特許第6562827号(P6562827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6562827-パンチ金型及び建材用孔開け加工方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562827
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】パンチ金型及び建材用孔開け加工方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/02 20060101AFI20190808BHJP
   B21D 28/00 20060101ALI20190808BHJP
   B21D 28/16 20060101ALI20190808BHJP
   B21D 28/34 20060101ALI20190808BHJP
   B26D 7/08 20060101ALI20190808BHJP
   B26F 1/00 20060101ALI20190808BHJP
   B26F 1/02 20060101ALI20190808BHJP
   B26F 1/14 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B26D7/02 D
   B21D28/00 D
   B21D28/16
   B21D28/34 A
   B21D28/34 D
   B26D7/08 D
   B26F1/00 H
   B26F1/02 B
   B26F1/02 C
   B26F1/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-240097(P2015-240097)
(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2017-104932(P2017-104932A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年11月2日
【審判番号】不服2018-12278(P2018-12278/J1)
【審判請求日】2018年9月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391019304
【氏名又は名称】株式会社コニック
(73)【特許権者】
【識別番号】515342136
【氏名又は名称】株式会社北野産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝霧 茂
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏二
(72)【発明者】
【氏名】北野 仁史
【合議体】
【審判長】 平岩 正一
【審判官】 青木 良憲
【審判官】 栗田 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−263150(JP,A)
【文献】 特開平3−110026(JP,A)
【文献】 実開昭47−11488(JP,U)
【文献】 特開平8−294737(JP,A)
【文献】 特開2015−93299(JP,A)
【文献】 実開平1−96237(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/24
B21D 28/34
B26D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧に対して弾性変形可能な材料からなる被加工物に孔開け加工を行うパンチ金型であって、
前記被加工物の弾性変形可能な表面と対向して接離自在な第一加圧面及びパンチ孔を有するパンチガイドと、
前記被加工物の弾性変形可能な裏面と対向して接離自在な第二加圧面及びダイ孔を有するダイと、
前記パンチガイドの内部に支持され、前記パンチ孔又は前記ダイの前記ダイ孔のいずれか一方から他方に向け移動して前記被加工物を貫通する切刃部を有するパンチと、を備え、
前記パンチガイドの前記第一加圧面は、前記孔開け加工時に前記被加工物の前記表面と面接触して圧接され、前記パンチ孔の孔縁に沿って前記被加工物の前記表面へ食い込むように突出形成される第一突起部を有し、
前記ダイの前記第二加圧面は、前記孔開け加工時に前記被加工物の前記裏面と面接触して圧接され、前記ダイ孔の孔縁に沿って前記被加工物の前記裏面へ食い込むように突出形成される第二突起部を有し、
