(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562498
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】索道における原動滑車の軸構造
(51)【国際特許分類】
B61B 12/10 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
B61B12/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-36133(P2015-36133)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-155503(P2016-155503A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】戸奈 久之
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 孝宏
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/080983(WO,A1)
【文献】
実開平01−106362(JP,U)
【文献】
特開2004−099027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 12/10
F16C 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機を備え該減速機の下方に貫通孔を形成したメインフレームと、該メインフレームの前記貫通孔に挿嵌して取り付けられた中空軸と、該中空軸に回転自在に支持された原動滑車と、前記中空軸の内部に備えられて前記原動滑車と前記減速機を連結する駆動軸と、前記中空軸と前記メインフレームに繋止して前記中空軸が前記メインフレームに対して回転しないようにした回り止めプレートと、を備えており、
前記回り止めプレートは、
前記駆動軸が回転自在に挿通する孔を有し、二分割構造に形成されている、
ことを特徴とする索道における原動滑車の軸構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道において索条を駆動する原動滑車の軸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
索道は、少なくとも2地点に設けられた停留場にそれぞれ回転自在に滑車を設け、これらの滑車間に張架した索条に搬器を懸垂して人員や物品を輸送する設備であり、主に傾斜地で輸送を行うチェアリフトやゴンドラリフトとして広く知られている。この索道設備においては、いずれか一方の停留場に電動機や減速機からなる原動装置を設け、これにより原動滑車を回転させ索条を駆動する。
【0003】
索道において、線路長が短かったり乗車人員が少ないなど索条に作用する張力が比較的低い場合には、原動滑車は減速機の出力軸に直接支持され、減速機の入力軸に電動機が接続されて駆動されるように構成されている。これに対して、索条の張力が高い索道においては、原動滑車を減速機の出力軸で直接支持すると出力軸に作用するラジアル荷重が大きいために、より大型の減速機を採用することになる。このようなことから、索条張力の高い索道においては、中空軸を用いて原動滑車のラジアル荷重を支持するとともに、この中空軸の内部に駆動軸を備え、これにより原動滑車を回転駆動する構成が従来より採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7は、従来の原動滑車の軸構造を示す垂直方向断面図である。原動装置の機器類が配設された原動フレーム50には、原動滑車53の回転中心位置に貫通孔が穿孔されており、ここに中空軸52が挿嵌され固定されている。中空軸52の上部は、貫通穴に対して中空軸52が回転しないように平行キー59により回り止めがなされており、中空軸52の下部には、ベアリング54及びスリーブ55を介して原動滑車53が回転自在に支持されている。中空軸52の内部には、両端部にスプライン軸部が形成された駆動軸58が内挿されており、上側のスプライン軸部が減速機56の出力部と嵌合し、下側のスプライン軸部が原動滑車53に備えた駆動フランジ57と嵌合している。このような構成により、索条の張力に起因するラジアル荷重は中空軸52により受け、原動滑車53を回転させる駆動力は駆動軸58により伝達するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/080983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように従来の原動滑車の軸構造においては、中空軸52が原動フレーム50に対して回転しないように平行キー59を用いていた。しかしながら原動フレーム50は、その上部に減速機56や電動機等の機器類を配置するために大型の構造体であって、平行キー59のキー溝を加工するには大型な加工機でしか加工することができず、加工費が高価であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、中空軸の回転止めに要する加工が容易であって、したがって加工費が低減できる索道における原動滑車の軸構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、減速機を備え該減速機の下方に貫通孔を形成したメインフレームと、該メインフレームの前記貫通孔に挿嵌して取り付けられた中空軸と、該中空軸に回転自在に支持された原動滑車と、前記中空軸の内部に備え
られて前記原動滑車と前記減速機を連結する駆動軸と、前記中空軸と前記メインフレームに繋止して前記中空軸が前記メインフレームに対して回転しないようにした回り止めプレートと、を備え
ており、前記回り止めプレートは、前記駆動軸が回転自在に挿通する孔を有し、二分割構造に形成されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メインフレーム及び中空軸に施す加工が容易であるので、中空軸の回転止めに要する費用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】従来の原動滑車の軸構造を示す垂直方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は原動緊張装置の正面図、
図2は原動緊張装置の平面図、
図3は
図1におけるB−B矢視図、
図4は
図1におけるA−A矢視図である。なお、以下の説明においては特に説明のない限り、
図1における左右方向を前後方向で表し、特に
図1の右方向を前側、左方向を後側等と表現する。また、
図2における上下方向を左右方向又は幅方向等で表し、
図3、
図4における左右方向と同一の方向を指すものとする。
【0012】
