特許第6562856号(P6562856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562856
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】多目的車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/13 20160101AFI20190808BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20190808BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20190808BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20190808BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20190808BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20190808BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20190808BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20190808BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20190808BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B60W20/13
   B60L3/00 SZHV
   H01M10/48 301
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
   B60L50/60
   B60K6/48
   B60K6/52
   B60K6/54
   B60W10/26 900
   H02J7/10 H
   H02J7/10 L
   H02J7/00 P
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-53938(P2016-53938)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2017-165323(P2017-165323A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】山中 之史
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−291104(JP,A)
【文献】 特表2011−517924(JP,A)
【文献】 特開2009−296873(JP,A)
【文献】 特開2005−20955(JP,A)
【文献】 特開2014−113006(JP,A)
【文献】 特開2009−81958(JP,A)
【文献】 特開2015−106981(JP,A)
【文献】 特開2007−311309(JP,A)
【文献】 特開2001−314046(JP,A)
【文献】 特開2009−183105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−20/50
B60L 1/00− 3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
B60L 50/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を駆動する電動モータと、
前記電動モータに電力を供給する電池と、
前記電池の電池温度を検出する温度センサと、
前記温度センサによる検出温度に基づいて前記電池の放電電流上限値を設定する放電設定手段と、
前記電池から放電される電流が前記放電設定手段による設定放電電流上限値を超えないように前記電池の放電を制御しつつ前記電動モータを駆動制御する制御手段と、を備え、
前記検出温度が下降変化するとき、
前記検出温度が第1設定温度から前記第1設定温度よりも低温の第2設定温度に下降するまでの間、前記放電設定手段は、前記電池から放電される放電電流に対する、0よりも大きい一定値の放電電流上限値を設定し、
前記検出温度が前記第2設定温度から前記第2設定温度よりも低温の第3設定温度に下降するまでの間、前記放電設定手段は、前記検出温度が低くなるほど放電電流上限値をより高電流値にする状態で、前記検出温度の下降変化に伴って放電電流上限値を上昇変化させて設定し、
