【文献】
WANG Hui−MIn,外8名,Bioconstituents from stems of Synsepalum dulcificum Daniell (Sapotaceae) inhibit human melanoma proliferation, reduce mushroom tyrosinase activity and have antioxidant properties,JOURNAL OF THE TAIWAN INSTITUTE OF CHEMICAL ENGINEERS,2011年,第42巻,p.204−211
【文献】
YAMAZAKI T.,外5名,(+)−Syringaresinol−di−O−β−D−glucoside, a phenolic compound from Acanthopanax senticosus Harms, suppresses proinflammatory mediators in SW982 human synovial sarcoma cells by inhibiting activating protein−1 and/or nuclear factor−kB activities,TOXICOLOGY IN VITRO,2007年,第21巻,p.1530−1537
【文献】
Madalene C. Y. Heng, Wound healing in adult skin: aiming for perfect regeneration, International Journal of Dermatology 50.9 (2011), p.1058−1066(初版:2011年8月19日)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において「抽出物」とは、抽出方法、抽出溶媒、抽出された成分または抽出物の形態を問わず、天然物の成分を抽出して得られた物質をいずれも含む広義の概念である。
【0019】
本明細書において「誘導体」とは、化合物の置換可能な位置で他の置換基に変更されるすべての化合物を意味する。該置換基の種類には制限がなく、例えば、それぞれ独立してヒドロキシル、フェノキシ、チエニル、フリル、ピリジル、シクロヘキシル、アルキルアルコール、アルキルジアルコール、又は任意置換されたフェニルに置換されていてよいC
1−10の非環状炭化水素基;ヒドロキシル、ヒドロキシルメチル、メチル、又はアミノに置換されていてよいC
5−6の環状炭化水素基;又は糖残基を含んでいてよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。本明細書において「糖残基」という用語は、多糖類の分子から1個の水素原子の除去時の基を意味し、したがって、例えば単糖類又はオリゴ糖に由来の残基を意味するものであってよい。
【0020】
本明細書において「薬学的に許容し得る」とは、通常の医薬的服用量(medicinal-dosage)にて用いる際に相当な毒性効果を避けることにより、動物、より具体的には、ヒトに用いていてよいという政府又はこれに準する規制機構の承認を受けることができるか若しくは承認を受けたか、又は薬局方に列挙されているか、その他一般的な処方として認知されることを意味する。
【0021】
本明細書において「薬学的に許容し得る塩」とは、薬学的に許容し得るものであい且つ親化合物(parent-compound)の好適な薬理活性を有する本発明の一側面に係る塩を意味する。前記塩は、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等といった無機酸により形成されるか;または、酢酸、プロピオン酸、ヘキサエン酸、シクロペンテンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2,2,2]−oct−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸といった有機酸により形成される酸付加塩(acid-addition-salt);または、(2)親化合物に存在する酸性プロトンが置換される際に形成される塩を含んでいてよい。また、本明細書における化合物は、薬剤学的に許容し得る塩のみならず、通常の方法にて製造され得るあらゆる塩、水和物、溶媒和物をいずれも含むものであってよい。
【0022】
本明細書において「皮膚」とは、動物の体表を覆う組織を意味するものであって、顔やボディなどの体表を覆う組織だけではなく、頭皮や毛髪を含む最広義の概念である。
【0023】
本明細書において「改善」とは、正常でないか又は正常の皮膚の保湿、しわの改善などの肯定的な効果を示すすべての場合のことを意味する。具体的には、本発明の一側面において、皮膚の美白増加又は老化の抑制により皮膚改善効果を示し得るが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0025】
本発明の一側面は、下記の一般式1で示される化合物、その誘導体または薬学的に許容し得るその塩を有効成分として含む皮膚改善用組成物であって、
【0027】
前記式中、前記R
1、R
2、R
3、又はR
4は、独立して直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1〜C
18のアルキル基、C
1〜C
18のアルコキシ基、C
1〜C
18のアルケニル基、C
1〜C
18のアルキニル基、又はC
3〜C
6の環状アルキル基を表し、
前記R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、又はR
11は、独立して水素または直鎖状若しくは分岐鎖状の
C1〜C
18のアルキル基、C
1〜C
18のアルコキシ基、C
1〜C
18のアルケニル基、C
1〜C
18のアルキニル基、C
3〜C
6の環状アルキル基を表す。
【0028】
本発明の一側面に係る血管老化抑制用組成物において、前記化合物はシリンガレシノールであってよい。
【0029】
本明細書において「シリンガレシノール(syringaresinol)」とは、一般式2で示すような化学構造を有するリグナン系化合物であって、化学合成を通じて得るか、または亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実のうちの一種以上から抽出することができる。前記亜麻仁、黄白、五加皮、及び胡麻は、各植物の葉、幹、根、実、または種を例に挙げられる植物の各部位をいずれも含み、高麗人参の実は、高麗人参の実の果皮または果肉を含む。
【0031】
