【実施例】
【0036】
実施例1:
カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの合成
【0037】
【化2】
【0038】
ベンゾイル酢酸エチル554mg(2.887mmol)および3,4−ジメトキシフェニルピペラジン641mg(2.887mmol)をトルエンに溶解し、24時間還流した。減圧濃縮後に得られた化合物736mg(1.99mmol)をメタノールに溶解し、0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム109mg(2.887mmol)をゆっくり添加した。得られた溶液を室温で2時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で濃縮し、水で希釈し、酢酸エチルで数回抽出を行った。その後、得られた有機層を硫酸マグネシウムでで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)によって精製し、化合物1.592mmol(589mg)を得た。得られた化合物をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解した。次に、1,1’ −カルボジイミダゾール820mg(5mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。過剰量のアンモニア水を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルで数回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)によって精製し、目的化合物を得た(収量:329mg、収率:28%)。
【0039】
1H NMR(200MHz, CDCl3)d:2.82(dd, 1H), 3.04(m, 5H), 3.61(m, 2H), 3.77(m, 2H), 3.88(d, 6H), 4.77(br, 2H), 6.15(t, 1H), 6.42(d, 1H), 6.57(s, 1H), 6.82(d, 1H), 7.41(m, 5H)
【0040】
実施例2:
カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−1−(4−フルオロフェニル)−3−オキソプロピルエステルの合成
【0041】
【化3】
【0042】
4−フルオロベンゾイル酢酸エステルおよび3,4−ジメトキシフェニルピペラジンを出発原料として使用した以外は実施例1と同様の方法で目的化合物を得た(収量:542mg、収率:37%)。
【0043】
1H NMR(200MHz, CDCl3)d:2.82(dd, 1H), 3.01(m, 5H), 3.60(m, 2H), 3.75(m, 2H), 3.86(d, 6H), 4.92(br, 2H), 6.15(t, 1H), 6.42(d, 1H), 6.56(d, 1H), 6.80(d, 1H), 7.04(t, 2H), 7.38(t, 2H)
【0044】
実施例3:
カルバミン酸3−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−ピペラジン−1−イル)−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの合成
【0045】
【化4】
【0046】
ベンゾイル酢酸エチルおよび3,4−メチレンジオキシフェニルピペラジンを出発原料として使用した以外は実施例1と同様の方法で目的化合物を得た(収量:190mg、収率:48%)。
【0047】
1H NMR(200MHz, CDCl3)d:2.98(m, 6H), 3.59(m, 2H), 3.76(m, 2H), 4.71(br, 2H), 5.94(s, 2H), 6.15(t, 1H), 6.36(dd, 1H), 6.55(s, 1H), 6.74(d, 1H), 3.40(m, 5H)
【0048】
実施例4:
カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−オキソプロピルエステル塩酸塩の合成
【0049】
【化5】
【0050】
4−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸エチルおよび3,4−ジメトキシフェニルピペラジンを出発原料として使用した以外は実施例1と同様の方法で目的化合物を得た(収量:250mg、収率:52%)。生成物をジクロロメタンに溶解し、飽和塩酸/エーテル溶液を加え塩酸塩を得た。
【0051】
1H NMR(200MHz, DMSO)d:2.90(dd, 1H), 3.12(dd, 1H), 3.34(m, 4H), 3.75(s, 3H), 3.78(s, 3H), 3.85(m, 4H), 6.00(m, 1H), 6.60(br, 2H), 7.01(m, 2H), 7.20(m, 1H), 7.60(d, 2H), 7.75(d, 2H)
【0052】
実施例5:
カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−1−(4−ニトロフェニル)−3−オキソプロピルエステルの合成
【0053】
【化6】
【0054】
4−ニトロベンゾイル酢酸エチルおよび3,4−ジメトキシフェニルピペラジンを出発原料として使用した以外は実施例1と同様の方法で目的化合物を得た(収量:261mg、収率:57%)。
【0055】
1H NMR(200MHz, DMSO)d:2.96(dd, 1H), 3.16(dd, 1H), 3.42(m, 4H), 3.76(s, 3H), 3.78(s, 3H), 3.92(m, 4H), 6.05(m, 1H), 6.64(br, 2H), 7.02(m, 1H), 7.24(m, 2H), 7.65(d, 2H), 8.24(d, 2H)
【0056】
実施例6:
