(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多軸スライダは、前記スライド軸として、前記加熱中心軸と、前記ワイヤガイドの中心軸であるガイド中心軸とを含む平面に平行な第二スライド軸であって、前記加熱用トーチを当該第二スライド軸上でスライドさせることで、前記ワイヤガイドに近付けたり、前記ワイヤガイドから遠ざけたりする第二スライド軸をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の溶接装置。
前記多軸スライダは、前記スライド軸として、前記加熱中心軸と前記ガイド中心軸とを含む平面と交差する第三スライド軸であって、当該第三スライド軸に沿って前記加熱用トーチをスライドさせることで、前記加熱中心軸を一方の母材に近付けたり、他方の母材に近付けたりする第三スライド軸をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の溶接装置。
前記制御装置は、前記支持装置から取得した溶接が進んだ距離に基づいて、前記多軸スライダを駆動制御することを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の溶接装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る溶接装置について説明する。本実施形態では、二つの母材をロウ付けにより溶接する溶接装置を例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態に係る溶接装置の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る溶接の様子を概略的に示す模式正面図である。
図3は、本実施形態に係る溶接の様子を概略的に示す模式右側面図である。
【0014】
溶接装置1は、支持装置10と、支持装置10の先端部に設置されるワイヤガイド装置30と、加熱機40と、ワイヤガイド装置30に対して加熱機を三軸方向にスライド駆動自在に支持する三軸スライダ50と、制御装置60と、温度センサ71,72とを備える。
【0015】
溶接装置1は、加熱機40により母材A6、母材B7及び溶加材ワイヤ8を加熱することで、母材A6と母材B7の境界線である溶接ライン上の溶接位置に溶融した溶加材ワイヤ8を供給し、母材A6と母材B7とを溶接により一体に接合する。
【0016】
支持装置10は、先端アーム部材11、第二アーム部材12、第三アーム部材13及び関節軸14を備える6軸ロボットアームであり、
図1では、先端側の一部のみが開示されている。支持装置10は、制御装置60の制御により、先端アーム部材11に設置されたワイヤガイド装置30及び加熱機40の先端が溶接ライン上の所定の溶接位置に対向するように関節軸14等を動かして案内する。
【0017】
ワイヤガイド装置30は、中空のワイヤガイド31と、ワイヤチューブ35と、ワイヤガイド31を先端アーム部材11に固定するためのアーム固定部材37と、カバー38を備えている。ワイヤチューブ35は、図示しないワイヤ供給装置から溶加材ワイヤ8をワイヤガイド31向けて案内する中空のチューブである。
【0018】
ワイヤガイド装置30は、溶加材ワイヤ8にワイヤガイド31の内部を通過させ、その先端から溶加材ワイヤ8を溶接位置に案内する。ワイヤガイド31の先端部の中心軸がガイド中心軸である。制御装置60は、ワイヤガイド装置30に案内される溶加材ワイヤ8が溶接ライン上の溶接位置に供給されるように、ワイヤガイド31が溶接位置に対向してそのガイド中心軸が溶接位置を通るように支持装置10を制御する。
【0019】
加熱機40は、燃焼ノズル43と、ガスホース45と、酸素ホース46と、燃焼ノズル43を三軸スライダ50のスライド部材56に固定するための固定部材47とを備えている。加熱機40は、図示しない供給源からガスホース45及び酸素ホース46を介して供給されるガス及び酸素を燃焼ノズル43の先端で燃焼させて火炎を発生させる。
【0020】
燃焼ノズル43の先端の中心軸が加熱中心軸である。加熱中心軸と母材6,7との交点が最も温度が高くなるので、溶接時には、加熱中心軸が母材A6と母材B7の溶接ライン上の溶接位置を通るように支持装置10の姿勢が制御される。
【0021】
三軸スライダ50は、ベース部材51と、X軸駆動機構52と、Y軸駆動機構53と、Z軸駆動機構54と、スライド部材56と、カバー58とを備えている。ベース部材51は、支持装置10の先端アーム部材11に対して固定されている。
