(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の複数の隔壁と、一の前記隔壁と他の前記隔壁とが交わる交点部とを有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部の前記隔壁の表面及び細孔の内表面の少なくとも一方に配設された触媒層と、を備え、
前記触媒層が配設されない状態における前記隔壁の気孔率が、20〜70%であり、
前記触媒層が配設されない状態における前記隔壁における細孔の平均細孔径が、1〜60μmであり、
複数の前記隔壁は、少なくとも一方の端部が切り欠かれた凹状部を有する切欠き隔壁を含み、
前記隔壁中の前記切欠き隔壁の割合は、1〜100%であり、
前記触媒層が配設されない状態において、前記切欠き隔壁の前記凹状部は、前記端面において隣り合う前記交点部の中心間の距離を基準長さとしたとき、前記基準長さの10〜200%の深さを有し、かつ、隣り合う前記交点部の間の距離を基準幅としたとき、前記基準幅の33〜100%の幅を有する部分であるハニカム構造体。
前記切欠き隔壁の前記凹状部は、前記端面において隣り合う前記交点部の中心間の距離を基準長さとしたとき、前記基準長さの50〜150%の深さを有する請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0014】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、
図1〜
図4に示すハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、一方の端面である流入端面11から他方の端面である流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の複数の隔壁1と、一の隔壁1と他の隔壁1とが交わる交点部3とを有するハニカム構造部10を備えている。また、ハニカム構造体100は、ハニカム構造部10の隔壁1の表面に配設された触媒層8を備えている。ハニカム構造体100は、隔壁1の気孔率が、20〜70%であり、隔壁1における細孔の平均細孔径が、1〜60μmである。ハニカム構造体100は、複数の隔壁1が、少なくとも一方の端部が切り欠かれた凹状部30を有する切欠き隔壁20を含み、隔壁1中の切欠き隔壁20の割合が、1〜100%である。そして、ハニカム構造体100の端面において隣り合う交点部3の中心O間の距離を基準長さLとし、隣り合う交点部3の間の距離を基準幅Wとする。このとき、切欠き隔壁20の凹状部30は、上記基準長さLの10〜200%の深さDを有し、かつ、上記基準幅Wの33〜100%の幅を有している部分である。なお、
図4に示す凹状部30は、基準幅Wの100%の幅を有している。また、隔壁1の気孔率、細孔の平均細孔径、凹状部30の深さD、及び幅は、触媒層が配設されていない状態における値である。
【0015】
このようなハニカム構造体100は、所定の割合で切欠き隔壁20が存在するため、この切欠き隔壁20の凹状部30によって排ガスGが流れる際に空気が拡散することになる。そのため、ハニカム構造体100は、排ガスGと触媒(触媒層)との接触機会が多くなり(即ち、排ガスGと触媒との接触時間及び接触面積が増加し)、NO
Xの浄化性能が向上されるものである。
【0016】
図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の流入端面の一部である領域Pを拡大して模式的に示す平面図である。
図2は、ハニカム構造体の端面について、この端面に対して斜め方向から見た拡大図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の一実施形態のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
図4は、本発明のハニカム構造体の一実施形態のセルの延びる方向に平行な断面の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
図4は、セルの延びる方向に平行な断面のうち、交点部3の中心Oを通過するものである。
【0017】
(1−1)ハニカム構造部:
ハニカム構造部10は、上述の通り、多孔質の複数の隔壁1と、一の隔壁1と他の隔壁1とが交わる交点部3とを有している。そして、複数の隔壁1は、少なくとも一方の端部が切り欠かれた凹状部30を有する切欠き隔壁20を含むものである。このような切欠き隔壁20が含まれることにより、ハニカム構造部10において排ガスGが流れる際に空気が拡散することになる。
【0018】
ここで、「凹状部」は、上記条件を満たすものを言う。つまり、上記条件を満たさない切欠きは凹状部には該当しないことになる。そして、上記条件を満たす切欠きを形成することにより、NO
Xの浄化性能が向上することになる。
【0019】
凹状部30は、その深さDが、基準長さLの50〜150%であることが好ましい。別言すれば、切欠き隔壁20の凹状部30は、端面において隣り合う交点部3の中心O間の距離を基準長さLとしたとき、この基準長さLの50〜150%の深さを満たすものとすることが好ましい。
【0020】
凹状部30の深さDについて上記範囲とすることにより、ハニカム構造体に流入する排ガスが凹状部によりセル内で拡散するため、排ガスと触媒の接触性が良化し、NO
