特許第6562787号(P6562787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562787
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】徘徊検出システム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20190808BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61G12/00 Z
   A61B5/00 102C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-177875(P2015-177875)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-51438(P2017-51438A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】河合 大育
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−271819(JP,A)
【文献】 特開2001−236580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A61B 5/00 − 5/01
G08B 19/00 − 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設利用者が保持する無線発信機と、
施設利用者の移動が許容されている許容エリアと徘徊とみなす外部エリアとの境界地点における上記外部エリア側に設置された第1の無線受信機と、
上記許容エリア内で上記境界地点の近傍にあるスタッフ業務室の出入口付近に設置された第2の無線受信機と、
上記第1の無線受信機および上記第2の無線受信機において上記無線発信機からの発信情報が受信された場合に通知される情報に基づいて、上記施設利用者の徘徊を検出する管理装置とを備え、
上記管理装置は、
上記第2の無線受信機で上記発信情報が受信されてから上記第1の無線受信機で上記発信情報が受信されるまでの時間をカウントする計時部と、
上記第2の無線受信機で上記発信情報が受信された後、所定の時間以内に上記第1の無線受信機で上記発信情報が受信された場合に、上記施設利用者が上記外部エリアを徘徊していると判定する徘徊判定部とを備えたことを特徴とする徘徊検出システム。
【請求項2】
上記徘徊判定部は、上記第2の無線受信機で上記発信情報が受信されることなく、上記第1の無線受信機で上記発信情報が受信された場合に、上記施設利用者が上記外部エリアを徘徊していると判定することを特徴とする請求項1に記載の徘徊検出システム。
【請求項3】
上記徘徊判定部は、上記第2の無線受信機で上記発信情報が受信された後、所定の時間の経過後に上記第1の無線受信機で上記発信情報が受信された場合に、上記施設利用者が正当な理由で上記外部エリアに移動したと判定して移動許可フラグを設定し、その後、上記第1の無線受信機で上記発信情報が受信された場合に、上記移動許可フラグの設定を解除し、上記移動許可フラグが設定されているときに上記第1の無線受信機で上記発信情報が受信されたとしても、上記施設利用者が徘徊しているとは判定しないことを特徴とする請求項1または2に記載の徘徊検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徘徊検出システムに関し、特に、介護施設や病院等の施設内で、認知症等を患って徘徊する施設利用者の所定エリア外への移動を検出するシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、介護施設や病院等の施設内で徘徊する施設利用者を検出するシステムや、徘徊する施設利用者の位置を追跡するシステムなどが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、特定の区域で徘徊者の検出を行う技術が開示されている。すなわち、特許文献1に記載の徘徊者離院防止システムでは、タグIDを発信するRFIDタグを施設利用者に保持させるとともに、RFIDタグが発信するタグIDを受信する無線受信機を特定の区域に配置する。そして、無線受信機が受信したタグIDと予め登録されているタグIDとを比較し、これらのタグIDが一致した場合に異常と判断し、管理者に通知する。無線受信機の受信区域を外出経路に段階的に複数設けることにより、受信区域ごとに異常を判断して通知する。