前記検出温度が前記第3設定温度まで下降した後、前記放電設定手段は、前記検出温度の下降変化にかかわらず、放電電流上限値として前記電池が有する最大放電電流値を設定し、
前記検出温度が上昇変化するとき、
前記検出温度が前記第3設定温度よりも高温であり、かつ前記第1設定温度よりも低温である第4設定温度に上昇するまでの間、前記放電設定手段は、放電電流上限値として前記最大放電電流値を設定し、
前記検出温度が前記第4設定温度から前記第1設定温度に上昇するまでの間、前記放電設定手段は、前記検出温度が高くなるほど放電電流上限値をより低電流値にする状態で、前記検出温度の上昇変化に伴って放電電流上限値を下降変化させて設定する多目的車両。
【請求項2】
走行装置を駆動する電動モータと、
前記電動モータに電力を供給する電池と、
前記電池に電力を供給する発電機と、
前記電池の電池温度を検出する温度センサと、
前記温度センサによる検出温度に基づいて前記電池の放電電流上限値を設定する放電設定手段と、
前記温度センサによる検出温度に基づいて前記電池の充電電流上限値を設定する充電設定手段と、
前記電池から放電される電流が前記放電設定手段による設定放電電流上限値を超えないように前記電池の放電を制御しつつ前記電動モータを駆動制御し、かつ、前記発電機から前記電池に充電される電流が前記充電設定手段による設定充電電流上限値を超えないように前記電池の充電を制御する制御手段と、を備え、
前記検出温度が下降変化するとき、
前記検出温度が第1設定温度から前記第1設定温度よりも低温の第2設定温度に下降するまでの間、前記放電設定手段は、一定値の放電電流上限値を設定し、
前記検出温度が前記第2設定温度から前記第2設定温度よりも低温の第3設定温度に下降するまでの間、前記放電設定手段は、前記検出温度が低くなるほど放電電流上限値をより高電流値にする状態で、前記検出温度の下降変化に伴って放電電流上限値を上昇変化させて設定し、
前記検出温度が前記第3設定温度まで下降した後、前記放電設定手段は、前記検出温度の下降変化にかかわらず、放電電流上限値として前記電池が有する最大放電電流値を設定し、
前記検出温度が上昇変化するとき、
前記検出温度が前記第3設定温度よりも高温であり、かつ前記第1設定温度よりも低温である第4設定温度に上昇するまでの間、前記放電設定手段は、放電電流上限値として前記最大放電電流値を設定し、
前記検出温度が前記第4設定温度から前記第1設定温度に上昇するまでの間、前記放電設定手段は、前記検出温度が高くなるほど放電電流上限値をより低電流値にする状態で、前記検出温度の上昇変化に伴って放電電流上限値を下降変化させて設定し、
前記検出温度が下降変化するとき、
前記検出温度が前記第1設定温度から前記第2設定温度に下降するまでの間、前記充電設定手段は、一定値の充電電流上限値を設定し、
前記検出温度が前記第2設定温度から前記第3設定温度に下降するまでの間、前記充電設定手段は、前記検出温度が低くなるほど充電電流上限値をより高電流値にする状態で、前記検出温度の下降変化に伴って充電電流上限値を上昇変化させて設定し、
前記検出温度が前記第3設定温度まで下降した後、前記充電設定手段は、前記検出温度の下降変化にかかわらず、充電電流上限値として前記電池が有する最大充電電流値を設定し、
前記検出温度が上昇変化するとき、
前記検出温度が前記第4設定温度に上昇するまでの間、前記充電設定手段は、充電電流上限値として前記電池が有する最大充電電流値を設定し、
前記検出温度が前記第4設定温度から前記第1設定温度に上昇するまでの間、前記充電設定手段は、前記検出温度が高くなるほど充電電流上限値をより低電流値にする状態で、前記検出温度の上昇変化に伴って充電電流上限値を下降変化させて設定する多目的車両。
【請求項3】
前記検出温度が前記第1設定温度から前記第1設定温度よりも高温の第5設定温度に上昇するまでの間、前記充電設定手段は、前記検出温度の変化にかかわらず、充電電流上限値として前記一定値の充電電流値を設定する請求項2に記載の多目的車両。
【請求項4】
