特許第6562730号(P6562730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562730粉粒体の加熱処理装置及び廃石膏の加熱処理方法
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  • 特許6562730-粉粒体の加熱処理装置及び廃石膏の加熱処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562730
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】粉粒体の加熱処理装置及び廃石膏の加熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/42 20060101AFI20190808BHJP
   C04B 11/028 20060101ALI20190808BHJP
   C04B 11/05 20060101ALI20190808BHJP
   F27B 7/02 20060101ALI20190808BHJP
   F27B 7/36 20060101ALI20190808BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20190808BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20190808BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F27B7/42ZAB
   C04B11/028
   C04B11/05
   F27B7/02
   F27B7/36
   F27D7/02 A
   B09B3/00 303Z
   F27D17/00 104G
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-123497(P2015-123497)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-9163(P2017-9163A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 幹大
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−167423(JP,A)
【文献】 特開平02−153103(JP,A)
【文献】 特開2011−016075(JP,A)
【文献】 特開2006−199576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風供給用のメインバーナを備えた高温加熱処理キルンと、該高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて粉粒体を加熱する低温加熱処理キルンと、該低温加熱処理キルンから導出される排ガスに随伴して流出する粉粒体を捕捉する集塵機とを備えると共に、前記低温加熱処理キルンから排出される粉粒体の排出先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに切替可能とした排出先切替手段を備え、前記低温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を制御する低温加熱制御或いは高温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を制御する高温加熱制御のいずれかを選択してバーナ燃焼制御を行い、かつ前記集塵機にて捕捉した粉粒体を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに還元するように制御する運転制御器を備える一方、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、低温加熱処理キルン出口側の排ガス温度を検出する低温キルン排ガス温度センサを備え、該低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値に基づいて低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御可能とするキルン回転数制御器を備えたことを特徴とする粉粒体の加熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の粉粒体の加熱処理装置において、前記集塵機にて捕捉した粉粒体を低温加熱処理キルンの排出部に投入して低温加熱処理キルンから排出される粉粒体と合流させるようにした捕捉粉粒体還元手段を備えたことを特徴とする粉粒体の加熱処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の粉粒体の加熱処理装置において、前記低温加熱処理キルンに熱風供給用のサブバーナを備えると共に、前記運転制御器にて選択される低温加熱制御では低温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにサブバーナの燃焼量を制御するようにしたことを特徴とする粉粒体の加熱処理装置。
【請求項4】
熱風供給用のメインバーナを備えた高温加熱処理キルンと、該高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて破砕処理した粉粒体状の廃石膏を加熱する低温加熱処理キルンと、該低温加熱処理キルンから導出される排ガスに随伴して流出する廃石膏を捕捉する集塵機とを備えると共に、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、廃石膏を半水石膏に加熱処理するときには、前記低温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏が半水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら低温加熱処理キルンにて加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は気流乾燥によって加熱しながら集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される半水石膏と共に回収する一方、廃石膏を無水石膏に加熱処理するときには、前記高温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏や半水石膏が無水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら、先ず低温加熱処理キルンにて予熱処理し、次いで高温加熱処理キルンにて前記所定温度まで加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される予熱処理した廃石膏と共に高温加熱処理キルンにて加熱処理かつ低温加熱処理キルンより導出される予熱処理に利用した排ガスが結露しない温度を維持するように低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御するようにしたことを特徴とする廃石膏の加熱処理方法。
【請求項5】
