(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記故障検出部が前記駆動用半導体スイッチング素子の短絡故障を検出した場合に前記駆動用半導体スイッチング素子をオフに制御することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、インバータ回路によりモータを制御するモータ制御装置において、インバータ回路を構成するスイッチング素子が故障した際の対策に関する技術が知られている。例えば、特許文献1は、スイッチング素子の短絡故障により生ずる閉ループの通電を適切に遮断することを目的としたモータ制御装置を開示する。このモータ制御装置は、モータと、モータを駆動するインバータと、モータとインバータとの間の通電を遮断する電流遮断機構を備える。そして、モータ制御装置は、電流センサによってインバータのハイサイドのスイッチング素子の短絡故障が検知された場合、電流遮断機構による遮断が行われる前にスイッチング素子を全てオンするモータ制御を行う。
【0003】
また、特許文献2は、インバータに異常が発生してアシストを停止した場合に、閉回路が形成されて運転者が意図しない操舵補助力や電磁ブレーキが発生することを、短時間に回避することを目的とした電動パワーステアリング装置を開示する。この電動パワーステアリング装置は、少なくとも操舵トルク及び車速に基づいて電流指令値を演算し、その電流指令値に基づいてステアリング機構に操舵補助力を付与するモータの各相にモータ相電流を供給するインバータを備える。そして、この電動パワーステアリング装置は、モータ相電流をモータに供給する各相供給路に第1のFET群を設け、インバータの異常が検出されたときに、インバータを構成する第2のFET群及び第1のFET群をオフにする。
【0004】
また、特許文献3は、簡単な回路構成および制御動作により、フェールセーフ用の半導体スイッチング素子がスパイク電圧により破壊されるのを防止することを目的としたモータ駆動装置を開示する。このモータ駆動装置は、異常を検出した場合に、インバータ回路の各半導体スイッチング素子を全てOFFにし、その後、所定時間が経過した時点で、フェールセーフ回路の各半導体スイッチング素子を全てOFFにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インバータ回路によりモータを駆動し制御するモータ制御装置においては、インバータ回路の半導体スイッチング素子が短絡故障した場合、インバータ回路とモータとの間で、電流の閉ループが形成される。このような場合において、電流遮断用の半導体スイッチング素子をオフした場合、流れている電流量によっては、サージ電圧が発生して半導体スイッチング素子が破壊されてしまうことがある。
そこで、本発明は、インバータ回路によりモータを駆動し制御を行うモータ制御装置において、インバータ回路の半導体スイッチング素子が故障した場合に、他の半導体スイッチング素子が破壊されないようにオフするモータ制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、モータを駆動する駆動用半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と、モータとインバータ回路の間の通電を遮断する遮断用半導体スイッチング素子を有する遮断回路と、駆動用半導体スイッチング素子の故障を検出する故障検出部と、モータの回転数を検出する回転数検出部と、インバータ回路と遮断回路を制御する制御部と、を備え、制御部は、故障検出部が駆動用半導体スイッチング素子の故障を検出した場合に駆動用半導体スイッチング素子をオフに制御し、さらに、回転数検出部が検出したモータの回転数が所定の第1閾値未満の場合に遮断用半導体スイッチング素子をオフに制御
し、故障検出部が駆動用半導体スイッチング素子の故障を検出しない場合においてモータの駆動を終了する場合、駆動用半導体スイッチング素子をオフに制御した後、回転数検出部が検出したモータの回転数が第1閾値より大きい値の第2閾値未満の場合に遮断用半導体スイッチング素子をオフに制御するモータ制御装置が提供される。
これによれば、インバータ回路の半導体スイッチング素子が故障した場合に、他の半導体スイッチング素子が破壊されないようにオフするモータ制御装置を提供することができる。
また、インバータ回路の半導体スイッチング素子が故障しない場合にも、適切な閾値を用いることにより迅速に半導体スイッチング素子が破壊されないように半導体スイッチング素子をオフにすることができる。
【0008】
さらに、制御部は、故障検出部が駆動用半導体スイッチング素子の短絡故障を検出した場合に駆動用半導体スイッチング素子をオフに制御することを特徴としてもよい。
これによれば、インバータ回路の半導体スイッチング素子が短絡故障した場合に、他の半導体スイッチング素子が破壊されないようにオフすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インバータ回路の半導体スイッチング素子が故障した場合に、他の半導体スイッチング素子が破壊されないようにオフするモータ制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る実施例について説明する。
<第一実施例>
図1を参照し、本実施例におけるモータ制御装置100を説明する。モータ制御装置100は、モータMを駆動するインバータ回路10と、モータMとインバータ回路10の間の通電を遮断する遮断回路20と、インバータ回路10の故障を検出する故障検出部30と、モータMの回転数を検出する回転数検出部40と、インバータ回路10と遮断回路20を制御する制御部50と、を備える。モータ制御装置100は、車両のパワーステアリング装置やパワースライドドア(図示せず)などに用いられる3相ブラシレスモータであり、ステアリング操作などに対して補助力を付与する3相のモータMを駆動および制御する。
