特許第6562813号(P6562813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562813
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】シールド部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   H05K9/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-206539(P2015-206539)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-79263(P2017-79263A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 純也
(72)【発明者】
【氏名】幸田 吉貴
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中井 慧
(72)【発明者】
【氏名】山口 康弘
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033791(JP,A)
【文献】 特開2001−357732(JP,A)
【文献】 実開平01−121998(JP,U)
【文献】 実開昭62−152629(JP,U)
【文献】 特開2015−002146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H02G 3/00 − 3/04
H01B 7/17 − 7/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の可撓性シールド材が、渦巻き状に巻かれて巻装体が形成される巻回工程と、
前記巻装体の内方側巻端が巻き中心軸に沿って引き出され、螺旋状の電線シールド部が形成される引き出し工程と、
前記内方側巻端が引き出された前記巻装体に残った巻装部が、フランジ形状に圧縮成形されるプレス工程と、
を有するシールド部材の製造方法。
【請求項2】
筒状に形成された長尺の可撓性シールド材における長手方向中間部の側面に、貫通穴があけられる穿孔工程と、
前記貫通穴に対する前記可撓性シールド材の一端側が、前記貫通穴を中心に渦巻き状に巻かれて巻装部が形成される巻回工程と、
前記巻装部が、フランジ形状に圧縮成形されるプレス工程と、
を有するシールド部材の製造方法。
【請求項3】
前記プレス工程において、
プレス型内に突設した円柱突起が前記巻装部の巻回隙間に挿入された状態で圧縮成形されることにより、固定部材挿入孔が一体成形される請求項1又は2に記載のシールド部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド電気自動車等に搭載される金属製のシールドケースに、メッシュ状に編んだ筒状の編組線などのシールド部材を取り付けるシールド構造については、様々な提案がなされている。更に、このようなシールド構造において、シールド電線のシールド部材(編組や金属箔など)の端末部にフランジ部を一体に設けることで、シールド性を向上させると共に、シールドケースに対する取付性を向上させたシールド部材が提案されている。
【0003】
図15の(a)に示すように、例えば、特許文献1に開示されているシールド部材501は、複数本の電線の長手方向に沿った本体部511と、本体部511のシールドケース側に設けられた端末部に一体に設けられ、シールドケースの壁面(図示せず)に対向するフランジ部512とを備えている。
【0004】
このようなシールド部材501を製造する際には、先ず、本体部511の端末を複数層に折り返して広げる。この時、メッシュ状の編組線に隙間が生じないように複数層に折り返すことが好ましい。また、本体部511の端末を広げた後に、複数層に折り返してもよい。
次いで、図15の(b)に示すように、広げられた端末部に、プレス機550を用いてプレスすることで、フランジ部512を一体に加工し、フランジ部512の剛性を本体部511よりも高くしている。ここで、プレス機550の上側金型551及び下側金型561には、フランジ部512を形成するための段部553,563が設けられている。
【0005】
