(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外気の条件を定める外気条件パラメータと、容器の条件を定める容器条件パラメータと、前記容器に容れられる内容物の条件を定める内容物条件パラメータとを取得するパラメータ取得部と、
前記容器の内側と外側との間での流れを許容する境界条件のもとで、前記パラメータ取得部が取得したパラメータと、伝熱モデルとを用いて計算を行う計算部と、
前記計算部による計算結果に基づいて前記容器の性能に関する評価結果を出力する評価結果出力部と
を備える容器性能評価装置。
前記内容物条件パラメータは、温度保持のために容器に入れられる温度保持媒体の条件を定める温度保持媒体条件パラメータと、前記容器に前記温度保持媒体とともに容れられて温度保持の対象となる温度保持対象物の条件を定める温度保持媒体条件パラメータとを含む
請求項1または2に記載の容器性能評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における容器性能評価装置100の機能構成例を示している。本実施形態の容器性能評価装置100は、例えば内容物の保温、保冷に利用される発泡スチロールなどにより形成された断熱性の容器の性能を評価する装置である。
【0011】
同図の容器性能評価装置100は、制御部101、記憶部102、入力デバイス部103および出力デバイス部104を備える。
制御部101は、本実施形態の容器性能評価に関する処理を実行する。制御部101は、パラメータ取得部111、計算部112および評価結果出力部113を備える。
パラメータ取得部111は、計算部112が実行する計算に利用するパラメータ(利用パラメータ)を取得する。パラメータ取得部111は、入力デバイス部103に対してユーザが行うパラメータの入力操作に応じてパラメータをパラメータデータベース記憶部121や利用パラメータ記憶部122へ入力することができる。また、パラメータ取得部111は、パラメータデータベース記憶部121が記憶するパラメータデータベースからパラメータを取得することができる。
計算部112は、容器の内側と外側との間での流れを許容する境界条件のもとで、パラメータ取得部111が取得したパラメータと、伝熱モデルとを用いて計算を行う。
評価結果出力部113は、計算部112による計算結果を利用して容器の性能に関する評価結果を出力する。計算部112による計算結果は、記憶部102の計算結果記憶部123に記憶される。
【0012】
記憶部102は、制御部101が利用する情報を記憶する。同図の記憶部102は、パラメータデータベース記憶部121、利用パラメータ記憶部122、および計算結果記憶部123を備える。
パラメータデータベース記憶部121は、パラメータデータベースを記憶する。パラメータデータベースは、プリセットパラメータとユーザプリセットパラメータとをデータベースの形式で記憶する。プリセットパラメータは、演算部がシミュレーションを実行するのに利用するパラメータのうち、既知のパラメータや予め規定値が定められたパラメータである。ユーザセットパラメータは、演算部がシミュレーションを実行するのに利用するパラメータのうち、ユーザによって保存(登録)されたパラメータである。
利用パラメータ記憶部122は、パラメータ取得部111によって取得されたパラメータであって、計算部112がシミュレーションとしての計算を行うにあたって利用するパラメータが記憶される。
計算結果記憶部123は、計算部112が実行したシミュレーションとしての計算結果を記憶する。
【0013】
入力デバイス部103は、ユーザが操作を行う入力デバイスを含む。入力デバイス部103に含まれる入力デバイスとしては、例えばマウス、キーボード、トラックパッド、タッチパネルなどを挙げることができる。
【0014】
出力デバイス部104は、ユーザに情報を出力する出力デバイスを含む。出力デバイス部104に含まれる出力デバイスとしては、例えば画像を表示する表示部や、音を出力する音声出力部などを挙げることができる。
【0015】
本実施形態の容器性能評価装置100は、容器性能評価機能に対応する容器性能評価アプリケーションがインストールされたパーソナルコンピュータである場合を例に挙げる。同図の制御部101の機能は、容器性能評価装置100が備えるCPU(Central Processing Unit)が容器性能評価アプリケーションのプログラムを実行することによって実現される。なお、容器性能評価装置100は、例えば専用の装置として構成されてもよい。
【0016】
図2〜
図13を参照して、本実施形態の容器性能評価装置100の使用例について説明する。
ユーザが容器性能評価を行おうとする場合、ユーザは、入力デバイス部103に対する操作によって容器性能評価アプリケーションを起動させる。容器性能評価アプリケーションが起動されたことに応じて、出力デバイス部104の表示部には、例えば
図2に示される起動画面が表示される。
同図の起動画面においては、容器性能評価のモードとして、「簡易モード」と「詳細モード」とのうちのいずれかを選択するボタンが配置されている。「詳細モード」は、複数の容器を対象として容器性能のシミュレーションを行うモードであり、「簡易モード」は、単一の容器を対象として容器性能のシミュレーションを行うように簡易化されたモードである。
【0017】
また、同図の起動画面においては「マスター」ボタンと、「開始」ボタンとが配置されている。
「マスター」ボタンに対する操作が行われると、これまでに実行されたシミュレーションについての一覧を示すシミュレーション履歴一覧画面の表示に移行する。シミュレーション履歴一覧画面に対する操作によって、過去に実行されたシミュレーションについて、例えば一部のパラメータを変更のうえで再計算を行わせたり、今回のシミュレーションに使用する条件(パラメータ)を引用したりすることができる。
一方、「マスター」ボタンに対する操作が行われることなく「開始」ボタンが操作された場合には、今回のシミュレーションに使用するパラメータを入力するパラメータ入力画面に遷移する。このように、「開始」ボタンの操作に応じてパラメータ入力画面に遷移した場合、過去のシミュレーションの実行結果からパラメータを引用することなく、全ての操作入力パラメータをユーザが入力することになる。