【0013】
インバータ回路10は、モータMの各相U/V/Wに対応した相回路Cu/Cv/Cwを並列に接続して構成されるブリッジ回路12と、ブリッジ回路12の各相にPWM信号(Pulse Width Modulation)を出力するインバータ駆動部11とを有する。インバータ駆動部11は、制御部50から制御され、高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhおよび低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/QwlであるモータMを駆動する駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのオン/オフを駆動する。インバータ駆動部11は、制御部50から入力される、他のセンサやECU(Electric Control Unit、図示せず)から得られるステアリングの操舵トルク値やモータMの回転角などに基づき、適宜デューティ比を算出し、PWM信号を出力する。このPWM信号は、それぞれ、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのゲートに入力されて、ブリッジ回路12は、直流電源としてのバッテリBの電力をPWM制御によって変換し、モータMへ供給する。
【0014】
ブリッジ回路12は、電源ラインLhを経由してバッテリBの正極側に接続され、グランドラインLlを経由してバッテリBの負極側に接続(接地)される。ブリッジ回路12の各相回路Cu/Cv/Cwは、電源ラインLh側に設けられる高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhと、グランドラインLl側に設けられる低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlを直列に有する。本実施例では、高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhおよび低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlは、MOSFETすなわち金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが用いられる。なお、ブリッジ回路12の接地側には、電流検出器Rが設けられている。
【0015】
高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhは、ドレインが電源ラインLhに接続されている。また、高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhのソースは、低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlのドレインに接続されている。低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlのソースは、グランドラインLlに接続されている。高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhおよび低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlは、インバータ駆動部11で生成されたPWM信号がゲートに入力され、ソース−ドレイン間がオン/オフされる。
【0016】
高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhと低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlの接続点は、それぞれ、遮断回路20を介して、モータMの相U/V/Wに接続されている。遮断回路20は、遮断用半導体スイッチング素子Zu/Zv/Zwと、制御部50からの制御信号に基づき遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwのオン/オフを制御する遮断回路駆動部21を有する。遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwは、各相回路Cu/Cv/Cwの高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhと低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlの接続点にソースを、モータMの各相U/V/Wにドレインを接続される。したがって、遮断回路駆動部21は、その制御により、インバータ回路の各相とモータMの各相との間を通電したり遮断したりする。なお、本実施例では、遮断用半導体スイッチング素子は3つ備えるが、一時点で少なくとも2つの遮断用半導体スイッチング素子をオンすることによりモータMに通電できるので、少なくとも2つの遮断用半導体スイッチング素子があればよい。
【0017】
