特許第6562870号(P6562870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562870記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562870
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   B41J2/165 303
   B41J2/165 305
   B41J2/165 101
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-92091(P2016-92091)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-196881(P2017-196881A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 佑太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一樹
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−023358(JP,A)
【文献】 特開2013−111748(JP,A)
【文献】 特開2004−268563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0273630(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口から液体を吐出する吐出手段と、
前記吐出口の設けられた吐出口面を払拭するブレードと、該ブレードと当接して前記ブレードのクリーニングを行うクリーナと、を含み、前記吐出口の吐出性能を維持するための複数の回復動作から選ばれた回復動作を実行する回復手段と、
前記ブレードによる前記吐出口面の払拭から前記ブレードの前記クリーナへの当接までをワイプ動作とし、前記ワイプ動作の直前に前記回復手段によって実行された前記回復動作に応じた累積情報を記憶する記憶手段と、
前記累積情報に基づいて前記クリーナの寿命を報知する報知手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
吐出口から液体を吐出する吐出手段と、
前記吐出口の設けられた吐出口面を払拭するブレードと、前記ブレードと当接して前記ブレードのクリーニングを行うクリーナと、を含み、前記吐出口の吐出性能を維持するための複数の回復動作から選ばれた回復動作を実行する回復手段と、
前記ブレードによる前記吐出口面の払拭から前記ブレードの前記クリーナへの当接までをワイプ動作とし、前記ワイプ動作の直前に前記回復手段によって実行された前記回復動作に応じて重み付けされた累積情報を記憶する記憶手段と、
前記累積情報に基づいて前記クリーナの寿命を報知する報知手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
前記重み付けは前記ワイプ動作を行うごとに係数を乗じて行い、前記記憶手段は前記係数を乗じた数値の累積結果を記憶することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記クリーナによる前記ブレードのクリーニングが前回実施されてからの間隔に基づいて、前記重み付けを行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記報知手段の報知結果に応じて、装置の動作を変更することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
吐出口から液体を吐出する吐出手段と、
前記吐出口の設けられた吐出口面を払拭するブレードと、前記ブレードと当接して前記ブレードのクリーニングを行うクリーナと、を含み、前記吐出口の吐出性能を維持するための回復動作を実行する回復手段であって、前記ブレードによる前記吐出口面の払拭から前記ブレードの前記クリーナへの当接までを行うワイプ動作と、前記ワイプ動作以外の複数の回復動作から選ばれた回復動作と、を組み合わせた一連の回復動作を実行する回復手段と、
前記回復手段によって実行された前記一連の回復動作に応じた累積情報を記憶する記憶手段と、
前記累積情報に基づいて前記クリーナの寿命を報知する報知手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項7】
前記回復手段は、前記吐出口を覆うことが可能なキャップを含み、前記回復動作として、前記吐出口から前記キャップへ向けた液体の吐出と、前記キャップによる前記吐出口からの液体の吸引と、を実行可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
液滴を吐出する吐出口が設けられた吐出口面を払拭するブレードと、該ブレードと当接して前記ブレードのクリーニングを行うクリーナと、を含み、前記吐出口の吐出性能を維持するための複数の回復動作から選ばれた回復動作を実行可能な回復手段の前記クリーナの寿命を判定する寿命判定方法であって、
