特許第6562843号(P6562843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562843画像投射装置、画像投射方法および画像投射プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562843
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】画像投射装置、画像投射方法および画像投射プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20190808BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-2744(P2016-2744)
(22)【出願日】2016年1月8日
(65)【公開番号】特開2017-122895(P2017-122895A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】瀧沢 昭彦
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−058689(JP,A)
【文献】 特開2015−011217(JP,A)
【文献】 特開平07−329604(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/192135(WO,A1)
【文献】 特開2015−034919(JP,A)
【文献】 特開2009−150947(JP,A)
【文献】 特開2014−142474(JP,A)
【文献】 特開平06−115381(JP,A)
【文献】 特開昭60−183240(JP,A)
【文献】 特開2009−292450(JP,A)
【文献】 特開2010−179828(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0036374(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0093353(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00−27/64
B60K 35/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の投射光学系により画像を投射可能な第1の投射手段と、
第2の投射光学系により画像を投射可能な第2の投射手段と、
第1の投射手段が第1の焦点距離で画像を投射し、第2の投射手段が第2の焦点距離で画像を投射する第1の投射モードと、
第1の投射手段および第2の投射手段が第3の焦点距離で画像を投射する第2の投射モードと、
車両が走行状態か高速走行状態かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づき第1および第2の投射手段を制御し、投射モードの切替えを制御する切替制御手段とを有し、
前記切替制御手段は、走行状態と判定されたとき第1の投射モードを選択し、高速走行状態と判定されたとき第2の投射モードを選択し、第3の焦点距離は、第2の焦点距離よりも大きく、第2の焦点距離は、第1の焦点距離よりも大きい、画像投射装置。
【請求項2】
前記切替制御手段は、第1の投射モードから第2の投射モードに切替えるとき、第1の投射手段の第1の焦点距離を第2の焦点距離に変化させた後、第1の投射手段および第2の投射手段の第2の焦点距離を第3の焦点距離に変化させる、請求項1に記載の画像投射装置。
【請求項3】
第2の投射モードのとき、第1の投射手段により投射される第1の画像と第2の投射手段により投射される第2の画像とが隣接される、請求項1または2に記載の画像投射装置。
【請求項4】
第1の画像と第2の画像により合成された画像が投射される、請求項3に記載の画像投射装置。
【請求項5】
画像投射装置はさらに、第1の投射手段および第2の投射手段が第1の焦点距離で画像を投射する第3の投射モードを含み、
前記判定手段はさらに車両が停車状態か否かを判定し、
前記切替制御手段は、停車状態と判定されたとき第3の投射モードを選択する、請求項1に記載の画像投射装置。
【請求項6】
画像投射装置はさらに、車両の状態を検出する車両状態検出手段を含み、前記判定手段は、前記車両状態検出手段の検出結果に基づき停車状態、走行状態または高速走行状態を判定する、請求項5に記載の画像投射装置。
【請求項7】
前記車両状態検出手段は、車両の速度情報を検出し、前記判定手段は、前記速度情報に基づき停車状態、走行状態または高速走行状態を判定する、請求項6に記載の画像投射装置。
【請求項8】
第1の投射光学系により画像を投射可能な第1の投射手段と、第2の投射光学系により画像を投射可能な第2の投射手段とを有する画像投射装置における画像投射方法であって、
車両が走行状態か高速走行状態かを判定するステップと、
走行状態と判定されたとき、第1の投射モードにより第1の投射手段に第1の焦点距離で画像を投射させ、かつ第2の投射手段に前記第1の焦点距離よりも大きい第2の焦点距離で画像を投射させ、高速走行状態と判定されたとき、第2の投射モードにより第1および第2の投射手段に前記第2の焦点距離よりも大きい第3の焦点距離で画像を投射させるステップと、
を有する画像投射方法。
【請求項9】
画像投射方法はさらに、第1の投射モードから第2の投射モードに切替えるとき、第1の投射手段の第1の焦点距離を第2の焦点距離に変化させた後、第1の投射手段および第2の投射手段の第2の焦点距離を第3の焦点距離に変化させる、請求項8に記載の画像投射方法。
