(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1つの閉磁路を共有する2つのコイルを備えるラインフィルタは、一般的にコモンモードチョークコイルとして使用される。詳しくは、このようなラインフィルタは、2つのコイルに流れるコモンモードのノイズに対して、所定の大きさのインダクタンス(コモンモードインダクタンス)を有する。また、ラインフィルタは、2つのコイルに流れる電源電流等のノーマルモードの電流に対しても、僅かなインダクタンス(ノーマルモードインダクタンス)を有する。このノーマルモードインダクタンスは、2つのコイルの巻き方の相違等により、広い範囲でばらつきやすい。これにより、2つのコイルに付加されたノーマルモードの電流は、予期しない影響を受けるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、1つの閉磁路を共有する2つのコイルを備えるチョークコイルであって、ノーマルモードインダクタンスのばらつきを低減可能なチョークコイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、第1のチョークコイルとして、
磁芯と、絶縁体からなるケースと、2つのコイルとを備えたチョークコイルであって、
前記磁芯は、前記ケースの内部に収容されて、1つの閉磁路を形成しており、
前記ケースは、2つの被巻回部と、2つの仕切り部とを有しており、
前記被巻回部の夫々は、直線部と、2つの弧状部と、2つの規制部とを有しており、
前記被巻回部の夫々において、前記直線部は、前後方向に沿って直線的に延びており、2つの前記弧状部は、前記直線部の前記前後方向における前端及び後端から弧を描くように夫々延びており、前記規制部のうちの1つは、前記直線部と前側の前記弧状部との間の境界に位置しており、前記規制部のうちの他の1つは、前記直線部と後側の前記弧状部との間の境界に位置しており、
前記仕切り部の一方は、2つの前記被巻回部の前側の前記弧状部を、前記前後方向と直交する幅方向に連結しており、前記仕切り部の他方は、2つの前記被巻回部の後側の前記弧状部を、前記幅方向に連結しており、
前記コイルは、前記被巻回部を夫々巻回しており、
前記コイルの夫々は、内側コイル部と、2つの外側コイル部とを有しており、
前記被巻回部の夫々において、前記内側コイル部は、前記直線部を巻回しており、前記外側コイル部は、前記規制部によって前記内側コイル部から少なくとも部分的に隔てられており且つ前記弧状部を少なくとも部分的に巻回している
チョークコイルが得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第2のチョークコイルとして、第1のチョークコイルであって、
前記被巻回部の夫々において、2つの前記外側コイル部は、2つの前記弧状部を夫々巻回している
チョークコイルが得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第3のチョークコイルとして、第1又は第2のチョークコイルであって、
前記コイルの最小太さは、0.5mm以上である
チョークコイルが得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第4のチョークコイルとして、第1又は第2のチョークコイルであって、
前記コイルの最小太さは、0.8mm以上である
チョークコイルが得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第5のチョークコイルとして、第1乃至第4のいずれかのチョークコイルであって、
前記外側コイル部の一部は、内側コイル部を、前記前後方向と直交する径方向の外側から覆っている
チョークコイルが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第6のチョークコイルとして、第1乃至第5のいずれかのチョークコイルであって、
前記ケースには、孔部が形成されており、
前記孔部は、前記幅方向において2つの前記被巻回部の前記直線部の間に少なくとも部分的に位置しており、且つ、前記ケースを前記前後方向及び前記幅方向の双方と直交する上下方向に貫通しており、
前記孔部の前端と前記直線部の前端との間の距離は、前記コイルの最小太さよりも小さく、
前記孔部の後端と前記直線部の後端との間の距離は、前記コイルの最小太さよりも小さい
チョークコイルが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第7のチョークコイルとして、第1乃至第6のいずれかのチョークコイルであって、
前記規制部は、前記被巻回部の前記幅方向外側の側部から前記幅方向外側に突出している
