【実施例】
【0036】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0037】
図中の1は粉粒体を加熱処理する加熱処理装置であって、粉粒体を比較的低温で加熱処理する低温加熱処理キルン2と、比較的高温で加熱処理する高温加熱処理キルン3とを併設していると共に、これら低温加熱処理キルン2と高温加熱処理キルン3とを排ガス供給ダクト4にて連結して、高温加熱処理キルン3より導出される排ガスを低温加熱処理キルン2へ供給可能なように構成している。
【0038】
前記高温加熱処理キルン3は、機台5上に傾斜支持した円筒状のキルン本体6を駆動用モータ(図示せず)により所定の速度で回転駆動するようにした並流加熱方式のロータリーキルンであり、キルン本体6の内壁面には掻き上げ機能を有さない耐火レンガやセラミックス等の耐熱性のキャスター7を周設してキルン内壁面を高温の熱風から保護している。また、高温加熱処理キルン3の上端側(熱風上流側)にはホットホッパ8を介して熱風供給用のバーナ装置であるメインバーナ9と、低温加熱処理キルン2より供給される粉粒体投入用のスクリューコンベア10を備えている一方、キルン下端側(熱風下流側)にはコールドホッパ11を介して前記排ガス供給ダクト4の基端部を連結していると共に、コールドホッパ11の下端部には粉粒体の排出部12及びロータリーバルブ13を備え、その下位にはエア圧送装置14を備え、排出部12より排出される粉粒体を近傍の高温粉粒体貯蔵ビン(図示せず)へ圧送可能としている。
【0039】
前記低温加熱処理キルン2は、高温加熱処理キルン3と同様の構造をしており、機台15上に傾斜支持した円筒状のキルン本体16を駆動用モータ17により回転駆動するようにした並流加熱方式のロータリーキルンであり、インバータ18によって前記駆動用モータ17の出力を調整してキルン本体16の回転速度を調整可能としている。また、キルン本体16の内壁面には複数の掻き上げ羽根19を周設して加熱効率を高めている。また、低温加熱処理キルン2の上端側(熱風上流側)にはホットホッパ20を介して前記排ガス供給ダクト4の他端部を連結し、かつ熱風供給用のバーナ装置であるサブバーナ21を備えていると共に、ホットホッパ20の上端部には加熱処理前の粉粒体投入用の投入部22を備えている一方、キルン下端側(熱風下流側)にはコールドホッパ23を介して排ガス導出用の排気ダクト24を連結していると共に、コールドホッパ23の下端部には粉粒体の排出部25を備えている。また、前記排気ダクト24の下流には排ガスに随伴して流出する粉粒体等を捕捉する集塵機であるバグフィルタ26、排風量調整用のメインダンパー27、排風機28、及び煙突29を備えている。
【0040】
図中の30は、低温加熱処理キルン2から排出される粉粒体の排出先を、近傍に備えた低温粉粒体貯蔵ビン(図示せず)或いは高温加熱処理キルン3のいずれかに切替可能とする排出先切替手段であるスクリューコンベアであって、該スクリューコンベア30の略中央付近に投入口31を、両端部にそれぞれ排出口32、33を備えた二股構造としていると共に、前記投入口30の上位、及び排出口32、33の下位にはそれぞれロータリーバルブ34、35、36を備え、駆動用モータ37の回転方向の切替操作に伴い、投入口31から投入される粉粒体の排出先を排出口32側(低温粉粒体貯蔵ビン側)、或いは排出口33側(高温加熱処理キルン3側)のいずれかに切替可能としている。
【0041】
また、前記排出口30の下位にはエア圧送装置38を備え、排出口32側より排出される粉粒体を近傍の低温粉粒体貯蔵ビンへ圧送可能としている一方、排出口33の下端部は前記高温加熱処理キルン3のホットホッパ8に備えたスクリューコンベア10の投入口39と連結し、排出口33側より排出される粉粒体を高温加熱処理キルン3内へ投入可能としている。なお、前記排出先切替手段としては前記二股構造のスクリューコンベア30に限定されるものではなく、例えばダンパー等で排出先を切替可能とした二股構造の切替シュートなども採用することができる。
【0042】
また、バグフィルタ26の下位には、排ガスより捕捉した粉粒体を送出するスクリューコンベア40を備え、該スクリューコンベア40の基端部には駆動用モータ41を、終端部には排出口42をそれぞれ備えていると共に、該排出口42の下位にはロータリーバルブ43を備えている。
【0043】
