特許第6562796号(P6562796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562796
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】木製サッシュ
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/06 20060101AFI20190808BHJP
   E06B 3/10 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   E06B1/06
   E06B3/10
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-184373(P2015-184373)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-57657(P2017-57657A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】311010062
【氏名又は名称】五十嵐 馨
(73)【特許権者】
【識別番号】500415276
【氏名又は名称】武石 文敏
(74)【代理人】
【識別番号】100074686
【弁理士】
【氏名又は名称】本名 昭
(72)【発明者】
【氏名】武石 文敏
【審査官】 小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−019128(JP,A)
【文献】 特開平09−088408(JP,A)
【文献】 特開平08−144646(JP,A)
【文献】 特開2007−231633(JP,A)
【文献】 特開平10−153051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 − 1/70
E06B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鴨居、右縦枠、左縦枠、敷居から構成される矩形な木製支持枠と、横框及び縦框によって枠体を形成しガラス板を装着して構成される外障子及び内障子が引違いに配置され上記木製支持枠内を左右方向に往復自在である移動枠とから成る引違い方式の木製サッシュにおいて、鴨居の下面側に刻設された2本のガイド溝には、断面コの字形で長手なアルミ製のガイドケースと、当該ガイドケースに封着される断面が矩形で長手な木製ガイドから構成される2本の凸状ガイド部が複数のネジによって、木製ガイドの下面先端から当該木製ガイドを貫通し鴨居に取着されると共に、上記鴨居に取着される2本の凸状ガイド部と垂直方向に照応するように敷居の上面側に刻設された2本のレール溝には、断面コの字形で長手なアルミ製のレールケースと、当該レールケースに封着される断面が凹形で長手な木製レールと更に当該木製レールの凹部に固着されるアルミ角棒から構成されている2本の凸状レール部が複数のネジによって、アルミ角棒の上面から木製レール及びレールケースを貫通し敷居に取着されていることを特徴とする、引違い方式の木製サッシュ。
【請求項2】
外障子及び内障子を構成する上框及び下框の凹溝に左側縦框及び右側縦框の接合箇所からやや離間した箇所にはそれぞれアルミチャネルが埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の木製サッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密性を有すと共に木質材の弱点とされる経年劣化に対応する木製サッシュに係り、特に引違い方式の木製サッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
戦後、昭和30年代からビル用窓としてスチールサッシュが採用され始めた。ところが、スチールサッシュは重く錆び易いといった欠点から、設置後のメンテナンスや取扱いが容易なアルミサッシュがスチールサッシュに代って普及してきた。ところが、アルミサッシュは断熱性において金属材として熱伝導率が高いことから、北海道や東北地方などの寒冷地では冬期間において室内外で大きな温度差が生じることで、窓やベランダ等の開口部に用いられているアルミサッシュ枠の室内側表面に室内の暖かい空気が接触することにより、空気中に含まれる水蒸気がサッシュ枠表面で急冷されて結露する現象が多発している。その結果、サッシュ枠に近い木枠に腐食が生じたり、サッシュの結露流下によって開口部付近の床材にシミや剥がれが生じると共にサッシュ周辺の壁紙の剥がれやカビの発生といった支障をもたらすことがあった。一方、平成11年3月、建設省から地球規模の温暖化問題に対応するため「住宅に係るエネルギー使用の合理化に関する設計及び施工の指針」(次世代省エネルギー基準)が告示された。その中で窓等の開口部断熱基準では、地域区分、窓等の仕様基準、性能基準(熱貫流率)等が示され、木製サッシュ及びプラスチックサッシュは共に高い断熱性を有しているとされている。
