(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成形荷重が前記材料に付与される所定の高さまで前記油圧駆動部により前記スライドを下降させた後、更に前記スライドを下向きに移動して前記材料に前記成形荷重を付与する制御を行う制御部を更に備えた、請求項1に記載のプレス装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のプレス装置について図面を参照しながら以下に説明する。
(実施の形態1)
<1.構成>
(1−1.プレス装置の概要)
図1は、本発明にかかる実施の形態のプレス装置1の構成を示す模式図である。
【0025】
本実施の形態のプレス装置1は、CFRP等の樹脂材料に対してプレス成形を行う。
図1では、例えば、炭素繊維で形作られたプリフォーム材301が示されている。このプリフォーム材301と溶融している熱硬化性樹脂がプレス装置1によってプレス加工される。
プレス装置1は、主に、ベッド2と、アプライト3と、クラウン4と、スライド5と、油圧駆動部7と、傾き補正部9と、ボルスタ10と、制御部11(
図2参照)と、を備える。
【0026】
ベッド2は、フロアに埋め込まれており、プレス装置1の土台を構成する。アプライト3は、柱状の部材であり、ベッド2上に4本配置されている。4本のアプライト3は、平面視において矩形状の各頂点を形成するように配置されている。
クラウン4は、4本のアプライト3によって上方に支持されている。スライド5は、クラウン4の下側に昇降自在に吊下されている。スライド5の下面5sには、図示しないダイクランパによって上金型12aが着脱自在に取り付けられている。ボルスタ10は、スライド5の下方であってベッド2上に配置されている。ボルスタ10の上側には下金型12bが載置される。
【0027】
油圧駆動部7は、クラウン4に設けられており、クラウン4の下側に吊下されたスライド5を昇降させる。油圧駆動部7は、スライド5を成形領域に達する高さ(所定の高さの一例)まで降下させてから更に降下させることにより上金型12aと下金型12bの間のプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与する。ここで、成形領域とは、成形荷重を付与することによって上金型12aおよび下金型12bによってプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に対してプレス成形が行われる領域のことである。
【0028】
傾き補正部9は、スライド5を所定の高さまで移動させた後、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に対して成形荷重を付与している間、スライド5を水平に保つためにスライド5の傾きを補正する。
制御部11は、詳しくは後述するが、油圧駆動部7および傾き補正部9等の制御を行ってプレス成形を実行する。
【0029】
(1−2.油圧駆動部)
図2は、本実施の形態の油圧駆動部7の構成を示す図である。
油圧駆動部7は、油圧シリンダ271と、各々の油圧シリンダ271を駆動する駆動用油圧回路78と、作動油を供給するポンプ75と、作動油タンク77と、油圧シリンダ271の圧力をスライド5に伝達する伝達機構272と、を有する。
【0030】
(1−2−1.油圧シリンダおよび駆動用油圧回路など)
油圧シリンダ271は、クラウン4に4つ配置されている。
図2では、クラウン4の手前側の2つの油圧シリンダ271が示されており、奥側にも2つ油圧シリンダ271が配置されている。
油圧シリンダ271は、水平方向に配置されたシリンダチューブ271aと、シリンダチューブ271a内を水平方向に移動可能なピストン271bと、ピストン271bに接続されたピストンロッド271cと、を有する。ピストンロッド271cは、シリンダチューブ271aからプレス装置200の内側に向かって伸張する。なお、本明細書において水平方向および鉛直方向とは機械的誤差を含む。
【0031】
ピストン271bによってシリンダチューブ271a内の空間は、内側空間271dと外側空間271eに分けられる。内側空間271dに駆動用油圧回路78の第1接続路76aが接続され、外側空間271eに駆動用油圧回路78の第2接続路76bが接続されている。
駆動用油圧回路78は、方向切換バルブ72と、流量調整バルブ73と、圧力制御バルブ74と、第1接続路76aと、第2接続路76bと、第3接続路76cと、排油路76dとを含む。
【0032】
第1接続路76aは、作動油が流通し、内側空間271dと方向切換バルブ72の間を接続する。第2接続路76bは、作動油が流通し、外側空間271eと方向切換バルブ72の間を接続する。第3接続路76cは、作動油タンク77と方向切換バルブ72の間を接続する。第3接続路76cにはポンプ75が配置されている。排油路76dは、方向切換バルブ72と作動油タンク77の間を接続する。
【0033】
流量調整バルブ73は、第3接続路76cに設けられており、圧力制御バルブ74は、第3接続路76cと排油路76dを接続する流路上に設けられている。
方向切換バルブ72は、第1接続路76aと第3接続路76cを接続し第2接続路76bと排油路76dを接続する状態と、第1接続路76aと排油路76dを接続し第2接続路76bと第3接続路76cを接続する状態と、全ての流路が閉じられた閉状態に切り替えられる。
【0034】
制御部11が、第2接続路76bと第3接続路76cを接続し、第1接続路76aと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72を切換することによって外側空間271eに作動油が供給されるとともに内側空間271dから作動油が排出される。これにより、ピストンロッド271cが内側へと伸張する。
