(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562875
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】光ディスク装置およびオフセット除去方法
(51)【国際特許分類】
G11B 7/085 20060101AFI20190808BHJP
G11B 7/09 20060101ALI20190808BHJP
G11B 7/135 20120101ALI20190808BHJP
【FI】
G11B7/085 B
G11B7/09 A
G11B7/135
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-114222(P2016-114222)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-220275(P2017-220275A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋一
【審査官】
中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−150575(JP,A)
【文献】
特開2006−313593(JP,A)
【文献】
特開2013−200921(JP,A)
【文献】
特開2005−174383(JP,A)
【文献】
特開2010−135017(JP,A)
【文献】
特開2009−059415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/085
G11B 7/09
G11B 7/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対して、光ピックアップユニットからレーザ光を発光させて情報を読み取る光ディスク装置であって、
レーザ光を発光させ前記光ピックアップユニット内部の迷光により発生するオフセット成分に対してキャンセル処理を実行し、キャンセル処理後の前記光ピックアップユニットから前記光ディスクに照射した反射光の信号を全て加算したAS信号の所定電圧が前記AS信号の基準電圧以下の場合には、前記光ディスクからの反射光の影響を受けているものと判定し、迷光オフセット成分のキャンセル処理を、再度実行する制御部とを備える光ディスク装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記光ディスクの回転周期と前記光ピックアップユニットの対物レンズを上下させる周期とが同期していないタイミングで、キャンセル処理を、再度実行する請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記所定電圧は、前記光ピックアップユニットから前記光ディスクに照射した反射光の信号を全て加算した信号である請求項1または請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスクに対して、光ピックアップユニットからレーザ光を発光させて情報を読み取る光ディスク装置におけるオフセット除去方法であって、
迷光オフセット成分を取得するステップと、
取得した迷光オフセット成分をキャンセル処理するステップと、
キャンセル処理後の前記光ピックアップユニットから前記光ディスクに照射した反射光の信号を全て加算したAS信号の所定電圧が前記AS信号の基準電圧以下か否かを判定するステップと、
前記所定電圧が前記基準電圧以下である場合に、迷光オフセット成分のキャンセル処理を、再度実行するステップと、
を備えるオフセット除去方法。
【請求項5】
前記所定電圧は、前記光ピックアップユニットから前記光ディスクに照射した反射光の信号を全て加算した信号である請求項4に記載のオフセット除去方法。
【請求項6】
前記光ディスクの回転周期と前記光ピックアップユニットの対物レンズを上下させる周期とが同期していないタイミングで、キャンセル処理を、再度実行する請求項4に記載のオフセット除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、迷光オフセット成分をキャンセルすることのできる光ディスク装置およびオフセット除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では、光ピックアップを構成する光部品による散乱や光ディスクの面振れ等によって迷光が発生する。光ピックアップに設けられるフォトディテクタから迷光成分がオフセット電圧として加算された信号が出力されると、制御信号であるトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号は不正確な信号となる。そのため、迷光によるオフセット(以下、迷光オフセットという)成分の除去が必要となる。
