特許第6562783号(P6562783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562783排ガス処理装置及びハニカム構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562783
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置及びハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20190808BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20190808BHJP
   B28B 11/02 20060101ALI20190808BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20190808BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20190808BHJP
   B01D 46/00 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   B01D53/94 222
   B01D53/94ZAB
   B01J35/04 301G
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301A
   B28B11/02
   C04B38/00 303Z
   B01D39/20 D
   !B01D46/00 302
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-175148(P2015-175148)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-47404(P2017-47404A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】青木 崇志
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−024726(JP,A)
【文献】 特表2013−512377(JP,A)
【文献】 特表2006−515401(JP,A)
【文献】 特開2005−188304(JP,A)
【文献】 特開昭49−005862(JP,A)
【文献】 特表2013−540927(JP,A)
【文献】 特表2007−506893(JP,A)
【文献】 特開2008−068176(JP,A)
【文献】 特表2000−510215(JP,A)
【文献】 特表平10−511038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/94
B01D 53/20
C04B 38/00
B01J 21/00
B01D 39/20
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面である第1端面から他方の端面である第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体を収納する缶体と、を備え、
前記ハニカム構造体は、前記第1端面側の端面である内側流入端面から前記第2端面側の端面である内側流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の内側隔壁を有するハニカム基材及び前記ハニカム基材の外周に配設された外周壁を有する内側ハニカム構造部と、前記内側ハニカム構造部の外周の一部を取り囲み且つ前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面から離間した位置に配設された外側ハニカム構造部と、一部の前記セルに配設された目封止部と、を有し、
前記ハニカム構造体の前記外側ハニカム構造部は、前記第2端面側の端面である外側流入端面から前記第1端面の端面である外側流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の外側隔壁を有し、
前記缶体は、前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面側の端部と嵌り合い且つ排ガスの流入口が形成された流入管と、前記流入管に連なる胴部と、を有し、
前記胴部には、前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面と前記外側ハニカム構造部の前記外側流出端面との間の位置に前記排ガスの流出口が形成され、
前記ハニカム構造体は、前記第2端面と前記缶体の間に前記排ガスの流路となる隙間を有するとともに、前記外側ハニカム構造部の前記外側流出端面と前記缶体の間に前記排ガスの流路となる隙間を有する状態で前記缶体に収納され
前記外側ハニカム構造部のセル密度が、前記内側ハニカム構造部のセル密度よりも小さい排ガス処理装置。
【請求項2】
前記目封止部は、前記内側ハニカム構造部には配設されないか或いは前記内側ハニカム構造部の一方の端部にのみ配設され、前記外側ハニカム構造部には一方の端部にのみ配設されるか或いは両方の端部に配設される請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記目封止部が、前記外側ハニカム構造部の、前記セルのうちの所定のセルの前記外側流入端面側の端部及び残余のセルの前記外側流出端面側の端部に配設され、前記内側ハニカム構造部には配設されない請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記目封止部が、前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面側または前記内側流出端面側の端部のいずれか一方の一部に配設される請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記外側ハニカム構造部の前記外側隔壁の厚さが、前記内側ハニカム構造部の前記内側隔壁の厚さよりも厚い請求項1〜4のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記内側ハニカム構造部の外周壁が、前記内側ハニカム構造部の前記内側隔壁と一体的に成形された請求項1〜のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記缶体には、前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面と前記外側ハニカム構造部の前記外側流出端面との間の位置に、排ガスを再循環させるための経路に続くEGR用流出口が形成されている請求項1〜のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記ハニカム構造体の前記第2端面と前記缶体の間の隙間に吸音材が備えられた請求項1〜のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置及びハニカム構造体の製造方法に関する。