(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコイル部品は、連結コア部のみならず外側コア部にも高透磁率材料を用いている。このため、このコイル部品は、零磁場でのインダクタンスが高く、強磁場でのインダクタンスとの差が大きい(直流重畳特性が十分ではない)という問題点がある。
一方、特許文献2又は3に記載のコイル部品には、そのコアが磁性体粉末と液状の樹脂の混合物を用いて形成されているため、損失(コアロス)が大きいという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、コアとコアの内部に埋設されたコイルとを備えるコイル部品であって、損失が小さくかつ良好な直流重畳特性を有するコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1のコイル部品として、
内周面と、外周面と、前記内周面及び前記外周面に連続する一対の端面とを有するコイルと、
前記内周面の内側に配置される第1コアと、
前記外周面の外側に配置される第2コアと、
前記一対の端面の各々の少なくとも一部をそれぞれ覆い、第1コアと第2コアとを連結する一対の第3コアと、を備え、
第3コアの零磁場での透磁率は、第1コア及び第2コアの零磁場での透磁率よりも高いコイル部品が得られる。
【0008】
また、本発明によれば、第2のコイル部品として、第1のコイル部品であって、
前記コイルの巻軸と直交する面内において、前記第3コアの夫々は、前記コイルの前記外周面よりも大きいサイズを有しており、且つ、前記コイルの前記外周面よりも外側に張り出している
コイル部品が得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第3のコイル部品として、第1又は第2のコイル部品であって、
前記コイルの巻軸と直交する面内において、前記コイルの中心を通る直線と前記コイルの内周面との2つの交点間の距離のうち最短のものは、前記コイルの巻軸の方向における前記コイルのサイズの0.5倍以上である
コイル部品が得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第4のコイル部品として、第1乃至第3のいずれかのコイル部品であって、
前記第1コア及び前記第2コアは、同一材料からなるスラリー状の磁性体を硬化させたものであり、
前記第3コアは、圧粉コアであるコイル部品が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第5のコイル部品として、第4のコイル部品であって、
前記コイルの巻軸の延びる方向において底部と開口部とを有するケースを更に備えており、
前記第1コア、前記第2コア、前記第3コア及び前記コイルは、前記ケース内に配置されており、
前記第1コア及び前記第2コアは、前記コイルと前記第3コアに対して密着している
コイル部品が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第6のコイル部品として、第5のコイル部品であって、
前記ケースは、前記底部と前記開口部とを繋ぐ側面部を有しており、
前記底部よりも前記開口部に近い方の前記第3コアは、前記側面部から離れて位置しており、
前記底部よりも前記開口部に近い方の前記第3コアと前記側面部との間には、前記第2コアの一部が少なくとも部分的に入り込んでいる
コイル部品が得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第7のコイル部品として、第6のコイル部品であって、
前記開口部よりも前記底部に近い方の前記第3コアは、前記側面部から離れて位置しており、
前記開口部よりも前記底部に近い方の前記第3コアと前記側面部との間には、前記第2コアの一部が少なくとも部分的に入り込んでいる
コイル部品が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第8のコイル部品として、第1乃至第7のいずれかのコイル部品であって、
前記第1コアと前記一対の第3コアの各々との間にギャップ材がそれぞれ設けられているコイル部品が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第9のコイル部品として、第8のコイル部品であって、
前記ギャップ材の縁部が前記コイルの前記内周面に接しているコイル部品が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第10のコイル部品として、第8のコイル部品であって、