故障検出部30は、各相回路Cu/Cv/Cw内のそれぞれの地点における電圧を検出することにより、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlの故障を検出する。本実施例では、故障検出部30は、インバータ駆動部11内に設けられている。インバータ駆動部11は、故障検出部30のために、インバータ駆動部11から電源ラインLhにおける電圧を検出する電源ライン検出端子Vhと、グランドラインLlにおける電圧を検出するグランドライン検出端子Vlと、高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhと低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlの接続点における各相の中間電圧検出端子Vum/Vvm/Vwmを有する。それぞれの端子が各地点における電圧を検出することで、各相回路Cu/Cv/Cw内における電圧の差を検出でき、これにより、各地点の間に存する駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlの故障を検出できる。
【0018】
たとえば、インバータ駆動部11が駆動用半導体スイッチング素子Quhをオフに制御したにも拘わらず、相回路Cuの中間電圧検出端子Vumが検出した電圧と電源ライン検出端子Vhが検出した電圧が同程度であれば、故障検出部30は、駆動用半導体スイッチング素子Quhが短絡故障したと判断できる。また、同様に、インバータ駆動部11が駆動用半導体スイッチング素子Quhをオンに制御したにも拘わらず、相回路Cuの中間電圧検出端子Vumが検出した電圧と電源ライン検出端子Vhが検出した電圧が大きく異なる場合には、故障検出部30は、駆動用半導体スイッチング素子Quhが切断故障したと判断できる。
【0019】
回転数検出部40は、モータMの回転軸の回転数を公知の方法により検出するものであればよい。回転数検出部40は、遮断回路駆動部21にその検出した回転数を伝達する。また、制御部50は、上述したように、他のセンサやECUから得られる情報に基づいてインバータ駆動部11を介して駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlを制御する。さらに、それと共に、制御部50は、後述するように、故障検出部30が検出した故障の情報に基づいてインバータ駆動部11を介して駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlを制御すると共に、遮断回路駆動部21を介して遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwを制御する。なお、制御部50は、CPUとメモリを備えるマイクロコンピュータにより構成される。
【0020】
図2〜
図6を参照し、モータ制御装置100における各半導体スイッチング素子の制御方法について説明する。
図2は、モータ制御装置100において正常動作している場合であって、駆動用半導体スイッチング素子Qvhと駆動用半導体スイッチング素子Qwlがオンであり、他の駆動用半導体スイッチング素子がオフである場合の電流の流れ(点線)を示す。なお、正常動作している場合なので、遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwは、すべてオン状態である。
【0021】
リレーRYをオンにすると、バッテリBから電源ラインLhを経由してブリッジ回路12に電流が流れ始める。高電位側半導体スイッチング素子Quh/Qvh/Qwhの中では駆動用半導体スイッチング素子Qvhがオンなので、相回路Cvに電流が流れる。また、低電位側半導体スイッチング素子Qul/Qvl/Qwlの中では駆動用半導体スイッチング素子Qwlがオンなので、モータMのV相からW相に電流が流れ、駆動用半導体スイッチング素子QwlとグランドラインLlを経由して、グランドへ至る。
【0022】
この場合において、中間電圧検出端子Vvmが検出する電圧は、駆動用半導体スイッチング素子Qvhの電圧降下分を入れても、電源ライン検出端子Vhが検出する電圧とほぼ同程度の電圧である。また、たとえば、中間電圧検出端子Vumが検出する電圧は、駆動用半導体スイッチング素子Quhがオフなので、電源ライン検出端子Vhが検出する電圧に比して低い電圧となる。
【0023】
この状態において、駆動用半導体スイッチング素子Quhが短絡故障した場合を
図3に示す。本図に示すような短絡故障が発生すると、駆動用半導体スイッチング素子Quhに電流が流れ、中間電圧検出端子Vumが検出する電圧は、電源ライン検出端子Vhが検出する電圧とほぼ同じ電圧を検出することになる。しかし、制御部50は駆動用半導体スイッチング素子Quhをオフに制御しているので、故障検出部30は、中間電圧検出端子Vumの電圧が電源ライン検出端子Vhの電圧とほぼ同じ電圧であることにより、駆動用半導体スイッチング素子Quhにおいて短絡故障が発生したことを検出する。
【0024】
故障検出部30が駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかで故障を検出すると、制御部50は、安全を考慮しモータMの動作を停止するためにすべての駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlをオフに制御する。また、リレーRYも開状態となることで、モータ制御装置100は、バッテリBからは電気的に切り離される。
図4は、その状態を示している。この状態では、ブリッジ回路12とモータMの間で閉回路が形成される。本図では、モータMのU相およびW相と、ブリッジ回路12の間で閉回路が形成されている状態を示している。
【0025】
