(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記物体検出部は、予め設定された範囲に向けて検出信号を送信し、前記検出信号に対する反射信号を取得して、前記予め設定された範囲に存在する物体に関する検出結果を出力し、
前記物体配置情報生成部は走行に伴って順次出力される2つの物体に関する前記検出結果に基づいて、前記2つの物体と自車との位置関係を順次算定して、前記配置情報を生成する請求項1または2に記載の自動走行作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による自動走行作業車両の具体的な実施形態を説明する前に、自動作業走行するにあたって必要な作業領域に関する情報をティーチング走行によって取得する際の基本的な処理の流れを、
図1を用いて説明する。
図1では、作業領域は、白丸で示された境界識別体によって規定された、単純な長方形で示されており、その領域内には、縦方向及び横方向に4つずつ並んだ16の走行障害物としての物体が配置されている。例えば、作業領域が果樹園とすれば、この物体は果樹となる。
【0015】
ティーチング走行は、ラジコン(無線リモコン)方式で行われる。この自動走行作業車両には、操作員によって操作される遠隔操作ユニットから出力される遠隔操縦信号を受信して、その遠隔操縦信号に基づいて車両を操舵する機能が備えられている。自動走行作業車両は、作業領域に存在する走行障害ないしは走行基準となる物体を検出する機能も有しており、この物体検出機能を利用して、自車と物体との距離や方向を算定することができる。
【0016】
ティーチング走行は、作業領域の電子地図データである外形マップを生成するための第1ティーチング走行と、作業領域に点在する物体の基準点からの位置を含む物体の配置情報を生成するための第2ティーチング走行とに分かれている。
【0017】
第1ティーチング走行では、操作員はラジコン操作を通じて、自動走行作業車両を境界識別体に沿って作業領域の周囲を周回走行させる。境界識別体としては、杭や垣根などが用いられる。この周回走行における走行軌跡が作業領域の外形に対応する。好適な形態として、外形マップは、走行中のLRF(レーザレンジファインダ)による境界識別体に対する測定結果の累積から生成することができる。あるいは、GPS(全地球測位網)装置やGNSS(汎地球航法衛星システム)装置を用いて、周回走行における自車位置から走行軌跡、結果的には作業領域の外形マップを生成することも可能である。
【0018】
第2ティーチング走行では、操作員はラジコン操作を通じて、第1ティーチング走行によって得られた作業領域の外形マップ内に点在する物体の並びに沿って自動走行作業車両を走行させる。走行中の自動走行作業車両から各物体への方向と距離は、LRFを採用した物体検出部からの検出結果に基づいて算定される。この各物体への方向と距離を集積していくことで、作業領域における物体の存在数だけではなく、基準点に対する物体の相対位置や隣接する物体間の縦方向及び横方向の間隔位置などが物体の配置情報として得られる。例えば、物体を果樹園での果樹とすれば、配置情報には、果樹園の各コーナ部(基準点の一例)から最短の果樹までの距離、果樹間の距離、果樹の列当たりの本数、果樹の行当たりの本数などが含まれる。
【0019】
第1ティーチング走行によって得られた外形マップと、第2ティーチング走行によって得られた配置情報とを対応付けるか、あるいは統合することにより、作業領域の外形、作業領域に存在する物体(果樹)の本数や作業領域からのオフセット量(基準点からの相対位置)を、自動走行作業車両に搭載された自動走行制御系に入力することができる。これにより、自動走行作業車両は作業領域内を物体に沿って自動走行することができ、例えば、農園の草刈、農作物への薬剤散布などの自動化が可能となる。
【0020】
次に、図面を用いて、自動走行作業車両の具体的な実施形態の1つを説明する。
図2は、自動走行作業車両の一例である自動草刈機の側面図である。この実施形態では、自動草刈機は、
図1を用いて説明した、第1ティーチング走行と第2ティーチング走行とからなるラジコン方式のティーチング走行をそなえている。つまり、
図3に示されるような果樹園(作業領域の一種)Pにてティーチング走行を実行する機能と、このティーチング走行で得られた情報に基づいて、果樹園Pに植えられている複数の樹木(果樹園Pに点在する物体の一種)Kの間に生えている草を刈り取りながら自動走行する機能が備えられている。