前記ギャップ材の縁部が前記コイルの前記内周面から離れているコイル部品が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、第11のコイル部品として、第9又は第10のコイル部品であって、
前記ギャップ材の厚みが均一であるコイル部品が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、第12のコイル部品として、第9又は第10のコイル部品であって、
前記ギャップ材の厚みが前記コイルの巻軸に垂直な方向に沿って変化しているコイル部品が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第13のコイル部品として、第8乃至第12のコイル部品であって、
前記一対の第3コアは、互いに対向する面にそれぞれ前記ギャップ材に対応する凸部を有し、前記凸部間の距離は、前記コイルの前記一対の端面間の距離よりも小さいコイル部品が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、第14のコイル部品として、第13のコイル部品であって、
前記凸部は、前記コイルの巻軸と直交する方向において、前記コイルの前記内周面から離れて位置しており、
前記凸部と前記内周面の間には、前記第1コアの一部が介在している
コイル部品が得られる。
【0021】
更に、本発明によれば、第15のコイル部品として、第8のコイル部品であって、
前記ギャップ材は、第4コアを介して別のギャップ材に積層されているコイル部品が得られる。
【発明の効果】
【0022】
第3コアの零磁場での透磁率が第2コアの零磁場での透磁率よりも高いことから全体としてインダクタンスを下げることができ、直流重畳特性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
図1に示されるように、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品10は、コイル11と、コイル11の内周側に配置される第1コア12と、コイル11の外周側に配置される第2コア13と、一対の第3コア14,15と、第1コア12と第3コア14,15の各々との間に配置されるギャップ材16,17と、これらを収容するケース18とを備えている。
図1において、コイル11の巻軸は、図の左右方向中央に位置し、図の上下方向に沿って延びている。
【0025】
コイル11は、絶縁体(図示せず)により被覆された導電線(図示せず)を直線状の巻軸を有するように螺旋状に巻回して形成されている。詳しくは、本実施の形態のコイル11は、巻軸と直交する面内において、円環状の形状を有している。コイル11は、導電線を巻回して形成した巻回体の周囲を覆う絶縁体を更に有していてもよい。いずれにしても、コイル11は、内周面と外周面及びこれらに連続する一対の端面を有している。
【0026】
図示されたコイル11は、内径Dを有していると共に、巻軸の方向(即ち、高さ方向)においてサイズHを有している。詳しくは、内径Dは、巻軸の方向と直交する平面内においてコイル11の内周面が規定する円の直径である。本実施の形態のコイル11は、D/H≧0.5を満たしている。即ち、比較的背が低い。
【0027】
第1コア12は、コイル11の内周面に接するように、コイル11の内周面の内側に配置される。また、第2コア13は、コイル11の外周面に接するように、コイル11の外周面の外側に配置される。これら第1コア12と第2コア13は、同一の材料を用いて同時に形成される。具体的には、第1コア12及び第2コア13は、軟磁性金属粉末、熱硬化性バインダ成分、溶媒等からなるスラリー200(
図5参照)を熱硬化させて形成される。また、第1コア12と第2コア13は、比較的低い透磁率を有する。具体的には、第1コア12と第2コア13の透磁率は、3〜15であり、好ましくは7〜12であり、特に10程度が好ましい。なお、以下の説明において、スラリー200を硬化させて形成したコアを、注型コアと呼ぶことがある。
【0028】