このようなシールド部材501によれば、従来のようにシールド部材とシールドシェルとが個別の場合と比較して、シールド部材501の端末部にフランジ部512(シールドシェル)を取り付ける過程が不要となり、シールドケースにシールド部材501を直接取り付けるのみで済むので、シールドケースに対する取付性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−165484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図15に示したシールド部材501の場合、略筒状の本体部511の端末を複数層に折り返すと共に広げてプレス加工しなければならないが、編組線から成る本体部511の端末部に加工を施すことは難しく、複雑な形状のフランジ部512の形成や、形成できるフランジ部512の大きさに制約があるという問題があった。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、フランジ部の成形性がよく設計自由度が高いシールド部材を安価に製造することができるシールド部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 長尺の可撓性シールド材が、渦巻き状に巻かれて巻装体が形成される巻回工程と、
前記巻装体の内方側巻端が巻き中心軸に沿って引き出され、螺旋状の電線シールド部が形成される引き出し工程と、
前記内方側巻端が引き出された前記巻装体に残った巻装部が、フランジ形状に圧縮成形されるプレス工程と、
を有するシールド部材の製造方法。
【0010】
上記(1)に記載のシールド部材の製造方法によれば、長尺の可撓性シールド材が渦巻き状に巻き付けられて形成される巻装部は、略筒状の本体部の端末を複数層に折り返すと共に広げてプレス加工していた従来方法に比べて、圧縮成形する際に複雑な形状に成形することや、大径のフランジ部(フランジ形状に圧縮成形された部分)を形成することが容易である。
また、巻回工程における巻装体の巻回数や、引き出し工程における内方側巻端の引き出し量を適宜変更することで、フランジ部の外径や電線シールド部の内径を容易に変更することができる。そこで、電線径や電線本数が異なる仕様においても、同一形状(幅、厚み等)の長尺の可撓性シールド材を使用することができる。
【0011】
(2) 筒状に形成された長尺の可撓性シールド材における長手方向中間部の側面に、貫通穴があけられる穿孔工程と、
前記貫通穴に対する前記可撓性シールド材の一端側が、前記貫通穴を中心に渦巻き状に巻かれて巻装部が形成される巻回工程と、
前記巻装部が、フランジ形状に圧縮成形されるプレス工程と、
を有するシールド部材の製造方法。
【0012】
上記(2)に記載のシールド部材の製造方法によれば、可撓性シールド材の一端側が渦巻き状に巻き付けられて形成された巻装部は、略筒状の本体部の端末を複数層に折り返すと共に広げてプレス加工していた従来方法に比べて、圧縮成形する際に複雑な形状に成形することや、大径のフランジ部(フランジ形状に圧縮成形された部分)を形成することが容易である。
また、穿孔工程においてあけられる貫通穴の可撓性シールド材における長手方向位置を適宜変更することで、フランジ部の外径や電線シールド部の全長を容易に変更することができる。
【0013】
(3) 前記プレス工程において、
プレス型内に突設した円柱突起が前記巻装部の巻回隙間に挿入された状態で圧縮成形されることにより、固定部材挿入孔が一体成形される上記(1)又は(2)に記載のシールド部材の製造方法。
【0014】
上記(3)に記載のシールド部材の製造方法によれば、プレス工程においてフランジ部の固定部材挿入孔を一体成形することで、後加工が不要となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るシールド部材の製造方法によれば、フランジ部の成形性がよく設計自由度が高いシールド部材を安価に製造することができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るシールド部材の製造方法により製造されたシールド部材の全体斜視図である。
図2】(a)〜(d)は、本第1実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図3】本第1実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図4】本第1実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図5】本第1実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図6】本第1実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図7】本第1実施形態の変形例に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図8】本第1実施形態の変形例に係るシールド部材の要部斜視図である。