前記ブレードによる前記吐出口面の払拭から前記ブレードの前記クリーナへの当接までをワイプ動作とし、前記ワイプ動作の直前に前記回復手段によって実行された前記回復動作に応じた累積情報を記憶する記憶工程と、
前記累積情報に基づいて前記クリーナの寿命を報知する報知工程と、
を含むことを特徴とする寿命判定方法。
【請求項9】
液滴を吐出する吐出口が設けられた吐出口面を払拭するブレードと、該ブレードと当接して前記ブレードのクリーニングを行うクリーナと、を含み、前記吐出口の吐出性能を維持するための複数の回復動作から選ばれた回復動作を実行可能な回復手段の前記クリーナの寿命を判定する寿命判定方法であって、
前記ブレードによる前記吐出口面の払拭から前記ブレードの前記クリーナへの当接までをワイプ動作とし、前記ワイプ動作の直前に前記回復手段によって実行された前記回復動作に応じて重み付けされた累積情報を記憶する記憶工程と、
前記累積情報に基づいて前記クリーナの寿命報知する報知工程と、
を含むことを特徴とする寿命判定方法。
【請求項10】
液滴を吐出する吐出口が設けられた吐出口面を払拭するブレードと、該ブレードと当接して前記ブレードのクリーニングを行うクリーナと、を含み、前記吐出口の吐出性能を維持するための回復動作を実行可能な回復手段であって、前記ブレードによる前記吐出口面の払拭から前記ブレードの前記クリーナへの当接までを行うワイプ動作と、前記ワイプ動作以外の複数の回復動作から選ばれた回復動作と、を組み合わせた一連の回復動作を実行する回復手段の前記クリーナの寿命を判定する寿命判定方法であって、
前記回復手段によって実行された前記一連の回復動作に応じた累積情報を記憶する記憶工程と、
前記累積情報に基づいて前記クリーナの寿命を報知する報知工程と、
を含むことを特徴とする寿命判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出して記録を行う記録装置で、複数の吐出口を備えた吐出口面をクリーニングするクリーニング機構を備えた記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドに設けられた複数のノズルから液体を吐出して記録を行う所謂インクジェット記録装置が知られている。一般的にインクジェット記録装置は記録品位を安定させるためのクリーニング動作を行うクリーニング機構を備えている。クリーニング機構は、記録ヘッドのノズルが開口しているフェイス面を覆うキャップや、フェイス面を払拭するブレード、ブレードをクリーニングするグレードクリーナ等を備えている。
【0003】
クリーニング機構によって、フェイス面をキャップで覆いノズルから吸引するノズル吸引動作や、キャップ内に記録にインクを吐出するパージ動作を行うことで記録品位を安定させることができる。また、これらの動作後には、記録ヘッドのフェイス面にインクが付着しており、記録不良の原因となり得るため、ブレードをフェイス面に沿って動かすことでインクを払拭するワイピング動作を実施している。
【0004】
ワイピング動作で使用するブレードには、拭き取ってブレードに付着したインク残滴が蒸発することで固着し、ワイピング性能が劣化するという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1では、ワイピング動作後、ブレードをブレードクリーナに接触させ、拭き取ったインクをブレードクリーナに吸収させることで、ブレードを良好な状態に保ち、ワイピング性能の劣化を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−95704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブレードをクリーニングするブレードクリーナは、ワイピング動作を行うごとにブレードが払拭したインクを吸収する。ワイピングが繰り返されると、ブレードクリーナには吸収したインクが増えて、吸収できなくなりブレードクリーナの寿命となる。ブレードクリーナが寿命に達した後も継続してワイピングを行うと、ブレードのクリーニングを十分に行うことができず、ブレードにインクが残った状態となり、固着してワイピング性能が劣化する。
【0008】
特許文献1では、ブレードクリーナでブレードのインクを吸収しているが、ブレードクリーナの交換時期については言及されていない。従って、ブレードクリーナの交換時期を把握することができず、ワイピング性能が劣化する虞がある。またブレードは、ワイピング動作で記録ヘッドのフェイス面と摺接することから、ワイピングを繰り返すと徐々に磨り減り、フェイス面のインクを払拭できなくなる。
【0009】
このように、クリーニング機構の各部材の寿命を把握できない状態でクリーニング動作を継続すると、十分に記録ヘッドのクリーニングができなくなり、記録品位を低下させることになる。
【0010】