前記第4設定温度は、前記第2設定温度と等しい温度である請求項1〜3のいずれか一項に記載の多目的車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置を駆動する電動モータと、前記電動モータに電力を供給する電池と、を備えた多目的車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるハイブリット車両があった。このハイブリッド車両では、走行用モータに電力供給するバッテリの電池温度を温度センサによって検出し、車両制御装置が検出された電池温度に基づいてバッテリの許容出力電力量を決定し、バッテリの放電電力が許容出力電力量を超えないように、バッテリの放電制御を行うよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−131573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行装置を駆動する電動モータに電池によって電力を供給するものでは、電池を例えばリチウムイオン電池によって構成されるので、電池温度の検出結果に基づいて放電電流上限値が設定され、電池の放電電流が放電電流上限値を超えないように放電の制御が行われるよう構成することにより、電池の放電による劣化を抑制できる。
【0005】
この制御では、電池温度が下降変化するとき、電池温度が低くなるほど放電電流上限値をより高電流値にする状態で、電池温度の下降変化に伴って放電電流上限値を上昇変化させて設定される。しかし、電池温度が高温の温度範囲にあるとき、電池温度の下降変化に伴って直ちに放電電流上限値を上昇させて設定される場合、電池温度が高温であるので、加えて放電電流値が高電流値になるほど、放電による発熱が生じ易いので、電池温度が下降し難くなって劣化を抑制し難くなる。
【0006】
また、この制御では、電池温度が上昇変化するとき、電池温度が高くなるほど放電電流上限値をより低電流値にする状態で、電池温度の上昇変化に伴って放電電流上限値を下降変化させて設定される。しかし、電池が有する最大放電電流値が放電電流上限値として設定されているとき、電池温度の上昇変化に伴って直ちに放電電流上限値を下降させて設定される場合、電動モータに供給される電力が低下して走行装置の駆動トルクが低下しがちになる。
【0007】
本発明は、電池温度の検出結果に基づいて放電電流上限値を設定し、電池の放電電流が放電電流上限値を超えないように放電の制御を行わせるものにおいて、電池の劣化をより低減させ易く、かつ電動モータに高電流値の電力を長時間に亘って供給し易い多目的車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による多目的車両は、
走行装置を駆動する電動モータと、
前記電動モータに電力を供給する電池と、
前記電池の電池温度を検出する温度センサと、
前記温度センサによる検出温度に基づいて前記電池の放電電流上限値を設定する放電設定手段と、
前記電池から放電される電流が前記放電設定手段による設定放電電流上限値を超えないように前記電池の放電を制御しつつ前記電動モータを駆動制御する制御手段と、を備え、
前記検出温度が下降変化するとき、
前記検出温度が第1設定温度から前記第1設定温度よりも低温の第2設定温度に下降するまでの間、前記放電設定手段は、前記電池から放電される放電電流に対する、0よりも大きい一定値の放電電流上限値を設定し、
前記検出温度が前記第2設定温度から前記第2設定温度よりも低温の第3設定温度に下降するまでの間、前記放電設定手段は、前記検出温度が低くなるほど放電電流上限値をより高電流値にする状態で、前記検出温度の下降変化に伴って放電電流上限値を上昇変化させて設定し、
前記検出温度が前記第3設定温度まで下降した後、前記放電設定手段は、前記検出温度の下降変化にかかわらず、放電電流上限値として前記電池が有する最大放電電流値を設定し、
前記検出温度が上昇変化するとき、
前記検出温度が前記第3設定温度よりも高温であり、かつ前記第1設定温度よりも低温である第4設定温度に上昇するまでの間、前記放電設定手段は、放電電流上限値として前記最大放電電流値を設定し、
前記検出温度が前記第4設定温度から前記第1設定温度に上昇するまでの間、前記放電設定手段は、前記検出温度が高くなるほど放電電流上限値をより低電流値にする状態で、前記検出温度の上昇変化に伴って放電電流上限値を下降変化させて設定する。
【0009】
電池温度の下降変化に伴って放電電流上限値が上昇変化させて設定されると、電池温度が下降し難くなる高温側の温度範囲を、第1設定温度から第2設定温度の温度範囲として設定する。電池温度の下降変化に伴って放電電流上限値が上昇変化させて設定されても、電池の劣化を抑制しつつ電動モータにできるだけ高電流値の電力を供給できる低温側の温度範囲を、第2設定温度から第3設定温度の温度範囲として設定する。
すると、前記した高温側の温度範囲(第1設定温度から第2設定温度の範囲)では、電池温度の下降変化にかかわらず、放電電流上限値が変化されずに一定値に維持されるので、電池温度の下降変化に放電があまり影響せず、電池温度をスムーズに下降させることができる。また、放電電流上限値が一定値に維持されるので、電池の放電による劣化が生じにくい。前記した低温側の温度範囲(第2設定温度から第3設定温度の範囲)では、電池温度の下降に伴って放電電流上限値が上昇変化させて設定されるので、電池の劣化を抑制しつつ電動モータにできるだけ高電流値の電力を供給できる。