図9】(a)及び(b)は、本第1実施形態の他の変形例に係るシールド部材の要部斜視図である。
図10】(a)及び(b)は、本発明の第2実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図11】(a)及び(b)は、本第2実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図12】(a)及び(b)は、本第2実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図13】本第2実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
図14】本第2実施形態に係るシールド部材の要部斜視図である。
図15】(a)は従来のシールド部材を示す組立斜視図、(b)は(a)に示したシールド部材の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るシールド部材及びその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るシールド部材1は、複数本の電線3を一括して包囲するとともに、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されるインバータやモータなどの様々な電気機器の金属製の筐体(図示せず)に設けられた差し込み口に直接取り付けられるものである。
【0019】
このシールド部材1は、金属箔やメッシュテープ等を長尺の板状に成形した可撓性シールド材21や、金属細線をメッシュ状に編んだ筒状の金属編組や金属細線をメリヤス状に編んだ筒状のメリヤス編み金属メッシュ等を潰して長尺の板状に成形した可撓性シールド材61によって形成されている(図2参照)。なお、本発明の可撓性シールド材は、これに限定されるものではなく、種々の形態の導電性部材によって長尺の板状に形成されていればよい。
【0020】
本第1実施形態のシールド部材1は、複数本の電線3の長手方向に沿った電線シールド部11と、電線シールド部11の筐体側に設けられた端末部に一体に設けられ、筐体の壁面に対向するフランジ部13と、を備えている。
電線シールド部11は、帯板状(長尺の板状)に形成された可撓性シールド材21(61)が渦巻き状に巻かれて形成された巻装体23の内方側巻端23aが、巻き中心軸に沿って引き出されることによって螺旋状に形成されている。
フランジ部13は、内方側巻端23aが引き出された巻装体23に残った巻装部25が、円板形状のフランジ形状に圧縮成形されることによって形成されている。フランジ部13には、ボルトやブラインドリベット等の固定部材(図示せず)が挿入される固定部材挿入孔15が形成されている。この固定部材挿入孔15に挿入された固定部材により、シールド部材1が電気機器の筐体に直接固定される。
【0021】
上述した本第1実施形態に係るシールド部材1によれば、巻装体23の内方側巻端23aが巻き中心軸に沿って引き出されることによって螺旋状に形成される電線シールド部11は、内径の変更が容易である。また、巻装部25が圧縮成形されることによって円板形状に形成されるフランジ部13は、外径の変更が容易である。このように、可撓性シールド材21(61)が渦巻き状に巻かれて形成された巻装体23から形成されたシールド部材1は、電線シールド部11の端末部に加工されるフランジ部13の成形性がよく、設計自由度が高い。
【0022】
次に、上述したシールド部材1を製造するシールド部材の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図2図6は、本発明の第1実施形態に係るシールド部材1の製造方法を示す説明図である。
【0023】
先ず、巻回工程において、図2の(a)に示した金属箔やメッシュテープからなる帯板状の可撓性シールド材21の場合は、図2の(d)に示すように、渦巻き状に巻かれて巻装体23が形成される。
また、図2の(b)に示した金属編組やメリヤス編み金属メッシュからなる筒状の可撓性シールド材61の場合は、図2の(b)に示す板状に潰された後、図2の(d)に示すように、渦巻き状に巻かれて巻装体23が形成される。
【0024】
次に、引き出し工程において、上記巻回工程において形成された巻装体23の内方側巻端23aが巻き中心軸に沿って引き出され、図3に示すように、電線3の長手方向に沿って螺旋状に延びる電線シールド部11が形成される。
【0025】
そして、プレス工程において、図4及び図5に示すように、内方側巻端23aが引き出された巻装体23に残った巻装部25が、プレス機55により円板形状のフランジ形状に圧縮成形されることで、電線シールド部11の端末部にフランジ部13が一体に加工される。