【請求項10】
第1の投射光学系により画像を投射可能な第1の投射手段と、第2の投射光学系により画像を投射可能な第2の投射手段とを有する画像投射装置が実行する画像投射プログラムであって、
車両が走行状態か高速走行状態かを判定するステップと、
走行状態と判定されたとき、第1の投射モードにより第1の投射手段に第1の焦点距離で画像を投射させ、かつ第2の投射手段に前記第1の焦点距離よりも大きい第2の焦点距離で画像を投射させ、高速走行状態と判定されたとき、第2の投射モードにより第1および第2の投射手段に前記第2の焦点距離よりも大きい第3の焦点距離で画像を投射させるステップと、
を有する画像投射プログラム。
【請求項11】
画像投射プログラムはさらに、第1の投射モードから第2の投射モードに切替えるとき、第1の投射手段の第1の焦点距離を第2の焦点距離に変化させた後、第1の投射手段および第2の投射手段の第2の焦点距離を第3の焦点距離に変化させる、請求項10に記載の画像投射プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を投射する画像投射装置に関し、特に、車両のフロントガラス上に画像を投射する画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者を支援するための運転支援情報を表示する1つの手段として、ヘッドアップディスプレイ(以下、HUDと略す)が実用化されている。典型的なHUDは、車内に設置された投射装置からのフロントガラスまたはそこに備え付けられたスクリーンに画像を投射し、運転者からは、フロントガラス越しの現実空間にあたかも物体が存在するかのような虚像を生成する。HUDを利用すると、運転者の視線方向に運転支援情報を表示することができるため、車内の液晶ディスプレイ等を見る場合と比較して、運転者の視線移動を減らすことができる。
【0003】
HUDは、投射光学系の焦点距離等を調整することで投射する画像の大きさや位置を調整することができる。また、特許文献1は、スクリーンや投射レンズの位置を動かすことにより異なる位置に複数の画像を表示したり、駐車時に大きな1つの画像を表示したりHUDを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−11217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、HUDにより、異なる焦点距離を有する複数の画像をフロントガラス上に表示させることが可能である。図17(A)は、走行中の表示例、図17(B)は、停車中の表示例であり、図18(A)、(B)は、それらを側方から表したときの模式図である。例えば、図17(A)に示すように、車両に2つのHUD_AおよびHUD_Bが搭載されているとき、車両の走行中に、HUD_Aによって焦点距離f1の画像1A(例えば、速度情報)がフロントガラス上に投射され、HUD_Bによって焦点距離f2の画像1B(例えば、進行方向)がフロントガラス上に投射される。このとき、運転者Uは、図18(A)に示すように、画像1Aの虚像1A’を車両の近方に視認し、画像1Bの虚像1B’を車両の遠方に視認する。運転者Uから虚像1A’、距離1B’までの距離は、Lf、Lnであり、Lf>Lnである。
【0006】
停車中には、図17(B)に示すように、HUD_1AおよびHUD_1Bによって焦点距離f2に画像2A、画像2Bが投射され、図18(B)に示すように、運転者Uは、距離Lnの位置に、画像2Aの虚像2A’、画像2Bの虚像2B‘を視認する。画像2Aは、例えば、進行方向であり、画像2Bは、車両の速度情報であるが、このような表示以外に、画像2Aと画像2Bとを合成した1つの画像Xを表示することも可能である。なお、HUD_AおよびHUD_Bは、1つのHUDに含まれる2つの投射光学系であってもよいし、2つのHUDから構成されるものであってもよい。
【0007】
上記のような焦点距離の異なる画像の表示の切替えを車両の速度等に連動して行う場合、渋滞等が発生すると、走行/停止が繰り返され、その都度、表示が切替わることになる。走行/停止のサイクルが長い場合には、それほど気にならないが、サイクルが短くなると、焦点距離の大きな画像と焦点距離の小さな画像の表示が頻繁に切替わることになり、運転者にとってそのような表示が却って目障りとなったり、あるいは視認性が低下してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、焦点距離を変化させて画像を投射する際の視認性の低下を抑制する画像投射装置、画像投射方法および画像投射プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像投射装置は、第1の投射光学系により画像を投射可能な第1の投射手段と、第2の投射光学系により画像を投射可能な第2の投射手段と、第1の投射手段が第1の焦点距離で画像を投射し、第2の投射手段が第2の焦点距離で画像を投射する第1の投射モードと、第1の投射手段および第2の投射手段が第3の焦点距離で画像を投射する第2の投射モードと、車両が走行状態か高速走行状態かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づき第1および第2の投射手段を制御し、投射モードの切替えを制御する切替制御手段とを有し、前記切替制御手段は、走行状態と判定されたとき第1の投射モードを選択し、高速走行状態と判定されたとき第2の投射モードを選択し、第3の焦点距離は、第2の焦点距離よりも大きく、第2の焦点距離は、第1の焦点距離よりも大きい。