チョークコイルが得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第8のチョークコイルとして、第1乃至第7のいずれかのチョークコイルであって、
前記被巻回部の夫々は、前記規制部に加えて1以上の付加規制部を有しており、
前記付加規制部の夫々は、前記弧状部に設けられている
チョークコイルが得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるチョークコイルにおいて、磁芯は、ケースの内部に収容されて1つの閉磁路を形成しており、2つのコイルは、ケースの2つの被巻回部を夫々巻回している。換言すれば、本発明によるチョークコイルは、1つの閉磁路を共有する2つのコイルを備えており、これにより、コモンモードチョークコイルとして動作可能である。
【0017】
また、本発明によれば、規制部に挟まれた直線部に内側コイル部が巻回される。これにより、例えば大電流用の太いコイルを使用する場合であっても、コイルを直線部に容易に均一に整列巻きできるとともに、巻線崩れを抑制できる。この結果、直線部におけるノーマルモードインダクタンスのばらつきを低減できる。更に、弧状部にコイルの一部(外側コイル部)を巻回することで、ノーマルモードインダクタンスのばらつきを抑制しつつ、ノーマルモードインダクタンスを調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施の形態によるチョークコイル10は、磁芯20と、絶縁体からなるケース30と、2つのコイル60とを備えている。後述するように、本実施の形態によるチョークコイル10は、電源回路(図示せず)等の大電流回路のコモンモードチョークコイルとして適している。但し、本発明は、例えば通信回路(図示せず)のコモンモードチョークコイルにも適用可能である。
【0020】
図4を参照すると、本実施の形態による磁芯20は、フェライト,ナノ結晶材等の軟磁性材料からなり、上下方向(Z方向)と直交する水平面(XY平面)において、丸みを帯びた四角形状を有している。また、磁芯20は、XY平面と平行な平面、YZ平面と平行な平面及びXZ平面と平行な平面の夫々について鏡対称な形状を有している。
【0021】
磁芯20は、2つの直線磁芯部22と、2つの弧状磁芯部24とを有している。2つの直線磁芯部22は、前後方向(Y方向)に沿って互いに平行に直線的に延びている。弧状磁芯部24の一方は、前方(+Y方向)に張り出しつつ2つの直線磁芯部22の前端(+Y側の端)を幅方向(X方向)に連結しており、弧状磁芯部24の他方は、後方(−Y方向)に張り出しつつ2つの直線磁芯部22の後端(−Y側の端)をX方向に連結している。
【0022】
本実施の形態において、直線磁芯部22の夫々は、凹みや突起等の特別な部位を介することなく、境界線28において弧状磁芯部24に繋がっている。換言すれば、直線磁芯部22の夫々は、凹みや突起等のないループ状の磁芯20において、2つの境界線28の間を直線的に延びる部位である。
【0023】
図5を参照すると、本実施の形態によるケース30は、PBT(ポリブチレンテレフタレート),PET(ポリエチレンテレフタレート),フェノール等のプラスチック樹脂からなり、磁芯20(
図4参照)に対応した形状及びサイズを有している。また、ケース30は、磁芯20と同様に、XY平面と平行な平面、YZ平面と平行な平面及びXZ平面と平行な平面の夫々について鏡対称な形状を有している。
【0024】
ケース30は、2つの被巻回部40と、2つの仕切り部50とを有している。被巻回部40の夫々は、対応するコイル60(
図1参照)を巻回するための部位である。2つの被巻回部40は、概ねY方向に沿って互いに平行に延びている。仕切り部50は、ケース30のY方向における両端に夫々位置している。仕切り部50の一方は、2つの被巻回部40の前端をX方向に連結しており、仕切り部50の他方は、2つの被巻回部40の後端をX方向に連結している。
【0025】
被巻回部40の夫々は、直線部42と、2つの弧状部44と、2つの規制部46とを有している。被巻回部40の夫々において、直線部42は、Y方向に沿って直線的に延びており、2つの弧状部44は、直線部42のY方向における前端42F及び後端42Rから弧を描くように夫々延びている。被巻回部40の夫々において、2つの弧状部44は、前端42F及び後端42Rに夫々繋がっている。換言すれば、直線部42は、被巻回部40のうち、前端42Fと後端42Rとの間を直線的に延びる部位である。
【0026】
本実施の形態による規制部46は、直方体形状の突起である。規制部46は、被巻回部40のX方向外側の側部からX方向外側に突出している。特に、本実施の形態による規制部46は、被巻回部40のX方向外側の側部のみに位置している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、規制部46は、Z方向において被巻回部40の上面(+Z側の面)や下面(−Z側の面)まで延びていてもよい。