【0010】
電池温度が上昇変化しても、放電電流上限値を変化させずに電池の最大放電電流値に維持させても、電池を劣化し難い状態に維持できる低温側の温度範囲での上限の電池温度を、第4設定温度として設定する。電池温度の上昇変化に伴って放電電流上限値が下降変化させて設定されることで、電池の劣化を生じ難くしつつ電動モータにできるだけ高電流値の電力を供給できる温度範囲を、第4設定温度から第1設定温度の温度範囲として設定する。
すると、電池温度が第4設定温度に上昇変化するまでは、電池温度が比較的低い状態で放電電流上限値が電池の最大放電電流値に維持されるので、電池を劣化し難くしつつ、電池の最大放電電流値での電流を電動モータに供給できる。第4設定温度から第1設定温度の温度範囲では、電池温度の上昇変化に伴って放電電流上限値が下降変化させて設定されるので、電池の劣化を抑制しつつ電動モータにできるだけ高電流値の電力を供給できる。
【0011】
従って、電池温度の検出結果に基づいて放電電流上限値を設定して放電の制御を行い、電動モータにできるだけ高電流値の電力を供給しつつ、電池の放電による劣化を抑制するものにおいて、電池温度が高温側の温度範囲(第1設定温度から第2設定温度の範囲)で下降変化するとき、放電電流上限値が一定値に維持されることにより、電池温度をスムーズに下降させて電池温度を低温側の温度範囲にスムーズに下げることができ、電池の放電に起因する劣化をより低減させ易い。電池温度が低温側の温度範囲において上昇変化するとき、電池温度が維持可能な限界の温度(第4設定温度)に上がるまで放電電流上限値が電池の最大放電電流値に維持されることにより、電池の最大電流値に相当する高電流値の電力を電動モータにできるだけ長く供給できる。
【0012】
本発明による多目的車両は、
走行装置を駆動する電動モータと、
前記電動モータに電力を供給する電池と、
前記電池に電力を供給する発電機と、
前記電池の電池温度を検出する温度センサと、
前記温度センサによる検出温度に基づいて前記電池の放電電流上限値を設定する放電設定手段と、
前記温度センサによる検出温度に基づいて前記電池の充電電流上限値を設定する充電設定手段と、
前記電池から放電される電流が前記放電設定手段による設定放電電流上限値を超えないように前記電池の放電を制御しつつ前記電動モータを駆動制御し、かつ、前記発電機から前記電池に充電される電流が前記充電設定手段による設定充電電流上限値を超えないように前記電池の充電を制御する制御手段と、を備え、
前記検出温度が下降変化するとき、
前記検出温度が第1設定温度から前記第1設定温度よりも低温の第2設定温度に下降するまでの間、前記放電設定手段は、一定値の放電電流上限値を設定し、
前記検出温度が前記第2設定温度から前記第2設定温度よりも低温の第3設定温度に下降するまでの間、前記放電設定手段は、前記検出温度が低くなるほど放電電流上限値をより高電流値にする状態で、前記検出温度の下降変化に伴って放電電流上限値を上昇変化させて設定し、
前記検出温度が前記第3設定温度まで下降した後、前記放電設定手段は、前記検出温度の下降変化にかかわらず、放電電流上限値として前記電池が有する最大放電電流値を設定し、
前記検出温度が上昇変化するとき、
前記検出温度が前記第3設定温度よりも高温であり、かつ前記第1設定温度よりも低温である第4設定温度に上昇するまでの間、前記放電設定手段は、放電電流上限値として前記最大放電電流値を設定し、
前記検出温度が前記第4設定温度から前記第1設定温度に上昇するまでの間、前記放電設定手段は、前記検出温度が高くなるほど放電電流上限値をより低電流値にする状態で、前記検出温度の上昇変化に伴って放電電流上限値を下降変化させて設定し、
前記検出温度が下降変化するとき、
前記検出温度が前記第1設定温度から前記第2設定温度に下降するまでの間、前記充電設定手段は、一定値の充電電流上限値を設定し、
前記検出温度が前記第2設定温度から前記第3設定温度に下降するまでの間、前記充電設定手段は、前記検出温度が低くなるほど充電電流上限値をより高電流値にする状態で、前記検出温度の下降変化に伴って充電電流上限値を上昇変化させて設定し、
前記検出温度が前記第3設定温度まで下降した後、前記充電設定手段は、前記検出温度の下降変化にかかわらず、充電電流上限値として前記電池が有する最大充電電流値を設定し、
前記検出温度が上昇変化するとき、
前記検出温度が前記第4設定温度に上昇するまでの間、前記充電設定手段は、充電電流上限値として前記電池が有する最大充電電流値を設定し、