【0010】
好ましくは前記切替制御手段は、第1の投射モードから第2の投射モードに切替えるとき、第1の投射手段の第1の焦点距離を第2の焦点距離に変化させた後、第1の投射手段および第2の投射手段の第2の焦点距離を第3の焦点距離に変化させる。好ましくは第2の投射モードのとき、第1の投射手段により投射される第1の画像と第2の投射手段により投射される第2の画像とが隣接される。好ましくは第1の画像と第2の画像により合成された画像が投射される。好ましくは画像投射装置はさらに、第1の投射手段および第2の投射手段が第1の焦点距離で画像を投射する第3の投射モードを含み、前記判定手段はさらに車両が停車状態か否かを判定し、前記切替制御手段は、停車状態と判定されたとき第3の投射モードを選択する。好ましくは画像投射装置はさらに、車両の状態を検出する車両状態検出手段を含み、前記判定手段は、前記車両状態検出手段の検出結果に基づき停車状態、走行状態または高速走行状態を判定する。好ましくは前記車両状態検出手段は、車両の速度情報を検出し、前記判定手段は、前記速度情報に基づき停車状態、走行状態または高速走行状態を判定する。
【0011】
本発明に係る画像投射方法は、第1の投射光学系により画像を投射可能な第1の投射手段と、第2の投射光学系により画像を投射可能な第2の投射手段とを有する画像投射装置におけるものであって、車両が走行状態か高速走行状態かを判定するステップと、走行状態と判定されたとき、第1の投射モードにより第1の投射手段に第1の焦点距離で画像を投射させ、かつ第2の投射手段に前記第1の焦点距離よりも大きい第2の焦点距離で画像を投射させ、高速走行状態と判定されたとき、第2の投射モードにより第1および第2の投射手段に前記第2の焦点距離よりも大きい第3の焦点距離で画像を投射させるステップとを有する。好ましくは画像投射方法はさらに、第1の投射モードから第2の投射モードに切替えるとき、第1の投射手段の第1の焦点距離を第2の焦点距離に変化させた後、第1の投射手段および第2の投射手段の第2の焦点距離を第3の焦点距離に変化させる。
【0012】
本発明に係る画像投射プログラムは、第1の投射光学系により画像を投射可能な第1の投射手段と、第2の投射光学系により画像を投射可能な第2の投射手段とを有する画像投射装置が実行するものであって、車両が走行状態か高速走行状態かを判定するステップと、走行状態と判定されたとき、第1の投射モードにより第1の投射手段に第1の焦点距離で画像を投射させ、かつ第2の投射手段に前記第1の焦点距離よりも大きい第2の焦点距離で画像を投射させ、高速走行状態と判定されたとき、第2の投射モードにより第1および第2の投射手段に前記第2の焦点距離よりも大きい第3の焦点距離で画像を投射させるステップとを有する。好ましくは画像投射プログラムはさらに、第1の投射モードから第2の投射モードに切替えるとき、第1の投射手段の第1の焦点距離を第2の焦点距離に変化させた後、第1の投射手段および第2の投射手段の第2の焦点距離を第3の焦点距離に変化させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行状態か高速走行状態かに応じて第1の投射モードおよび第2の投射モードを決定するようにしたので、高速走行時に運転者の視線が遠方に向けられた場合であっても、運転者はその視線の延長線上に投射画像の虚像を見ることができるため、視認性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施例に係る画像投射装置の構成を示す図である。
図2】本実施例の第1および第2の投射部の構成例を示す図である。
図3】第1および第2の投射部による画像の投射例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施例に係る画像投射プログラムの機能的な構成例を示す図である。
図5】第1の実施例に係る車両状態、判定要素および投射モードの関係を示した図である。
図6】第1の投射モードを例示する図である。
図7】第1の投射モードへの切替を例示する図である。
図8】第2の投射モードへの切替を例示する図である。
図9】投射光学系の焦点距離を連続的に変化させたときの虚像の移動を示す図である。
図10A】第1の実施例に係る画像投射装置の動作を示すフロー図である。
図10B】第1の投射モードから第2の投射モードへの切替フローを示す図である。
図10C】第2の投射モードから第1の投射モードへの切替フローを示す図である。
図11】第1の実施例の第1の投射モードおよび第2の投射モードの画像の投射例を示す図である。
図12】第2の実施例に係る車両状態、判定要素および投射モードの関係を示した図である。
図13】第2の実施例に係る画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
図14】第2の実施例の第1の投射モード、第2の投射モード、第3の投射モード時の虚像の位置を説明する図である。
図15】第3の投射モード時の画像の投射例を示す図である。
図16】第2の実施例の変形例に係る画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
図17】従来のHUDの表示例である。