【0027】
被巻回部40の夫々において、2つの規制部46は、1つの前側規制部46Fと1つの後側規制部46Rから構成されている。前側規制部46Fは、直線部42と前側(+Y側)の弧状部44との間の境界に位置しており、後側規制部46Rは、直線部42と後側(−Y側)の弧状部44との間の境界に位置している。
【0028】
前側規制部46F及び後側規制部46Rの夫々は、対応する弧状部44からX方向外側に突出している。詳しくは、前側規制部46Fの後端面は、Y方向において直線部42の前端42Fと同じ位置にあり、後側規制部46Rの前端面は、Y方向において直線部42の後端42Rと同じ位置にある。前側規制部46Fの後端面及び後側規制部46Rの前端面の夫々は、Y方向と直交する平面である。同様に、前側規制部46Fの前端面及び後側規制部46Rの後端面の夫々は、Y方向と直交する平面である。前側規制部46Fの前端面は、前側の弧状部44から突出しており、後側規制部46Rの後端面は、後側の弧状部44から突出している。
【0029】
上述のように、本実施の形態における規制部46の夫々は、対応する弧状部44に設けられている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、規制部46の夫々は、直線部42に設けられていてもよい。詳しくは、前側規制部46Fの前端面が、Y方向において直線部42の前端42Fと同じ位置にあり、後側規制部46Rの後端面が、Y方向において直線部42の後端42Rと同じ位置にあってもよい。但し、チョークコイル10のY方向におけるサイズの増大を避けつつ直線部42におけるコイル60(
図1参照)を巻回可能な領域を大きくするという観点からは、本実施の形態のように規制部46を設けることが好ましい。
【0030】
仕切り部50の夫々は、概ね三角柱形状を有しており、Z方向に沿って延びている。仕切り部50の一方(前側の仕切り部50)は、2つの被巻回部40の前側の弧状部44をX方向に連結しており、仕切り部50の他方(後側の仕切り部50)は、2つの被巻回部40の後側の弧状部44をX方向に連結している。
【0031】
詳しくは、仕切り部50の夫々は、2つの押当部52を有している。押当部52の夫々は、X方向及びY方向の双方と斜交する平面である。2つの押当部52は、仕切り部50のX方向における両側に夫々位置している。前側の仕切り部50の+X側の押当部52は、+X側の被巻回部40の前側の弧状部44の前端に接続されており、前側の仕切り部50の−X側の押当部52は、−X側の被巻回部40の前側の弧状部44の前端に接続されている。同様に、後側の仕切り部50の+X側の押当部52は、+X側の被巻回部40の後側の弧状部44の後端に接続されており、後側の仕切り部50の−X側の押当部52は、−X側の被巻回部40の後側の弧状部44の後端に接続されている。
【0032】
上述のように、4つの押当部52は、4つの弧状部44と夫々接続されている。押当部52を含む傾斜平面において、弧状部44の夫々は、対応する押当部52に囲まれている。換言すれば、この傾斜平面において、押当部52は、弧状部44の外周から全ての方向に張り出している。
【0033】
図2及び
図5を参照すると、ケース30には、2つの孔部32が形成されている。また、ケース30は、被巻回部40及び仕切り部50に加えて隔壁58を有している。孔部32は、Y方向に沿って延びつつ、ケース30をZ方向に貫通している。隔壁58は、YZ平面と平行に延びる薄い板状の部位である。隔壁58は、X方向において2つの孔部32の間に位置しており、且つ、2つの仕切り部50をY方向に連結している。換言すれば、2つの孔部32は、隔壁58によって互いから完全に隔てられている。
【0034】
図7を参照すると、孔部32は、X方向において2つの被巻回部40の直線部42の間に少なくとも部分的に位置している。より具体的には、孔部32の夫々は、Y方向において前端32Fと後端32Rとの間に位置している。孔部32の前端32FのY方向における位置は、直線部42の前端42FのY方向における位置に比べて、僅かに前方にずれている。また、孔部32の後端32RのY方向における位置は、直線部42の後端42RのY方向における位置に比べて、僅かに後方にずれている。
【0035】
図4乃至
図6を参照すると、磁芯20は、ケース30の内部に収容されている。詳しくは、磁芯20の2つの直線磁芯部22は、ケース30の2つの直線部42の内部に夫々収容されている。また、磁芯20の前側の弧状磁芯部24は、ケース30の前側の2つの弧状部44及び仕切り部50の内部に収容されており、磁芯20の後側の弧状磁芯部24は、ケース30の後側の2つの弧状部44及び仕切り部50の内部に収容されている。