本明細書において前記「シリンガレシノール」は、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実のうちの一種以上を、水、有機溶媒、及び水と有機溶媒との混合物からなる群より選ばれた一つ以上で抽出して収得していてよい。前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、エーテル、エチルアセテート、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、及びクロロホルムからなる群より選ばれた一種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。前記アルコールは、C
1〜C
5の低級アルコールを含み、C
1〜C
5の低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、及びイソブタノールからなる群より選ばれた一種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0032】
本発明の一側面において、シリンガレシノールを高麗人参の実から分離及び精製する方法は、次のような段階を含んでいてよい。高麗人参の実の果肉のアルコール抽出物を製造する段階;製造したアルコール抽出物を水とアルコールのうちの一種以上を含む溶媒で溶出させて分画を収得する段階;及び収得した分画に対して有機溶媒を展開溶媒としてクロマトグラフィー、具体的には薄膜クロマトグラフィー(TLC)を行う段階。前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、エーテル、エチルアセテート、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、及びクロロホルムからなる群より選ばれた一種以上を含み、アルコールは、C
1〜C
5のアルコールを含む。本発明の一側面に係る組成物は、前記のようにして精製されたシリンガレシノールを有効成分として含んでいてよい。
【0033】
本発明の一側面に係る組成物は、組成物の全重量に対して0.001重量%〜20重量%、具体的には、0.01重量%〜10重量%、より具体的には、0.1重量%〜5重量%の有効成分を含んでいてよい。前記範囲で含む場合、本発明の意図した効果を示す上で好適であるだけでなく、組成物の安定性や安全性をいずれも満足することができ、且つ、コスト対効果の面でも前記範囲で用いることが好適である。具体的に、有効成分が0.01重量%未満の場合は十分な皮膚美白効果を得ることができず、また、20重量%を超える場合は安全性や剤形安定性が劣化するおそれがある。
【0034】
本発明の一側面に係る皮膚改善用組成物において、前記皮膚改善は皮膚美白を含む。
【0035】
シミ、そばかす、ホクロなどのような過色素沈着は、皮膚中のメラノサイト及びその周辺環境の異常に起因することがある。本発明者らは、メラノサイトとメラノサイト周辺のマイクロ環境を改善することにより、メラニンの生成を根本的に減少させるとともに生成されたメラニンを速かに排出させ、肌色の明るさや均一性を増加させることで皮膚美白効果を示す物質を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールを有効成分として含む皮膚美白用組成物を完成するに至った。
【0036】
一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、皮膚細胞、具体的に皮膚色素細胞の毒性を減少させ、メラノサイトのメラニン生成を抑制し、チロシナーゼ活性を阻害することで優れた皮膚美白効果を示すことができる。さらには、優れた抗酸化効果を有することから、メラノサイトを取り囲んだマイクロ環境の酸化を抑制してメラノサイトを鎮静させることで太陽光線による日焼けなどといった皮膚色素沈着現象を抑制する効果に優れている。そして、角質形成細胞などから分泌されるサイトカインにて肌色や肌のトーンを明るくし、シミや肌のくすみといった皮膚過色素沈着を抑制するインターロイキン−6(IL−6)の発現を増加させることで、肌色や肌のトーンを元気で明るく且つ均一にさせ、過色素沈着を抑制することができる。さらには、皮膚角質を除去するとともに角質交代周期の角質ターンオーバー(turn-over)を促進する効果に優れているため、メラニンを含む古い角質を除去することで皮膚が白くてきれいに見えるようにすることができる。また一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、メラニンの排出を容易にするのみならず、皮膚の表面を均一にさせて皮膚を滑らか且つ柔らかくすることで、皮膚美白効果を倍加することができる。したがって、このような一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールを有効成分として含む本発明に係る組成物は、極めて優れた皮膚美白効果、具体的に肌色の明るさや均一性を高め且つ皮膚過色素沈着を改善し、角質除去及び角質ターンオーバーを促進するといった優れた効果を示すことができる。前記皮膚過色素沈着は、シミ、そばかす、肌のくすみ、老人性色素斑、ホクロ、母斑、及びダークサークルから選ばれた一つ以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0037】
本明細書において、肌色の明るさや均一性が高くなるとは、全般的な肌色の明るさが高くなり、且つまだらが減少し、全体的な肌色の均一性が高くなることを意味する。
【0038】
本発明の他の一側面において、シリンガレシノールは、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実の抽出物として組成物に含まれていてよく、好ましくは、皮膚美白に特に効果的な分画にて含まれていてよい。
【0039】
本発明の一側面は、前記組成物を有効成分として含む皮膚外用剤組成物を提供する。本発明の他の一側面は、前記組成物を有効成分として含む経口用組成物を提供する。一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールを有効成分として含む組成物は皮膚に塗布され、または経口投与される場合のいずれもにおいて優れた皮膚美白効果を示すことができる。
【0040】
サーチュイン1(Sirtuin-1、SIRT-1)は、Sir2(silencing-information-regulator-2)の哺乳動物ホモログであってNAD
+依存的なヒストン脱アセチル化酵素である。SIRT-1は、ヒストン、転写因子などの様々なタンパク質の脱リン酸化を調節することで、老化、ストレス抵抗性などに関与することが知られており、ヒト真皮細胞及び角質形成細胞でSIRT-1が活性化しまたは過発現した場合、紫外線の照射によるMMP−9の発現を抑制することでコラーゲン分解を防止することが知られている。このような結果は、SIRT-1の活性または発現調節剤が皮膚老化を抑制または予防することができるということを意味する。しかしながら、これまでのところ、SIRT-1の発現を増加させながら安定性があると知られた物質はない。
