【実施例】
【0040】
以下、実施例のガスコンロ用燃焼器について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0041】
(参考例1)
参考例1のガスコンロ用燃焼器について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1〜
図3に示されるように、本例のガスコンロ用燃焼器1は、バーナ部2と、五徳部3とを有している。なお、本例において、バーナ部2によって加熱される底部61を有する調理器具6は、鍋であり、底部は鍋底である。
【0042】
バーナ部2は、バーナヘッド21を備えている。本例では、具体的には、バーナヘッド21は、予混合ガス230を噴出させる多数の炎孔211を有する環状の形状を呈している。バーナヘッド21は、より具体的には、バーナ部2における上下方向の中心軸に向かって、その燃焼面が斜め下方に傾斜するように設けられている。また、バーナヘッド21の燃焼面は、金属繊維がニット状に編み込まれてなるメタルニット22にて覆われている。なお、
図2では、バーナヘッド21の燃焼面に表れる炎孔211を説明するために、メタルニット22の一部が省略されて描かれている。
【0043】
本例では、具体的には、バーナ部2は、バーナヘッド21の下方に、バーナヘッド21に予混合ガス230を供給するための予混合ガス供給路23を有している。予混合ガス供給路23は、第1環状空間231aを有する基台部231と、基台部231の上面から上方に延設されるとともに、第1環状空間231aと連通する第2環状空間232aを有するヘッド支持部232とを有している。バーナヘッド21は、ヘッド支持部232により支持されている。基台部231は、側面に開口部231bを有している。予混合ガスは、開口部231bから第1環状空間231aに供給される。なお、予混合ガスは、具体的には、燃料ガス源(不図示)から供給される都市ガス等の燃料ガスと、送風ファン(不図示)等によって供給される空気とが混合されることにより準備される。また、第1環状空間231aと第2環状空間232aとの間には、予混合ガスの流れを整流するとともに、予混合ガスの混合性を高めるための整流部材233が配置されている。なお、整流部材233は、第1環状空間231a、第2環状空間232aに配置されていてもよい。また、基台部231およびヘッド支持部232における環内には、断熱部材24が配置されている。
【0044】
五徳部3には、バーナ部2によって加熱される底部61を有する調理器具6が載置される。ここで、五徳部3は、天板部31と、複数の流路壁32とを有している。天板部31は、バーナヘッド21の周囲を取り囲むように配置されている。本例では、天板部31は、金属材料より、環状に形成されている。一方、複数の流路壁32は、天板部31の上方面に立設されている。本例では、流路壁32は、金属材料より形成されている。
【0045】
そして、ガスコンロ用燃焼器1では、天板部31と流路壁32と調理器具6の底部61とによって区画される空間部が、バーナ部2の燃焼によって生じた排気ガスを排気するための排気ガス流路4とされる。
【0046】
本例では、複数の流路壁32は、具体的には、円弧状の形状を呈している。そして、円弧状の各流路壁32が、互いに離間した状態で、
図3に示されるように、バーナ部2の中心部を中心とする同心円の円周状に配置されている。本例では、3つの同心円の円周状に、円弧状の各流路壁32が配置されている。各流路壁32の高さは、12mmである。
【0047】
本例では、排気ガス流路4は、各流路壁32が上記のように配置されることにより、バーナ部2の中心部を中心とする円の円周に沿って円弧状に形成される円弧状流路41を複数含んでいる。
図3より理解されるように、複数の円弧状流路41は、バーナ部2の中心部を中心とする円の径方向で互いに接するように配置されている。互いに隣り合うように配置された各円弧状流路41のうち、内方側に配置される円弧状流路41と外方側に配置される円弧状流路41とは、連通している。
【0048】
より具体的には、最も内方側に配置された円弧状流路41は、バーナヘッド21の上方に形成される燃焼空間25と連通している。そして、燃焼空間25と円弧状流路41との連通口410は、バーナ部2の燃焼によって生じた排気ガスを排気ガス流路4に流入させるための流入口とされる。また、最も外方側に配置された円弧状流路41は、外部と連通している。円弧状流路41と外部との連通口411は、排気ガス流路4を流れた排気ガスを外部に放出するための排気口とされる。本例では、
図3に示される矢印Yのように、排気ガスは、バーナ部2の中心部を中心とする円の円周方向に沿っ
て内方側から外方側に向かって
蛇行しながら流れる。
【0049】
本例では、五徳部3は、上述した天板部31、流路壁32以外にも、複数の分割壁33を有している。分割壁33は、バーナ部2の中心部を中心とする円の径方向に沿って立設されている。分割壁33は、円周方向への排気ガスの流れを制限し、五徳部3を複数の領域に分割している。本例では、分割壁33は、環状の天板部31を4等分するように配置されている。分割壁33によって分割された各領域は、流入口410および排気口411を一つずつ有している。分割壁33の高さは、流路壁32の高さに揃えられている。なお、本例では、排気ガス流路4を構成するための空間部が、分割壁33によっても区画されている。