図中の44は、前記バグフィルタ26にて排ガスより捕捉した粉粒体の還元先を前記低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルン3のいずれかに切替可能とする捕捉粉粒体還元手段であって、低温加熱処理キルン2のコールドホッパ23に前記バグフィルタ26下位のスクリューコンベア40から排出される捕捉粉粒体を還元投入させる還元投入シュート45を備えていると共に、該還元投入シュート45を介してコールドホッパ23内に還元投入させた捕捉粉粒体の還元先を、排出先切替手段でもある前記スクリューコンベア30の駆動用モータ37の回転方向の切替操作によって、排出口32側(低温粉粒体貯蔵ビン側)、或いは排出口33側(高温加熱処理キルン3側)のいずれかに切替可能としている。
【0044】
なお、前記還元投入シュート45よりコールドホッパ23内に還元投入される捕捉粉粒体が再び排気ダクト24側へ流出していかないように、還元投入シュート45の排出口を、
図1に示すように、キルン本体16から排気ダクト24側へ流下する排ガスの影響を受けにくいコールドホッパ23下部付近に臨ませている。また、前記捕捉粉粒体還元手段としては、前記構成とすることにより、排出先切替手段として備えたスクリューコンベア30をそのまま有効に利用でき、装置構成の簡素化が図れると共に、装置コストの低廉化も期待できるものとなるが、必ずしも前記構成を採用する必要はなく、例えばバグフィルタ26下位のスクリューコンベア40の排出口42下位にエア圧送装置を備え、該エア圧送装置の圧送端を低温粉粒体貯蔵ビンと高温加熱処理キルン3とに連結し、圧送先をその都度いずれかに振り分け可能なように構成したものでもよい。
【0045】
また、前記低温加熱処理キルン2のホットホッパ20の隅部及び高温加熱処理キルン3のホットホッパ8の隅部には、それぞれキルン内部の静圧を検出する静圧センサ46、47を備えている。図中の48は、前記静圧センサ46、47から選択される一方のセンサにて検出される静圧値に基づいて排気ダクト24のメインダンパー27の開度(または排風機28の回転数)を調整して排風量を可変制御する静圧/排風量制御器であって、選択された静圧センサ46、47側のキルン内部の静圧が外気圧に対してほぼ同じか、或いは若干負圧になるように排風量を制御しており、例えば、粉粒体の性状や投入量の変動等に応じてバーナ燃焼量が変動した場合や、加熱処理に伴って廃石膏等の粉粒体から多量の水蒸気が発生したような場合でも、各キルン端部の隙間からの噴き出しを防止しながらも、外気の侵入を抑制して省エネの向上を図っている。
【0046】
なお、上記のように、静圧/排風量制御器48が取り込む静圧値を検出する静圧センサ46、47を選択するようにしているが、本実施例の装置では、被加熱物である粉粒体を加熱処理する温度に応じて、燃焼運転させるバーナ装置をサブバーナ21とメインバーナ9とのいずれかに切り替えるため、燃焼運転させるバーナ装置と同じ側のキルンの静圧センサをその都度選択し、選択した静圧センサにて検出されるキルン内部の静圧値を前記静圧/排風量制御器48に取り込んで排風量を制御するようにしている。
【0047】
また、前記低温加熱処理キルン2下流の排気ダクト24の基端部付近には、低温加熱処理キルン2出口側の排ガス温度を検出する低温キルン排ガス温度センサ49を備えている一方、前記高温加熱処理キルン3と低温加熱処理キルン2とを連結する排ガス供給ダクト4の基端部付近には、高温加熱処理キルン3出口側の排ガス温度を検出する高温キルン排ガス温度センサ50を備えている。
【0048】
図中の51は、前記低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値に基づいて低温加熱処理キルン2のキルン本体16の回転数を調整制御するキルン回転数制御器であって、該キルン回転数制御器51には低温加熱処理キルン2より導出された排ガスが排気ダクト24内で結露を生じない少なくとも露点温度以上の下限排ガス温度設定値を予め設定登録しておき、前記低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値が前記下限排ガス温度設定値を下回ればインバータ18を介してキルン本体16の回転数を落とすように制御信号を出力し、掻き上げ羽根19の掻き上げ・落下に伴って形成される粉粒体のベール数を減らして加熱効率を低下させ、それによってキルン本体16出口側の排ガス温度を高めて結露を抑制するようにしている一方、低温キルン排ガス温度値が下限排ガス温度設定値を上回ればキルン本体16の回転数を元に戻すように(上げるように)制御信号を出力し、加熱効率を元の状態に回復させるようにプログラミングしている。
【0049】
なお、排ガスの露点温度は排ガスの性状、例えば排ガス中に含まれる水分量や硫黄酸化物等の量によって変動し、例えば、水分量が5%程度であれば硫黄酸化物(SO