【0036】
本実施の形態においては、磁芯20を圧粉成型した後に所定の金型に入れ、この金型を使用して、樹脂をケース30の形状にモールドしている。これにより、磁芯20は、上述のようにケース30の内部に収容される。但し、磁芯20をケース30の内部に収容する方法は、これに限られない。例えば、ケース30は、互いに同じ形状の上部ケース及び下部ケースの2つの部材から形成してもよい。上部ケース及び下部ケースには、磁芯20の上部及び下部を夫々収容可能な収容空間を形成してもよい。この場合、磁芯20を、下部ケースの収容空間に入れた後に、上部ケースを取り付けてもよい。
【0037】
図5を参照すると、本実施の形態において、後側の仕切り部50の後端面には孔が形成されている。同様に、前側の仕切り部50の前端面には孔が形成されている。ケース30の内部に収容された磁芯20の端部は、この孔を通して視認可能である。この構造から理解されるように、ケース30のY方向におけるサイズは、磁芯20のY方向におけるサイズと殆ど同一である。換言すれば、本実施の形態におけるケース30は、Y方向においてサイズが最小となるように形成されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、ケース30のY方向におけるサイズは、磁芯20のY方向におけるサイズに比べて相当に大きくてもよい。また、仕切り部50には、上述の孔が形成されていなくてもよい。
【0038】
図4及び
図7を参照すると、ケース30に収容された磁芯20は、1つの閉磁路MCを形成している。閉磁路MCは、XY平面において長円形状を有している。磁芯20は、この閉磁路MCを形成するための好適な形状を有している。より具体的には、磁芯20の弧状磁芯部24は、XY平面において、全体として曲線状に延びる内周及び外周を有している。XY平面における内周及び外周の夫々は、閉磁路MCに対応した曲率半径を有している。弧状磁芯部24の形状は、本実施の形態に限られず、様々に変形可能である。
【0039】
図10を参照すると、変形例による磁芯20Aは、本実施の形態と同じ形状の直線磁芯部22と、本実施の形態と異なる形状の弧状磁芯部24Aとを有している。弧状磁芯部24AのX方向における両端部には曲げ部26Aが夫々設けられている。2つの曲げ部26Aは、直線状の部位によってX方向に連結されている。また曲げ部26Aは、直線磁芯部22と、境界線28において夫々連結されている。曲げ部26Aの夫々は、XY平面において、境界線28のX方向内側の端点(即ち、曲率半径0の内周)を中心とする1/4円形状の外周を有している。この外周の曲率半径R1は、直線磁芯部22のX方向におけるサイズW1と等しい。
【0040】
図11を参照すると、他の変形例による磁芯20Bは、本実施の形態と同じ形状の直線磁芯部22と、本実施の形態と異なる形状の弧状磁芯部24Bとを有している。弧状磁芯部24Bは、XY平面において、半円形状の外周と、半円形状の内周とを有している。この外周の曲率半径R1は、磁芯20BのX方向におけるサイズW0の1/2と等しい。また、この内周の曲率半径R2は、(W0/2−W1)と等しい。
【0041】
図10及び
図11を参照すると、本発明において、弧状磁芯部のXY平面における外周の曲率半径は、例えば、W1以上、且つ、W0/2以下とすればよく、弧状磁芯部のXY平面における内周の曲率半径は、例えば、0以上かつ(W0/2−W1)以下とすればよい。磁芯にこのような弧状磁芯部を設けることにより、コモンモードのノイズに対する磁芯のAL値を向上できるだけでなく、磁芯の重さを小さくできる。
【0042】
図7を参照すると、ケース30は、磁芯20(
図4参照)と対応する形状を有することが好ましい。従って、ケース30の弧状部44のXY平面における外周の曲率半径は、例えば、ケース30の直線部42のX方向におけるサイズW3以上、且つ、ケース30のX方向におけるサイズW2の1/2以下とすればよい。弧状部44のXY平面における内周の曲率半径は、例えば、0以上かつ(W2/2−W3)以下とすればよい。
【0043】
図6を参照すると、磁芯20の直線磁芯部22は、丸みを帯びた四角形状の断面を有している。ケース30の直線部42も、丸みを帯びた四角形状の断面を有している。同様に、磁芯20の弧状磁芯部24(
図4参照)及びケース30の弧状部44(
図5参照)の夫々も、丸みを帯びた四角形状の断面を有している。換言すれば、磁芯20及びケース30の被巻回部40の夫々は、閉磁路MC(
図7参照)と直交する直交平面において、丸みを帯びた四角形状の外周を有している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、磁芯20及び被巻回部40の夫々は、直交平面において円形状の外周を有していてもよい。
【0044】