【0022】
X軸駆動機構52は、ベース部材51に対してスライド部材56をX軸方向にスライド自在に駆動する機構である。Y軸駆動機構53は、ベース部材51に対してスライド部材56をY軸方向にスライド自在に駆動する機構である。Z軸駆動機構54は、ベース部材51に対してスライド部材56をZ軸方向にスライド自在に駆動する機構である。
【0023】
このように、ベース部材51はワイヤガイド31と一体に支持装置10の先端に固定され、ベース部材51に対してXYZの三軸方向にスライド自在なスライド部材56には、加熱機40の燃焼ノズル43が固定されている。よって、三軸スライダ50を作動させることで、ワイヤガイド31に対して、燃焼ノズル43をXYZの三軸方向に相対的に移動させることができる。
【0024】
ここで、
図2及び
図3を参照しながら、X軸、Y軸及びZ軸について説明する。上述したように、通常、溶接時には、ワイヤガイド31のガイド中心軸と燃焼ノズル43の加熱中心軸の双方が溶接ライン上の溶接位置を通るように設置される。すなわち、ワイヤガイド31のガイド中心軸と燃焼ノズル43の加熱中心軸は、溶接位置で交差している。
【0025】
本実施形態では、ガイド中心軸と加熱中心軸が溶接ライン上で交差すると共に、ワイヤガイド31の先端と燃焼ノズル43の先端が溶接ラインから数cm離れるような位置(
図2及び
図3参照)を、ワイヤガイド31と燃焼ノズル43の相対的な基準位置とする。
【0026】
X軸は、加熱機40の加熱中心軸と平行な軸である。よって、燃焼ノズル43をX軸方向に動かすと、ガイド中心軸と加熱中心軸の交差点が溶接位置に固定されたままで、燃焼ノズル43が溶接位置から遠ざかったり、近付いたりする。
【0027】
Y軸は、加熱中心軸とガイド中心軸を含む平面に対して垂直な軸であり、母材A6と母材B7を結ぶ方向の線である。よって、燃焼ノズル43をY軸方向に動かすと、加熱中心軸が、母材A6と母材B7の境界である溶接ラインから外れて、母材A6の方に近付いたり、母材B7の方に近付いたりする。
【0028】
Z軸は、加熱機40の加熱中心軸とワイヤガイド31のガイド中心軸とを含む平面に平行な軸であり、燃焼ノズル43とワイヤガイド31とを結ぶ方向の線である。また、Z軸は、溶接ラインと平行な軸である。
【0029】
よって、燃焼ノズル43をZ軸方向に動かすと、加熱中心軸がワイヤガイド31に近付いたり、ワイヤガイド31から遠ざかったりする。このとき、加熱中心軸とガイド中心軸との交差点は、溶接位置から離れて、ガイド中心軸上をワイヤガイド31に近付いたり、ワイヤガイド31から遠ざかったりする。
【0030】
なお、燃焼ノズル43は、X軸駆動機構52、Y軸駆動機構53及びZ軸駆動機構54の各軸において、基準位置から両側に移動可能であり、各軸駆動機構52,53,54のスライド全長は30mmである。
【0031】
制御装置60は、溶接作業の際に、溶接装置10を構成する各部材の動作を制御する装置であり、支持装置10及び三軸スライダ50と接続されている。また、制御装置60は、母材A用温度センサ71及び母材B用温度センサ72と接続されており、温度センサ71,72の測定温度に基づいて各部材の動作を制御することができる。
【0032】
母材A用温度センサ71は、母材A6の溶接位置付近の温度(ここでは、表面温度)を測定するための非接触センサであり、ワイヤガイド31と一体に支持装置10の先端アーム部材11に固定されている。また、母材B用温度センサ72は、母材B7の溶接位置付近の温度(ここでは、表面温度)を測定するための非接触センサであり、同じくワイヤガイド31と一体に先端アーム部材11に固定されている。
【0033】
以上、溶接装置1の構成について説明したが、続いて、三軸スライダ50を駆動させてワイヤガイド31に対して燃焼ノズル43を相対的に移動させた場合の作用について説明する。
【0034】
図4は、本実施形態において燃焼ノズルがX軸方向にスライドした状態を概略的に示す模式正面図である。
図5は、本実施形態において燃焼ノズルがY軸方向にスライドした状態を概略的に示す模式正面図である。
図6は、本実施形態において燃焼ノズルがZ軸方向にスライドした状態を概略的に示す模式右側面図である。
【0035】