図18】従来のHUDの表示例示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態に係る画像投射装置は、HUDに代表されるような投射システムを有する。好ましい実施態様では、画像投射装置は、車両のフロントガラスまたはそのスクリーン上に画像を投射し、実空間に重畳された虚像を運転者に見せることができる。投射される画像は、好ましくは、運転者にとって有益な情報、例えば運転支援情報である。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施例に係る画像投射装置の構成を示す図である。本実施例に係る画像投射装置10は、第1の投射光学系を有する第1の投射部100、第2の投射光学系を有する第2の投射部110、第1の投射部100および第2の投射部110によって投射される画像を生成する画像生成部120、記憶部130、車両の状態を検出する車両状態検出部140、ナビゲーション部150、および制御部160を含んで構成される。
【0017】
第1の投射部100は、画像生成部120によって生成された画像データに基づき光源からの光を変調する光変調手段と、光変調手段により変調された光を投射する第1の投射光学系とを備えている。第1の投射光学系は、例えば、レンズ、またはプリズム等の光学部材を含み、光変調手段により変調された光を車内のフロントガラス等のスクリーン上に投射する。第1の投射光学系の焦点距離および/または投射方向は、制御部160からの制御により可変することができる。第2の投射部110は、第1の投射部100と実質的に同様の構成を有するが、第2の投射部110は、第1の投射部100とは独立にその焦点距離や投射方向が可変される。
【0018】
図2に、第1の投射部の構成例を示す。第1の投射部100は、光源101、照明光学系102、光変調手段103、投射光学系104、アクチュエータ105を含む。光源101は、例えば、発光ダイオードアレイ等の半導体発光素子等から構成される。照明光学系102は、光源101からの光を集束し、所定のアスペクト比の光を光変調手段103へ提供する。光変調手段103は、例えば、液晶デバイス、あるいは複数の可変ミラーが2次元的に配置されたディジタルミラーデバイスなどから構成される。光変調手段103は、画像生成部120からの画像データに従い照射された光を空間的に変調する。投射光学系104は、変調された光をスクリーン106上に投射する。
【0019】
アクチュエータ105は、制御部160からの制御信号S1に基づき投射光学系104に含まれるレンズの位置あるいはプリズムの位置等を移動させることで焦点距離を調整可能である。ある態様では、投射光学系104は、連続的に焦点距離を変化させることで、ズームアップまたはズームダウンされる画像を投射する。さらにアクチュエータ105は、制御部160からの制御信号S1に基づき投射光学系104の投射方向を調整することもできる。例えば、投射光学系104の光軸を傾けることで、投射方向、つまりスクリーン上に投射される画像の位置を変えることができる。
【0020】
図3に、画像投射装置によって投射される画像の一例を示す。例えば、画像投射装置10は、図3(A)に示すように車内のダッシュボード内に設置される。第1の投射部100は、例えば、短い焦点距離f1で画像100Aをフロントガラス上に投射し、このとき、運転者Uは、図3(B)に示すように、視点oから前方の距離L1に虚像100A’を視認する。また、第2の投射部110は、例えば、長い焦点距離f2で画像110Aを投射し、このとき、運転者Uは、車両の遠方の距離L2にその虚像110A’を視認する。
【0021】
画像生成部120は、車両状態に応じた情報を運転者に提供するため、その画像データを生成する。例えば、走行状態であれば、車速情報、タコメータ情報、現在時刻、燃料計、等の情報を提供するための画像データが生成される。また、ナビゲーション部150が動作されている場合には、目的地までの距離、到着予想時間、案内ルート、次の交差点案内などの情報を提供するための画像データが生成される。さらに、画像投射装置10が外部の交通情報配信サーバと通信する機能を備えていたり、あるいは路側機等から配信される情報を受信する機能を備えている場合には、交通情報配信サーバからの渋滞情報等や路側機からの信号機情報を提示するための画像データを生成することができる。さらに車載カメラを利用した障害物検知システムを搭載している場合には、自車の前方に存在する車両を取り囲むような枠状の画像データを生成し、これを実際の前方車両に重畳させるようにしてもよい。画像生成部120は、制御部160の制御下において、画像投射装置10の投射モードに応じて第1の投射部100および第2の投射部110によって投射される画像のための画像データを生成する。
【0022】
記憶部130は、種々のデータを格納することができ、例えば、画像生成部120に必要な画像データを格納したり、あるいは制御部160が実行するプログラムなどを格納することができる。さらにナビゲーション部150で使用される地図データ等を記憶することもできる。
【0023】
車両状態検出部140は、車両の状態に関する情報を取得する。例えば、車速パルス情報、ギアポジション情報、ブレーキ情報、ウインカー情報などである。さらに車載カメラが搭載されている場合には、その撮像データから得られる車両状態に関する情報を取得するようにしてもよい。車両状態検出部140の検出結果は、制御部160へ提供され、後述するように画像投射装置10の投射モードの決定に利用される。
【0024】