3)濃度が10ppmで125℃程度、硫黄酸化物濃度が100ppmでは145℃程度に、また水分量が15%程度であれば硫黄酸化物濃度が10ppmで140℃程度、硫黄酸化物濃度が100ppmでは160℃程度と大きく変動するため、予め高温加熱処理キルン3より導出される排ガスを採取するなどしておおよその露点温度を求めておき、その露点温度よりも若干高めの、例えば10〜20℃程度高めの温度値を下限排ガス温度設定値として前記キルン回転数制御器51に設定するようにすると良い。
【0050】
図中の52は、本加熱処理装置1の運転制御用の運転制御器であって、粉粒体を比較的低温にて加熱処理する低温加熱運転モードと比較的高温にて加熱処理する高温加熱運転モードのいずれかを選択操作する運転モード選択部53と、各種の初期設定や運転モードに応じたバーナ燃焼制御方法等を設定記憶させておく記憶部54と、低温キルン排ガス温度センサ49、高温キルン排ガス温度センサ50からの入力信号や、メインバーナ9やサブバーナ21、各スクリューコンベア30、40の各駆動用モータ37、41への出力信号等を入出力する入出力部55と、前記運転モード選択部53にて選択された運転モードに応じて本加熱処理装置を構成する各装置・機器等を駆動制御する制御部56とを有している。
【0051】
前記記憶部54には、低温加熱運転モードと高温加熱運転モードの二つの運転モードを記憶した運転モード記憶部と、バーナ燃焼制御の基準となる低温キルン排ガス温度設定値と高温キルン排ガス温度設定値とを予め設定登録させる初期設定記憶部とを有している。前記低温加熱運転モードでは、低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値と前記低温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいてサブバーナ21の燃焼量を制御するようにしている一方、高温加熱運転モードでは、高温キルン排ガス温度センサ50にて検出される高温キルン排ガス温度値と前記高温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいてメインバーナ9の燃焼量を制御するようにしている。
【0052】
また、前記制御部56には、運転モード選択部53で選択された運転モードを記憶部54より読み込み、読み込んだ運転モードに基づいてサブバーナ21或いはメインバーナ9の燃焼制御を実行する運転モード制御部と、排出先切替手段であるスクリューコンベア30の排出先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルン3のいずれかに切替制御する排出先切替制御部と、サブバーナ21或いはメインバーナ9の燃焼量を制御するバーナ燃焼制御部と、集塵機であるバグフィルタ26にて捕捉した粉粒体の還元先を低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルン3のいずれかに切替制御する捕捉粉粒体還元制御部等を有している。
【0053】
例えば、低温加熱運転モードが選択された場合には、高温加熱処理キルン3の運転を停止して低温加熱処理キルン2のみの単独運転とし、低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値と予め設定した低温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいてサブバーナ21の燃焼量を制御しつつ、スクリューコンベア30の排出先が低温粉粒体貯蔵ビン側となるように駆動用モータ37の回転方向を切替制御し、低温加熱処理キルン2にて所定温度(低温)に加熱処理した粉粒体を低温粉粒体貯蔵ビンへ順次送り出して貯蔵させるようにしている。また、加熱処理時に低温加熱処理キルン2より排ガスと共に流出する粉粒体については、下流のバグフィルタ26にて捕捉・回収後、下位のスクリューコンベア40の駆動用モータ41を適宜駆動させて送り出し、還元投入シュート45より低温加熱処理キルン2のコールドホッパ23内に還元投入させることで、スクリューコンベア30を介して低温粉粒体貯蔵ビンへ貯蔵させる。
【0054】