【0018】
図3は、パラメータ入力画面として、容器数としてのパラメータを入力する操作が行われる容器数入力画面の一例を示している。容器数入力画面は、
図2の起動画面において「詳細モード」が選択された場合に表示される。
ユーザは、容器数を入力する入力ボックスに対してシミュレーションの対象となる容器の数に対応する数値を入力する操作を行ったうえで、「決定」ボタンに対する操作を行う。このような操作により、容器数としてのパラメータが入力される。
【0019】
図4は、「簡易モード」と「詳細モード」とで共通となるパラメータを入力する操作が行われるパラメータ入力画面の一例を示している。
同図のパラメータ入力画面においては、「外気」タブ、「容器」タブ、「食材」タブ、「冷媒」タブおよび「計算」タブの5つのタブが配置されている。
【0020】
「外気」タブは、外気条件パラメータ入力画面に対応するタブである。外気条件パラメータ入力画面は、外気条件パラメータを入力する操作が行われる画面である。外気条件パラメータは、外気に関する条件を定めるパラメータである。「外気」タブに対する操作が行われると、パラメータ入力画面として、外気条件パラメータ入力画面が表示される。
「容器」タブは、容器条件パラメータ入力画面に対応するタブである。容器条件パラメータ入力画面は、容器条件パラメータを入力する操作が行われる画面である。容器条件パラメータは、1つの容器に関する条件を定めるパラメータである。「容器」タブに対する操作が行われると、パラメータ入力画面として、容器条件パラメータ入力画面が表示される。
「食材」タブは、食材条件パラメータ入力画面に対応するタブである。食材条件パラメータ入力画面は、食材条件パラメータを入力する操作が行われる画面である。食材条件パラメータは、容器に容れられる内容物として保冷対象(温度保持対象)となる食材(温度保持対象物の一例)に関する条件を定めるパラメータである。なお、本実施形態においては食材を保冷対象としているが、保冷対象となる内容物は、食材以外であってもよい。「食材」タブに対する操作が行われると、パラメータ入力画面として、食材条件パラメータ入力画面が表示される。
「冷媒」タブは、冷媒条件パラメータ入力画面に対応するタブである。冷媒条件パラメータ入力画面は、冷媒条件パラメータを入力する操作が行われる画面である。冷媒条件パラメータは、容器に容れられる内容物として、保冷対象を保冷する(温度保持対象の温度変化を抑制する)作用を有する物質である冷媒(温度保持媒体の一例)に関する条件を定めるパラメータである。なお、冷媒としては、例えば固体二酸化炭素、氷、保冷剤をはじめさらには各種の寒剤などを挙げることができる。「冷媒」タブに対する操作が行われると、パラメータ入力画面として、冷媒条件パラメータ入力画面が表示される。
「計算」タブは、計算条件パラメータ入力画面に対応するタブである。計算条件パラメータ入力画面は、計算条件パラメータを入力する操作が行われる画面である。計算条件パラメータは、シミュレーションにあたっての計算条件を規定するパラメータである。「計算」タブに対する操作が行われると、パラメータ入力画面として、計算条件パラメータ入力画面が表示される。
【0021】
同図のパラメータ入力画面は、「外気」タブが操作されたことに応じて、外気条件パラメータ入力画面が表示された状態を示している。
外気条件パラメータ入力画面における左側には、時間経過に応じた外気温を入力する時間対応外気温入力エリアAR1が配置されている。また、外気条件パラメータ入力画面における右側には、空気の温度伝導率などの項目をはじめとする空気特性に関するパラメータを入力する項目が配置された空気特性入力エリアAR2が配置されている。ユーザは、これらのエリアに対して、パラメータとしての値を入力する操作を行う。なお、空気特性入力エリアAR2にて入力項目が設けられるパラメータの全てまたは一部について、パラメータデータベース記憶部121に記憶されているプリセットパラメータまたはユーザプリセットパラメータを呼び出して入力することもできる。
【0022】
図5は、パラメータ入力画面において「容器」タブが操作されたことに応じて、容器条件パラメータ入力画面が表示された状態を示している。
容器条件パラメータ入力画面は、「詳細モード」が設定されている場合には、容器数入力画面(
図3)に対する操作により入力された容器数に応じた数のページが用意される。同図においては、「容器No.」に対応して「1」と番号が表示されており、1つ目の容器についての容器条件パラメータ入力画面であることが示されている。設定された容器数が複数である場合、例えば「容器No.」に対応する番号に対する操作によって、他の2つ目以降の容器の容器条件パラメータ入力画面の表示に切り替えることができる。
同図の容器条件パラメータ入力画面においては、容器の「分類」の選択(分類を検索可能)を行うことができる。また、容器条件パラメータ入力画面に入力したパラメータのセットを、「容器名」を入力のうえで「登録」ボタンを操作することで、容器についてのプリセットのパラメータとしてパラメータデータベース記憶部121に記憶させておくことができる。
また、同図の容器条件パラメータ入力画面においては、内容物として食材と冷媒の各数の入力が行われる。
また、容器条件パラメータ入力画面においては、容器特性パラメータ入力エリアAR11が配置されている。容器特性パラメータ入力エリアAR11は、容器の寸法(「横(X軸)」、「高さ(Z軸)」)を二次元で規定する項目などをはじめとする容器特性パラメータの入力が行われるエリアである。
また、容器条件パラメータ入力画面においては、容器開放設定エリアAR12が配置されている。容器開放設定エリアAR12は、容器の壁面(側壁、天面、底面)において開放(即ち、開口の形成)を設定するか否か、また、開放を設定する場合には、容器における開放の位置、サイズを指定する操作が行われるエリアである。なお、容器開放設定エリアAR12に対する操作は、「詳細モード」が設定された場合において有効であり、「簡易モード」では行えないようにされている。「簡易モード」での容器条件パラメータ入力画面においては、容器開放設定エリアAR12は、表示されない、あるいは表示されていても例えばグレーアウトなどの表示によって操作が不可である。