図1を参照すると、本実施の形態によるコイル60は、銅,アルミニウム等の導電線からなり、絶縁体によって被覆されている。特に、本実施の形態によるコイル60は、絶縁体によって被覆された丸型銅線である。但し、コイル60の断面形状は、これに限られない。コイル60は、例えば、丸線であってもよいし、平角線であってもよい。
【0045】
図1乃至
図3を参照すると、2つのコイル60は、磁芯20を収容したケース30の2つの被巻回部40を夫々巻回している。この結果、2つのコイル60は、1つの磁芯20(即ち、閉磁路MC)を共有している。換言すれば、チョークコイル10は、1つの閉磁路MCを共有する2つのコイル60を備えている。これにより、チョークコイル10は、コモンモードチョークコイルとして動作可能である。特に、本実施の形態によるチョークコイル10は、太いコイル60を備えており、電源回路(図示せず)等の大電流に乗ったコモンモードのノイズを除去できる。
【0046】
詳しくは、
図7を参照すると、2つのコイル60にノーマルモードの電流が流れる際、電流に乗ったコモンモードのノイズに起因して、磁束FCR及び磁束FCLが生じる。磁束FCR及び磁束FCLは、閉磁路MCと同じ向きに流れる。チョークコイル10は、この磁束FCR及び磁束FCLによる所定のコモンモードインダクタンス(Lc)を有し、これによりコモンモードのノイズを除去できる。
【0047】
図1乃至
図3を参照すると、コイル60の夫々は、内側コイル部62と、2つの外側コイル部64と、2つの端子部68とを有している。被巻回部40の夫々において、内側コイル部62の巻線は、直線部42のみを巻回している。換言すれば、内側コイル部62は、直線部42のみを巻回する巻線の集合体である。本実施の形態の内側コイル部62は、直線部42を11ターン巻回している。但し、内側コイル部62は、直線部42を1ターン以上巻回していればよい。
【0048】
外側コイル部64は、全体として、内側コイル部62のY方向両側に夫々位置している。外側コイル部64は、弧状部44を少なくとも部分的に巻回する巻線の集合体である。詳しくは、外側コイル部64は、規制部46によって内側コイル部62から少なくとも部分的に隔てられており且つ弧状部44を少なくとも部分的に巻回している。本実施の形態において、前側の外側コイル部64は、内側コイル部62の前端から前側の弧状部44に延びた後、前側の弧状部44を部分的に(約半ターンだけ)巻回している。後側の外側コイル部64は、内側コイル部62の後端から後側の弧状部44に延びた後、後側の弧状部44を約1.5ターン巻回している。
【0049】
上述のように、本実施の形態において、後側の外側コイル部64は、後側の弧状部44を1ターン以上(即ち、完全に)巻回している一方、前側の外側コイル部64は、前側の弧状部44を約半ターンだけ(即ち、部分的に)巻回している。但し、本発明は、これに限られない。たとえば、被巻回部40の夫々において、2つの外側コイル部64は、2つの弧状部44を夫々完全に(即ち、1ターン以上)巻回していてもよい。
【0050】
コイル60を、上述のように被巻回部40に巻回する際、まず、コイル60の中間部分を直線部42に整列巻きする。このとき、コイル60を規制部46のうちの1つのY方向内側の面(例えば、後側規制部46Rの前端面)に押し当てることで、巻き始めの位置を位置決めできる。次に、コイル60を既に巻回した部位に押し当てつつ巻回することで、直線部42に隙間なく整列巻きできる。このとき、規制部46は、被巻回部40のXY平面における内周に設けられていないため、コイル60の直線部42への整列巻きを邪魔しない。上述のように直線部42に整列巻きされた部位が、内側コイル部62である。上述のようにコイル60を直線部42に巻回する工程は、自動化可能である。
【0051】
内側コイル部62を上述のように巻回した後、内側コイル部62の後端から延びるコイル60を後側の仕切り部50の押当部52に押し当てることで、後側の弧状部44における巻き始めの位置を位置決めできる。コイル60を押当部52に押し当てつつ巻回した後、後側規制部46Rの後端面に押し当てることで、次の巻線の巻き始めの位置を位置決めできる。同様に、内側コイル部62を巻回した後、内側コイル部62の前端から延びるコイル60を前側の仕切り部50の押当部52に押し当てることで、前側の弧状部44における巻き始めの位置を位置決めできる。上述のように弧状部44に巻かれた部位が、外側コイル部64である。
【0052】
外側コイル部64を巻回した後、コイル60の両端は、2つの端子部68として使用される。より具体的には、チョークコイル10は、使用時に、例えば回路基板(図示せず)上に置かれ、端子部68は、例えば電源回路(図示せず)に接続される。
【0053】
図2、
図3及び