【0003】
そこで、例えば、表面反射による影響を避けるため、フォーカス駆動信号を出力して、光ピックアップのレーザ光の集光点が光ディスクの表面にかからない(光ディスクと合焦しない)対物レンズの位置で、迷光オフセット成分のキャンセル処理を行っている。
【0004】
しかし、光ディスクの記録面や表面と合焦しない位置まで対物レンズを下限方向に移動させても、光ディスクの面振れや光ピックアップ機構のバラツキの影響により、光ディスク表面と合焦する位置で迷光オフセット成分のキャンセル処理が行われてしまい、正常な迷光オフセット成分のキャンセルができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−174383号公報
【特許文献2】特開平10−105997号公報
【特許文献3】特開2000−339737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、光ディスクの面振れや光ピックアップ機構のバラツキがあっても、迷光オフセット成分のキャンセルを正常に行うことができる光ディスク装置およびオフセット除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の光ディスク装置は、光ディスクに対して、光ピックアップユニットからレーザ光を発光させて情報を読み取る光ディスク装置であって、レーザ光を発光させ前記光ピックアップユニット内部の迷光により発生するオフセット成分に対してキャンセル処理を実行し、キャンセル処理後の前記光ピックアップユニットから光ディスクに照射した反射光の信号を全て加算したAS信号の所定電圧が前記AS信号の基準電圧以下の場合には、前記光ディスクからの反射光の影響を受けているものと判定し、迷光オフセット成分のキャンセル処理を、再度実行する制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る光ディスク装置の全体配置を示す概略図である。
【
図2】光ディスクの表面との合焦の有無と迷光オフセット成分の取得の関係を説明する図である。
【
図3】光ディスクの表面との合焦の有無と迷光オフセット成分のキャンセル処理の関係を説明する図である。
【
図4】光ディスクの回転周期とレンズダウン周期の関係を説明する図である。
【
図5】本実施形態に係る光ディスク装置における迷光オフセット成分のキャンセル処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、本実施形態で用いる主要な用語について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る光ディスク装置の構成例を示す図である。
図1に示すように、光ディスク装置100において、光ディスク1はスピンドルモータ2、ドライバ回路3により、回転した状態にある。光ピックアップユニット4に搭載されたレーザダイオード5から発光された光はビームスプリッタ6、球面収差補正機構7を経由し、対物レンズ8により、光ディスク1上のデータ記録面に集光される。
【0011】
そして、光ディスク1に集光された光はデータ記録面で反射され、その反射光は再度対物レンズ8、球面収差補正機構7、ビームスプリッタ6を通過した後、受光素子9に入り電気信号に変換される。受光素子9から出力される電気信号は、制御部10に入力される。制御部10は入力された信号を処理し、インターフェース11を通じて外部接続機器との通信を行ったり、ドライバ回路3にフィードバックし、スピンドルモータ2や光ピックアップユニット4、光ディスク1のロード用モータ12の制御を行っている。ロード用モータ12は、例えば、DCモータが好適である。また、制御部10は後述するように、迷光オフセット成分のキャンセル処理の制御も行っている。
【0012】
本発明の実施形態に係る光ディスク装置100は、スロットローディング式のもので、ディスク1はCDディスク、DVDディスク等の光ディスクである。
【0013】
光ディスク1は、ディスク挿入口から光ディスク装置100に挿入される。いずれも詳細は図示しないが、搬送ローラ及びガイド部材等から成るディスク搬送機構によりターンテーブルの上方まで搬送される。次いで、チャッキング機構によりターンテーブル上にチャッキングされた後、スピンドルモータ2によってターンテーブルが回転され、情報の再生あるいは記録が行われる。
【0014】
以上のように構成された光ピックアップユニット4の動作について説明する。制御部10は、光ピックアップユニット4からの信号出力を基にフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号とを生成するアナログ信号処理を行い、サーボ処理を行うドライバ回路3に出力する。