なお、容器特性パラメータ入力エリアAR11と容器開放設定エリアAR12にて入力項目が設けられるパラメータの全てまたは一部について、パラメータデータベース記憶部121に記憶されているプリセットパラメータまたはユーザプリセットパラメータを呼び出して入力することもできる。
【0023】
図6は、パラメータ入力画面において「食材」タブが操作されたことに応じて、食材条件パラメータ入力画面が表示された状態を示している。
食材条件パラメータ入力画面は、1つの容器に対応して、容器条件パラメータ入力画面にて入力された食材数(
図5)に応じた数のページが用意される。同図においては、「食材No.」が示されている。本実施形態においては、シミュレーション対象として1以上の容器が設定され、さらに各容器に容れられる食材が設定される。「食材No.」は、このように設定される全ての食材に付される通し番号を示す。同図では、「食材No.」に対応して「1」との番号が表示されていることで、全ての食材における1つ目の食材についての食材条件パラメータ入力画面であることが示されている。例えば「食材No.」に対応する番号に対する操作によって、他の2つ目以降の食材の食材条件パラメータ入力画面の表示に切り替えることができる。また、「容器」に対応して「容器A」と表示されており、容器Aに容れられる食材であることが示されている。
同図の食材条件パラメータ入力画面においては、容器の「食材」の選択(分類を検索可能)を行うことができる。また、食材条件パラメータ入力画面に入力したパラメータのセットを、「食材名」を入力のうえで「登録」ボタンを操作することで、食材についてのプリセットのパラメータとしてパラメータデータベース記憶部121に記憶させておくことができる。
また、食材条件パラメータ入力画面においては、食材特性パラメータ入力エリアAR21が配置されている。食材特性パラメータ入力エリアAR21は、食材の初期温度、温度伝導率、熱伝導率、比熱、密度等の食材特性を入力する操作が行われるエリアである。
また、食材条件パラメータ入力画面においては、食材の形状をパラメータとして規定する操作が行われる食材形状パラメータ入力エリアAR22が配置されている。
なお、食材特性パラメータ入力エリアAR21にて入力項目が設けられるパラメータの全てまたは一部について、パラメータデータベース記憶部121に記憶されているプリセットパラメータまたはユーザプリセットパラメータを呼び出して入力することもできる。この点については、食材形状パラメータ入力エリアAR22に関しても同様である。
また、食材条件パラメータ入力画面においては、容器における食材の設置位置を指定する操作が行われる入力ボックスが配置されている。ここでは、パラメータとして横方向と高さ方向とによる二次元領域における食材の位置を規定するようにされている。
食材の設置位置が入力されたうえで、食材条件パラメータ入力画面に配置される「配置図確認」ボタンに対する操作が行われると、入力された設置位置が反映されるようにして、容器において食材が設置された状態の画像が表示される。ユーザは、表示された画像を見ることで、容器における食材の設置位置が想定通りであるか確認できる。
【0024】
図7は、パラメータ入力画面において「冷媒」タブが操作されたことに応じて、冷媒条件パラメータ入力画面が表示された状態を示している。
冷媒条件パラメータ入力画面は、1つの容器に対応して、容器条件パラメータ入力画面にて入力された冷媒数(
図5)に応じた数のページが用意される。同図においては、「冷媒No.」が示されている。本実施形態においては、シミュレーション対象として1以上の容器が設定され、さらに各容器に容れられる冷媒が設定される。「冷媒No.」は、このように設定される全ての冷媒に付される通し番号を示す。同図では、「冷媒No.」に対応して「1」との番号が表示されていることで、全ての食材における1つ目の冷媒についての冷媒条件パラメータ入力画面であることが示されている。例えば「冷媒No.」に対応する番号に対する操作によって、他の2つ目以降の冷媒の冷媒条件パラメータ入力画面の表示に切り替えることができる。また、「容器」に対応して「容器A」と表示されており、容器Aに容れられる冷媒であることが示されている。
同図の冷媒条件パラメータ入力画面においては、容器の「冷媒」の選択(分類を検索可能)を行うことができる。また、冷媒条件パラメータ入力画面に入力したパラメータのセットを、「冷媒名」を入力のうえで「登録」ボタンを操作することで、冷媒についてのプリセットのパラメータとしてパラメータデータベース記憶部121に記憶させておくことができる。
また、冷媒条件パラメータ入力画面においては、冷媒特性パラメータ入力エリアAR31が配置されている。冷媒特性パラメータ入力エリアAR31は、冷媒の初期温度、重量、温度伝導率、熱伝導率、比熱、密度、融解潜熱、融解温度等の冷媒特性を入力する操作が行われるエリアである。
また、冷媒条件パラメータ入力画面においては、冷媒の形状をパラメータとして規定する操作が行われる冷媒形状パラメータ入力エリアAR32が配置されている。
なお、冷媒特性パラメータ入力エリアAR31にて入力項目が設けられるパラメータの全てまたは一部について、パラメータデータベース記憶部121に記憶されているプリセットパラメータまたはユーザプリセットパラメータを呼び出して入力することもできる。この点については、冷媒形状パラメータ入力エリアAR32に関しても同様である。
また、冷媒条件パラメータ入力画面においては、容器における冷媒の設置位置をパラメータとして横方向と高さ方向との二次元で規定する操作が行われる入力ボックスが配置されている。冷媒の設置位置を入力のうえで、冷媒条件パラメータ入力画面に配置される「配置図確認」ボタンに対する操作が行われると、入力された設置位置が反映されるようにして、容器において冷媒が設置された状態の画像が表示される。ユーザは、表示された画像を見ることで、容器における冷媒の設置位置が想定通りであるか確認できる。