更に詳しくは、全体の大きさを小さくすることができ、昇温し易く且つ急冷し難い排ガス処理装置及びハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、燃料の燃焼の際に生じる燃えかすの発生が問題となっている。そのため、大気環境の観点から、排ガスに含まれる有毒成分の除去と同時に、スート(煤)やアッシュ(灰)等の粒子状物質(以下、「PM」ということがある。)を大気に放出しないための対策が必要とされている。
【0003】
従来、ディーゼルエンジンから排出されるPMの除去に関する規制は世界的に強化される傾向にあり、PMを除去するための捕集フィルタ(以下、「DPF」ということがある。)として、ハニカムフィルタの使用が注目されている。これらのハニカムフィルタは、圧力損失の増加を抑えるためにフィルタ容積を大きくすることが求められる。一方で、自動車などの排気管では、エンジンや室内空間を広く取るという点が優先される。そのため、フィルタなどの搭載スペースは限られており、フィルタ容積を大きくすることが難しいという問題がある。そして、このようなハニカムフィルタを用いた種々の排ガス処理装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、昨今では、内燃機関の燃焼効率を向上させることによって、排ガスの温度は、低下する傾向にある。そのため、触媒活性に必要な熱が不足することがある。この問題に対して排ガスの熱を有効利用する排ガス処理装置が提案されている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−024726号公報
【特許文献2】特許第5368959号
【特許文献3】特表2012−529592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の排ガス処理装置は、コンパクトなデザインが可能である。しかし、この排ガス処理装置は、加工部に外周コートを塗布するため、耐熱衝撃性が低下することになる。そのため、この排ガス処理装置は、ガソリンエンジンのフィルタ用途などのように高温の排ガスが排出される場合には使用が困難であった。
【0007】
一方、ディーゼルエンジンのフィルタ用途のように比較的排ガスの温度が低い状況であっても、外周コート部を直接排ガスに曝すことは、耐久性を維持するという観点では困難である。そのため、触媒担体(ハニカムフィルタ)の外周に排ガスを流すことは困難であった。
【0008】
また、早期に触媒を活性化するという観点から、排ガス浄化用の触媒は、エンジン直下に配置されることが現在の主流である。エンジン直下は、触媒の温度を高くし易いためである。しかし、エンジンルームのスペースには、限界があり、排ガス浄化用の触媒(排ガス処理装置)は、効率的に配置することが必要である。
【0009】
ここで、従来、触媒担体(ハニカムフィルタ)を保持するためにマットを用いないメタル担体(金属製の触媒担体)は、マットを用いなくてよいというメリットを活かした配置がなされている。つまり、コンバータを小型化したデザイン(即ち、コンパクトコンバータデザイン)が開発され、自動車会社に提案及び採用されている。そして、このコンバーターデザインは、触媒担体の外周にも排ガスを流すことで、触媒担体の温度を高く保つことができるというものである。
【0010】
また、セラミック製の触媒担体(ハニカムフィルタ)でも同様なデザインを採用することは、技術的に可能である。しかし、セラミック製の触媒担体は、保持される際にマットを必要とするので、メタル担体と比較して、担体の径が小さくなってしまう。そのため、セラミック製の触媒担体は、圧力損失が増大してしまうという面でデメリットがあった。また、セラミック製の触媒担体はマットが巻かれているため、排ガスを外周に流すような構造を採用してもマットによって効果が低くなってしまう。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明の課題とするところは、全体の大きさを小さくすることができ、昇温し易く且つ急冷し難い排ガス処理装置及びハニカム構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、以下に示す、排ガス処理装置及びハニカム構造体の製造方法が提供される。
【0013】
[1] 一方の端面である第1端面から他方の端面である第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、前記ハニカム構造体を収納する缶体と、を備え、前記ハニカム構造体は、前記第1端面側の端面である内側流入端面から前記第2端面側の端面である内側流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の内側隔壁を有するハニカム基材及び前記ハニカム基材の外周に配設された外周壁を有する内側ハニカム構造部と、前記内側ハニカム構造部の外周の一部を取り囲み且つ前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面から離間した位置に配設された外側ハニカム構造部と、一部の前記セルに配設された目封止部と、を有し、前記ハニカム構造体の前記外側ハニカム構造部は、前記第2端面側の端面である外側流入端面から前記第1端面の端面である外側流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の外側隔壁を有し、前記缶体は、前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面側の端部と嵌り合い且つ排ガスの流入口が形成された流入管と、前記流入管に連なる胴部と、を有し、前記胴部には、前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面と前記外側ハニカム構造部の前記外側流出端面との間の位置に前記排ガスの流出口が形成され、前記ハニカム構造体は、前記第2端面と前記缶体の間に前記排ガスの流路となる隙間を有するとともに、前記外側ハニカム構造部の前記外側流出端面と前記缶体の間に前記排ガスの流路となる隙間を有する状態で前記缶体に収納され、前記外側ハニカム構造部のセル密度が、前記内側ハニカム構造部のセル密度よりも小さい排ガス処理装置。