一方、高温加熱運転モードが選択された場合には、サブバーナ21の燃焼運転を停止してメインバーナ9のみを燃焼運転させ、高温キルン排ガス温度センサ50にて検出される高温キルン排ガス温度値と予め設定した高温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいて前記メインバーナ9の燃焼量を制御しつつ、スクリューコンベア30の排出先が高温加熱処理キルン3側となるように駆動用モータ37の回転方向を切替制御し、低温加熱処理キルン2にて予熱処理した粉粒体を高温加熱処理キルン3へと順次送り出し、次いで高温加熱処理キルン3にて所定温度(高温)まで加熱処理後、高温粉粒体貯蔵ビンへと送り出して貯蔵させるようにしている。また、加熱処理時にバグフィルタ26にて捕捉・回収される粉粒体は、前記同様に、還元投入シュート45よりコールドホッパ23内に還元投入させ、下位のスクリューコンベア30を介して投入させた高温加熱処理キルン3にて所定温度(高温)まで加熱処理させた後、高温粉粒体貯蔵ビンに貯蔵させる。
【0055】
そして、上記構成の粉粒体の加熱処理装置1を使用して、例えば廃石膏ボードを破砕処理した二水石膏の状態にある粉粒体状の廃石膏を加熱処理し、半水石膏或いはII型無水石膏として再生処理するときには、予め、前記運転制御器52の記憶部54に低温キルン排ガス温度設定値として、二水石膏を半水石膏に転位させるのに適した、例えば約130〜180℃程度の温度値を、また高温キルン排ガス温度設定値として、二水石膏や半水石膏をII型無水石膏に転位させるのに適した、例えば約350〜1100℃程度の温度値をそれぞれ設定登録しておく。
【0056】
そして、例えば、廃石膏を半水石膏に再生処理する場合には、先ず、前記運転制御器52の運転モード選択部53にて低温加熱運転モードを選択操作し、運転制御器52では選択された運転モードに応じて高温加熱処理キルン3の運転を停止して低温加熱処理キルン2のみの単独運転とし、記憶部54から各種設定値等を読み込む一方、駆動用モータ37の回転方向を制御してスクリューコンベア30の排出先を半水石膏貯蔵ビン(低温粉粒体貯蔵ビン)側に自動で切替えると共に、低温加熱処理キルン2に備えたサブバーナ21の燃焼量を排気ダクト24に備えた低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値と、予め設定登録した前記低温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいて調整制御する。そして、その状態で廃石膏を低温加熱処理キルン2に投入すると、廃石膏はキルン本体16内周部に周設した複数の掻き上げ羽根19によって掻き上げられながらキルン本体16内を転動流下していき、前記サブバーナ21より供給される熱風に晒されて効率よく加熱処理され、半水石膏として再生処理されてコールドホッパ23下端部の排出部25より順次排出されていく。
【0057】
また、低温加熱処理キルン2より排ガスに随伴して流出する廃石膏はバグフィルタ26にて捕捉後、駆動用モータ41の駆動操作に応じてスクリューコンベア40より還元投入シュート45へと適宜送り出され、コールドホッパ23内へと還元投入される。ここで、前記バグフィルタ26にて捕捉される廃石膏は、排ガス温度を二水石膏が半水石膏に転位するのに適した約130〜180℃程度に維持させるように排ガス温度制御しているため、気流乾燥によって十分に前記温度程度まで加熱されて半水石膏として再生処理されており、低温加熱処理キルン2より排出される半水石膏と略同等に扱うことが可能である。コールドホッパ23に還元投入された半水石膏は、低温加熱処理キルン2より排出される半水石膏と合流後、共に下位のスクリューコンベア30に排出され、該スクリューコンベア30にて排出口32側へと送り出された後、下位のエア圧送装置38により半水石膏貯蔵ビン(低温粉粒体貯蔵ビン)へと圧送されて貯蔵される。
【0058】
一方、廃石膏をII型無水石膏に再生処理する場合には、前記運転制御器52の運転モード選択部53にて高温加熱運転モードを選択操作し、運転制御器52では選択された運転モードに応じてサブバーナ21の燃焼運転を停止してメインバーナ9のみを燃焼運転させ、記憶部54から各種設定値等を読み込む一方、駆動用モータ37の回転方向を制御してスクリューコンベア30の排出先を高温加熱処理キルン3側に自動で切替えると共に、メインバーナ9の燃焼量を排ガス供給ダクト4に備えた高温キルン排ガス温度センサ50にて検出される高温キルン排ガス温度値と、前記高温キルン排ガス温度設定値との差値量に基づいて調整制御する。そして、その状態で廃石膏を低温加熱処理キルン2に投入すると、廃石膏は前記同様に、複数の掻き上げ羽根19によって掻き上げられながらキルン本体16内を転動流下する間に、高温加熱処理キルン3から排ガス供給ダクト4を介して導入される高温の排ガスに晒されてある程度まで予熱処理された後、コールドホッパ23下端部の排出部25より順次排出されていく。
【0059】