よって本発明は、クリーニング機構の寿命をより正確に判定することができる記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため本発明の記録装置は、吐出口から液体を吐出する吐出手段と、前記吐出口の設けられた吐出口面を払拭するブレードと、ブレードと当接して前記ブレードのクリーニングを行うクリーナと、を含み、前記吐出口の吐出性能を維持するための複数の回復動作から選ばれた回復動作を実行する回復手段と、前記ブレードによる前記吐出口面の払拭から前記ブレードの前記クリーナへの当接までをワイプ動作とし、前記ワイプ動作の直前に前記回復手段によって実行された前記回復動作に応じた累積情報を記憶する記憶手段と、前記累積情報に基づいて前記クリーナの寿命を報知する報知手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クリーニング機構の寿命をより正確に判定することができる記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】記録システムを示した図である。
図2】記録装置の主要部分を示した図である。
図3】記録装置の制御系ブロック図である。
図4】記録装置の回復ユニットの詳細を示した構成図である。
図5】(a)から(d)は記録装置におけるワイピング動作の流れを示す図である。
図6】回収するインク量が異なる場合のワイピング動作を示す図である。
図7】ワイピング動作直前に行った動作ごとの係数を示した表である。
図8】ワイピング動作直前に行った動作からの経過時間毎の係数を示した表である。
図9】記録装置のワイピング動作における処理を示したフローチャートである。
図10】クリーニング動作における動作の内訳と対応する係数を示した表である。
図11】記録装置のワイピング動作における処理を示したフローチャートである。
図12】フェイス面に付着したインク量が多い場合と少ない場合とを示す図である。
図13】ワイピング動作直前に行った動作ごとの係数を示した表である。
図14】ワイピング直前動作からの経過時間毎の係数を示した表である。
図15】記録装置のワイピング動作における処理を示したフローチャートである。
図16】ワイピング回数ごとの消耗度合いに対する係数の一例を示した表である。
図17】記録装置のワイピング動作における処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。なお、この明細書で「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成又は媒体の加工を行う場合も表す。また、「記録媒体」(シートとも称する)とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。さらに「インク」とは、「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることで、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(インク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0015】
図1は、本実施形態を適用可能な記録装置を用いた記録システムを示した図である。インクジェット方式のフルライン記録ヘッドを用いたカラー記録装置(以下、記録装置ともいう)100とホストコンピュータ101(以下、ホストともいう)とは、プリンタケーブル102で接続されている。ホスト101で処理された各種データは、プリンタケーブル102を介して記録装置100に送信され、記録装置100で記録される。
【0016】
図2は、本実施形態を適用可能な記録装置100の主要部分を示した図である。記録装置100は記録媒体の幅全体に亘って複数の吐出口(以下ノズルともいう)を配列したブラック用記録ヘッド200K、シアン用記録ヘッド200C、マゼンタ用記録ヘッド200M、イエロー用記録ヘッド200Yを含むヘッドユニット201を備えている。更に記録装置100は、記録ヘッド200の吐出状態を良好に維持するクリーニング機構である回復ユニット202、記録媒体を搬送する搬送ユニット203と、吸引クリーニングに用いる圧力ポンプ204、廃インクを貯留する廃インクタンク205を備えている。これらを備えることで、記録装置100は記録媒体に対してフルカラーの記録が可能である。4搬送ユニット203の上流に、複数のカット用紙206が給紙トレイ207上に積載されている給紙ユニット208が装着されており、給紙ユニット208から搬送ユニット203に記録媒体であるカット用紙206が給紙される。搬送ユニット203に搭載される複数の記録媒体のページ間を検知するセンサ(以下、TOFセンサともいう)209により記録媒体の先端を検知し、その検知結果をトリガにして、搬送される記録媒体に各記録ヘッドにより順次記録が行われる。記録完了したカット用紙206は、排紙口213まで搬送され、排紙トレイ210に積載さる。
【0017】
記録に用いるインクは、本体に対して着脱可能なブラック用インクタンク211K、シアン用インクタンク211C、マゼンタ用インクタンク211M、イエロー用インクタンク211Yから、圧力ポンプ204により対応色の各記録ヘッドへと供給される。また、画像信頼性維持のために記録ヘッドのノズルから吸引したインクや、記録に寄与しない吐出である所謂予備吐出で吐出したインクは、圧力ポンプ204により回復ユニット202から廃インクタンク205に移され廃棄される。
【0018】