【0014】
[2] 前記目封止部は、前記内側ハニカム構造部には配設されないか或いは前記内側ハニカム構造部の一方の端部にのみ配設され、前記外側ハニカム構造部には一方の端部にのみ配設されるか或いは両方の端部に配設される前記[1]に記載の排ガス処理装置。
【0015】
[3] 前記目封止部が、前記外側ハニカム構造部の、前記セルのうちの所定のセルの前記外側流入端面側の端部及び残余のセルの前記外側流出端面側の端部に配設され、前記内側ハニカム構造部には配設されない前記[2]に記載の排ガス処理装置。
【0016】
[4] 前記目封止部が、前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面側または前記内側流出端面側の端部のいずれか一方の一部に配設される前記[2]に記載の排ガス処理装置。
【0017】
[5] 前記外側ハニカム構造部の前記外側隔壁の厚さが、前記内側ハニカム構造部の前記内側隔壁の厚さよりも厚い前記[1]〜[4]のいずれかに記載の排ガス処理装置。
【0019】
] 前記内側ハニカム構造部の外周壁が、前記内側ハニカム構造部の前記内側隔壁と一体的に成形された前記[1]〜[]のいずれかに記載の排ガス処理装置。
【0020】
] 前記缶体には、前記内側ハニカム構造部の前記内側流入端面と前記外側ハニカム構造部の前記外側流出端面との間の位置に、排ガスを再循環させるための経路に続くEGR用流出口が形成されている前記[1]〜[]のいずれかに記載の排ガス処理装置。
【0021】
] 前記ハニカム構造体の前記第2端面と前記缶体の間の隙間に吸音材が備えられた前記[1]〜[]のいずれかに記載の排ガス処理装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の排ガス処理装置は、所定のハニカム構造体とこのハニカム構造体を収納する所定の缶体を備えることにより、全体の大きさを小さくすることができ。更に、本発明の排ガス処理装置は、上記構成により、昇温し易く且つ急冷し難いものである。
【0024】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、本発明の排ガス処理装置に用いることができるハニカム構造体を良好に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の排ガス処理装置の一の実施形態の断面を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の排ガス処理装置の一の実施形態において排ガスの流れを模式的に示す説明図である。
図3】本発明の排ガス処理装置の一の実施形態が備えるハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
図4A】本発明の排ガス処理装置の一の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。
図4B】本発明の排ガス処理装置の他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。
図4C】本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。
図4D】本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。
図4E】本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。
図4F】本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。
図4G】本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。
図5】比較例1〜4の排ガス処理装置を模式的に示す説明図である。
図6】比較例5の排ガス処理装置を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0027】
[1]排ガス処理装置:
本発明の排ガス処理装置の一実施形態は、図1に示す排ガス処理装置100である。排ガス処理装置100は、ハニカム構造体10と、このハニカム構造体10を収納し、排ガスの通路となる缶体20と、を備えている。そして、ハニカム構造体10は、図3に示すように、内側ハニカム構造部14と、この内側ハニカム構造部の外側に位置する外側ハニカム構造部16と、目封止部8と、を備えている。
【0028】
ハニカム構造体10は、ハニカム基材30及びこのハニカム基材30の外周に配設された外周壁5を有する内側ハニカム構造部14を有している。ハニカム基材30は、第1端面10a側の端面である内側流入端面11から第2端面10b側の端面である内側流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の内側隔壁1を有している(図3参照)。また、ハニカム構造体10は、内側ハニカム構造部14の外周の一部を取り囲み且つ内側ハニカム構造部14の内側流入端面11から離間した位置に配設された外側ハニカム構造部16を有している。目封止部8は、一部のセル2に配設されている(図3参照)。缶体20は、内側ハニカム構造部14の内側流入端面11側の端部と嵌り合い且つ排ガスの流入口21が形成された流入管23と、この流入管23に連なる胴部25と、を有している。そして、胴部25には、内側ハニカム構造部14の内側流入端面11と外側ハニカム構造部16の外側流出端面19との間の位置に排ガスの流出口27が形成されている。ハニカム構造体10は、第2端面10bと缶体20の間に排ガスの流路となる隙間(空間(以下、「折返し空間」という場合がある))41を有するとともに、外側ハニカム構造部16の外側流出端面19と缶体20の間に排ガスの流路となる隙間(空間(以下、「昇温補助空間」という場合がある))43を有する状態で缶体20に収納されている。
【0029】
このように排ガス処理装置100は、ハニカム構造体10とこのハニカム構造体10を収納する缶体20とを備えている。これにより、排ガス処理装置100は、全体の大きさを小さくすることができ、昇温し易く且つ急冷し難くなる。