図7を参照すると、本実施の形態によるコイル60は、1.3mm程度の太い直径(最小太さT)を有している。このような太いコイル60であっても、規制部46を利用して巻回することで、内側コイル部62の複数の巻線を容易に整列できると共に、巻回後の巻崩れを防止できる。これにより、内側コイル部62の巻線の位置を確実に維持しつつ、外側コイル部64の巻線の数(ターン数)や端子部68の引き出し位置等を自由に調整できる。
【0054】
図6を参照すると、ケース30の被巻回部40は、閉磁路MC(
図7参照)と直交する直交平面において丸みを帯びた形状の外周を有している。このため、被巻回部40にコイル60を巻回し易い。更に、この丸みを帯びた形状により、コイル60は、被巻回部40に密着し易く巻崩れし難い。また、
図7を参照すると、ケース30の弧状部44のXY平面における外周の曲率半径が十分に大きいため、外側コイル部64を巻回し易い。
【0055】
図1乃至
図3を参照すると、コイル60の巻線の位置ずれを防止するという観点からは、規制部46の被巻回部40からの突出長は、コイル60の最小太さTの1/2以上であることが好ましい。また、コイル60の巻崩れを防止するという観点からは、コイル60は太いほうが好ましい。より具体的には、コイル60が0.5mm以上の直径(最小太さ)を有する丸線であるか、又は、コイル60が0.5mm以上の厚さ及び幅(最小太さ)を有する平角線である場合、コイル60は巻回した形状を保ちやすい。従って、コイル60の最小太さTは、0.5mm以上であることが好ましい。
【0056】
また、チョークコイル10を大電流用のコモンモードチョークコイルとして使用する場合、コイル60の最小太さTは、0.8mm以上であることが好ましい。一方、例えば、チョークコイル10を、通信機器(図示せず)のフィルタ回路(図示せず)の部品として使用する場合、コイル60の最小太さTは、0.8mm未満であってもよい。
【0057】
図2及び
図7を参照すると、本実施の形態において、内側コイル部62の11本の巻線は、前側規制部46Fと後側規制部46Rとの間に、隙間なくぴったりと整列巻きされている。内側コイル部62は、このように直線部42を巻回することが理想的である。但し、内側コイル部62の巻線が一直線上に整列配置されている限り、Y方向の端の巻線と規制部46との間には、多少の隙間が形成されていてもよい。また、隣接する2つの巻線の間には、多少の隙間が形成されていてもよい。
【0058】
図7を参照すると、本実施の形態によるケース30は、孔部32のY方向における長さができるだけ小さくなるように設計されている。詳しくは、本実施の形態において、孔部32の前端32Fは、直線部42の前端42F(即ち、前側規制部46Fの後端面)の前方に位置しており、且つ、孔部32の前端32Fと直線部42の前端42Fとの間の距離DFは、コイル60の最小太さTよりも小さい。同様に、孔部32の後端32Rは、直線部42の後端42R(即ち、後側規制部46Rの前端面)の前方に位置しており、且つ、孔部32の後端32Rと直線部42の後端42Rとの間の距離DRは、コイル60の最小太さTよりも小さい。孔部32を上述のように設けることにより、直線部42の全てをコイル60を巻回するための領域として使用しつつ、ケース30のY方向におけるサイズを可能な限り小さくできる。
【0059】
但し、孔部32の配置は、本実施の形態と異なっていてもよい。例えば、孔部32の前端32Fは、直線部42の前端42FとY方向において同じ位置にあってもよい。同様に、孔部32の後端32Rは、直線部42の後端42RとY方向において同じ位置にあってもよい。また、本実施の形態の距離DF及び距離DRは互いに等しいが、距離DF及び距離DRは、多少異なっていてもよい。更に、例えば、ケース30のサイズに特に制約がない場合には、距離DF及び距離DRの夫々は、最小太さT以上であってもよい。
【0060】
図1及び
図2を参照すると、本実施の形態の孔部32は、上述のように設けられているため、ケース30の被巻回部40の夫々において、外側コイル部64の巻線は、部分的に内側コイル部62の巻線上に巻かれている。換言すれば、外側コイル部64の一部は、内側コイル部62を、Y方向と直交する径方向の外側から覆っている。これにより、内側コイル部62のY方向における端の巻線(端線)と規制部46との間に隙間ができていても、この隙間における端線の位置ずれを防止できる。
【0061】
図7を参照すると、磁束FCR及び磁束FCLの夫々は、基本的には閉磁路MCを流れるが、その一部は漏れ磁束FRとしてチョークコイル10の外部に放出される。チョークコイル10は、この漏れ磁束FRに起因して、ノーマルモードインダクタンス(Ln)を有する。
【0062】