【0003】
前記のような金属製サッシュにおける結露の問題や居住空間に求める意匠性の観点から、近年木製サッシュが見直されてきた。更に、前記次世代省エネルギー基準に係る各種サッシュの熱貫流率について比較した場合でも、木製サッシュの熱損失はアルミサッシュに比べ20〜30%少ないことが示されている。また、上記のような木製サッシュの高い断熱性能は結露の発生がないことを示している。更に、木材の持つその質感や肌合いは優しさや柔らかさを多くの人に看得させ、一般住宅はもとより、学校や公共施設等に対する木製サッシュを採用するケースが増加している。
【0004】
そこで、改めて木製サッシュの窓についての長所及び短所を述べると、木製サッシュの窓の長所は、先ず、断熱性に優れていることが挙げられる。熱伝導率は熱の伝わり易さを表す数値であるが、木はアルミニウムと比べ1500倍も熱を伝え難いことが知られている。第二に、木製サッシュの窓に示される特徴は、結露し難いことである。木の表面には無数の小孔が存在しており、表面に生成された水滴は上記小孔に進入することから結露し難いことが知られている。一方、上記アルミサッシュやプラスチックサッシュの均一的素材には小孔が存在しないので結露し易いことになる。更に、木製サッシュの第三の長所としては、加工が簡単であることが挙げられる。素材が木であることから、ガラスの厚さや窓の大きさ、デザイン面での変更から断面形状の変更まで簡単に対応できる。これに対して、上記アルミサッシュやプラスチックサッシュでは、その都度新規の金型が必要となり変更に多大な費用を要すという欠点がある。
【0005】
一方、木製サッシュの短所について述べると、先ず、第一の短所は、素材が木材であることから腐れや経年劣化が生ずるという欠点がある。これは、水分が木材の組織内部に浸透して腐れを引き起こすことが原因であり、防止策としては、撥水剤を含んだ着色剤によって3〜4年に一度、木の表面保護のために再塗装を行うことが知られている。次に第二の短所は、ねじれや狂いが生じることが挙げられる。これらの防止策としては、木材を十分に乾燥させ含水率を10%〜12%程度にすることにより、ねじれや狂いをほぼ防止できることも知られている。続いて、第三の短所としては可燃であることが挙げられるが、この改善策としては、断面寸法を大きくしたり、難燃処理を施し防火性能を向上させる等の方法が知られている。
【0006】
続いて、木製サッシュは省エネルギー性能だけではなく、アルミサッシュとの製造エネルギーの比較においても、アルミサッシュの約135分の1の熱量使用に留まること、木製サッシュは廃棄の段階でもダイオキシン等の有害物質を出さないことなど、資源の育成から製造、消費、廃棄までの長期的視野に立ったとき、木製サッシュの利用促進は環境保護の貢献にも役立つと言える。
【0007】
以上のような木製サッシュの特性を生かし、高い気密性を有した新規な木製サッシュに対する市場ニーズに対応するために、本願発明に係る発明者は、平成23年7月8日付けにて気密性を有した引違い方式による木製サッシュに関する特許出願を行い、特許庁における審査の上、特許第5473999号を得ている。
【0008】

更に、本願発明に係る発明者らは、現在の住宅環境の分析と木製サッシュの研究を継続したところ、大型の外国製木製サッシュが既に据付されているケースでは、当該木製サッシュが相当の重量物となっているために窓の開閉操作が重いこと、更には設置からの経年に伴い木製サッシュを懸垂している鴨居等の木枠形状が当該重量によって崩れ、引違い方式の窓の開閉に支障きたす等の欠点が生じていることにも直面した。更には、日本製の木製サッシュにおいても湿度が高い国内においては経年劣化によって敷居や鴨居といった木製サッシュの框との摺接箇所において変形や摩耗劣化が生じることも散見された。その結果、上記課題や欠点の解消のためには、上記特許第5473999号に開示した木製サッシュを更に改良するものとし、具体的には木製サッシュの框との摺接箇所となる鴨居及び敷居の凸部のメンテナンスを容易にすると共に内外障子が摺動する敷居凸部の改良を行い各障子の開閉操作がスムーズである新規な木製サッシュが求められるとの結論に至った。