【0021】
この自動草刈機1は、
図3に示されるような果樹園Pに植えられている複数の果樹Kの間に生えている草を刈り取りながら自動走行する際、果樹園Pの中央部では
図3において一点鎖線Aで示されるように果樹Kに沿って走行し、果樹園Pの進行方向の両端部では破線Bで示されるように前後進を繰り返して、自動草刈機1の位置を側方にずらすようにスイッチバックを行う。したがって、自動草刈機1は、果樹園Pの一方の端部から他方の端部に向って走行する場合と、果樹園Pの他方の端部から一方の端部に向って走行する場合とで進行方向を向く側が異なることになる。
【0022】
図2に示されるように、自動草刈機1は、車輪2と車体3とを備えて構成される。車輪2は、車体3の車長方向の一端側の第1車輪2A、及び車長方向の他端側の第2車輪2Bから構成される。車体3には、自動草刈機1の動力源であるエンジン4、エンジン4に供給する燃料が備蓄されている燃料タンク5、エンジン4により駆動される発電機6、発電機6により発電された電力を蓄電し、自動草刈機1が有する電気機器に電力供給するバッテリ7、自動草刈機1の自動走行を制御する制御ユニット10、バッテリ7から供給される電力に基づき第1車輪2Aの操向操作を行う第1車輪操向操作機構51、バッテリ7から供給される電力に基づき第2車輪2Bの操向操作を行う第2車輪操向操作機構52、エンジン4の回転力が入力され、草刈りに使用する刈り刃54を有する草刈装置53、第1車輪2A及び第2車輪2Bの少なくとも一方と草刈装置53とへのエンジン4の回転力の断接を行う動力伝達機構55を備えている。
【0023】
さらに、自動草刈機1はラジコンでの遠隔操作も可能に構成されており、遠隔操作ユニット200から出力される遠隔操縦信号を受信する通信装置20のアンテナ21が天井領域に配置されている。この天井領域には、後で詳しく説明する物体検出部11のレーザ送信デバイス111も配置されている。遠隔操作ユニット200は、自動草刈機1を前進又は後退させる第1操作レバー210と、操向輪の操舵を操作する第2操作レバー220とが設けられる。また、遠隔操作ユニット200に対する通電を制御する電源スイッチ230も設けられる。第1操作レバー210及び第2操作レバー220による操作に基づく遠隔操縦信号は、アンテナ21を通じて自動草刈機1に構築されている制御系に伝達される。
【0024】
図4には、自動草刈機1の走行制御系の中核構成要素である制御ユニット10の走行のための機能部を示す機能ブロックが示されている。制御ユニット10は、CPUを中核部材として構成されており、各機能部はハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。この実施形態では、制御ユニット10には、物体検出部11、検出物体演算モジュールDOM、ティーチング走行管理部100、走行範囲設定部15、走行制御部16が構築されている。物体検出部11からの物体検出信号を受け取る検出物体演算モジュールDOMには、目標物設定部12、基準線設定部13、距離演算部14、物体数設定部17、物体計数部18、判定部19が含まれている。
【0025】
走行制御部16には、遠隔走行制御部161と自動走行制御部162とが含まれている。遠隔走行制御部161は、遠隔操作ユニット200から送られてくる遠隔操縦信号に基づいて自動草刈機1を遠隔操縦走行させる。この遠隔操縦走行は、
図1を用いて説明された第1ティーチング走行及び第2ティーチング走行以外にも、操作員の操縦によって自動草刈機1を手動走行させる際に用いられる。
【0026】
ティーチング走行管理部100には、外形マップ生成部101と物体配置情報生成部102とが含まれている。外形マップ生成部101は、遠隔操縦による第1ティーチング走行を通じて得られた果樹園Pの境界検出データを通じて外形マップを作成する。物体配置情報生成部102は、遠隔操縦による第2ティーチング走行を通じて得られた検出物体としての果樹Kの検出データを通じて果樹Kの配置情報を生成する。この実施形態では、配置情報には、果樹Kの本数及び果樹園Pの境界に最も近い果樹Kとの距離が含まれている。
【0027】
自動走行制御部162は、外形マップと配置情報とを参照しながら、以下に説明する操縦アルゴリズムで、果樹園P内を果樹Kの列に沿って自動草刈機1を自動走行させる機能を有する。
【0028】