前記被加工物は、前記表面に対する前記第一突起部の食い込みと、前記裏面に対する前記第二突起部の食い込みにより、前記第一加圧面と前記第二加圧面の間に移動不能に挟持されて位置決め保持され、この位置決め保持状態で前記切刃部と前記ダイ孔により前記被加工物に貫通孔が打ち抜かれることを特徴とするパンチ金型。
【請求項2】
前記第一突起部が、その突出端に向かって徐々に肉厚が薄くなる第一尖端部位を有し、前記第二突起部が、その突出端に向かって徐々に肉厚が薄くなる第二尖端部位を有し、前記第一尖端部位及び前記第二尖端部位の頂角が、前記被加工物の硬度又は厚みに対応して設定されることを特徴とする請求項1記載のパンチ金型。
【請求項3】
前記被加工物が透明なポリカーボネイト板であることを特徴とする請求項1記載のパンチ金型。
【請求項4】
加圧に対して弾性変形可能な材料からなる被加工物として板状の建材に孔開け加工する建材用孔開け加工方法であって、
前記被加工物の弾性変形可能な表面にパンチガイドの第一加圧面が圧接し、前記被加工物の弾性変形可能な裏面にダイの第二加圧面が圧接して、前記第一加圧面と前記第二加圧面の間に前記被加工物を移動不能に挟み込む位置決め工程と、
前記パンチガイドのパンチ孔又は前記ダイのダイ孔のいずれか一方から他方に向けパンチが移動して、前記被加工物に前記パンチの切刃部を貫通させる打ち抜き工程と、を含み、
前記位置決め工程は、前記被加工物の前記表面に対する前記第一加圧面の圧接により、前記パンチ孔の孔縁に沿って突出形成された第一突起部を前記被加工物の前記表面へ食い込ませると同時に、前記被加工物の前記裏面に対する前記第二加圧面の圧接により、前記ダイ孔の孔縁に沿って突出形成された第二突起部を前記被加工物の前記裏面へ食い込ませ、前記第一突起部及び前記第二突起部の食い込みと、前記被加工物の前記表面に対する前記第一加圧面の圧接及び前記被加工物の前記裏面に対する前記第二加圧面の圧接とによって前記第一加圧面と前記第二加圧面の間に前記被加工物を移動不能に挟持して位置決め保持し、
前記打ち抜き工程は、前記第一加圧面と前記第二加圧面の間に前記被加工物を移動不能に挟持して位置決め保持された位置決め状態で、前記パンチの移動により前記被加工物に貫通孔が開けられることを特徴とする建材用孔開け加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状などの被加工物に孔開け加工を行うためのパンチ金型(孔開け加工装置)、及び、それを使用した建材用孔開け加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパンチ金型として、材質が鉄やステンレス,アルミニウム等からなる板状の金属材料に、ウレタンゴム等の軟質材料や発泡樹脂材料等を接着した軟質積層材料である被加工材を、タレットパンチプレス機により孔あけ加工する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたものは、板状の被加工材の位置決め装置と、上金型を装着する上タレットと、下金型を装着する下タレットと、上タレットに配置されて上金型を上下方向摺動可能に収容保持する上金型ホルダーと、上金型を押圧するラムを具えたプレス駆動装置から成るタレットパンチプレス機において、被加工材を下金型と上金型の間に位置決めするために設けた下金型上面から上タレット下面又は上金型ホルダー下面までの垂直方向の空間を変更する手段を設けている。
この上金型と下金型の空間を変動させる手段の一例として、被加工材を位置決めするときは、上金型ホルダーを上昇させることにより、下金型上面から上金型ホルダー下面までの前記空間を広くしている。上金型(パンチの切刃部)による孔あけ加工時及び孔あけ加工後に上金型を被加工材から引抜くときには、上金型ホルダーを被加工材に永久歪が生じない範囲の位置まで下降させるか、又は下金型(ダイ)を上昇させて、下金型上面から上金型ホルダー下面までの前記空間を狭くしている。
これにより、被加工材に加わる面圧が軽減されて、被加工材の軟質材料や発泡樹脂材料等に凹みが生じ永久歪として残留しない孔あけ加工を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−001258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなパンチ金型により孔開け加工(打ち抜き加工)される対象物は、その全体が金属などの硬質材料からなる板状の被加工物や、特許文献1に記載の金属材料に軟質材料や発泡樹脂材料等が積層された板状の被加工物に限られず、全体又は少なくとも表裏両面が合成樹脂やゴムなどの変形可能な軟質材料からなる板状又はフィルム状の被加工物がある。