【0041】
本発明の一側面に係る皮膚改善用組成物において、前記皮膚改善は皮膚老化抑制を含む。
【0042】
本明細書において老化とは、年を取るにつれて生じる生体の衰退的な変化現象を意味し、生理活性の低下、体内代謝の低下、皮膚老化を含む。前記皮膚老化は、紫外線によってしわが生成し、保湿因子が減少し、再生能力が喪失した状態を含む。
【0043】
一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、SIRT-1の発現を4倍以上増加させることができるだけでなく、皮膚再生能力の指標であるTGF−β1の発現を増加させることで皮膚再生を促進し、また紫外線によるMMP−9の発現を抑制することで紫外線を照射されていない程度の低いレベルでMMP−9を発現させることができる。また、一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、皮膚の弾力と強度に重要な影響を及ぼすコラーゲンの分解、具体的に紫外線によるコラーゲンの分解を抑制することができる。さらには、一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、皮膚保湿に重要な因子であるフィラグリン(filaggrin)及びインボルクリン(involucrin)の発現を促進させることで皮膚乾燥を防止するとともに、紫外線による皮膚バリアの損傷を防止し、且つ損傷された皮膚バリアを素早く改善して皮膚表皮の水分を保たせることができる。そして、一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、皮膚結合組織を強固にして皮膚しわの生成を抑制するとともに、皮膚弾力を増進させることができる。すなわち、一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールを有効成分として含む組成物は、しわの改善または抑制剤、皮膚再生促進剤及び皮膚保湿剤として用いられていてよい。このように一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、皮膚しわ生成の抑制、皮膚再生能力の強化、皮膚保湿促進作用をすることで、老化、具体的に皮膚老化、より具体的に紫外線による皮膚老化を抑制または予防する効果に優れている。
【0044】
本発明の他の一側面において、シリンガレシノールは、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実の抽出物として組成物に含まれていてよく、好ましくは、老化の抑制に特に効果的な分画にて含まれていてよい。
【0045】
本発明の一側面に係る前記組成物は、皮膚外用剤組成物を含む。本発明の他の一側面は、シリンガレシノールを有効成分として含む経口用組成物を提供する。シリンガレシノールを有効成分として含む組成物は、皮膚に塗布され、または経口投与された場合のいずれもにおいて優れた老化抑制効果を示すことができる。
【0046】
本発明の一側面に係る組成物は、化粧料組成物を含む。前記化粧料組成物は、皮膚美白効果を示すことができ、具体的にシミ、そばかす、ほくろ、肌のくすみ、皮膚色素沈着を改善または予防することができる。
【0047】
本発明の一側面は、シリンガレシノールを有効成分として含む化粧料組成物を提供する。前記化粧料組成物は老化抑制効果を示すことができ、具体的に皮膚しわ生成の抑制、皮膚再生能力の強化、皮膚バリア機能の強化、皮膚保湿の促進などによって皮膚老化を抑制することができる。
【0048】
本発明に係る化粧料組成物は、局所適用に適したあらゆる剤形で提供されてよい。例えば、溶液、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、油相に水相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、固体、ゲル、粉末、ペースト、泡沫(foam)またはエアロゾル組成物の剤形で提供されてよい。こうした剤形の組成物は、当該分野における通常の方法によって製造されてよい。
【0049】
本発明に係る化粧料組成物は、前記物質以外に、主効果を損傷させない範囲内で、好ましくは、主効果に相乗効果を与え得る他の成分を含んでよい。具体的に、本発明に係る化粧料組成物の皮膚美白効果を上昇させることができるコウジ酸、アルブチン、またはアスコルビン酸誘導体をさらに含んでよい。また、本発明に係る化粧料組成物は、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、有機および無機顔料、香料、冷感剤または制汗剤をさらに含んでよい。前記成分の配合量は、本発明の目的および効果を損なわない範囲内で当業者が容易に選定可能であり、その配合量は、組成物の全重量を基準として、0.01〜5重量%、具体的に0.01〜3重量%であってよい。
【0050】
本発明の一側面に係る組成物は薬学組成物であってよい。前記薬学組成物は、皮膚美白効果を示すことができ、具体的にシミ、そばかす、ほくろ、肌のくすみといった皮膚色素沈着を改善または治療することができる。
【0051】
本発明の一側面に係る組成物は薬学組成物であってよい。前記薬学組成物は、老化抑制効果を示すことができ、具体的に皮膚しわの生成抑制、皮膚再生能力の強化、皮膚バリア機能の強化、皮膚保湿の促進などによって皮膚老化を予防または治療することができる。
【0052】
本発明の一側面に係る薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などに投与されていてよい。
【0053】
経口投与のための剤形としては、錠剤、丸剤、軟質及び硬質カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、液剤、乳濁剤またはペレット剤であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらの剤形は、有効成分の他に希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースまたはグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸、またはポリエチレングリコール)、または結合剤(例:マグネシウムアルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリジン)を含有してよい。場合に応じて、崩解剤、吸収剤、着色剤、香味剤、または甘味剤などの薬剤学的添加剤を含有してよい。前記錠剤は、通常的な混合、顆粒化、またはコーティング方法により製造されてよい。
【0054】
非経口投与のための剤形としては、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁剤、乳液剤、坐剤、パッチまたは噴霧剤であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0055】