一対の第3コア14,15は、コイル11の一対の端面を覆い、第1コア12と第2コア13とを機械的及び磁気的に連結する。その結果、第1コア12、第2コア13及び第3コア14,15は、閉磁路を形成する。一対の第3コア14,15の各々は、鉄合金粉末等の飽和磁束密度の高い軟磁性金属粉末を、高い圧力によって圧縮成型して形成された圧粉コアである。これらの第3コア14,15は、実質的に均一な厚みと、一対の平らな主表面を有する板状の形状を有している。また、第3コア14,15は、第1コア12と第2コア13に比較して高い透磁率を有する。具体的には、第3コア14,15の透磁率は50以上であり、好ましくは50〜150であり、特に90程度が好ましい。
【0029】
詳しくは、コイル11の巻軸と直交する面内において、第3コア14,15は、夫々、コイル11の外周面よりも大きいサイズを有しており、且つ、コイル11の外周面よりも外側に張り出している。具体的には、本実施の形態の第3コア14,15は、コイル11の外周面よりも大きな径を有する円板形状を有しており、径方向において、コイル11の外周面を越えて外側に張り出している。そのため、仮に第3コア14,15とコイル11とをコイル11の巻軸の方向に沿って見た場合、コイル11は、第3コア14,15に隠れて見えない。
【0030】
ギャップ材16,17は、空気でもよい。しかし、組み付け性や熱伝導性を考慮すると、ギャップ材16,17は、磁気抵抗の高い物質(一般的に非金属、非磁性)、例えばアルミナ、を用いて形成されることが望ましい。
【0031】
ケース18は、例えばアルミニウム等の金属からなる。図示されたケース18は、コイル11の巻軸の延びる方向において開口部18A及び底部18Bを有すると共に、開口部18Aと底部18Bとを繋ぐ側面部18Sを有している。より具体的には、底部18Bは円板形状を有しており、側面部18Sは円筒形状を有している。第1コア12、第2コア13、第3コア14,15及びコイル11は、ケース18内に配置されている。ケース18内において、第1コア12及び第2コア13は、コイル11と第3コア14,15に対して密着している。底部18Bよりも開口部18Aに近い方の第3コア15は、側面部18Sから離れて位置している。即ち、コイル11の巻軸と直交する平面内において、第3コア15は、側面部18Sよりも小さい。このような第3コア15と側面部18Sとの間には、第2コア13の一部が部分的に入り込んでいる。同様に、開口部18Aよりも底部18Bに近い方の第3コア14は、側面部18Sから離れて位置している。即ち、コイル11の巻軸と直交する平面内において、第3コア14は、側面部18Sよりも小さい。このような第3コア14と側面部18Sとの間には、第2コア13の一部が入り込んでいる。
【0032】
次に、
図2乃至
図5を参照して、
図1のコイル部品10の製造方法について説明する。
【0033】
まず、
図2に示すように、ケース18を用意し、ケース18の底部18Bに一方の第3コア14を載置する。一方の第3コア14の一面上には、あらかじめ一方のギャップ材16が接着等により設けられている。本実施の形態の第3コア14は、ケース18の側面部18Sよりも小さいサイズを有していることから、側面部18Sと第3コア14との間には隙間ができている。このような設計としていることから、第3コア14のサイズにバラつきがあったとしても、第3コア14とケース18との位置的関係が問題となることはない。
【0034】
次に、
図3に示すように、一方の第3コア14の一面上にコイル11を載置する。このとき、一方のギャップ材16の縁部がコイル11の内周面から所定の距離C以上離れるように、一方のギャップ材16のサイズと位置を設定することができる。これにより、位置合わせが容易になる。
【0035】
次に、
図4に示すように、第1コア12及び第2コア13の原料であるスラリー200を開口部18Aを通してコイル11が完全に浸るまでケース18内に流し込む。即ち、本実施の形態において、流し込んだスラリー200の上面(液面)はコイル11の上端11Uよりも上方に位置している。コイル11の上端11Uよりも上方に位置するスラリー200は、第1コア12及び第2コア13の主部を形成するものではなく、余分なものであるが、後述するように、この余分なスラリー200の存在により、第1コア12及び第2コア13と第3コア15との密着度を高めることができる。
【0036】
また、スラリー200をケース18内に流し込んだ際、スラリー200の一部は、ギャップ材16とコイル11の内周面との間及びケース18の側面部18Sと第3コア14との間に入り込む。ギャップ材16とコイル11の内周面との間に入り込んだスラリー200は、後述する熱硬化により、第1コア12の一部となる。同様に、ケース18の側面部18Sと第3コア14との間に入り込んだスラリー200は、後述する熱硬化により、第2コア13の一部となる。