物体検出部11は、予め設定された範囲に向けて検出信号を送信し、当該検出信号に対する反射信号を取得して、当該予め設定された範囲に存在する物体を検出する。予め設定された範囲とは物体検出部11の検出可能な範囲であり、本実施形態では、レーザレンジファインダとして構成されており、検出信号はレーザであり、
図5に示されるような自動草刈機1を中心とする約270度のスキャニング範囲Rを有する。もちろん、レーザに代えてその他の光や超音波を用いたレンジファインダを利用してもよい。いずれにせよ、このような検出信号は回転ミラーを通じてスキャニング送信され、物体に衝突すると反射される。物体検出部11は、検出信号を予め設定されたスキャニング範囲で送信し、衝突によって生じる反射信号を取得する。物体検出部11は、検出信号の送信方向(送信時のスキャン角度:回転ミラーの角度に対応する)に基づいて物体検出部11を基準とした物体が存在する方向(送信角度:θ1、θ
2)を示す情報と、検出信号を送信してから反射信号を取得するまでの時間に基づいて演算した物体検出部11から物体までの距離を示す情報とを取得する。本実施形態では、物体検出部11は水平方向に、且つ、上述したスキャニング範囲Rに対して例えば0.5度のスキャンピッチで検出信号を送信する。
【0029】
車体3の車長方向とは、自動草刈機1の車体3の長さ方向である。したがって、車長延長線とは、自動草刈機1の長さ方向一端側の車幅方向中央部と、長さ方向他端側の車幅方向中央部とを結ぶ延長線にあたる。もちろん、自動草刈機1の長さ方向一端側の左端及び右端の一方と、長さ方向他端側の左端及び右端の一方とを結ぶ延長線であっても良い。車体3の両側方とは、車体3の進行方向前側を見て右側と左側である。したがって、一方の側とは、当該右側または左側が相当する。本実施形態では、
図5に示されるように、物体検出部11が検出する範囲Rは自動草刈機1を中心とした全周囲のうち約270度のスキャニング範囲である。このため、一方の側とは、全領域に亘って検出可能な側を意味し、具体的には
図5に示されるように、自動草刈機1が紙面上側の方向に向って走行する場合には進行方向を見て左側が相当し、自動草刈機1が紙面下側の方向に向って走行する場合には進行方向を見て右側が相当する。このように物体検出部11は、自動草刈機1の片側に存在する物体を検出する。
【0030】
目標物設定部12は、物体検出部11により検出された物体のうち、少なくとも2つの物体の位置に基づいて、当該少なくとも2つの物体を目標物Oとして設定する。物体検出部11は、5に示されるように所定の範囲(
図5ではRで示されている270度のスキャニング範囲)内に検出信号を送信する。このため、このスキャニング範囲R内に存在する物体を検出する。ここで、本実施形態では自動草刈機1は果樹Kが植えられている果樹園を自動走行する。このため、果樹園内の果樹Kや果樹Kを支持する支柱の中から目標物Oが設定される。また、本実施形態では、自動草刈機1は少なくとも2つの物体を検出できれば目標物Oを設定することができる。このため、本実施形態では、目標物設定部12はスキャニング範囲R内において物体検出部11により検出された物体から2つの物体を用いて目標物Oとして設定するとして説明する。
【0031】
2つの目標物Oのうちの一方は、自動草刈機1から左側方を見て最も近い位置にある物体が選択される。
図4の例では、符号O1を付したものが相当する。2つの目標物Oのうちの他方は、物体検出部11により検出された物体のうち、進行方向に沿って並んだ物体を用いて設定される。進行方向に並んだ物体とは、先に設定された目標物O1から見て自動草刈機1の進行方向奥側に位置する物体である。ここで、進行方向奥側には、
図1に示されるように複数並んでおり、物体検出部11により複数検出されることもある。そこで、目標物設定部12は、現在、設定されている目標物Oから車長方向に沿って予め設定された距離内において新たな目標物Oを設定する。これにより、現在、設定されている目標物Oに近い位置にある物体を目標物Oとして設定することができるので、物体が配置されている形態に応じて自動草刈機1を走行させることが可能となる。また、予め設定された範囲内をフィルタリングして目標物Oを設定するので、目標物Oの設定に係る演算処理を軽減できる。
【0032】
本実施形態では、目標物設定部12により、先に設定された目標物O1から見て自動草刈機1の進行方向において最も近い物体が選択される。