本発明の一側面に係る薬学組成物の有効成分は、投与を受ける対象の年齢、性別、体重、病理状態およびその深刻度、投与経路または処方者の判断によって変わり得る。こうした因子に基づいた適用量の決定は当業者の水準内にあり、その1日投与量は、例えば、0.1mg/kg/日〜100mg/kg/日、より具体的には5mg/kg/日〜50mg/kg/日であってよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0056】
本発明の一側面に係る前記組成物は食品組成物であってよい。前記食品組成物は、嗜好食品または健康食品組成物を含む。
【0057】
前記食品組成物の剤形は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、ドリンク剤のような液剤、キャラメル、ゲル、バーなどに剤形化することができる。各剤形の食品組成物は、有効成分の他に当該分野において通常に用いられる成分を剤形または使用目的に応じて当業者が難なく適宜選定し配合することができ、他の原料と同時に適用する場合、相乗効果が生じることがある。
【0058】
前記有効成分の投与量の決定は当業者の水準内にあり、その1日投与用量は、例えば、0.1mg/kg/日〜5000mg/kg/日、より具体的には、50mg/kg/日〜500mg/kg/日であってよいが、必ずしもこれに制限されるのではなく、投与しようとする対象の年齢、健康状態、合併症などといった様々な要因によって変わり得る。
【0059】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。なお、これらの実施例及び実験例は、本発明に関する理解を助けるための目的にて例示したものに過ぎず、本発明の範疇及び範囲がそれらによって制限されるものではない。
【0060】
[実施例]シリンガレシノールの分離及び分析
1.高麗人参の実の前処理
生高麗人参の実を収穫し、種を分離して除去した後、高麗人参の実の果皮を除去し果肉のみを日光乾燥または熱風乾燥して、高麗人参の実の果肉乾燥物を製造した。
【0061】
2.高麗人参の実の果肉抽出物からシリンガレシノールの分離及び分析
先に製造した高麗人参の実の果肉乾燥物1kgに水または酒精3Lを加えて常温または還流抽出しろ過した後、40〜45℃で減圧濃縮して、高麗人参の実の果肉抽出物300gを得た。抽出物にエーテル処理を施して脂溶性成分を除去した後、ブタノールで粗サポニンを抽出及び濃縮した。これを分離、精製してシリンガレシノールを得、その具体的な方法は次のとおりである。先ず、試料194gを逆相コラムクロマトグラフィー(reversed−phase(ODS)column-chromatography)にて精製し、このとき、溶出溶媒として、最初は100%水を用い、メタノールを10%ずつ徐々に増加させて、最終的には100%メタノール溶媒を用いた。その結果、GB−1〜GB−10分画物を得、これらの分画物のうち、人間の長寿遺伝子とも呼ばれるSIRT-1(Sirtuin-1)発現活性を示した分画GB−3を選別し濃縮した後、50%水溶性メタノール(aqueous-methanol)を用いてセファデックスLH−20コラムクロマトグラフィー(Sephadex-LH−20-column-chromatography)を行った。得た分画物のうち、SIRT-1発現活性を示したGB−3−6(3F)を選別し濃縮した後、クロロホルム:メタノール(10:1)を展開溶媒として予備シリカゲル(preparative-silica-gel)TLCを行い、その結果、Rf値0.67の活性分画を精製した。前記分離及び精製方法を図式化して
図1に示した。
【0062】
NMR分光分析とデータベース検索を行って、分離及び精製した活性化合物をシリンガレシノール(syringaresinol)と同定することができた。これを再確認するために質量(mass)分析を行い、ESI−massをpositive-modeで測定した結果、[M+Na]+がm/z-440.9、[2M+Na]+がm/z-858.9とそれぞれ観察され、分子量が418であることが分かった。また、NMR分光分析を行った結果、一般式3で示すような結果が得られた。これによって、前記分離・精製した活性化合物は、シリンガレシノールであることが確認された。
【0064】
このように高麗人参の実の果肉からシリンガレシノールを分離した。
【0065】
[実験例1]細胞毒性程度の確認
シリンガレシノールに対し、ねずみの色素細胞における細胞毒性程度について、以下のような方法にて確認した。
【0066】
C57BL/6マウス由来のねずみの色素細胞(Mel−Ab-cell)(Dooleyなどの方法にて処理)を、DMEM(Dulbeccos-modified-Eagles-media)に、10%牛胎盤血清、100nMの12−O−テトラデカノイルホルボール(tetradecanoylphorbol)−13−アセテート、1nMコレラ毒素(cholera-toxin)を添加した培地で、37℃、5%CO
2の条件下で培養した。培養したMel−Ab細胞を0.25%トリプシン−EDTAで取り外し、24−ウェルプレートに10
5細胞/ウェル(cells/well)の濃度で細胞を培養した後、前記実施例のシリンガレシノールに対して処理を施した。24時間培養を行い、リン酸塩緩衝溶液(pH7.2)で洗浄し、0.1%クリスタルバイオレット(crystal-violet、シグマ)、10%エタノール(Et−OH)を用いて5分間常温で染色を行った。染色されていないクリスタルバイオレット(crystal-violet)を完全に除去した後、リン酸塩緩衝溶液(pH7.2)で3回洗浄した。染色された細胞からクリスタルバイオレットを抽出するために、95%エタノール(Et−OH)を1時間常温で処理し、抽出液をパーキンエルマー(PerkinElmer)(Lambda-25-spectrophotometer)にて540nmの波長で測定した吸光度に基づき、次式1で細胞の生存率(%)を計算した。その結果を下表1に表した。
【0069】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは皮膚細胞の毒性を格段に減少させ、細胞の生存率を高めることができる。
【0070】
[実験例2]メラニン生成抑制効果の評価
実施例で得たシリンガレシノールのメラニン色素生成抑制効果を調べるために、ねずみの色素細胞を利用した。
【0071】
先ず、57BL/6マウス由来のねずみ色素細胞(Mel−Ab-cell)(Dooleyなどの方法で処理)をDMEM(Dulbeccos-modified-Eagles-media)に10%牛胎盤血清、100nMの12−O−テトラデカノイルホルボール(tetradecanoylphorbol)−13−アセテート、1nMのコレラ毒素(cholera-toxin)を添加した培地で、37℃、5%CO