【0004】
特許文献2には、複数箇所に設置した受信機で徘徊者の検出を行う技術が開示されている。すなわち、特許文献2に記載の徘徊者位置表示システムでは、病院内の所定の位置に配置した複数の受信機により、病室を離れて徘徊する患者が持つICタグの現在位置を受信し、現在位置を受信した受信機の位置情報によりICタグの移動の軌跡を取得する。このとき、同じ受信機でICタグの現在位置を再び受信した場合には、再び受信したところまでの軌跡を除いて移動の軌跡を表示部に表示することにより、簡潔な表示を行うことができるようにしている。
【0005】
特許文献3には、施設利用者の通過の時刻や、通過した場所に応じて、徘徊者に対して適切な音声報知を行う徘徊抑制システムが開示されている。すなわち、特許文献3に記載の徘徊抑制システムでは、通過検知手段(リーダーおよびRFIDタグ)が施設利用者の通過を認識した時刻が所定の時間帯内であり、かつ通過回数があらかじめ設定された奇数回または偶数回のいずれかの場合に、音声報知手段が施設利用者へ音声による報知を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−215961号公報
【特許文献2】特開2008−59174号公報
【特許文献3】特開2015−75974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
認知症等を患った施設利用者が施設の外に出てしまうことは回避しなければならないが、施設内においてある程度移動することは、リハビリ等の観点から許容されることがある。例えば、管轄診療科の入院病棟内での移動は許容する一方、入院病棟から外に出ることは徘徊とするといった運用を行っている病院が少なくない。これに対して、特許文献3に記載の技術は、施設利用者が同じ場所を行ったり来たりしている場合に徘徊とみなして音声による報知を行うしくみである。そのため、一定のエリア内での移動を許容するといった運用をしている施設には適用することができない。
【0008】
一方、特許文献1,2に記載の技術では、所定の場所に設置された無線受信機において、施設利用者が保持するタグから発信される情報を受信した場合に、施設利用者が徘徊していると判断している。このため、徘徊とみなすか否かの境界地点に無線受信機を設置すれば、上記の運用にも対応可能である。
【0009】
特に、特許文献1に記載のシステムでは、病棟と外部との仕切りとなる場所(例えば、エレベータホール、入院病棟と外来との区切り箇所、病棟や病院または施設の出入口等)に無線受信機を設置し、その設置場所に応じてレベルを設定しておく。そして、入院患者が病棟内を移動している分については何も管理しないようにする一方で、無線受信機でRFIDタグの情報を受信すると、受信場所に応じて予め設定されたレベルの異常(徘徊の可能性有)と判断し、管理端末に異常情報を出力するようにしている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術では、例えば施設のスタッフと同行している等の正当な理由により許容エリア外へ移動する場合であっても、タグから発信された情報が許容エリアの境界地点にある無線受信機で受信され、施設利用者が徘徊しているとみなされてしまう。例えば、特許文献1の場合、正当な理由があって病棟から外に出る場合にも、タグから発信された情報が病棟のエレベータホールの無線受信機で受信され、徘徊の可能性有りと判断されて管理端末に異常情報が出力されてしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、介護施設や病院等の施設内で、正当な理由があって施設利用者が所定エリア外へ移動することは許容する一方で、正当な理由なく施設利用者が所定エリア外へ移動するときには徘徊と判断するといった適切な管理を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明では、施設利用者の移動が許容されている許容エリアと徘徊とみなす外部エリアとの境界地点の外部エリア側に第1の無線受信機を設置するとともに、許容エリア内で境界地点の近傍にあるスタッフ業務室の出入口付近に第2の無線受信機を設置する。