この場合、閉回路は、相回路Cu内の短絡故障した駆動用半導体スイッチング素子Quh、遮断用半導体スイッチング素子Zu、モータMのU相、W相、遮断用半導体スイッチング素子Zw、相回路Cw内の駆動用半導体スイッチング素子Qwh内の寄生ダイオード、電源ラインLhを通って駆動用半導体スイッチング素子Quhに戻る閉回路である。このような閉回路においては、モータMの回転数が高い場合に電流を遮断しようとすると、流れている電流量によっては、サージ電圧が発生して半導体スイッチング素子が破壊される場合がある。また、
図5に示すように、モータMが駆動するハンドルやスライドドアなどを人により操作されて、モータMに外力Fが付加されたような場合には、さらに閉回路に流れる電流が増加する場合もある。このような場合に、電流を遮断しようとすると、さらに半導体スイッチング素子が破壊される可能性が増えてしまう。
【0026】
しかし、モータMの回転数が小さくなれば、閉回路を流れる電流も小さくなるので、半導体スイッチング素子が破壊されることはなくなる。そこで、制御部50は、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlをオフに制御し閉回路を形成した後、回転数検出部40が検出したモータMの回転数が所定の閾値(第1閾値)未満になった場合に、
図6に示すように遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwをオフに制御する。なお、所定の閾値(第1閾値)とは、その回転数未満であれば、半導体スイッチング素子が破壊されることがない事前に確認し設定された値である。そうすると、モータMの逆起電力などにより流れようとする電流はあるものの(点線)、形成していた閉回路が遮断用半導体スイッチング素子Zu/Zwにより遮断されても、かかる所定の閾値未満の回転数であれば逆起電力により生ずる電圧も高くないため、サージ電圧が発生しても半導体スイッチング素子の破壊に至ることはない。
【0027】
このように、インバータ回路10の駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかが故障した場合に、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlをオフに制御し、その後、回転数検出部40が検出したモータMの回転数が所定の第1閾値未満になった場合に遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwをオフに制御すれば、半導体スイッチング素子が破壊されることがなくなる。
【0028】
なお、本実施例では短絡故障を例に説明したが、開放故障が発生した場合であっても、制御部50は同じように制御する。モータMの回転数が高い場合にはこれにより発生する逆起電力も高く、接続されたブリッジ回路12に流れようとする電流が大きいため半導体スイッチング素子が破壊される場合があるからである。また、以上においては、U相とW相が電流経路となる場合について説明したが、W相とV相、U相とV相が電流経路となる場合も同様である。
【0029】
図7を参照し、モータ制御装置100の制御方法を説明する。なお、フローチャートにおけるSはステップを意味する。遮断回路駆動部21は、S100において、制御部50の制御信号に基づき遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwをオンに制御し、モータMの駆動を準備する。そして、インバータ駆動部11は、S102において、制御部50の制御信号に基づきブリッジ回路12の各駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlを駆動し、モータMを回転させる。
【0030】
インバータ駆動部11がブリッジ回路12を駆動し始めたら、故障検出部30は、S104において、中間電圧検出端子Vum/Vvm/Vwmなどの電圧を検出することにより、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに短絡故障が起きていないか否かを検査する。故障が起きなければ、モータ制御装置100は、所謂正常時として、S102とS104を繰り返す。
【0031】
駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに短絡故障が発生した場合、インバータ駆動部11は、S106において、制御部50の制御信号に基づきブリッジ回路12の各駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlをすべてオフに制御する。次いで、回転数検出部40は、S108において、モータMの回転数を検出し、その回転数が所定の閾値(第1閾値)未満になったか否かを検査し、その所定の閾値以上である場合はその閾値未満になるまで待ち続ける。
【0032】
回転数検出部40が検出したモータMの回転数がその所定の閾値未満となった場合、すなわち、ここで遮断用半導体スイッチング素子をオフにしてもこれらの半導体スイッチング素子を破壊しない電圧となった場合、遮断回路駆動部21は、S110において、制御部50の制御信号に基づき遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwをオフに制御し、モータMの駆動を完全に停止する。これによれば、インバータ回路10の半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかが故障した場合に、他の半導体スイッチング素子が破壊されないようにオフするモータ制御装置100を提供することができる。
【0033】
また、モータ制御装置100は、