(R)−カルバミン酸3−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの合成
【0057】
【化7】
【0058】
(R)−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸1.0g(6.0mmol)および4−クロロフェニルピペラジン1.18g(6.0mmol)を、溶媒としてのテトラヒドロフラン50mLに室温で溶解した。EDC1.24g(6.0mmol)およびHOBt0.81g(6mmol)を滴下し、25℃で5時間撹拌した。減圧蒸留によって過剰量の溶媒を留去し、得られた生成物を1N塩化ナトリウム水溶液20mLで中和した。酢酸エチル25mLを加え、得られた有機層を酢酸エチル15mLで2回抽出分離した。有機層を無水硫酸マグネシウム2gで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン: 酢酸エチル=1:1〜1:10)によって単離精製した。得られた生成物0.345g(1mmol)をテトラヒドロフラン15mLに溶解した。次に、1,1’−カルボジイミダゾール0.325g(2mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。次に、過剰量のアンモニア溶液を加え、室温で2時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルで数回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)によって精製し、目的化合物を得た(収量:1.2g、収率:52.5%)。
【0059】
1H NMR(200MHz, CDCl3)d:2.82(dd, 1H), 3.07(m, 5H), 3.58(m, 2H), 3.74(m, 2H), 4.81(br, 2H), 6.13(t, 1H), 6.84(d, 2H), 7.38(m, 7H)
【0060】
実施例7:
(S)−カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの合成
【0061】
【化8】
【0062】
(S)−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸(6mmol)および3,4−ジメトキシフェニルピペラジン(6mmol)を出発原料として使用した以外は実施例6と同様の方法で目的化合物を得た(収量:1.38g、収率:56%)。
【0063】
1H NMR(200MHz, CDCl3)d:2.82(dd, 1H), 3.04(m, 5H), 3.61(m, 2H), 3.77(m, 2H), 3.88(d, 6H), 4.77(br, 2H), 6.15(t, 1H), 6.42(d, 1H), 6.57(s, 1H), 6.82(d, 1H), 7.41(m, 5H)
【0064】
実施例8:
(R)−カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの合成
【0065】
【化9】
【0066】
(R)−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸および3,4−ジメトキシフェニルピペラジンを出発原料として使用した以外は実施例6と同様の方法で目的化合物を得た(収量:1.040g、収率:42%)。
【0067】
1H NMR(200MHz, CDCl3)d:2.82(dd, 1H), 3.04(m, 5H), 3.61(m, 2H), 3.77(m, 2H), 3.88(d, 6H), 4.77(br, 2H), 6.15(t, 1H)
【0068】
実施例9:
カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−1−フェニルブチルエステルの合成
【0069】
【化10】
【0070】
フェニル−1−プロフェニルケトン(4.1mmol)および3,4−ジメトキシフェニルピペラジン(4.9mmol)を溶媒としてのエタノール30mLに溶解し、72℃で48時間撹拌した。溶媒を減圧蒸留した後、得られた混合物を水で希釈し、水で2回抽出し、酢酸エチルで2回抽出を行った。有機層を減圧下で蒸留し、次に、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)によって精製して化合物を得た。化合物(2.9mmol)をメタノール20mLに溶解し、NaBH
4(3.8mmol)をゆっくり添加した。得られた生成物を室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮した。黄色の残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)によって精製した。精製化合物(2mmol)をテトラヒドロフラン15mLに溶解し、次に1,1’−カルボジイミダゾール(4mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。過剰量のアンモニア水を加え、室温で2時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルで数回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)によって精製し、最終生成物を得た(収量:90.9mg、収率:22%)。
【0071】
1H NMR(200MHz, CDCl3)d 1.81(m, 1H), 2.32(m, 1H), 2.5(m, 3H), 2.8(m, 2H), 3.14(m, 4H), 3.80(s, 6H), 4.80(br, 2H), 6.02(t, 1H), 6.92(m, 4H), 7.36(m, 5H)
【0072】
実施例10:
カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−1−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピルエステルの合成
【0073】
【化11】
【0074】
4−クロロベンゾイル酢酸エチルおよび3,4−ジメトキシフェニルピペラジンを出発原料として使用した以外は実施例1と同様の方法で目的化合物を得た(収量:543mg、収率:42%)。
【0075】
1H NMR(200MHz, CDCl3)d:2.82(dd, 1H), 3.01(m, 5H), 3.61(m, 2H), 3.77(m, 2H), 3.86(d, 6H), 4.84(br, 2H), 6.15(t, 1H), 6.42(d, 1H), 6.57(s, 1H), 6.82(d, 1H), 7.35(s, 4H)
【0076】
実施例11:
15−リポキシゲナーゼ阻害効果のin vitro試験
【0077】
実施例1〜10で製造した化合物が15−リポキシゲナーゼのみを特異的に阻害することを確認するため、ヒト血小板由来12−リポキシゲナーゼを陰性対照群とし、ウサギ網状赤血球由来15−リポキシゲナーゼを試験群として使用し、12−リポキシゲナーゼに対する化合物の阻害効果を確認した。
【0078】
12−リポキシゲナーゼは基質としてのアラキドン酸と反応し、12−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12−HETE)を生成物として生成する。したがって、12−リポキシゲナーゼ活性は12−HETEの生成量を分光法を用いて測定することにより評価される。さらに、15−リポキシゲナーゼは基質としてのリノレン酸と反応し、13−ヒドロペルオキシ−9,11−オクタデカジエン酸(13−HPODE)を生成物として生成する。したがって、15−リポキシゲナーゼ活性は13−HPODEの生成量を分光法を用いて測定することにより評価される。
【0079】
各化合物の濃度を10μMとして12−リポキシゲナーゼ活性を測定した。各サンプルは、25℃の緩衝液(50mM Tris−HCl、0.1%Triton X−100、pH7.4)を使用して15分間前処理した。次に、30μMアラキドン酸(反応において濃度が30μMになるように調整)を添加し、25℃で15分間反応させ、生成した12−HETEの量を波長570nmにおける吸収度により測定した。
【0080】
各化合物の濃度を10μMとして、15−リポキシゲナーゼ活性を測定した。各サンプルは、4℃の緩衝液(リン酸緩衝食塩水、pH7.4)を使用して15分間前処理した。次に、260μMリノレン酸(反応において濃度が260μMになるよう調整)を添加し、4℃で10分間反応させ、生成した13−HPODEの量を波長660nmにおける吸収度により測定した。
【0081】
12−リポキシゲナーゼ活性および15−リポキシゲナーゼ活性に対する化合物の阻害効果の測定結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例12:
糖尿病動物モデルにおける糖尿病性高脂血症に対する薬効試験
【0084】
Spraugue−Dawleyラット(n=21、4週齢、雄)(Central Lab.Animal Inc.)を実験モデルとして使用した。ストレプトゾトシン50mg/kgを腹腔内投与することにより糖尿病を誘発したラット(n=14)を試験群として、および溶媒(100mMクエン酸緩衝液、pH4.5)のみを腹腔内投与したラット(n=7)を対照群として使用した。一般的に、ストレプトゾトシンは、膵臓のβ細胞を破壊することにより糖尿病を誘発し、その結果、血糖ならびに血清中コレステロールおよびトリグリセリドが上昇する。ストレプトゾトシン投与の2日後に、試験群において糖尿病が誘発された。試験群を2つの群に分け、一方の群のラットには、200mg/kgの(R)−カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルを1日に1回、4週間にわたって経口投与した。もう1つの群には、該化合物の代わりに30%ポリエチレングリコール(PEG)を経口投与した。
【0085】
上記化合物およびPEGを4週間投与した後、各群の血清中総コレステロールおよびトリグリセリドを測定した。その結果を
図1および2に示す。総コレステロール量およびトリグリセリド量の測定は、ラットから血清を単離し、日立7600自動分析装置を使用して行った。試験の結果、ストレプトゾトシンによって上昇した総コレステロール濃度(120±13mg/dl)は、(R)−カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの投与より66±9mg/dlに低下し、この値は対照群(62±5mg/dl)と同様であった。また、ストレプトゾトシンによって上昇したトリグリセリド濃度(760±162mg/dl)は、126±44mg/dlに大幅に低下した。すなわち、上昇した血清中コレステロールおよびトリグリセリドは、該化合物の投与により著しく低下した。この結果から、該化合物が高脂血症を予防または治療するのに有用であることが確認された。
【0086】
実施例13:
糖尿病性腎症に対する薬効試験
【0087】
Sprague−Dawleyラット(n=21、4週齢、雄)(Central Lab. Animal Inc.)を実験モデルとして使用した。ストレプトゾトシン50mg/kgを腹腔内投与することにより糖尿病を誘発したラット(n=14)を試験群として、および溶媒(100mMクエン酸緩衝液、pH4.5)のみを腹腔内投与したラット(n=7)を対照群として使用した。一般的に、ストレプトゾトシンによって糖尿病を誘発したラットでは、高血糖によって糖尿病性腎症(その症状の1つが腎線維症である)が引き起こされ、フィブロネクチンのような細胞外マトリックスタンパク質の遺伝子発現が増大する。ストレプトゾトシン投与の2日後に、試験群において糖尿病が誘発された。試験群を2つの群に分け、一方の群のラットには、200mg/kgの(R)−カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルを1日に1回、4週間にわたり経口投与した。他方の群には、該化合物の代わりに30%ポリエチレングリコール(PEG)を経口投与した。