【0026】
プレス機55は、図4に示すように、上側金型51と下側金型53とからなるプレス型を備えている。これら上側金型51及び下側金型53の型合わせ面には、フランジ部13を形成するためのキャビティがそれぞれ形成されている。
【0027】
プレス型内である下側金型53のキャビティには、電線シールド部11の端末部が嵌挿される円錐台突起59と、円錐台突起59の周囲に等間隔に配置された4本の円柱突起57とが突設されている。また、上側金型51のキャビティには、円柱突起57にそれぞれ対向して型締め時に各円柱突起57の先端部が収容される収容穴58が穿設されている。
【0028】
そこで、図4に示すように、巻装部25が下側金型53のキャビティにセットされる際には、円錐台突起59が電線シールド部11の端末部に嵌挿されるとともに、各円柱突起57が巻装部25の巻回隙間に挿入された状態となる。なお、巻装部25の巻回隙間に円柱突起57を挿入した状態とするためには、図3に示したように予め渦巻き状に巻かれた巻装体23を下側金型53のキャビティにセットする際、各円柱突起57を巻装部25の巻回隙間に圧入する。また、巻回工程を下側金型53のキャビティ内で実施することで、可撓性シールド材21(61)を渦巻き状に巻いて巻装体23を形成しながら各円柱突起57を巻装部25の巻回隙間に挿入してもよい。
そして、図5に示すように、上側金型51と下側金型53とが型締めされることにより、巻装部25が円板形状のフランジ形状に圧縮成形される。その結果、図6に示すように、電線シールド部11の端末部には、4つの固定部材挿入孔15を有するフランジ部13が一体成形される。
【0029】
上述した本第1実施形態に係るシールド部材1を製造するシールド部材の製造方法によれば、長尺の可撓性シールド材21(61)が渦巻き状に巻き付けられて形成される巻装部25は、図15に示したように略筒状の本体部511の端末を複数層に折り返すと共に広げてプレス加工していた従来方法に比べて、圧縮成形する際に複雑な形状に成形することや、大径のフランジ部(フランジ形状に圧縮成形された部分)13を形成することが容易である。即ち、可撓性シールド材21の幅や厚み、巻回工程における巻装体23の巻回数等を適宜変更することで、所定形状のフランジ部を形成するために必要な巻装部25の体積を容易に確保することができる。
【0030】
また、巻回工程における巻装体23の巻回数や、引き出し工程における内方側巻端23aの引き出し量を適宜変更することで、フランジ部13の外径や電線シールド部11の内径を容易に変更することができる。そこで、電線3の電線径や電線本数が異なる仕様においても、同一形状(幅、厚み等)の長尺の可撓性シールド材21(61)を使用することができる。その結果、複数種の可撓性シールド材21(61)を用意する必要がなくなり、製造コストを低減できる。
【0031】
更に、本第1実施形態に係るシールド部材1を製造するシールド部材の製造方法によれば、プレス工程において、プレス型内に突設した4本の円柱突起57が巻装部25の巻回隙間に挿入された状態で圧縮成形されることにより、4つの固定部材挿入孔15が一体成形される。即ち、プレス工程においてフランジ部13に固定部材挿入孔15を一体成形することで、後加工が不要となり、加工コストを低減できる。勿論、本発明のシールド部材の製造方法は、固定部材挿入孔15を後工程でフランジ部13に形成してもよい。
【0032】
図7及び図8は、本第1実施形態の変形例に係るシールド部材の製造方法を示す説明図及びシールド部材31の要部斜視図である。なお、上記第1実施形態のシールド部材1と同様の部分には同符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0033】
先ず、長尺の可撓性シールド材21が、渦巻き状に巻かれて巻装体23が形成される巻回工程と、巻装体23の内方側巻端23aが巻き中心軸に沿って引き出され、螺旋状の電線シールド部11が形成される引き出し工程とは、上記第1実施形態に係るシールド部材の製造方法と全く同じである。
【0034】
そして、プレス工程において、図7に示すように、内方側巻端23aが引き出された巻装体23に残った巻装部25が、プレス機75により円板形の段付きフランジ形状に圧縮成形されることで、電線シールド部11の端末部にフランジ部35が一体に加工される。
【0035】
プレス機75は、上側金型71と下側金型73とからなるプレス型を備えている。これら上側金型71及び下側金型73の型合わせ面には、フランジ部35を形成するためのキャビティがそれぞれ形成されている。
【0036】