図4に示すように、X軸駆動機構52により、燃焼ノズル43をワイヤガイド31に対してX軸上で相対的にスライドさせると、加熱中心軸はそのままで、すなわち、加熱中心軸とガイド中心軸との交差点は溶接ライン上に位置したままで、溶接位置(交差点)に対して燃焼ノズル43を遠ざけたり近づけたりすることができる。
【0036】
このように、X軸上で溶接位置に対して燃焼ノズル43を遠ざける方向にスライドさせれば、溶接位置へ供給する熱量を減らすことができ、X軸上で溶接位置に対して燃焼ノズル43を近付ける方向にスライドさせれば溶接位置へ供給する熱量を増やすことができる。
【0037】
なお、このとき、燃焼ノズル43をX軸上でスライドさせると、燃焼ノズル43と溶加材ワイヤ8との距離、燃焼ノズル43と母材A6との距離、燃焼ノズル43と母材B7との距離は、それぞれ略同じ比率で変化するため、加熱機40から溶加材ワイヤ8、母材A6、母材B7それぞれに供給される熱量の比率は略同じである。
【0038】
よって、X軸上で燃焼ノズル43をスライドさせると、溶加材ワイヤ8、母材A6及び母材B7へ供給する熱量比は略一定のまま、全体の総熱量を調整することができる。
【0039】
例えば、加熱機40により同じ熱量で溶接位置を加熱していると、一般的に、溶接が進むに連れて母材6,7が溶接に適した温度よりも高温になってしまうため、通常は溶接速度(先端アーム部材11の移動速度)を高速化しているが、溶接速度が速くなると、溶加材ワイヤ8の供給量が不足してしまう場合もある。
【0040】
これに対して、燃焼ノズル43をX軸上で溶接位置から離れる方向にスライドさせれば、溶接速度を上げることなく、溶接位置への供給熱量を少なくして、適切な温度での溶接を実現することができる。
【0041】
次に、
図5に示すように、Y軸駆動機構53により、燃焼ノズル43をY軸上でスライドさせると、燃焼ノズル43の加熱中心軸を母材A6側に近づけたり、反対に母材B7側に近づけたりすることができる。
【0042】
このとき、燃焼ノズル43のY軸スライドに伴って、母材A6と母材B7との境界(溶接ライン)上に位置していた加熱中心軸が、母材A6側又は母材B7側にずれるため、加熱中心軸はガイド中心軸と交差しなくなる。
【0043】
なお、Y軸とX軸とは直交しており、燃焼ノズル43がY軸方向にスライドする際、燃焼ノズル43はX軸方向には動いておらず、溶加材ワイヤ8、母材A6及び母材B7に供給する総熱量は略同じである。
【0044】
このように、加熱中心軸を溶接ラインから母材A6側又は母材B7側にずらすことで、主として、総熱量は略一定のまま、母材A6と母材B7への給熱量比を変えることができる。
【0045】
例えば、母材B7の厚みが母材A6の厚みよりも数倍以上厚いなど、母材B7と母材A6の溶接ライン付近での熱特性が大きく異なり、溶接位置付近で同じ温度に加熱しようとしても母材B7のほうが必要な熱量が大きい場合には、加熱中心軸が溶接位置を通るように加熱機40で均等に加熱しても、母材B7の温度が低くなってしまう。
【0046】
母材B7の温度が溶接に適した温度よりも低くなってしまうと、溶加材ワイヤ8が母材B7において溶融しなかったり、流れなくなったりして、溶接不良になってしまう。
【0047】
これに対して、燃焼ノズル43をY軸上で母材B7側にスライドさせ、母材B7への給熱量を母材A6よりも大きくして重点的に加熱することで、溶接位置において母材A6と母材B7とをともに溶接に適した温度に加熱することが可能となる。
【0048】
次に、
図6に示すように、Z軸駆動機構54により、燃焼ノズル43をZ軸上でスライドさせると、加熱中心軸とガイド中心軸とを含む平面に平行な軸上で、ワイヤガイド31に対して加熱中心軸を近づけたり遠ざけたりすることができる。
【0049】
燃焼ノズル43がZ軸上でワイヤガイド31に近付き、加熱中心軸がワイヤガイド31に近付くと、燃焼ノズル43の火炎から放出される熱エネルギーが母材6,7に到達する前に溶加材ワイヤ8に吸収され割合が増えるため、加熱機40からの給熱のうち、溶加材ワイヤ8に供給される熱量が増加し、母材6,7に供給される熱量が相対的に減少する。
【0050】
このように、燃焼ノズル43をZ軸上でスライドさせることで、母材6,7と溶加材ワイヤ8への給熱量比を調整することができる。また、溶加材ワイヤ8への給熱量比を増やすことで、溶加材ワイヤ8の溶融量を増やすことができ、溶加材ワイヤ8への給熱量比を減らすことで、溶加材ワイヤ8の溶融量を減らすことができる。
【0051】