図3は、記録装置100の制御系ブロック図である。記録装置100は、ホスト101の記録データやコマンドを受信するUSBインターフェイスコントローラ300、記録装置における記録データの受信、記録動作等全般の制御を掌る演算処理装置であるCPU301を備えている。CPU301は、記録媒体の検出に同期して、イメージRAM302から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各記録ヘッド310に転送する。またCPUは、プログラムROM315に記憶された処理プログラムを実行することで各制御を行う。また記録装置100は記録データのイメージデータ展開するイメージRAM302、各種モータ303(ヘッドモータ、ブレードモータ、ポンプモータ、搬送モータ)を駆動するモータードライバ304、弁305を制御するソレノイドドライバ306を備えている。更に記録装置100は各種センサ307(ヘッドダイオードセンサ、温度計、湿度計)を入力するためのI/O308、該記録装置全体を制御するASIC309、イメージRAM302に展開されたイメージを記録媒体上に記録する記録ヘッド310を備えている。更に記録装置100は記録ヘッド毎に装着され固有データを保持するヘッドEEPROM311、記録ヘッド310にインクを供給するインクタンク312、インクタンク毎に装着され固有データを保持するインクタンクEEPROM313を備えている。記録装置100は、外部からの入力を受け付けるオペレーションパネル314をユーザが操作することで制御が行われる。
【0019】
プログラムROM315には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM316を使用する。各記録ヘッド310のクリーニング動作時に、CPU301は、モータードライバ304を介して各種センサ307をモニタしながら、各種モータ303を駆動し、インクの加圧や吸引等の制御を行う。記録やクリーニングで使用するインクは、各インクタンク312から供給される。各インクタンク312には、インクタンクEEPROM313が搭載されており、インクの色や種類を示すIDやシリアルナンバーが書込まれている他、残量検知用の使用量カウンタなどを保持することができる。記録装置とユーザ間のインターフェースとしては、オペレーションパネル314が用いられる。オペレーションパネル314にはプリンタからユーザへ状態を報知するためのLCD317やブザー318、ユーザからプリンタへ指示を行うためのキー319が備えられている。
【0020】
図4は、記録装置100の回復ユニット202の詳細を示した構成図である。回復ユニット202は、クリーニング目的で記録ヘッド200から吐出したインクを受けるためのキャップ部400と、記録ヘッド200のフェイス面に付着したインクを拭き取るためのブレード401とを備えている。また、回復ユニット202は、ブレード401が拭き取ったインクを回収するためのブレードクリーナ402を備えている。
【0021】
図5(a)から(d)は、記録装置100におけるワイピング動作の流れを示す図である。記録ヘッド200は、記録装置100が動作中でない場合、フェイス面500を保護するために、図5(a)のように回復ユニット202でフェイス面500を覆う。記録ヘッド200は、CPU301よりワイピング動作の指示があった場合、ヘッドモータ303aを駆動させ、図5(b)に示すようなワイピング位置へと移動する。記録ヘッド200がワイピング位置へ移動した後、ブレード401はブレードモータ303bにより図5(c)に示すように記録ヘッドフェイス面500に沿って移動することで記録ヘッド200のフェイス面500に付着しているインクを拭き取る。拭き取られてブレード401に付着したインクは、図5(d)で示すようにブレード401をブレードクリーナ402に当接させることでブレードクリーナ402に回収される。このようなワイピング動作により、記録ヘッド200およびブレード401を良好な状態に維持している。
【0022】
図6は、回収するインク量が異なる場合のワイピング動作を示す図である。図6(a)は、ワイピング動作直前に行った動作により、フェイス面500に付着したインク量が少ない場合を示している。ブレードクリーナ402は所定量のインクを回収すると、それ以上は回収不能となり、ブレードクリーナ402の寿命となる。図6(a)の状態でワイピング動作を行っても、ブレードクリーナ402が回収するインク量は少なため、ブレードクリーナの寿命に与える影響は小さい。図6(b)は、ワイピング動作直前に行った動作により、フェイス面500に付着したインク量が多い場合を示している。この状態でワイピング動作を行うと、ブレードクリーナ402が回収するインク量は多いため、ブレードクリーナの寿命に与える影響は大きい。
【0023】
このように、ワイピング動作直前に行った動作により、ブレードクリーナ402の寿命に与える影響は異なるものとなり、単にワイピング動作の回数だけをカウントしても、ブレードクリーナ402の正確な寿命を把握することはできない。そこで、本実施形態では、ワイピング動作直前に行った動作ごとに係数を設け、ブレードクリーナ402の寿命を判断するためのワイピング動作のカウント値に重み付けをする。
【0024】