ナビゲーション部150は、GPS信号や自立航法センサなどを利用して自車位置を算出し、算出された自車位置周辺の道路地図を液晶ディスプレイへ表示したり、目的地までの経路を探索し、探索経路の案内を行ったりする。また、探索経路の案内をするとき、交差点等における直進、右折、左折等の案内情報が提示される。ナビゲーション部150によって提示される情報は、必要に応じて画像生成部120へ提供され、そのような情報は、第1の投射部100または第2の投射部110によっても投射可能である。
【0025】
制御部160は、画像投射装置10の各部を制御する。好ましい態様では、制御部160は、ROM、RAMなどを含むマイクロコントローラ等から構成され、ROMまたはRAMは、各部を制御するためのプログラムを格納することができる。本実施例では、制御部160は、第1および第2の投射部100、110の投射を制御する画像投射プログラム200を実行する。
【0026】
図4は、第1の実施例に係る画像投射プログラムの機能的な構成例を示す図である。画像投射プログラム200は、車両情報取得部210、車両状態判定部220、投射モード決定部230、切替制御部240、第1アクチュエータ制御部250、第2アクチュエータ制御部260を含んで構成される。
【0027】
車両情報取得部210は、車両状態検出部140により検出された車両に関する情報を取得する。例えば、車内バスを介して、速度情報、ギアポジション情報、ウインカー情報、ブレーキ情報等が取得される。車両状態判定部220は、車両情報取得部210によって取得された情報に基づき車両の状態を判定する。第1の実施例では、車両が停車状態か走行状態かを判定する。この判定は、例えば、速度情報やギアポジション情報等が用いられる。図5に、車両状態と、これを判定する判定基準と、投射モードとの関係の一例を示す。車両状態判定部220は、ギアポジションがドライブギアであり、かつ車速が20km/h未満であるとき、車両が停車状態であると判定する。また、ギアポジションがドライブギアであり、かつ車速が20km/h以上であるとき、走行状態であると判定する。図5の判定基準は一例であり、例えば、撮像カメラ(図示せず)からの撮像画像やブレーキ情報を用いて判定するものであっても良い。さらにギアポジションがパーキングであるとき、停車状態と判定するようにしてもよい。
【0028】
車両状態判定部220の判定結果は、投射モード決定部230に提供される。投射モード決定部230は、車両状態判定部220の判定結果に基づき第1の投射モードまたは第2の投射モードを決定する。図5に示すように、投射モード決定部230は、車両が停車状態と判定されたとき第1の投射モード、走行状態と判定されたとき第2の投射モードと決定する。
【0029】
第1の投射モードは、第1の投射部100および第2の投射部110がそれぞれ同一の焦点距離で画像を投射するモードであり、第2の投射モードは、第1の投射部100および第2の投射部110が異なる焦点距離で画像を投射するモードである。好ましくは、第1の投射モードでは、第1および第2の投射部100、110がそれぞれ短い焦点距離f1で画像を投射し、第2の投射モードでは、第1の投射部100が短い焦点距離f1で画像を投射し、第2の投射部110が長い焦点距離f2で画像を投射する。図6(A)は、第1の投射モードの例示である。第1の投射部100により第1の焦点距離f1で画像100Aが投射され、第2の投射部110により第1の焦点距離f1で画像110Aが投射される。この例では、画像100Aと110Aとが隣接するように投射されている。図6(B)は、横から見たときの虚像の様子を示しており、運転者Uは、画像100A、110Aのそれぞれの虚像100A’、110A’を視点oから近方の距離L1で視認する。
【0030】
第2の投射モードでは、図3(A)に示すように、第1の投射部100により第1の焦点距離f1で画像100Aが投射され、第2の投射部110により第2の焦点距離f2で画像110Aが投射される。そして、図3(B)に示すように、運転者Uは、近方の距離L1に虚像100A’を視認し、遠方の距離L2に虚像110A’を視認する。
【0031】
切替制御部240は、車両状態判定部220の判定結果が変更されたとき、第1の投射モードから第2の投射モード、または第2の投射モードから第1の投射モードへの切替えを行う。切替制御部240は、第1の投射モードから第2の投射モード、または第2の投射モードから第1の投射モードへ切替えるとき、焦点距離の変化が急激にならないように、第1の投射部100の第1の焦点距離f1を中間の焦点距離fcに変化させ、第2の投射部110の第1または第2の焦点距離f1/f2を同じ中間の焦点距離fcに変化させ、第1および第2の投射部100、110により中間の焦点距離fcで画像を一定期間だけ投射させた後に、最終的な第1の投射モードまたは第2の投射モードの焦点距離に変化される。
【0032】
切替制御部240は、投射モードの切替えを行うとき、第1アクチュエータ制御部250を介して第1の投射部100のアクチュエータ105を制御し、投射光学系104の焦点距離を可変させ、かつ第2アクチュエータ制御部260を介して第2の投射部110のアクチュエータ105を制御し、投射光学系104の焦点距離を可変させる。このとき、必要に応じて第1の投射部100と第2の投射部110の投射角度を可変させることもできる。
【0033】
例えば、第2の投射モード(図3)から第1の投射モード(図6)に切替わるとき、第1の投射部100の第1の焦点距離f1が中間の焦点距離fcに変化され、第2の投射部110の第2の焦点距離f2が中間の焦点距離fcに変化され、第1および第2の投射部100、110が中間の焦点距離fcに一致した後に、第1および第2の投射部100、110の中間の焦点距離fcがそれぞれ第1の焦点距離f1に変化される。