例えば、溶接開始直後で母材6,7の温度が十分に溶接温度まで上がっていない場合には、燃焼ノズル43をZ軸上でワイヤガイド31から遠ざけることで、母材6,7への給熱量比を上げて温度上昇を促すと共に、母材6,7が十分に加熱されていないことに対応して溶加材ワイヤ8の溶融量を減らして、適切な溶接を行うことができる。
【0052】
なお、燃焼ノズル43をZ軸上でワイヤガイド31に近付けると、母材6,7への給熱量は相対的に減少し、母材6,7が所望の溶接温度まで上昇する時間が長くなるため、溶接速度は遅くなり、反対にワイヤガイド31から遠ざけると、母材6,7への給熱量が相対的に増加するため、溶接速度は早くなる。
【0053】
また、燃焼ノズル43をZ軸上でスライドさせても、燃焼ノズル43はY軸方向には移動していないため、母材A6及び母材B7への給熱量比は略同じままである。
【0054】
続いて、溶接の際の制御装置60による三軸スライダ50の駆動制御の具体例について説明する。まず、
図7〜
図9を参照しながら、(1)溶接距離lをパラメータとして、駆動制御する場合について説明し、続いて、
図10〜
図12を参照しながら、(2)母材温度ta、tbをパラメータとして駆動制御する場合について説明する。
【0055】
(1)パラメータ:溶接距離l
ここでは、制御装置60は、溶接開始位置をl=0として、母材A6と母材B7との境界である溶接ラインに沿って溶接が進んだ距離(溶接距離l)に基づいて、三軸スライダ50の各軸駆動機構52,53,54の駆動を制御する。
【0056】
図7は、本実施形態に係るX軸駆動機構の駆動制御例を示す図である。
図7(a)及び
図7(b)において、縦軸がX軸上の燃焼ノズル43の位置x、横軸が溶接距離lを示している。また、縦軸は、基準位置を原点0とし、溶接ラインから離れる方向をプラスとしている。
【0057】
図7(a)に示す制御例では、溶接開始後、制御装置60は、0<l<L1においては、基準位置よりも溶接ラインに近付いたx=−X1に燃焼ノズル43が位置するように、L1<l<L2においては、x=−X1からx=X2に向けて溶接ラインから離れる方向に燃焼ノズル43が距離lに対して指数関数的に移動するように、L2<lにおいては、燃焼ノズル43がx=X2の位置から溶接ラインに近付く方向に距離lに比例して直線的に徐々に近付くように、X軸駆動機構52を制御する。
【0058】
図7(b)に示す制御例では、溶接開始後、制御装置60は、0<l<L3においては、基準位置よりも溶接ラインに近付いたx=−X3に燃焼ノズル43が位置するように、L3<l<L4においては、x=−X3からx=X4に向けて燃焼ノズル43が距離lに比例して直線的に移動するように、L4<lにおいては、x=X4の位置よりも燃焼ノズル43がさらに溶接ラインから離れる方向に距離lに比例して徐々に直線的に移動するように、X軸駆動機構を制御する。
【0059】
通常、溶接が進むにつれて、母材6,7が溶接に適した温度よりも高温になりがちであるが、
図7(a)及び
図7(b)に示すような制御を行うことで、溶接が進むにつれて、溶接位置への総供給熱量を少なくして、適切な温度で溶接を行うことができる。
【0060】
図8は、本実施形態に係るY軸駆動機構の駆動制御例を示す図である。
図8(a)及び
図8(b)において、縦軸がY軸上の燃焼ノズル43の位置y、横軸が溶接距離lを示している。また、縦軸は、基準位置を原点0とし、母材A6から母材B7に近付く方向をプラスとしている。
【0061】
図8(a)に示す制御例では、溶接開始後、制御装置60は、0<l<L5においては、基準位置よりも母材A6に近付いたy=−Y1に燃焼ノズル43が位置するように、L5<l<L6においては、y=−Y1からy=Y2に向けて燃焼ノズル43が母材B7に近付く方向に距離lに対して指数関数的に移動するように、L6<lにおいては、y=Y2の位置から燃焼ノズル43がさらに母材b7へ徐々に距離lに比例して直線的に近付くように、Y軸駆動機構53を制御する。
【0062】
図8(b)に示す制御例では、溶接開始後、制御装置60は、0<l<L7においては、基準位置よりも母材A6に近付いたy=−Y3に燃焼ノズル43が位置するように、L7<l<L8においては、y=−Y3からy=Y4に向けて燃焼ノズル43が母材B7に近付く方向に距離lに比例して直線的に移動するように、L8<lにおいては、y=Y4の位置から燃焼ノズル43がさらに母材b7に徐々に距離lに比例して直線的に近付くように、Y軸駆動機構53を制御する。
【0063】