このとき、低温加熱処理キルン2では二水石膏の状態にある廃石膏を、次工程の高温加熱処理キルン3での本加熱処理に備えてある程度まで予熱処理することを目的としており、排出時における廃石膏の性状としては、例え二水石膏のままであっても、或いはその一部が半水石膏やII型無水石膏等に転位して様々な状態のものが混在していたとしても特に支障はない。また、高温加熱処理キルン3から排ガス供給ダクト4を介して低温加熱処理キルン2に導入される排ガスは、高温加熱処理キルン3での本加熱処理によって二水石膏や半水石膏をII型無水石膏に転位させた際に生じる水蒸気を含んでいるものの、低温加熱処理キルン2のキルン本体16内周部には複数の掻き上げ羽根19を周設しているため廃石膏を繰り返し掻き上げてベールを形成させるように落下させながら排ガスと接触させて効率よく予熱処理することができる。
【0060】
また、低温加熱処理キルン2にて予熱処理に利用された排ガスは、下流側の排気ダクト24へと導出される際、低温キルン排ガス温度センサ49にてその温度が逐次検出され、その低温キルン排ガス温度値が予め設定した下限排ガス温度設定値を下回ればキルン回転数制御器51にてキルン本体16の回転数を落とし、加熱効率を低下させてキルン出口側の排ガス温度を高めて下限排ガス温度設定値、即ち露点温度以上に調整し、下流のバグフィルタ26や煙突29等での結露の発生を抑制する。なお、排ガス温度が下限排ガス温度設定値を上回れば、キルン本体16の回転数を元の速度に戻して(上げて)、加熱効率を元の状態に復帰させる。
【0061】
また、前記排ガスに随伴して流出する廃石膏はバグフィルタ26にて捕捉後、前記同様に、駆動用モータ41の駆動操作に応じてスクリューコンベア40より還元投入シュート45へと適宜送り出され、コールドホッパ23内へと還元投入される。コールドホッパ23に還元投入された廃石膏は、低温加熱処理キルン2より排出される廃石膏と合流後、共に下位のスクリューコンベア30に排出され、該スクリューコンベア30にて排出口33側へと送り出された後、下位の高温加熱処理キルン3へと順次投入されていく。
【0062】
次いで、高温加熱処理キルン3内へと投入された廃石膏は、キルン本体6内周部に周設した掻き上げ機能を有さない耐熱性のキャスター7上を流下する間に、メインバーナ9から供給される熱風と、蓄熱されたキャスター7とによって所定温度まで加熱処理され、II型無水石膏に再生処理されてコールドホッパ11下端部の排出部12より順次排出され、下位のエア圧送装置14によりII型無水石膏貯蔵ビン(高温粉粒体貯蔵ビン)へと圧送されて貯蔵される。このとき、高温加熱処理キルン3に投入される廃石膏は、低温加熱処理キルン2にてある程度予熱処理されているため、比較的高温での加熱処理を要するII型無水石膏への再生処理を効率よく行うことができる。
【0063】
このように、被加熱物である粉粒体を比較的低温にて加熱処理する低温加熱処理キルン2と、比較的高温にて加熱処理する高温加熱処理キルン3の二つのキルンを併設し、熱風供給源として高温加熱処理キルン3にはメインバーナ9を、低温加熱処理キルン2にはサブバーナ21をそれぞれ備えると共に、高温加熱処理キルン3と低温加熱処理キルン2とは排ガス供給ダクト4にて連結して高温加熱処理キルン3より導出される排ガスを低温加熱処理キルン2へ供給可能なようにしておき、粉粒体を低温にて加熱処理する場合には、高温加熱処理キルン3の運転を停止して低温加熱処理キルン2を単独運転させて所定温度(低温)まで加熱処理する一方、高温にて加熱処理する場合には、サブバーナ21の燃焼運転を停止してメインバーナ9のみを燃焼運転させて高温加熱処理キルン3より導出される排ガスを低温加熱処理キルン2へ供給させ、先ず、低温加熱処理キルン2にてある程度まで予熱処理した後、次いで高温加熱処理キルン3に投入して所定温度(高温)まで加熱処理するようにしたので、一つの処理装置でありながら粉粒体を低温或いは高温のいずれの温度域でも効率よく加熱処理でき、低温加熱及び高温加熱対応の兼用の加熱処理装置とすることができる。
【0064】
また、排ガスに随伴して流出する粉粒体は、バグフィルタ26にて捕捉後、加熱処理温度に応じて低温粉粒体貯蔵ビン或いは高温加熱処理キルン3のいずれかを選択して還元可能としたので、いずれの処理温度においても高収率で回収することができる。更に、粉粒体を高温にて加熱処理する場合において、低温キルン排ガス温度センサ49にて検出される低温キルン排ガス温度値に基づいて低温加熱処理キルン2のキルン本体16の回転数を適宜調整して排ガス温度をコントロールするようにしたので、排ガスからの結露の発生を抑制しながら排ガス熱を予熱処理用に有効に利用することができる。