索道の停留場には、線路中心線12上に地面から上方へ突出して基礎11が形成されており、この上部に原動緊張装置10が設置されている。原動緊張装置10は、以下のように構成されている。まず、基礎11の上部には、ベースフレーム13が固設されており、このベースフレーム13の前端部及び後端部には、それぞれ前側支持フレーム14と後側支持フレーム15とを備えている。
【0013】
前側支持フレーム14は、
図3に示すように正面視において上方を開口したコ字形状をなしており、上方へ延びた両側方部材の上部内側には大径の支持ローラー16と、この下方に小径のガイドローラー17とを回転自在に備えている。後側支持フレーム15は、
図4に示すように正面視において、上記前側支持フレーム14よりも高さを低くしたコ字形状をなすとともに、下部の部材は後方へ突出した形状(
図1参照)となっており、この後方へ突出した部材に大径の支持ローラー16を備えるとともに、コ字形状をなした両側方部材の上部内側に小径のガイドローラー17を回転自在に備えている。以下説明するように、各大径の支持ローラー16及び小径のガイドローラー17は、メインフレーム18を前後方向へ移動可能に支持している。
【0014】
メインフレーム18は、前後方向へ延びる下部フレーム19と、この下部フレーム19の上部に形成された上部フレーム20とからなっている。上部フレーム20の後部は下部フレーム19の後端よりも後方へ突出しており、ここへ索条32を巻き掛けた原動滑車33を回転自在に支持している。下部フレーム19は、長尺状の角形鋼管を左右並列に配置し、この角形鋼管の上面及び下面を適宜連結して略箱形に形成されている。下部フレーム19の上面には、前後方向の略中心位置から前端部に渡って、角形鋼管の側面から両外側へ突出して板状の前側スライドフランジ21が形成されている。また、下部フレーム19の下面にも同様に、略中心位置から後端部に渡って、後側スライドフランジ22が形成されている。前側スライドフランジ21は、前側支持フレーム14の支持ローラー16とガイドローラー17との間に挿嵌して支持されており、また、後側スライドフランジ22は、後側支持フレーム15の支持ローラー16とガイドローラー17との間に挿嵌して支持され、これによりメインフレーム18は前後方向へ移動自在に支持されている。
【0015】
メインフレーム18における下部フレーム19の両角形鋼管の間には、油圧シリンダー23が配置されている。この油圧シリンダー23の一端は、ベースフレーム13の後端部に形成されたシリンダー取付部24に枢支されるとともに、他端はメインフレーム18の下部フレーム19前端部に形成されたシリンダー取付部25に枢支されている。油圧シリンダー23は油圧ユニット26に接続されており、この油圧ユニット26で発生させた一定圧力の圧油が作用することにより、油圧シリンダー23には所定の力が縮む方向へ発生する。この力により索条32には、メインフレーム18ないし原動滑車33を介して、一定の緊張力が与えられている。
【0016】
メインフレーム18の上部フレーム20上部には、減速機27が固設されており、この減速機27の出力部が原動滑車33と連結されている。また、上部フレーム20には、上方へ向けてサブフレーム30が枠組み設置されており、この上部に電動機28と予備原動機29が固設されている。電動機28の出力軸と減速機27の入力軸とは、自在継手31により連結されており、電動機28に電力を供給して回転制御することにより、減速機27を介して原動滑車33が回転し、この原動滑車33に駆動されて索条32が線路中を循環移動する。
【0017】
図5は、原動滑車33の軸構造を示す断面図である。メインフレーム18の上部フレーム20には、原動滑車33の回転中心位置に貫通孔が穿孔されており、ここに中空軸34が挿嵌され、上部を止め板35により上下方向位置を固定されている。止め板35は、リング形状の鋼板を2分割したものであり、外周部を上部フレーム20に固着するとともに、内周部を中空軸34の外周に形成した凹溝に掛合して支持している。中空軸34の下部には、ベアリング36を介してスリーブ37が回転自在に支持されている。原動滑車33は、水平方向に2分割された構造であり、分割された原動滑車33どうしでスリーブ37を挟み込み、原動滑車33が一体となってスリーブ37に取り付けられている。
【0018】
原動滑車33の下部には、内面に内歯スプラインが形成された駆動フランジ38が固着されており、この駆動フランジ38の内歯スプラインには、中空軸34に内挿された駆動軸39の下端部がスプライン嵌合している。一方、駆動軸39の上端部にもスプラインが形成されており、このスプラインが減速機27の出力部とスプライン嵌合している。これにより、減速機27の出力部の回転が駆動軸39により駆動フランジ38へと伝達されて原動滑車33が回転する。
【0019】
次ぎに、中空軸34の上部には、中空軸34が回転するのを防止するための回り止めプレート40が固着されている。
図6は、
図5におけるC−C矢視図である。回り止めプレート40は、全体として平面視略菱形であって2分割にされており、中央部には駆動軸39の径よりやや大きな径の孔を形成し、この孔の外周部をボルト42により中空軸34の上端部に固着している。回り止めプレート40の両側端部には、ピン41を嵌挿する孔が形成されており、上部フレーム20の上面にも対応する位置に同様の孔が形成されている。そして、両孔間を通してピン41を嵌挿することにより、回り止めプレート40ないし中空軸34が回転しないようになっている。
【0020】
以上説明したように本実施の形態によれば、回り止めプレート40とピン41とを用いて中空軸34の回り止めを行うようにしており、加工が容易であり加工費を低減することができる。また、構造が簡素であるので組み付けることも容易である。さらには、回り止めプレート40を2分割構造としたことにより、中空軸34の両側方から回り止めプレート40を組み付けられるので、
図5に示すように駆動軸39の軸径が均一でなくても、回り止めプレート40と駆動軸39との間の隙間が最小限となる構造にすることができる。
【符号の説明】
【0021】
10 原動緊張装置
11 基礎
12 線路中心線
13 ベースフレーム
14 前側支持フレーム
15 後側支持フレーム
16 支持ローラー
17 ガイドローラー
18 メインフレーム
19 下部フレーム
20 上部フレーム
21 前側スライドフランジ
22 後側スライドフランジ
23 油圧シリンダー
24 シリンダー取付部
25 シリンダー取付部
26 油圧ユニット
27 減速機
28 電動機
29 予備原動機
30 サブフレーム
31 自在継手
32 索条
33 原動滑車
34 中空軸
35 止め板
36 ベアリング
37 スリーブ
38 駆動フランジ
39 駆動軸
40 回り止めプレート
41 ピン
42 ボルト
50 原動フレーム
52 中空軸
53 原動滑車
54 ベアリング
55 スリーブ
56 減速機
57 駆動フランジ
58 駆動軸
59 平行キー
A、B、C 矢印