前記検出温度が前記第4設定温度から前記第1設定温度に上昇するまでの間、前記充電設定手段は、前記検出温度が高くなるほど充電電流上限値をより低電流値にする状態で、前記検出温度の上昇変化に伴って充電電流上限値を下降変化させて設定する。
【0013】
電池温度の下降変化に伴って充電電流上限値が上昇変化させて設定されると、電池温度が下降し難くなる高温側の温度範囲を、第1設定温度から第2設定温度の温度範囲として設定する。電池温度の下降変化に伴って電流上限値が上昇変化させて設定されても、電池の劣化を抑制しつつ電動モータにできるだけ高電流の電力を供給できる低温側の温度範囲を、第2設定温度から第3設定温度の温度範囲として設定する。
すると、前記した高温側の温度範囲(第1設定温度から第2設定温度の範囲)では、電池温度の下降変化にかかわらず、充電電流上限値が変化されずに一定値に維持されるので、電池温度の下降変化に充電があまり影響せず、電池温度をスムーズに下降させることができる。また、充電電流上限値が一定値に維持されるので、電池の充電による劣化が生じにくい。前記した低温側の温度範囲(第2設定温度から第3設定温度の範囲)では、電池温度の下降に伴って充電電流上限値が上昇変化させて設定されるので、電池の劣化を抑制しつつ電池にできるだけ高電流値の電力を供給できる。
【0014】
電池温度が上昇変化しても、充電電流上限値を変化させずに電池の最大充電電流値に維持させても、電池を劣化し難い状態に維持できる低温側の温度範囲での上限の電池温度を、第4設定温度として設定する。電池温度の上昇変化に伴って充電電流上限値が下降変化させて設定されることで、電池の劣化を生じ難くしつつ電池にできるだけ高電流値の電力を供給できる温度範囲を、第4設定温度から第1設定温度の温度範囲として設定する。
すると、電池温度が第4設定温度に上昇変化するまでは、電池温度が比較的低い状態で充電電流上限値が電池の最大充電電流値に維持されるので、電池を劣化し難くしつつ、電池の最大充電電流値での電流を電池に供給できる。第4設定温度から第1設定温度の温度範囲では、電池温度の上昇変化に伴って充電電流上限値が下降変化させて設定されるので、電池の劣化を抑制しつつ電池にできるだけ高電流値の電力を供給できる。
【0015】
従って、電池温度の検出結果に基づいて充電電流上限値を設定して充電の制御を行い、電池にできるだけ高電流値の電力を供給しつつ、電池の充電による劣化を抑制するものにおいて、電池温度が高温側の温度範囲(第1設定温度から第2設定温度の範囲)で下降変化するとき、充電電流上限値が一定値に維持されることにより、電池温度をスムーズに下降させて電池温度を低温側の温度範囲にスムーズに下げることができ、電池の充電に起因する劣化をより低減させ易い。電池温度が低温側の温度範囲において上昇変化するとき、電池温度が維持可能な限界の温度(第4設定温度)に上がるまで充電電流上限値が電池の最大充電電流値に維持されることにより、電池の最大電流値に相当する高電流値での電力を電池に長く供給できる。
【0016】
本発明においては、前記検出温度が前記第1設定温度から前記第1設定温度よりも高温の第5設定温度に上昇するまでの間、前記充電設定手段は、前記検出温度の変化にかかわらず、充電電流上限値として前記一定値の充電電流値を設定すると好適である。
【0017】
第1設定温度から第5設定温度の温度範囲において充電電流上限値が変更される場合、この温度範囲は、劣化が生じ易い高温の温度範囲であるのに加え、電池から出力される電流値が変化するので、劣化を抑制し難くなる。しかし、本構成によると、充電電流上限値が一定値に維持され、電池温度の変化にかかわらず電池に供給される電流値が変化しないので、電池の劣化をより抑制し易い。たとえば、一定値に維持される充電電流上限値として、充電に起因する発熱が電池に生じない充電電流上限値を設定すれば、電動モータに電力が供給されることに起因する電池温度の上昇がないので、劣化をより抑制し易い。
【0018】
本発明においては、前記第4設定温度は、前記第2設定温度と等しい温度であると好適である。
【0019】
本構成によれば、第4設定温度として第2設定温度と異なる温度を設定するのに比べ、温度センサによる検出温度と比較させるための設定温度の数が少ない簡素な制御構成を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ユーティリティビーグルの全体を示す左側面図である。
図2】ユーティリティビーグルの全体を示す平面図である。
図3】前輪駆動制御装置を示すブロック図である。
図4】放電電流値と電池温度上昇量との関係を示す説明図である。
図5】充電電流値と電池温度上昇量との関係を示す説明図である。