【0034】
図7は、第2の投射モードから第1の投射モードへの切替えを行うときの虚像を模式的に示している。図7(A)に示すように、第1の投射部100の第1の焦点距離f1が中間の焦点距離fcに変化されたとき、その虚像100A’の位置が距離L1からLcとなるように遠方に向けて移動する。一方、第2の投射部110の第2の焦点距離f2が中間の焦点距離fcに変化されたとき、その虚像110A’の位置が距離L2からLcとなるように近方に向けて移動する。運転者Uは、視点oから距離Lcの位置に2つの虚像100A’、110A’を視認する。好ましくは、中間の焦点距離fcは、fc=(f1+f2)/2であり、このとき、Lc=(Ln+Lf)/2となる。この場合、第1および第2の投射部100、110の各アクチュエータ105は、投射光学系の焦点距離を同一距離だけ変化させることになる。なお、便宜上、2つの虚像100A’、虚像110A’が距離Lcの位置にあるとき、この位置を出迎え位置と呼ぶことがある。次に、図7(B)に示すように、第1および第2の投射部100、110の中間の焦点距離fcが第1の焦点距離f1に変化され、運転者Uは、視点oから距離L1の位置に虚像100A’および虚像110’を視認する。
【0035】
1つの態様では、虚像100A’、110A’が出迎え位置にあるとき、切替制御部240は、車両状態判定部230の判定結果を再確認するようにしてもよい。すなわち、虚像が出迎え位置にあるとき、車両状態判定手段230の判定結果に変更がない場合には、第1の投射モードに移行するが、車両状態判定手段230の判定結果が変更されている場合には(この場合、判定結果が走行状態に変更されている場合)、第2の投射モードに戻るようにしてもよい。
【0036】
一方、第1の投射モードから第2の投射モードの切替えを行う場合には、図8(A)に示すように、第1および第2の投射部100、110の第1の焦点距離f1を中間の焦点距離fcに変化させ、2つの虚像100A’、110A’を出迎え位置に移動させる。次に、図8(B)に示すように、第1の投射部100の中間の焦点距離fcを第1の焦点距離f1に変化させ、その虚像100A’を距離L1の位置に移動させ、第2の投射部110の中間の焦点距離fcを第2の焦点距離f2に変化させ、その虚像110A’を距離L2の位置に移動させる。この場合にも、出迎え位置にあるとき、切替制御部240は、車両状態判定部230の判定結果を再確認し、その結果に基づき第2の投射モードへ移行させるようにしてもよい。
【0037】
なお、第1および第2の投射部100、110の焦点距離は、第1アクチュエータ制御部250および第2アクチュエータ制御部260を介して段階的にあるいは連続的に変化されるようにしてもよい。図9(A)は、第2の投射部110の第2の焦点距離f2が中間の焦点距離fcに変化するときの画像の投射例を示している。例えば、時刻t1のとき、第1の焦点距離で画像110Aが投射され、時刻t2のとき、第1の焦点距離よりも大きい焦点距離で画像110Aが投射され、時刻t3のとき、中間の焦点距離fcで画像110Aが投射される。このとき、図9(B)に示すように、時刻t1、t2、t3において、虚像110A’が徐々に遠方に移動するように運転者Uによって視認される。
【0038】
次に、第1の実施例に係る画像投射装置の動作を図10Aのフローを参照して説明する。なお、画像投射プログラム200は、例えば、車両のACCモードがオンになったとき、特定のアプリケーションが起動されたとき、あるいはユーザー入力により起動が指示されたとき等に実行が開始される。
【0039】
画像投射プログラム200が起動されると、車両情報取得部210は、車両状態検出部140によって検出された車両状態情報を取得する(S100)。次に、車両状態判定部220は、取得した車両状態情報に基づき、例えば図5に示すような判定基準に従い、停車状態か、走行状態かを判定する(S102)。この判定結果に基づき、投射モード決定部230は、停車状態であれば第1の投射モードと決定し(S104)、走行状態であれば第2の投射モードを決定する(S106)。切替制御部240は、車用状態判定部220の判定結果を監視し、モードの切替えの有無を判定する(S108)。停車状態または走行状態の判定に変更がなければ、そのまま現在の投射モードが維持され(S110)、停車状態から走行状態、または走行状態から停車状態に判定の変更が生じたとき、投射モードを切替えるための制御を実行する(S112)。
【0040】
図10Bは、第1の投射モードから第2の投射モードへ切替えるときのフローである。停車状態から走行状態に判定結果が変化すると、第1の投射モードから第2の投射モードへ切替えが開始される(S120)。切替制御部240は、第1アクチュエータ制御部250を介して第1の投射部100の投射光学系104の焦点距離を、第1の焦点距離f1から中間の焦点距離fcに変化させ、第2アクチュエータ制御部260を介して第2の投射部110の投射光学系104の焦点距離を、第1の焦点距離f1から中間の焦点距離fcに変化させる(S122)。この様子は、図8(A)に示される。
【0041】
2つの虚像100A’、110A’を出迎え位置に一定期間表示させた場合には、好ましくは、切替制御部240によって走行状態の判定結果が継続されているか否かが再確認される(S124)。走行状態が維持されている場合には、第2の投射モードへ移行される。すなわち、切替制御部240は、第1アクチュエータ制御部250を介して第1の投射部100の投射光学系104の焦点距離を、中間の焦点距離fcから第1の焦点距離f1に変化させ、第2アクチュエータ制御部260を介して第2の投射部110の投射光学系104の焦点距離を、中間の焦点距離fcから第2の焦点距離f2に変化させる(S126)。この様子は、図8(B)に示される。