同様に、従来のコモンモードチョークコイル(図示せず)は、漏れ磁束に起因してノーマルモードインダクタンス(Ln)を有する。従来のコモンモードチョークコイルにおいて、Lnは、磁芯と巻線との間の位置関係等によって容易にばらつく。これにより、2つのコイルに付加されたノーマルモードの電流は、予期しない影響を受けるおそれがある。例えば、得られたLnが所望するLnよりも低い場合には、ノイズ除去効果が弱まるおそれがある。一方、得られたLnが所望するLnよりも高い場合には、ノーマルモードの磁束により磁芯が磁気飽和するおそれがある。
【0063】
一方、本実施の形態によれば、上述のように、規制部46F及び規制部46Rに挟まれた直線部42に内側コイル部62が巻回される。これにより、コイル60を容易に均一に整列巻きできるとともに、巻線崩れを抑止できる。この結果、直線部42におけるノーマルモードインダクタンス(Ln)のばらつきを低減できる。より具体的には、同じターン数を有する複数の従来のコモンモードチョークコイル(図示せず)において、Lnは、少なくとも10%〜20%程度ばらつく。一方、同じターン数を有する複数のチョークコイル10におけるLnのばらつきは、10%以内に抑えることができる。更に、以下に説明するように、弧状部44にコイル60の一部(外側コイル部64)を巻回することで、チョークコイル10におけるLnのばらつきを抑制しつつ、Ln、2つのコイル60間の結合係数及び直流重畳特性を調整できる。
【0064】
図8を参照すると、コイル60は、本実施の形態と異なり、磁芯20の直線磁芯部22の周囲のみを、所定ターンだけ巻回している。
図9を参照すると、コイル60は、本実施の形態と同様に、磁芯20の直線磁芯部22(
図8参照)及び弧状磁芯部24の周囲を、
図8と同じ所定ターンだけ巻回している。シミュレーション結果によれば、
図9のチョークコイル10は、
図8のチョークコイル10に比べて、ノーマルモードインダクタンス(Ln)が小さく、2つのコイル60間の結合係数が大きく、且つ、磁芯20の断面における磁束密度が小さい。即ち、
図9のチョークコイル10は、
図8のチョークコイル10に比べて直流重畳特性が向上しており、大電流用のチョークコイルとして、より適している。
【0065】
図1乃至
図3を参照すると、本実施の形態において、外側コイル部64は、弧状部44の表面の一部を覆うように巻回している。外側コイル部64をこのように巻回することで、外側コイル部64の弧状部44上の位置を調整でき、ノーマルモードインダクタンス(Ln)を微調整できる。
【0066】
図2及び
図3を参照すると、チョークコイル10は、ケース30全体を取り囲む最小サイズの直方体領域CRの内部に位置している。特に、ケース30の弧状部44のXY平面における外周が所定の曲率半径を有しているため、外側コイル部64も、XY平面において直方体領域CRの内部に位置している。この構造から理解されるように、本実施の形態によれば、チョークコイル10のXY平面におけるサイズの増大を防ぎつつ、Ln、2つのコイル60間の結合係数及び直流重畳特性を調整できる。
【0067】
図1及び
図2を参照すると、2つのコイル60は、2つの仕切り部50と隔壁58とによって互いから隔てられつつ、ケース30の2つの被巻回部40を夫々巻回している。この構造により、コイル60に大電流が流れる場合でも、2つのコイル60を互いから絶縁できる。2つのコイル60を互いから確実に絶縁するという観点からは、仕切り部50の押当部52を含む傾斜平面において、押当部52の縁と弧状部44の外周との間の距離は、コイル60の最小太さT以上であることが好ましい。換言すれば、押当部52は、弧状部44からコイル60の最小太さT以上に張り出していることが好ましい。また、隔壁58の強度を保ちつつ十分な絶縁性を得るという観点からは、隔壁58のX方向におけるサイズ(幅)は、0.5mm以上であることが好ましい。
【0068】
本実施の形態によれば、隔壁58が2つのコイル60を隔てているため、孔部32のX方向におけるサイズを、コイル60を巻回可能な最小サイズに設定できる。換言すれば、チョークコイル10のX方向におけるサイズの増大を防ぐことができる。更に、仕切り部50の幅(仕切り部50のY方向における端面のX方向におけるサイズ)は、隔壁58の幅と同程度まで小さくしてもよい。仕切り部50の幅を小さくすることで、チョークコイル10のXY平面におけるサイズを一定に保ったまま、閉磁路MCに沿った弧状部44の長さを長くできる。これにより、外側コイル部64のターン数を増やすことができる。
【0069】
本実施の形態によるチョークコイル10は、既に説明した変形例に限られず、以下の変形例に示すように、更に様々に変形可能である。
【0070】
図12を参照すると、チョークコイル10(
図2参照)の変形例によるチョークコイル10Cは、ケース30(
図2参照)と異なるケース30Cを備えていることを除き、チョークコイル10と同一の構造を有している。ケース30Cは、ケース30の被巻回部40(