【0050】
また、本例では、五徳部3は、流路壁32の外周における機器前方に、排気ガス制限壁34を有している。排気ガス制限壁34は、排気ガス流路4から流出する排気ガスが機器前方に流出するのを抑制するためのものである。本例では、排気ガス制限壁34は、機器前方が下側となるようにバーナ部2を上方から見た場合に、90°を示す径方向の線T
90と、150°を示す径方向の線T
150との間のいずれかに第1の端部が存在するように配置されている。また、排気ガス制限壁34は、210°を示す径方向の線T
210と、270°を示す径方向の線T
270との間のいずれかに第1の端部と反対側の第2の端部が存在するように配置されている。
【0051】
本例では、ガスコンロ用燃焼器1は、バーナヘッド21の上方に、バーナヘッド21を覆い隠す被覆部材5が設けられている。被覆部材5は、環状の形状を呈している。被覆部材5の外周部は、天板部31における孔部310周辺部分によって支持されている。本例では、被覆部材5は、具体的には、セラミックからなる。なお、
図3では、被覆部材5は省略されている。
【0052】
次に、本例のガスコンロ用燃焼器の作用効果について説明する。
【0053】
本例のガスコンロ用燃焼器1において、五徳部3は、バーナヘッド21の周囲を取り囲むように配置された天板部31と、天板部31の上方面に立設された流路壁32とを有している。そして、本例のガスコンロ用燃焼器1は、五徳部3に調理器具6が載置された際に、天板部31と流路壁32と調理器具6の底部61とによって区画された空間部が、バーナ部2の燃焼によって生じた排気ガスを排気するための排気ガス流路4とされる。
【0054】
そのため、本例のガスコンロ用燃焼器1において、バーナ部による火炎は、燃焼器中心部で生じ、生じた排気ガスは、五徳部3の外周方向に向かって流れる。それ故、本例のガスコンロ用燃焼器1は、直径の異なる調理器具6が適用された場合であっても、火炎および排気ガスが上方へ溢れ出すおそれがない。
【0055】
また、本例のガスコンロ用燃焼器1は、燃焼によって生じた高温の排気ガスが、排気ガス流路4内を流れながら鍋等の調理器具6の底部61と十分に接触することができる。それ故、本例のガスコンロ用燃焼器1は、高温の排気ガスが調理器具6の底部61と接触する距離、時間を長くすることが可能となり、排気ガスの熱を効率良く、調理器具6の底部61へ伝熱させることができる。
【0056】
よって、本例のガスコンロ用燃焼器1は、使用する調理器具6の直径が制限され難く、高い熱効率を得やすい。
【0057】
また、本例のガスコンロ用燃焼器1は、円弧状流路41に沿って高温の排気ガスが円周方向に流れる。そのため、本例のガスコンロ用燃焼器1は、高温の排気ガスが調理器具6の底部61と接触する距離、時間を長くしやすく、調理器具6の底部61の直径によらず、排気ガスの熱をより効率良く、調理器具6の底部61へ伝熱させやすい。また、本例のガスコンロ用燃焼器1は、調理器具6の底部61の中心部を集中的に加熱しやすく、調理器具6の底部61の外方側へ行くほど温度が緩やかになる。それ故、本例のガスコンロ用燃焼器1は、例えば、調理器具6内の水を沸騰させる場合に、調理器具6の底部61の中心部付近にて沸騰させやすい。
【0058】
また、本例のガスコンロ用燃焼器1は、分割壁33を有しているので、排気ガス流路4を円の円周方向に分割することができる。そのため、本例のガスコンロ用燃焼器1は、分割された各領域において、高温の排気ガスを調理器具6の底部61と確実に接触させることができ、排気ガスの熱をより効率良く、調理器具6の底部61へ伝熱させやすい。
【0059】
また、本例のガスコンロ用燃焼器1は、排気ガス制限壁34を有しているので、排気ガス流路4を流出する排気ガスが機器前方に流出するのを抑制することができる。そのため、本例のガスコンロ用燃焼器1は、排気ガスが使用者側に流れ難くなり、使用者が比較的涼しく調理可能な環境を実現しやすい。
【0060】
また、本例のガスコンロ用燃焼器1は、バーナヘッド21の上方に、バーナヘッド21を覆い隠す被覆部材5が設けられている。そのため、本例のガスコンロ用燃焼器1は、調理器具6からこぼれ落ちる煮こぼれ等の液体がバーナヘッド21に直接付着するのを抑制することができ、バーナ部2による燃焼の安定性を向上させることができる。
【0061】
また、本例のガスコンロ用燃焼器1において、バーナヘッド21は、バーナ部2における上下方向の中心軸に向かって、その燃焼面が斜め下方に傾斜するように設けられている。そのため、本例のガスコンロ用燃焼器1は、バーナヘッド21が内向き上方に火炎を形成することができ、五徳部3に直接火炎が当たり難い。それ故、本例のガスコンロ用燃焼器1は、五徳部3が過度に高温になるのを回避しやすく、耐久性向上に有利である。
【0062】