プレス型内である下側金型73のキャビティには、電線シールド部11の端末部が嵌挿される円錐台突起76と、円錐台突起76の基部外周に形成された円環状段部77と、円錐台突起76の周囲に等間隔に配置された4本の円柱突起79とが突設されている。また、上側金型71のキャビティには、円柱突起79にそれぞれ対向して型締め時に各円柱突起79の先端部が収容される収容穴78が穿設されるとともに、円環状段部77に対向する円環状凹部72が凹設されている。
【0037】
そこで、図7に示すように、巻装部25が下側金型73のキャビティにセットされる際には、円錐台突起59が電線シールド部11の端末部に嵌挿され、円環状段部77の上に巻装部25の一部が載置されるとともに、各円柱突起79が巻装部25の巻回隙間に挿入され、先端部が収容穴78に収容された状態となる。
【0038】
そして、上側金型71と下側金型73とが型締めされることにより、巻装部25が円板形の段付きフランジ形状に圧縮成形される。その結果、図8に示すように、円環状の段差面37と4つの固定部材挿入孔15を有するフランジ部35が電線シールド部11の端末部に一体成形されたシールド部材31が形成される。
ここで、シールド部材31のフランジ部35は、段差面37により形成された円柱状凹部にコネクタハウジング5を収容した状態で、このコネクタハウジング5を覆うように筐体(図示せず)の外側面に固定される。絶縁樹脂材を用いて成形されたコネクタハウジング5は、複数本(本実施形態では3本)の電線3の端部にそれぞれ接続された端子7を端子収容室に保持した状態で、筐体の差し込み口に嵌挿されて取り付けられる。このように、本実施形態のシールド部材31は、コネクタハウジング5と伴にシールドコネクタ10を容易に構成することができる。
【0039】
この様に、プレス型におけるキャビティ形状を適宜変更することで、例えば図9の(a)に示したように、円環状の段差面47と4つの固定部材挿入孔15を有する矩形板形状のフランジ部45が電線シールド部11の端末部に一体成形されたシールド部材41や、図9の(b)に示したように、円環状の段差面87と一対の固定部材挿入孔15を有するひし形板形状のフランジ部85が電線シールド部11の端末部に一体成形されたシールド部材81を容易に製造することができる。勿論、フランジ部は、上述した円形板形状、矩形板形状及びひし形板形状に限らず、非円形板形状や多角形板形状、カップ形状等の種々のフランジ形状を採りうる。また、例えばコネクタハウジングを収容する凹部を形成するための段差面も円環状に限らず、コネクタハウジングの外形状に合わせて長円状や多角形状等の種々の形状を採りうる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係るシールド部材の製造方法について、図10図13を参照しながら説明する。なお、上記第1実施形態のシールド部材の製造方法と同様の部分には同符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0041】
先ず、穿孔工程において、図10の(a)に示した金属編組やメリヤス編み金属メッシュからなる筒状に形成された長尺の可撓性シールド材63における長手方向中間部の側面に、図10の(b)示すように貫通穴65があけられる。
【0042】
次に、巻回工程において、図11の(a)に示すように、貫通穴65に対する可撓性シールド材63の一端側67が板状に潰された後、図11の(b)に示すように、この一端側67が貫通穴65を中心に渦巻き状に巻かれて巻装部68が形成される。貫通穴65に対する可撓性シールド材63の他端側には、円筒状の電線シールド部66が形成される。
【0043】
そして、プレス工程において、図12及び図13に示すように、渦巻き状に巻かれた巻装部68が、プレス機55により円板形状のフランジ形状に圧縮成形されることで、電線シールド部66の端末部にフランジ部95が一体に加工される。
【0044】
即ち、図12の(a)に示したように電線シールド部66の端末部に巻装部68が形成された可撓性シールド材63は、巻装部68が下側金型53のキャビティにセットされる際には、図12の(b)に示すように、円錐台突起59が電線シールド部66の貫通穴65に嵌挿されるとともに、各円柱突起57が巻装部68の巻回隙間に挿入された状態となる。
そして、図13に示すように、上側金型51と下側金型53とが型締めされることにより、巻装部68が円板形状のフランジ形状に圧縮成形される。その結果、図14に示すように、4つの固定部材挿入孔15を有するフランジ部95が電線シールド部66の端末部に一体成形されたシールド部材91が形成される。
【0045】