しかし、特許文献1に記載のパンチ金型では、変形可能な軟質材料からなる被加工物を開け加工すると、上金型ホルダーの下面が被加工物の表面に圧接するものの、被加工材に加わる面圧を軽減させる必要があるため、軟質材料からなる被加工物に上金型(パンチの切刃部)を突き当てて開け加工すると、軟質材料からなる被加工物が変形して下金型(ダイ)のダイ孔に引き込まれてしまう。
これにより、被加工物に対し切刃部によるクラック発生点が刃先から僅かに位置ズレしてしまい、孔開けした孔縁に抜きバリとなって残り易いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を達成するために本発明に係るパンチ金型は、加圧に対して弾性変形可能な材料からなる被加工物に孔開け加工を行うパンチ金型であって、前記被加工物の弾性変形可能な表面と対向して接離自在な第一加圧面及びパンチ孔を有するパンチガイドと、前記被加工物の弾性変形可能な裏面と対向して接離自在な第二加圧面及びダイ孔を有するダイと、前記パンチガイドの内部に支持され、前記パンチ孔又は前記ダイの前記ダイ孔のいずれか一方から他方に向け移動して前記被加工物を貫通する切刃部を有するパンチと、を備え、前記パンチガイドの前記第一加圧面は、前記孔開け加工時に前記被加工物の前記表面と面接触して圧接され、前記パンチ孔の孔縁に沿って前記被加工物の前記表面へ食い込むように突出形成される第一突起部を有し、前記ダイの前記第二加圧面は、前記孔開け加工時に前記被加工物の前記裏面と面接触して圧接され、前記ダイ孔の孔縁に沿って前記被加工物の前記裏面へ食い込むように突出形成される第二突起部を有し、前記被加工物は、前記表面に対する前記第一突起部の食い込みと、前記裏面に対する前記第二突起部の食い込みにより、前記第一加圧面と前記第二加圧面の間に移動不能に挟持されて位置決め保持され、この位置決め保持状態で前記切刃部と前記ダイ孔により前記被加工物に貫通孔が打ち抜かれることを特徴とする。
また、このような課題を達成するために本発明に係る建材用孔開け加工方法は、加圧に対して弾性変形可能な材料からなる被加工物として板状の建材に孔開け加工する建材用孔開け加工方法であって、前記被加工物の弾性変形可能な表面にパンチガイドの第一加圧面が圧接し、前記被加工物の弾性変形可能な裏面にダイの第二加圧面が圧接して、前記第一加圧面と前記第二加圧面の間に前記被加工物を移動不能に挟み込む位置決め工程と、前記パンチガイドのパンチ孔又は前記ダイのダイ孔のいずれか一方から他方に向けパンチが移動して、前記被加工物に前記パンチの切刃部を貫通させる打ち抜き工程と、を含み、前記位置決め工程は、前記被加工物の前記表面に対する前記第一加圧面の圧接により、前記パンチ孔の孔縁に沿って突出形成された第一突起部を前記被加工物の前記表面へ食い込ませると同時に、前記被加工物の前記裏面に対する前記第二加圧面の圧接により、前記ダイ孔の孔縁に沿って突出形成された第二突起部を前記被加工物の前記裏面へ食い込ませ、前記第一突起部及び前記第二突起部の食い込みと、前記被加工物の前記表面に対する前記第一加圧面の圧接及び前記被加工物の前記裏面に対する前記第二加圧面の圧接とによって前記第一加圧面と前記第二加圧面の間に前記被加工物を移動不能に挟持して位置決め保持し、前記打ち抜き工程は、前記第一加圧面と前記第二加圧面の間に前記被加工物を移動不能に挟持して位置決め保持された位置決め状態で、前記パンチの移動により前記被加工物に貫通孔が開けられることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係るパンチ金型の全体構成を示す説明図であり、(a)が孔開け前の一部切欠正面図、(b)が要部を部分拡大した縦断正面図である。
図2図1(a)の(2)−(2)線に沿える拡大横断平面図である。
図3】孔開け時を示す説明図であり、(a)が一部切欠正面図、(b)が要部を部分拡大した縦断正面図である。