【0025】
図8は、パラメータ入力画面において「計算」タブが操作されたことに応じて、計算条件パラメータ入力画面が表示された状態を示している。
計算条件パラメータ入力画面においては、今回のシミュレーションについての名称を「解析名」として入力する操作を行うことができる。
また、計算条件パラメータ入力画面においては、計算条件として、時間ステップ幅(計算ステップ)、計算回数、計算実時間、温度分布出力の頻度を入力する操作を行うことができる。
また、計算条件パラメータ入力画面においては、「自然対流の扱い」(自然対流伝熱モデル)について「考慮しない」、「対流熱伝導率を使用」、「流れ場を解く」のいずれかのうちから選択することができる。
【0026】
また、計算条件パラメータ入力画面においては、「データ保存」ボタン、「配置図表示」ボタン、「メッシュ分割」ボタン、「解析実行」ボタンが配置されている。
「データ保存」ボタンが操作された場合、これまでのパラメータ入力画面に対する操作によって入力されたパラメータのセットが、入力された「解析名」と対応付けられて保存される。
「配置図表示」ボタンが操作された場合、これまでの容器と内容物の数、設置位置などの設定に応じた配置図が表示される。
「メッシュ分割」ボタンが操作された場合には、シミュレーション対象の領域についてのメッシュ分割の設定をユーザの操作に応じて変更するメッシュ設定画面が表示される。
「解析実行」ボタンが操作された場合、これまでのパラメータ入力画面に対する操作によって入力されたパラメータを利用した容器評価としてのシミュレーション(計算)が実行される。
【0027】
シミュレーションが終了すると、出力データ選択画面が表示される。出力データ選択画面はシミュレーションによる評価結果(出力データ)としていずれを出力するのかをユーザが選択する操作が行われる画面である。
図9は、出力データ選択画面の一例を示している。同図の出力データ選択画面においては、「食材温度グラフ」ボタン、「温度変化グラフ」ボタン、「冷媒残量グラフ」ボタンおよび「温度分布経時変化」ボタンおよび「終了」ボタンが配置されている。
ユーザにより「食材温度グラフ」ボタンが操作された場合、食材温度グラフが表示される。
図10は、表示される食材温度グラフの一例を示している。同図の食材温度グラフは、「アイス」との名称が設定された食材についての時間経過に応じた温度の変化をグラフにより示している。
また、ユーザにより「温度変化グラフ」ボタンが操作された場合、温度変化グラフが表示される。
図11は、表示される温度変化グラフの一例を示している。同図の温度変化グラフは、外気温とともに、容器に容れられた「蓄冷材A」との名称が設定された冷媒についての時間経過に応じた温度の変化をグラフにより示している。
また、ユーザにより「冷媒残量グラフ」ボタンが操作された場合、冷媒残量グラフが表示される。
図12は、冷媒残量グラフの一例を示している。同図の冷媒残量グラフは、容器に容れられた「蓄冷材A」との名称が設定された冷媒についての、時間経過に応じた冷媒の残量の変化をグラフにより示している。同図の冷媒残量グラフの場合、冷媒の残量については、冷媒の質量として表されている。
また、「温度分布経時変化」ボタンが操作された場合、容器と容器内部における温度分布の時間経過に応じた変化を表す温度分布経時変化画像が表示される。
図13は、温度分布経時変化画像の一例を示している。同図の温度分布経時変化画像は、計算の対象となったシミュレーション時間における或る一時刻の温度分布が示されている。実際の表示においては、時間経過に応じて温度分布が変化する動画、あるいはタイムラプス画像として表示される。
【0028】
続いて、本実施形態の容器性能評価装置100が容器性能の評価(シミュレーション)のために行う計算について説明する。
まず、本実施形態における境界条件の設定について説明する。容器性能のシミュレーションにあたって境界条件を設定するにあたっての1つの手法は、容器に対応する全方位の境界で流体の流れが無いとする閉鎖系とすることである。
【0029】
図14は、上記のような閉鎖系の境界条件を表している。同図においては、容器200Aが直方体である例を示している。同図においては、容器200Aに対応して縦方向と横方向とにおける二次元の空間が表されている。
同図において、xは横方向における座標、yは縦方向における座標、uは横方向における流速を示し、vは縦方向における流速を示す。また、ψは流れ関数を示し、Tは温度を示す。
このように、閉鎖系の境界条件のもとでは、容器200Aの側面、上面、下面の全方位において、流れ関数ψについては「0」(ψ=0)で、温度Tについては一定(T=const.)として定められる。
【0030】
上記のような閉鎖系の境界条件では、例えば蓋などが為されて密閉された状態の容器については、境界条件の設定と実際の状態とが近似しているので適切なシミュレーション結果を期待できる。しかしながら、例えば蓋が為されていないために容器の面の一部が開放されている容器、あるいはトレーなどのように蓋がないような形状の容器が存在する。このような容器については、上記のような閉鎖系では、適切なシミュレーション結果を得ることが難しい。
【0031】
そこで、本実施形態においては、容器に対応する空間と外界との境界における流体の流れを許容し、容器を含む外界までを系とする開放系の境界条件を設定する。
図15は、上記のような開放系の境界状態を表している。本実施形態における開放系の境界条件は、蓋の無い状態の開口を有する容器と、密閉された容器とのいずれにも対応してシミュレーションが可能であることから、同図においては、密閉された容器200Aと、上面に開口を有する容器200Bとを示している。なお、以下の説明において容器200Aと容器200Bとで特に区別しない場合には、容器200と記載する。
【0032】
本実施形態では、容器200に対応する二次元空間において、左右の各側面に対応する境界について外界との間の流体の流れを許容するように境界条件を設定する。本実施形態においては、このような境界条件の設定にあたり、流れ関数ψにNeumann条件を設定するようにした。この場合、流れ関数ψと温度Tについて、以下の式1の関係を有するように定められる。