また、本例のガスコンロ用燃焼器1は、流路壁32の高さが5〜20mmの範囲内にある。そのため、本例のガスコンロ用燃焼器1は、高温の排気ガスが調理器具6の底部61に近づきやすくなり、調理器具6の底部61を這うように、高温の排気ガスが排気ガス流路4内を流れやすい。それ故、本例のガスコンロ用燃焼器1は、排気ガスの熱をより効率良く、調理器具6の底部61へ伝熱させやすい。
【0063】
(
参考例2)
参考例2のガスコンロ用燃焼器について、
図4を用いて説明する。
図4に示されるように、本例のガスコンロ用燃焼器1は、分割壁33が、環状の天板部31を6等分するように配置されている。また、排気ガス流路4の間隔が、実施例1に比べて狭くされている。また、各流路壁32の高さは、10mmとされている。その他の構成は、
参考例1のガスコンロ用燃焼器1と同様である。
【0064】
本例のガスコンロ用燃焼器1によっても、
参考例1のガスコンロ用燃焼器1と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
(
参考例3)
参考例3のガスコンロ用燃焼器について、
図5を用いて説明する。
図5に示されるように、本例のガスコンロ用燃焼器1は、分割壁33が、環状の天板部31を8等分するように配置されている。また、排気ガス流路4の間隔が、
参考例1に比べて狭くされている。また、各流路壁32の高さは、18mmとされている。その他の構成は、
参考例1のガスコンロ用燃焼器1と同様である。
【0066】
本例のガスコンロ用燃焼器1によっても、
参考例1のガスコンロ用燃焼器1と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
(実施例4)
実施例4のガスコンロ用燃焼器について、
図6を用いて説明する。
図6に示されるように、本例のガスコンロ用燃焼器1は、複数の流路壁32が略S字状の形状を呈している。そして、略S字状の各流路壁32が、互いに離間した状態で、
図6に示されるようにバーナ部2の中心部を中心とする円の円周方向に配置されている。具体的には、略S字状の流路壁32における一方端部の内側と、隣り合う略S字状の流路壁32における一方端部とは反対側の他方端部の内側とが、対向するように配置されている。各流路壁32の高さは、11mmである。なお、本例のガスコンロ用燃焼器1は、
参考例1で示されるような分割壁33を有していない。
【0068】
本例では、排気ガス流路4は、各流路壁32が上記のように配置されることにより、バーナ部2の中心部を中心とする円の径方向に沿って放射状に形成される放射状流路42を複数含んでいる。
図6より理解されるように、複数の放射状流路42は、バーナ部2の中心部を中心とする円の円周方向で互いに接するように配置されている。
【0069】
より具体的には、複数の放射状流路42は、第1往路421と、第1復路422と、第2往路423とを有している。第1往路421は、バーナ部2の中心部を中心とする円の径方向に沿って配置された部分を含み、バーナヘッド21の上方に形成される燃焼空間25と連通する。第1復路422は、第1往路421に接するように上記円の径方向に沿って配置された部分を含み、上記円の径方向の外方にて第1往路421と連通する。第2往路423は、第1復路422に接するように上記円の径方向に沿って配置された部分を含み、第1の端部が上記円の径方向の内方にて第1復路422と連通するとともに、第1の端部と反対側の第2の端部が上記円の径方向の外方にて外部と連通する。なお、燃焼空間25と第1往路421との連通口424は、バーナ部2の燃焼によって生じた排気ガスを排気ガス流路4に流入させるための流入口とされる。また、第2往路423と外部との連通口425は、排気ガス流路4を流れた排気ガスを外部に放出するための排気口425とされる。その他の構成は、
参考例1のガスコンロ用燃焼器1と同様である。
【0070】
本例のガスコンロ用燃焼器1は、高温の排気ガスが、第1往路421に沿って上記円の径方向外方に流れた後、第1復路422に沿って上記円の径方向内方に流れ、再び、第2往路423に沿って上記円の径方向外方に流れた後に、外部に放出される。そのため、本例のガスコンロ用燃焼器1は、高温の排気ガスが調理器具6の底部61と接触する距離、時間を長くしやすく、排気ガスの熱をより効率良く、調理器具6の底部61へ伝熱させやすい。その他の作用効果は、
参考例1とガスコンロ用燃焼器1と同様である。
【0071】
<実験例1>
本例は、
参考例2で示される排気ガス流路の形態を有するガスコンロ用燃焼器(
図4参照)について、流路壁の高さと熱効率および一酸化炭素量との関係を調査した例である。なお、
図7に流路壁の高さと熱効率および一酸化炭素量との関係を示す。なお、燃焼ガスは13Aであり、空気比は1.2である。また、各流路壁間の距離(流路幅)は、16mmである。
【0072】
図7によれば、流路壁の高さが低くなるほど、熱効率が高くなる傾向があることがわかる。これは、流路壁の高さが低くなると、高温の排気ガスが調理器具の底部に近づき、調理器具の底部を這うように、高温の排気ガスが排気ガス流路内を流れやすくなるためである。また、排気ガス中のCO濃度も100質量ppm以下であり、燃焼効率も高いことが確認された。
【0073】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。