熱風供給用のメインバーナを備えた高温加熱処理キルンと、サブバーナを備えた低温加熱処理キルンとを備え、該低温加熱処理キルンは前記サブバーナから供給される熱風または前記高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて破砕処理した粉粒体状の廃石膏を加熱する構成とし、前記低温加熱処理キルンから導出される排ガスに随伴して流出する廃石膏を捕捉する集塵機を備えると共に、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、廃石膏を半水石膏に加熱処理するときには、前記メインバーナの燃焼を停止し、前記低温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏が半水石膏に転位する温度に昇温させるようにサブバーナの燃焼量を調整しながら低温加熱処理キルンにて加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は気流乾燥によって加熱しながら集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される半水石膏と共に回収する一方、廃石膏を無水石膏に加熱処理するときには、前記サブバーナの燃焼を停止し、前記高温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏や半水石膏が無水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら、先ず低温加熱処理キルンにて予熱処理し、次いで高温加熱処理キルンにて前記所定温度まで加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される予熱処理した廃石膏と共に高温加熱処理キルンにて加熱処理し、かつ低温加熱処理キルンより導出される予熱処理に利用した排ガスが結露しない温度を維持するように低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御するようにしたことを特徴とする廃石膏の加熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルンを用いて粉粒体を加熱処理する粉粒体の加熱処理装置及び処理方法に関し、特に建築廃材である廃石膏ボードを破砕、分別処理して得られる粉粒体状の廃石膏を加熱再生することができる加熱処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の粉粒体を加熱処理するにあたり、加熱効率に優れ連続投入の可能なロータリーキルンが採用されることも多く、例えば、建築物の解体などに伴って多量に発生する二水石膏の状態にある廃石膏ボードを破砕処理により粉粒体状とし、これを前記ロータリーキルンのキルン本体内に投入してバーナから供給される高温の燃焼ガスにより所定温度に加熱処理し、半水石膏及びII型無水石膏等に転位させて土壌固化材やセメントの原材料等として再生処理するようにしている。
【0003】
本出願人は、特許文献1(特願2014−187276)に示されるように、バーナを備えた高温加熱処理キルンと、該高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて粉粒体を加熱する低温加熱処理キルンとを併設し、該低温加熱処理キルンから排出される粉粒体の排出先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに切替可能とした排出先切替手段を備えてなる粉粒体の加熱処理装置を出願しており、本装置によれば、例えば、破砕処理した粉粒体状の廃石膏を半水石膏に再生処理する場合には、前記低温加熱処理キルンから導出される排ガスの温度を二水石膏が半水石膏に転位する温度に維持させるようにバーナ燃焼量を調整しながら低温加熱処理キルンにて加熱処理する一方、廃石膏をII型無水石膏に再生処理する場合には、前記高温加熱処理キルンから排出される粉粒体の温度を二水石膏がII型無水石膏に転位する温度に維持させるようにバーナ燃焼量を調整しながら、先ず、低温加熱処理キルンにて予熱処理し、次いで高温加熱処理キルンにて上記所定温度まで加熱処理することにより、一つの処理装置にて比較的低温での加熱処理を要する半水石膏と比較的高温での加熱処理を要するII型無水石膏の両方を効率よく再生処理可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2014−187276
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来装置にて廃石膏等の粉粒体を比較的高温にて加熱処理する場合、高温加熱処理キルンより導出される排ガスを一旦低温加熱処理キルンに導入させて粉粒体の予熱処理に利用(熱回収)してから下流の排気ダクトへ排気するようにしているため、加熱効率面や省エネ面等においては有効であるものの、加熱処理する粉粒体の性状や供給量等の変動に伴って低温加熱処理キルンでの熱回収率が高くなりすぎると、場合によってはキルン出口側の排ガス温度が露点温度を下回ってしまい、集塵機や煙突等の腐食原因となる結露を生じる可能性がある。
【0006】
また、廃石膏から、例えばセメントの原材料用としてのII型無水石膏を再生処理する際には、その性状(流動性、比表面積等)を調整すべく約900℃程度もの高温での加熱処理が必要とされる場合がある。一方、廃石膏が前記温度(約900℃)よりも若干高い約1100℃を超えると廃石膏の一部が熱分解を生じて硫黄酸化物(SO)が発生する可能性があり、排ガス中にこの硫黄酸化物が含まれるとその濃度に応じて露点温度が高まるため(酸露点)、このような排ガスを前記同様に低温加熱処理キルンにて廃石膏の予熱処理に利用(熱回収)してから排気すると、キルン出口側の排ガス温度が比較的高温であっても、即ち硫黄酸化物を含んでいない状態の排ガスであれば結露を生じない程度の温度であっても容易に結露を生じる上、この結露水と硫黄酸化物とから硫酸が生成されるとより腐食を進行させる要因となる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、粉粒体を低温及び高温のいずれの温度でも効率よく加熱処理できると共に、排ガス温度をコントロールして結露の発生を抑制可能とした粉粒体の加熱処理装置及び廃石膏の加熱処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の粉粒体の加熱処理装置では、熱風供給用のメインバーナを備えた高温加熱処理キルンと、該高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて粉粒体を加熱する低温加熱処理キルンと、該低温加熱処理キルンから導出される排ガスに随伴して流出する粉粒体を捕捉する集塵機とを備えると共に、前記低温加熱処理キルンから排出される粉粒体の排出先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに切替可能とした排出先切替手段を備え、前記低温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を制御する低温加熱制御或いは高温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を制御する高温加熱制御のいずれかを選択してバーナ燃焼制御を行い、かつ前記集塵機にて捕捉した粉粒体を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに還元するように制御する運転制御器を備える一方、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、低温加熱処理キルン出口側の排ガス温度を検出する低温キルン排ガス温度センサを備え、該低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値に基づいて低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御可能とするキルン回転数制御器を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の粉粒体の加熱処理装置は、前記集塵機にて捕捉した粉粒体を低温加熱処理キルンの排出部に投入して低温加熱処理キルンから排出される粉粒体と合流させるようにした捕捉粉粒体還元手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の粉粒体の加熱処理装置は、前記低温加熱処理キルンに熱風供給用のサブバーナを備えると共に、前記運転制御器にて選択される低温加熱制御では低温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにサブバーナの燃焼量を制御するようにしたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項4記載の粉粒体の加熱処理方法では、熱風供給用のメインバーナを備えた高温加熱処理キルンと、該高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて破砕処理した粉粒体状の廃石膏を加熱する低温加熱処理キルンと、該低温加熱処理キルンから導出される排ガスに随伴して流出する廃石膏を捕捉する集塵機とを備えると共に、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、廃石膏を半水石膏に加熱処理するときには、前記低温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏が半水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら低温加熱処理キルンにて加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は気流乾燥によって加熱しながら集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される半水石膏と共に回収する一方、廃石膏を無水石膏に加熱処理するときには、前記高温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏や半水石膏が無水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら、先ず低温加熱処理キルンにて予熱処理し、次いで高温加熱処理キルンにて前記所定温度まで加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される予熱処理した廃石膏と共に高温加熱処理キルンにて加熱処理かつ低温加熱処理キルンより導出される予熱処理に利用した排ガスが結露しない温度を維持するように低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御するようにしたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項5記載の粉粒体の加熱処理方法では、熱風供給用のメインバーナを備えた高温加熱処理キルンと、サブバーナを備えた低温加熱処理キルンとを備え、該低温加熱処理キルンは前記サブバーナから供給される熱風または前記高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて破砕処理した粉粒体状の廃石膏を加熱する構成とし、前記低温加熱処理キルンから導出される排ガスに随伴して流出する廃石膏を捕捉する集塵機を備えると共に、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、廃石膏を半水石膏に加熱処理するときには、前記メインバーナの燃焼を停止し、前記低温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏が半水石膏に転位する温度に昇温させるようにサブバーナの燃焼量を調整しながら低温加熱処理キルンにて加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は気流乾燥によって加熱しながら集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される半水石膏と共に回収する一方、廃石膏を無水石膏に加熱処理するときには、前記サブバーナの燃焼を停止し、前記高温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏や半水石膏が無水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら、先ず低温加熱処理キルンにて予熱処理し、次いで高温加熱処理キルンにて前記所定温度まで加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される予熱処理した廃石膏と共に高温加熱処理キルンにて加熱処理し、かつ低温加熱処理キルンより導出される予熱処理に利用した排ガスが結露しない温度を維持するように低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1記載の粉粒体の加熱処理装置によれば、メインバーナを有する高温加熱処理キルンと、該高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて粉粒体を加熱する低温加熱処理キルンと、該低温加熱処理キルンから導出される排ガスに伴って流出する粉粒体を捕捉する集塵機とを備えると共に、前記低温加熱処理キルンから排出される粉粒体の排出先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに切替可能とした排出先切替手段を備え、低温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を制御する低温加熱制御或いは高温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を制御する高温加熱制御のいずれかを選択してバーナ燃焼制御を行い、かつ前記集塵機にて捕捉した粉粒体を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに還元するように制御する運転制御器を備える一方、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、低温加熱処理キルン出口側の排ガス温度を検出する低温キルン排ガス温度センサを備え、該低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値に基づいて低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御可能とするキルン回転数制御器を備えたので、粉粒体を低温或いは高温のいずれの温度でも効率よく加熱処理できると共に、排ガスに随伴して流出する粉粒体についても集塵機にて捕捉後、加熱処理温度に応じて低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに還元させることができて収率良く回収できる。また、高温加熱処理の際には高温加熱処理キルンから導出される比較的高温の排ガスを低温加熱処理キルンに導入させることで予熱処理用として利用でき、加熱効率の向上と共にエネルギーの有効活用が図れる一方、低温加熱処理キルンの通過に伴って排ガス温度を比較的低温に調整でき、集塵機の手前側に冷却塔等の排ガス冷却手段の設置が不要となって経済的にも有利なものとなる。更に、低温加熱処理キルン出口側の排ガス温度が露点温度を下回るおそれが生じた場合でも、低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整することで熱回収率をコントロールでき、それによってキルン出口側の排ガス温度を露点温度以上に保て、集塵機や煙突等の腐食の原因となる結露の発生を抑制することができる。
【0014】
また、請求項2記載の粉粒体の加熱処理装置によれば、集塵機にて捕捉した粉粒体を低温加熱処理キルンの排出部に投入して低温加熱処理キルンから排出される粉粒体と合流させるようにした捕捉粉粒体還元手段を備えたので、集塵機にて捕捉した粉粒体を低温加熱処理キルンから排出される粉粒体と共に下位の排出先切替手段にて加熱処理温度に応じた排出先へ還元させることができ、装置構成の簡素化が図れる。
【0015】
また、請求項3記載の粉粒体の加熱処理装置によれば、低温加熱処理キルンにサブバーナを備えると共に、前記運転制御器にて選択される低温加熱制御では低温加熱処理キルン内の粉粒体を所定温度に昇温させるようにサブバーナの燃焼量を制御するようにしたので、低温加熱処理の際には高温加熱処理キルンの運転を停止して低温加熱処理キルンの単独運転にて対応することができ、加熱処理温度に応じてより効率的で経済的な運転制御が可能となる。
【0016】
また、請求項4記載の廃石膏の加熱処理方法によれば、メインバーナを有する高温加熱処理キルンと、該高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて粉粒体状の廃石膏を加熱する低温加熱処理キルンと、該低温加熱処理キルンから導出される排ガスに伴って流出する廃石膏を捕捉する集塵機とを備えると共に、低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、廃石膏を半水石膏に加熱処理するときには、前記低温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏が半水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら低温加熱処理キルンにて加熱処理すると共に、排ガスに伴って流出する廃石膏は気流乾燥によって加熱しながら集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される半水石膏と共に回収する一方、廃石膏を無水石膏に加熱処理するときには、前記高温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏や半水石膏が無水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら、先ず低温加熱処理キルンにて予熱処理し、次いで高温加熱処理キルンにて前記所定温度まで加熱処理すると共に、排ガスに伴って流出する廃石膏は集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される予熱処理した廃石膏と共に高温加熱処理キルンにて加熱処理かつ低温加熱処理キルンより導出される予熱処理に利用した排ガスが結露しない温度を維持するように低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御するようにしたので、廃石膏から加熱処理温度が大きく相違する半水石膏と無水石膏のいずれも効率よく加熱処理できると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏についても集塵機にて捕捉後、半水石膏への加熱処理時であるか無水石膏への加熱処理時であるかに応じて回収或いは再加熱することで収率良く回収できる。