また制御部11が、第1接続路76aと第3接続路76cを接続して第2接続路76bと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72を切換することによって内側空間271dに作動油が供給されて外側空間271eから作動油が排出される。これにより、ピストンロッド271cがシリンダチューブ271a内へと引き込まれる。
【0035】
(1−2−2.伝達機構)
伝達機構272は、ピストンロッド271cの水平方向の移動を上下方向の移動に変換してスライド5に伝達する。伝達機構272は、プランジャ64と、第1連結部材273と、第2連結部材278と、第3連結部材274とを有する。第1連結部材273と第2連結部材278と第3連結部材274は、細長い形状の部材である。
【0036】
第1連結部材273は、その一端においてピン500を介してピストンロッド271cの先端271fに回動可能に連結されている。第1連結部材273は、その他端に設けられた第1連結部277aにおいて、第2連結部材278の一端と回動可能に連結されている。
第2連結部材278は、第1連結部材273とプランジャ64の間を連結する。第2連結部材278は、その他端に設けられた第2連結部277bにおいてプランジャ64の上端部64aと回動可能に連結している。
【0037】
第2連結部材278は、第2A連結部材275と第2B連結部材276が連結して構成されている。第2A連結部材275は、その一端に設けられた第1連結部277aにおいて第1連結部材273および第3連結部材274と連結している。第2A連結部材275は、その他端に設けられた第4連結部277dにおいて、第2B連結部材276の一端と連結されている。第2B連結部材276は、その他端が第2連結部277bにおいてプランジャ64の上端部に回動可能に連結されている。
【0038】
第3連結部材274は、第1連結部材273とクラウン4の間を連結している。第3連結部材274は、その一端に設けられた第1連結部277aにおいて第1連結部材273と連結している。第3連結部材274は、その他端に設けられた第3連結部277cにおいてクラウン4に回動可能に連結している。
また、第3連結部277cは、第2連結部277bの鉛直上方に配置されている。また、第1連結部277aの鉛直方向における位置は、第2連結部277bと第3連結部277cの間に位置している。
【0039】
プランジャ64は、スライド5の上部に固定されており、クラウン4の下側に固定されたプランジャホルダ65によって上下方向にガイドされる。
図3(a)および
図3(b)は、油圧シリンダ271を駆動させた際の伝達機構272の動きを説明するための図である。
第2接続路76bと第3接続路76cを接続して第1接続路76aと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72を制御しポンプ75を駆動すると、外側空間271eに作動油が供給されピストン271bが内側方向に移動し、ピストンロッド271cが内側に向かって移動する。
図3(b)は、ピストンロッド271cが伸張した状態を示す図である。
【0040】
このピストンロッド271cの水平方向内側への移動によって、第1連結部材273は内側に押され、第1連結部277aが装置内側方向へと移動する。この第1連結部277aの内側への移動によって第2A連結部材275と第3連結部材274の間の角度が開く。これにより、第2A連結部材275と第2B連結部材276を介して連結されているプランジャ64がプランジャホルダ65に沿って下方へと移動する、
このように、油圧シリンダ271のピストンロッド271cが内側に移動する力が伝達機構272によってスライド5に伝達され、上金型12aと下金型12bの間のプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に対して成形荷重を付与できる。
【0041】
また、第1接続路76aと第3接続路76cを接続して第2接続路76bと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72を制御しポンプ75を駆動すると、内側空間271dに作動油が供給されピストン271bが外側方向に移動し、ピストンロッド271cがシリンダチューブ271a内に引き込まれる。
上述した第1連結部材273、第2連結部材278および第3連結部材274によって、いわゆるトグルリンク機構が構成されている。トグルリンク機構は、倍力機構であるため、油圧シリンダ271で発生する力を増幅してスライド5に伝達する。そのため、小さい油圧シリンダ271を使用することができ、使用する作動油の量も少なくなる。
【0042】
なお、
図2では、1つの油圧シリンダ271の駆動用油圧回路78のみを示しているが、4つの油圧シリンダ271のそれぞれに駆動用油圧回路78が設けられている。また、駆動用油圧回路78の一部、ポンプ75および作動油タンク77などは4つの駆動用油圧回路78に対して共通で用いられても良い。
【0043】
(1−3.傾き補正部)
傾き補正部9は、成形荷重を付与する際に、スライド5の傾きを補正する。
図4は、傾き補正部9の構成を示す図である。傾き補正部9は、主に、4組の当接部90、油圧シリンダ91、リニアセンサ92および補正用油圧回路98と、4つの油圧シリンダ91に作動油を供給するポンプ95と、作動油タンク97を有する。
図4では、説明のために4つの油圧シリンダ91を並べて図示しているが、実際には、4つの油圧シリンダ91は、スライド5の下方であって、平面視においてスライド5の4隅に配置されている。
図1では、紙面手前側の2つの油圧シリンダ91のみが示されており、紙面奥側に更に2つの油圧シリンダ91が配置されている。
【0044】
4つの油圧シリンダ91には、それぞれ補正用油圧回路98が接続されており、1つのポンプ95から補正用油圧回路98を介して油圧シリンダ91に作動油が供給される。尚、4つの油圧シリンダ91の補正用油圧回路98の構成は同じであるため、1つの油圧シリンダ91についてのみ説明する。