【0009】

【特許文献1】特許第5473999号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許第5473999号の発明に係る木製サッシュは、鴨居、右縦枠、左縦枠、敷居から構成される矩形な木製支持枠と、横框及び縦框によって枠体を形成しガラス板を装着して構成される外障子及び内障子が引違いに配置され上記木製支持枠内を左右方向に往復自在である移動枠とから成る引違い方式の木製サッシュであり、屋外側に配置される上記外障子と屋内側に配置される上記内障子との召合い部分においては、相互に対向する縦框の召合い側面内に長手方向の凹溝が形成され、当該凹溝に断面凹形状のアルミカバーが貼着され、更に当該アルミカバーには断面がカマボコ状で膨出先端が対向する縦框の召合い側面に当接するようにゴムパッキンが装着されており、次に、上記鴨居の下面と接する外障子及び内障子の上方横框の部分においては、当該鴨居の下面内側に長手方向に2本の凸溝が形成され、更に当該凸溝の先端面にはアルミ板及びシリコンスポンジシートが貼着される一方、上記外障子及び内障子の上方横框の上面側には凹状の鴨居枠溝が形成されて上記凸溝に装着されており、更に、外障子及び内障子の下方横框の下面側に装着されたゴムパッキンの突出先端が、上記敷居を被覆すると共に上面側に上記外障子及び内障子を往復自在に軌道させる2本のレールを形成する水切りアルミの上面に接触し、更には、上記支持枠内における外障子と内障子が閉鎖状態における右縦枠と右方縦框及び左縦枠と左方縦框の部分においては、各縦枠に形成された凹溝の先端部に浅い凹溝が形成され、アルミ板及びシリコンスポンジシートが貼着された各縦框先端が装入されていることを要旨とするものであった。
【0011】
ここで、上記記載の特許第5473999号の発明に係る木製サッシュによれば、木製サッシュとしての高断熱性に加えて、上記記載の構成によることから対向する縦框の召合い部分、鴨居と上框の当接部分、左縦枠と左側縦框の当接箇所、及び右縦枠と右側縦框の当接箇所における高い気密性が確保できることで、室内空間における高気密・高断熱が提供されるという効果があった。
【0012】
しかしながら、上記特許第5473999号に係る木製サッシュにおいては、背景技術の欄の木製サッシュの短所に記載のように、素材が木材であることから腐れや経年劣化が生ずるという欠点を否定できない。また、腐れの防止策として、撥水剤を含んだ着色剤によって3〜4年に一度、木の表面保護のために再塗装を行うことを記述したが、湿度が高い等の使用環境での経年劣化によっては、鴨居の下面内側に長手方向に形成された凸溝が腐ってしまうこと、また、アルミレールカバーの下方となる敷居における腐れについては否定できないという課題が残っていた。更に、鴨居、右縦枠、左縦枠、敷居から構成される木製支持枠内を往復自在となる外障子及び内障子は敷居側に取着されて形成されている2本の凸状レール上を各障子の下框下方に取着された平戸車が摺動するものであったが、木製サッシュが大型化し外障子及び内障子の重量が増加するにつれ、障子の開閉にややスムーズさを欠くと共に上記凸状レールと平戸車の摺動音が大きくなるという課題も発見した。
【0013】
そこで、本発明の目的は、本発明者らが先に開示した特許第5473999号に係る木製サッシュについての検証と継続的な研究によって見出された上記課題を解決して永続的に使用可能な新規な木製サッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために成されたものであり、本発明に係る木製サッシュは、鴨居、右縦枠、左縦枠、敷居から構成される矩形な木製支持枠と、横框及び縦框によって枠体を形成しガラス板を装着して構成される外障子及び内障子が引違いに配置され上記木製支持枠内を左右方向に往復自在である移動枠とから成る引違い方式の木製サッシュにおいて、鴨居の下面側に刻設された2本のガイド溝には、断面コの字形で長手なアルミ製のガイドケースと、当該ガイドケースに封着される断面が矩形で長手な木製ガイドから構成される2本の凸状ガイド部が複数のネジによって、木製ガイドの下面先端から当該木製ガイドを貫通し鴨居に取着されると共に、上記鴨居に取着される2本の凸状ガイド部と垂直方向に照応するように敷居の上面側に刻設された2本のレール溝には、断面コの字形で長手なアルミ製のレールケースと、当該レールケースに封着される断面が凹形で長手な木製レールと更に当該木製レールの凹部に固着されるアルミ角棒から構成されている2本の凸状レール部が複数のネジによって、アルミ角棒の上面から木製レール及びレールケースを貫通し敷居に取着されていることを第一の要旨とするものである。