図2参照)と異なる被巻回部40Cを有していることを除き、ケース30と同一の構造を有している。また、被巻回部40Cは、被巻回部40が有していない2つの付加規制部(規制部)46Cを有していることを除き、被巻回部40と同一の構造を有している。換言すれば、被巻回部40Cの夫々は、規制部46に加えて1以上の付加規制部46Cを有している。
【0071】
被巻回部40Cの夫々において、付加規制部46Cは、弧状部44に夫々設けられている。詳しくは、付加規制部46Cは、対応する弧状部44の径方向における外周から径方向に突出している。本実施の形態の付加規制部46Cは、仕切り部50との間にコイル60の最小太さTと同程度の隙間が形成されるように設けられている。これにより、外側コイル部64のうちの1本の巻線を、付加規制部46Cと仕切り部50との間に確実に位置決めできる。この結果、コイル60の端子部68(
図3参照)を正確に位置決めできると共に、ノーマルモードインダクタンス(Ln)のばらつきを、更に確実に抑制できる。但し、付加規制部46Cの位置は、これに限られない。また、1つの弧状部44における付加規制部46Cの数も1に限られない。
【0072】
図13を参照すると、チョークコイル10(
図2参照)の別の変形例によるチョークコイル10Dは、コイル60の巻き方が異なることを除き、チョークコイル10と同一の構造を有している。より具体的には、チョークコイル10Dにおいて、コイル60の内側コイル部62は、ケース30の直線部42(
図5参照)を2層に整列巻回している。チョークコイル10Dは、大電流用のチョークコイルとして、より適している。
【0073】
本発明は、上述の実施の形態や変形例に加えて、更に様々に応用可能である。例えば、ケースは、上述した部位に加えて、回路基板(図示せず)に位置決めするための部位等、様々な部位を有していてもよい。
【実施例】
【0074】
以下、上述の本発明の実施の形態によるチョークコイル10について、実施例及び比較例を参照しながら更に具体的に説明する。
【0075】
図14及び
図15を参照すると、本発明の実施例として、被巻回部40の夫々における2つの外側コイル部64の合計ターン数が異なる6つのチョークコイル10X(実施例1〜6のチョークコイル10X)を作製した。このとき、磁芯20(
図4参照)を収容したケース30の被巻回部40に、線径(直径)1.3mmのコイル60を夫々巻回した。詳しくは、チョークコイル10Xの被巻回部40の夫々において、内側コイル部62のターン数は11ターンであり、外側コイル部64の合計ターン数は、0〜5ターンだった。特に、外側コイル部64の合計ターン数が0ターンである実施例1においては、被巻回部40の弧状部44にコイル60を巻回しなかった。
図14のチョークコイル10Xは、外側コイル部64の合計ターン数が5ターンである実施例6のチョークコイル10Xである。
【0076】
実施例1〜6の夫々のチョークコイル10Xのノーマルモードインダクタンス(Ln)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例1〜6のいずれにおいても、ノーマルモードインダクタンス(Ln)のばらつきを10%以内に抑制することができた。この結果及び表1の測定結果から理解されるように、内側コイル部62のターン数を一定の値に保ちつつ、外側コイル部64の合計ターン数を変えることで、Lnのばらつきを抑制しつつノーマルモードインダクタンス(Lc)を所望の値に調整できる。
【0079】
図16及び
図17を参照すると、実施例1〜6のケース30(
図14参照)に代えてケース30Zを使用して、35個の比較例1〜35のチョークコイル10Zを作製した。ケース30Zは、規制部46(
図14参照)を有していないことを除き、ケース30と同一の形状及びサイズを有しており、ケース30と同様に磁芯20(
図4参照)を収容していた。ケース30Zの被巻回部40Zに、線径1.3mmのコイル60を夫々巻回した。このとき、コイル60のターンを5〜16ターンの範囲で変えると共にコイル60の巻回位置を変えて、比較例1〜35のチョークコイル10Z01〜10Z35を作製した。
図16のチョークコイル10Zは、コイル60の巻回数が16ターンである実施例35のチョークコイル10Z35である。
【0080】
比較例1〜35のチョークコイル10Z01〜10Z35のノーマルモードインダクタンス(Ln)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
図16及び表2の測定結果から理解されるように、比較例1〜35のチョークコイル10Zにおいては、規制部46が設けられていないため、コイル60を巻回する際に巻線の位置が大きくばらつく。この結果、ノーマルモードインダクタンス(Ln)が10%〜20%程度と大きくばらつく。