【0037】
本実施の形態においては、開口部18Aがコイル11の巻軸の方向において開いていることから、スラリー200をコイル11の内側にも外側にも流し込むことができる。換言すると、本実施の形態においては、開口部18Aがコイル11の巻軸の方向において開いていることから、第1コア12と第2コア13の双方を注型コアとすることができる。
【0038】
次に、
図5に示すように、他方の第3コア15をコイル11上に載置する。上述したように、本実施の形態の第3コア15は、ケース18の側面部18Sよりも小さいサイズを有していることから、側面部18Sと第3コア14との間には隙間が形成される。他方の第3コア15の一面には、あらかじめ他方のギャップ材17が接着等により設けられている。ギャップ材17は、ギャップ材16と同様に、コイル11の内周面から所定の距離C以上離れて位置している。他方の第3コア15は、一対の第3コア14,15が互いに正対するように、配置される。また、このとき一対のギャップ材16,17が互いに正対するように、他方のギャップ材17は他方の第3コア15の一面上に設けられている。
【0039】
他方の第3コア15をケース18の底部18Bに向かって押え付けると、ギャップ材17とコイル11の内周面との間にスラリー200の一部が入り込むと共に余分なスラリー200が第3コア15とケース18の側面部18Sとの間に入り込む。この状態において、加熱してスラリー200を硬化させる。これにより、スラリー200を、注型コアである第1コア12及び第2コア13に変化させる。このことから理解されるように、ギャップ材17とコイル11の内周面との間に入り込んだスラリー200は、第1コア12の一部となり、第3コア15とケース18の側面部18Sとの間に入り込んだスラリー200は、第2コア13の一部となる。本実施の形態においては、上述したようにして、第1コア12及び第2コア13を第3コア14,15とコイル11とに密着させ、コイル部品10を得ることができる。
【0040】
以上のように本実施の形態では、第1コア12及び第2コア13の双方に注型コアを用いる。これにより、コイル部品10の直流重畳電流を通電しない零磁場でのインダクタンスを抑えて、直流重畳特性を改善することができる。また、コイル部品10の損失も小さい。なお、これらの効果については、後述する。
【0041】
特に、本実施の形態においては、コイル11の巻軸の方向においてケース18は開口部18Aと底部18Bとを有しており、コイル11は底部18B上に載置された第3コア14の上に載置されている。そのため、コイル11の内側のスペースも外側のスペースもケース18の開口部18Aを通して視認可能な状態にあることから、スラリー200を開口部18Aを通してコイル11の内側にも外側にも流し込むことができる。そのため、第1コア12及び第2コア13の双方を注型コアとすることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、コアの一部(具体的には、第1コア12及び第2コア13)を、スラリー200を用いて形成する。これにより、コイル11とその周囲のコア(第1コア12、第2コア13並びに第3コア14,15)との間の隙間をなくすことができる。その結果、組み付け精度に依存するコイル部品10の特性のバラつきを低減し又は無くすことができると共にコイル11のガタツキを抑制することができ、コイル部品10の使用時における騒音を低減することができる。更に、本実施の形態では、固体である圧粉コアの数を減らすことができ、それによって組み付け工程を簡略化することができる。加えて、本実施の形態では、比較的透磁率の高い圧粉コアの数を減らし、比較的透磁率の低い注型コアを用いることで、コストを削減することができる。
【0043】
また、上述したように、本実施の形態において、コイル11の巻軸の方向におけるサイズHとコイル11の内径Dとは、D/H≧0.5を満たしている。そのため、第3コア14,15間の距離を小さくすることができると共に第2コア13の高さを抑えることができる。第2コア13の高さが高いと、第2コア13の高さ方向の中ほどにおいて磁束がコイル11側に集まる可能性があるが、本実施の形態のように第2コア13の高さを抑えると、径方向に張り出した第3コア14,15の影響により、第2コア13内における磁束分布の均一化を図ることができる。
【0044】
上述した実施の形態において、コイル11は、巻軸と直交する面内において円環状の形状を有していたが、本発明は、これに限定されるわけではない。コイルは、コイルの巻軸と直交する面内において、角丸四角形や楕円形、競技用トラック形状の外形を有するものであってもよい。