油圧シリンダ91は、鉛直方向に配置されたシリンダチューブ91aと、シリンダチューブ91a内を鉛直方向に移動可能なピストン91bと、ピストン91bに接続されシリンダチューブ91aから上方に向かって伸縮可能なピストンロッド91cとを有している。
【0045】
ピストンロッド91cの上端には、当接部90が設けられている。当接部90は、成形荷重を付与している間、スライド5に当接している。
ピストン91bによってシリンダチューブ91a内の空間は、下方空間91dと上方空間91eに分けられる。
リニアセンサ92は、当接部90の位置を監視し、位置に関する情報を制御部11へと送信する。
【0046】
次に、補正用油圧回路98について説明する。補正用油圧回路98は、第1サーボバルブ93、第2サーボバルブ94と、第1接続路96aと、第2接続路96bと、第3接続路96cと、排油路96dとを有している。第1接続路96aは、作動油が流通し、下方空間91dと第1サーボバルブ93の間を接続する。第2接続路96bは、作動油が流通し、上方空間91eと第2サーボバルブ94の間を接続する。第3接続路96cは、作動油タンク97と第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94の間を接続する。第3接続路96cにはポンプ95が配置されている。排油路96dは、第1サーボバルブ93と作動油タンク97の間を接続する。第1サーボバルブ93は、流量を制御しながら、第1接続路96aを第3接続路96cまたは排油路96dと接続できる。また、第2サーボバルブ94は、流量を調整しながら第2接続路96bを第3接続路96cまたは排油路96dと接続できる。
【0047】
4つの補正用油圧回路98の第3接続路96cはポンプ95の下流側から分岐してそれぞれの第1サーボバルブ93と第2サーボバルブ94に繋がっている。また、4つの補正用油圧回路98の第1サーボバルブ93と第2サーボバルブ94に接続されている排油路96dは作動油タンク97の上流側で合流している。
制御部11は、4軸の油圧シリンダ91の独立制御を行う。制御部11は、成形荷重を負荷する際に、4軸の油圧シリンダ91の位置(スライド5の下面5sに当接している当接部90の位置)が同一となるように第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94を制御する。すなわち、リニアセンサ92の位置情報を制御部11にフィードバックしつつ、第1サーボバルブ93と第2サーボバルブ94を制御して下方空間91dまたは上方空間91eに作動油を供給してピストンロッド91cのストロークを制御することにより、4つの当接部90の高さ位置が同じ位置になるように制御される。
【0048】
(1−4.制御構成)
図5は、本実施の形態のプレス装置1の制御構成を示すブロック図である。制御部11は、油圧駆動部7の方向切換バルブ72、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74およびポンプ75を制御することによってスライド5を昇降移動し、上金型12aおよび下金型12bの間の材料(プリフォーム材301と熱硬化性樹脂)に成形荷重を付与する。
【0049】
制御部11は、リニアセンサ92の検出に基づいて傾き補正部9のポンプ95および4組の第1サーボバルブ93並びに第2サーボバルブ94を制御することによって成形荷重付与時のスライド5の傾きを補正する。
なお、制御部11は、方向切換バルブ72、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74、第1サーボバルブ93、及び第2サーボバルブ94を4つずつ制御しているが、
図5では、省略して1つのみ示している。
【0050】
<2.動作>
次に、本実施の形態のプレス装置1の制御方法について説明する。
なお、以下の説明では、いわゆるRTM工法におけるプレス加工について説明する。すなわち、炭素繊維で形作られたプリフォーム材301と溶融している熱硬化性樹脂が本実施の形態のプレス装置1によってプレス加工される。なお、熱硬化性樹脂としては、エポキシ、不飽和ポリエステル等が用いられる。
【0051】
図6は、本実施の形態のプレス装置1の制御方法を示すフロー図である。
図7は、プレス加工の際の上金型12aの高さの時間変化のグラフを示す図である。
図7では、上金型12aの位置がG1のグラフで示され、下金型12bの位置がG2のグラフで示されている。
はじめに、予め炭素繊維が成形品の形状に形作られたプリフォーム材301が下金型12b上に載置される。
【0052】
次に、制御部11は、ステップS10において、制御部11は、油圧駆動部7のポンプ75、方向切換バルブ72、流量調整バルブ73および圧力制御バルブ74を制御し、スライド5を下方に移動させる。(
図7の時刻t1〜t2参照)。
なお、
図7に示す距離d1はスライド5が成形領域に達するまでのストロークを示す。また、距離d2(所定の高さの一例)が、下金型12bからの上金型12aの距離を示す。この下金型12bからの距離d2が成形領域であり、成形荷重を付与することによってプレス成形が行われる領域のことである。この距離d2において、傾き補正部9の当接部90がスライド5の下面5sに当接する。
【0053】
次に、ステップS15において、スライド5を停止させて熱硬化性樹脂が上金型12aと下金型12bの間に注入される。
図1に示すように、上金型12aには、熱硬化性樹脂を注入するための注入路400が形成されており、熱硬化性樹脂は注入路400を通して供給される。
次に、ステップS20において、制御部11が成形領域に達したスライド5を更に下方に移動させることによって、上金型12aおよび下金型12bの間のプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重が付加され、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂が上金型12aと下金型12bの間で加圧される(ステップS20)。この加圧によってプリフォーム材301と熱硬化性樹脂の成形が行われる。なお、