また、無水石膏へ加熱処理する際には高温加熱処理キルンから導出される比較的高温の排ガスを低温加熱処理キルンに導入させて予熱処理用として利用でき、加熱効率の向上と共にエネルギーの有効活用が図れる一方、低温加熱処理キルンの通過に伴って排ガス温度を比較的低温に調整でき、集塵機の手前側に冷却塔等の排ガス冷却手段の設置が不要となって経済的にも有利なものとなる。更に、低温加熱処理キルン出口側の排ガス温度が露点温度を下回るおそれが生じても、低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整することで熱回収率をコントロールでき、それによってキルン出口側の排ガス温度を露点温度以上に保て、集塵機や煙突等の腐食の原因となる結露の発生を抑制することができる。
【0017】
また、請求項5記載の廃石膏の加熱処理方法によれば、熱風供給用のメインバーナを備えた高温加熱処理キルンと、サブバーナを備えた低温加熱処理キルンとを備え、該低温加熱処理キルンは前記サブバーナから供給される熱風または前記高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて破砕処理した粉粒体状の廃石膏を加熱する構成とし、前記低温加熱処理キルンから導出される排ガスに随伴して流出する廃石膏を捕捉する集塵機を備えると共に、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を可変速とし、廃石膏を半水石膏に加熱処理するときには、前記メインバーナの燃焼を停止し、前記低温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏が半水石膏に転位する温度に昇温させるようにサブバーナの燃焼量を調整しながら低温加熱処理キルンにて加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は気流乾燥によって加熱しながら集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される半水石膏と共に回収する一方、廃石膏を無水石膏に加熱処理するときには、前記サブバーナの燃焼を停止し、前記高温加熱処理キルン内の廃石膏を二水石膏や半水石膏が無水石膏に転位する温度に昇温させるようにメインバーナの燃焼量を調整しながら、先ず低温加熱処理キルンにて予熱処理し、次いで高温加熱処理キルンにて前記所定温度まで加熱処理すると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏は集塵機にて捕捉し、低温加熱処理キルンから排出される予熱処理した廃石膏と共に高温加熱処理キルンにて加熱処理し、かつ低温加熱処理キルンより導出される予熱処理に利用した排ガスが結露しない温度を維持するように低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御するようにしたので、半水石膏に加熱処理する際には高温加熱処理キルンの運転を停止して低温加熱処理キルンの単独運転にて対応することができる一方、無水石膏に加熱処理する際には高温加熱処理キルンから導出される高温の排ガスでもって低温加熱処理キルンにて予熱処理することができ、加熱処理温度に応じてより効率的で経済的な運転制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る粉粒体の加熱処理装置及び廃石膏の加熱処理方法の一実施例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る粉粒体の加熱処理装置及び廃石膏の加熱処理方法にあっては、熱風供給用のメインバーナを有する、例えば並流加熱方式の高温加熱処理キルンと、該高温加熱処理キルンから導出される排ガスにて粉粒体を加熱する並流加熱方式の低温加熱処理キルンと、該低温加熱処理キルンからの排ガスに随伴して流出する粉粒体を捕捉する集塵機とを備えており、粉粒体を比較的低温或いは高温の二つの温度域で加熱処理可能としている。なお、前記高温加熱処理キルンのキルン本体内部にはメインバーナから供給される高温熱風からの保護用に耐熱性のキャスターを周設している一方、低温加熱処理キルンのキルン本体内部には加熱効率を高めるために複数の掻き上げ羽根を周設している。
【0020】
前記低温加熱処理キルンの排出部下位には、粉粒体を低温或いは高温のいずれの温度域で加熱処理するかに応じて、粉粒体の排出先を近傍に備えた低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに手動及び/または自動にて切替可能とした排出先切替手段を備えている一方、前記集塵機の下位には、前記同様に、粉粒体を低温或いは高温のいずれの温度域で加熱処理するかに応じて、排ガスより捕捉した粉粒体の還元先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンのいずれかに手動及び/または自動にて切替可能とした捕捉粉粒体還元手段を備えている。
【0021】
なお、前記捕捉粉粒体還元手段としては、集塵機にて捕捉した粉粒体を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルンにエア圧送等で直接還元させるようにしたものでもよいが、低温加熱処理キルンの排出部に一旦投入し、低温加熱処理キルンから排出される粉粒体と合流させた上で、その下位の排出先切替手段での排出先切替操作でもって還元先を切替えるように構成したものでもよく、その場合には装置構成の簡素化が図れ、低廉化が期待できるものとなる。
【0022】
また、低温加熱処理キルン出口側の排ガス温度を検出する低温キルン排ガス温度センサと、高温加熱処理キルン出口側の排ガス温度を検出する高温キルン排ガス温度センサとをそれぞれ備えている。
【0023】
また、粉粒体を低温或いは高温のいずれの温度域で加熱処理するかに応じて、メインバーナの燃焼量や燃焼制御方法、並びに低温加熱処理キルンからの粉粒体の排出先や集塵機にて捕捉した粉粒体の還元先等を制御する運転制御器を備えている。前記運転制御器では、低温加熱運転モードと高温加熱運転モードのいずれかを選択操作可能としており、選択された運転モードが、例えば低温加熱運転モードであれば、前記低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値と予め設定した低温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいてメインバーナの燃焼量を制御する低温加熱制御とし、かつ低温加熱処理キルンからの粉粒体の排出先及び集塵機にて捕捉した粉粒体の還元先を低温粉粒体貯蔵ビン側に自動で切替えるようにしている一方、高温加熱運転モードが選択されれば、前記高温キルン排ガス温度センサにて検出される高温キルン排ガス温度値と予め設定した高温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいてメインバーナの燃焼量を制御する高温加熱制御とし、かつ低温加熱処理キルンからの粉粒体の排出先及び集塵機にて捕捉した粉粒体の還元先を高温加熱処理キルン側に自動で切替えるようにしている。
【0024】
なお、これらの各切替制御は、上記のようにプラントオペレータ等による運転モードの選択操作に応じて自動制御で切替わるようにしておけば操作ミスも防げ操作性の向上が期待できるものとなるが、低温加熱処理キルンからの粉粒体の排出先や集塵機からの粉粒体の還元先の切替操作等については必ずしも自動制御にする必要はなく、適宜手動にて切替操作するようにしてもよい。