溶接される二つの母材の形状や素材が異なる場合には、両者の熱特性が異なるため、同じ熱量を供給したのでは、溶接位置で両者を適切な温度に調整できなくなる場合がある。これに対して、
図8(a)及び
図8(b)に示すような制御を行うことで、適宜二つの母材への供給熱量の比率を変えることができるので、それぞれに適切な熱量を供給して適切な溶接温度に加熱することができる。
【0064】
図9は、本実施形態に係るZ軸駆動機構の駆動制御例を示す図である。
図9(a)及び
図9(b)において、縦軸がZ軸上の燃焼ノズル43の位置z、横軸が溶接距離lを示している。また、縦軸は、基準位置を原点0とし、ワイヤガイド31に近付く方向をプラスとしている。
【0065】
図9(a)に示す制御例では、溶接開始後、制御装置60は、0<l<L9においては、基準位置よりもワイヤガイド31から遠ざかったz=−Z1に燃焼ノズル43が位置するように、L9<l<L10においては、z=−Z1からz=Z2に向けて燃焼ノズル43がワイヤガイド31に近付く方向に距離lに対して指数関数的に移動するように、L10<lにおいては、z=Z2の位置から燃焼ノズル43がワイヤガイド31から離れる方向に徐々に距離lに比例して直線的に移動するように、Z軸駆動機構54を制御する。
【0066】
図9(b)に示す制御例では、溶接開始後、制御装置60は、0<l<L11においては、基準位置よりもワイヤガイド31から遠ざかったz=−Z3に燃焼ノズル43が位置するように、L11<l<L12においては、z=−Z3からz=Z4に向けて燃焼ノズル43がワイヤガイド31に近付く方向に距離lに比例して直線的に移動するように、L12<lにおいては、z=Z4の位置から燃焼ノズル43がワイヤガイド31にさらに近付く方向に徐々に距離lに比例して直線的に移動するように、Z軸駆動機構54を制御する。
【0067】
図9(a)及び
図9(b)に示すような制御を行うことで、溶接の進行に応じて、母材6,7及び溶加材ワイヤ8への全体の給熱量はそのままで、母材6,7への給熱量と溶加材ワイヤ8への給熱量の割合を変更することができ、溶加材ワイヤ8の溶融量を調整することで、適切な溶接を実現することができる。
【0068】
以上、溶接距離lに基づく三軸スライダ50の駆動制御において、制御装置60は、溶接距離lを支持装置10の姿勢から取得する。すなわち、支持装置10の先端アーム部材11が溶接ラインに沿って移動することで溶接が進行するため、予め、溶接距離lが所定の値(L1、L2、L3…)を示す際の支持装置10の姿勢を制御装置60に設定しておくことで、溶接距離lが所定の値まで進んだことを検知することができる。
【0069】
なお、上記制御におけるL、X、Y、Zの各値は、予め試験的に溶接を行って決めるようにすれば良い。また、溶接距離lの代わりに溶接時間tをパラメータとして、溶接の進行状況に基づく同様の制御を行うようにしても良い。
【0070】
(2)パラメータ:母材温度ta、tb
ここでは、制御装置60は、母材温度ta、tbの温度に基づいて、三軸スライダ50の各軸駆動機構52,53,54の駆動を制御する。母材温度taは、母材A6の溶接位置近傍の表面温度であり、母材A用温度センサ71によって測定される。母材温度tbは、母材B7の溶接位置近傍の表面温度であり、母材B用温度センサ72によって測定される。
【0071】
図10は、本実施形態に係るX軸駆動機構の駆動制御例を示す図である。
図10(a)及び
図10(b)において、縦軸がX軸上の燃焼ノズル43の位置x、横軸が母材温度の平均値tc=(ta+tb)/2を示している。なお、縦軸は、基準位置を原点0とし、溶接ラインから離れる方向をプラスとしている。
【0072】
図10(a)に示す制御例では、溶接開始後、制御装置60は、T1<tc<T2の場合には、X軸上で燃焼ノズル43が基準位置(x=0)に位置するように、tc<T1の場合には、X軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりも溶接ラインに近付く方向にtcに対して指数関数的に移動するように、T2<tcの場合には、X軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりも溶接ラインから離れる方向にtcに対して指数関数的に移動するように、X軸駆動機構52を制御する。
【0073】