【0030】
排ガス処理装置100は、図2に示すように、ハニカム構造体10の内側ハニカム構造部14の内側流入端面11側から排ガスがハニカム構造体10内に流入し、内側ハニカム構造部14の内側流出端面12から流出する。その後、折返し空間41に流れ込んだ排ガスは、外側ハニカム構造部16の外側流入端面18側から外側ハニカム構造部16内に流入し、外側流出端面19から流出する。このとき、外側ハニカム構造部16の外側流出端面19から流出した排ガスは、内側ハニカム構造部14の外周壁5と缶体20の胴部25との間の空間である昇温補助空間43に導入される。その後、上記排ガスは、外周壁5と接しながら缶体20の流出口27から排出される。なお、内側ハニカム構造部14の内側流入端面11側から流入した排ガスは、内側流出端面12から流出せずに、昇温補助空間43にそのまま流出するものもある。なお、図2において、矢印は、排ガスの流れを示している。
【0031】
つまり、外側ハニカム構造部16から排出された排ガスは、内側ハニカム構造部14の外周壁5に直接当たる。そのため、排ガスが直接当たる部分(後述する凸部14a)が、その外側から上記排ガスによって加温される。従って、排ガス処理装置100は、昇温し易く且つ急冷し難くなる。そして、上記のような経路で排ガスが缶体20内を流れるため、排ガス処理装置100全体の大きさを小さくすることができる。なお、触媒が塗布されていない状態では外周壁5に直接当たる排ガスは、ハニカム構造体10内を通過したものであるため、ハニカム構造体10に最初に流入する際の温度よりも低温になる。しかし、触媒が塗布された状態では触媒反応により発生する熱により流入した排ガスの温度より高温にすることができる。そのため、上記のようにハニカム構造体10の昇温を促進することが可能となる。また、冷却ガス(アイドル状態や坂道を下る状況において温度が下がった排ガス)がハニカム構造体10に流入する際には、ハニカム構造体10内を通過する際にこの排ガス(冷却ガス)が温められ、温められた排ガスが外周壁5に当たることによりハニカム構造体の温度低下を防止する程度の温度を有している。
【0032】
図1は、本発明の排ガス処理装置の一の実施形態の断面を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の排ガス処理装置の一の実施形態において排ガスの流れを模式的に示す説明図である。図3は、本発明の排ガス処理装置の一の実施形態が備えるハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【0033】
[1−1]ハニカム構造体:
本発明の排ガス処理装置のハニカム構造体としては、図3に示すようなハニカム構造体10を挙げることができる。ハニカム構造体10は、図3に示すように、一方の端面の中央から凸状に突出した部分(凸部14a)を有する柱状ということもできる。
【0034】
外側ハニカム構造部16は、内側ハニカム構造部14の内側流入端面11から離間した位置に配設されている。具体的には、外側ハニカム構造部16は、内側流入端面11からの位置が、ハニカム構造体のセルの延びる方向の全長の10〜60%であることが好ましく、20〜50%であることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、昇温性能を向上させつつハニカム構造体を缶体に保持できる。別言すれば、ハニカム構造体は、上記凸部の、セルの延びる方向の長さが、上記範囲であることが好ましい。
【0035】
内側流入端面11の面積は、内側流入端面11と外側流出端面19との面積の合計の5〜50%であることが好ましく、10〜40%であることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、フィルタとして機能する部分の面積を確保できる。また、排ガス処理装置の圧力損失を低くできる。
【0036】
隔壁(内側隔壁、外側隔壁)及び外周壁は、それぞれの平均細孔径が5〜30μmであることが好ましく、9〜25μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、触媒やPMによる細孔の閉塞を抑制することができる。また、圧力損失を低く抑えることができる。この平均細孔径は、水銀ポロシメーターによって測定した値である。
【0037】
隔壁(内側隔壁、外側隔壁)及び外周壁は、それぞれの気孔率が35〜70%であることが好ましく、40〜65%であることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、排ガスが隔壁を透過する際の透過抵抗を低くしつつキャニング可能なアイソスタティック強度を確保できる。この気孔率は、水銀ポロシメーターによって測定した値である。
【0038】
隔壁(内側隔壁、外側隔壁)の厚さは、特に限定されるものではない。この隔壁は、例えば、64〜305μmであることが好ましい。隔壁の厚さが64μm未満であると、アイソスタティック強度が著しく低下しキャニング中にハニカム構造体が破壊されるおそれがある。一方、305μm超であると、圧力損失の大幅な増加により燃費が悪くなることや出力が十分に得られないことなどの影響が発生するおそれがある。そして、内側隔壁と外側隔壁の厚さは、異なっていてもよい。外側ハニカム構造部の外側隔壁の厚さは、内側ハニカム構造部の内側隔壁の厚さよりも厚いことが好ましい。具体的には、内側隔壁の厚さに対する外側隔壁の厚さの比の値(外側隔壁の厚さ/内側隔壁の厚さ)は、1.1〜5.0であることが好ましく、1.2〜3.5であることが更に好ましい。このようにすることで、内側ハニカム構造部の熱容量を小さくし触媒の昇温性能を上げることができ、更に、外側ハニカム構造部では隔壁が厚くなることにより捕集性能を向上させることができる。一方、外側隔壁の厚さ/内側隔壁の厚さの値が5.0超であると、ハニカム構造体を押出成形する際に外側隔壁と内側隔壁の押し出し速度に大きく差が生じることになる。そのため、外側隔壁と内側隔壁の境界部分に隔壁の変形が発生し、アイソスタティック強度を低下させるおそれがある。
【0039】
外側隔壁の厚さは、例えば、110〜381μmであることが好ましく、152〜305μmであることが更に好ましい。
【0040】