図7に示す距離d3が荷重成形時のスライド5の下方への移動を示す。
【0054】
次に、ステップS30において、加圧状態が所定時間保持される(
図7の時刻t3〜t4参照)。尚、
図7では、上金型12aの高さは一定になっているが、所定時間保持している間に樹脂が冷却されて体積が小さくなると、それに伴いスライド5は若干下降する。
上記ステップS20とステップS30の間、制御部11は、傾き補正部9のポンプ95および4組の第1サーボバルブ93並びに第2サーボバルブ94を制御することによって油圧シリンダ91を駆動し、スライド5を所定以下の傾きに保つように制御が行われる。
【0055】
次に、ステップS40において、制御部11は、油圧駆動部7の方向切換バルブ72、流量調整バルブ73および圧力制御バルブ74を制御し、スライド5を元の位置まで上昇させる(
図7の時刻t4〜t5参照)。
そして、プレス加工が終了した加工済品が取り出され、次のプレス加工が行われる。
【0056】
(実施の形態2)
次に、本発明に係る実施の形態2のプレス装置200について説明する。
上記実施の形態1では、成形領域に達するまでのスライド5の下降(
図7の距離d1参照)と、成形荷重の付与のためのスライド5の下降(
図7の距離d3参照)の双方が油圧駆動部7によって行われているが、本実施の形態2では、別々の駆動部によって行われる。以下の説明では、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
<1.構成>
(1−1.プレス装置の概要)
本実施の形態のプレス装置200は、CFRP等の樹脂材料に対してプレス成形を行う。プレス装置200は、実施の形態1のプレス装置1と異なり、アプライト3が設けられておらず、主に、ベッド2と、クラウン4と、スライド5と、電動駆動部6と、油圧駆動部7と、保持部8と、傾き補正部9と、ボルスタ10と、制御部211(
図11参照)と、を備える。
【0058】
電動駆動部6は、詳しくは後述するがサーボモータ260を用いてクラウン4とともに、クラウン4の下側に吊下されたスライド5を昇降させる。電動駆動部6は、スライド5を成形領域に達する高さ(所定の高さの一例)まで降下させる。ここで、成形領域とは、成形荷重を付与することによって上金型12aおよび下金型12bによってプレス成形が行われる領域のことである。
【0059】
油圧駆動部7は、成形領域に達したスライド5に対して油圧を用いて所定の作動圧を加えながらスライド5を下降させることによって、上金型12aと下金型12bの間の材料に成形荷重を付与する。この成形荷重の付与によってプレス成形が行われる。
すなわち、本実施の形態の油圧駆動部7は、
図7に示す距離d3への移動にのみ用いられる。
【0060】
保持部8は、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド5をクラウン4とともに保持する。詳細には、電動駆動部6を機械的に固定することで、クラウン4をスライド5が成形領域に達する高さ(所定の高さの一例)で固定し、スライド5が荷重を付与した際の反力により上方に移動しないようにする。
傾き補正部9は、実施の形態1と同様に、スライド5に対して成形荷重を付与している間、スライド5を水平に保つためにスライド5の傾きを補正する。
制御部211は、詳しくは後述するが、電動駆動部6、油圧駆動部7、保持部8、および傾き補正部9等の制御を行ってプレス成形を実行する。
【0061】
(1−2.電動駆動部)
電動駆動部6は、サーボモータ260と、サーボモータ260の駆動をスライド5に伝達する伝達機構266を4組有する。それぞれの伝達機構266は、ボールネジ部261および支持部262を有する。4本のボールネジ部261は、ベッド2に鉛直方向に向かって回転可能に配置されており、クラウン4の4隅を挿通している。クラウン4の上下であって、ボールネジ部261の周囲には軸受263が設けられている。本実施の形態のプレス装置200では、実施の形態1のプレス装置1と異なり、アプライト3が設けられておらず、電動駆動部6によってクラウン4が支持されている。
【0062】
ボールネジ部261は、周面にネジ形状261aが形成されている。支持部262は、クラウン4の下側であって軸受263の下側に固定されており、ボールネジ部261とともにクラウン4を支持するための支持部262が固定されている。支持部262は上下方向に貫通孔262aを有し、貫通孔262aの内周面には、ネジ形状が形成されており、ボールネジ部261のネジ形状261aと螺合している。
【0063】
サーボモータ260は、その駆動軸260aが鉛直方向を向くように配置されている。駆動軸260aは、ボールネジ部261の下端と結合されている。
サーボモータ260を回転することによってボールネジ部261も回転し、ボールネジ部261と螺合している支持部262およびクラウン4が上下方向に移動する。
このように、サーボモータ260の駆動によってクラウン4が上下方向に移動するため、クラウン4に吊下されているスライド5も上下方向に移動する。
【0064】
すなわち、プレス成形を行う際には、サーボモータ260の駆動によってスライド5は成形領域に達する高さまで下降する。
サーボモータ260は、制御部211によって制御される。
【0065】
(1−3.保持部)
図9(a)、(b)は、保持部8の構成を示す図である。
保持部8は、ボールネジ部261の上端に設けられた被嵌合部281と、被嵌合部281に嵌合する嵌合部282と、嵌合部282を被嵌合部281に向かって移動する移動部86と、を有する。
被嵌合部281は、ボールネジ部261の上端にボールネジ部261と同軸で設けられた円柱部281aと、上下方向に一定の間隔を開けて形成された円環状突起部281bと、を有する。円環状突起部281bは、円柱部281aの径方向外側に向かって水平方向に突出している。円環状突起部281bは、円柱部281aの一周にわたって形成されている。上下方向に隣り合う円環状突起部281bの間には、凹部281cが形成されている。