図4】二次加工用金型の全体構成を示す説明図であり、(a)が二次加工時の一部切欠正面図、(b)が要部を部分拡大した縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るパンチ金型Aは、図1図3に示すように、タレットパンチプレスなどのようなパンチプレス機Bに装着され、少なくとも表面W1及び裏面W2が弾性変形可能な被加工物Wに孔開け加工(打ち抜き加工)を行うためのパンチ金型及びダイ金型である。パンチ金型Aをパンチプレス機Bに装着されることで、孔開け加工装置が構成される。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係るパンチ金型Aは、被加工物Wの弾性変形可能な表面W1に接するパンチガイド1と、被加工物Wの弾性変形可能な裏面W2に接するダイ2と、パンチガイド1又はダイ2のいずれか一方から他方に向け移動するパンチ3と、を主要な構成要素として備えている。
【0008】
パンチ3は、パンチガイド1の内部に支持されるパンチボディ3aと、被加工物Wを貫通する切刃部3bと、を有している。
パンチ3の具体例として図1図3に示される場合には、切刃部3bの先端形状を円弧状に凹むように形成している。
また、その他の例として図示しないが、切刃部3bの先端形状を円弧以外の形状に変更することも可能である。
【0009】
なお、パンチガイド1とダイ2は、図1図3に示されるように、通常、被加工物Wの加工位置Pを挟んで上下方向へ対向するように配置され、パンチ3の移動によって被加工物Wに貫通孔W3が開けられる方向を以下「Z方向」という。
Z方向と交差(直交)する被加工物Wの表面W1及び裏面W2に沿った方向を以下「X方向」「Y方向」という。
図1図3に示される例では、一つの被加工物Wに対してパンチ3及びダイ2が一組のみ配備され、パンチ3及びダイ2による孔開け作動で、一つの被加工物Wに一つの貫通孔W3が開けられる場合を示している。
また、その他の例として図示しないが、一つの被加工物Wに対してパンチ3及びダイ2とダイ2を複数組配備することにより、これらの孔開け作動で一つの被加工物Wに複数の貫通孔W3を同時に開けることも可能である。この多連孔開け加工の場合には、複数組のパンチ3及びダイ2がX方向又はY方向のいずれか一方若しくはX方向及びY方向の両方へそれぞれ配置される。
【0010】
パンチプレス機Bが図1図3に示されるタレットパンチプレスである場合には、少なくとも上タレットなどの第一ホルダB1と、下タレットなどの第二ホルダB2と、を有している。第一ホルダB1及び第二ホルダB2は、円盤状又は扇状に形成され、Z方向へ対向するように配置しており、回転支持部(図示しない)を中心として回転自在に支持されるとともに、回転駆動部(図示しない)でそれぞれ回転移動制御されている。
第一ホルダB1には、その回転方向へ所定間隔毎に打ち抜き用のパンチガイド1やその他の工具などが、必要に応じてZ方向へ往復動自在に取り付けられる。パンチガイド1の内部には、打ち抜き用のパンチ3がZ方向へ往復動自在に支持されている。
第二ホルダB2には、その回転方向へ所定間隔毎に打ち抜き用のダイ2やその他の工具などが取り付けられる。ダイ2は、第二ホルダB2に対しダイホルダB3を介して支持されている。被加工物Wの孔開け加工時には、パンチガイド1及びパンチ3がダイ2とZ方向へ一直線上に配置される。
さらに、タレットパンチプレスは、NC制御などにより予め設定されたプログラムに従って、前記回転駆動部や後述するプレス駆動部B4などを順次それぞれ作動制御している。
タレットパンチプレスにより被加工物Wの孔開け加工を行う場合には、図3(a)(b)に示されるように、プレス駆動部(ストライカー)B4の加圧力をパンチヘッド4で受け、その力をパンチ3のパンチボディ3aに伝える。これにより、先ずパンチガイド1がダイ2に向け接近移動し、両者間に被加工物Wを挟み込んでZ方向及びXY方向へ移動不能に位置決めする。次に切刃部3bとダイ2で被加工物Wを打ち抜き、貫通孔W3が開けられる。この打ち抜き加工後は、弾性部材5の反発力により切刃部3bを被加工物Wから引き抜き、その後、被加工物Wからパンチガイド1が離れて初期状態に戻る。
【0011】
被加工物Wは、その全体が金属などの硬質材料よりも軟らかいポリカーボネイト(PC),ポリプロピレン(PP),塩化ビニル(PVC),ポリエチレン(PE),ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明又は不透明な合成樹脂やゴム又はこれに類似する材質など、加圧に対して変形可能な軟質材料により形成される板状ワークやフィルム状ワークである。