Xの浄化性能が向上する。凹状部30の深さDが、上記基準長さLの10%未満であると、ハニカム構造体に流入する排ガスがセル内を拡散せずに通過するため、NO
Xの浄化性能が十分に得られない。凹状部30の深さDが、上記基準長さLの200%超であると、ハニカム構造体の強度が低下するため、缶体に収納する際にハニカム構造体が破損する場合がある。
【0021】
なお、「凹状部の深さ」は、ハニカム構造部の端面から最も遠い部分までの距離をいう。
図4には、ハニカム構造部の端面を破線で示す。
【0022】
凹状部30は、その幅が、基準幅Wの33〜100%であり、基準幅Wの50〜80%であることが更に好ましい。「凹状部の幅」は、ハニカム構造部の端面から凹状部を見たとき、凹状部の開口の最も広い幅のことをいう。
【0023】
凹状部30の幅について上記範囲とすることにより、ハニカム構造体に流入する排ガスが凹状部によりセル内で拡散するため、排ガスと触媒の接触性が良化し、NO
Xの浄化性能が向上する。凹状部30の幅が、上記基準幅Wの33%未満であると、ハニカム構造体に流入する排ガスがセル内を拡散せずに通過するため、NO
Xの浄化性能が十分に得られない。凹状部30の幅が、上記基準幅Wの100%超であると、ハニカム構造体の強度が低下するため、缶体に収納する際にハニカム構造体が破損する場合がある。
【0024】
なお、「凹状部の深さ」及び「凹状部の幅」は、それぞれ、合計40個の切欠き隔壁について測定したときの平均値とする。具体的には、ハニカム構造体の端面において隔壁の延びる複数の方向を決定し、各方向に沿って存在する切欠き隔壁を任意に40個それぞれ選択する。例えば、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状が四角形のセルが形成されたハニカム構造体の場合、ハニカム構造体の端面において隔壁の延びる方向は2方向(縦方向と横方向)ある。そのため、各方向(縦方向と横方向のそれぞれ)に沿って存在する切欠き隔壁を任意に40個それぞれ選択する。
【0025】
隔壁1中の切欠き隔壁20の割合は、1〜60%であることが好ましく、20〜50%であることが更に好ましい。隔壁1中の切欠き隔壁20の割合について上記範囲とすることにより、ハニカム構造体に流入する排ガスが凹状部によりセル内で拡散するため、排ガスと触媒の接触性が良化し、NO
Xの浄化性能が向上する。なお、隔壁1中の切欠き隔壁20の割合が1%未満であると、ハニカム構造体に流入する排ガスがセル内を拡散せずに通過するため、NO
Xの浄化性能が十分に得られない。
【0026】
隔壁1の気孔率は、20〜70%であることが必要であり、30〜65%が好ましく、45〜60%が特に好ましい。このような範囲とすることにより、ハニカム構造体に流入する排ガスが凹状部によりセル内で拡散するため、排ガスと触媒の接触性が良化し、NO
Xの浄化性能が向上する。隔壁の気孔率が、20%未満であると、ハニカム構造体に触媒を担持させる際に、隔壁の細孔内に触媒が浸入し難く、ハニカム構造体の隔壁の表面にのみ触媒が担持する傾向がある。そのため、ハニカム構造体内における触媒と排ガスの接触が悪化し、NO
Xの浄化性能が十分に得られない。70%超であると、ハニカム構造体の強度が低下するため、缶体に収納する際にハニカム構造体が破損する場合がある。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。なお、隔壁1の気孔率は、触媒層が配設されない状態(即ち、触媒を担持させる前の状態)における隔壁1の気孔率を意味する。
【0027】
隔壁1における細孔の平均細孔径は、1〜60μmであることが必要であり、5〜55μmが好ましく、15〜30μmが特に好ましい。このような範囲とすることにより、ハニカム構造体に流入する排ガスが凹状部によりセル内で拡散するため、排ガスと触媒の接触性が良化し、NO
Xの浄化性能が向上する。平均細孔径が、1μm未満であると、ハニカム構造体に触媒を担持させる際に、隔壁の細孔内に触媒が浸入し難く、ハニカム構造体の隔壁の表面にのみ触媒が担持する傾向がある。60μm超であると、ハニカム構造体の強度が低下するため、缶体に収納する際にハニカム構造体が破損する場合がある。平均細孔径は、水銀ポロシメータ測定した値である。なお、隔壁1における細孔の平均細孔径は、触媒層が配設されない状態(即ち、触媒を担持させる前の状態)における隔壁1における細孔の平均細孔径を意味する。
【0028】
隔壁1の厚さは、60〜300μmであることが好ましく、90〜140μmであることが特に好ましい。隔壁1の厚さが上記下限値未満であると、ハニカム構造体100の強度が低くなることがある。上記上限値超であると、圧力損失が高くなることがある。
【0029】
ハニカム構造部10のセル密度については、特に制限はない。ハニカム構造部10のセル密度は、31〜140個/cm
2であることが好ましく、62〜93個/cm
2であることが特に好ましい。セル密度が下限値未満であると、排ガスを流通させたときに、短時間で圧力損失が大きくなったり、ハニカム構造体100の強度が低くなったりすることがある。セル密度が上限値超であると、圧力損失が大きくなることがある。
【0030】