【0025】
また、前記低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を、例えばインバータ制御として可変速とする一方、前記運転制御器にて高温加熱運転モードが選択された場合に限り、前記低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値に基づいて低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整制御するキルン回転数制御器を備えている。前記キルン回転数制御器には、低温加熱処理キルンから導出される排ガスが煙突や集塵機等で結露を生じない少なくとも露点温度以上の下限排ガス温度設定値を予め設定しており、前記低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値が前記下限排ガス温度設定値を下回ればキルン本体の回転数を落とし、キルン本体内の掻き上げ羽根によって掻き上げられた粉粒体が落下する際に形成されるベール数を減らして粉粒体と排ガスとの接触機会を減らすことで加熱効率(熱回収率)を低下させ、それによってキルン本体より導出される排ガス温度を高めて露点温度以上に調整させるようにしている一方、低温キルン排ガス温度値が下限排ガス温度設定値を上回ればキルン回転数を元の状態に戻して(上げて)加熱効率を高めるようにしている。
【0026】
なお、本加熱処理装置にて廃石膏を加熱処理して、例えばセメント原材料用等のII型無水石膏に再生処理する場合には、前記したように、その一部が熱分解を生じて硫黄酸化物が発生する可能性があり、排ガス中にこの硫黄酸化物が含まれるとその濃度に応じて露点温度が高まるため(酸露点)、前記キルン回転数制御器に設定する下限排ガス温度設定値には予め前記酸露点を考慮した若干高めの温度値を設定しておくと良い。
【0027】
また、最近においては排ガス中の硫黄酸化物濃度(SO)を連続的に検出可能とする硫黄酸化物濃度計も開発されつつあり、例えば、このような計測器を低温加熱処理キルン出口側に設置する一方、キルン回転数制御器には排ガス中の硫黄酸化物濃度と露点との関係式を予め登録しておき、前記硫黄酸化物濃度計にて検出される排ガス中の硫黄酸化物濃度から前記関係式によって露点(酸露点)を逐次導きだし、前記低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値が前記酸露点を若干上回る程度に維持されるように低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を適宜調整するようにすれば、例え排ガス中の硫黄酸化物濃度が変動しても排ガスからの結露の発生を安定して抑制できると共に、加熱効率も結露が発生しない範囲内で極力高めることが可能となるなど、より好ましいものになると期待できる。
【0028】
また、より好ましくは、前記低温加熱処理キルンの粉粒体供給側に別途サブバーナを備えると共に、前記運転制御器にて選択される低温加熱制御では低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値と予め設定した低温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいて、前記メインバーナに代えてサブバーナの燃焼量を制御するようにしても良く、このようにすることにより、低温加熱処理の際にはメインバーナの燃焼運転を含めて高温加熱処理キルンの運転を停止して低温加熱処理キルンの単独運転にて対応することができ、加熱処理温度に応じてより効率的で経済的な運転制御が可能となると共に、低温キルン排ガス温度値の変動等に対しても低温加熱処理キルンに直結したサブバーナの燃焼量を調整することでより即応性の高い温度制御が可能となる。なお、高温加熱処理の際は、前記サブバーナの燃焼運転を停止する一方、メインバーナのみを燃焼運転させて高温加熱処理キルンより導出される高温の排ガスを低温加熱処理キルンへ供給するようにすると良い。
【0029】
そして、上記構成の装置を使用して、例えば廃石膏ボードを破砕処理して得られる粉粒体状の廃石膏(二水石膏)を加熱処理温度に応じて半水石膏或いはII型無水石膏に再生処理するときには、予め前記運転制御器に、低温キルン排ガス温度設定値として二水石膏を半水石膏に転位させるのに適した、例えば130〜180℃程度の温度値を、また高温キルン排ガス温度設定値として二水石膏や半水石膏をII型無水石膏に転位させるのに適した、例えば350〜1100℃程度の温度値をそれぞれ設定登録しておく。
【0030】
そして、例えば、廃石膏を比較的低温にて加熱処理して半水石膏として再生処理するときには、前記運転制御器にて低温加熱運転モードを選択操作し、運転制御器ではそれに応じて排出先切替手段の排出先及び捕捉粉粒体還元手段の還元先をそれぞれ低温粉粒体貯蔵ビン側に切替えると共に、メインバーナの燃焼量を低温加熱処理キルン出口側の排ガス温度が前記低温キルン排ガス温度設定値に維持されるように制御する。次いで、その状態で粉粒体状の廃石膏を前記低温加熱処理キルンに投入すると、キルン本体内で転動流下する間に前記温度の熱風に晒されて半水石膏へと再生処理されると共に、排ガスに随伴して流出する廃石膏も気流乾燥によって加熱されて半水石膏の状態となって集塵機にて捕捉され、これらの半水石膏はそれぞれ排出先切替手段と捕捉粉粒体還元手段とによって共に低温粉粒体貯蔵ビン(半水石膏貯蔵ビン)へと搬送されて貯蔵される。
【0031】
一方、廃石膏を比較的高温にて加熱処理してII型無水石膏として再生処理するときには、前記運転制御器にて高温加熱運転モードを選択操作し、運転制御器ではそれに応じて排出先切替手段の排出先及び捕捉粉粒体還元手段の還元先をそれぞれ高温加熱処理キルン側に切替えると共に、メインバーナの燃焼量を高温加熱処理キルン出口側の排ガス温度が前記高温キルン排ガス温度設定値に維持されるように制御する。次いで、その状態で粉粒体状の廃石膏を低温加熱処理キルンに投入すると、キルン本体内で転動流下する間に高温加熱処理キルンから導出される排ガスによってある程度予熱処理された後、排出先切替手段にて下流の高温加熱処理キルンへと投入される一方、排ガスに随伴して流出する廃石膏は集塵機にて捕捉後、捕捉粉粒体還元手段にて前記低温加熱処理キルンから排出される予熱処理された廃石膏と共に高温加熱処理キルンへと投入(還元)される。そして、高温加熱処理キルンに投入された廃石膏は、キルン本体内を流下する間にメインバーナからの高温の熱風に晒されてII型無水石膏へと再生処理され、排出部より順次排出されて近傍に備えた高温粉粒体貯蔵ビン(II型無水石膏貯蔵ビン)へと搬送されて貯蔵される。
【0032】
このとき、低温加熱処理キルンでは二水石膏の状態にある廃石膏を、次工程の高温加熱処理キルンでの本加熱処理に備えてある程度まで予熱処理しさえすれば良く、低温加熱処理キルンからの排出時における廃石膏の性状としては、例え二水石膏のままであっても、或いはその一部が半水石膏やII型無水石膏等に転位して各種性状のものが混在していたとしても特に支障はない。また、前記予熱処理には、高温加熱処理キルンでの本加熱処理にて使用された比較的高温の排ガスをそのまま低温加熱処理キルンへと導入させて有効利用するようにしているため、燃料費を抑えながら廃石膏の加熱効率を効果的に高められる一方、低温加熱処理キルンの通過に伴って排ガス温度を比較的低温に調整することができ、バグフィルタ等の集塵機の手前側に冷却塔等の排ガス冷却手段の設置が不要となって設備費用を軽減できる。なお、低温加熱処理キルンに導入される排ガスは、高温加熱処理キルンでの本加熱処理を経ているため、二水石膏或いは半水石膏をII型無水石膏に転位させる際に生じる水蒸気を含んでいるものの、低温加熱処理キルンのキルン本体内部には複数の掻き上げ羽根を周設しているため効率よく予熱処理できる。
【0033】
また、低温加熱処理キルンに投入して予熱処理する廃石膏の性状や供給量等の変動に伴い、低温キルン排ガス温度センサにて検出される低温キルン排ガス温度値が予め設定した下限排ガス温度設定値を下回る状況になれば、キルン回転数制御器にて低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を落とし、加熱効率(熱回収率)を敢えて低下させてキルン出口側の排ガス温度が下限排ガス温度設定値、即ち露点温度よりも高くなるように調整し、下流の集塵機や煙突等での結露の発生を抑制する。
【0034】