【0045】
加えて、本実施の形態のコイル11と異なる形状のコイルについても、上述したD/H≧0.5(即ち、内径DがサイズHの0.5倍以上)と同等の要件を満たしている限り、上述した効果と同様の効果が得られる。ここで、本実施の形態のコイル11と異なる形状のコイルの場合、内径Dに相当する長さは、そのコイルの巻軸と直交する面内において、コイルの中心を通る直線とコイルの内周面との2つの交点間の距離のうち最短のものとなる。従って、上述したD/H≧0.5に相当する条件は、「コイルの巻軸と直交する面内において、コイルの中心を通る直線とコイルの内周面との2つの交点間の距離のうち最短のものは、コイルの巻軸の方向におけるコイルのサイズの0.5倍以上である」となる。かかる条件を満たしていると、コイルの巻軸の方向におけるサイズを抑えて磁束分布の均一化を図ることができる。
【0046】
更に、上述したように、コイル11の巻軸と直交する面内において、第3コア14,15の夫々は、コイル11の外周面よりも大きいサイズを有しており、且つ、コイル11の外周面よりも外側に張り出している。これにより、第3コア14,15と第2コア13とがなす内角部分において、コイル11側に磁束が入り込むことを低減することができる。
【0047】
加えて、ギャップ材16,17は磁気抵抗が高いことから、仮にギャップ材16,17がコイル11の内周面まで達していると磁束がギャップ材16,17を避けてコイル11の導体に入り込み交流銅損が増えてしまうおそれがある。これに対して、本実施の形態においては、ギャップ材16,17がコイル11の内周面から所定の距離C以上離れて位置しており、ギャップ材16,17とコイル11の内周面との間には第1コア12の一部が設けられている。そのため、磁束がコイル11の導体に入り込むことを防ぎ、交流銅損を低く抑えることができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、第1コア12及び第2コア13として注型コアを用い、第3コア14,15として圧粉コアを用いている。しかしながら、第1コア12及び第2コア13として圧粉コアを用いてもよいし、第3コア14,15として注型コアを用いてもよい。あるいは、これらのコアは、成型した磁性体粉末に樹脂を浸透させ、その後樹脂を硬化させて形成するようにしてもよい。いずれにしても、第3コア14,15の零磁場での透磁率が、第1コア12及び第2コア13の零磁場での透磁率よりも高くなるように、第1コア12、第2コア13及び第3コア14,15が形成されていればよい。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に、
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品20について説明する。
図6において、
図1の構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付与している。そして、それらの説明は省略される。
【0050】
図6に示されるように、コイル部品20は、一対の第3コア24,25を有している。第3コア24,25は、互いに対向する面のギャップ材16,17に対応する領域に、それぞれ凸部241,251を有している。凸部241,251間の距離S1は、コイル11の端面間の距離(コイル11の高さ)Hよりも小さい。凸部241,251の存在により、ギャップ材16,17間の距離S2を、コイル11の高さに依存することなく設定することができる。
【0051】
また、凸部241,251は、径方向(即ち、コイル11の巻軸と直交する方向)において、コイル11の内周面から離れて位置しており、凸部241,251とコイル11の内周面の間には、第1コア12の一部が介在している。本実施の形態において、コイル11の内周面と凸部241,251との距離Cとコイル11の内径Dとは、0.01≦C/D≦0.49を満たしている。コイル11の内周面と凸部241,251との距離Cとコイル11の内径Dとは、0.02≦C/D≦0.25を満たしていることが好ましく、0.03≦C/D≦0.1を満たしていることが更に好ましい。
【0052】
その他の点は、コイル部品10と同じである。コイル部品20の製造方法も、コイル部品10の製造方法と同じである。