図5の例では、符号O2を付したものが相当する。自動草刈機1に関する目標物O1及び目標物O2の座標位置は、目標物O1に係る物体検出部11の検出結果から算定される自動草刈機1と目標物O1との間の距離及び自動草刈機1を中心とする目標物O1の角度:θ1と、目標物O2に係る物体検出部11の検出結果から算定される自動草刈機1と目標物O2との間の距離及び自動草刈機1を中心とする目標物O2の角度:θ2とに基づき、三角関数の公式を用いて演算することができる。目標物O1及び目標物O2の座標位置から目標物O1と目標物O2との間の距離は算定される。
【0033】
ここで、自動草刈機1は、進行方向がどの方位であるかを自ら認識することができないので、自動草刈機1に対して予めユーザが進行方向を設定しておくと好適である。もちろん、自動草刈機1の長さ方向両端のうち、最初に進行する側の端部を設定しておき、当該端部が向いている側を進行方向として設定しても良い。
【0034】
基準線設定部13は、目標物設定部12により設定された少なくとも2つの目標物Oを通り、走行時の基準となる基準線SLを設定する。目標物設定部12により設定された少なくとも2つの目標物Oとは、本実施形態では上述した目標物O1及び目標物O2である。基準線設定部13は、制御ユニット10内で用いる座標系において、この目標物O1と目標物O2とを直線で繋いで基準線SLを設定する。基準線SLは後述するように自動草刈機1が自動走行する際に基準として利用される。
【0035】
距離演算部14は、基準線SLから車体3までの距離(離間距離)を演算する。基準線SLから車体3までの距離とは、上記座標系において基準線SLと車体3とを最短で繋いだ距離である。このため、車体3を通るように引いた基準線SLからの垂線上での距離にあたる。
【0036】
走行範囲設定部15は、自動草刈機1が自動走行する走行経路に対して許容される走行範囲を設定する。本実施形態では自動草刈機1は自動走行しながら草を刈り取る。このため、自動草刈機1が自動走行する走行経路は、草を刈り取る経路に相当する。詳細は省略するが、刈り刃54は自動草刈機1の車体3の中央部の底面に車幅方向に亘って設けられる。自動草刈機1は果樹園の一方の端部から他方の端部まで自動走行する際に、先に走行した経路に対して刈り取る領域の一部(例えば20〜30cm)を重複させて自動走行する。上述した許容される走行範囲は、このような重複する幅の1/2〜1/3(例えば10〜15cm)程度に設定すると好適である。これにより、刈り取りムラの発生を防止できる。
【0037】
走行制御部16は、基準線SLから車体3までの距離を予め設定された果樹園P内を往復走行する際の走行経路に応じて予め設定された範囲内に維持しつつ、予め設定された果樹園P内において基準線SLに沿って走行させる。基準線SLから車体3までの距離は、上述した距離演算部14により演算され、順次、リアルタイムで走行制御部16に伝達される。自動草刈機1は、果樹園P内を往復走行しながら、草刈りを行う。
【0038】
上述したように、自動草刈機1はエンジン4を動力源として走行する。また、第1車輪2A及び第2車輪2Bは、夫々操向操作可能に構成され、夫々第1車輪操向操作機構51及び第2車輪操向操作機構52により操向操作が行われる。また、エンジン4により発生された回転力は、第1車輪2A及び第2車輪2Bの少なくとも一方に動力伝達機構55を介して伝達される。第1車輪2A及び第2車輪2Bに対する動力の伝達は、双方に行って自動草刈機1を4輪駆動としても良いし、一方に行って2輪駆動としても良い。また、第1車輪2A及び第2車輪2Bの夫々は、左右一対で構成されても良いし、少なくとも一方が1輪で構成されていても良い。走行制御部16は、基準線SLから自動草刈機1までの距離が予め設定された範囲内に収まるように、第1車輪操向操作機構51、第2車輪操向操作機構52、及び動力伝達機構55を制御して、基準線SLに沿って走行させる。
【0039】
自動草刈機1は、基準線SLに沿って走行しながら次の目標物Oとなる物体を検出する。現在の基準線SLの設定に係る進行方向前側の目標物O2近傍に達すると、当該目標物O2を進行方向手前側の目標物O1とし、新たに設定した目標物Oを進行方向奥側の目標物O2として設定する。これらの目標物O1及び目標物O2により基準線SLを設定し直して、当該基準線SLに沿って果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで走行する。
【0040】
自動草刈機1は、果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで基準線SLに沿って走行し、端部においてはスイッチバックをして、そこで設定された基準線SLに沿って走行する(