【0034】
また、本実施形態では、容器200に対応する二次元空間において、上面に対応する境界について外界との間の流体の流れを許容する境界条件となるように流れ関数ψにNeumann条件を設定する。この場合、流れ関数ψと温度Tについて、以下の式2の関係を有するように定められる。
【0036】
本実施形態おいて、さらに下面についても流体の流れを許容する境界条件となるように流れ関数ψにNeumann条件を設定し、全方位について流体の流れを許容した境界条件とすることも可能である。しかしながら、この場合、伝熱モデルの偏微分方程式について数値解が安定して収束しない場合がある。そこで、本実施形態においては、下面に対応する境界条件については、
図14の場合と同様に流体の流れが無いとする条件(即ち、この場合には地面を想定)としている。これにより、本実施形態においては計算の安定性が得られるようにしている。
なお、流体の流れが無いとする境界条件を定める方位は、上記の下面に対応する方位以外であってもよい。さらには、流体の流れが無いとする境界条件を定める方位は2以上であってもよい。即ち、容器に対応する全方位のうちの一部の方位について、流体の流れが無いとする境界条件が定められてもよい。
【0037】
パラメータ入力画面に対する操作によって入力されたパラメータは、パラメータ取得部111によって、利用パラメータ記憶部122に記憶される。計算部112は、利用パラメータ記憶部122に記憶されたパラメータ(利用パラメータ)を利用して計算を実行する。
図16を参照して、計算部112が行う計算について説明する。
同図には、計算部112とともに、利用パラメータ記憶部122が示されている。同図に示されるように、利用パラメータ記憶部122は、計算部112が計算に利用するパラメータ(利用パラメータ)として、外気条件パラメータIN1、容器条件パラメータIN2、食材条件パラメータIN3、冷媒条件パラメータIN4、および計算条件パラメータIN5を記憶する。
【0038】
外気条件パラメータIN1は、外気条件パラメータ入力画面(
図4)に対する操作によって入力され、利用パラメータ記憶部122に記憶されたパラメータである。
図17に、外気条件パラメータIN1に含まれるパラメータの例を示す。同図に示されるパラメータのうち、空気のプラントル数Pr
airについては以下の(式3)により表される。(式3)において、μ
airは空気の粘度である。
【0040】
容器条件パラメータIN2は、容器条件パラメータ入力画面(
図5)に対する操作によって入力され、利用パラメータ記憶部122に記憶されたパラメータである。
図18に、容器条件パラメータIN2に含まれるパラメータの例を示す。
食材条件パラメータIN3は、食材条件パラメータ入力画面(
図6)に対する操作によって入力され、利用パラメータ記憶部122に記憶されたパラメータである。
図19に、食材条件パラメータIN3に含まれるパラメータの例を示す。
冷媒条件パラメータIN4は、冷媒条件パラメータ入力画面(
図7)に対する操作によって入力され、利用パラメータ記憶部122に記憶されたパラメータである。
図20に、冷媒条件パラメータIN4に含まれるパラメータの例を示す。
計算条件パラメータIN5は、計算条件パラメータ入力画面(
図8)に対する操作によって入力され、利用パラメータ記憶部122に記憶されたパラメータである。
図21に、計算条件パラメータIN5に含まれるパラメータの例を示す。
【0041】
図16においては、計算部112が計算にあたって使用するモデルが示されている。同図に示されるように、計算部112は、伝導伝熱モデルMD1、自然対流伝熱モデルMD2、および冷媒モデルMD3を使用する。つまり、本実施形態の計算部112は、計算にあたって、伝導伝熱モデルMD1と自然対流伝熱モデルMD2との2つの伝熱モデルを使用することで、熱移動(流れ分布を含む)を計算する。また、計算部112は、熱移動の計算結果から温度分布についても計算する。そのうえで、計算部112は、さらに冷媒モデルを使用することで、冷媒の変化に関する計算も行う。
計算部112は、伝導伝熱モデルMD1を用いた計算にあたり、外気条件パラメータIN1、容器条件パラメータIN2、食材条件パラメータIN3および冷媒条件パラメータIN4における所定のパラメータを式に代入するようにして使用する。
また、計算部112は、自然対流伝熱モデルMD2を用いた計算にあたり、外気条件パラメータIN1における所定のパラメータを使用する。
また、計算部112は、冷媒モデルMD3を用いた計算にあたり、冷媒条件パラメータIN4を使用する。
計算条件パラメータIN5については、伝導伝熱モデルMD1、自然対流伝熱モデルMD2および冷媒モデルMD3のそれぞれを用いた計算にあたり、適宜所定のパラメータが使用される。
計算部112は、伝導伝熱モデルMD1、自然対流伝熱モデルMD2および冷媒モデルMD3を用いた各計算を、シミュレーション対象の領域に設定されたメッシュごとに行う。メッシュに関しては、ユーザが設定できる。前述のように、
図8の計算条件パラメータ入力画面にはメッシュ分割ボタンが配置される。ユーザがメッシュ分割ボタンに対して操作を行うと、メッシュ設定画面が表示される。ユーザは、表示されたメッシュ設定画面に対する操作によってシミュレーション対象の領域におけるメッシュのサイズなどを変更し、メッシュ分割についての設定を行うことができる。
【0042】
本実施形態の伝導伝熱モデルMD1は、二次元による非定常状態でのシミュレーションに対応し、以下の式4による基礎式を用いて熱伝導を表現する。式4において、c
pは比熱[J/(kg・K)]、ρは密度[kg/m
3]、Tは絶対温度[K]、tは時間[s]、u、vは、それぞれ、流れ関数ψのx(横)、y(縦)の成分(流速)[m/s]、κは熱伝導率[W/(m・K)]、qは発熱項[W/m
3]である。
【0044】
また、流れ関数ψは、以下の式5のように定義される。
【0046】