【0053】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、凸部241,251の高さを変更することにより、コイル部品20のインダクタンスを変更することができる。つまり、コイル部品20のインダクタンスは、注型コア(第1コア12)の厚みに依存する。注型コアの厚みの変化に対するコイル部品20のインダクタンスの変化の割合は、比較的小さい。よって、製造バラつきによる注型コアの厚みの変化は、インダクタンスの変化として表れにくい。
【0054】
また、本実施の形態によれば、凸部241,251が径方向においてコイル11の内周面から離れて位置しており、凸部241,251とコイル11の内周面の間に第1コア12の一部が介在していることから、コイル11の端面と内周面とで形成される角部近辺に磁束が集中してしまい、角部から漏れた磁束がコイル11に入り込んでしまうことを避けることができる。
【0055】
次に、本発明によるコイル部品の磁気特性について説明する。ここでは、第1の実施の形態によるコイル部品10について説明するが、第2の実施の形態によるコイル部品20についても同様である。
【0056】
図7に示すように、コイル部品10の各部に磁気抵抗Rが存在していると仮定する。コイル11に電流が流れると、これらの磁気抵抗Rを含む磁気回路には、
図8に示すような磁束Iが発生する。なお、
図7及び
図8は、
図1のコイル部品10の右半分に相当する。
【0057】
図8において、第3コア14,15は、比較的高い透磁率を有しているので、磁気抵抗Rp1=Rp2=Rp3=0とみなすことができる。一方、第1コア12及びギャップ材16,17は比較的低い透磁率を有しているので、磁気抵抗Ri1,Ri2,Ri3,Rg,Rg’は、高い値を持つ。ここで、磁気抵抗Ri1は、コイル11に近い位置にあるので強磁場の影響を受け、磁気飽和に近づいて透磁率が低下する。そのため、磁気抵抗Ri1は、磁気抵抗Ri2及びRi3よりも高い値を持つ。しかし、磁気抵抗Ri2及びRi3に対応する部分には、ギャップ材16,17が設けられている。これらのギャップ材16,17は、第1コア12における磁気抵抗Ri1,Ri2,Ri3の不均衡を均一化するように働く。その結果、磁束I1,I2及びI3は互いに等しい値に近づく。つまり、コイル11の内周面に囲まれた領域において、磁束の分布は均一化される。
【0058】
上記のように、コイル11の内周面で囲まれた領域において、磁束の分布が均一化される。その結果、磁気飽和が回避され、コイル部品10の直流重畳特性が改善される。コイル部品10,20の直流重畳特性は、
図9及び
図10に示されるように、直流重畳電流が150A以上の領域においても高いインダクタンスを示す。
【0059】
図9及び
図10には、比較のため、比較例1,2のコイル部品の直流重畳特性も示されている。比較例1,2のコイル部品の構造は、
図11,12に示されるとおりである。詳述すると、
図11に示すコイル部品30は、コイル31と、コア32と、ケース33とを有している。コア32は、コイルの内周側、外周側及び端面側の区別なく同一の材料で一体に構成される注型コアである。また、
図12に示すコイル部品40は、コイル41と、コア42と、複数(ここでは4個)の高磁気抵抗材(ギャップ材)43と、ケース44とを備えている。コア42は、複数の圧粉コアを組み合わせて構成される。なお、圧粉コアの透磁率は注型コアの透磁率よりも高い。
【0060】
また、
図13に示すように、第1及び第2の実施の形態によるコイル部品10,20の損失は、注型コアを用いる比較例1のコイル部品30の損失よりも小さい。比較例2のコイル部品40の損失は、第1及び第2の実施の形態によるコイル部品10,20の損失とほぼ同じである。しかし、
図9及び
図10から理解されるように、比較例2のコイル部品40のインダクタンスは、電流の増加に伴い低下割合が増加する。つまり、比較例2よりも第1及び第2の実施の形態の直流重畳特性は優れている。
【0061】
以上のように、第1及び第2の実施の形態によるコイル部品10,20は、良好な直流重畳特性を有し、かつ低損失である。
【0062】
なお、特許文献1のコイル部品は、前述したように、外側コア部として高透磁率材料を用いている。そのため、零磁場での透磁率が強磁場での透磁率に対して高くなりすぎる。つまり、特許文献1のコイル部品の直流重畳特性は、零磁場での透磁率と強磁場での透磁率との差が大きい。上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態のように、第2コア13を第1コア12と同一材料とすることで、直流重畳特性を改善することができ、かつ低損失とすることができる。