このように、本発明によれば、被加熱物である粉粒体を比較的低温で加熱処理する場合には、バーナの燃焼制御を低温加熱処理キルン出口側の排ガス温度に基づいた排ガス温度制御とし、並流加熱方式の低温加熱処理キルンのみで加熱処理する一方、比較的高温で加熱処理する場合には、バーナの燃焼制御を高温加熱処理キルン出口側の排ガス温度に基づいた排ガス温度制御とし、低温加熱処理キルンで予熱処理後、並流加熱方式の高温加熱処理キルンにて本加熱処理するようにしたことにより、低温加熱処理にも高温加熱処理にも柔軟に適応でき、例えば、廃石膏のような半水石膏に転位する温度とII型無水石膏に転位する温度とに大きな差があるような場合でも両方を効率よく再生処理可能な使い勝手の良いものとなる。また、高温加熱処理キルンから導出される排ガスを低温加熱処理キルンにて予熱処理に利用した際に、例え排ガス温度が露点温度を下回るような状況が生じても、低温加熱処理キルンのキルン本体の回転数を調整して加熱効率を調整可能としたことにより、排ガス温度を露点温度以上にコントロールできて結露の発生を効果的に抑制することができる。
【0035】
なお、前記高温加熱処理キルンには、キルン本体から排出される廃石膏の温度に基づいてバーナ燃焼量を制御する材料温度制御で、かつ熱風供給方向と廃石膏の流下方向とが対向する向流加熱方式を採用することもできる。ただし、向流加熱方式では、加熱効率は優れるもののキルン排出間際でのバーナ火炎からの輻射熱による影響が大きく、廃石膏を所望温度以上に、即ち熱分解を生じる温度以上に加熱してしまう可能性も大きくなる。一方、前記のように、排ガス温度制御としかつ並流加熱方式を採用すれば、加熱効率は若干劣るものの、キルン排出間際でのバーナ火炎からの輻射熱の影響を抑えられると共に、排出される廃石膏の温度を少なくとも排ガス温度以下にコントロールできるため、例えば、廃石膏から約900℃もの高温での加熱処理を要するセメント原材料用のII型無水石膏を再生処理するような場合でも、熱分解を生じ始める約1100℃以下にコントロールしながら適当に加熱処理することができ、露点の上昇を招く硫黄酸化物の発生を抑制して排ガス熱をより有効に予熱処理に利用可能となる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0037】
図中の1は粉粒体を加熱処理する加熱処理装置であって、粉粒体を比較的低温で加熱処理する低温加熱処理キルン2と、比較的高温で加熱処理する高温加熱処理キルン3とを併設していると共に、これら低温加熱処理キルン2と高温加熱処理キルン3とを排ガス供給ダクト4にて連結して、高温加熱処理キルン3より導出される排ガスを低温加熱処理キルン2へ供給可能なように構成している。
【0038】
前記高温加熱処理キルン3は、機台5上に傾斜支持した円筒状のキルン本体6を駆動用モータ(図示せず)により所定の速度で回転駆動するようにした並流加熱方式のロータリーキルンであり、キルン本体6の内壁面には掻き上げ機能を有さない耐火レンガやセラミックス等の耐熱性のキャスター7を周設してキルン内壁面を高温の熱風から保護している。また、高温加熱処理キルン3の上端側(熱風上流側)にはホットホッパ8を介して熱風供給用のバーナ装置であるメインバーナ9と、低温加熱処理キルン2より供給される粉粒体投入用のスクリューコンベア10を備えている一方、キルン下端側(熱風下流側)にはコールドホッパ11を介して前記排ガス供給ダクト4の基端部を連結していると共に、コールドホッパ11の下端部には粉粒体の排出部12及びロータリーバルブ13を備え、その下位にはエア圧送装置14を備え、排出部12より排出される粉粒体を近傍の高温粉粒体貯蔵ビン(図示せず)へ圧送可能としている。
【0039】
前記低温加熱処理キルン2は、高温加熱処理キルン3と同様の構造をしており、機台15上に傾斜支持した円筒状のキルン本体16を駆動用モータ17により回転駆動するようにした並流加熱方式のロータリーキルンであり、インバータ18によって前記駆動用モータ17の出力を調整してキルン本体16の回転速度を調整可能としている。また、キルン本体16の内壁面には複数の掻き上げ羽根19を周設して加熱効率を高めている。また、低温加熱処理キルン2の上端側(熱風上流側)にはホットホッパ20を介して前記排ガス供給ダクト4の他端部を連結し、かつ熱風供給用のバーナ装置であるサブバーナ21を備えていると共に、ホットホッパ20の上端部には加熱処理前の粉粒体投入用の投入部22を備えている一方、キルン下端側(熱風下流側)にはコールドホッパ23を介して排ガス導出用の排気ダクト24を連結していると共に、コールドホッパ23の下端部には粉粒体の排出部25を備えている。また、前記排気ダクト24の下流には排ガスに随伴して流出する粉粒体等を捕捉する集塵機であるバグフィルタ26、排風量調整用のメインダンパー27、排風機28、及び煙突29を備えている。
【0040】
図中の30は、低温加熱処理キルン2から排出される粉粒体の排出先を、近傍に備えた低温粉粒体貯蔵ビン(図示せず)或いは高温加熱処理キルン3のいずれかに切替可能とする排出先切替手段であるスクリューコンベアであって、該スクリューコンベア30の略中央付近に投入口31を、両端部にそれぞれ排出口32、33を備えた二股構造としていると共に、前記投入口30の上位、及び排出口32、33の下位にはそれぞれロータリーバルブ34、35、36を備え、駆動用モータ37の回転方向の切替操作に伴い、投入口31から投入される粉粒体の排出先を排出口32側(低温粉粒体貯蔵ビン側)、或いは排出口33側(高温加熱処理キルン3側)のいずれかに切替可能としている。
【0041】
また、前記排出口30の下位にはエア圧送装置38を備え、排出口32側より排出される粉粒体を近傍の低温粉粒体貯蔵ビンへ圧送可能としている一方、排出口33の下端部は前記高温加熱処理キルン3のホットホッパ8に備えたスクリューコンベア10の投入口39と連結し、排出口33側より排出される粉粒体を高温加熱処理キルン3内へ投入可能としている。なお、前記排出先切替手段としては前記二股構造のスクリューコンベア30に限定されるものではなく、例えばダンパー等で排出先を切替可能とした二股構造の切替シュートなども採用することができる。
【0042】
また、バグフィルタ26の下位には、排ガスより捕捉した粉粒体を送出するスクリューコンベア40を備え、該スクリューコンベア40の基端部には駆動用モータ41を、終端部には排出口42をそれぞれ備えていると共に、該排出口42の下位にはロータリーバルブ43を備えている。
【0043】
図中の44は、前記バグフィルタ26にて排ガスより捕捉した粉粒体の還元先を前記低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルン3のいずれかに切替可能とする捕捉粉粒体還元手段であって、低温加熱処理キルン2のコールドホッパ23に前記バグフィルタ26下位のスクリューコンベア40から排出される捕捉粉粒体を還元投入させる還元投入シュート45を備えていると共に、該還元投入シュート45を介してコールドホッパ23内に還元投入させた捕捉粉粒体の還元先を、排出先切替手段でもある前記スクリューコンベア30の駆動用モータ37の回転方向の切替操作によって、排出口32側(低温粉粒体貯蔵ビン側)、或いは排出口33側(高温加熱処理キルン3側)のいずれかに切替可能としている。
【0044】
なお、前記還元投入シュート45よりコールドホッパ23内に還元投入される捕捉粉粒体が再び排気ダクト24側へ流出していかないように、還元投入シュート45の排出口を、図1に示すように、キルン本体16から排気ダクト24側へ流下する排ガスの影響を受けにくいコールドホッパ23下部付近に臨ませている。また、前記捕捉粉粒体還元手段としては、前記構成とすることにより、排出先切替手段として備えたスクリューコンベア30をそのまま有効に利用でき、装置構成の簡素化が図れると共に、装置コストの低廉化も期待できるものとなるが、必ずしも前記構成を採用する必要はなく、例えばバグフィルタ26下位のスクリューコンベア40の排出口42下位にエア圧送装置を備え、該エア圧送装置の圧送端を低温粉粒体貯蔵ビンと高温加熱処理キルン3とに連結し、圧送先をその都度いずれかに振り分け可能なように構成したものでもよい。
【0045】
また、前記低温加熱処理キルン2のホットホッパ20の隅部及び高温加熱処理キルン3のホットホッパ8の隅部には、それぞれキルン内部の静圧を検出する静圧センサ46、47を備えている。図中の48は、前記静圧センサ46、47から選択される一方のセンサにて検出される静圧値に基づいて排気ダクト24のメインダンパー27の開度(または排風機28の回転数)を調整して排風量を可変制御する静圧/排風量制御器であって、選択された静圧センサ46、47側のキルン内部の静圧が外気圧に対してほぼ同じか、或いは若干負圧になるように排風量を制御しており、例えば、粉粒体の性状や投入量の変動等に応じてバーナ燃焼量が変動した場合や、加熱処理に伴って廃石膏等の粉粒体から多量の水蒸気が発生したような場合でも、各キルン端部の隙間からの噴き出しを防止しながらも、外気の侵入を抑制して省エネの向上を図っている。