また、ワイピング動作直前に行った動作が終了してからの経過時間によっても、ブレードクリーナ402の寿命に与える影響は異なる。つまり、ワイピング動作直前に行った動作が終了してからの経過時間が短ければ、フェイス面500に付着したインクは溶剤成分の揮発が少ないためブレード401に回収され易くブレードクリーナの寿命に与える影響は大きい。しかし、ワイピング動作直前に行った動作が終了してからの経過時間が長い場合、フェイス面500に付着したインクは溶剤成分の揮発が進み、粘性が高くなっているためブレード401に回収され辛くブレードクリーナの寿命に与える影響は小さい。
【0025】
そこで、本実施形態では、ワイピング動作直前に行った動作ごとの係数に加え、ワイピング動作直前に行った動作が終了してからの経過時間ごとに係数を設けて、ワイピング動作のカウント値に重み付けをする。これによって、回復ユニット202の寿命判定を行う。
【0026】
図7は、本実施形態におけるワイピング動作直前に行った動作ごとの係数を示した表である。直前動作がインク吐出動作だった場合を基準(1.0)とし、フェイス面500に付着しているインクが多いと想定されるノズル吸引動作やノズル加圧動作の後では係数を高くしてブレードクリーナ402の寿命カウンタへ重み付けする。反対にフェイス面500に付着しているインクが少ないと想定されるワイピング動作後やキャッピング動作後では係数を小さくしてブレードクリーナ402の寿命カウンタへ重み付けする。
【0027】
また、ワイピング動作の実施間隔によって、ブレードクリーナ402の寿命カウンタへ重み付けを変更してもよい。
【0028】
図8は、本実施形態におけるワイピング動作直前に行った動作からの経過時間ごとの係数を示した表である。ワイピング動作を行ってから次にワイピング動作までの経過時間が長くなるほどブレードクリーナ402が吸収したインクの水分が蒸発してブレードクリーナ内で占める体積が減少する。そのため、次にワイピング動作を行ったときに、その経過時間に基づいた係数でブレードクリーナ402の寿命カウンタへ重み付けする。
【0029】
図9は、本実施形態の記録装置100のワイピング動作における処理を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて本実施形態におけるワイピング動作を説明する。記録装置100がワイピング動作を開始すると、ステップS801で、RAM316に記憶している直前動作を読み込む。そしてステップS802で、ステップS801で読み込んだ直前動作に対応する重み付け係数を抽出する。ステップS805で、寿命カウント値に加算するカウント値を算出する。本実施形態では、
(加算するカウント値)=(ワイピング回数1回)×(直前動作の重み付け係数)
とする。これをワイピング動作ごとに行う。
【0030】
その後、ステップS806で、ステップS805の算出結果から、RAM316に記憶しているブレードクリーナ402の寿命カウント値に今回のカウント値を加算する。そして、ステップS807で、加算結果をブレードクリーナ402の寿命カウント閾値と比較して、ブレードクリーナ402の寿命カウント閾値以内だった場合は処理を終了する。加算結果がブレードクリーナ402の寿命カウント閾値を超えていた場合は、ステップS808に移行して、エラーを発生させる等の手段によりユーザへ報知し、ブレードクリーナ402の交換を促して処理を終了する。
【0031】
このように、ブレードがフェイス面を払拭した回数に、フェイス面に付着した液体の量に応じて異なる係数を乗じて回復ユニットの寿命の判定を行う。これによって、クリーニング機構の寿命をより正確に判定することができる記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法を実現することができた。
【0032】
なお、本実施形態では、ブレードクリーナ402が寿命であると判定した際に、ユーザへ報知して交換を促したが、これに限定するものではない。つまり、ブレードクリーナ402が寿命であると判手したら、その判定結果に応じて装置の動作を変更してもよい。例えば、ブレードクリーナ402が寿命であると判定したら、それ以降は、ブレードクリーナに当接させないワイピングを、回数を限定して行うようにしてもよい。または、ブレードクリーナが吸引したインクを除去する機構を設けて、ブレードクリーナからインクを除去する動作に移行してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、直前動作に対応した重み付けだけを考慮して寿命判定を行ったが、これに加えて経過時間に対応する重み付けを行ってもよい。経過時間、つまりワイピング動作の実施間隔によって寿命カウンタへの重み付けの変更を行う場合は、ワイピング動作が行われたときに前回のワイピング動作からの経過時間を計測しておき、その経過時間に基づいて前回加算した寿命カウンタの値に補正を加えればよい。
【0034】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0035】
ワイピング動作を含んだクリーニング動作(ノズル吸引動作、ノズル加圧動作、ワイピング動作)は、複数種類の動作の一連の動作である場合が多い。また、それら一連の動作は、複数種類の動作の組み合わせからなるものであり、その組み合わせによってフェイス面500に付着するインク量も異なる。そこで、これら複数種類の動作を組み合わせたクリーニング動作ごとに係数を設けて、ブレードクリーナ402の寿命カウント値に重み付けすることでも、ブレードクリーナ402の寿命を知ることができる。なお、この方法は、第1の実施形態に比べて計算回数が少ないためCPUへの負荷軽減が見込める。
【0036】
ここでクリーニング動作とは、ノズル吸引動作、ノズル加圧動作、ワイピング動作、インク吐出動作、キャッピング動作を組み合わせたシーケンシャルな動作のことであり、記録装置の記録品位を保つために必要な動作である。
【0037】
図10は、各クリーニング動作における動作の内訳とそれに対応する係数を示した表である。この表に基づいて、ワイピング動作の直前に行ったクリーニング動作から係数を選択して寿命の算出における重み付けを行う。例えば、「クリーニング強」というのは、ノズル吸引動作、インク吐出動作、ワイピング動作、キャッピング動作という一連の動作を行うものである。
【0038】
図11は、本実施形態の記録装置100のワイピング動作における処理を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて本実施形態におけるワイピング動作を説明する。記録装置100がワイピング動作を開始すると、ステップS1000で、記録装置100が実施予定のクリーニング動作から、寿命カウント計算に使用する重み付け係数を抽出し、ステップS1001で、寿命カウント値に加算するカウント値を算出する。そして、ステップS1002で、算出結果からブレードクリーナ402の寿命カウント値に今回のカウント値を加算する。その後、ステップS1003で、クリーニングを実施し、ステップS1004でクリーニング完了したのを確認すると、ステップS1005で、予め加算しておいた寿命カウント値とRAM316に記憶しているブレードクリーナ402の寿命カウント閾値と比較する。比較の結果、まだ寿命に達していなければワイピング動作を終了する。比較の結果、ブレードクリーナが寿命である場合には、ステップS1006に移行して、エラーを発生させる等の手段によりユーザへ報知し、ブレードクリーナ402の交換を促してワイピング動作を終了する。
【0039】
このように、一連の動作であるクリーニング動作ごとに係数を設けて、ブレードがフェイス面を払拭した回数に、フェイス面に付着した液体の量に応じて異なる係数を乗じて回復ユニットの寿命の判定を行う。これによって、クリーニング機構の寿命をより正確に判定することができる記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法を実現することができた。
【0040】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0041】
図12(a)、(b)は、記録装置100のフェイス面500に付着したインク量が多い場合と少ない場合とを示す図である。図12(a)が付着したインク量が多い場合であり、図12(b)が付着したインク量が少ない場合である。ブレード401によってフェイス面500のワイピングを行う場合、図12(a)のようにフェイス面に付着したインク量が多いと、インクにより摩擦抵抗が低くなり、ブレード401の消耗度合いは低くなる。これに対して、図12(b)のようにフェイス面500に付着したインク量が少ないと、摩擦抵抗が高くなり、ブレード401の消耗度合いは高くなる。フェイス面500に付着するインク量はワイピング動作の直前動作によって異なる。
【0042】
このように、フェイス面500に付着したインク量が異なることで、ワイピング時のブレード401の消耗度合いも異なり、ブレード401の寿命に与える影響も異なるものとなる。よって、単にワイピング動作の回数だけをカウントしても、ブレード401の正確な寿命を把握することはできない。そこで本実施形態では、ワイピング動作直前に行った動作ごとに係数を設け、ブレード401の寿命を判断するためのワイピング動作のカウント値に重み付けをする。
【0043】
また、ワイピング動作直前に行った動作が終了してからの経過時間によっても、ブレード401の寿命に与える影響は異なる。つまり、ワイピング動作直前に行った動作が終了してからの経過時間が短ければ、フェイス面500に付着したインクは溶剤成分の揮発が少ないため摩擦抵抗が低くなり、ブレード401の消耗度合いは低くなる。しかし、ワイピング動作直前に行った動作が終了してからの経過時間が長い場合、フェイス面500に付着したインクは溶剤成分の揮発が進み、粘性が高くなっているため摩擦抵抗が高くなり、ブレード401の消耗度合いは高くなる。
【0044】
そこで、本実施形態では、ワイピング動作直前に行った動作ごとの係数に加え、ワイピング動作直前に行った動作が終了してからの経過時間ごとに係数を設けて、ワイピング動作のカウント値に重み付けをする。これによって、回復ユニット202の寿命判定を行う。
【0045】
図13は、本実施形態におけるワイピング動作直前に行った動作ごとの係数を示した表である。直前動作がインク吐出動作だった場合を基準(1.0)とし、フェイス面500に付着しているインクが多いと想定されるノズル吸引動作やノズル加圧動作の後では係数を低くしてブレードクリーナ402の寿命カウンタへ重み付けする。反対にフェイス面500に付着しているインクが少ないと想定されるワイピング動作後やキャッピング動作後では係数を高くしてブレードクリーナ402の寿命カウンタへ重み付けする。