2の条件下で培養した。培養したMel−Ab細胞を0.25%トリプシン−EDTAで取り外し、24−ウェルプレートに10
5細胞/ウェル(cells/well)の濃度で細胞を培養した後、二日間から3日連続でそれぞれ陽性対照群として10ppmのハイドロキノン及び実施例で収得したシリンガレシノールを加えて培養した。次いで、培養液を除去し、PBSで洗浄した後、1N水酸化ナトリウムで細胞を溶かし、400nmで吸光度を測定した。測定した吸光度に基づいて、次式2でメラニン生成抑制率(%)を計算し、その結果を下記の表2に表した。
【0074】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは、優れたメラニン生成抑制率(%)を示し、その効果は陽性対照群であるハイドロキノンよりも遥かに優れている。すなわち、シリンガレシノールは、メラニン生成を抑制し、優れた皮膚美白効果を有することが分かる。
【0075】
[実験例3]チロシナーゼ活性抑制効果の評価
シリンガレシノールがメラニン合成に最も重要な酵素であるチロシナーゼの活性を抑制するか否かを調べるために、次のような実験を実施した。
【0076】
0.1Mのリン酸カリウム(Potassium-Phosphate)緩衝液(pH6.8)、0.03%のL−チロシン基質溶液(0.3mg/ml-in-D.W)、1.42-units/μlのチロシナーゼ酵素溶液(リン酸塩緩衝液)を反応液の製造に用いた。反応液は0.1Mのリン酸塩緩衝液500μl、L−チロシン15μg、シリンガレシノール50μlを入れた後、最終体積が1500μlになるように蒸留水を添加して製造した。また実質的に等しい過程を通じて、シリンガレシノールの代わりにコウジ酸を含むように製造し、これを陽性対照群とした。実験に用いたすべての試料の濃度は10ppmとした。前記反応液にキノコ由来の10unitsのチロシナーゼを入れ、37℃で10分間反応させた後、速やかに氷で5分間放置して反応を中断させた。475nmで吸光度を測定して反応生成物であるドーパクロム(dopachrome)の合成率を求め、これに基づき、チロシナーゼ活性抑制率(%)を計算した。その結果を下記の表3に表した。
【0078】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは優れたチロシナーゼ活性抑制効果を示した。すなわち、シリンガレシノールは、メラノサイトのメラニン色素形成を根本的に遮断することで優れた美白効果を示し得ることが分かる。
【0079】
[実験例4]自由ラジカル消去能の測定
それ自体がラジカル形態をなしている100M濃度のDPPH(Diphenyl-Picryl-Hydrazile)を99%エタノールに溶かしてラジカル溶液を用意した。シリンガレシノールを濃度(μg/ml)別に蒸留水に溶かして用意した後、ラジカル溶液とシリンガレシノールとを混合して反応液を製造した。また、シリンガレシノールを含まない反応液を製造し、これを陰性対照群とし、ビタミンC(Vit-C)を入れて反応液を製造し、これを陽性対照群とした。反応液を37℃で30分間十分に反応させた後、515nmで吸光度を測定してラジカルの消失を評価した。陰性対照群を100にして換算した各試験物質の消去能を
図2に示した。
【0080】
図2に示すように、シリンガレシノールは、濃度依存的に自由ラジカルを消去することができ、この効果は、ビタミンCよりも優れている。すなわち、シリンガレシノールは、極めて優れた抗酸化効果を有することが分かる。
【0081】
[実験例5]インターロイキン−6の遺伝子発現増加効能の評価
インターロイキン−6(IL−6)は、角質形成細胞などから分泌するサイトカインの一種であって、IL−6遺伝子が活性化して分泌量が多くなると、肌色と皮膚のトーンが明るくなるとともにシミや肌のくすみの生成が抑制され、皮膚色素沈着が抑制される。本実験では、シリンガレシノールが皮膚角質形成細胞のIL−6遺伝子発現を増加させることができるか否かを評価した。
【0082】
角質形成細胞に10ppm及び100ppmのシリンガレシノールを処置し、24時間後に細胞を収去して、10mlのリン酸塩緩衝液(Phosphate-Buffered-Saline、PBS)で細胞を2回洗浄し、次いで、トリゾール試薬(Trizol-reagent、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を用いて細胞内の全RNAを分離した。分離したRNAをキアゲン社製のRNAキット(Qiagen-RNeasy-kit、Qiagen、Valencia、CA)を用いてもう1回精製した後、分離したRNAからインビトロジェン社製の逆転写キット(Superscript-Reverse-Transcriptase(RT)II-kit、Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いてcDNAを合成した。次いで、逆転写重合酵素連鎖反応(real-time−reverse-transcription-polymerase-chain-reaction、Q−RT−PCR)にてインターロイキン−6の遺伝子発現の変化を定量的に分析した。遺伝子発現パターンの変化はアプライドバイオシステムズ社製のタックマン遺伝子発現分析キット(TaqMan-gene-expression-assay-kit、Applied-Biosystems、ForsterCity、CA)を用いて評価した。用いたプライマーはインターロイキン−6:Hs00174360_m1であった。各細胞からインターロイキン−6が発現した量をリアルタイムPCR(Real−Time-PCR)で確認し、何の処理も施していない対照群を基準とした結果は、下記の表4のとおりである。
【0084】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは、濃度依存的に角質形成細胞でインターロイキン−6の発現を増加させることができる。すなわち、シリンガレシノールは、インターロイキン−6をメラノサイトに分泌させてメラノサイトの周辺環境を変えることでメラニン色素を少なく産生するように誘導することができ、これは、シリンガレシノールが優れた皮膚美白効果を有することを意味する。
【0085】
[実験例6]外用剤としての美白効果の評価
シリンガレシノールのヒト皮膚に対する美白効果を調べるために、次のような実験を行った。
【0086】
先ず、健康な12人の男性を対象に被検者の上膊部位に直径1.5cmの穴があいた不透明テープを貼り付けた後、各被検者の最小紅斑量(Minimal-Erythema-Dose)の1.5〜2倍程度の紫外線(UVB)を照射して皮膚の黒化を誘導した。-紫外線(UVB)を照射して後、試験物質としてそれぞれ実施例で得たシリンガレシノール1%(溶媒は1,3−ブチレングリコール:エタノール=7:3)、ハイドロキノン(陽性対照群)1%、溶媒(vehicle)(陰性対照群)1%だけを塗布し、一箇所には何も塗布しないまま、10週間にわたり状態変化を観察した。1週単位で肌色を色差計CR2002(日本、ミノルタ社製)で測定した。各試験物質の塗布開始時点と塗布完了時点での色差(ΔL