そして、施設利用者が保持する無線発信機からの発信情報が第2の無線受信機で受信された後、所定の時間以内に第1の無線受信機で発信情報が受信された場合に、施設利用者が外部エリアを徘徊していると判定するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、スタッフ業務室の出入口付近に設置された第2の無線受信機で発信情報を受信した後、所定の時間の経過後に第1の無線受信機で発信情報が受信された場合には、施設利用者がスタッフ業務室に立ち寄った後、スタッフと同行して、またはスタッフからの指示により外部エリアに出たと推定されるため、許容エリアと外部エリアとの境界地点に設置された第1の無線受信機で発信情報が受信されても、施設利用者が外部エリアを徘徊しているとは判定されない。一方、第2の無線受信機で発信情報を受信した後、所定の時間以内に第1の無線受信機で発信情報が受信された場合には、施設利用者がスタッフ業務室に立ち寄らずにそのまま境界地点を通過したと推定されるため、施設利用者が外部エリアを徘徊していると判定される。これにより、正当な理由があって施設利用者が所定エリア外へ移動することは許容する一方で、正当な理由なく施設利用者が所定エリア外へ移動するときには徘徊と判断するといった適切な管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る徘徊検出システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る記憶部に記憶されている検出時刻情報の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る管理装置による処理の手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る徘徊検出システムによる徘徊検出の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
〔徘徊検出システム1の構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る徘徊検出システム1の構成例を示す図である。本実施形態の徘徊検出システム1は、例えば病院、介護施設等、施設利用者の徘徊の検出を行うべき施設に設置される。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る徘徊検出システム1は、管理装置10、無線発信機20、第1の無線受信機31および第2の無線受信機32を備えて構成されている。無線発信機20と、第1の無線受信機31,第2の無線受信機32との間は、無線で情報の授受が行われる。管理装置10と、第1の無線受信機31,第2の無線受信機32との間は、有線で接続されている。
【0018】
無線発信機20は、徘徊の検出対象とされる施設利用者が保持する。無線発信機20は、少なくとも無線発信機20を保持する施設利用者の施設利用者IDを記憶している。無線発信機20としては、例えばRFID(Radio Frequency Identifier)タグ等が用いられる。なお、無線発信機20は、施設利用者IDの代わりにタグIDを記憶するようにしてもよい。但し、この場合は、タグIDと施設利用者IDとの関連付け情報を管理装置10が記憶する必要がある。
【0019】
第1の無線受信機31は、施設利用者の移動が許容されている許容エリアと徘徊とみなす外部エリアとの境界地点(例えば、エレベータホール、階段、玄関等)の外部エリア側に設置されている。第1の無線受信機31は、自身の無線通信エリア内に進入した無線発信機20を検出し、当該無線発信機20から発信される施設利用者ID(発信情報)を受信する。そして、第1の無線受信機31は、少なくとも自身の識別情報と、受信した施設利用者IDとを含む情報を、管理装置10へ通知する。
【0020】
第2の無線受信機32は、許容エリア内で境界地点の近傍(境界地点から短時間で歩いて行ける距離の範囲内。特に、後述する所定の時間よりも短い時間で歩いて行ける距離の範囲内)にあるスタッフ業務室の出入口付近に設置されている。スタッフ業務室とは、例えば、処置室、検査室、診察室、ナースステーション等である。第2の無線受信機32は、自身の無線通信エリア内に進入した無線発信機20を検出し、当該無線発信機20から発信される施設利用者ID(発信情報)を受信する。そして、第2の無線受信機32は、少なくとも自身の識別情報と、受信した施設利用者IDとを含む情報を、管理装置10へ通知する。
【0021】