【0015】
更に、本発明に係る木製サッシュは、上記第一の要旨に加えて、外障子及び内障子を構成する上框及び下框の凹溝に左側縦框及び右側縦框の接合箇所からやや離間した箇所にそれぞれアルミチャネルを埋設したものであっても良い。
【発明の効果】
【0016】

本発明に係る木製サッシュによれば、鴨居の下面側に刻設された2本のガイド溝に凸状ガイド部を複数のネジによって取着する構成としたので、当該凸状ガイド部が経年劣化により腐食し、外障子・内障子の開閉に支障をきたすような場合であっても、容易に新規な凸状ガイド部に交換することができるという効果がある。
【0017】
次に、本発明に係る木製サッシュによれば、敷居の上面側に刻設された2本のレール溝に凸状レール部を複数のネジによって取着する構成としたので、経年劣化により腐食し、外障子・内障子の開閉に支障をきたすような場合であっても、容易に新規な凸状ガイド部に交換することができるという効果がある。
【0018】
また、本発明に係る木製サッシュによれば、外障子及び内障子の下框に取着した平戸車と敷居との接触面を敷居の上面側に刻設された2本のガイド溝に取着した凸状ガイド部上面の凹部に固着したアルミ角棒の面によって構成したことによって、当該敷居の凸状レール部上を摺動する外障子及び内障子が摺動する際に発する摺動音を低減できるという効果がある。
【0019】
更に、本発明に係る木製サッシュによれば、外障子及び内障子を構成する上框及び下框の凹溝に左側縦框及び右側縦框の接合箇所からやや離間した箇所にそれぞれアルミチャネルを埋設することによって、長時間使用に供しても外障子及び内障子のへり止めに効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
先ず、図1は本発明に係る木製サッシュを屋外側から見た正面図、図2は本発明に係る木製サッシュの支持枠正面図、図3は本発明に係る木製サッシュの移動枠正面図である。図示のように、本発明の木製サッシュ1は、鴨居2、右縦枠3、左縦枠4、敷居5から構成される矩形な支持枠6と、当該支持枠6内を左右方向に往復自在な移動枠7として、外障子26、内障子27が引違いに配置されている。更に、外障子26及び内障子27は、それぞれ左側縦框8、右側縦框9、上框10、下框11により枠体が形成されていると共に左右の縦框間と上下の框間にはガラス板12が装着されている。一方、図中の符号13は引手13であり、符号14は締錠14である。以下、別図に基づき、本発明に係る木製サッシュの構成についての説明を進めるものとする。なお、上記ガラス板12は、単板ガラスでも複層ガラスのどちらでも良い。
【0022】
次に、図4は本発明に係る鴨居の平面図、図5は本発明に係る鴨居の正面図、図6は本発明に係る鴨居の底面図、更に図7は本発明に係る鴨居の左側面図、図8は本発明に係る鴨居の右側面図、図9は本発明に係る鴨居のA−A断面図である。図示のように鴨居2の下面側には所定間隔をおいて2本の溝が形成されていると共に長手方向端部には接合凸部28が形成されている。更に、鴨居2の下面内側には長手方向に2本の凸状ガイド部15が複数のネジ16によって取着されている。ここで、凸状ガイド部15は断面コの字形で長手なアルミ製のガイドケース17と、当該ガイドケース17に封着されている断面が矩形で長手な木製ガイド18から構成されている。次に、凸状ガイド部15は鴨居2の下面側に刻設された2本のガイド溝29に嵌着されると共に、複数のネジ16によって木製ガイド18の下面先端から当該木製ガイド18を貫通し鴨居2に取着されている。一方、図中の符号19はボス孔19であり、鴨居2と左縦枠8及び右縦枠9の接合においてボス接合によることから設けられている。ここで、アルミ製のガイドケース17に木製ガイド18を封着した構成体を鴨居2に取着するようにしたのは、経年劣化により木製ガイド18が腐食したような場合に当該構成体をそっくり交換することによって簡単に補修ができるようにしたものである。
【0023】
続いて、図10は左縦枠の正面図、図11は左縦枠の背面図、図12は右縦枠の正面図、図13は右縦枠の背面図、図14は鴨居と縦枠の接合を示した平面図、図15は鴨居と縦枠の接合を示した底面図である。図示のように、鴨居2の長手方向端部の接合凸部28と左縦枠4の凹溝21及び右縦枠3の凹溝21との凹凸部がかみ合うと共にボス20によって接合されて支持枠6を形成している。また、図中では鴨居2と各縦枠との接合においてボス孔19及びボス20は2箇所して図示されているが、鴨居2と各縦枠との接合強度を高める観点から2箇所に限定されるものではなく、適宜増やすことができる。なお、各縦枠の下方に示されているボス孔19は、後述される敷居5との接合に係るものである。そして、図15において、二本の凸状ガイド部15の上側凸状ガイド部15には外障子26及び下側凸状ガイド部15には内障子27が嵌め入れられるものとなり、右縦枠3の接合側の長手方向に形成された凹溝21には外障子26の右側縦框9の先端部が装入され、一方左縦枠4の接合側の長手方向に形成された凹溝21には内障子27の左側縦框8の先端部が装入されるようになり、本発明に係る木製サッシュ1としての気密性を確保している。