また、本実施形態の自然対流伝熱モデルMD2は、1つには、以下の渦移動方程式としての式6により自然対流による熱伝導を表現する。式6において、ζは、以下の式7によって流れ関数ψから計算される渦度[s
−1]である。また、gは、重力加速度[m/s2]、βは体膨張係数[K
−1]、θは系の水平面からの傾き角[rad]である。
【0049】
また、本実施形態の自然対流伝熱モデルMD2は、もう1つには、以下の式8によって自然対流による熱伝導を、伝導伝熱モデルMD1で扱えるように自然対流による熱伝導率として表現する。式8において、h
mは自然対流伝熱の熱伝導率[W/(m・K)]、λは空気の熱伝導率[W/(m・K)]、Prはプラントル数[−]、νは空気の動粘度係数[m
2/s]、T
w、T
∞は壁および壁から遠方の流体の温度[K]、xは密閉空間の下から着目点までの距離[m]である。
【0051】
上記のように、本実施形態においては、自然対流伝熱モデルMD2として、式6による差分式を使用するモデルと、式8を使用するモデルとが用意される。
本実施形態の計算部112は、伝導伝熱モデルMD1と自然対流伝熱モデルMD2とを用いて伝熱についての計算(シミュレーション)を行う。この際、計算部112は、以下のように、計算条件パラメータ入力画面(
図8)に対する操作によって選択された「自然対流の扱い」の項目に応じて、自然対流伝熱モデルMD2として使用する式を変更する。
【0052】
即ち、計算条件パラメータ入力画面に対する操作によって、「自然対流の扱い」について「流れ場を解く」の項目が選択された場合、計算部112は、自然対流伝熱モデルMD2として、式6による差分式を使用する。つまり、この場合の計算部112は、伝導伝熱モデルMD1として式4による差分式を使用し、自然対流伝熱モデルMD2として式6による差分式を使用して伝熱について計算する。
また、計算条件パラメータ入力画面に対する操作によって、「自然対流の扱い」について「対流熱伝導率を使用」の項目が選択された場合、計算部112は、自然対流伝熱モデルMD2として、式8を使用する。つまり、この場合の計算部112は、伝導伝熱モデルMD1として式4による差分式を使用し、自然対流伝熱モデルMD2として式8を使用して伝熱について計算する。
また、計算条件パラメータ入力画面に対する操作によって、「自然対流の扱い」について「考慮しない」の項目が選択された場合には、計算部112は、自然対流伝熱モデルMD2として式6による差分式と式8とのいずれも使用しない。即ち、この場合の計算部112は、伝導伝熱モデルMD1としての式4による差分式を使用するが、自然対流伝熱モデルMD2は使用せずに伝熱について計算を行う。
【0053】
ユーザは、以下のように「自然対流の扱い」の項目を選択すればよい。まず、自然対流伝熱モデルMD2として式6による差分式を使用することによっては、現象を最も実際に即して表現するシミュレーションを行うことができる。そこで、ユーザは、シミュレーションの精度を重視したい場合に、「流れ場を解く」の項目を選択すればよい。
しかしながら、自然対流伝熱モデルMD2として式6による差分式を使用する計算は、式8を使用する場合と比較して、偏微分方程式を解く処理が増加することから計算負荷が重い。この場合、例えば容器性能評価装置100がさほど計算処理速度の速くないようなコンピュータであるような状況では、計算に要する時間が長くなる場合がある。そこで、ユーザは、或る一定水準のシミュレーション精度を確保しながらも、計算負荷を軽くして例えば計算時間の短縮などを図りたいような場合に、「対流熱伝導率を使用」の項目を選択すればよい。
また、「自然対流の扱い」として「考慮しない」の項目が選択された場合の計算では、前述のように、伝導伝熱モデルMD1を使用するが、自然対流伝熱モデルMD2は使用されないことから、「対流熱伝導率を使用」からさらに計算負荷が軽減する。そこで、ユーザは、計算負荷の軽減を最優先させたい場合に、「考慮しない」の項目を選択すればよい。
【0054】
次に、本実施形態における冷媒モデルMD3は、冷媒の相変化に関して以下のような仮定1〜3を定める。
仮定1:冷媒が固体二酸化炭素である場合、固体二酸化炭素が昇華することにより発生する二酸化炭素の気体により気体体積が増大するが、密閉容器を検討する場合は、実際の容器と同様に容器に生じる隙間から気体が抜け出て体積は変化しないものとする。ただし、その際に移動する熱量は微小であるとして無視する。
仮定2:氷のように固体から液体へと変化する相変化が生じる冷媒においては、その体積変化については小さいとものとして無視する。
仮定3:系内の質量流れについては考慮しない。そのため、冷媒や内容物が状態変化した場合でも初期位置を移動することはない。即ち、具体的には、固体二酸化炭素や氷が気体や液体に変化しても初期位置に留まり続ける。
【0055】
上記の仮定1〜3のもとで、本実施形態の冷媒モデルMD3としては、以下のように冷媒の状態変化と熱移動を表現した式9を用いる。式9において、Lは冷媒の潜熱[J/kg]、m
x,m
yは、それぞれ、冷媒界面での冷媒の融解速度と昇華速度、n
x,n
yは冷媒界面に垂直な単位ベクトル[−]、λ
s,λ
gは、それぞれ固相、気相の熱伝導率[W/(m・K)]、T
s,T
gは、それぞれ、冷媒界面近傍の固相温度と気相温度[K]である。式9により、冷媒の温度への影響と冷媒の消失が表現される。
【0057】
次に、
図22のフローチャートを参照して、本実施形態における容器性能評価装置100が実行する処理手順例について説明する。
ステップS101:前述のように容器性能評価アプリケーションが起動されると、出力デバイス部104にて起動画面(
図2)が表示される。起動画面においては「簡易モード」と「詳細モード」とのいずれかを選択する操作が可能とされている。そこで、ユーザは、起動画面に対して「簡易モード」と「詳細モード」とのいずれかを選択する操作を行う。パラメータ取得部111は、操作に応じて、ユーザにより選択されたモードが「簡易モード」と「詳細モード」とのいずれであるのかを示すモードパラメータを、利用パラメータ記憶部122に記憶させる。
ステップS102:パラメータ取得部111は、モードパラメータが示すモードが「簡易モード」と「詳細モード」とのいずれであるのかについて判定する。