外周壁の厚さは、特に限定されるものではない。例えば、0.3〜3mmであることが好ましい。外周壁の厚さが0.3mm未満であると、外周壁に小穴や欠けが発生し易くなり、触媒を塗布する際に外周壁から触媒が漏れるおそれがある。一方、3mm超であると、ハニカム構造体を押出成形する際に外周壁を形成する坏土の流れがその他の部分に比べて速くなる。そのため、隣接する隔壁(内側隔壁、外側隔壁)との流れに差異が生じ、隔壁が変形してアイソスタティック強度が著しく低下するおそれがある。
【0041】
内側ハニカム構造部の外周壁は、内側ハニカム構造部の内側隔壁と一体的に成形されていることが好ましい。このようにすることで、外周壁と内側隔壁との熱膨張の差を抑制することができ、耐熱衝撃性に優れた構造にすることができる。ここで、外周壁が「内側隔壁と一体的に成形され」とは、外周壁と内側隔壁とが接合などの方法により互いに固定されているのではなく、例えば、製造段階における押出成形時に一体に成形されることを意味する。
【0042】
側ハニカム構造部のセル密度は、内側ハニカム構造部のセル密度よりも小さい。具体的には、内側ハニカム構造部のセル密度は、46.5〜186個/cmであることが好ましく、外側ハニカム構造部のセル密度は7.7〜46.5個/cmであることが好ましい。このようにすることで、内側ハニカム構造部で排ガスの浄化性能を向上するための幾何学的表面積を確保することができ、一方、外側ハニカム構造部では圧力損失を低く抑えられる。
【0043】
ハニカム構造体の材質としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れることより、炭化珪素、コージェライト、チタン酸アルミニウム、珪素−炭化珪素系複合材料、炭化珪素−コージェライト系複合材料、ムライト、アルミナ、窒化珪素などを挙げることができる。炭化珪素、コージェライト、チタン酸アルミニウム、珪素−炭化珪素系複合材料、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0044】
また、ハニカム構造体は、複数のハニカムセグメントからなる接合体(ハニカムセグメント接合体)であってもよい。即ち、ハニカム構造体は、複数のハニカムセグメントの集合体と、これらのハニカムセグメントを互いに接合する接合材からなる接合部とを備えるものであってもよい。
【0045】
目封止部は、内側ハニカム構造部及び前記外側ハニカム構造部の少なくとも一方における前記セルの一部に配設されたものである。これらの目封止部の材質は、上述したハニカム構造体と同様のものとすることができる。また、目封止部の深さは、適宜決定することができる。
【0046】
目封止部の配置パターンは、以下のような(1)〜(7)のパターンを採用することが好ましい。
(1)図4Aに示すように、目封止部8が、外側ハニカム構造部16の、セル2のうちの所定のセルの外側流入端面18側の端部及び残余のセルの外側流出端面19側の端部に配設され、内側ハニカム構造部14には配設されない。
(2)図4Bに示すように、目封止部8が、外側ハニカム構造部16のセルのうちの所定のセルの外側流入端面18側の端部及び残余のセルの外側流出端面19側の端部に配設され、内側ハニカム構造部14においては、所定のセルの内側流出端面12側の端部にのみ配設されている。内側ハニカム構造部14においては、残余のセルの内側流入端面11側の端部に配設されない。
(3)図4Cに示すように、目封止部8が、内側ハニカム構造部14においては、所定のセルの内側流出端面12側の端部にのみ配設され、外側ハニカム構造部16においては、所定のセルの外側流入端面18側の端部にのみ配設されている。目封止部8が、内側ハニカム構造部14においては、残余のセルの内側流入端面11側の端部に配設されず、外側ハニカム構造部16においては、残余のセルの外側流出端面19側の端部に配設されない。
(4)図4Dに示すように、目封止部8が、内側ハニカム構造部14においては、所定のセルの内側流出端面12側の端部にのみ配設され、外側ハニカム構造部16においては、所定のセルの外側流出端面19側の端部にのみ配設されている。目封止部8が、内側ハニカム構造部14においては、残余のセルの内側流入端面11側の端部に配設されず、外側ハニカム構造部16においては、残余のセルの外側流入端面18側の端部に配設されない。
(5)図4Eに示すように、目封止部8が、外側ハニカム構造部16においては、所定のセルの外側流出端面19側の端部にのみ配設され、内側ハニカム構造部14には配設されない。外側ハニカム構造部16においては、残余のセルの外側流入端面18側の端部に配設されない。
(6)図4Fに示すように、目封止部8が、内側ハニカム構造部14においては、所定のセルの内側流入端面11側の端部にのみ配設され、外側ハニカム構造部16においては、所定のセルの外側流入端面18側の端部にのみ配設されている。目封止部8が、内側ハニカム構造部14においては、残余のセルの内側流出端面12側の端部に配設されず、外側ハニカム構造部16においては、残余のセルの外側流出端面19側の端部に配設されない。
(7)図4Gに示すように、目封止部8が、内側ハニカム構造部14においては、所定のセルの内側流入端面11側の端部にのみ配設され、外側ハニカム構造部16においては、所定のセルの外側流出端面19側の端部にのみ配設されている。目封止部8が、内側ハニカム構造部14においては、残余のセルの内側流出端面12側の端部に配設されず、外側ハニカム構造部16においては、残余のセルの外側流入端面18側の端部に配設されない。
【0047】
図4Aは、本発明の排ガス処理装置の一の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。図4Bは、本発明の排ガス処理装置の他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。図4Cは、本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。図4Dは、本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。図4Eは、本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。図4Fは、本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。図4Gは、本発明の排ガス処理装置の更に他の実施形態が備えるハニカム構造体における目封止部の配置パターンを説明する説明図である。
【0048】
[1−2]缶体:
缶体20は、上述したように、内側ハニカム構造部14の内側流入端面11側の端部と嵌り合い且つ排ガスの流入口21が形成された流入管23と、この流入管23に連なる胴部25と、を有している。そして、胴部25には、内側ハニカム構造部14の内側流入端面11と外側ハニカム構造部16の外側流出端面19との間の位置に排ガスの流出口27が形成されている。このような缶体20によれば、排ガス処理装置100に流入した排ガスは、図2における矢印で示すように流れる。つまり、外側ハニカム構造部16から排出された排ガスは、内側ハニカム構造部14の外周壁5に直接当たる。そのため、上記凸部14aが、その外側から上記排ガスによって加温される。従って、排ガス処理装置100は、昇温し易く且つ急冷し難くなる。そして、上記のような経路で排ガスが缶体20内を流れるため、排ガス処理装置100全体の大きさを小さくすることができる。
【0049】
本発明の排ガス処理装置では、缶体の胴部の上記位置に流出口が形成されることで、ハニカム構造体内を通過した排ガスが、内側ハニカム構造部の上記凸部の外周に直接当たるように流れる。そのため、本発明の排ガス処理装置は、排ガスにより保温され、ハニカム構造体を昇温し易く且つハニカム構造体が急冷し難くなる。
【0050】
折返し空間41における幅(即ち、ハニカム構造体10と缶体20の内表面との間の距離)は、20〜150mmであることが好ましく、30〜100mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、排ガスの流路を確保して圧力損失の上昇を抑えることができる。
【0051】
缶体20には、内側ハニカム構造部14の内側流入端面11と外側ハニカム構造部16の外側流出端面19との間の位置に、排ガスを再循環させるための経路に続くEGR用流出口28が形成されていることが好ましい。このように、缶体20が排ガスを再循環させるための経路に連結されていると、ススが捕集された排ガスをEGRに供給できるためEGRクーラー等でのススの詰まりを抑制することができる。更に、外周壁5から排ガスの一部が、内側ハニカム構造部14の内側流入端面11と外側ハニカム構造部16の外側流出端面19との間に供給されることにより、EGR用流出口28における排ガスの圧力を比較的高く保つことができる。その結果、EGRに供給される排ガスの供給量を確保できる。なお、EGRは、Exhaust Gas Recirculationの略称である。
【0052】
缶体20の材質は、従来公知の排ガス処理装置に採用する缶体と同じ材質とすることができる。
【0053】
[1−3]吸音材:
本発明の排ガス処理装置は、ハニカム構造体の第2端面と缶体の間の隙間に吸音材が備えられていることが好ましい。吸音材は、ガラス繊維等によって構成された耐熱性を有したマットである。このように吸音材を上記のように備えることにより、マフラーと同じ消音効果が得られる。
【0054】
吸音材としては、例えば、グラスウール、金属繊維などを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性を有するという観点から、グラスウールが好ましい。
【0055】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
ハニカム構造体の製造方法は、ハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程と、作製したハニカム成形体に目封止部を形成する目封止配設工程と、作製した目封止ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得る焼成工程と、仕切壁の一部を露出させて、ハニカム構造体を得るハニカム構造体作製工程と、を有する。ハニカム成形体作製工程におけるハニカム成形体は、一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、セルの延びる方向に直交する断面における外側部分と内側部分とを仕切る仕切壁とを備えるものである。ハニカム構造体作製工程においては、焼成工程で得られたハニカム焼成体の外側部分の一部を、一方の端面から研削して仕切壁の一部を露出させる。
【0056】
このような製造方法であると、本発明の排ガス処理装置に用いることができるハニカム構造体を良好に作製することができる。具体的には、本製造方法は、ハニカム成形体作製工程において仕切壁を有するハニカム成形体を作製し、このハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得た後、仕切壁(外周壁)が露出するようにハニカム焼成体を研削する。このようにすることで、得られるハニカム構造体の内側流入端面側の端部の外周に外周壁(仕切壁)が配置されることになる。即ち、ハニカム成形体作製工程において仕切壁を設けない場合、ハニカム構造体は、研削された隔壁が露出することになる。そして、この隔壁は、一部が剥がれ落ちてしまう。
【0057】
ハニカム構造体は、外周壁(仕切壁)を有することにより、隔壁の一部が剥がれ落ちてしまうことを防止できる。更に、上記製造方法は、ハニカム構造体の内側流入端面側の端部(内側ハニカム構造部の凸部)を削り出し、外周壁を有する内側流入端面側の端部(内側ハニカム構造部の凸部)を簡単に作製することができる。
【0058】
[2−1]ハニカム成形体作製工程:
本工程では、具体的には、まず、成形原料を混練して坏土とする。成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであることが好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
【0059】
セラミック原料としては、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライト化原料が好ましい。
【0060】
使用するセラミック原料の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材の粒子径及び配合量を調整することにより、所望の気孔率、平均細孔径のハニカム構造体を得ることができる。
【0061】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0062】
次に、得られた坏土を押出成形してハニカム成形体を得る。このとき、隔壁と仕切壁とを有するハニカム成形体が得られるように、所定の口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0063】
仕切壁の厚さは、焼成後に所望の厚さの外周壁が得られる厚さであれば特に制限はない。仕切壁の厚さは、例えば、1〜3mmとすることができる。