【0066】
図10は、嵌合部282の平面図である。嵌合部282は、半円環状の部材である。被嵌合部281の周囲を囲むように2つの嵌合部282が配置されている。2つの嵌合部282は対向して配置されている。
嵌合部282は、移動部86の油圧シリンダ81のピストンロッド81cの先端に固定されている。嵌合部282は、
図9(a)に示すように、その内側に凹凸形状を有している、すなわち、嵌合部282は、円環の径方向内側に向かって突出した2つの凸部282aを有している、2つの凸部282aの間には、凹部282bが形成されている。
【0067】
移動部86は、嵌合部282ごとに設けられている。移動部86は、油圧シリンダ81と、ポンプ83と、保持用油圧回路87と、作動油タンク85とを有する。
油圧シリンダ81は、シリンダチューブ81aと、シリンダチューブ81a内を移動可能なピストン81bと、ピストン81bに連結されたピストンロッド81cとを有している。油圧シリンダ81は、ピストンロッド81cが水平移動するようにクラウン4に固定されている。また、ピストンロッド81cは、シリンダチューブ81aから被嵌合部281に向かって伸張する。ピストンロッド81cの先端には、嵌合部282が取付けられている。尚、
図9(b)では、保持用油圧回路87は図示を省略している。シリンダチューブ81a内の空間は、ピストン81bによってピストンロッド81c側の第1空間81dと、ピストンロッド81cと反対側の第2空間81eに分けられている。
【0068】
保持用油圧回路87は、主に、方向切換バルブ82と、第1接続路84aと、第2接続路84bと、第3接続路84cと、排油路84dと、を含む。第1接続路84aは、作動油が流通し、第1空間81dと方向切換バルブ82の間を接続する。第2接続路84bは、作動油が流通し、第2空間81eと方向切換バルブ82の間を接続する。第3接続路84cは、作動油タンク85と方向切換バルブ82の間を接続する。第3接続路84cにはポンプ83が配置されている。排油路84dは、方向切換バルブ82と作動油タンク85の間を接続する。
【0069】
方向切換バルブ82は、第1接続路84aと第3接続路84cを接続し第2接続路84bと排油路84dを接続する状態と、第1接続路84aと排油路84dを接続し第2接続路84bと第3接続路84cを接続する状態と、全ての流路が閉じられた閉状態に切り替えられる。
方向切換バルブ82およびポンプ83は、制御部211によって制御される。
【0070】
スライド5が成形領域まで下降すると、制御部211は、保持用油圧回路87を制御してピストンロッド81cをシリンダチューブ81aから伸ばす。詳細には、第2接続路84bと第3接続路84cを接続し第1接続路84aと排油路84dを接続するように方向切換バルブ82が切換られる。この状態で、ポンプ83が作動されると、第2空間81e側に作動油が供給されてピストンロッド81cが被嵌合部281側に伸びる。このピストンロッド81cの移動によって、
図9(b)に示すように2つの嵌合部282が被嵌合部281を挟むように移動して被嵌合部281に嵌合する。詳細には、嵌合部282の凸部282aが、被嵌合部281の凹部281cに嵌り、嵌合部282の凹部282bに被嵌合部281の円環状突起部281bが嵌る。
【0071】
このようにして、ボールネジ部261が保持部8によって固定される。すなわち、成形領域までスライド5を下降させてボールネジ部261を固定することによって、スライド5を成形領域の高さに機械的に保持できる。
一方、嵌合部282を被嵌合部281から離間させる際には、第1接続路84aと第3接続路84cを接続し第2接続路84bと排油路84dを接続するように方向切換バルブ82が切り替えられてポンプ83が駆動制御される。これによって第1空間81dに作動油が供給されてピストンロッド81cが縮み嵌合部282が被嵌合部281から離間する。
【0072】
なお、1つの被嵌合部281に対して1組の嵌合部282が設けられており、それぞれの嵌合部282に対して移動部86が設けられているため、合計8個の移動部86が設けられている。
図9では、移動部86ごとに油圧シリンダ81ごとにポンプ83および作動油タンク85が設けられているように図示されているが、共有化するほうが好ましい。また、8個の移動部86の保持用油圧回路87の一部も共有されていてもよい。
【0073】
(1−4.制御構成)
図11は、本実施の形態のプレス装置200の制御構成を示すブロック図である。制御部211は、電動駆動部6のサーボモータ260を駆動制御しスライド5を昇降動作させる。制御部211は、保持部8のポンプ83および方向切換バルブ82を制御することによって油圧シリンダ81を動作させて嵌合部282を制御する。
【0074】
制御部211は、油圧駆動部7の方向切換バルブ72、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74およびポンプ75を制御することによって所定の作動圧でスライド5を下降させて上金型12aと下金型12bの間の材料に成形荷重を付与する。
制御部211は、リニアセンサ92に基づいて傾き補正部9のポンプ95および4組の第1サーボバルブ93並びに第2サーボバルブ94を制御することによって成形荷重付与時のスライド5の傾きを補正する。
【0075】
なお、制御部11は、例えば、サーボモータ260、方向切換バルブ72、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74、第1サーボバルブ93、及び第2サーボバルブ94を4つずつ制御し、8つの方向切換バルブ82を制御しているが、
図11では、省略して1つのみ示している。
【0076】
<2.動作>
次に、本実施の形態のプレス装置200の制御方法について説明する。
図12は、本実施の形態のプレス装置200の制御方法を示すフロー図である。尚、
図12とともに
図7も参照しながら説明する。