図10(b)に示す制御例では、溶接開始後、制御装置60は、T3<tc<T4の場合には、X軸上で燃焼ノズル43が基準位置(x=0)に位置するように、tc<T3の場合には、X軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりも溶接ラインに近付く方向にtcに比例して直線的に移動するように、T4<tcの場合には、X軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりも溶接ラインから離れる方向にtcに比例して直線的に移動するように、X軸駆動機構52を制御する。
【0074】
図10(a)及び
図10(b)に示すような制御を行うことで、母材6,7の平均温度が下がれば、燃焼ノズル43を溶接位置へ近付けて母材6,7及び溶加材ワイヤ8への総給熱量を増やすと共に、母材6,7の平均温度が上がると、燃焼ノズルを溶接位置から遠ざけて母材6,7及び溶加材ワイヤ8への総給熱量を減らすことになるので、適切な温度で適切な溶接を行うことができる。
【0075】
図11は、本実施形態に係るY軸駆動機構の駆動制御例を示す図である。
図11(a)及び
図11(b)において、縦軸がY軸上の燃焼ノズル43の位置y、横軸が母材A6と母材B7の温度差td=ta−tbを示している。なお、縦軸は基準位置を原点0とし、母材A6から母材B7に近く付く方向をプラスとしている。
【0076】
図11(a)に示す制御では、溶接開始後、制御装置60は、T5<td<T6の場合には、Y軸上で燃焼ノズル43が基準位置(y=0)に位置するように、td<T5の場合には、Y軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりも母材A6に近付く方向にtdに対して指数関数的に移動するように、T6<tdの場合には、Y軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりも母材B7に近付く方向にtdに対して指数関数的に移動するように、Y軸駆動機構53を制御する。
【0077】
図11(b)に示す制御では、溶接開始後、制御装置60は、T7<td<T8の場合には、Y軸上で燃焼ノズル43が基準位置(y=0)に位置するように、td<T7の場合には、Y軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりも母材A6に近付く方向にtdに比例して直線的に移動するように、T8<tdの場合には、Y軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりも母材B7に近く付く方向にtdに比例して直線的に移動するように、Y軸駆動機構53を駆動制御する。
【0078】
図11(a)及び
図11(b)に示すような制御を行うことで、母材A6の温度が母材B7と比べて高温になると、加熱中心軸を母材B7側へ移動させ、反対に、母材B7の温度が母材A6と比べ高温になると、加熱中心軸を母材A6側へ移動させることになるので、母材A6及び母材B7の双方を適切な溶接温度に維持し、適切な溶接を実現することができる。
【0079】
図12は、本実施形態に係るZ軸駆動機構の駆動制御例を示す図である。
図12(a)及び
図12(b)において、縦軸がZ軸上の燃焼ノズル43の位置z、横軸が母材温度の平均値tc=(ta+tb)/2を示している。なお、縦軸は、基準位置を原点0とし、ワイヤガイド31に近付く方向をプラスとしている。
【0080】
図12(a)に示す制御では、溶接開始後、制御装置60は、T9<tc<T10の場合には、Z軸上で燃焼ノズル43が基準位置(z=0)に位置するように、td<T9の場合には、Z軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりもワイヤガイド31から離れる方向にtcに対して指数関数的に移動するように、T10<tcの場合には、Z軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりもワイヤガイド31に近付く方向にtcに対して指数関数的に移動するように、Z軸駆動機構54を制御する。
【0081】
図12(b)に示す制御では、制御装置60は、T11<tc<T12の場合には、Z軸上で燃焼ノズル43が基準位置(z=0)に位置するように、tc<T11の場合には、Z軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりもワイヤガイド31から遠ざかる方向にtcに比例して直線的に移動するように、T12<tcの場合には、Z軸上で燃焼ノズル43が基準位置よりもワイヤガイド31に近く付く方向にtcに比例して直線的に移動するように、Z軸駆動機構54を駆動制御する。