ハニカム構造部10のセル形状(セルが延びる方向に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はない。セル形状としては、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。四角形のなかでは、正方形または長方形が好ましい。
【0031】
ハニカム構造部10は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とすることができる。また、ハニカム構造部10は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。ここで、本明細書において「主成分」は、全体の中の50質量%を超える成分を意味する。
【0032】
ハニカム構造部10の形状は、特に限定されない。ハニカム構造部10の形状としては、円柱状、端面が楕円形の柱状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱状、等が好ましい。
図1に示すハニカム構造体100においては、ハニカム構造部10の形状は円柱状である。
【0033】
ハニカム構造部10には、外周コート層が形成されていてもよい。外周コート層の厚さは、500〜3000μmであることが好ましく、1000〜1500μmであることが更に好ましい。上記外周コート層の厚さが下限値未満であると、ハニカム構造体の強度が低下するため、缶体に収納する際にハニカム構造体が破損する場合がある。上限値超であると、外周コート層の体積が増加するため、耐熱衝撃性が低下し、ハニカム構造体に温度差が生じた際に破損するおそれがある。
【0034】
(1−2)触媒層:
触媒層は、少なくとも隔壁の表面に配設された層である。つまり、触媒層は、隔壁の表面の他に細孔の内表面に配設されてもよい。そして、この触媒層は、SCR触媒などの触媒から構成される層である。この触媒層によって、排ガス中のNO
Xを良好に浄化することができる。
【0035】
触媒層の厚さは、特に制限はなく、従来公知の触媒層の厚さを適宜採用することができる。
【0036】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体は、以下の方法で製造することができる。即ち、本発明のハニカム構造体は、ハニカム焼成体作製工程と、端面研磨工程と、触媒担持工程と、を有する方法により製造できる。ハニカム焼成体作製工程は、ハニカム焼成体を作製する工程である。端面研磨工程は、ハニカム焼成体作製工程で作製したハニカム焼成体の端面を砥石や金網で研磨して切欠きハニカム焼成体を得る工程である。触媒担持工程は、切欠きハニカム焼成体の隔壁の表面に触媒を担持させて、ハニカム構造体を得る工程である。なお、「ハニカム焼成体」は、一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の複数の隔壁と、一の隔壁と他の隔壁とが交わる交点部とを有するものである。
【0037】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法について、工程毎に説明する。
【0038】
(2−1)ハニカム焼成体作製工程:
ハニカム焼成体作製工程は、セラミック原料が焼成されて形成された多孔質の隔壁を備えたハニカム焼成体を作製する工程である。ハニカム焼成体を作製する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。このハニカム焼成体作製工程は、具体的には、成形工程と、焼成工程とを有する。
【0039】
(2−1−1)成形工程:
まず、成形工程において、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム成形体を形成する。
【0040】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウム、からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0041】
また、セラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することができる。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0042】
セラミック成形原料を成形する際には、まず、セラミック成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形する。セラミック成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては、例えば、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。具体的には、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0043】
ハニカム成形体の形状としては、円柱状、楕円状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角柱状等を挙げることができる。
【0044】
