(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
<1.接着フィルム構造体の構成>
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る接着フィルム構造体1の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る接着フィルム構造体1の概略を説明する模式的な側面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る接着フィルム構造体1は、複数の接着フィルム2を連結テープ3にて直線的に連結した構造を有する。なお、連結される接着フィルム2の数は、特に限定されず、接着フィルム構造体1の長さが所望の長さとなる数であればよい。
【0022】
接着フィルム2は、それぞれフィルム基材上に接着剤層が設けられた構成を有する。接着フィルム2の幅は、例えば、0.2mm以上5.0mm以下であり、接着フィルム2の長さは、例えば、1m以上300m以下である。また、接着フィルム2の長さは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
連結テープ3は、それぞれテープ本体上に接合層が設けられた構成を有する。また、連結テープ3は、接着フィルム2の接着剤層が設けられた一面と対向する他面に設けられ、接合層を介して接着フィルム2同士の端部をそれぞれ連結する。連結テープ3の幅は、例えば、0.2mm以上5.0mm以下であるが、接着フィルム構造体1の巻取、引出および走行を円滑に行うためには、接着フィルム2と同一の幅であることが好ましい。また、連結テープ3の長さは、接着フィルム2同士を連結する接着力を確保することが可能な長さであり、かつ接着フィルム2より短い長さであればよい。連結テープ3の長さは、例えば、10以上100mm以下であってもよい。なお、連結テープ3は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい
【0024】
このような連結テープ3によって接着フィルム2を連結することによって、接着フィルム構造体1を長尺化することができる。このような接着フィルム構造体1の長さは、例えば、10m以上7000m以下であってもよく、より具体的には、5000m程度であってもよい。例えば、接着フィルム構造体1の長さが10m程度であれば、試作品の製造を製造ラインでテストすることができるため、製品を検証する時間および工数を削減することに寄与することができる。また、接着フィルム構造体1の長さが7000m以下であれば、製造装置の改造が最小限に済むため、コスト削減に寄与することができる。このような長尺の接着フィルム構造体1は、例えば、太陽電池等においてタブ線接合用の接着フィルムとして用いることができる。
【0025】
本実施形態に係る接着フィルム構造体1は、接着フィルム2を連結する連結テープ3を接着フィルム2の片面のみに設けることにより、連結テープ3が貼付された連結領域の接着フィルム2をも使用可能とするものである。また、本実施形態に係る接着フィルム構造体1は、各層の膜厚を特定の関係にすることにより、連結テープ3が貼付された連結領域、および連結領域以外の領域のいずれであっても、同一条件にて効率的に仮貼り工程を行うことを可能にするものである。
【0026】
さらに、本実施形態に係る接着フィルム構造体1は、複数の接着フィルム2を連結することで形成することができるため、接着フィルム2の歩留まりが低い場合でも、低コストで効率的に接着フィルム構造体1を形成することができる。
【0027】
続いて、
図2を参照して、本実施形態に係る接着フィルム構造体1のより具体的な構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る接着フィルム構造体1において、連結テープ3が貼付された領域を拡大して示した模式的な側面図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る接着フィルム構造体1は、フィルム基材21、およびフィルム基材21上に設けられた接着剤層22を有する複数の接着フィルム2と、テープ本体31、およびテープ本体31上に設けられた接合層32を有する連結テープ3と、を有する。また、接着フィルム構造体1において、連結テープ3は、複数の接着フィルム2の端部間に跨設され、フィルム基材21の接着剤層22が設けられた一面と対向する他面を接合層32によって連結する。
【0029】