【0042】
他方、出迎え位置にある状態で停車状態に判定結果が変更された場合には、切替制御部240は、第2の投射モードへ移行せず、第1の投射モードに戻すため、第1アクチュエータ制御部250を介して第1の投射部100の投射光学系104の焦点距離を、中間の焦点距離fcから第1の焦点距離f1に変化させ、第2アクチュエータ制御部260を介して第2の投射部110の投射光学系104の焦点距離を、中間の焦点距離fcから第1の焦点距離f1に変化させる(S128)。
【0043】
図10Cは、第2の投射モードから第1の投射モードへ切替えるときのフローである。走行状態から停車状態に判定結果が変化すると、第2の投射モードから第1の投射モードへ切替えが開始される(S130)。切替制御部240は、第1アクチュエータ制御部250を介して第1の投射部100の投射光学系104の焦点距離を、第1の焦点距離f1から中間の焦点距離fcに変化させ、第2アクチュエータ制御部260を介して第2の投射部110の投射光学系104の焦点距離を、第2の焦点距離f2から中間の焦点距離fcに変化させる(S132)。
【0044】
2つの虚像100A’、110A’を出迎え位置に一定期間表示させた場合には、好ましくは、切替制御部240によって停車状態の判定結果が継続されているか否かが再確認される(S134)。停車状態が維持されている場合には、第1の投射モードへ移行される。すなわち、切替制御部240は、第1アクチュエータ制御部250を介して第1の投射部100の投射光学系104の焦点距離を、中間の焦点距離fcから第1の焦点距離f1に変化させ、第2アクチュエータ制御部260を介して第2の投射部110の投射光学系104の焦点距離を、中間の焦点距離fcから第1の焦点距離f1に変化させる(S136)。
【0045】
他方、出迎え位置にある状態で走行状態に判定結果が変更された場合には、切替制御部240は、第2の投射モードに戻すため、第1アクチュエータ制御部250を介して第1の投射部100の投射光学系104の焦点距離を、中間の焦点距離fcから第1の焦点距離f1に変化させ、第2アクチュエータ制御部260を介して第2の投射部110の投射光学系104の焦点距離を、中間の焦点距離fcから第2の焦点距離f2に変化させる(S138)。
【0046】
なお、第1の投射モードおよび第2の投射モードで投射される画像は任意であるが、例えば、第2の投射モードでは、図11(A)に示すように、速度情報の画像100Aと進行方向の画像110Aを投射し、第1の投射モードでは、第2の投射モードのときと異なる画像を表示することができ、例えば、図11(B)に示すように、2つの画像100Aと100Bの合成が、スピードメーターと進行方向を表すような1つの画像にしてもよい。こうすることで、1つの大きな投射画面を利用してサイズの大きな画像を投射することができる。
【0047】
このように第1の実施例によれば、停車状態または走行状態に応じて第1の投射モードまたは第2の投射モードの切替えを行うとき、運転者にとって遠方と近方の中間位置に虚像を表示させた後に、遠方または近方に虚像を移動させるようにしたので、例えば渋滞等の道路を走行中に、走行状態と停車状態のサイクルが短時間で繰り返されるような状況においても、虚像の位置変化を小さくし、運転者の視認性を向上させることができる。さらに、第1の投射モードでは、2つの虚像の合成により1つの画像を表示することで、より大きな画像による情報を運転者Uに提示することが可能となる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、画像投射装置は、図5に示すように、第1の投射モードと第2投射モードの2つの投射モードを有するが、第2の実施例では、さらに第3の投射モードを有する。第3の投射モードは、有料道路または高速道路のような道路を高速走行しているときの投射モードである。
【0049】
図12に、第2の実施例による車両状態と、その判定要素と、投射モードとの関係を示す。第2の実施例では、車両の状態に新たに高速走行状態を含む。高速走行状態か否かの判定は、ギアポジション情報、速度情報、ナビゲーション部150の地図データ等を用いて行うことができる。例えば、ギアポジションがドライブギアにあり、かつ速度が20km/h以上、80km/h未満のとき、走行状態と判定され、ギアポジションがドライブギアであり、かつ速度が80km/h以上のとき、高速走行状態と速度される。走行状態あるいは高速走行状態か否かは、自車が走行している道路のリンクデータに含まれる道路種別や道路属性を参照してもよい。但し、例外的に、自車が走行している道路が一般道路であっても、交通量が少なく、かつ次の信号までの距離が一定以上であるような場合には、高速走行状態と判定するようにしもてよい。交通量の判定は、車載カメラによって撮像された画像、あるいは外部の道路交通情報配信サーバからの情報、路側機からの情報などを参照することができる。なお、図12に示す判定基準は一例である。
【0050】
車両状態判定部220によって高速走行状態と判定されると、投射モード決定部230は、第3の投射モードを決定する。第3の投射モードでは、第1の投射部100の投射光学系が第3の焦点距離にされ、第2の投射部110の投射光学系も同じく第3の焦点距離にされる。第3の焦点距離は、第2の投射モードのときの第2の焦点距離よりも大きく、従って、第3の投射モードのときの虚像は、運転者Uによってさらに遠方に視認される。