【0064】
[2−2]目封止配設工程:
次に、得られたハニカム焼成体のハニカム構造部のセルの開口部を、目封止材によって目封止する。セルの開口部を目封止する方法としては、セルの開口部に目封止材を充填する方法を挙げることができる。目封止材を充填する方法としては、従来公知の目封止ハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができる。目封止材を形成するためのセラミック原料は、従来公知のハニカム構造体の製造方法において用いられるセラミック原料を用いることができるが、ハニカム成形体の作製に使用したものと同じセラミック原料を用いることが好ましい。なお、目封止材によって形成される目封止部の気孔率や細孔径などを調節するために、セラミック原料粉末の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材粉末の粒子径及び配合量について適宜変更してもよい。
【0065】
セルの開口部に目封止材を充填した後、目封止材を乾燥、又は焼成することによって、本実施形態のハニカム構造体を製造することができる。セルの開口部に目封止材を充填する工程は、ハニカム成形体を焼成する前に行ってもよい。本実施形態のハニカム構造体を製造する方法については、これまでに説明した方法に限定されることはない。
【0066】
[2−3]焼成工程:
次に、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得る(焼成工程)。焼成温度は、ハニカム成形体の材質よって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、最高温度での持続時間として、4〜6時間程度とすることが好ましい。
【0067】
ハニカム成形体を焼成する前に乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
【0068】
[2−4]ハニカム構造体作製工程:
次に、得られたハニカム焼成体の外側部分の一部を、一方の端面から研削して、仕切壁の一部を露出させ、隔壁と仕切壁(外周壁)とを備えるハニカム構造体を作製する。ハニカム焼成体の研削は、ハニカム成形体を乾燥させた後であり、焼成を行う前に行ってもよい。
【0069】
[3]排ガス処理装置の製造方法:
本実施形態の排ガス処理装置は、製造したハニカム構造体を、上記缶体に収納して作製することができる。
【0070】
このようにして作製した排ガス処理装置は、図2に示すように、排ガスが流れることになる。即ち、排ガス処理装置100は、ハニカム構造体10の内側ハニカム構造部14の内側流入端面11側から排ガスがハニカム構造体10内に流入し、内側ハニカム構造部14の内側流出端面12から流出する。その後、折返し空間41に流れ込んだ排ガスは、外側ハニカム構造部16の外側流入端面18側から外側ハニカム構造部16内に流入し、外側流出端面19から流出する。このとき、外側ハニカム構造部16の外側流出端面19から流出した排ガスは、内側ハニカム構造部14の外周壁5と缶体20の胴部25との間の空間(昇温補助空間)43に導入される。その後、上記排ガスは、この外周壁5と接しながら缶体20の流出口27から排出される。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
参考例1
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を13質量部、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径1〜10μmのコークスを使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。造孔材の粒子径と量をコントロールすることにより、隔壁の細孔径及び気孔率をコントロールした。
【0073】
次に、隔壁と仕切壁とを有するハニカム成形体が得られるように、所定の口金を用いて坏土を押出成形し、円柱状のハニカム成形体を得た。
【0074】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0075】
次に、ハニカム成形体の各セルの一方の開口部に、目封止用スラリーを充填して目封止部を形成した。
【0076】
目封止部の配置パターンは、図4Aに示すものを採用した。即ち、目封止ハニカム成形体は、目封止部が、外側ハニカム構造部の、セルのうちの所定のセルの外側流入端面側の端部及び残余のセルの外側流出端面側の端部に配設され、内側ハニカム構造部には配設されないものとした。
【0077】
目封止部の形成方法としては、まず、ハニカム成形体の外側ハニカム構造部に相当する部分の一方の端面と他方の端面にシートを貼り付け、このシートの、目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に穴を開けた。次に、このシートを貼り付けたままの状態で、目封止用スラリーをハニカム成形体の上記端面に塗布してハニカム成形体内に押し込み、目封止用スラリーをハニカム成形体の所定のセルに充填した。目封止用スラリーとしては、目封止部の形成材料をスラリー化したものを用いた。
【0078】
その後、目封止ハニカム成形体を熱風乾燥機で乾燥し、更に、1410〜1440℃で、5時間、焼成してハニカム焼成体を得た。
【0079】
次に、ハニカム焼成体の外側部分の一部を、一方の端面から研削して仕切壁の一部を露出させて、ハニカム構造体を得た。
【0080】
ハニカム構造体は、セルの延びる方向における長さが140mm(表1中、「システム全長」と示す)であった。外側ハニカム構造部の、セルの延びる方向の長さは、100mmであり、内側ハニカム構造部の凸部の、セルの延びる方向の長さは、40mmであった。また、ハニカム構造体は、内側ハニカム構造部及び外側ハニカム構造部が円柱状であり、内側ハニカム構造部の直径が80mmであり、内側ハニカム構造部と外側ハニカム構造部との合計(第2端面)の直径が144mmであった。
【0081】
また、ハニカム構造体は、内側ハニカム構造部のセル密度が46.5個/cmであった。つまり、内側ハニカム構造部の凸部のセル密度と、凸部以外の部分(外側ハニカム構造部に覆われている部分)のセル密度とが同じであった。外側ハニカム構造部のセル密度が46.5個/cmであった。外側隔壁(外側ハニカム構造部の隔壁)の厚さは、0.21mmであり、内側隔壁(内側ハニカム構造部)の厚さは、0.21mmであった。内側ハニカム構造部の外周壁は、内側ハニカム構造部の内側隔壁と一体的に成形されていた。なお、内側隔壁の厚さは、表1において、「凸部/第一ハニカム構造体」の欄の「隔壁厚さ」と「内側ハニカム構造部(凸部を除く)/第二ハニカム構造体」の欄の「隔壁厚さ」とで示される。