図6】充放電形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明に係るユーティリティビーグル(多目的車両)の実施の形態を説明する。図1は、ユーティリティビーグルの全体を示す左側面図である。図2は、ユーティリティビーグルの全体を示す平面図である。図1,2に示す[F]の方向が走行車体4の前側、[B]の方向が走行車体4の後側、[L]の方向が走行車体4の左側、[R]の方向が走行車体4の右側と定義する。
【0022】
図1,2に示すように、ユーティリティビーグルは、車体フレーム1の前部に左右一対の前車輪2が駆動可能に装備され、車体フレーム1の後部に左右一対の後車輪3が駆動可能に装備された走行車体4を備えている。前車輪2は、操向操作可能に装備されている。
走行車体4の前後中間部に、運転座席5を有した運転部6が設けられている。運転部6には、補助座席7及び乗員保護用のロプス8が備えられている。走行車体4の後部に荷台9が設けられている。荷台9は、後支点で上下揺動可能に支持され、昇降機構10によって上昇揺動操作でき、積載物を車体後方へ排出できるようになっている。
【0023】
運転部6の下方と荷台9の下方とに亘って電動モータ11及びエンジン12を有した原動部13が設けられている。走行車体4は、4輪駆動状態と、前2輪駆動状態と、後2輪駆動状態とに切り換え可能になっている。4輪駆動状態では、前車輪2が電動モータ11によって駆動され、後車輪3がエンジン12によって駆動される。前2輪駆動状態では、前車輪2が電動モータ11によって駆動され、エンジン12から後車輪3へ駆動力が伝達されない。後2輪駆動状態では、電動モータ11から前車輪2へ駆動力が伝達されず、後車輪3がエンジン12によって駆動される。前車輪2が電動モータ11によって駆動される場合、電動モータ11から回転軸14を介して前輪駆動ミッション15に駆動力が伝達される。後車輪3がエンジン12よって駆動される場合、エンジン12からベルト無段変速装置16を介して後輪駆動ミッション17に駆動力が伝達される。
【0024】
図3は、前輪駆動制御装置20を示すブロック図である。図3に示すように、前輪駆動制御装置20は、制御手段21、トルク設定手段22、放電設定手段23、充電設定手段24、温度計測手段25、インバータユニット26を備えている。制御手段21、トルク設定手段22、放電設定手段23、充電設定手段24及び温度計測手段25は、マイクロコンピュータを利用した制御装置27によって構成されている。
【0025】
インバータユニット26は、電動モータ11及び電池30に連係されている。電動モータ11は、モータジェネレータユニットによって構成されている。電池30は、リチウムイオン電池によって構成されている。インバータユニット26は、電池30から出力される直流電力を交流電力に変換して電動モータ11に供給することで、電池30から電動モータ11に電力を供給させる。電動モータ11が発電機として作動する場合、インバータユニット26は、電動モータ11から出力される交流電力を直流電力に変換して電池30に供給することで、電動モータ11から電池30に電力を供給させる。
【0026】
トルク設定手段22は、アクセルセンサ31に連係されている。アクセルセンサ31は、アクセルペダル32の操作量を検出する。トルク設定手段22は、アクセルセンサ31による検出操作量を入力して入力した検出操作量に対応した前輪駆動トルクを設定し、設定前輪駆動トルクを制御手段21に出力する。
【0027】
温度計測手段25は、2つの温度センサ33に連係されている。本実施例では、電池30は、2つのモジュール30aによって構成されている。2つの温度センサ33は、2つのモジュール30aに振り分けて装備されている。各温度センサ33は、モジュール30aの実温度(電池温度)を検出する。温度計測手段25は、2つの温度センサ33による検出温度を入力し、入力した2つの検出温度のうち、高温の方の検出温度を電池30の全体の電池温度として検出し、検出温度を放電設定手段23及び充電設定手段24に出力する。本実施例では、2つの温度センサ33の検出温度のうちの高温の方の検出温度を電池30の全体としての電池温度として検出するよう構成しているが、これに限らず、2つの温度センサ33による検出温度の平均の検出温度を電池30の全体としての電池温度として検出するよう構成してもよい。本実施例では、2つのモジュール30aによって電池30を構成しているが、これに限らず、1つのモジュール30a、あるいは3つ以上のモジュール30aによって電池30を構成してもよい。
【0028】
放電設定手段23は、温度計測手段25による検出温度を入力することで、2つの温度センサ33による検出温度のうちの高温の方の検出温度を電池30の全体の検出温度として、この検出温度に対応した放電電流上限値を設定し、設定した放電電流上限値を制御手段21に出力する。