被加工物Wの表面W1及び裏面W2は、孔開け加工時に後述するパンチガイド1の第一加圧面1aとダイ2の第二加圧面2aをそれぞれ圧接させることで、一時的に収縮変形する。しかし、孔開け加工後に第一加圧面1a及び第二加圧面2aから開放されることで、弾性的に膨張変形して復元するように形成されている。
孔開け加工された被加工物Wの用途には、パンチングボードやパンチングパネルと呼ばれる建築材料(建材)がある。建材として樹脂製の被加工物Wからなるパンチングボードやパンチングパネルは、パンチングメタルに比べて、軽量で且つ腐食や錆が発生し易い箇所にも用いることができて有利である。特に、透明なPCからなるパンチングボードやパンチングパネルは、他の樹脂に比べ割れ難く、ガラスに迫る透明度を有し、且つ自己消化性を備えて燃え広がり難く安全で、優れた断熱・保温効果を有し、樹脂製の建材として優れている。
【0012】
パンチガイド1は、図1(a)(b)及び図3(a)(b)に示されるように、パンチ3のパンチボディ3aを軸方向へ往復動自在に支持するための筒状ガイドである。
さらに、パンチガイド1は、被加工物Wの弾性変形可能な表面W1とZ方向へ対向して接離自在な第一加圧面1aと、パンチ3の切刃部3bが挿通するパンチ孔1bと、を有している。
第一加圧面1aは、被加工物Wの表面W1と平行な平滑面に形成され、孔開け加工時には被加工物Wの表面W1とZ方向へ面接触して圧接するように構成されている。
第一加圧面1aの具体例として図1図3に示される場合には、第一ホルダB1に対しZ方向へ往復動自在に支持されたパンチガイド1の底部に、第一加圧面1aとしてストリッパーを一体形成している。
また、その他の例として図示しないが、第一加圧面1aをパンチガイド1と別個な板状に形成してパンチガイド1の底部に取り付けるなど、図示例以外の構造に変更することも可能である。
【0013】
さらに、パンチガイド1の第一加圧面1aは、パンチ孔1bの孔縁に沿って被加工物Wの表面W1に向け突出形成される第一突起部1cを有している。
第一突起部1cは、その突出端に向かって徐々に肉厚が薄くなる断面鋭角の第一尖端部位1dを有している。
第一尖端部位1dの頂角は、被加工物Wを構成する材質の硬さや厚みなどの変化要因に応じて設定される。つまり、被加工物Wの硬度が比較的に高くて変形し難い場合には、第一尖端部位1dが刃こぼれし易いため、第一尖端部位1dの頂角を90度未満で大きくすることが望ましい。これと逆に被加工物Wの硬度が比較的に低くて変形し易い場合には、第一尖端部位1dの頂角を尖端部位1dが刃こぼれしない範囲内で小さくして食い込み易くすることが望ましい。被加工物Wが例えばポリカーボネイト製である場合には、約40〜70度、詳しくは約50〜60度に設定することが好ましい。それ以外に被加工物Wが例えばポリプロピレン製である場合には、約30〜60度、詳しくは約40〜50度に設定することが好ましい。
第一突起部1cの具体例として図1(a)(b)及び図3(a)(b)に示される場合には、第一尖端部位1dがパンチ孔1bの孔縁に沿って周方向へ環状に連続して突出するように形成され、第一加圧面1aから第一尖端部位1dに亘って、直線状に傾斜する第一斜面部位1eを連続形成している。
また、その他の例として図示しないが、第一突起部1cの第一尖端部位1dをパンチ孔1bの孔縁に沿って周方向へ断続して突出させたり、第一斜面部位1eを円弧状に傾斜させたり、図示例以外の形状に変更することも可能である。
【0014】
ダイ2は、図1図3に示されるように、平板状に形成され、その頂部に被加工物Wの弾性変形可能な裏面W2とZ方向へ対向して接離自在な第二加圧面2aと、後述するパンチ3の切刃部3bが挿通するダイ孔2bと、を有している。
第二加圧面2aは、被加工物Wの裏面W2と平行な平滑面に形成され、孔開け加工時には被加工物Wの裏面W2とZ方向へ面接触して圧接するように構成されている。
ダイ2の具体例としてパンチプレス機Bがタレットパンチプレスである場合には、第二ホルダB2に対してダイ2がZ方向へ移動不能に取り付けられ、第二加圧面2aが被加工物WをZ方向へ移動不能に位置決めする支持面である。
また、その他の例として図示しないが、ダイ2を図示例以外の形状構造に変更することも可能である。
【0015】
さらに、ダイ2の第二加圧面2aは、ダイ孔2bの孔縁に沿って被加工物Wの裏面W2に向け突出形成される第二突起部2cを有している。
第二突起部2cは、その突出端に向かって徐々に肉厚が薄くなる断面鋭角の第二尖端部位2dを有している。