【0082】
図12(a)及び
図12(b)に示すような制御を行うことで、母材6,7の平均温度が所定値よりも下がれば、燃焼ノズル43を溶加材ワイヤ8から遠ざけ、相対的に母材6,7への給熱量を増やし、母材6,7の平均温度が所定値よりも上がれば、燃焼ノズル43を溶加材ワイヤ8に近付け、相対的に母材6,7への給熱量を減らすので、母材6,7の温度を適切に制御し、適切な溶接を実現することができる。
【0083】
なお、なお、上記制御におけTの各値は、予め試験的に溶接を行って決めるようにすれば良い。
【0084】
以上、制御装置60による三軸スライダ50の駆動制御例について説明したが、制御装置60における制御方法は適宜変更可能であり、複数の制御方法を組み合わせても良い。例えば、上述した溶接距離lに基づく駆動制御をメインで行いながら、母材温度ta、tbに基づく制御により補正するようにしても良い。
【0085】
以上、詳細に説明した本実施形態に係る溶接装置1によれば、燃焼ノズル43をワイヤガイド31に対して相対的にXYZの三軸上でスライド自在に構成することで、加熱機40から各母材6,7、溶加材ワイヤ8への給熱量や熱量比を細かく制御することができ、適切な溶接を実現することができる。
【0086】
次に、本実施形態の変形例1について説明する。
図13は、変形例1に係る溶接装置を概略的に示す模式正面図である。変形例1に係る溶接装置2は、ワイヤガイド装置30、加熱機40及び三軸スライダ50の配置位置が異なるだけで、その他の構成は上記実施形態と同様である。よって、ここでは、異なる構成についてのみ説明し、共通の構成について同じ番号を付して説明を省略する。
【0087】
溶接装置2は、支持装置10と、ワイヤガイド装置30と、加熱機40と、三軸スライダ50と、制御装置60とを備えている。
図13では、支持装置10と制御装置60とを省略している。
【0088】
上記実施形態では、ワイヤガイド装置30のガイド中心軸と、加熱機40の加熱中心軸とを含む平面が溶接ラインと平行な面となるようにワイヤガイド31と燃焼ノズル43が並んで設置されていたが、本実施形態では、ガイド中心軸と加熱中心軸とを含む平面が溶接ラインと垂直な面となるようにワイヤガイド31と燃焼ノズル43が並んで設置されている。
【0089】
本変形例1においても、燃焼ノズル43をX軸上でスライドさせると、加熱中心軸はそのままで、溶接位置に対して燃焼ノズル43を遠ざけたり近付けたりすることができる。
【0090】
燃焼ノズル43をY軸上でスライドさせると、加熱中心軸が溶接ラインから外れて母材A6の方に近付いたり、母材B7の方に近付いたりする。さらに、燃焼ノズル43をY軸上でスライドさせた場合には、加熱中心軸がワイヤガイド31に近付いたり、ワイヤガイド31から遠ざかったりする。
【0091】
燃焼ノズル43をZ軸上でスライドさせると、加熱中心軸がワイヤガイド31から遠ざかることになり、相対的に母材6,7への給熱が増えることになる。本変形例1においても、上記実施形態と同様に、加熱機40から各母材6,7、溶加材ワイヤ8への給熱量や熱量比を細かく制御することができ、適切な溶接を実現することができる。
【0092】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、溶接装置として、ロウ付け装置を例に挙げて説明したが、溶接位置を加熱するための加熱用のトーチ(燃焼ノズル)と、溶加材ワイヤを溶接位置にガイドするためのワイヤガイドとを備える溶接装置であれば、本発明を適用することができる。
【0093】
例えば、アーク溶接であるTIG溶接では、加熱用トーチとしての電極(タングステン棒)と、溶加材ワイヤをガイドするワイヤガイドとを備える溶接装置が提供されており、本発明を適用することができる。
【0094】
また、上記実施形態では、XYZ軸上でスライド駆動自在な三軸スライダを採用しているが、ワイヤガイドと加熱用トーチを二軸や四軸等、複数のスライド軸において相対的にスライド駆動自在な多軸スライダであれば良い。多軸スライダであれば、加熱用トーチから各母材や溶加材ワイヤへの給熱量や熱量比を制御し、適切な溶接を実現することができる。
【0095】
また、多軸スライダのスライド軸は、直線状の軸に限らず、円弧状等、曲線状のスライド軸を含んでいても良い。