フィルム基材21は、接着剤層22を支持し、接着フィルム2の形状を維持する。フィルム基材21の材質は、特に制限されないが、例えば、PET(polyethylene terephthalate)、OPP(oriented polypropylene)、PMP(polymethylpentene)、PTFE(polytetrafluoroethylene)などを使用することができる。また、フィルム基材21の接着剤層が設けられていない他面には、シリコーン系剥離剤が塗布されていてもよい。
【0030】
フィルム基材21の膜厚Fbは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、12μm以上75μm以下であることがより好ましい。フィルム基材21の膜厚Fbが10μm以上である場合、接着フィルム2が十分な強度を備えることができるため、接着フィルム構造体1をリール部材から引き出した際の安定性が向上する。また、フィルム基材21の膜厚Fbが100μm以下である場合、接着フィルム構造体1をリール部材に巻き取った際の巻径が過度に大きくなることが抑制される。
【0031】
接着剤層22は、フィルム基材21の一面に設けられ、接着性を有する。接着剤層22は、後述する仮貼り工程によって、フィルム基材21から剥離され、被接着体と他の被接着体とを接着する接着剤として、被接着体に貼着される。接着剤層22は、接着剤として用いられる樹脂であれば、どのような樹脂にて形成されてもよい。例えば、接着剤層22は、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂、ならびにアクリル系樹脂などのエネルギー線硬化性樹脂(例えば、光硬化性樹脂)などで形成されてもよい。
【0032】
接着剤層22の膜厚Faは、例えば、10μm以上100μm以下であってもよい。接着剤層22の膜厚Faが上記の範囲の膜厚である場合、接着剤層22は、貼着された被接着体同士を確実に接着することができる。
【0033】
ただし、接着剤層22の膜厚Faは、フィルム基材21の膜厚Fbよりも薄いことが好ましい。このような場合、接着フィルム2の全面にわたって、少ない膜厚ばらつきで安定して接着剤層22を形成することができる。また、フィルム基材21の膜厚Fbに対する接着剤層22の膜厚Faの比率(Fa/Fb)は、例えば、0.2以上5.0以下であってもよい。
【0034】
なお、接着フィルム2が異方性導電接着フィルムである場合、接着剤層22は、導電粒子をさらに含む。ここで、導電粒子は、例えば、金属粒子、または金属被覆樹脂粒子である。具体的には、金属粒子は、ニッケル、コバルト、銅、銀、金、またはパラジウムなどの金属粒子であってもよい。また、金属被覆樹脂粒子は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、またはスチレン−シリカ複合樹脂などのコア樹脂粒子の表面をニッケル、銅、金、またはパラジウムなどの金属で被覆した粒子であってもよい。
【0035】
このような導電粒子の平均粒子径(粒子の直径の個数平均値)は、具体的には、1μm以上30μm以下であり、より具体的には、2μm以上10μm以下であってもよい。なお、導電粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法などによって測定することが可能である。
【0036】
また、接着フィルム2全体の膜厚Ft(=Fa+Fb)は、20μm以上100μm以下であることが好ましい。接着フィルム2全体の膜厚Ftが上記の範囲の膜厚である場合、接着フィルム構造体1は、リール部材に巻き取った際の巻径が過度に大きくなることを抑制することができる。
【0037】
テープ本体31は、接合層32を支持し、接合層32を介して接着フィルム2の端部同士を連結する。テープ本体31の材質は、特に限定されないが、フィルム基材21と同様のものを使用することができる。例えば、テープ本体31の材質は、PET、OPP、PMP、PTFEなどであってもよい。
【0038】
テープ本体31の膜厚Tbは、例えば、10μm以上100μm以下であってもよい。テープ本体31の膜厚Tbが上記の範囲の膜厚である場合、連結テープ3は、接着フィルム2の端部同士を確実に連結することができる。
【0039】
接合層32は、接着性を有し、テープ本体31の一面に設けられ、フィルム基材21の接着剤層22が設けられた一面と対向する他面にて接着フィルム2の端部同士を連結する。接合層32は、接着剤層22と同様の樹脂にて形成されてもよい。例えば、接合層32は、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂、ならびにアクリル系樹脂などのエネルギー線硬化性樹脂にて形成されてもよい。
【0040】