第二尖端部位2dの頂角は、第一尖端部位1dの頂角と同様に被加工物Wを構成する材質の硬さや厚みなどの変化要因に応じて設定される。被加工物Wが例えばポリカーボネイト製である場合には、約25〜70度、詳しくは約30〜40度に設定することが好ましい。それ以外に被加工物Wが例えばポリプロピレン製である場合には、約20〜60度、詳しくは約25〜35度に設定することが好ましい。
第二突起部2cの具体例として図1図3に示される場合には、第二尖端部位2dがダイ孔2bの孔縁に沿って周方向へ環状に連続して突出するように形成され、第二加圧面2aから第二尖端部位2dに亘って、直線状に傾斜する第二斜面部位2eを連続形成している。
また、その他の例として図示しないが、第二突起部2cの第二尖端部位2dをダイ孔2bの孔縁に沿って周方向へ断続して突出させたり、第二斜面部位2eを円弧状に傾斜させたり、図示例以外の形状に変更することも可能である。
【0016】
一方、被加工物Wを加工位置Pに向け移送する方法として、パンチプレス機Bがタレットパンチプレスの場合には、第二ホルダB2上か又は第二ホルダB2と並んでワークテーブル(図示しない)が設けられる。このワークテーブル上に被加工物Wを供給すると、被加工物Wの一部をワーク送り機構のクランプ(図示しない)で着脱自在に保持し、予め設定されたプログラムに従って加工位置Pまで移送し、打ち抜き加工を行う。
つまり、タレットパンチプレスのワーク送り機構は、被加工物Wをパンチガイド1とダイ2の間に移送して、被加工物Wの所定位置に正確な打ち抜き加工が行われる。
しかし、被加工物Wをダイ2の第二加圧面2aに沿って移送する際、第二加圧面2aから突出する第二突起部2cに被加工物Wが引っ掛かって、スムーズに移送できないおそれがある。
【0017】
そこで、被加工物Wをダイ2の第二加圧面2aから浮いたまま被加工物Wの加工位置Pに向け移送させる浮上搬送機構6を設けることが好ましい。
浮上搬送機構6の具体例として図1図3に示される場合には、浮上搬送機構6が、ダイ2の第二加圧面2aに対しZ方向へ往復動自在に支持される遊転自在な転動体6aと、転動体6aをZ方向へ弾性的に押圧する弾性体6bと、転動体6aの移動範囲を規制するストッパー(図示しない)と、を有している。図示例では、転動体6aとして球体を用いたボールプランジャである。
浮上搬送機構6は、図1(a)(b)に示される被加工物Wの移送時において、転動体6aの先端を、弾性体6b及びストッパーで第二突起部2cの第二尖端部位2dよりも更に突出させるように設定している。これにより、被加工物Wを第二突起部2cに引っ掛かることなくスムーズに移送できる。
図3(a)(b)に示される被加工物Wの打ち抜き加工時には、ストライカーB4の加圧力により、パンチガイド1の第一加圧面1aとダイ2の第二加圧面2aの間に被加工物Wを挟み込むことで、弾性体6bが圧縮変形して転動体6aの先端を第二加圧面2aに対して没入させるように、弾性体6bの弾性力が設定されている。
また、その他の例として図示しないが、浮上搬送機構6としてボールプランジャ以外の構成に変更することも可能である。
【0018】
ついで、被加工物Wが透明で且つ比較的に厚い板状ワークである場合には、パンチ3の切刃部3bにより孔開け加工した貫通孔W3の切断面(せん断面)W4がザラザラした粗面になると、貫通孔W3の切断面W4が白色化して板状ワークの透明度を低下させるおそれがある。
このような問題点の解決方法としては、パンチプレス機Bとなるタレットパンチプレスにパンチ金型Aと後述する二次加工用金型A′が装着された孔開け加工装置を使用することが好ましい。
二次加工用金型A′は、タレットパンチプレスの第一ホルダB1に打ち抜き用のパンチ3と別個に取り付けられる二次加工用工具3′を備えている。二次加工用工具3′を貫通孔W3に挿入してZ方向へ往復動させることにより、貫通孔W3の切断面W4を二次加工して滑らかに仕上げる。
二次加工用金型A′の具体例として図4(a)(b)に示される例の場合には、第一ホルダB1に対し、打ち抜き用のパンチガイド1の他に二次加工用工具ガイド1′がZ方向へ往復動自在に取り付けられ、二次加工用工具ガイド1′の内部に二次加工用工具3′をZ方向へ往復動自在に支持している。
二次加工用工具3′は、打ち抜き用のパンチ3と同様に形成され、切刃部3bに該当する先端部3cは、そのエッジをR面取りなどに面取りした面取り部位3dを有している。二次加工用工具3′の先端部3cの外周面には、所定の表面粗さに形成されたヤスリ面3eを有している。
タレットパンチプレスの第二ホルダB2には、二次加工用ダイ2′がダイホルダB3を介して取り付けられている。