【0082】
次に、得られたハニカム構造体を、缶体の内部に収容した。ハニカム構造体と缶体との間には、セラミックマットからなる緩衝部材を配設した。缶体としては、内側ハニカム構造部の内側流入端面側の端部と嵌り合い且つ排ガスの流入口が形成された流入管と、この流入管に連なる胴部と、を有しているものを用いた。そして、缶体の胴部には、内側ハニカム構造部の内側流入端面と外側ハニカム構造部の外側流出端面との間の位置に排ガスの流出口が形成されていた。更に、ハニカム構造体は、第2端面と缶体の間に排ガスの流路となる空間(折返し空間)を有するとともに、外側ハニカム構造部の外側流出端面と缶体の間に排ガスの流路となる空間(昇温補助空間)を有する状態で缶体に収納されていた。また、缶体には、EGR用流出口が形成されていた。また、缶体は、ステンレス製のものを用いた。このようにして、排ガス処理装置を得た。
【0083】
次に、得られた排ガス処理装置について、以下に示す方法で、「システム全長」、「浄化率」及び「PM捕集」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[システム全長]
排ガスの流入端面から、ハニカム構造体のセルの延びる方向における最も遠い位置までをシステム全長とする。このとき、システム全長が200mm以下の場合は、排ガス処理装置が大きく「合格」とした。システム全長が200mm超の場合は、排ガス処理装置が大きく「不合格」とした。
【0085】
[浄化率]
欧州EURO6 規制値と比較して、全ての成分(一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物)のエミッションが規制値を下回った場合を合格「B」とし、規制値を下回らなかった場合を不合格「C」とする。更に、B評価のもののうち、一酸化炭素が規制値の30%減の場合を「A」とし、50%減の場合を「AA」とする。
【0086】
[PM捕集]
車輌から発生するPM個数を1.0×1012個/kmとしたとき、欧州EURO6 規制値6.0×1011個/kmを基準として、排ガス処理装置で捕集された排ガス中のPM個数が上記基準の40%未満である場合を「D」とした。そして、排ガス処理装置で捕集された排ガス中のPM個数が上記基準の40%以上で60%未満である場合を「C」とした。そして、排ガス処理装置で捕集された排ガス中のPM個数が上記基準の60%以上で80%未満である場合を「B」とした。そして、排ガス処理装置で捕集された排ガス中のPM個数が上記基準の80%以上である場合を「A」とした。
【0087】
【表1】
【0088】
表1中、「凸部/第一ハニカム構造体」の欄は、実施例及び参考例においては内側ハニカム構造部の凸部における「隔壁厚さ」、「セル密度」、「目封止部」の有無、長さを示す。また、比較例においては、図5または図6に示す排ガス処理装置200,201における第一ハニカム構造体の「隔壁厚さ」、「セル密度」、「目封止部」の有無、長さを示す。
【0089】
なお、図5または図6に示す排ガス処理装置200,201は、それぞれ、排ガスの流入口121及び流出口127が形成された缶体120と、この缶体120に収納された3つのハニカム構造体からなるフィルタ群50とを備えていた。フィルタ群50は、缶体120における排ガスの流入口121側から順に配置された、第一ハニカム構造体51、第二ハニカム構造体52、及び第三ハニカム構造体53からなる。そして、これらのハニカム構造体51,52,53は、いずれも円柱状であり、第一ハニカム構造体51の直径は、80mmであった。また、比較例5においては、第三ハニカム構造体53の直径が120mmであった。比較例1〜4においては、図5に示す排ガス処理装置200を用い、比較例5においては、図6に示す排ガス処理装置201を用いた。なお、図5図6中、符号Xは、排ガス処理装置の長さ(システム全長)を示す。
【0090】
また、表1中、「内側ハニカム構造部(凸部を除く)/第二ハニカム構造体」の欄は、実施例及び参考例においては内側ハニカム構造部(凸部を除く)における「隔壁厚さ」、「セル密度」、「目封止部」の有無、長さを示す。また、比較例においては、図5または図6に示す排ガス処理装置200,201における第二ハニカム構造体の「隔壁厚さ」、「セル密度」、「目封止部」の有無、長さを示す。
【0091】
また、表1中、「外側ハニカム構造部/第三ハニカム構造体」の欄は、実施例及び参考例においては外側ハニカム構造部における「隔壁厚さ」、「セル密度」、「目封止部」の有無、長さを示す。また、比較例においては、図5または図6に示す排ガス処理装置200,201における第三ハニカム構造体の「隔壁厚さ」、「セル密度」、「目封止部」の有無、長さを示す。
【0092】
参考例2〜8、実施例9、比較例1〜5)
表1に示すように変更したこと以外は、参考例1と同様にして、「システム全長」、「浄化率」及び「PM捕集」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
表1から、参考例1〜8、実施例9の排ガス処理装置は、比較例1〜5の排ガス処理装置に比べて、全体の大きさを小さくすることができ、昇温し易く且つ急冷し難いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の排ガス処理装置は、自動車等から排出される排ガスを浄化するフィルタとして採用することができる。また、本発明のハニカム構造体の製造方法は、本発明の排ガス処理装置のハニカム構造体を良好に作製することができる。
【符号の説明】
【0095】
1:内側隔壁、2:セル、3:外側隔壁、5:外周壁、8:目封止部、10:ハニカム構造体、10a:第1端面、10b:第2端面、11:内側流入端面、12:内側流出端面、14:内側ハニカム構造部、14a:凸部、16:外側ハニカム構造部、18:外側流入端面、19:外側流出端面、20,120:缶体、21:流入口、23:流入管、25:胴部、27:流出口、28:EGR用流出口、30:ハニカム基材、41:折返し空間、43:昇温補助空間、50:フィルタ群、51:第一ハニカム構造体、52:第二ハニカム構造体、53:第三ハニカム構造体、100,200,201:排ガス処理装置、X:システム全長。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6