予め炭素繊維が成形品の形状に形作られたプリフォーム材301が下金型12b上に載置された後、制御部211は、ステップS210において、4つのサーボモータ260を駆動してボールネジ部261を回転させることによってクラウン4ごとスライド5を成形領域に達する高さまで下降させる(
図7の時刻t1〜t2参照)。また、スライド5が成形領域に達すると、スライド5の下面5sに傾き補正部9の当接部90が当接する。
【0077】
そして、スライド5が成形領域に達すると、ステップS220において、制御部211は、保持用油圧回路87の方向切換バルブ82およびポンプ83を制御して、油圧シリンダ81を駆動する。すなわち、ピストンロッド81cをシリンダチューブ81aから伸長させて、嵌合部282を被嵌合部281に嵌合させる。これによってクラウン4の位置が固定される。なお、サーボモータ260を用いてクラウン4およびスライド5を下降させるため、嵌合部282の凸部282aが被嵌合部281の凹部281cに対応する位置になるように精度良くクラウン4およびスライド5を停止させることができる。
【0078】
次に、ステップ230において、制御部211は、サーボモータ260への通電を停止する。
次に、ステップS235において、スライド5を停止させた状態で熱硬化性樹脂が上金型12aと下金型12bの間に注入される。
なお、
図7に示す距離d1は、スライド5が成形領域に達するまでのストロークを示す。また、距離d2(所定の高さの一例)が、下金型12bからの上金型12aの距離を示す。この下金型12bからの距離d2が成形領域であり、成形荷重を付与することによってプレス成形が行われる領域のことである。この距離d2において、傾き補正部9の当接部90がスライド5の下面5sに当接する。
【0079】
次に、ステップS240において、制御部211は、油圧駆動部7の駆動用油圧回路78を制御し、スライド5内の4つの油圧シリンダ271を駆動してスライド5に対して成形荷重と同等の力を加えながら下方に移動させる。このようにスライド5に成形荷重を付与することによって上金型12aおよび下金型12bの間のプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重が付加され、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂が上金型12aと下金型12bの間で加圧される。この加圧によってプリフォーム材301と熱硬化性樹脂の成形が行われる。
【0080】
次に、ステップS250において、加圧状態が所定時間保持される(
図7の時刻t3〜t4参照)。尚、
図8では、上金型12aの高さは一定になっているが、所定時間保持している間に樹脂が冷却されて体積が小さくなると、それに伴いスライド5は若干下降する。
上記ステップS240とステップS250の間、制御部211は、ポンプ95および4組の第1サーボバルブ93並びに第2サーボバルブ94をリニアセンサ92に基づいて制御することによって油圧シリンダ91を駆動し、スライド5を所定以下の傾きに保つ。
【0081】
所定時間が経過すると、制御部211は、油圧駆動部107の駆動用油圧回路78を制御し、スライド5への荷重の付与を停止する。
次に、ステップS260において、制御部211は、サーボモータ260への通電を行う。
次に、ステップS270において、制御部211は、保持部8の保持用油圧回路87を制御することによって油圧シリンダ81を駆動し、嵌合部282を被嵌合部281から離間させる。これによって、クラウン4およびスライド5の固定が解除される。
次に、ステップS280において、制御部211は、サーボモータ260を制御し、スライド5およびクラウン4を元の位置まで上昇させる(
図7の時刻t4〜t5参照)。
そして、プレス加工が終了した加工済品が取り出され、次のプレス加工が行われる。
【0082】
(上記実施の形態1、2の特徴)
(1)
本実施の形態のプレス装置1、200は、上金型12aと下金型12bを用いてプリフォーム材301と熱硬化性樹脂(材料の一例)に対してプレス成形を行うプレス装置であって、スライド5と、クラウン4と、油圧駆動部7と、を備える。スライド5は、下面5sに上金型12aが取り付けられる。クラウン4は、スライド5の上方に配置され、スライド5を昇降可能に支持する。油圧駆動部7は、油圧によってスライド5を下向きに移動して材料に成形荷重を付与する。油圧駆動部7は、油圧シリンダ271と、伝達機構272(第1伝達機構の一例)とを有する。油圧シリンダ271は、水平方向に移動可能なピストンロッド271cを持ち、クラウン4に配置される。伝達機構272は、油圧シリンダ271の力を増幅してスライド5に伝達する倍力機構を持つ。伝達機構272は、ピストンロッド271cの水平方向の移動を上下方向の移動に変換してスライド5に伝達する。
【0083】
このように、成形荷重を付与する油圧シリンダ271が水平に配置されているため、プレス装置1、200の高さを低くすることができる。
また、ピストンロッド271cの移動をスライド5に伝達する伝達機構272が、トグルリンク機構(倍力機構の一例)を持っているため、油圧シリンダ271の大きさを小さくできるとともに供給する作動油の量を減らすことができる。
【0084】
(2)
本実施の形態のプレス装置1、200では、伝達機構272は、プランジャ64を有する。プランジャ64は、スライド5の上側に固定され上下方向にガイドされる。倍力機構は、第1連結部材273(第1部材の一例)と、第2連結部材278(第2部材の一例)と、第3連結部材274(第3部材の一例)を有する。第1連結部材273は、ピストンロッド271cに対して回動可能に連結されている。第2連結部材278は、第1連結部材273とプランジャ64の間を連結する。第3連結部材274は、第1連結部材273とクラウン4の間を連結する。第2連結部材278は、プランジャ64の上端部および第1連結部材273のそれぞれに対して回動可能である。第3連結部材274は、第1連結部材273およびクラウン4のそれぞれに対して回動可能である。