*)を次式3で計算し、これを下記の表5に表した。一方、美白効果は試験物質塗布部位と対照群部位のΔL
*の比較で判定し、ΔL
*値が2程度である場合は沈着した色素の美白化が明らかであると見ることができ、1.5以上の程度である場合は美白効果があると判定することができる。
【0089】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは、陰性対照群だけでなく、陽性対照群であるハイドロキノンよりも優れた肌色の明るさを示した。この結果、シリンガレシノールが皮膚細胞の死滅を抑制するとともに、紫外線によって生成された色素沈着を改善して肌色を明るくすることで優れた皮膚美白効果を有することが分かる。
【0090】
[実験例7]外用剤としての肌色の均一性の評価
シリンガレシノールのヒト皮膚に対する肌色の均一性の増進効果を調べるために、次のような実験を行った。
【0091】
先ず、前記実験例6と実質的に等しい方法にて募集した被検者に対して皮膚塗布を実施した。肌色の均一性を評価する方法は、皮膚から任意に選定した三箇所の部位に対する肌色の明るさを測定した後、該三箇所の測定値の標準偏差を求め、標準偏差が小さいほど肌色の明るさが均一であると判定した。測定機器と方法は実験例6と同一のものとした。
【0093】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは、陰性対照群だけでなく、陽性対照群であるハイドロキノンよりも優れた肌色の均一性を示した。この結果から、シリンガレシノールが皮膚を均一にすることで均一な肌色に改善させる効果に優れていることが分かる。
【0094】
[実験例8]角質量減少効果の評価
シリンガレシノールが皮膚角質量を減少させることができるか否かを調べるために、皮膚疾患のない20〜30代の成人男女50人に対し、実験例6と同じ濃度のシリンガレシノール溶液を下膊内側に塗布し、24時間経過後にチャームビュー(Charm-view;Moritex、Japan)を利用して角質減少量を測定した。塗布開始前の恒温、恒湿条件(24℃、湿度40%)でチャームビューを利用して測定した初期皮膚角質量値を基本値として、24時間経過後の皮膚角質量の変化を測定し、その結果を下記の表7に表した。
【0096】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは、対照群に比べて遥かに優れた皮膚角質の減少効果を示している。この結果から、シリンガレシノールはメラニンを含む古い角質を除去することで、優れた皮膚美白効果を有し得ることが分かる。
【0097】
[実験例9]経口摂取時の美白効果及び肌色の均一性増加試験
シリンガレシノールが経口摂取時でも美白効果を示すかを調べるために、茶色-ギニー・ピッグ(ginea-pig)を動物モデルと選定した。全ギニーピッグに紫外線を照射して最小紅斑量を測定し、それぞれ10匹ずつ群分けした後、最小紅斑量の紫外線を1日1回ずつ総3回照射した。ギニーピッグの食餌は飼料を5週間自由給食して行われ、飼料中にシリンガレシノール1%と陽性対照群としてのビタミンC(Vit-C)1%を含ませた。色素沈着は色差計を利用して実験例6と実質的に等しい方法にて測定し、その結果を下記の表8に表した。
【0099】
前記結果に見られるように、経口摂取時にシリンガレシノールはビタミンCよりも優れた美白効能を示した。これはシリンガレシノールが外用剤として塗布する場合だけはなく、経口摂取の場合でも優れた皮膚美白効果を示し得ることを意味する。
【0100】
また、肌色の均一性の評価を実験例7と実質的に等しい方法にて行い、その結果を下記の表9に表した。
【0102】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは陰性対照群だけでなく陽性対照群であるビタミンCよりも優れた肌色の均一性を示した。この結果から、経口摂取したシリンガレシノールが皮膚を均一にすることで均一な肌色に改善させる効果に優れていることが分かる。
【0103】
[実験例10]ヒト角質形成細胞と線維芽細胞でのSIRT-1発現促進効果の評価
ヒト角質形成細胞及び線維芽細胞でのシリンガレシノールのSIRT-1遺伝子発現促進効果を評価するために、次のような実験を行った。
【0104】
1.細胞株と細胞培養
ヒト角質形成細胞株(human-keratinocyte)であるHaCaT若しくはヒト線維芽細胞株(human-fibroblast)であるHDFを10%ウシ胎仔血清(fetal-bovin-serum)を含むDMEM培地(Dulbecco’s-Modified-Eagle's-Medium、Gibco、1210−0038)で37℃、5%CO
2の条件下で培養した。
【0105】
2.SIRT-1発現増加効果の評価
先に培養した細胞にシリンガレシノールをDMSOに溶かし、20、50、100μMの濃度で24時間処理した。別途に培地体積1/1000のDMSOを処理した細胞を陰性対照群とした。各試料を処理した細胞を冷たいPBSで2回洗浄した後、トリゾール試薬(TRIzol-agent、Invitrogen)でRNAを抽出した。前記抽出して定量した1μg/μlのRNAと逆転写システム(Promega)を用いてcDNAを合成した。合成したcDNA及びSIRT-1とGAPDHの各遺伝子に対し、予めデザインされたプライマー(Primer)とプローブ(probe)(Applied-biosystems;SIRT-1、Hs01009006_m1;GAPDH、Hs99999905_m1)を利用して各遺伝子の発現様相を測定した。PCR反応と分析は、Rotor−Gene-3000システム(Corbett-Research、Sydney、Australia)を利用した。結果を
図3(角質形成細胞)及び
図4(線維芽細胞)に示した。
【0106】
図3及び
図4に示すように、シリンガレシノールは、濃度依存的にヒト角質形成細胞と線維芽細胞でのSIRT-1の発現を4倍以上増加させることができる。
【0107】
[実験例11]ヒト角質形成細胞でのフィラグリンとインボルクリンの発現促進効果の評価
ヒト角質形成細胞でのシリンガレシノールのフィラグリン(filaggrin)とインボルクリン発現促進効果を評価するために、次のような実験を行った。
【0108】
1.細胞株と細胞培養
ヒト角質形成細胞株(human-keratinocyte)であるHaCaT細胞を実験例10と実質的に等しい方法にて培養した。
【0109】
2.フィラグリンとインボルクリンの発現増進効果の評価