上述した本第2実施形態に係るシールド部材91を製造するシールド部材の製造方法によれば、筒状に形成された長尺の可撓性シールド材63の一端側67が渦巻き状に巻き付けられて形成された巻装部68は、図15に示したように略筒状の本体部511の端末を複数層に折り返すと共に広げてプレス加工していた従来方法に比べて、圧縮成形する際に複雑な形状に成形することや、大径のフランジ部(フランジ形状に圧縮成形された部分)95を形成することが容易である。即ち、筒状の可撓性シールド材63の全長や外径、巻回工程における一端側67の巻回数等を適宜変更することで、所定形状のフランジ部を形成するために必要な巻装部68の体積を容易に確保することができる。
【0046】
また、可撓性シールド材63の全長や穿孔工程においてあけられる貫通穴65の可撓性シールド材63における長手方向位置を適宜変更することで、フランジ部95の外径や電線シールド部66の全長を容易に変更することができる。
【0047】
上述した本第2実施形態に係るシールド部材91は、筒状に形成された長尺の可撓性シールド材63における長手方向中間部の側面にあけられた貫通穴65と、貫通穴65に対する可撓性シールド材63の一端側67が貫通穴65を中心に渦巻き状に巻かれて形成された巻装部68が、フランジ形状に圧縮成形されたフランジ部95と、可撓性シールド材63の他端側に形成された筒状の電線シールド部66と、を備える。
【0048】
このシールド部材91によれば、可撓性シールド材63の一端側67が渦巻き状に巻き付けられて形成された巻装部68は、圧縮成形する際に複雑な形状に成形することや、大径のフランジ部95を形成することが容易である。また、筒状に形成された可撓性シールド材63は、電線シールド部66の全長を容易に変更することができる。更に、電線シールド部66は、隙間のない長尺円筒状に形成されるので、シールド性が高い。
【0049】
従って、上述した本実施形態に係るシールド部材の製造方法によれば、フランジ部13(35,45,85,95)の成形性がよく設計自由度が高いシールド部材1(31,41,81,91)を安価に製造することができる。
【0050】
ここで、上述した本発明に係るシールド部材の製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 長尺の可撓性シールド材(21,61)が、渦巻き状に巻かれて巻装体(23)が形成される巻回工程と、
前記巻装体の内方側巻端(23a)が巻き中心軸に沿って引き出され、螺旋状の電線シールド部(11)が形成される引き出し工程と、
前記内方側巻端が引き出された前記巻装体に残った巻装部(25)が、フランジ形状に圧縮成形されるプレス工程と、
を有するシールド部材(1)の製造方法。
[2] 筒状に形成された長尺の可撓性シールド材(63)における長手方向中間部の側面に、貫通穴(65)があけられる穿孔工程と、
前記貫通穴に対する前記可撓性シールド材の一端側(67)が、前記貫通穴を中心に渦巻き状に巻かれて巻装部(68)が形成される巻回工程と、
前記巻装部が、フランジ形状に圧縮成形されるプレス工程と、
を有するシールド部材(91)の製造方法。
[3] 前記プレス工程において、
プレス型(下側金型53)内に突設した円柱突起(57)が前記巻装部(25,68)の巻回隙間に挿入された状態で圧縮成形されることにより、固定部材挿入孔(15)が一体成形される上記[1]又は[2]に記載のシールド部材(1,91)の製造方法。
[4] 長尺の可撓性シールド材(21,61)が渦巻き状に巻かれて形成された巻装体(23)の内方側巻端(23a)が、巻き中心軸に沿って引き出されて形成された螺旋状の電線シールド部(11)と、
前記内方側巻端が引き出された前記巻装体に残った巻装部(25)が、フランジ形状に圧縮成形されたフランジ部(13)と、
を備えたシールド部材(1)。
[5] 筒状に形成された長尺の可撓性シールド材(63)における長手方向中間部の側面にあけられた貫通穴(65)と、
前記貫通穴に対する前記可撓性シールド材の一端側(67)が前記貫通穴を中心に渦巻き状に巻かれて形成された巻装部(68)が、フランジ形状に圧縮成形されたフランジ部(95)と、
前記可撓性シールド材の他端側に形成された筒状の電線シールド部(66)と、
を備えたシールド部材(91)。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0052】
1…シールド部材
11…電線シールド部
13…フランジ部
15…固定部材挿入孔
21,61…可撓性シールド材
23…巻装体
23a…内方側巻端
25…巻装部
51…上側金型
53…下側金型(プレス型)
55…プレス機
57…円柱突起
58…収容穴
59…円錐台突起
図1
図2
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