このように、第1連結部材273、第2連結部材278および第3連結部材274が設けられることにより倍力機構の一例としてのトグルリンク機構を構成できる。
【0085】
(3)
本実施の形態のプレス装置1、200では、第1連結部材273と第2連結部材278の連結部において、第3連結部材274は第1連結部材273と連結されている。
このように第1連結部材273と第2連結部材278の間の連結部と、第1連結部材273と第3連結部材274の間の連結部を同じ箇所にすることで省スペース化を図れる。
【0086】
(4)
本実施の形態のプレス装置1は、制御部11を更に備えている。制御部11は、成形荷重がプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に付与される成形領域に達する高さ(所定の高さの一例)まで油圧駆動部7によりスライド5を下降させた後、更にスライド5を下向きに移動して材料に成形荷重を付与する制御を行う。
これにより、スライド5の移動の全てを油圧によって行うことができるため、簡易な構成で省エネルギー化を図り、全高を低くすることができる。
なお、成形領域とは、成形荷重を付与することによって上金型および下金型によってプレス成形が行われる領域のことである。
【0087】
(5)
本実施の形態のプレス装置200は、電動駆動部6と、保持部8(保持部の一例)と、制御部211とを更に備えている。電動駆動部6は、サーボモータ260(電動モータの一例)と、伝達機構266(第2伝達機構の一例)とを有し、クラウン4を昇降させる。伝達機構266は、サーボモータ260の駆動をクラウン4に伝達する。保持部8は、成形荷重の反力を受け止めるようにクラウン4を機械的に保持する。制御部211は、電動駆動部6によりスライド5を所定の高さまで移動して保持部8によりスライド5を保持した後に、油圧駆動部7により材料に成形荷重を付与する制御を行う。
【0088】
このように、サーボモータ260を用いた電動駆動部6と、油圧を用いた油圧駆動部7が設けられている。
これにより、プレス装置200では、成形領域に達する高さ(所定の高さの一例)まではサーボモータ260によってクラウン4を下方に移動させ、その高さから油圧を用いてスライド5に対して成形荷重を付与してプレス成形を行うことが出来る。そのため、実施の形態1のプレス装置1のように、成形領域に達する高さまでのスライドの移動を油圧で行う場合と比較してスライドのストロークに要する時間が短くでき、プレス成形にかかる時間を短縮できる。
【0089】
また、実施の形態1のプレス装置1では、スライド5の上限位置から成形領域までのストロークを長く構成するためには、油圧シリンダ271の径をおおきくするとともにピストンロッド271cの長さも長くする必要があり、プレス装置の高さを低くできるものの幅が大きくなる場合がある。
一方、実施の形態2のプレス装置200では、距離d1のスライド5の移動を電動駆動部6により行うため、上限位置から成形領域に達するまでのスライド5のストロークを実施の形態1と比べて長く構成しやすい。このため、成形品を自動搬送する装置などを組み込みやすい。
【0090】
更に、実施の形態2のプレス装置200では、成形領域に達する高さまで電動駆動部6によってスライド5を移動させているため、油圧シリンダ271の大きさを実施の形態1よりも小さくできる。
更に、クラウン4を保持する保持部8が設けられているため、成形荷重の反力に対してもスライド5を保持でき、精度良く加工を行うことができる。
また、保持部8によってスライド5を保持している状態では、サーボモータ260を停止可能なため、必要に応じてサーボモータ260を停止することによってサーボモータ260にかかる負荷を軽減できる。
【0091】
(6)
上記実施の形態のプレス装置200では、制御部211は、保持部8によりクラウン4を機械的に保持した後に、サーボモータ260の駆動を停止する。
保持部8によってクラウン4を保持している状態では、このようにサーボモータ260を停止できるため、サーボモータ260にかかる負担を減少できる。
【0092】
(7)
上記実施の形態のプレス装置200では、伝達機構266(第2伝達機構の一例)は、ボールネジ部261と、支持部262とを有する。ボールネジ部261は、鉛直方向に配置されクラウン4をスライド5の上方に支持する。支持部262は、クラウン4に固定され、ボールネジ部261と螺合する。ボールネジ部261は、サーボモータ260の駆動によって回転する。電動駆動部6は、ボールネジ部261を回転させて支持部262とともにクラウン4を下方に移動させることによってスライド5を所定の高さまで下降させる。
これによって、サーボモータ260の駆動力を用いてスライド5を所定の高さまで下降できる。
【0093】
(8)
実施の形態のプレス装置200では、保持部8は、被嵌合部281と、嵌合部282と、移動部86と、を有する。被嵌合部281は、ボールネジ部261に固定されている。嵌合部282は、被嵌合部281に嵌合可能である。移動部86は、嵌合部282を移動させて被嵌合部281に嵌合させる。保持部8は、嵌合部282を被嵌合部281に嵌合させることによって、ボールネジ部261を固定し成形荷重の反力を受け止めるようにクラウン4を機械的に保持する。
このように、ボールネジ部261を保持部8によって固定することによって成形荷重の反力を受け止めることができる。
【0094】
(9)
上記実施の形態のプレス装置1、200は、傾き補正部9を更に備える。傾き補正部9は、上金型12aが水平に保たれるように上金型12aの傾斜を補正する。制御部211は、油圧駆動部7によって上金型12aに成形荷重を付与する際に、傾き補正部9により上金型12aの傾斜を補正する。
CFRP等の液状若しくは柔らかい軟性の材料をプレスする際には、金型に形成されている加工品の形状によっては荷重に偏りが生じ、上金型12aが傾斜する場合がある。上述のように、傾き補正部9を設けることによって上金型12aの傾斜を低減でき、加工精度を向上できる。
【0095】