【0024】
更に続いて、図16は本発明に係る敷居の平面図、図17は本発明に係る敷居の正面図、図18は本発明に係る敷居の底面図、図19は本発明に係る敷居の右側面図、図20は本発明に係る敷居の左側面図、図21は本発明に係る敷居のB−B断面図である。図示のように敷居5の上面側には上記鴨居2に取着されている2本の凸状ガイド部15と垂直方向に照応するように2本の凸状レール部22が取着されていると共に長手方向端部には接合凸部28が形成されている。ここで、凸状レール部22は断面コの字形で長手なアルミ製のレールケース23と、当該レールケース23に封着されている断面が凹形で長手な木製レール24と更に当該木製レール24の凹部に固着されるアルミ角棒25から構成されている。また、凸状レール部22は敷居5の上面側に刻設された2本のレール溝30に嵌着されると共に、複数のネジ16によってアルミ角棒25の上面から木製レール24、レールケース23を貫通し敷居5に取着されている。更に、敷居5と左縦枠8及び右縦枠9をボス接合するためのボス孔19が設けられている。ここで、上記のようにアルミ製のレールケース23に木製レール24を封着し、また、木製レール24の上面側凹部にアルミ角棒25を固着して、これらの構成体を敷居5に取着するようにしたのは、経年劣化により木製レール24が腐食したような場合に当該構成体をそっくり交換することによって簡単に補修ができるようにしたものである。また、発明が解決しようとする課題の項に前述した内外障子が摺動する敷居凸部の改良に取組んだところ、木製レール24の上面側凹部にアルミ角棒25を固着して構成した敷居凸部とした結果、特許第5473999号に係る発明における凸状レール上を平戸車が摺動する場合に比較し、極めて摺動がスムーズであり且つ摺動音が低減されているという知見を得た。ここで、摺動音が低減される正確な仕組みについては不明であるが、本発明者らの仮説としては発生した摺動音が木製レール24に吸収されることによるのではないかと考えている。
【0025】
次にまた、図22は本発明に係る木製サッシュの構造を示した水平方向の断面図、図23図22における木製サッシュの召し合い部分の拡大図である。図22に示した木製サッシュ1の構造において、右縦枠3と右側縦框9及び左縦枠4と左側縦框8についての納まりについては、既に説明を行っているが右縦枠3の接合側の長手方向に形成された凹溝21には外障子26の右側縦框9の先端部が装入され、一方左縦枠4の接合側の長手方向に形成された凹溝21には内障子27の左側縦框8の先端部が装入されるようになり、本発明に係る木製サッシュ1としての気密性が確保される。また図示のように、屋外側となる外障子26については左側縦框8及び右側縦框9間に二重ガラス板31が嵌め込まれている。同様に、室内側となる内障子27についても右側縦框9及び左側縦框8間に二重ガラス板31が嵌め込まれている。更に、図中の符号32はガラス押縁Aタイプ32であり、符号33はガラス押縁Bタイプ33である。ここで、押縁Aタイプ32及び押縁Bタイプ33のいずれも、外障子26、内障子27に二重ガラス板31を固定するものであるが、押縁Bタイプ33のものは断面がL字形に形成され、ガラス面と僅かな隙間を生じさせて当該隙間にシリコーン製のシーリングパッキンを充填させて気密性を向上させるものである。更に、外障子26と内障子27との召合い部分については、室内側にある右側縦框9の召合い側面の長手方向に凹溝34が形成され、当該凹溝34には断面がカマボコ状で膨出先端が対向する屋外側の左側縦框8の召合い側面に当接するようにシリコーン製のピンチブロック35が装着されている。
【0026】