【0088】
上記化合物およびPEGを4週間投与した後、腎皮質組織を各群から摘出した。次に、フィブロネクチンの発現量をリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって(すなわちフィブロネクチンから転写されたmRNA量を)測定した(
図3参照)。フィブロネクチンの発現量は、フォワードプライマー(5’-GCCACACCTACAACCAGTAT-3’:配列番号1)およびリバースプライマー(5’-ATGACCACTCAGAAATGGAG-3’: 配列番号2)を使用して測定した。RT−PCRにおいては、60℃で1分間アニーリングを行い、SYBR green(Applied Biosystem)を蛍光物質として使用し、Applied Biosystem社製7300 Real−time PCRを使用した。アニーリング以外の反応は、メーカーによって提供されたプロトコルに従い当技術分野で公知の方法を使用して行った。対照群については、βアクチン遺伝子から転写されたmRNAを使用した。また、測定結果は、RT−PCRの結果から定量化したフィブロネクチンのmRNA量をβアクチンのmRNA量で除することにより示した。試験の結果、ストレプトゾトシンの投与により、腎皮質におけるフィブロネクチンの発現量は対照群の1.4±0.1倍に増大し、(R)−カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの投与により、腎皮質におけるフィブロネクチンの発現量は対照群の1.2±0.1倍に減少した。この結果から、該化合物が糖尿病誘発性腎線維症の抑制に有効だということが確認された。
【0089】
実施例14:
糖尿病性腎症誘発動物モデルにおける炎症反応に対する薬効試験
【0090】
糖尿病性腎症がストレプトゾトシンによって誘発されると、炎症反応が腎臓において増大し、様々な炎症関連遺伝子(例えばPAI−1、MCP−1およびTGF−β1)の発現が増大する。したがって、炎症反応に対する上記化合物の薬学的効果を確認するために、実施例13で使用した各群の腎皮質組織においてPAI−1遺伝子、MCP−1遺伝子およびTGF−β1遺伝子から転写されたmRNA量を、実施例13で使用したRT−PCRにより測定した(
図4、5および6を参照)。各遺伝子を増幅するために以下のプライマー配列を使用した。PAI−1の増幅にはフォワードプライマー(5’-TCCGCCATCACCATTTT-3’:配列番号3)およびリバースプライマー(5’-GTCAGTCATGCCCAGCTTCTC-3’:配列番号4)を使用した。MCP−1の増幅にはフォワードプライマー(5’-CCTCCACCACTATGCAGGTCTCC-3’:配列番号5)およびリバースプライマー(5’-GCACGTGGATGCTACAGGC-3’:配列番号6)を使用した。また、TGF−β1の増幅にはフォワードプライマー(5’-CCAACTACTGCTTCAGCTCCA-3’:配列番号7)およびリバースプライマー(5’-GTCTCCAGGCTCCAAATGT-3’:配列番号8)を使用した。
【0091】
試験の結果、腎皮質における炎症関連遺伝子PAI−1、MCP−1およびTGF−β1の発現は、それぞれ対照群の1.8±0.1倍、3.4±1.0倍、および1.6±0.2倍に増大し、(R)−カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの投与により、腎皮質におけるPAI−1、MCP−1およびTGF−β1の遺伝子発現量は、それぞれ対照群の1.1±0.2倍、1.6±0.3倍、および1.3±0.2倍に減少した。この結果から、該化合物が糖尿病によって誘発された炎症関連遺伝子の発現抑制に有効だということが確認された。
【0092】
実施例13および14の結果から、糖尿病性腎症を引き起こす線維症および炎症関連遺伝子の発現は該化合物によって抑制されることから、該化合物は糖尿病性腎症の予防または治療に有用であることが確認された。
【0093】
実施例15:
(R)−カルバミン酸3−[4−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピペラジン−1−イル]−3−オキソ−1−フェニルプロピルエステルの投与および該化合物を含む調製物(予想)
【0094】
本発明による化合物は、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性血管合併症、高脂血、冠動脈疾患または炎症を予防または治療するために使用される。臨床的に適切な投与量(経口投与)は1成体当たり300mgであった。
【0095】
この投与量に基づいて、下記の表2に示される成分を含む錠剤を従来の方法を利用して調製した。Avicel 102(微結晶セルロース)を賦形剤として使用した。
【0096】
【表2】
【0097】
該化合物の適切な投与量は1成体当たり60kgであり、該化合物を含む錠剤1個または2個分に相当する。
【0098】
本発明による医薬組成物を使用することによって、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性血管合併症、高脂血症、冠動脈疾患または炎症が有効に予防または治療され得る。
【0099】
例示的な実施形態を参照することにより本発明を具体的に提示および説明してきたが、以下の請求項によって定義される本発明の精神および範囲を逸脱することなく形態および詳細において様々な変更が可能であることは当業者によって理解されるであろう。
【0100】
配列表フリーテキスト
配列番号1〜8のヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、配列表として提出され、配列表の記載内容はその全体が本明細書に組み込まれる。