管理装置10は、第1の無線受信機31および第2の無線受信機32において無線発信機20からの発信情報が受信された場合に通知される情報(以下、「通知情報」と示す)に基づいて、施設利用者の徘徊を検出する。また、管理装置10は、施設利用者の徘徊を検出すると、当該施設利用者が徘徊していることを報知する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る管理装置10は、記憶部11、ディスプレイ12、スピーカ13を備えている。また、本実施形態に係る管理装置10は、その機能構成として、受信部14、計時部15、徘徊判定部16および報知部17を備えている。
【0023】
なお、上記各機能ブロック14〜17は、ハードウェア構成、DSP、ソフトウェアの何れによっても実現することが可能である。例えばソフトウェアによって実現する場合、上記各機能ブロック14〜17は、実際にはコンピュータのCPUあるいはMPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAM、ROM、ハードディスク、半導体メモリ等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。
【0024】
受信部14は、第1の無線受信機31において無線発信機20からの発信情報が受信された場合に、当該受信したことを通知する通知情報を第1の無線受信機31から受信する。同様に、受信部14は、第2の無線受信機32において無線発信機20からの発信情報が受信された場合に、当該受信したことを通知する通知情報を第2の無線受信機32から受信する。受信部14が受信する通知情報には、少なくとも、第1の無線受信機31または第2の無線受信機32の識別情報と、無線発信機20から受信した施設利用者IDとが含まれている。
【0025】
計時部15は、第2の無線受信機32で発信情報が受信されてから第1の無線受信機31で発信情報が受信されるまでの時間をカウントする。例えば、計時部15は、初めに第2の無線受信機32から通知情報を受信した場合、その通知情報に含まれている施設利用者IDと、当該通知情報の受信時刻とを対応付けて、検出時刻情報として記憶部11に記憶させる。その後、計時部15は、記憶部11に記憶させた施設利用者IDと同じ施設利用者IDを含んでいる通知情報を第1の無線受信機31から受信した場合、記憶部11に記憶させた第2の無線受信機32からの通知情報の受信時刻から、第1の無線受信機31からの通知情報の受信時刻までの経過時間を算出する。
【0026】
徘徊判定部16は、第2の無線受信機32で発信情報が受信された後、所定の時間(例えば、60秒)以内に第1の無線受信機31で発信情報が受信された場合に、施設利用者が外部エリアを徘徊していると判定する。この場合、施設利用者が、スタッフ業務室に立ち寄らずにそのまま境界地点を通過したと推定され、正当な理由なく外部エリアを移動していると考えられるからである。
【0027】
一方、徘徊判定部16は、第2の無線受信機32で発信情報が受信された後、所定の時間以降に第1の無線受信機31で発信情報が受信された場合に、施設利用者が外部エリアを徘徊していないと判定する。この場合、施設利用者が、スタッフ業務室に立ち寄った後に、スタッフと同行して、またはスタッフ業務室にて指示された場所へ移動するために外部エリアを移動していると考えられるからである。
【0028】
また、徘徊判定部16は、第2の無線受信機32で発信情報が受信されることなく、第1の無線受信機31で発信情報が受信された場合に、施設利用者が外部エリアを徘徊していると判定する。この場合、施設利用者が、第2の無線受信機32の無線通信エリアを通らない別の通路から、スタッフ業務室に立ち寄らずにそのまま境界地点を通過したと推定され、正当な理由なく外部エリアを移動していると考えられるからである。
【0029】
報知部17は、徘徊判定部16によって施設利用者が外部エリアを徘徊していると判定された場合、施設利用者が外部エリアを徘徊していること(誰が、どこを徘徊しているか)を報知する。例えば、報知部17は、施設利用者の徘徊を報知するための表示画面をディスプレイ12に表示させるとともに、施設利用者の徘徊を報知するための音声をスピーカ13から出力させる。
【0030】
〔記憶部11に記憶されている検出時刻情報の一例〕
図2は、本発明の一実施形態に係る記憶部11に記憶されている検出時刻情報の一例を示す図である。図2に示すように、記憶部11には、徘徊の検出を行う場所ごとに、第2の無線受信機32から受信した通知情報に含まれている施設利用者IDと、その受信時刻とが対応付けられて、検出時刻情報として記憶されている。
【0031】
