにおける工夫により適宜変更してもよい。例えば、微分の計算は、差分の計算に置き換えることができる。
【0098】
本発明の実施形態では、土壌に磁界を印加して、土壌の透磁率等の影響を受けた検出信号を計測するので、濁りのある土壌であっても、CECを含む土壌地力形質に関する指標を分析することができる。蛍光データとセンサ10による検出データとを併用することで土壌の分析を補完することができる。