図3参照)。スイッチバックとは、自車が果樹園Pの端部に達した際に前後進を繰り返して、自動草刈機1の位置を当該端部の位置から側方にずらすように移動する走行形態である。本実施形態では、自動草刈機1は自車が果樹園Pの端部に達した否かを果樹Kの数によって認識するよう構成されている。このため、物体配置情報生成部102が第2ティーチング走行を通じて生成した配置情報に含まれている物体総数が、果樹園P内において物体検出部11が検出すべき果樹Kの数として、物体数設定部17に設定されている。ここでは、果樹園P内において物体検出部11が検出する果樹Kの数とは、自動草刈機1は、果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで走行する際に検出された目標物Oの数である。なお、果樹園P内に存在する果樹Kの本数を物体数設定部17に設定する場合には、果樹園P内に存在する物体の列数、及び夫々の列毎の物体の個数の形態で設定していてもよい。
【0041】
物体計数部18は、果樹園Pの一方の端部から他方の端部に向って走行する際に、基準線SLの設定に用いた物体の数を計数する。物体計数部18は目標物設定部12が目標物Oを新たに設定した場合には、その旨を示す情報を取得し、当該新たに設定した目標物Oを用いて実際に基準線SLを設定に用いた物体の数を計数する。ここで、元々、進行方向奥側の目標物O2として設定していたものを、自動草刈機1の走行に応じて進行方向手前側の目標物O1として設定した場合には、双方を計数すると、同一の物体に係る目標物Oであることから重複して計数することになる。このような重複して計数することを避けるために、物体計数部18は、自動草刈機1が果樹園Pの一方の端部から他方の端部に向って走行する際に、予め決定された進行方向手前側に設定された目標物O1に係る物体及び進行方向奥側に設定された目標物O2に係る物体の何れか一方のみを計数し、当該計数結果に1を加えておくことで、果樹園Pの一方の端部から他方の端部に至るまで基準線SLの設定に係る物体を計数することが可能となる。
【0042】
判定部19は、物体計数部18の係数結果が、物体数設定部17により設定された物体の数に達した場合に、自動草刈機1が果樹園Pの他方の端部に達したと判定する。これにより、走行制御部16はその位置で自動草刈機1を一旦、停車させ、当該停車した位置から自動草刈機1をスイッチバックさせて次に草を刈り取る分だけ位置をずらし、その位置から再度、目標物Oに基づき基準線SLを設定して自動走行しながら草を刈り取る。このようにして自動草刈機1は、自車で自動走行する際に基準となる基準線SLを設定し、自動走行することが可能となる。
【0043】
次に、自動草刈機1が果樹園で自動走行しながら草刈りを行う際の手順を、
図6のフローチャート、及び
図7の模式図を用いて説明する。まず、操作員は、第1の前処理として、遠隔操作ユニット200を用いて自動草刈機1を遠隔操縦し、果樹園Pの境界領域を周回走行する第1ティーチング走行(#01)及び果樹園Pの内部を果樹Kの並びに沿って走行する第2ティーチング走行(#02)を実行する。このティーチング走行は、既に
図1を用いて説明している通りである。第1ティーチング走行によって果樹園Pの外形マップを作成するためのデータが取得され、第2ティーチング走行によって果樹園Pに植えられている果樹Kの本数や外形マップの特定位置からの距離などを含む配置情報が取得される。
【0044】
自動走行を開始するにあたって、自動草刈機1を、遠隔操作ユニット200を用いて自動走行に適切な位置、果樹園Pの1つの端部に移動させる(#1)。その際、自動草刈機1は自動走行を開始する際の走行方向に沿う姿勢となるように移動させられる。自動走行がスタートすると、物体検出部11は、所定の範囲について物体の検出を開始する(ステップ#2)。以後、物体検出部11は、自動草刈機1が自動走行を終了するまで継続して物体の検出を行う。このように自動草刈機1の周囲において検出された物体が
図7の#101に示される。検出された物体が、目標物Oとしての所定の条件を満たす場合には(ステップ#3:Yes)、当該物体を目標物Oとして設定する(ステップ#4)。この目標物Oの検出は、少なくとも2つの目標物Oが設定されるまで行われる(ステップ#5:Yes)。
【0045】