【0063】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態によるコイル部品について説明する。
図14から理解されるように、本実施形態によるコイル部品50は、ギャップ材を有していない点で、第1の実施の形態によるコイル部品10と異なる。その他の点は、コイル部品10と同じである。
【0064】
図15に示すように、コイル部品10とコイル部品50の特性は、一見すると、ほぼ同じである。しかし、コイル部品10とコイル部品50との間で、直流重畳電流(150A,250A)に対するインダクタンスの測定結果(直流重畳特性)及び損失にそれほどの影響を与えずに、直流重畳電流を通電していないときの(0A)インダクタンスをギャップ材により調整することができている。
【0065】
(その他の実施の形態)
第1及び第2の実施の形態では、ギャップ材16,17がほぼ均一な厚みを有している。しかし、ギャップ材の形状は、これに限らない。
図16乃至
図18に示すコイル部品60,70,80は、ギャップ材261〜263,271〜273の厚みをコイル11の巻軸に垂直な方向に沿って、内周側から外周側に向かって(またはその逆に)変化させたものである。
【0066】
図16に示すように、第4の実施の形態によるコイル部品60では、ギャップ材261,271の厚みを内周側から外周側に向かって厚くしている。このように、ギャップ材261,271の厚みを内周側から外周側に向かって厚くすると、コイル11の内周面で囲まれた領域における磁束の分布をより均一にすることができる。なお、コイル部品60の中央部(図の左側)にはギャップ材261,271を設けなくてもよい(厚み=0)。
【0067】
図17に示すように、第5の実施の形態によるコイル部品70では、ギャップ材262,272の厚みを内周側から外周側に向かって薄くしている。このように、ギャップ材262,272の厚みを内周側から外周側に向かって薄くすると、コイル部品70の交流銅損を低減することができる。
【0068】
図18に示すように、第6の実施の形態によるコイル部品80では、ギャップ材263,273の厚みを内周側から外周側に向かって厚くした後薄くしている。ギャップ材263,273の厚みを内周側から外周側に向かって厚くした後薄くすると、磁束の分布を均一化しつつ交流銅損を低減することができる。
【0069】
第1及び第2の実施の形態のコイル部品10,20は、一対のギャップ材16,17を備えている。しかし、本発明のコイル部品は、3以上のギャップ材を用いてもよい。例えば、
図19に示すように、第7の実施の形態に係るコイル部品90は、一対のギャップ材積層体265,275を有している。各ギャップ材積層体265(275)は、圧粉コアからなる第4コア266(276)を介して複数のギャップ材267(277)を積層したものである。換言すると、一のギャップ材267(277)は、第4コア266(276)を介して別のギャップ材267(277)に積層されている。このようなギャップ材積層体265,275を用いると、コイル部品90の交流銅損を低減することができる。本実施の形態において、各ギャップ材積層体265(275)に含まれるギャップ材267(277)は2つであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、各ギャップ材積層体265(275)に含まれるギャップ材267(277)は3つ以上であってもよい。また、第4コア266(277)は圧粉コアからなるものであったが、注型コアで構成してもよい。
【0070】
また、第1及び第2の実施の形態では、ギャップ材16,17がコイル11の内周面から離れている。しかしながら、ギャップ材16,17とコイル11との間の距離は、コイル部品の使用目的に応じて任意に設定することができる。例えば、
図20に示すように、第8の実施形態に係るコイル部品100では、ギャップ材16,17がコイル11の内周面に接している。ギャップ材16,17をコイルに近づけることで、コイル部品100の零磁場でのインダクタンスを低下させ、直流重畳特性を向上させることができる。
【0071】
本発明によるコイル部品は、例えば車載リアクトルとして適している。但し、本発明は、リアクトル以外の様々なコイル部品に適用可能である。
【0072】
本発明は上記実施の形態に限定されることなく種々の変形、変更が可能である。例えば、上述した様々な実施形態を必要に応じて組み合わせてもよい。