なお、接合層32は、接着剤層22とは異なり、テープ本体31から剥離されて被接着体等に貼着されることがない。そのため、接合層32は、非硬化性樹脂または硬化済樹脂にて形成されてもよい。具体的には、接合層32は、シリコーン系樹脂にて形成されてもよい。接合層32が非硬化性樹脂または硬化済樹脂にて形成される場合、接着フィルム構造体1の保存安定性を向上させることができる。
【0041】
接合層32の膜厚Taは、例えば、2μm以上100μm以下であってもよい。接合層32の膜厚Taが上記の範囲の膜厚である場合、接合層32は、より確実に接着フィルム2の端部同士を連結することができる。なお、テープ本体31の膜厚Tbに対する接合層32の膜厚Taの比率(Ta/Tb)は、例えば、0.2以上5.0以下であってもよい。
【0042】
連結テープ3全体の膜厚Tt(=Ta+Tb)は、10μm以上35μm以下であることがより好ましい。連結テープ3全体の膜厚Ttが35μm以下である場合、接着フィルム構造体1をリール部材に巻き取った際の巻径が過度に大きくなることが抑制される。一方、連結テープ3全体の膜厚Ttが35μmを超える場合、接着剤層22の貼着の際に、被接着体に局所的な負荷がかかり、被接着体が割れる可能性があるため、好ましくない。
【0043】
なお、連結テープ3の長さLは、上述したように、10以上100mm以下であってもよい。また、連結テープ3は、連結する接着フィルム2のそれぞれに対して、対称的に跨設されることが好ましい。具体的には、連結テープ3は、接着フィルム2のそれぞれとの接着面の長さが同一になるように接着されていることが好ましい。このような場合、連結テープ3は、一方の接着フィルム2との接着が他方の接着フィルム2との接着よりも過度に弱くなり、連結が外れやすくなることを防止することができる。
【0044】
また、連結テープ3と、接着フィルム2との接着強度は、0.6N/mmより大きいことが好ましく、1.0N/mm以上であることがさらに好ましい。連結テープ3と、接着フィルム2との接着強度が0.6N/mm以下である場合、接着フィルム構造体1をリール部材から引き出す際に接着フィルム2同士の連結が外れる可能性が高くなるため好ましくない。なお、連結テープ3と、接着フィルム2との接着強度の上限は、特に限定されないが、例えば、3.0N/mmである。
【0045】
なお、連結テープ3と、接着フィルム2との接着強度は、例えば、引張試験機によって測定することができる。具体的には、連結テープ3にて接着フィルム2を連結したサンプルの一端を試験台等に固定されたクランプに固定し、該サンプルの他端を引張試験機に固定する。その後、引張試験機を鉛直上方に引き上げる。このとき、引張試験機を引き上げるにつれて引張試験機に掛かる荷重が大きくなり、最終的に、接着フィルム2と連結テープ3とは分離する。分離時における引張試験機に掛かる荷重を接着強度として測定することができる。より詳細には、
図2で示した接着フィルム2の長手方向の両端をそれぞれ引張試験機およびクランプにて固定し、鉛直上方に引き上げた場合における接着フィルム2の長手方向の荷重を測定している。
【0046】
また、連結テープ3と、接着フィルム2との間の接着強度は、例えば、接合層32を最低溶融粘度が高い樹脂にて形成することや、接合層32の膜厚を厚くすることなどによって増加させることが可能である。
【0047】
ここで、
図3を参照して、本実施形態に係る接着フィルム構造体1の各層の膜厚の関係について説明する。
図3は、本実施形態に係る接着フィルム構造体1の仮貼り工程において、接着剤層22を切断する際の様態を模式的に示す側面図である。
【0048】
図3に示すように、被接着体への接着フィルム構造体1の仮貼り工程では、まず、接着フィルム構造体1に対して、接着剤層22側からスリット刃4(スリット刃4Aまたは4B)を差し込むことで接着剤層22が切断される(以下、ハーフカットともいう)。所定の長さに切断した後、接着フィルム構造体1をフィルム基材21側から押圧ツールで基板等に押し当てることで、切断された接着剤層22が基板等に貼着される。なお、接着フィルム構造体1の切断および貼着は、装置の機構等により適宜順番を入れ替えてもよい。
【0049】
ここで、ハーフカット時のスリット刃4の切断深さは、接着フィルム構造体1の接着剤層22が設けられた面に対する裏面からの距離に基づいて決定される。具体的には、ハーフカット時のスリット刃4の切断深さは、接着剤層22が設けられた面と対向するフィルム基材21またはテープ本体31の裏面からの距離が一定距離Cdになるように決定される。
【0050】
ただし、ハーフカット時には、接着剤層22と併せてフィルム基材21も一部切断されるため、ハーフカット時のスリット刃4A、4Bの切断深さは、一部切断されたフィルム基材21が十分な強度を維持することが可能な深さである必要がある。これは、一部切断されたフィルム基材21が十分な強度を維持できない場合、ハーフカット後に接着フィルム2同士の連結が外れたり、接着フィルム2が離断したりしてしまう可能性があるためである。