【0029】
制御手段21は、トルク設定手段22から入力した設定前輪駆動トルクに基づいてインバータユニット26を制御し、電池30から電動モータ11に電力を供給させて電動モータ11を駆動させる。このとき、制御手段21は、放電設定手段23による設定放電電流上限値、予め設定された時間間隔での電圧、及び電気効率(電動モータ効率×インバータ効率)から上限駆動トルクを算出し、算出上限駆動トルクに基づいてインバータユニット26を制御することにより、前輪駆動トルクが算出上限駆動トルクを超えないように電池30の放電を制御する。さらに、制御手段21は、放電設定手段23による設定放電電流上限値に基づいてインバータユニット26を制御することにより、電池30から放電される電流が設定放電電流上限値を超えないように電池30の放電を制御する。
【0030】
アクセルペダル32を踏込み操作することにより、制御手段21がトルク設定手段22からの情報に基づいてインバータユニット26を制御して、電池30から電動モータ11に電力を供給させるので、前車輪2が電動モータ11によって駆動され、走行車体4を走行させることができる。このとき、制御手段21が放電設定手段23による設定放電電流上限値に基づいてインバータユニット26を制御して、電池30の放電電流が設定放電電流上限値を超えないように、かつ前輪駆動トルクが算出上限駆動トルクを超えないように電池30の放電を制御するので、電池30の放電に起因する劣化を抑制しつつ電動モータ11を駆動させることができる。
【0031】
充電設定手段24は、温度計測手段25による検出温度を入力することで、2つの温度センサ33による検出温度のうちの高温の方の検出温度を電池30の全体の電池温度として検出し、この検出温度に対応した充電電流上限値を設定し、設定した充電電流上限値を制御手段21に出力する。
【0032】
電動モータ11が発電機として作動し、電動モータ11から電池30に電力が供給される際、制御手段21が充電設定手段24による設定充電電流上限値に基づいてインバータユニット26を制御して、電池30の充電電流が設定充電電流上限値を超えないように電池30の充電を制御する。電池30の充電に起因する劣化を抑制しつつ電池30に充電させることできる。
【0033】
放電設定手段23による放電電流上限値の設定、及び充電設定手段24による充電電流上限値の設定は、具体的には、次の如く行われる。
【0034】
図4は、電池30の放電電流値と、放電電流値の放電による電池温度上昇量との関係を示す説明図である。図5は、電池30の充電電流値と、充電電流値の充電による電池温度上昇量との関係を示す説明図である。これらの関係は、電池30の放電試験及び充電試験によって得られたものである。図6は、放電試験及び充電試験の試験結果を基に開発された充放電形態を示す説明図である。放電設定手段23は、温度センサ33による検出温度、及び図6の充放電形態に基づいて放電電流上限値を設定する。充電設定手段24は、温度センサ33による検出温度、及び図6の充放電形態に基づいて充電電流上限値を設定する。
【0035】
すなわち、放電設定手段23は、設定時間置きに、設定時間内における温度センサ33による複数回の検出温度を温度計測手段25を介して入力し、設定時間内における検出温度が下降変化するか、上昇変化するかを判別する。放電設定手段23は、検出温度が下降変化すると判別したとき、放電電流上限値を次の如く設定する。
【0036】
検出温度が第1設定温度[T1]から第1設定温度[T1]よりも低温の第2設定温度[T2]に下降するまでの間、放電設定手段23は、一定値の放電電流上限値[A1]を放電電流上限値として設定する。
【0037】
検出温度が第2設定温度[T2]から第2設定温度[T2]よりも低温の第3設定温度[T3]に下降するまでの間、放電設定手段23は、検出温度が低くなるほど放電電流上限値をより高電流値にする状態で、検出温度の下降変化に伴って放電電流上限値を上昇変化させて設定する。
【0038】
検出温度が第3設定温度[T3]まで下降した後、放電設定手段23は、検出温度の下降変化にかかわらず、電池30が有する最大放電電流値[A2]を設定放電電流上限値として設定する。
【0039】
放電設定手段23は、検出温度が上昇変化すると判別したとき、放電電流上限値を次の如く設定する。
【0040】
検出温度が第3設定温度[T3]よりも高温であり、かつ第1設定温度[T1]よりもよりも低温である第4設定温度[T4]に上昇するまでの間、放電設定手段23は、電池30の最大放電電流値を放電電流上限値として設定する。
【0041】