図7の#102には、このような2つの目標物Oとして、自動草刈機1の進行方向手前側にある目標物O1と、自動草刈機1の進行方向奥側にある目標物O2とが設定された例が示される。制御ユニット10内では、物体検出部11により取得された当該物体検出部11を基準とした物体が存在する方向を示す情報と、物体検出部11から物体までの距離を示す情報とに基づき、自動草刈機1を基準とした座標系において目標物O1及び目標物O2の座標が演算される。具体的には、
図7の#102に示されるように、自動草刈機1の座標が(0,0)として設定され、目標物O1の座標が(X1,Y1)、目標物O2の座標が(X2,Y2)として演算される。
【0046】
基準線設定部13は、2つの目標物O1及び目標物O2を基準に基準線SLを設定する(ステップ#6)。この基準線SLは、
図7の#103に示されるように、物体検出部11により検出された目標物O1と目標物O2との夫々の外縁部を繋いだ線で設定さる。
【0047】
次に、自動草刈機1が走行する基準線SLを基準とした走行経路を設定する。この設定は、基準線SLから走行経路までの距離に応じて設定される(ステップ#7)。この場合、当該距離の演算処理及び以降の処理を行い易くするために、制御ユニット10では、自動草刈機1を基準とした座標系から基準線SLをy軸とする座標系に座標変換が行われる。これにより、目標物O1の座標(X1,Y1)、及び目標物O2の座標(X2)が座標変換され、
図7の#103に示されるように、目標物O1の座標(0,y1)、及び目標物O2の座標(0,y2)となる。このような座標変換後の座標系において、基準線SLから走行経路までの距離がmとして設定される。この場合、自動草刈機1の座標は(x1,0)に変換される。また、この距離に対する許容範囲±aが設定される(ステップ#8)。
【0048】
自動走行制御部162は、基準線SLから自動草刈機1までの距離が、設定された「m±a」に収まるように自動草刈機1を走行させる(ステップ#9)。基準線SLから自動草刈機1までの距離が、設定された「m±a」に収まらない場合には(ステップ#10:Yes)、自動走行制御部162は許容範囲内に収まるようにステアリングを操作する(ステップ#11)。これにより、自動草刈機1は、
図7の#104に示されるように所期の走行経路に沿って走行することが可能となる。ステップ#10において、基準線SLから自動草刈機1までの距離が、設定された「m±a」に収まる場合には(ステップ#10:No)、自動走行制御部162はそのままの舵角で走行させる。なお、この場合、自動草刈機1の位置によって物体検出部11により検出される物体の検出結果が異なるので、都度、目標物O1,O2の座標変換を行いつつ、基準線SLを更新しながら自動走行が行われる。
【0049】
自動草刈機1が
図7の#105に示されるように進行方向奥側の目標物O2に達し(ステップ#12:Yes)、且つ、当該目標物O2が果樹園Pの端部の目標物Oでなければ(ステップ#13:Yes)、目標物設定部12はこれまでの進行方向奥側の目標物O2を進行方向手前側の目標物O1に設定し(ステップ#14)、ステップ#3から処理が継続される。
【0050】
ステップ#13において、目標物O2が果樹園Pの端部の目標物Oであれば(ステップ#13:No)、自動走行制御部162は自動草刈機1を停車させ(ステップ#15)、その位置からスイッチバックにより自動草刈機1の位置が変更される(ステップ#16)。スイッチバックについては、基準線SLからの距離に拘らず一定の動作で行われることから予めプログラミングしておくと良い。以下上述した走行が繰り返される。
【0051】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、物体検出部11が果樹園Pの果樹Kや果樹Kを支持する支柱等を検出するとして説明したが、果樹Kや支柱以外に、柵やフェンス等を検出するよう構成することも可能である。また、物体と、当該物体から予め設定された距離内にある他の物体とをグループ化して一つの物体として扱うように構成することも可能である。これにより、例えば果樹Kと当該果樹Kを支持する支柱とを一つの目標物Oとして設定することが可能となるので、目標物Oの設定に係る演算処理を軽減できる。
【0052】
上記実施形態では、目標物設定部12は2つの物体から2つの目標物Oを設定するとして説明したが、3つ以上の物体から3つ以上の目標物Oを設定する構成とすることも可能である。
【0053】
上記実施形態では、自動草刈機1が草の刈り取りを行いながら自動走行するとして説明したが、自動草刈機1を例えば薬剤散布車など他の作業車両として用いることも可能である。