(10)
上記実施の形態のプレス装置1、200では、傾き補正部9は、鉛直方向に配置された複数の油圧シリンダ91と、ポンプ95と、油圧シリンダ91ごとに設けられた第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94(バルブの一例)と、を有する。ポンプ95は、作動油を複数の油圧シリンダ91に供給する。第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94は、油圧シリンダ91ごとに設けられ、油圧シリンダ91に供給される作動油の量を調整する。油圧シリンダ91のピストンロッド91cは、成形荷重が付与される際にスライド5に下方から当接する。制御部11、211は、油圧駆動部7によって成形荷重を付与する際に、複数の油圧シリンダ91のピストンロッド91cのストロークが同じ長さになるように第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94を制御する。
これにより、CFRP等の液状若しくは柔らかい軟性の材料をプレスする際に、上金型の傾きを低減できる。
【0096】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0097】
(A)
上記実施の形態では、RTM工法におけるプレス装置の動作について説明したが、この工法にかぎられるものではない。例えば、SS工法においても同様に実施できる。
図13は、に示すプレス装置200´の構成を示す模式図であり、実施の形態2のプレス装置200の変形例を示す。プレス装置200´では、上金型12a´に熱硬化性樹脂を注入するための注入路400が形成されている。
図14は、
図20に示すプレス装置200´の制御方法を示すフロー図である。なお、SS工法では、熱可塑性樹脂を使用するが、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリプロピレンなどが用いられる。
【0098】
SS工法では、炭素繊維のシートに熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグを積層したスタンパブルシート300が用いられる。加熱されたスタンパブルシート300が下金型12b´上に載置されて、スライド5が下降される(ステップS210)。次に、伝達機構266が保持部8によって固定された後、サーボモータ260が停止される(ステップS220、S230)。
次に、油圧駆動部7によってスライド5に成形荷重が付与され、上金型12a´と下金型12b´の間で加圧成形が行われる(ステップS240)。
以降の制御は、上記実施の形態と同様である。
なお、プレス装置1についてもSS工法に利用してもよい。
【0099】
(B)
また、上記実施の形態及び上記(A)では、材料の一例として連続炭素繊維を用いたCFRP(プリフォーム材301と熱硬化性樹脂)を用いて説明したが、これに限られるものではない。不連続炭素繊維を用いたCFRPをプレス加工する際に上記実施の形態及び上記(A)のプレス装置1、200、1´を用いても良いし、更にCFRPに限らなくても良い。すなわち、炭素繊維を含まない樹脂などを成形する際にプレス装置1、200、1´が用いられても良い。なお、上記実施の形態で説明したプレス装置を板金加工などの際に用いても良いが、軟性の柔らかい素材や液状の素材をプレス加工する際のほうが、より効果を発揮する。
【0100】
(C)
上記実施の形態のプレス装置1、200では、電動モータの一例としてサーボモータ260が用いられているが、サーボモータに限らなくても良く、例えばインバータモータが用いられてもよい。
(D)
上記実施の形態では、サーボモータ260の駆動によってスライド5を成形領域に達するまで下降させて、成形領域に達してからは油圧によって成形を行っているが、サーボモータ260でスライド5を下降させる位置は成形領域よりも上方の位置であってもよく、その位置からは油圧でスライド5を下降させてもよい。
このような場合であっても、スライドの全てのストロークを油圧で行う場合と比較すると、スライドの往復に要する時間は短縮できるため、本発明の効果を発揮できる。
【0101】
(E)
上記実施の形態では、成形領域に達する高さでスライド5の下面5sに傾き補正部9の当接部90が当接しているが、成形領域に達するより前に当接部90がスライド5に当接してもよい。
【0102】
(F)
上記実施の形態では、サーボモータ260はボールネジ部261と同軸上に配置されており、サーボモータ260の駆動軸260aとボールネジ部261が直接接続されていたが、これに限られない。例えば、サーボモータ260がボールネジ部261と平行に配置されており、歯車等で減速されて駆動軸260aの回転がボールネジ部261に伝達されてもよい。
【0103】
(G)
また、サーボモータ260、伝達機構266、油圧シリンダ81、271、91等の数は、上記実施の形態に限られるものでなく適宜変更できる。
(H)
また、上記実施の形態では、第2連結部材278は、第2A連結部材275と第2B連結部材276の2つの部材が連結されて構成されているが、1つの部材のみで構成されていてもよい。
【0104】
(I)
また、上記実施の形態では、第2連結部材278と第3連結部材274は第1連結部277aで第1連結部材273と連結されているが、第1連結部材273と第2連結部材278の連結部と、第1連結部材273と第3連結部材274の連結部が別々に設けられていてもよい。
図21に示すように、第1連結部材273´として3軸リンク部材が配置されてもよい。この場合、第1連結部材273´と第2連結部材278(詳細には第2A連結部材25)は、第1A連結部277eで連結され、第1連結部材273´と第3連結部材274は、第1B連結部材277fで連結されている。
【0105】
(J)
また、上記実施の形態では、倍力機構としてトグルリンク機構が用いられたが、トグルリンク機構に限られるものでない。