また、上記成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではない。例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらのなかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥または熱風乾燥を単独でまたは組合せて行うことが好ましい。
【0045】
(2−1−2)焼成工程:
次に、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製する。ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼したハニカム成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜8時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置としては、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0046】
(2−2)端面研磨工程:
端面研磨工程は、ハニカム焼成体の端面を砥石や金網で研磨して切欠きハニカム焼成体を得る工程である。砥石としては、例えば、#120〜#1000の砥石などを採用することができる。砥石による研磨の方法は、隔壁の端部に凹状部が形成されるような方法を適宜採用することができる。例えば、砥石の研磨部を、特にハニカム構造体の隔壁と接触させるようにハニカム構造体の端面を強く研磨することで隔壁の端部に凹状部を形成することができる。このとき、砥石を移動させる方向としては、特に制限はないが、隔壁の厚さ方向(隔壁の壁面に対して90°の方向)に沿う方向とすることが好ましい。具体的には、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状が四角形のセルが形成されたハニカム構造体の場合、対向する隔壁の一方から他方に向かうように、一方向または往復させながら砥石を移動させることが好ましい。四角形のセルが形成されたハニカム構造体は、向かい合う隔壁が2対存在するため、それぞれにおいて、対向する隔壁の一方から他方に向かうように砥石を移動させることが好ましい。
【0047】
(2−3)触媒担持工程:
本工程は、切欠きハニカム焼成体の隔壁の表面に触媒を担持してハニカム構造体を得る工程である。触媒を切欠きハニカム焼成体に担持させる方法は、従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0048】
担持させる触媒としては、SCR触媒などが挙げられる。
【0049】
(2−4)その他の工程:
端面研磨工程を行って得られた切欠きハニカム焼成体の外周に、外周コート材を塗布して外周コート層を形成してもよい。外周コート層を形成することにより、ハニカム構造体に外力が加わった際にハニカム構造体が欠けてしまうことを防止できる。
【0050】
外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したものなどを挙げることができる。外周コート材を塗布する方法は、「切削されたハニカム焼成体」をろくろ上で回転させながらゴムへらなどでコーティングする方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、実施例により更に具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
まず、セラミック原料を含有する成形原料を用いて、ハニカム成形体を成形するための坏土を調製した。セラミック原料として、コージェライト化原料を用いた。コージェライト化原料に、分散媒、有機バインダ、分散剤、造孔材を添加して、成形用の坏土を調製した。分散媒の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、50質量部とした。有機バインダの添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、5量部とした。造孔材の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、5質量部とした。得られたセラミック成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。
【0053】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて押出成形し、ハニカム成形体を得た。
【0054】
次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電にて加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。その後、1400℃で8時間焼成して、円柱状のハニカム焼成体を得た。
【0055】
次に、得られたハニカム焼成体の端面を、♯400の砥石で研磨して、一部の隔壁の端部に凹状部を形成して切欠き隔壁を有する切欠きハニカム焼成体を得た。砥石で研磨する際には、隔壁の壁面に対して90°の方向に沿って砥石を動かした。
【0056】
次に、得られた切欠きハニカム焼成体の隔壁の表面に触媒を担持させて、ハニカム構造体を作製した。触媒種は、銅ゼオライトであり、触媒量は120g/Lであった。