更にまた、図24は本発明に係る木製サッシュの構造を示した縦断面図である。図示のように、鴨居2の下面内側には2本の凸状ガイド部15が取着され、凸状ガイド部15は断面コの字形のアルミ製のガイドケース17と、当該ガイドケース17に封着されている断面が矩形な木製ガイド18から構成され、凸状ガイド部15は鴨居2の下面側に刻設された2本のガイド溝29に嵌着されると共に、ネジ16によって木製ガイド18の下面先端から当該木製ガイド18を貫通し鴨居2に取着されていることが分かる。一方、敷居5の上面側には上記鴨居2に取着されている2本の凸状ガイド部15と垂直方向に照応するように2本の凸状レール部22が取着され、当該凸状レール部22は断面コの字形でアルミ製のレールケース23と、当該レールケース23に封着されている断面が凹形の木製レール24と更に当該木製レール24の凹部に固着されるアルミ角棒25から構成され、凸状レール部22は敷居5の上面側に刻設された2本のレール溝30に嵌着されると共に、ネジ16によってアルミ角棒25の上面から木製レール24、レールケース23を貫通して敷居5に取着されていることが分かる。更にまた、下框11の下方に内装されている平戸車36が上記凸状レール部22に当接することにより、敷居5の上面と下框11の下面はわずかな間隔をもって装着している。
【0027】
そしてまた、図25及び図26は、それぞれ本発明に係る木製サッシュの障子の平面図及び同じく底面図である。ここで、外障子26及び内障子27は同じ構造であるため、障子の平面図、障子の底面図として、個別には図示しない。図25に図示のように、上框10の凹溝には左側縦框8及び右側縦框9の接合箇所からやや離間した箇所にはそれぞれアルミチャネル37が埋設され、ここで、アルミチャネル37は障子側のへり止めとして埋設されている。更に、図26にも図示のように、下框11の凹溝にも左側縦框8及び右側縦框9の接合箇所からやや離間した箇所にそれぞれアルミチャネル37が障子側のへり止めとして埋設されている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、木製サッシュの最大の弱点である経年劣化によって腐食が生じるという課題に対して、長年の使用によって腐食が生じることが想定される鴨居下面に形成される凸状部を凸状ガイド部としてネジ止めによって分割可能とすると一方、敷居上面に形成される凸状部を凸状レール部としてネジ止めによって分割可能とすることによって、腐食の際のメンテナンスを容易にしたことで外障子・内障子の開閉や気密性に支障が生じることがなく木製サッシュの永続的使用を可能なものとした。
【0029】
更に、本発明の要旨に従うならば、その技術的応用は引違い方式の木製サッシュにのみに限定されるものではなく、片引き方式の木製サッシュに対しても好適に採用されることは明白であるし、湿度の高い日本国内においては今後一般的な木製建具に対する支持枠に対しても技術的応用が可能と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る木製サッシュを屋外側から見た正面図。
図2】本発明に係る木製サッシュの支持枠正面図。
図3】本発明に係る木製サッシュの移動枠正面図。
図4】本発明に係る鴨居の平面図。
図5】本発明に係る鴨居の正面図。
図6】本発明に係る鴨居の底面図。
図7】本発明に係る鴨居の左側面図。
図8】本発明に係る鴨居の右側面図。
図9】本発明に係る鴨居のA−A断面図。
図10】左縦枠の正面図。
図11】左縦枠の背面図。
図12】右縦枠の正面図。
図13】右縦枠の背面図。
図14】鴨居と縦枠の接合を示した平面図。
図15】鴨居と縦枠の接合を示した底面図。
図16】本発明に係る敷居の平面図。
図17】本発明に係る敷居の正面図。
図18】本発明に係る敷居の底面図。
図19】本発明に係る敷居の右側面図。
図20】本発明に係る敷居の左側面図。
図21】本発明に係る敷居のB−B断面図。
図22】本発明に係る木製サッシュの構造を示した水平方向の断面図。
図23図22における木製サッシュの召し合い部分の拡大図。
図24】本発明に係る木製サッシュの構造を示した縦断面図。
図25】本発明に係る木製サッシュの障子の平面図。
図26】本発明に係る木製サッシュの障子の底面図。
【符号の説明】
【0031】
1 本発明の木製サッシュ
2 鴨居
3 右縦枠

4 左縦枠
5 敷居
6 支持枠
7 移動枠
8 左側縦框
9 右側縦框
10 上框
11 下框
13 引手
14 締錠
15 凸状ガイド部
16 ネジ
17 ガイドケース
18 木製ガイド
19 ボス孔
20 ボス
21、34 凹溝
22 凸状レール部
23 レールケース
24 木製レール
25 アルミ角棒
26 外障子
27 内障子

28 接合凸部
29 ガイド溝
30 レール溝
31 二重ガラス板
32 押縁Aタイプ
33 押縁Bタイプ
35 ピンチブロック
36 平戸車
37 アルミチャネル
図1
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