図8に示すように、故障が発生しない正常時においてモータMの駆動を終了する場合にも、同様に制御することができる。遮断回路駆動部21は、S200において、制御部50の制御信号に基づき遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwをオンに制御し、モータMの駆動を準備する。そして、インバータ駆動部11は、S202において、制御部50の制御信号に基づきブリッジ回路12の各駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlの駆動を開始し、モータMを回転させ始める。
【0034】
インバータ駆動部11がブリッジ回路12を駆動し始めたら、故障検出部30は、S204において、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに故障が起きていないか検査するために、中間電圧検出端子Vum/Vvm/Vwmなどの電圧を検出する異常検出処理を行う。制御部50は、S206において、インバータ駆動部11の駆動をオフに制御して停止してよいか否かの検査を行う。ここで、インバータ駆動部11の駆動をオフに制御してよい場合とは、故障検出部30がS204において駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに故障が起きたことを検出した場合、または、制御部50が、イグニションがオフされるなど正常な状態でモータMの駆動を終了する場合などである。
【0035】
制御部50がS206においてインバータ駆動部11の駆動をオフに制御してよい場合ではない場合は、モータ制御装置100は、所謂正常時として、S204とS206を繰り返す。駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに故障が発生した場合、または、正常な状態でモータMの駆動を終了する場合、インバータ駆動部11は、S208において、制御部50の制御信号に基づきブリッジ回路12の各駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlをすべてオフに制御し、駆動を停止する。
【0036】
制御部50は、S210において、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに故障が発生した場合か、正常な状態でモータMの駆動を終了する場合か、いずれの理由でインバータ駆動部11の駆動をオフにすることになったのかを検査する。その理由が駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに故障が発生したことであった場合、回転数検出部40は、S212において、モータMの回転数を検出し、その回転数が所定の閾値(第1閾値)未満になるか否かを検査し、その所定の閾値以上である場合はその閾値未満になるまで待ち続ける。
【0037】
また、その理由が正常な状態でモータMの駆動を終了することであった場合、回転数検出部40は、S216において、モータMの回転数を検出し、その回転数が所定の閾値(第2閾値)未満になるか否かを検査する。そして、その所定の閾値以上である場合は、故障検出部30は、S218において、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに故障が起きていないか検査するために、中間電圧検出端子Vum/Vvm/Vwmなどの電圧を検出して、S210に戻り、再度いずれの理由でインバータ駆動部11の駆動をオフにすることになったのかを検査する。これにより、モータMの回転数が高速であっても故障が発生した場合には、早期にモータMの駆動を停止することができる。
【0038】
なお、正常な状態でモータMの駆動を終了する場合における所定の閾値(第2閾値)は、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlのいずれかに故障が発生した場合における所定の閾値(第1閾値)より大きい。これは、ブリッジ回路12が正常な状態でモータMの駆動を終了する場合は逆起電力がブリッジ回路12で吸収できる割合が多いので、比較的高い回転数の時に遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwをオフに制御しても半導体スイッチング素子が破壊されることがないからである。
【0039】
そして、故障が発生した場合なのかまたは正常な状態で終了する場合なのかのいずれかに適したモータMの回転数の閾値に基づき、その閾値未満になった場合には、遮断回路駆動部21は、S214において、制御部50の制御信号に基づき遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwをオフに制御し、モータMの駆動を完全に停止する。すなわち、制御部50は、故障検出部30が駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlの故障を検出しない場合においてモータMの駆動を終了する場合、駆動用半導体スイッチング素子Quh〜Qwlをオフに制御した後、回転数検出部40が検出したモータMの回転数が第1閾値より大きい値の第2閾値未満の場合に遮断用半導体スイッチング素子Zu〜Zwをオフに制御する。これによれば、インバータ回路10の半導体スイッチング素子Quh〜Qwlが故障しない場合にも、適切な閾値を用いることにより迅速に半導体スイッチング素子が破壊されないように半導体スイッチング素子をオフにすることができる。
【0040】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。