【0046】
なお、上記のように、静圧/排風量制御器48が取り込む静圧値を検出する静圧センサ46、47を選択するようにしているが、本実施例の装置では、被加熱物である粉粒体を加熱処理する温度に応じて、燃焼運転させるバーナ装置をサブバーナ21とメインバーナ9とのいずれかに切り替えるため、燃焼運転させるバーナ装置と同じ側のキルンの静圧センサをその都度選択し、選択した静圧センサにて検出されるキルン内部の静圧値を前記静圧/排風量制御器48に取り込んで排風量を制御するようにしている。
【0047】
また、前記低温加熱処理キルン2下流の排気ダクト24の基端部付近には、低温加熱処理キルン2出口側の排ガス温度を検出する低温キルン排ガス温度センサ49を備えている一方、前記高温加熱処理キルン3と低温加熱処理キルン2とを連結する排ガス供給ダクト4の基端部付近には、高温加熱処理キルン3出口側の排ガス温度を検出する高温キルン排ガス温度センサ50を備えている。
【0048】
図中の51は、前記低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値に基づいて低温加熱処理キルン2のキルン本体16の回転数を調整制御するキルン回転数制御器であって、該キルン回転数制御器51には低温加熱処理キルン2より導出された排ガスが排気ダクト24内で結露を生じない少なくとも露点温度以上の下限排ガス温度設定値を予め設定登録しておき、前記低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値が前記下限排ガス温度設定値を下回ればインバータ18を介してキルン本体16の回転数を落とすように制御信号を出力し、掻き上げ羽根19の掻き上げ・落下に伴って形成される粉粒体のベール数を減らして加熱効率を低下させ、それによってキルン本体16出口側の排ガス温度を高めて結露を抑制するようにしている一方、低温キルン排ガス温度値が下限排ガス温度設定値を上回ればキルン本体16の回転数を元に戻すように(上げるように)制御信号を出力し、加熱効率を元の状態に回復させるようにプログラミングしている。
【0049】
なお、排ガスの露点温度は排ガスの性状、例えば排ガス中に含まれる水分量や硫黄酸化物等の量によって変動し、例えば、水分量が5%程度であれば硫黄酸化物(SO)濃度が10ppmで125℃程度、硫黄酸化物濃度が100ppmでは145℃程度に、また水分量が15%程度であれば硫黄酸化物濃度が10ppmで140℃程度、硫黄酸化物濃度が100ppmでは160℃程度と大きく変動するため、予め高温加熱処理キルン3より導出される排ガスを採取するなどしておおよその露点温度を求めておき、その露点温度よりも若干高めの、例えば10〜20℃程度高めの温度値を下限排ガス温度設定値として前記キルン回転数制御器51に設定するようにすると良い。
【0050】
図中の52は、本加熱処理装置1の運転制御用の運転制御器であって、粉粒体を比較的低温にて加熱処理する低温加熱運転モードと比較的高温にて加熱処理する高温加熱運転モードのいずれかを選択操作する運転モード選択部53と、各種の初期設定や運転モードに応じたバーナ燃焼制御方法等を設定記憶させておく記憶部54と、低温キルン排ガス温度センサ49、高温キルン排ガス温度センサ50からの入力信号や、メインバーナ9やサブバーナ21、各スクリューコンベア30、40の各駆動用モータ37、41への出力信号等を入出力する入出力部55と、前記運転モード選択部53にて選択された運転モードに応じて本加熱処理装置を構成する各装置・機器等を駆動制御する制御部56とを有している。
【0051】
前記記憶部54には、低温加熱運転モードと高温加熱運転モードの二つの運転モードを記憶した運転モード記憶部と、バーナ燃焼制御の基準となる低温キルン排ガス温度設定値と高温キルン排ガス温度設定値とを予め設定登録させる初期設定記憶部とを有している。前記低温加熱運転モードでは、低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値と前記低温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいてサブバーナ21の燃焼量を制御するようにしている一方、高温加熱運転モードでは、高温キルン排ガス温度センサ50にて検出される高温キルン排ガス温度値と前記高温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいてメインバーナ9の燃焼量を制御するようにしている。
【0052】
また、前記制御部56には、運転モード選択部53で選択された運転モードを記憶部54より読み込み、読み込んだ運転モードに基づいてサブバーナ21或いはメインバーナ9の燃焼制御を実行する運転モード制御部と、排出先切替手段であるスクリューコンベア30の排出先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルン3のいずれかに切替制御する排出先切替制御部と、サブバーナ21或いはメインバーナ9の燃焼量を制御するバーナ燃焼制御部と、集塵機であるバグフィルタ26にて捕捉した粉粒体の還元先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルン3のいずれかに切替制御する捕捉粉粒体還元制御部等を有している。
【0053】
例えば、低温加熱運転モードが選択された場合には、高温加熱処理キルン3の運転を停止して低温加熱処理キルン2のみの単独運転とし、低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値と予め設定した低温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいてサブバーナ21の燃焼量を制御しつつ、スクリューコンベア30の排出先が低温粉粒体貯蔵ビン側となるように駆動用モータ37の回転方向を切替制御し、低温加熱処理キルン2にて所定温度(低温)に加熱処理した粉粒体を低温粉粒体貯蔵ビンへ順次送り出して貯蔵させるようにしている。また、加熱処理時に低温加熱処理キルン2より排ガスと共に流出する粉粒体については、下流のバグフィルタ26にて捕捉・回収後、下位のスクリューコンベア40の駆動用モータ41を適宜駆動させて送り出し、還元投入シュート45より低温加熱処理キルン2のコールドホッパ23内に還元投入させることで、スクリューコンベア30を介して低温粉粒体貯蔵ビンへ貯蔵させる。
【0054】
一方、高温加熱運転モードが選択された場合には、サブバーナ21の燃焼運転を停止してメインバーナ9のみを燃焼運転させ、高温キルン排ガス温度センサ50にて検出される高温キルン排ガス温度値と予め設定した高温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいて前記メインバーナ9の燃焼量を制御しつつ、スクリューコンベア30の排出先が高温加熱処理キルン3側となるように駆動用モータ37の回転方向を切替制御し、低温加熱処理キルン2にて予熱処理した粉粒体を高温加熱処理キルン3へと順次送り出し、次いで高温加熱処理キルン3にて所定温度(高温)まで加熱処理後、高温粉粒体貯蔵ビンへと送り出して貯蔵させるようにしている。また、加熱処理時にバグフィルタ26にて捕捉・回収される粉粒体は、前記同様に、還元投入シュート45よりコールドホッパ23内に還元投入させ、下位のスクリューコンベア30を介して投入させた高温加熱処理キルン3にて所定温度(高温)まで加熱処理させた後、高温粉粒体貯蔵ビンに貯蔵させる。
【0055】
そして、上記構成の粉粒体の加熱処理装置1を使用して、例えば廃石膏ボードを破砕処理した二水石膏の状態にある粉粒体状の廃石膏を加熱処理し、半水石膏或いはII型無水石膏として再生処理するときには、予め、前記運転制御器52の記憶部54に低温キルン排ガス温度設定値として、二水石膏を半水石膏に転位させるのに適した、例えば約130〜180℃程度の温度値を、また高温キルン排ガス温度設定値として、二水石膏や半水石膏をII型無水石膏に転位させるのに適した、例えば約350〜1100℃程度の温度値をそれぞれ設定登録しておく。
【0056】