また、その他の例として図示せぬが、二次加工用工具3′を図示例以外の構造に代えて貫通孔W3の切断面W4を滑らかに仕上げたり、二次加工用ダイ2′に代えて打ち抜き用のダイ2を共用したり変更することも可能である。
【0019】
そして、本発明の実施形態に係るパンチ金型Aを使用した被加工物Wの孔開け加工方法(建材用孔開け加工方法)は、板状やフィルム状の被加工物WをZ方向及びXY方向へ移動不能に挟持する位置決め工程と、被加工物Wに孔開けする打ち抜き工程と、を主要な工程として含んでいる。
前記位置決め工程は、図1(a)(b)に示されるように、被加工物Wの弾性変形可能な表面W1にパンチガイド1の第一加圧面1aが圧接し、被加工物Wの弾性変形可能な裏面W2にダイ2の第二加圧面2aが圧接して、第一加圧面1aと第二加圧面2aの間に被加工物Wを移動不能に挟み込む。
さらに、前記位置決め工程では、パンチ孔1bの孔縁に沿って突出形成された第一突起部1cを被加工物Wの表面W1へ食い込ませると同時に、ダイ孔2bの孔縁に沿って突出形成された第二突起部2cを被加工物Wの裏面W2へ食い込ませている。
前記打ち抜き工程は、図3(a)(b)に示されるように、パンチガイド1のパンチ孔1b又はダイ2のダイ孔2bのいずれか一方から他方に向けパンチ3が移動して、被加工物Wにパンチ3の切刃部3bを貫通させる。
【0020】
また、二次加工用金型A′を使用した貫通孔W3の二次加工方法は、前記打ち抜き工程の後工程として、貫通孔W3に二次加工用工具3′を挿入し往復動させて貫通孔W3の切断面W4を滑らかに仕上げる二次加工工程を含むことが好ましい。
二次加工工程は、図4(a)(b)に示されるように、タレットパンチプレスの前記回転駆動部の作動制御により、第一ホルダB1及び第二ホルダB2の両方又は第一ホルダB1のみを回転移動させる。
二次加工用工具3′と二次加工用ダイ2′又は打ち抜き用のダイ2が被加工物Wの貫通孔W3とZ方向へ対向する加工位置Pに到達したときに、プレス駆動部B4の作動により二次加工用工具3′を貫通孔W3に向けZ方向へ押動させるように作動制御している。
これにより、二次加工用工具3′の先端部3cを面取り部位3dが貫通孔W3の切断面W4に沿って摺動するように挿入させる。これに続き、弾性部材5の反発力により二次加工用工具3′のヤスリ面3eを切断面W4に沿ってZ方向へ往復動させる。
【0021】
このような本発明の実施形態に係るパンチ金型A(孔開け加工装置)及び被加工物Wの孔開け加工方法によると、被加工物Wの孔開け時には、パンチガイド1の第一加圧面1aを、被加工物Wの弾性変形可能な表面W1に圧接させるため、パンチ孔1bの孔縁に沿って突出形成した第一突起部1cが表面W1へ食い込む。
これと同時に、ダイ2の第二加圧面2aを、被加工物Wの弾性変形可能な裏面W2に圧接させるため、ダイ孔2bの孔縁に沿って突出形成した第二突起部2cが裏面W2へ食い込む。
これらの食い込みによって、パンチガイド1の第一加圧面1aとダイ2の第二加圧面2aの間に、被加工物Wが(Z方向及びXY方向へ)移動不能に挟持されて位置決め保持される。
これにより、この位置決め状態でパンチ3をパンチ孔1b又はダイ孔2bのいずれか一方から他方に向け移動させ、切刃部3bが被加工物Wに突き当たって孔開け加工(打ち抜き加工)しても、被加工物Wが押し曲げられずパンチ孔1b又はダイ孔2bの他方に引き込まれて位置ズレしない。
したがって、被加工物Wに対し切刃部3bによるクラック発生点を刃先から位置ズレさせずに孔開け加工することができる。
その結果、上金型ホルダーの下面が被加工材の表面に圧接するものの被加工材に加わる面圧を軽減している従来のものに比べ、変形可能な軟質材料からなる被加工物Wの孔開け加工に伴う抜きバリの発生を確実に防止することができる。このため、孔開け加工後にバリ取り加工を行う必要がなくなって、作業性及び加工精度の向上が図れるとともに、コストの低減化も図れる。
【0022】
特に、第一突起部1cが、その突出端に向かって徐々に肉厚が薄くなる第一尖端部位1dを有し、第二突起部2cが、その突出端に向かって徐々に肉厚が薄くなる第二尖端部位2dを有し、第一尖端部位1d及び第二尖端部位2dの頂角が、被加工物Wの硬度に対応して設定されることが好ましい。
この場合には、硬度又は厚みが異なる複数種類の被加工物Wの表面W1及び裏面W2に対して、第一突起部1cの第一尖端部位1dと第二突起部2cの第二尖端部位2dがそれぞれ最適条件で食い込む。
したがって、硬度又は厚みが異なる複数種類の被加工物Wを表面W1及び裏面W2に傷付けることなく孔開け加工することができる。