【0015】
フォーカスエラー信号は、光ピックアップユニット4に備えられた対物レンズ8から出射される光ビームスポットと光ディスク1の記録面との焦点方向のずれを示す信号である。光ディスク1の情報記録層のトラック上にレーザ光の焦点が結ばれた場合に、対物レンズ8は合焦位置にあり、フォーカスエラー信号の電圧は基準電圧である。また、対物レンズ8を合焦位置から光ディスク1に対して接近させていくと、フォーカスエラー信号の電圧は徐々に減少してピークに達し、その後は増加方向に転じて合焦範囲を外れると検出外電圧となる。逆に、対物レンズ8を合焦位置から光ディスク1に対して遠ざけると、フォーカスエラー信号の電圧は徐々に増加してピークに達し、その後は減少方向に転じて合焦範囲を外れると検出外電圧となる。このように、フォーカスエラー信号がS字状に変化する特性を利用して対物レンズ8に対してフォーカス誤差が減少するようにフォーカス方向にサーボをかけている。
【0016】
トラッキングエラー信号は、光ビームスポットと光ディスク1の情報トラックの光ディスク半径方向のずれを示すである。また、制御部10は、トラッキングエラー信号の低域成分を取り出すことにより、対物レンズ8のレンズ位置信号を生成する。
【0017】
ドライバ回路3は、光ビームスポットが光ディスク1の情報トラックに追従するように対物レンズ8をフォーカス制御およびトラッキング制御し、さらにトラッキングエラー信号の低域成分を用いて対物レンズ8が略中立位置を保持するようにフィード制御を行う。制御部10は、このように構成されたドライバ回路3のサーボ系全体のコントロールを行う。
【0018】
次に、以上のように構成した光ディスク装置100の制御部10による迷光オフセット成分のキャンセル処理の制御について詳述する。
【0019】
光ピックアップユニット4を光ディスク1に近づけると、レーザ光の集光点が光ディスク1の表面を通過するときに、表面反射によるAS信号(All Sum信号)が得られ、レーザ光の集光点が光ディスク1の反射面に一致するときは、反射面での反射によるAS信号が得られる。ここで、AS信号は、光ピックアップユニット4から光ディスク1に照射した反射光の信号を全て加算した信号で、通常は、基準電圧以下とならない。
【0020】
光ピックアップユニット4を構成する光部品による散乱等によって発生する迷光によって、迷光成分がオフセットとして加算された信号となるため、迷光オフセット成分のキャンセル(除去)処理が行われる。係る迷光オフセット成分のキャンセル処理は、表面反射によるAS信号の影響を避けるため、レーザ光の焦点光が光ディスク1の表面にかからないように予め設定した電圧でフォーカス駆動信号を出力して、光ピックアップユニット4の位置を光ディスク1から遠ざけて行う。尚、遠ざけられる距離(後述するレンズダウンさせ得る距離)は、光ディスク装置100の物理的な大きさによって限度が定まることになる。
【0021】
図2は、光ディスク1の表面との合焦の有無と迷光オフセット成分の取得の関係を説明する図である。
図2(a)は、光ピックアップユニット4が光ディスク1の表面と合焦しない位置で迷光オフセット成分を取得する場合を示し、
図2(b)は、光ピックアップユニット4が光ディスク1の表面と合焦した位置で迷光オフセット成分を取得する場合を示している。
図2(b)に示す例では、迷光オフセット成分が正常に取得できないことになる。
【0022】
図3は、光ディスク1の表面との合焦の有無と迷光オフセット成分のキャンセル処理の関係を説明する図である。
図3(a)は、光ピックアップユニット4が光ディスク1の表面と合焦しない位置で迷光オフセット成分をキャンセル処理する場合を示している。
図3(a)に示すように、合焦しない位置で迷光オフセット成分をキャンセル処理すると、正常にオフセット電圧が除去されている。
【0023】
各制御信号の信号レベルが大きい場合には、オフセット成分の影響は少ないが、信号レベルが小さい場合には、オフセット成分の占める割合が大きくなるため、サーボ系が不安定になる。
【0024】
図3(b)は、光ピックアップユニット4が光ディスク1の表面と合焦した位置で迷光オフセット成分をキャンセル処理する場合を示している。
図3(b)に示すように、光ディスク1の表面と合焦した位置で迷光オフセット成分のキャンセルを行った場合には、表面から受光素子9への戻り光が多くなりオフセット電圧が高くなる。この状況で迷光オフセット成分のキャンセルを行うと、AS信号のピークレベルが小さくなり基準電圧に比べてマイナス極性となってしまう。
【0025】
しかしながら、確実に光ディスク1の表面と合焦しない位置で、正常に迷光オフセット成分のキャンセルを実施することはできない。そのため、従来であれば、サーボ系が不安定になり、例えば、光ディスク1の再生不能の状態にならないと、迷光オフセット成分のキャンセル処理が異常であったかが判然としない。