【0058】
ステップS103:ステップS102により判定されたモードが「簡易モード」である場合、前述のように、1つの容器を対象とし、容器開放設定が無効とした簡易なパラメータ入力が行われる。パラメータ取得部111は、このような「簡易モード」の設定のもとでパラメータ入力画面(
図4〜
図8)に対する操作によって入力されたパラメータを取得し、取得したパラメータを利用パラメータ記憶部122に記憶させる。
ステップS104:パラメータ取得部111は、例えば計算条件パラメータ入力画面(
図8)の「解析実行」ボタンが操作されると、これまでのパラメータの入力についてエラーがないか否かについて判定する。例えば、未だ入力されていないパラメータがあったり、範囲外の数値が入力されていたりするなどのパラメータ入力に関するエラーがある場合、パラメータ取得部111は、ステップS103に処理を戻す。この際、パラメータ取得部111は、シミュレーションを開始することなく、エラーメッセージを表示させるなどして、パラメータの正しい入力を促す。一方、パラメータの入力についてエラーがなければ、後述のステップS112に処理が移行される。
【0059】
ステップS105:ステップS102により判定されたモードが「詳細モード」である場合、前述のように、シミュレーション対象の容器数を入力する操作が行われる容器数入力画面(
図3)が表示される。パラメータ取得部111は、容器数入力画面に対して容器数を入力する操作が行われたことに応じて、入力された容器数Nを示す容器数パラメータを取得し、取得した容器数パラメータを利用パラメータ記憶部122に記憶させる。
ステップS106:ここで、容器数は1以上の整数が入力されることが必要である。容器数入力画面における「決定」ボタンが操作された際、入力された容器数Nが1以上でない場合には、パラメータ取得部111は、ステップS105に処理を戻す。この際、パラメータ取得部111は、例えば正しい容器数が入力されていないことを示すエラーメッセージを表示し、ステップS105に対応する容器数の入力操作を再度ユーザに促す。容器数が正しく入力されていれば、パラメータ取得部111は、前述のように、入力された容器数Nを示す容器数パラメータを利用パラメータ記憶部122に記憶させる。
【0060】
ステップS107:容器数の入力が完了すると、前述のように、ユーザは、パラメータ入力画面(
図4〜
図8)に対する操作によって、外気条件、容器条件、食材条件、冷媒条件および計算条件の各パラメータの入力を行う。パラメータ取得部111は、操作によって入力されたパラメータを取得し、取得したパラメータを利用パラメータ記憶部122に記憶させていく。
ステップS108〜S110:また、ステップS107のもとでの容器条件パラメータの入力にあたっては、容器条件入力ループ処理(ステップS108〜S110)が行われる。つまり、ユーザは、入力された容器数Nに対応するN個の容器ごとについての容器条件パラメータを入力する操作を行う。パラメータ取得部111は、1つの容器についての容器条件パラメータを入力する操作に応じて、入力された容器条件パラメータを取得し、利用パラメータ記憶部122に記憶させる(S109)。
【0061】
ステップS111:パラメータ取得部111は、例えば計算条件パラメータ入力画面(
図8)の「解析実行」ボタンが操作されたことに応じて、これまでのパラメータの入力についてエラーがないか否かについて判定する。パラメータ入力に関するエラーがある場合、パラメータ取得部111は、ステップS107に処理を戻す。この際、パラメータ取得部111は、シミュレーションを開始することなく、エラーメッセージを表示させるなどして、パラメータの正しい入力を促す。一方、パラメータの入力についてエラーがなければ、後述のステップS112に処理が移行される。
【0062】
ステップS112〜S115:計算部112は、計算条件パラメータIN5として入力された時間ステップ幅(計算ステップ)と計算回数に従って、計算ループ処理(ステップS112〜S115)を実行する。
具体的に、計算部112は、計算ステップごとに、例えば伝導伝熱モデルMD1、自然対流伝熱モデルMD2および冷媒モデルMD3としての各式を利用して、熱移動の計算(S113)を行う。また、熱移動の計算結果を利用して温度分布の計算(S114)を実行する。
熱移動の計算と温度分布の計算の各処理において、計算部112は、利用パラメータ記憶部122が記憶する外気条件パラメータIN1、容器条件パラメータIN2、食材条件パラメータIN3、冷媒条件パラメータIN4、および計算条件パラメータIN5のうちから、パラメータを適宜使用して計算を行う。
計算部112は、時間対応ループ処理におけるステップS113およびステップS114により得られた熱移動と温度分布との各計算結果を、計算結果記憶部123に記憶させる。
【0063】
ステップS116:ステップS112〜S115による計算ループ処理が終了すると、評価結果出力部113は、出力データ選択画面(
図9)を表示させる。ユーザは、出力データ選択画面に対して、容器性能評価の出力データとして、「食材温度グラフ」、「温度変化グラフ」、「冷媒残量グラフ」、「温度分布経時変化」のいずれかを選択する操作を行う。評価結果出力部113は、このような出力データを選択する操作を受け付ける。
【0064】
ステップS117:評価結果出力部113は、出力データ選択画面に対して行われた操作により選択された出力データが、「食材温度グラフ」、「温度変化グラフ」、「冷媒残量グラフ」、「温度分布経時変化」のいずれであるのかについて判定する。
ステップS118:選択された出力データが「食材温度グラフ」であった場合、評価結果出力部113は、計算結果記憶部123に記憶された計算結果を利用して食材温度グラフ(
図10)を生成し、出力デバイス部104の表示部に出力(表示)する。
ステップS119:選択された出力データが「温度変化グラフ」であった場合、評価結果出力部113は、計算結果記憶部123に記憶された計算結果を利用して温度変化グラフ(
図11)を生成し、出力デバイス部104の表示部に出力(表示)する。