【0057】
得られたハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する断面の直径が330.2mmの円形であった。また、ハニカム構造体は、セルの延びる方向における長さが152.4mmであった。また、ハニカム構造体は、セル密度が62個/cm
2であり、隔壁の厚さが110μmであった。ハニカム構造体の各測定値を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
また、切欠き隔壁の凹状部(
図4参照)は、幅が0.40mmであり、深さDが0.20mmであった。なお、凹状部の幅及び深さは、ハニカム構造体の端面において任意の切欠き隔壁を十字方向に任意に40個選択し、その平均値を算出した値とした。
【0060】
得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「浄化率」、及び「アイソスタティック強度」の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
[浄化率]
まず、ハニカム構造体に、NO
Xを含む試験用ガスを流した。その後、このハニカム構造体から排出されたガスのNO
X量をガス分析計で分析した。
【0062】
ハニカム構造体に流入させる試験用ガスの温度を200℃とした。なお、ハニカム構造体および試験用ガスは、ヒーターにより温度調整した。ヒーターは、赤外線イメージ炉を用いた。試験用ガスは、窒素に、二酸化炭素5体積%、酸素14体積%、一酸化窒素350ppm(体積基準)、アンモニア350ppm(体積基準)および水10体積%を混合させたガスを用いた。この試験用ガスに関しては、水と、その他のガスを混合した混合ガスとを別々に準備しておき、試験を行う時に配管中でこれらを混合させて用いた。ガス分析計は、「HORIBA社製、MEXA9100EGR」を用いた。また、試験用ガスがハニカム構造体に流入するときの空間速度は、100,000(時間
−1)とした。
【0063】
「NO
X浄化率」は、試験用ガスのNO
X量から、ハニカム構造体から排出されたガスのNO
X量を差し引いた値を、試験用ガスのNO
X量で除算し、100倍した値である。浄化性能の評価は、基準ハニカム触媒体のNO
X浄化率に対して、NO
X浄化率が20%以上高まった場合を「A」とした。NO
X浄化率が10%以上20%未満高まった場合を「B」とした。NO
X浄化率が5%以上10%未満高まった場合を「C」とした。NO
X浄化率が0%以上5%未満高まった場合あるいはNO
X浄化率が低下した場合を「D」とした。浄化性能の評価については、A〜Cの場合を合格とし、Dの場合を不合格とした。なお、「基準ハニカム触媒体のNO
X浄化率に対して、NO
X浄化率が20%以上高まった場合」とは、算出されたNO
X浄化率から、基準ハニカム触媒体のNO
X浄化率を差し引いた値が20%以上であることを意味する。即ち、算出されたNO
X浄化率が61%であり、基準ハニカム触媒体のNO
X浄化率が50%である場合、61%から50%を差し引いた値である11%が高まった値となる。そして、この場合の評価は「B」となる。
【0064】
[アイソスタティック強度]
アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。
【0065】
即ち、アイソスタティック破壊強度試験は、缶体に、ハニカム構造体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。このアイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカム触媒体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。
【0066】
アイソスタティック強度が、1.0MPa以上の場合を「OK」(合格)、1.0MPa未満の場合を「NG」(不合格)とした。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
表3,表4において、「凹幅」は、端面において切欠き隔壁に形成された凹状部の延びる方向の長さ(
図4中、符号「W」で示す方向の凹状部の長さ)を示す。「セルピッチ」は、端面において隣り合う交点部の中心間の距離(基準長さ)L(
図4参照)を示す。「凹深さ」は、凹状部の深さ(即ち、凹状部が形成された側の端面から最も遠い位置までの距離)D(
図4参照)を示す。「凹率」は、全隔壁中の切欠き隔壁の割合(%)を示す。
【0071】
(実施例2〜59、比較例1〜11)
表1,表2に示すように条件を変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を得た。得られたハニカム構造体について、「浄化率」、及び「アイソスタティック強度」の各評価を行った。結果を表3,表4に示す。
【0072】
表3,表4から、実施例1〜59のハニカム構造体は、比較例1〜11のハニカム構造体に比べて、NO
Xの浄化性能が向上されている。また、浄化性能向上のため、ハニカム構造体の少なくとも一方の端面に、本発明に規定された範囲の切欠きが存在したとしても、ハニカム構造体のアイソスタティック強度が実用上の下限値である1.0MPaを維持されていることが分かる。