【0051】
一方で、本実施形態に係る接着フィルム構造体1では、フィルム基材21の接着剤層22が設けられた面と対向する裏面に連結テープ3が貼付されている。そのため、連結テープ3が貼付された連結領域と、連結領域以外の領域とでは、接着フィルム構造体1全体の膜厚が変わっている。そこで、連結領域であるか否かに関わらず同一条件にてハーフカットした場合でも、フィルム基材21が十分な強度を維持することができるようにするためには、接着フィルム構造体1の各層は以下の条件を満たす必要がある。
【0052】
具体的には、連結テープ3全体の膜厚Ttは、フィルム基材21の膜厚Fbの0.3倍以上0.7倍以下である。連結テープ3全体の膜厚Ttが0.3倍未満である場合、連結テープ3による接着フィルム2同士の連結が弱くなり、接着フィルム構造体1のリール部材からの引き出しが困難になる。また、連結テープ3全体の膜厚Ttが0.7倍を超える場合、ハーフカット後にフィルム基材21の強度を十分維持することが困難になる。
【0053】
また、接合層32の膜厚Taは、フィルム基材21の膜厚Fbの0.16倍以上0.36倍以下である。接合層32の膜厚Taが0.16倍未満である場合、連結テープ3と、接着フィルム2との間の接着強度が弱くなり、接着フィルム構造体1のリール部材からの引き出しが困難になる。また、接合層32の膜厚Taが0.36倍を超える場合、ハーフカット後にフィルム基材21の強度を十分維持することが困難になる。
【0054】
また、連結テープ3全体の膜厚Ttは、接着フィルム2全体の膜厚Ftの7/16倍以下であることが好ましく、3/8倍以下であることがより好ましい。連結テープ3全体の膜厚Ttが接着フィルム2全体の膜厚Ftの7/16倍を超える場合、切断した接着剤層22の貼着時に被接着体に局所的な負荷がかかり、被接着体が割れる可能性があるため、好ましくない。なお、連結テープ3と接着フィルム2との接着強度を確保するためには、連結テープ3全体の膜厚Ttは、接着フィルム2全体の膜厚Ftの1/8倍より大きいことが好ましい。
【0055】
接着フィルム構造体1の各層の膜厚が上記の関係を満たす場合、接着フィルム構造体1は、連結テープ3が貼付された連結領域、および連結領域以外の領域のいずれでも、同一条件にて接着剤層22のハーフカットおよび被接着体への貼着を行うことができる。したがって、接着フィルム構造体1は、効率的に仮貼り工程を行うことができる。
【0056】
<2.接着フィルム構造体の製造方法>
続いて、上述した本実施形態に係る接着フィルム構造体1の製造方法について説明する。なお、以下に示す製造方法は、あくまでも一例であって、本実施形態に係る接着フィルム構造体1の製造方法が下記に限定されるものではない。
【0057】
まず、接着剤層22を構成する成分を適切な溶媒に溶解することによって、接着剤層用組成液を調製する。次に、調整した接着剤層用組成液を公知のコート法または塗布法によってフィルム基材21上に所定の膜厚となるように塗布した後、乾燥することで接着フィルム2を形成する。
【0058】
同様に、接合層32を構成する成分を適切な溶媒に溶解することによって、接合層用組成液を調製する。次に、調整した接合層用組成液を公知のコート法または塗布法によってテープ本体31上に所定の膜厚となるように塗布した後、乾燥することで連結テープ3を形成する。続いて、形成した接着フィルム2の端部同士を連結テープ3にて連結することで、接着フィルム構造体1を製造することができる。なお、本実施形態に係る接着フィルム構造体1の製造に用いる材料および装置は、市販されているものを適宜用いることが可能である。
【0059】
<3.接着フィルム構造体による仮貼り方法>
続いて、
図4を参照して、本実施形態に係る接着フィルム構造体1の接着剤層22を被接着体に仮貼りする工程について説明する。
図4は、接着フィルム構造体1の接着剤層22を被接着体に仮貼りする工程を説明する説明図である。
【0060】
図2に示すように、本実施形態に係る接着フィルム構造体1は、リール部材10にロール状に巻き取られることで、フィルムロール1Aを形成している。まず、フィルムロール1Aから接着フィルム構造体1が引出ローラ11によって引き出され、ローラ13〜15によって押圧ツール16と被接着体5との間に搬送される。
【0061】
次に、接着フィルム構造体1は、スリット刃4によってハーフカットされる。これにより、接着剤層22は、被接着体に貼着される長さに切断される。続いて、押圧ツール16が接着フィルム構造体1を押圧することで、接着フィルム2の接着剤層22を被接着体5に貼着させる(なお、切断および貼着は、装置の機構等によって適宜順番を入れ替えてもよい)。接着剤層22の貼着は、熱による熱圧着により行われてもよく、UV(Ultra Violet)光などのエネルギー線を照射しながらの圧着により行われてもよい。また、これらを併用した圧着により行われてもよい。