【0026】
本実施形態においては、迷光オフセット成分のキャンセル処理後のAS信号の電圧が基準電圧以下、すなわちマイナス極性となった場合には、光ディスク1の表面と合焦した状態で迷光オフセット成分のキャンセル処理を行なったと判定する。このように、迷光オフセット成分のキャンセル処理が正常に行われていない場合には、光ディスク1の回転周期とキャンセル処理のリトライが同期しないタイミングで迷光オフセット成分のキャンセル処理を再度行うものである。
【0027】
光ディスク1の回転周波数と同期しない周波数で、対物レンズ8を光ディスク1の表面から遠ざけるレンズダウンを行うことで、光ディスク1の表面と合焦しないようにするのが好適である。
【0028】
次に、光ディスク1の回転周期とレンズダウン周期の関係について説明する。
【0029】
<光ディスクの回転周期とレンズダウン周期>
図4は、光ディスク1の回転周期とレンズダウン周期の関係を説明する図である。
図4(a)は、光ディスク1の回転周期と対物レンズ8のレンズダウンの周期が同期した場合を示し、
図4(b)は、光ディスク1の回転周期と対物レンズ8のレンズダウンの周期が同期しない場合を示している。
【0030】
光ディスク1の面振れは、光ディスク1の回転に同期して変動する。
図4(a)に示すように、対物レンズ8を上下させる周期と光ディスク1の回転周期が同じ場合には、迷光オフセット成分のキャンセル処理を実行する光ディスク1の位置は同じとなる。このような状況下では、迷光オフセット成分のキャンセル処理をリトライしても、正常なオフセット値が取得できない。一方、
図4(b)に示すように、対物レンズ8を上下させる周期と光ディスク1の回転周期が同期しない場合には、迷光オフセット成分のキャンセル処理を実行する光ディスク1の位置は、前回とは異なる光ディスク1の位置で、迷光オフセット成分のキャンセル処理をリトライするので、正常なオフセット値が取得できる。ここで、迷光オフセット取得時の光ディスクの回転周期と、光ピックアップのレンズを上下させる周期とが同期しないようにずらして設定することにより、光ディスクの回転周期とレンズダウン周期が同期しないようにすることができる。
【0031】
<迷光オフセット成分のキャンセル処理のリトライ>
図5は、本実施形態に係る光ディスク装置100における迷光オフセット成分のキャンセル処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
まず、光ピックアップユニット4のレーザ照射をONとする(ステップS51)。
【0033】
次に、表面反射による影響を避けるため、レーザ光の焦光点が光ディスク1の表面に合焦点しないように、対物レンズ8を光ディスク1の表面から遠ざけるレンズダウンを行う(ステップS52)。
【0034】
次に、迷光オフセット成分のキャンセル処理を実行する(ステップS53)。例えば、光ディスク1で回折、反射された光を光検出器で検出し、その光量に応じて出力される光検出信号に基づいて、フォーカスエラー信号に重畳する迷光成分と、トラッキングエラー信号に重畳する迷光成分とを求め、フォーカスエラー信号のうちの迷光オフセット成分を除去し、トラッキングエラー信号のうちの迷光オフセット成分を除去する。
【0035】
続いて、対物レンズ8を光ディスク1の表面に近づけるレンズアップを行う(ステップS54)。
【0036】
次に、フォーカスエラー信号および光ピックアップユニット4から光ディスク1に照射した反射光の信号を全て加算したAS信号を取得する(ステップS55)。
【0037】
続いて、取得したAS信号が基準電圧以下か否かを判定する(ステップS56)。
【0038】
ステップS56でYes(AS信号が基準電圧以下)であれば、ステップS51に移行し、迷光オフセット成分のキャンセル処理をリトライする。一方、ステップS56でNo(AS信号が基準電圧以下でない)であれば、迷光オフセット成分のキャンセル処理を終了し、オフセット除去されたトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号をサーボ系において用いて、次の処理(例えば、光ディスクの再生)へ移行する。
【0039】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、光ディスクの面振れや光ピックアップ機構のバラツキがあっても、迷光オフセット成分のキャンセルを正常に行うことができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1…光ディスク
2…スピンドルモータ
3…ドライバ回路
4…光ピックアップユニット
5…レーザダイオード
6…ビームスプリッタ
7…球面収差補正機構
8…対物レンズ
9…受光素子
10…制御部
11…インターフェース
12…モータ
100…光ディスク装置