【0051】
図13は、第2の実施例に係る画像投射装置の動作を示すフローチャートである。先ず、車両情報取得部210は、車両状態検出部140、ナビゲーション部150あるいは撮像カメラ等から車両情報を取得する(S200)。車両状態判定部220は、取得された車両情報に基づき車両状態を判定する(S202)。第2の実施例では、少なくとも3つの停車状態、走行状態、高速走行状態(図12)を有し、そのいずれかの状態が判定される。車両状態判定部220によって車両状態が判定されると、投射モード決定部230は、判定された車両状態に応じた投射モード、すなわち停車状態であれば第1の投射モード(S204)、走行状態であれば第2の投射モード(S206)、高速走行状態であれば第3の投射モードを決定する(S208)。
【0052】
図14(A)は、第2の投射モードから第3の投射モードに切替わるときの虚像の位置を例示している。第2の投射モードのとき、第1の投射部100が第1の焦点距離で画像100Aを投射し、第2の投射部110が第2の焦点距離で画像110Aを投射し、それ故、虚像100A’が距離L1に位置し、虚像110A’が距離L2に位置する。第3の投射モードに切替わるとき、第1の投射部100の第1の焦点距離f1が第3の焦点距離f3に変化され、第2の投射部110の第2の焦点距離f2が第3の焦点距離に変化される。その結果、運転者Uは、視点oから遠方の距離L3にその虚像100A’110A’を視認する。
【0053】
第3の投射モードでは、図15(A)に示すように2つの虚像100A’、110A’を隣接させる投射態様に限られず、例えば、図15(B)に示すように、2つの虚像100A’と110A’とが分離するような投射態様であってもよい。この場合、第1または第2の投射部の投射方向も可変される。また、虚像100A’、110A’を、運転者Uの視線方向から外れる位置に投射されるようにしても良い。この場合、第1アクチュエータ制御部250は、予め決められた方向に投射角度を変更するか、運転者の視線を検出する視線検出カメラが搭載されている場合には、検出された視線方向に虚像100A’または110A’が重ならないように、投射角度が調整される。
【0054】
第2の実施例においても第1の実施例のときと同様に、モードの切替えを行うときに、一旦、中間の焦点距離fcで画像を投射してから最終的な投射モードの焦点距離に変化させるようにしてもよい。図16に、切替えを行うときのフローチャートを示す。ここで、ステップS200〜S208は、図13と同様である。切替制御部240は、車両状態判定部220の判定結果に基づき投射モードの切替えの有無を判定し(S210)、第1の投射モードと第2の投射モード間で投射モードを変更する場合には、第1の実施例のときと同様の制御が行われる。
【0055】
第2の投射モードから第3の投射モード、あるいは第3の投射モードから第2の投射モードへ変更される場合には、第1の投射部100の第1の焦点距離f1が第3の焦点距離f3に大きく変化されるため、第1の照射部100の中間の焦点距離fcを、第2の焦点距離f2に設定するようにしてもよい。この様子を図14(B)に示す。すなわち、第2の投射モードから第3の投射モードへ切替えられるとき、第1の投射部100の第1の焦点距離f1が中間の焦点距離fc(fc=第2の焦点距離f2)に変化され、一旦、第2の投射部110の第2の焦点距離f2と一致させる。次に、第1および第2の投射部100、110の第2の焦点距離を第3の焦点距離に変化させる。
【0056】
第2の実施例では、高速走行状態と判定された場合には、第3の投射モードによりさらに遠方に虚像100A’、110A’を表示させるようにしたので、高速走行時、運手者Uの視線が遠方に向けられるとき、その視線方向に画像を見ることができ、視認性がより向上される。さらに第2の投射モードから第3の投射モードへ切替えるとき、第1の投射部100の第1の焦点距離f1を第2の投射部110の第2の焦点距離f2に一致させてから第3の焦点距離f3に変化させるようにしたので、運転者にとっても違和感なく虚像を視認することができる。
【0057】
上記実施例では、第1の投射部100と第2の投射部を備える構成を例示したが、これは物理的に別箇の2つの投射部を備える構成であってもよいし、共通する部分を共有することで2つの投射部が機能的に実現される構成であってもよい。また、上記実施例においては、停車状態または走行状態に応じて投射モードの切替えを行うとき、中間位置に虚像を表示させた後に、遠方または近方に虚像を移動させるようにしているが、ここでいう中間位置とは、厳密な中間点を意味するものではなく、遠方と近方の間に位置すればいずれであっても良い。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1A:HUD 1B:HUD
10:画像投射装置 100:第1の投射部
100A’:虚像 101:光源
102:照明光学系 103:光変調手段
104:投射光学系 105:アクチュエータ
106:スクリーン 110:第2の投射部
110A’:虚像 120:画像生成部
130:記憶部 140:車両状態検出部
150:ナビゲーション部 160:制御部
200:画像投射プログラム 210:車両情報取得部
220:車両状態判定部 230:投射モード決定部
240:切替制御部 250:第1アクチュエータ制御部
260:第2アクチュエータ制御部 U:運転者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18