実験例10と実質的に等しい方法にてcDNAを合成し、合成したcDNA及びフィラグリン、インボルクリンとGAPDHの各遺伝子に対し、予めデザインされたプライマー(Primer)とプローブ(probe)(Applied-biosystems;SIRT-1、Hs01009006_m1;GAPDH、Hs99999905_m1)を利用して各遺伝子の発現様相を実験例1と実質的に等しい方法にて測定した。その結果を
図5に示した。
【0110】
図5に示すように、シリンガレシノールは、濃度依存的にヒト角質形成細胞でフィラグリンとインボルクリンの発現を増加させた。この結果から、シリンガレシノールは、皮膚バリア機能を強化することで皮膚保湿効果を有することが分かる。
【0111】
[実験例12]ヒト角質形成細胞でのMMP−9の発現及びコラーゲン分解抑制効果の評価
ヒト角質形成細胞でのシリンガレシノールのMMP−9の発現及びコラーゲン分解抑制効果を評価するために、次のような実験を行った。
【0112】
1.細胞株と細胞培養
ヒト角質形成細胞株(human-keratinocyte)であるHaCaT細胞を実験例10と実質的に等しい方法にて培養した。
【0113】
2.紫外線の照射によって増加されたMMP−9発現及びコラーゲン分解の抑制効果の評価
前記培養した細胞株をトリプシン処理して単一細胞懸濁液を調製し、6−ウェルに2×10
5個ずつ分注し、24時間培養した。その後、ウシ胎仔血清が含まれていないDMEM培地に交換し、さらに24時間培養した後、DMSOに溶かした。50μM濃度のシリンガレシノールを処理した。24時間処理した後、リン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄し、リン酸緩衝溶液を入れた状態で30mJ/cm
2濃度のUVBを照射した。リン酸緩衝溶液を捨てて、再び同じ濃度のシリンガレシノールが含まれた培地に交換した。対照群として、シリンガレシノールを処理していない細胞を同法にて培養した。紫外線の照射24時間後に、シリンガレシノールを処理した細胞と処理していない細胞をリン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄し、トリプシンを処理して細胞を収去し、これに8Mのウレア、2%のCHAPS、50mMのDTT、2Mのチオウレア(thiourea)、2mMのPMSF、100mg/mlのロイペプチン(leupeptine)のタンパク質抽出緩衝溶液500mlを処理した後、10分間常温で放置した。その後、4℃で10分間、15,000gの重力加速度で遠心分離し、上層液を収去してから、バイオラッドタンパク質染色剤
TM(BIO−Rad-Protein-Dye-Reagent
TM)を利用してタンパク質を定量した。20mgのタンパク質を8%のSDS−PAGEを利用して大きさ別に分離し、50Vで12時間PDF(BioRad)膜にブロッティング(blotting)した。このブロットを5%無脂肪牛乳溶液で1時間ブロッキングした後、一次抗体としては単一抗体の抗MMP−9(Santa-Cruz、CA、USA)と単一抗体の抗コラーゲンIV(Abcam、Cambridge、MA、USA)を、二次抗体としては、 ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horse-radish-peroxidase)が結合された抗マウスIgG(amersham)を利用し、アマシャム社製のenhanced-chemiluminescence(ECL)キットを利用して反応させた。反応させたブロットは、X線富士フィルムに感光させてから現像し、タンパク質発現程度を確認した。フィルム上のバンドはパワールック(PowerLook)2100-XL(umax)を利用してスキャンした後、イメージマスター2Dエリート(Amersham-Bioscience)のイメージ分析プログラムを利用して分析し、その結果を
図6に示した。
【0114】
図6に示すように、紫外線の照射によって角質形成細胞のMMP−9発現が増加し、且つコラーゲン分解が促進され、コラーゲンの量が減少している。しかし、シリンガレシノールを処理した場合、紫外線の照射によるMMP−9発現の増加が抑制されてコラーゲン分解を防止するので、紫外線によるコラーゲン生成減少を防止することができる。すなわち、シリンガレシノールは、MMP−9の発現を抑制し、また、コラーゲンの分解を抑制して皮膚しわを予防及び改善し、さらには、皮膚老化を抑制することができることを確認することができる。
【0115】
[実験例13]線維芽細胞でのTGF−β1発現促進効果の評価
線維芽細胞でシリンガレシノールのTGF−β1発現促進効果を評価するために、次のような実験を行った。
【0116】
1.細胞株と細胞培養
ヒト線維芽細胞株(human-fibroblast)であるHDFを実験例10と実質的に等しい方法にて培養した。
【0117】
2.TGF−β1発現増加効果の評価
先に培養した細胞にシリンガレシノールをDMSOに溶かし、20、50、100μMの濃度で24時間処理した。培養後、24時間目に細胞培養液を採取した。
【0118】
R&Dシステム(R&D-system、アメリカ)のELISAキット(QuantikineTM-high-sensitivity-ELISA-kit)を使用して製造メーカの指針に従い、採取した細胞培養液で生成されたTGF−β1の量を測定した。TGF−β1の量の測定に必要な試料は、いずれも前記キットから提供するものを使用した。先ず、TGF−β1抗体が均一に塗布された96−ウェルマイクロプレートに採取した細胞培養液を添加し、37℃で1時間抗原−抗体反応が生じるようにした。ウェル内の細胞培養液を除去し、PBS緩衝溶液で3回洗浄した。各ウェルに発色酵素のホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish-peroxidase)が結合された二次抗体を添加し、1時間にわたって抗原−抗体反応が生じるようにした。次いで、各ウェルに発色誘発物質のテトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine)を入れ、常温で15分間反応させた後、1Nの硫酸溶液を添加して反応を止めさせた。分光光度計で450nmの波長での吸光度を測定した。標準溶液を利用して標準曲線を作成し、測定した吸光度を標準曲線に代入して各試料が添加された細胞培養液のTGF−β1生成量を計算した。その結果は下記の表10のとおりである。
【0120】
前記結果に見られるように、シリンガレシノールは、濃度依存的に線維芽細胞のTGF−β1生成を増加させた。この結果から、シリンガレシノールは、TGF−β1生成を増加させることで皮膚再生を促進し、さらには、皮膚老化を防止し且つしわ生成の抑制効果を改善することができることが分かる。
【0121】