【0062】
圧着が終了した後、貼着により接着剤層22が剥離した接着フィルム構造体1(すなわち、フィルム基材21を連結テープ3で連結したもの)は、ガイドローラ18によって搬送され、巻取装置19によって巻き取られて回収される。
【0063】
なお、押圧ツール16と接着フィルム構造体1との間には、緩衝材が設けられ、押圧ツール16は、緩衝材を介して接着フィルム構造体1を押圧してもよい。緩衝材の形状および材質については、公知のものを使用することができる。緩衝材を用いることにより、圧着による被接着体5へのダメージを緩和することができる。
【0064】
以上の方法により、本実施形態に係る接着フィルム構造体1は、接着剤層22を被接着体に貼着することができる。また、本実施形態に係る接着フィルム構造体1では、連結テープ3が貼付された連結領域、および連結領域以外の領域のいずれでも、同一条件にて上記の仮貼り工程を行うことが可能である。
【0065】
ここで、
図5を参照して、本実施形態に係る接着フィルム構造体1が異方性導電接着フィルムである場合の仮貼り工程について説明する。
図5は、端子51を有する被接着体5と接着フィルム構造体1との仮貼り工程における位置関係を示した説明図である。
【0066】
図5に示すように、導電接続が形成される端子51を複数備えた基板が被接着体5である場合、接着フィルム構造体1として異方性導電接着フィルムが用いられる。接着フィルム構造体1が異方性導電接着フィルムであることにより、被接着体5は、各端子51にて他の被接着物と導電接続を形成することができる。
【0067】
このような場合、仮貼り工程において、端子51間の距離が継ぎ目23に比べて十分に大きい場合、接着フィルム構造体1は、接着フィルム2同士の継ぎ目23が端子51間に配置されるように押圧ツール16と被接着体5との間に搬送されることが好ましい。これは、接着フィルム2同士の継ぎ目23では、接着フィルム2が存在しないため、継ぎ目23が端子51上に配置された場合、継ぎ目23が端子51間に配置された場合に比べて、接着および導電接続の確実性が低下してしまうためである。
【0068】
また、接着フィルム構造体1は、接着フィルム2同士の継ぎ目23が端子51からさらに該端子51の幅分だけ離隔した位置に配置されるように、押圧ツール16と被接着体5との間に搬送されることがより好ましい。このような場合、接着フィルム構造体1は、接着フィルム2同士の継ぎ目23が端子51の接着および導電接続に影響することを抑制し、各端子51において、より確実な導電接続を形成することができる。
【実施例】
【0069】
以下では、実施例および比較例を参照しながら、本実施形態に係る接着フィルム構造体について、より詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本実施形態に係る接着フィルム構造体の実施可能性および効果を示すための一例であり、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(接着フィルム構造体の製造)
以下に示す方法によって、本実施形態に係る接着フィルム構造体を製造した。
【0071】
まず、PET(polyethylene terephthalate)からなり、幅1.2mm、膜厚50μmであるフィルム基材を用意した。次に、フェノキシ樹脂(新日鐵化学社製YP50)30質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学社製JER828)20質量部、ゴム成分(ナガセケムテック社製SG80H)10質量部、硬化剤(旭化成社製ノバキュア3941HP)40質量部、シランカップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製A−187)1質量部をトルエンに溶解させて接着剤層組成液を調製した。調整した接着剤層組成液をフィルム基材上に乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、60℃にて10分間加熱することで乾燥させ、接着フィルムを作製した。
【0072】