その結果、被加工物Wの硬度又は厚みに関係なく抜きバリの発生を確実に防止することができる。
【0023】
さらに、被加工物Wが透明なポリカーボネイト板W′であることが好ましい。
この場合には、被加工物Wとなる透明なポリカーボネイト板W′の孔開け時には、その表面W1に第一突起部1cが食い込むと同時に第二突起部2cが裏面W2へ食い込んで、ポリカーボネイト板W′が移動不能に位置決め保持される。この位置決め状態で、パンチ3を移動させ切刃部3bがポリカーボネイト板W′に突き当たっても、ポリカーボネイト板W′が押し曲げられず曲がらずダイ孔2bやパンチ孔1bなどに引き込まれて位置ズレしない。
したがって、透明度に優れたポリカーボネイト板W′を抜きバリがなく孔開け加工することができる。
その結果、割れ難く高い透明度で且つ難燃性及び断熱性に優れたポリカーボネイト製のパンチングボードやパンチングパネルを抜きバリ無しで作製することができる。
【0024】
また、このような本発明の実施形態に係る建材用孔開け加工方法によると、被加工物Wとなる板状の建材の孔開け時には、その表面W1に第一突起部1cが食い込むと同時に第二突起部2cが裏面W2へ食い込んで、板状の建材が移動不能に位置決め保持される。この位置決め状態で、パンチ3を移動させ切刃部3bが板状の建材に突き当たっても、板状の建材が押し曲げられず曲がらずダイ孔2bやパンチ孔1bなどに引き込まれて位置ズレしない。
したがって、板状の建材を抜きバリがなく孔開け加工することができる。
その結果、板状の建材を抜きバリ無しで作製することができる。
【0025】
ところで、建材のパンチングボードやパンチングパネルなどは、複数の貫通孔W3の間隔を互いに接近させることで、開孔率を高めている。これを効率良く実現するには、一つの被加工物Wに対して複数の孔開けを同時に行う多連孔開け加工が好ましい。
しかし、多連孔開け加工の場合には、複数組のパンチガイド1及びパンチ3とダイ2をX方向やY方向などへそれぞれ配備する必要がある。このため、複数の貫通孔W3の間隔は、X方向やY方向などへ隣り合うパンチガイド1やダイ2の中心同士を結ぶ線分の長さよりも短くできない。
そこで、このような課題を達成するために本発明の実施形態に係る被加工物Wの孔開け加工方法(建材用孔開け加工方法)では、多連孔開け加工として、複数の孔開け作業をX方向やY方向などへ、その孔開け予定位置の一つおき又は複数個おきに順次行うことが好ましい。
この場合には、複数の貫通孔W3の間隔が、互いに隣り合うパンチガイド1やダイ2の中心同士を結ぶ線分の長さよりも短い多連孔開け加工が行える。
【0026】
また、パンチプレス機Bとなるタレットパンチプレスにパンチ金型Aと二次加工用金型A′が装着された孔開け加工装置、及び、それを使用した被加工物Wの孔開け加工方法(建材用孔開け加工方法)によると、パンチ3の切刃部3bによる孔開け加工(打ち抜き加工)の後工程として、二次加工用工具3′の先端部3cを被加工物Wの貫通孔W3に挿入させ、貫通孔W3の切断面W4に沿って二次加工用工具3′のヤスリ面3eをZ方向へ往復動させる。
これにより、被加工物Wが透明で且つ比較的に厚い板状ワークであり、パンチ3の切刃部3bにより孔開け加工した貫通孔W3の切断面W4がザラザラした粗面になったとしても、切断面W4の粗面層がヤスリ面3eで削り取られる。
したがって、貫通孔W3の切断面W4を滑らかな鏡面状に仕上げて無色化することができる。
その結果、透明で且つ比較的に厚い板状ワークなどの被加工物Wの透明度を上げて、加工精度及び商品価値の向上が図れる。
【0027】
なお、前示の図示例では、単数の板状ワークからなる被加工物Wに孔開け加工を行っているが、これに限定されず、板状ワークに代えてフィルム状ワークからなる被加工物Wに孔開け加工を行ったり、複数の板状ワークやフィルム状ワークが積み重ねられた被加工物Wに孔開け加工を行ったり変更してもよい。
さらに、本発明の実施形態に係るパンチ金型Aがパンチプレス機Bとしてタレットパンチプレスに装着される場合を示したが、これに限定されず、タレットパンチプレス以外のパンチプレス機Bに装着してもよい。
【符号の説明】
【0028】
A パンチ金型 1 パンチガイド
1a 第一加圧面 1b パンチ孔
1c 第一突起部 1d 第一尖端部位
2 ダイ 2a 第二加圧面
2b ダイ孔 2c 第二突起部
2d 第二尖端部位 3 パンチ
3b 切刃部 W 被加工物
W′ ポリカーボネイト板 W1 表面
W2 裏面
図1
図2
図3
図4