そして、例えば、廃石膏を半水石膏に再生処理する場合には、先ず、前記運転制御器52の運転モード選択部53にて低温加熱運転モードを選択操作し、運転制御器52では選択された運転モードに応じて高温加熱処理キルン3の運転を停止して低温加熱処理キルン2のみの単独運転とし、記憶部54から各種設定値等を読み込む一方、駆動用モータ37の回転方向を制御してスクリューコンベア30の排出先を半水石膏貯蔵ビン(低温粉粒体貯蔵ビン)側に自動で切替えると共に、低温加熱処理キルン2に備えたサブバーナ21の燃焼量を排気ダクト24に備えた低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値と、予め設定登録した前記低温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいて調整制御する。そして、その状態で廃石膏を低温加熱処理キルン2に投入すると、廃石膏はキルン本体16内周部に周設した複数の掻き上げ羽根19によって掻き上げられながらキルン本体16内を転動流下していき、前記サブバーナ21より供給される熱風に晒されて効率よく加熱処理され、半水石膏として再生処理されてコールドホッパ23下端部の排出部25より順次排出されていく。
【0057】
また、低温加熱処理キルン2より排ガスに随伴して流出する廃石膏はバグフィルタ26にて捕捉後、駆動用モータ41の駆動操作に応じてスクリューコンベア40より還元投入シュート45へと適宜送り出され、コールドホッパ23内へと還元投入される。ここで、前記バグフィルタ26にて捕捉される廃石膏は、排ガス温度を二水石膏が半水石膏に転位するのに適した約130〜180℃程度に維持させるように排ガス温度制御しているため、気流乾燥によって十分に前記温度程度まで加熱されて半水石膏として再生処理されており、低温加熱処理キルン2より排出される半水石膏と略同等に扱うことが可能である。コールドホッパ23に還元投入された半水石膏は、低温加熱処理キルン2より排出される半水石膏と合流後、共に下位のスクリューコンベア30に排出され、該スクリューコンベア30にて排出口32側へと送り出された後、下位のエア圧送装置38により半水石膏貯蔵ビン(低温粉粒体貯蔵ビン)へと圧送されて貯蔵される。
【0058】
一方、廃石膏をII型無水石膏に再生処理する場合には、前記運転制御器52の運転モード選択部53にて高温加熱運転モードを選択操作し、運転制御器52では選択された運転モードに応じてサブバーナ21の燃焼運転を停止してメインバーナ9のみを燃焼運転させ、記憶部54から各種設定値等を読み込む一方、駆動用モータ37の回転方向を制御してスクリューコンベア30の排出先を高温加熱処理キルン3側に自動で切替えると共に、メインバーナ9の燃焼量を排ガス供給ダクト4に備えた高温キルン排ガス温度センサ50にて検出される高温キルン排ガス温度値と、前記高温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいて調整制御する。そして、その状態で廃石膏を低温加熱処理キルン2に投入すると、廃石膏は前記同様に、複数の掻き上げ羽根19によって掻き上げられながらキルン本体16内を転動流下する間に、高温加熱処理キルン3から排ガス供給ダクト4を介して導入される高温の排ガスに晒されてある程度まで予熱処理された後、コールドホッパ23下端部の排出部25より順次排出されていく。
【0059】
このとき、低温加熱処理キルン2では二水石膏の状態にある廃石膏を、次工程の高温加熱処理キルン3での本加熱処理に備えてある程度まで予熱処理することを目的としており、排出時における廃石膏の性状としては、例え二水石膏のままであっても、或いはその一部が半水石膏やII型無水石膏等に転位して様々な状態のものが混在していたとしても特に支障はない。また、高温加熱処理キルン3から排ガス供給ダクト4を介して低温加熱処理キルン2に導入される排ガスは、高温加熱処理キルン3での本加熱処理によって二水石膏や半水石膏をII型無水石膏に転位させた際に生じる水蒸気を含んでいるものの、低温加熱処理キルン2のキルン本体16内周部には複数の掻き上げ羽根19を周設しているため廃石膏を繰り返し掻き上げてベールを形成させるように落下させながら排ガスと接触させて効率よく予熱処理することができる。
【0060】
また、低温加熱処理キルン2にて予熱処理に利用された排ガスは、下流側の排気ダクト24へと導出される際、低温キルン排ガス温度センサ49にてその温度が逐次検出され、その低温キルン排ガス温度値が予め設定した下限排ガス温度設定値を下回ればキルン回転数制御器51にてキルン本体16の回転数を落とし、加熱効率を低下させてキルン出口側の排ガス温度を高めて下限排ガス温度設定値、即ち露点温度以上に調整し、下流のバグフィルタ26や煙突29等での結露の発生を抑制する。なお、排ガス温度が下限排ガス温度設定値を上回れば、キルン本体16の回転数を元の速度に戻して(上げて)、加熱効率を元の状態に復帰させる。
【0061】
また、前記排ガスに随伴して流出する廃石膏はバグフィルタ26にて捕捉後、前記同様に、駆動用モータ41の駆動操作に応じてスクリューコンベア40より還元投入シュート45へと適宜送り出され、コールドホッパ23内へと還元投入される。コールドホッパ23に還元投入された廃石膏は、低温加熱処理キルン2より排出される廃石膏と合流後、共に下位のスクリューコンベア30に排出され、該スクリューコンベア30にて排出口33側へと送り出された後、下位の高温加熱処理キルン3へと順次投入されていく。
【0062】
次いで、高温加熱処理キルン3内へと投入された廃石膏は、キルン本体6内周部に周設した掻き上げ機能を有さない耐熱性のキャスター7上を流下する間に、メインバーナ9から供給される熱風と、蓄熱されたキャスター7とによって所定温度まで加熱処理され、II型無水石膏に再生処理されてコールドホッパ11下端部の排出部12より順次排出され、下位のエア圧送装置14によりII型無水石膏貯蔵ビン(高温粉粒体貯蔵ビン)へと圧送されて貯蔵される。このとき、高温加熱処理キルン3に投入される廃石膏は、低温加熱処理キルン2にてある程度予熱処理されているため、比較的高温での加熱処理を要するII型無水石膏への再生処理を効率よく行うことができる。
【0063】
このように、被加熱物である粉粒体を比較的低温にて加熱処理する低温加熱処理キルン2と、比較的高温にて加熱処理する高温加熱処理キルン3の二つのキルンを併設し、熱風供給源として高温加熱処理キルン3にはメインバーナ9を、低温加熱処理キルン2にはサブバーナ21をそれぞれ備えると共に、高温加熱処理キルン3と低温加熱処理キルン2とは排ガス供給ダクト4にて連結して高温加熱処理キルン3より導出される排ガスを低温加熱処理キルン2へ供給可能なようにしておき、粉粒体を低温にて加熱処理する場合には、高温加熱処理キルン3の運転を停止して低温加熱処理キルン2を単独運転させて所定温度(低温)まで加熱処理する一方、高温にて加熱処理する場合には、サブバーナ21の燃焼運転を停止してメインバーナ9のみを燃焼運転させて高温加熱処理キルン3より導出される排ガスを低温加熱処理キルン2へ供給させ、先ず、低温加熱処理キルン2にてある程度まで予熱処理した後、次いで高温加熱処理キルン3に投入して所定温度(高温)まで加熱処理するようにしたので、一つの処理装置でありながら粉粒体を低温或いは高温のいずれの温度域でも効率よく加熱処理でき、低温加熱及び高温加熱対応の兼用の加熱処理装置とすることができる。
【0064】
また、排ガスに随伴して流出する粉粒体は、バグフィルタ26にて捕捉後、加熱処理温度に応じて低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルン3のいずれかを選択して還元可能としたので、いずれの処理温度においても高収率で回収することができる。更に、粉粒体を高温にて加熱処理する場合において、低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値に基づいて低温加熱処理キルン2のキルン本体16の回転数を適宜調整して排ガス温度をコントロールするようにしたので、排ガスからの結露の発生を抑制しながら排ガス熱を予熱処理用に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…粉粒体の加熱処理装置 2…低温加熱処理キルン
3…高温加熱処理キルン 4…排ガス供給ダクト
6、16…キルン本体 7…キャスター
9…メインバーナ 18…インバータ
19…掻き上げ羽根 21…サブバーナ
24…排気ダクト 26…バグフィルタ(集塵機)
30…スクリューコンベア(排出先切替手段)
37、41…駆動用モータ 40…スクリューコンベア(集塵機)
44…捕捉粉粒体還元手段 45…還元投入シュート
49…低温キルン排ガス温度センサ 50…高温キルン排ガス温度センサ
51…キルン回転数制御器 52…運転制御器
図1