検出温度が第4設定温度[T4]から第1設定温度[T1]に上昇するまでの間、放電設定手段23は、検出温度が高くなるほど放電電流上限値をより低電流値にする状態で、検出温度の上昇変化に伴って放電電流上限値を下降変化させて設定する。
【0042】
検出温度が第1設定温度[T1]から第1設定温度[T1]よりも高温の第5設定温度[T5]に上昇するまでの間、放電設定手段23は、一定値の放電電流上限値[A1]を設定する。
【0043】
充電設定手段24は、設定時間置きに、設定時間内における温度センサ33による複数回の検出温度を温度計測手段25を介して入力し、設定時間内における検出温度が下降変化するか、上昇変化するかを判別する。充電設定手段24は、検出温度が下降変化すると判別したとき、充電電流上限値を次の如く設定する。
【0044】
検出温度が第1設定温度[T1]から第1設定温度[T1]よりも低温の第2設定温度[T2]に下降するまでの間、充電設定手段24は、一定値の充電電流上限値[A1]を充電電流上限値として設定する。
【0045】
検出温度が第2設定温度[T2]から第2設定温度[T2]よりも低温の第3設定温度[T3]に下降するまでの間、充電設定手段24は、検出温度が低くなるほど充電電流上限値をより高電流値にする状態で、検出温度の下降変化に伴って充電電流上限値を上昇変化させて設定する。
【0046】
検出温度が第3設定温度[T3]まで下降した後、充電設定手段24は、検出温度の下降変化にかかわらず、電池30が有する最大充電電流値[A2]を設定充電電流上限値として設定する。
【0047】
充電設定手段24は、検出温度が上昇変化すると判別したとき、充電電流上限値を次の如く設定する。
【0048】
検出温度が第3設定温度[T3]よりも高温であり、かつ第1設定温度[T2]よりもよりも低温である第4設定温度[T4]に上昇するまでの間、充電設定手段24は、電池30の最大充電電流値を充電電流上限値として設定する。
【0049】
検出温度が第4設定温度[T4]から第1設定温度[T1]に上昇するまでの間、充電設定手段24は、検出温度が高くなるほど充電電流上限値をより低電流値にする状態で、検出温度の上昇変化に伴って充電電流上限値を下降変化させて設定する。
【0050】
検出温度が第1設定温度[T1]から第1設定温度[T1]よりも高温の第5設定温度[T5]に上昇するまでの間、充電設定手段24は、一定値の充電電流上限値[A1]を設定する。
【0051】
本実施例では、第4検出温度[T4]を第2検出温度[T2]と等しい温度に設定している。第4検出温度[T4]は、第2検出温度[T2]と等しい温度に限らず、第2検出温度[T2]よりも低い温度又は高い温度に設定してもよい。
【0052】
本実施例では、第1検出温度[T1]として約60℃を、第2検出温度[T2]として約55℃を、第3検出温度[T3]として約50℃を、第5検出温度[T5]として約65℃を夫々設定しているが、これら以外の如何なる値の温度を第1検出温度[T1]、第2検出温度[T2]、第3検出温度[T3]、第5検出温度[T5]として設定してもよい。すなわち、電池の特性に対応して温度を設定するとよい。
【0053】
本実施例では、第1検出温度[T1]から第2検出温度[T2]に検出温度が下降変化する間の放電電流上限値として、検出温度が同様に下降変化する間の充電電流上限値[A1]として、第1検出温度[T1]から第5検出温度[T5]に検出温度が上昇変化する間の充電電流上限値[A1]として、電池の放電や充電による自己発熱が概ねない電流上限値を設定している。
【0054】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施例では、前車輪2、後車輪3のうち、前車輪2のみが電動モータ11によって駆動される例を示したが、前車輪2がエンジンによって駆動され、後車輪3が電動モータによって駆動されるよう構成してもよい。また、前車輪2及び後車輪3の両方を電動モータによって駆動可能に設けてもよい。
【0055】
(2)上記した実施例では、走行用の電動モータ11、及び走行用のエンジン12を備えたハイブリッドに構成された例を示したが、エンジンを備えず、電動モータのみを備えて構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、前車輪2、後車輪3に代え、クローラなど、型式が異なる走行装置を備えた多目的車両に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
2 走行装置(前車輪)
11 電動モータ、発電機
21 制御手段
23 放電設定手段
24 充電設定手段
30 電池
33 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6