【0046】
図14は、本実施形態におけるワイピング動作直前に行った動作からの経過時間ごとの係数を示した表である。経過時間が短いほど重み付けが低くなるよう、係数を低くする。これはフェイス面5にインクが付着してからの経過時間が短いほど乾燥増粘による摩擦抵抗の増加が生じず、ワイピング動作によるブレード401の消耗度合いが低いことを考慮したものである。
【0047】
図15は、本実施形態の記録装置100のワイピング動作における処理を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて本実施形態におけるワイピング動作を説明する。記録装置100がワイピング動作を開始すると、ステップS1501で、RAM316に記憶している直前動作を読み込む。そしてステップS1502で、ステップS1501で読み込んだ直前動作に対応する重み付け係数を抽出する。ステップS1503で、直前動作からの経過時間を読み込んで、ステップS1504で、読み込んだ経過時間に対応する重み付け係数を抽出する。ステップS1505で、寿命カウント値に加算するカウント値を算出する。その後、ステップS1506で、ステップS1505の算出結果から、RAM316に記憶しているブレード401の寿命カウント値に今回のカウント値を加算する。そして、ステップS1507で、加算結果をブレード401の寿命カウント閾値と比較して、ブレード401の寿命カウント閾値以内だった場合は処理を終了する。加算結果がブレード401の寿命カウント閾値を超えていた場合は、ステップS1508に移行して、エラーを発生させる等の手段によりユーザへ報知し、ブレード401の交換を促して処理を終了する。
【0048】
このように、ブレードがフェイス面を払拭した回数に、フェイス面に付着した液体の量に応じて異なる係数を乗じて回復ユニットの寿命の判定を行う。これによって、クリーニング機構の寿命をより正確に判定することができる記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法を実現することができた。
【0049】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0050】
回復動作の種類によってはワイピング動作前のフェイス面500の状態がほぼ決まっていることがある。たとえばユーザが実施するマニュアル回復中に行うワイピング動作がそれに当たる。そのような場合は直前の動作ではなく、マニュアル回復内のどのタイミングのワイピング動作かを読み込んで係数を決めておいてもよい。
【0051】
図16は、本実施形態におけるワイピング回数ごとの消耗度合いに対する係数の一例を示した表である。回復動作における1回目のワイピングは、吐出後のワイピング動作になるため、1回目のワイピング動作が基準(1.0)となる。2回目のワイピング動作は、1回目のワイピング動作直後に実施するので、フェイス面500にはインクが少量しかついていないため係数を大きくしている。3回目と4回目のワイピング動作は、一連の処理においてワイピング動作以前の回復制御でフェイス面500にインクが多量に付着するような動作(本実施形態では吸引動作)を行っているため係数を小さくしている。
【0052】
図17は、本実施形態の記録装置100のワイピング動作における処理を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて本実施形態におけるワイピング動作を説明する。記録装置100がワイピング動作を開始すると、ステップS1701で、回復シーケンスにおける何回目のワイピング動作であるかを読み込む。そして、ステップS1702で、何回目のワイピング動作であるかに応じた重み付け係数を抽出し、ステップS1703で、寿命カウント値に加算するカウント数を算出する。その後、ステップS1704で、算出結果からRAM316に記憶しているブレード401の寿命カウント値に今回のカウント値を加算する。ステップS1705で、加算結果をブレード寿命の閾値と比較し、ブレード寿命の閾値以内だった場合はそのまま処理を終了する。加算結果がブレード寿命の閾値を超えていた場合は、ステップS1706に移行して、エラーを発生させ、ユーザに交換を促してワイピング動作を終了する。
【0053】
このように、あらかじめ決まった一連の動作であるクリーニング動作ごとに係数を設けて、ブレードがフェイス面を払拭した回数に、フェイス面に付着した液体の量に応じて異なる係数を乗じて回復ユニットの寿命の判定を行う。これによって、クリーニング機構の寿命をより正確に判定することができる記録装置およびクリーニング機構寿命判定方法を実現することができた。
【符号の説明】
【0054】
100 記録装置
200 記録ヘッド
202 回復ユニット
401 ブレード
402 ブレードクリーナ
500 フェイス面
図1
図2
図3
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図5
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