ステップS120:選択された出力データが「冷媒残量グラフ」であった場合、評価結果出力部113は、計算結果記憶部123に記憶された計算結果を利用して冷媒残量グラフ(
図12)を生成し、出力デバイス部104の表示部に出力(表示)する。
ステップS121:選択された出力データが「温度分布経時変化」であった場合、評価結果出力部113は、計算結果記憶部123に記憶された計算結果を利用して温度分布経時変化画像(
図13)を生成し、出力デバイス部104の表示部に出力(表示)する。
【0065】
ステップS122:評価結果出力部113は、出力データ選択画面における「終了」ボタンが操作されたか否かについて判定する。「終了」ボタンに対する操作の行われないことが判定された場合、評価結果出力部113は、ステップS117に処理を戻す。この場合、ユーザは、食材温度グラフ、温度変化グラフ、冷媒残量グラフ、温度分布経時変化のいずれかが表示されている状態から、例えば出力データ選択画面に表示を戻し、また任意の出力データを選択するように操作を行うことができる。
そして、「終了」ボタンに対する操作が行われると、容器性能評価アプリケーションが終了される。
なお、容器性能評価アプリケーションに際しては、例えば今回の計算に利用したパラメータを、パラメータデータベース記憶部121に記憶(保存)させるようにしてよい。また計算に利用したパラメータだけではなく、計算結果や出力データなども保存させるようにしてよい。
【0066】
なお、同図の例では、「簡易モード」と「詳細モード」とが設定可能とされているが、例えば詳細モードのみによるシミュレーションが行われるように構成されてもよい。また、同図の例では、計算部112による計算が終了した後に出力データを選択できるようにしている。しかしながら、例えばパラメータの入力の段階で、計算終了後に出力させる出力データを予めユーザが選択できるようにしておき、計算の終了に応じて、選択されていた出力データが表示されるようにしてもよい。
【0067】
以上説明したように本実施形態では、容器の境界条件について開放系を設定するようにしている。これにより、容器の性能評価にあたり、容器の条件が開放系である場合に対応して適切に評価を行うことが可能となる。また、容器を含めた外界までもシミュレーションすることができる。
また、本実施形態では、複数の容器をシミュレーション対象とし、容器ごとにパラメータを設定することが可能とされている。これにより、例えば複数の容器の位置関係、距離などをパラメータとして規定することによって、複数の容器の相互作用や複数の容器の位置する外気の温度変化なども評価できるようになる。より具体的には、例えば複数の容器を積載したコンテナや、容器内に複数の小分け箱を容れたような場合の評価を適切に行える。
また、本実施形態においては、冷媒モデルMD3として相変化に関する仮定を定めたうえで、冷媒の状態変化と熱移動を表現した式を用いている。これにより、
図12の冷媒残量グラフとして示したように、冷媒の相変化に応じた冷媒の保持時間を評価することが可能になる。
【0068】
また、上記実施形態においては、三次元領域を対象とするのではなく、二次元領域を対象とするシミュレーションを行っている。実際の容器は、水平方向において対象な形状であることが多い。また、三次元領域を対象とした場合には計算量が膨大となり、また、モデル化による近似や仮定によって得られる結果と実際との誤差が大きくなる可能性が高い。このようなことを考慮して、本実施形態においては、二次元領域を対象とするシミュレーションを行うことで、計算量の増加を抑止し、誤差が拡大しないようにしている。
しかしながら、本実施形態において、三次元領域に対応するように伝導伝熱モデルMD1、自然対流伝熱モデルMD2および冷媒モデルMD3の式を変更することにより、三次元領域を対象とする開放系のシミュレーションも可能である。
【0069】
なお、上記実施形態においては、温度保持媒体を冷媒とすることで保冷を行う場合の容器性能を評価している。しかしながら、本実施形態の構成は、例えば高温の内容物を保温する場合の容器性能の評価にも適用できる。
【0070】
なお、上記実施形態においては、評価結果として、食材の時間経過に応じた温度変化、冷媒の時間経過に応じた温度変化、および冷媒の時間経過に応じた残量を、それぞれ、グラフにより表していた(
図10〜
図12)。また、温度分布の経時変化については、時間経過に応じてサーモグラフィを変化させるような動画あるいはタイムラプス画像として表示していた(
図13)。
しかしながら、食材の時間経過に応じた温度変化、冷媒の時間経過に応じた温度変化、および冷媒の時間経過に応じた残量については、それぞれ、例えば時間と温度の数値とを対応付けた表のような形式で表示されてもよい。また、温度分布の経時変化についても、数値化した表のような形式で表示されてよい。
【0071】
なお、本実施形態としては、容器性能評価装置100をサーバとして構成したうえで、ネットワーク経由でユーザ端末装置と接続した容器性能評価システムを構成してもよい。この場合には、サーバがパラメータ入力画面に対応するウェブページを提供する。ユーザ端末装置は、サーバにアクセスすることで、パラメータ入力画面を表示することができる。ユーザがユーザ端末装置にて表示されたパラメータ入力画面に対してパラメータ入力の操作を行うことに応じて、サーバにおいて入力されたパラメータが取得される。サーバは、取得されたパラメータを使用して計算を行い、例えばユーザ端末装置からの要求に応答して、食材の時間経過に応じた温度変化、冷媒の時間経過に応じた温度変化、冷媒の時間経過に応じた残量、温度分布の変化などの出力データをユーザ端末装置に送信する。ユーザ端末装置は、受信された出力データを表示する。
このような構成であれば、例えば多くのユーザが手軽に容器性能評価のサービスを享受できる。
【0072】
なお、上述の容器性能評価装置100としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の容器性能評価装置100としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。