[実験例14]無毛マウスの皮膚でのしわ生成抑制及び経皮水分喪失量抑制の効果の評価
シリンガレシノールのしわ生成抑制の効果及び経皮水分喪失量の抑制を評価するために、次のような実験を行った。
【0122】
1.無毛マウスの処理
体重が25〜39g程度の30週齢の雌無毛マウス(Skh:HR−1)をCharles-River-Laboratories社(Wilmington、MA、U.S.A.)から購入して使用した。実験に供されるマウスを一週間動物飼育室で適応させた後、正常群、試料処置群とに群当たり5匹ずつ分けて実験期間の間飼育した。飼育は12時間周期で照明する明暗条件、23.2℃の温度、及び55.10%の湿度条件下、餌と水は自由に摂取させながら行った。
【0123】
2.シリンガレシノールの皮膚塗布または経口投与による皮膚しわ生成抑制の効果の評価
試料処置群には、1%濃度で溶媒(1,3−ブチレングリコール:エタノール=7:3)に溶かしたシリンガレシノールをパッチの形態で2日間2回処置するか、200mg/kg濃度のシリンガレシノールを4週間経口投与した。対照群には、シリンガレシノールの代わりに同じ量の溶媒を同じ方法にて措置した。シリンガレシノールを塗布した群及びその対照群、シリンガレシノールを経口投与した群及びその対照群に対し、それぞれ180mJ/cm
2のUVBを照射した。紫外線を照射する前のしわ状態と紫外線の照射後の同じ部位に対するしわ状態をレプリカ(replica)で写してビシオメーターシステム(Visiometer-system;C+K社製)で皮膚しわを測定した。皮膚しわの変化量を次式4で計算し、その結果を
図7に示した。
【0125】
図7に見られるように、塗布及び経口投与対照群の皮膚しわは、それぞれ230±35%、224±45%と増加したのに対し、シリンガレシノールを塗布した群及び経口投与した群の皮膚しわは、それぞれ121±35%、123±25%と極めて僅かな増加のみを示した。この結果から、シリンガレシノールは、優れたしわ防止抑制効果を有することを確認することができる。
【0126】
3.経皮水分喪失量(TEWL、transepidermal-water-loss)の測定
実験開始3週後にDelfin-vapometer-wireless(Technologies-ltd.SWL-4102)を利用して各群の無毛マウスの背部位の皮膚から経皮水分喪失量を測定し、その結果を
図8に示した。測定当時の環境条件は、相対湿度60±5%、温度25.5±0.5℃であった。
【0127】
経皮水分喪失量は、皮膚から発散する水分量であって、この数値が高いほど皮膚の保湿機能が落ち、皮膚固有のバリア機能が損傷されたことを意味する。したがって、経皮水分喪失量は、皮膚バリア機能、皮膚バリア損傷後の回復度合い、紫外線のような刺激に対する皮膚保護効果などを判定する際に指標として用いることができる。
【0128】
図8に示すように、UVを照射した場合に皮膚バリアが損傷されて皮膚保湿機能が落ち、また、シリンガレシノールを経口摂取または塗布した場合に紫外線によって誘発される経皮水分喪失量が減少している。この結果から、シリンガレシノールは、紫外線による皮膚水分喪失を抑えて優れた皮膚バリア機能の回復、外部刺激に対する皮膚保護、及び皮膚保湿効果を有することが分かる。
【0129】
本発明の一側面に係る組成物の剤形例を以下で説明するが、他の種々の剤形としても応用可能であり、これらは、本発明を限定するためのものではなく、本発明を具体的に説明するためのものに過ぎない。
【0130】
[剤形例1]ローション
下記の表11に表した組成で通常の方法にてローションを製造する。
【0132】
[剤形例2]クリーム
下記の表12に表した組成で通常の方法にてクリームを製造する。
【0134】
[剤形例3]パック
下記の表13に表した組成で通常の方法にてパックを製造する。
【0136】
[剤形例4]軟質カプセル剤
シリンガレシノール100mg、大豆抽出物50mg、大豆油180mg、紅参抽出物50mg、パーム油2mg、パーム硬化油8mg、黄蝋4mg、及びレシチン6mgを混合し、通常の方法にて軟質カプセル剤を製造する。
【0137】
[剤形例5]錠剤
シリンガレシノール100mg、大豆抽出物50mg、葡萄糖100mg、紅参抽出物50mg、澱粉96mg、及びマグネシウムステアレート4mgを混合し、30%エタノールを40mg添加して顆粒を形成した後、乾燥し、打錠して錠剤を製造する。
【0138】
[剤形例6]健康食品
シリンガレシノール................... 1000mg
ビタミン混合物
ビタミンAアセテート................. 70μg
ビタミンE........................... 1.0mg
ビタミンB1......................... 0.13mg
ビタミンB2......................... 0.15mg
ビタミンB6......................... 0.5mg
ビタミンB12....................... 0.2μg
ビタミンC........................... 10mg
ビオチン............................. 10μg
ニコチン酸アミド..................... 1.7mg
葉酸................................. 50μg
パントテン酸カルシウム............... 0.5mg
無機質混合物
硫酸第一鉄...........................1.75mg
酸化亜鉛.............................0.82mg
炭酸マグネシウム..................... 25.3mg
第一リン酸カリウム................... 15mg
第二リン酸カルシウム................. 55mg
クエン酸カリウム..................... 90mg
炭酸カルシウム....................... 100mg
塩化マグネシウム..................... 24.8mg
前記ビタミン及びミネラル混合物の組成比は、比較的健康食品に適合した成分を好適な実施例に従い混合組成したが、その配合比を任意に変形実施してもよい。
【0139】
[剤形例7]健康飲料
シリンガレシノール.................... 1000mg
クエン酸.............................. 1000mg
オリゴ糖.............................. 100g
タウリン.............................. 1g
精製水................................ 残量
通常の健康飲料の製造方法にて前記成分を混合した後、約1時間にわたって約85℃で撹拌加熱して得た溶液をろ過し、滅菌して得る。