続いて、PETからなり、長さ50mm、幅1.2mmであるテープ本体を表1にて示す各種膜厚にて用意した。次に、シリコーン系樹脂(東レ・ダウコーニング社製SD4584PSA)100質量部、硬化剤(東レ・ダウコーニング社製BY24−741)0.7質量部、シランカップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製A−187)1質量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング社製NC−25)0.6質量部を含む接合層組成物を調製した。調整した接合層組成物をテープ本体上にそれぞれ表1に示す乾燥膜厚となるようにバーコーターにて塗布し、70℃にて5分間加熱した後、さらに150℃で4分間加熱して硬化させ、連結テープを作製した。
【0073】
上記にて作製した接着フィルムおよび連結テープを用いて、全体長さが5000mの接着フィルム構造体を作製した。具体的には、接着フィルムの接着剤層が設けられた面と対向する面の端部同士を連結テープにて直線的に連結することで接着フィルム構造体を製造した。なお、製造した接着フィルム構造体は、リール部材に巻き取ることによりフィルムロール形状とした。
【0074】
上記にて製造した接着フィルム構造体における連結テープの膜厚を表1に示す。また、表1には、各接着フィルム構造体の接着強度も併せて示した。各接着フィルム構造体の接着強度は、引張試験機(エー・アンド・デイ社製テンシロン)にて測定した。
【0075】
(仮貼り工程)
次に、上記にて製造した接着フィルム構造体を用いて、
図4にて示した方法にて被接着体への仮貼り工程を行った。具体的には、各接着フィルム構造体のフィルムロールから、0.7Nの引き出しテンションにて接着フィルム構造体を引き出し、接着剤層をハーフカットした後、切断した接着剤層を被接着体に熱圧着した。
【0076】
なお、被接着体としては、ITO(酸化インジウムスズ)膜付きの厚み0.1mmのガラス基板を用いた。また、ハーフカットは、接着フィルム構造体の接着剤層が設けられた面と対向する裏面からの距離が44μmの深さまで行い、熱圧着は、80℃、0.5MPaにて1秒間行った。
【0077】
仮貼り工程における接着フィルム構造体の評価を表1に示す。具体的には、仮貼り工程のハーフカット後の連結テープ外れの有無、熱圧着時の被接着体の割れの有無、接着フィルム構造体をフィルムロールから引き出した際の連結テープ外れの有無の3点において、接着フィルム構造体を評価した。表1では、各接着フィルム構造体に対して、仮貼り工程を5回ずつ行い、連結テープ外れ、または被接着体割れ等のエラーが発生しなかったものを「A」、エラーが1〜2回発生したものを「B」、エラーが3〜4回発生したものを「C」として評価した。
【0078】
(評価結果)
接着フィルム構造体に対する評価結果を表1にまとめて示す。なお、表1において、「ハーフカット後のフィルム基材の残膜厚」は、連結テープが貼付された連結領域をハーフカットした際に、ハーフカットにより切断されなかったフィルム基材の膜厚を示す。具体的には、「ハーフカット後のフィルム基材の残膜厚」は、ハーフカット時のスリット刃と裏面との距離44μmから、連結テープ全体の膜厚Ttを減算した値である(ただし、負値は0として記載した)。また、「ハーフカット後のフィルム基材の残存率」は、「ハーフカット後のフィルム基材の残膜厚」をフィルム基材の膜厚Fbで除算した結果を百分率で表したものである。
【0079】
【表1】
【0080】
表1を参照すると、実施例1〜5は、連結テープ全体の膜厚Ttがフィルム基材の膜厚Fbの0.3倍以上0.7倍以下であり、かつ接合層の膜厚Taがフィルム基材の膜厚Fbの0.16倍以上0.36倍以下である。このため、実施例1〜5は、ハーフカット後および引出時の連結テープ外れが抑制され、かつ仮貼り工程の圧着時における被接着体の割れが抑制されていることがわかる。
【0081】
また、実施例1〜5は、連結テープ全体の膜厚Ttが接着フィルム全体の膜厚Ftの7/16倍以下となっているため、ハーフカット後の連結テープ外れが抑制され、かつ仮貼り工程の圧着時における被接着体の割れが抑制されていることがわかる。一方、連結テープ全体の膜厚Ttが接着フィルム全体の膜厚Ftの1/8倍以下である場合、連結テープの接着強度が低下し、リール部材からの引出時に連結テープが外れやすくなるため、好ましくないことがわかる。
【0082】
さらに、実施例1〜5と、比較例3とを比較すると、リール部材からの引出時に連結テープが外れることを抑制するためには、連結テープと接着フィルムとの接着強度は、0.6N/mmより大きくすることが好ましいことがわかる。
【0083】
以上の結果からわかるように、本実施形態に係る接着フィルム構造体は、各層の膜厚を特定の関係にすることにより、連結テープが貼付された連結領域、および連結領域以外の領域のいずれでも、同一条件にて効率的に仮貼り工程を行うことが可能である。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。