例えば、図2の例では、受信部14が、施設利用者ID「0001」を含んだ通知情報を、受信時刻「8:05:30」に「1Fエレベータホール」(外部エリア)の近傍の第2の無線受信機32から受信したことを示す検出時刻情報が記憶されている。また、受信部14が、施設利用者ID「0005」を含んだ通知情報を、受信時刻「8:10:15」に「1Fエレベータホール」(外部エリア)の近傍の第2の無線受信機32から受信したことを示す検出時刻情報が記憶されている。
【0032】
このように、記憶部11には、徘徊の検出を行う場所ごとに、受信部14が第2の無線受信機32から通知情報を受信する毎に、その通知情報に含まれている施設利用者IDとその通知情報の受信時刻とが対応付けられて検出時刻情報として記憶させられる。そして、記憶部11に記憶されている検出時刻情報は、計時部15によって、第2の無線受信機32から通知情報を受信してから、第1の無線受信機31から通知情報を受信するまでの経過時間を算出する際に参照される。
【0033】
〔管理装置10による処理の手順〕
図3は、本発明の一実施形態に係る管理装置10による処理の手順を示すフローチャートである。図3に例示する処理は、例えば、管理装置10の電源がオンとされたときに開始する。
【0034】
まず、受信部14が、第1の無線受信機31から通知情報を受信したか否かを判断する(ステップS302)。ここで、第1の無線受信機31から通知情報を受信したと受信部14が判断した場合(ステップS302:Yes)、徘徊判定部16が、施設利用者が外部エリアを徘徊していると判定する(ステップS316)。そして、報知部17が、施設利用者が徘徊していることを報知し(ステップS318)、管理装置10は、図3に示す一連の処理を終了する。
【0035】
一方、第1の無線受信機31から通知情報を受信していないと受信部14が判断した場合(ステップS302:No)、受信部14が、第2の無線受信機32から通知情報を受信したか否かを判断する(ステップS304)。ここで、第2の無線受信機32から通知情報を受信していないと受信部14が判断した場合(ステップS304:No)、受信部14が、ステップS302の判断処理を再度実行する。
【0036】
一方、第2の無線受信機32から通知情報を受信したと受信部14が判断した場合(ステップS304:Yes)、計時部15が、第2の無線受信機32から受信した通知情報に含まれている施設利用者IDとその通知情報の受信時刻とが対応付けられてなる検出時刻情報を記憶部11に記憶させる(ステップS306)。
【0037】
その後、受信部14が、ステップS306で記憶部11に記憶させた施設利用者IDと同じ施設利用者IDを含む通知情報を、第1の無線受信機31から受信したか否かを判断する(ステップS308)。ここで、第1の無線受信機31から同じ施設利用者IDを含む通知情報を受信していないと受信部14が判断した場合(ステップS308:No)、受信部14が、ステップS308の判断処理を再度実行する。
【0038】
一方、第1の無線受信機31から同じ施設利用者IDを含む通知情報を受信したと受信部14が判断した場合(ステップS308:Yes)、計時部15が、ステップS306で記憶部11に記憶させた受信時刻から、ステップS308で第1の無線受信機31から受信したと判断された通知情報の受信時刻までの経過時間を算出し(ステップS310)、ステップS306で記憶部11に記憶させた検出時刻情報を記憶部11から削除する(ステップS312)。そして、徘徊判定部16が、ステップS310で算出された経過時間が所定の閾値よりも小さいか否かを判断する(ステップS314)。
【0039】
ここで、ステップS310で算出された経過時間が所定の閾値よりも小さいと徘徊判定部16が判断した場合(ステップS314:Yes)、徘徊判定部16が、施設利用者が外部エリアを徘徊していると判定する(ステップS316)。そして、報知部17が、施設利用者が徘徊していることを報知し(ステップS318)、管理装置10は、図3に示す一連の処理を終了する。
【0040】
一方、ステップS310で算出された経過時間が所定の閾値以上であると徘徊判定部16が判断した場合(ステップS314:No)、徘徊判定部16が、施設利用者が外部エリアを徘徊していないと判定し(ステップS320)、管理装置10は、図3に示す一連の処理を終了する。
【0041】
〔徘徊検出の具体例〕
図4は、本発明の一実施形態に係る徘徊検出システム1による徘徊検出の具体例を示す図である。図4は、ある施設内の一部のレイアウトを模式的に示したものである。
【0042】
図4に示すように、施設内には、許容エリアと外部エリア(第1の外部エリアおよび第2の外部エリア)とが設定されている。許容エリアは、施設利用者の移動が許容されているエリアである。外部エリアは、施設利用者の移動を徘徊とみなすエリアである。図4の例では、第1の外部エリアは、建物の玄関外のエリアである。また、第2の外部エリアは、エレベータホールである。
【0043】
許容エリア内には、第1の外部エリアおよび第2の外部エリアに至る通路が設けられている。また、許容エリアと第1の外部エリアとの境界地点の第1の外部エリア側には、第1の無線受信機31が設置されている。同様に、許容エリアと第2の外部エリアとの境界地点の第2の外部エリア側にも、第1の無線受信機31が設置されている。また、許容エリア内において、第1の外部エリアとの境界地点および第2の外部エリアとの境界地点の双方の近傍には、スタッフ業務室の出入口が通路に面して設けられている。
【0044】
また、許容エリア内において、スタッフ業務室の出入口付近(通路においてスタッフ業務室の出入口よりも第1の外部エリアから離れた位置)には、第2の無線受信機32が設置されている。
【0045】
図4の経路Aに示すように、施設利用者が、通路を通ってスタッフ業務室に立ち寄らずに第1の外部エリア(建物の玄関外)に進入した場合、初めに無線通信エリア32Aにおいて第2の無線受信機32によって検出された後、所定時間が経過する前に、第1の外部エリアの無線通信エリア31Aにおいて第1の無線受信機31によって検出される。この場合、徘徊判定部16は、施設利用者が第1の外部エリアを徘徊していると判定する。
【0046】
また、図4の経路Bに示すように、施設利用者が、通路を通ってスタッフ業務室に立ち寄った後に第1の外部エリア(建物の玄関外)に進入した場合、初めに無線通信エリア32Aにおいて第2の無線受信機32によって検出された後、所定時間が経過した後に、第1の外部エリアの無線通信エリア31Aにおいて第1の無線受信機31によって検出される。この場合、徘徊判定部16は、施設利用者が第1の外部エリアを徘徊していないと判定する。
【0047】
また、図4の経路Cに示すように、施設利用者が、通路を通ってスタッフ業務室に立ち寄らずに第2の外部エリア(エレベータホール)に進入した場合、初めに第2の外部エリアの無線通信エリア31Aにおいて第1の無線受信機31によって検出される。この場合、徘徊判定部16は、施設利用者が第2の外部エリアを徘徊していると判定する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、スタッフ業務室の出入口付近に設置された第2の無線受信機32で無線発信機20の発信情報を受信した後、所定の時間の経過後に第1の無線受信機31で無線発信機20の発信情報が受信された場合には、施設利用者がスタッフ業務室に立ち寄った後、スタッフと同行して、またはスタッフからの指示により外部エリアに出たと推定されるため、許容エリアと外部エリアとの境界地点に設置された第1の無線受信機31で発信情報が受信されても、施設利用者が外部エリアを徘徊しているとは判定されない。一方、第2の無線受信機32で発信情報を受信した後、所定の時間以内に第1の無線受信機で発信情報が受信された場合には、施設利用者がスタッフ業務室に立ち寄らずにそのまま境界地点を通過したと推定されるため、施設利用者が外部エリアを徘徊していると判定される。これにより、正当な理由があって施設利用者が所定エリア外へ移動することは許容する一方で、正当な理由なく施設利用者が所定エリア外へ移動するときには徘徊と判断するといった適切な管理を行うことができる。
【0049】
なお、上記実施形態において、第2の無線受信機32で発信情報が受信された後、所定の時間の経過後に第1の無線受信機31で発信情報が受信された場合(図4の経路Bの場合)に、施設利用者が正当な理由で外部エリアに移動したと判定して移動許可フラグを設定(例えば、記憶部11のテーブル等に設定)し、その後、第1の無線受信機31で発信情報が受信された場合に、移動許可フラグの設定を解除するようにしてもよい。これにより、正当な理由で外部エリアに移動した施設利用者が許容エリア内に戻ってきたときに、第1の無線受信機31によってこの施設利用者が検出されても、徘徊と判断されてしまわないようにすることができる。
【0050】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 徘徊検出システム
10 管理装置
11 記憶部
12 ディスプレイ
13 スピーカ
14 受信部
15 計時部
16 徘徊判定部
17 報知部
20 無線発信機
31 第1無線受信機
32 第2無線受信機
図1
図2
図3
図4