特許第6562876号(P6562876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許6562876-作業車 図000002
  • 特許6562876-作業車 図000003
  • 特許6562876-作業車 図000004
  • 特許6562876-作業車 図000005
  • 特許6562876-作業車 図000006
  • 特許6562876-作業車 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562876
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 24/02 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   B62D24/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-118208(P2016-118208)
(22)【出願日】2016年6月14日
(65)【公開番号】特開2017-222246(P2017-222246A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平山 巧
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰典
(72)【発明者】
【氏名】八木 謙一良
(72)【発明者】
【氏名】武岡 達
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−171380(JP,U)
【文献】 特開平06−108493(JP,A)
【文献】 実開昭60−127136(JP,U)
【文献】 特開2002−357238(JP,A)
【文献】 特開昭60−219174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 24/02
B62D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が搭乗するキャビンと、
前記キャビンの左側部を防振支持する左マウント装置と、
前記キャビンの右側部を防振支持する右マウント装置と、を備えており、
前記左マウント装置のバネ定数と前記右マウント装置のバネ定数とが異なっており、
機体左右方向において、水平状態であるときの前記キャビンの重心が、前記キャビンの中心に対して機体左右方向の一方側に偏倚しており、
前記左マウント装置は、
上下方向に圧縮可能な左防振ゴムと、
前記左防振ゴムを上下方向に貫通すると共に、締め込みによって前記左防振ゴムに上下方向の圧縮力を付与する左締結具と、
前記左締結具を挿通可能に前記左防振ゴムの内部に設けられていると共に、前記左防振ゴムの圧縮限界を規定する筒状の左筒部材と、を有しており、
前記右マウント装置は、
上下方向に圧縮可能な右防振ゴムと、
前記右防振ゴムを上下方向に貫通すると共に、締め込みによって前記右防振ゴムに上下方向の圧縮力を付与する右締結具と、
前記右締結具を挿通可能に前記右防振ゴムの内部に設けられていると共に、前記右防振ゴムの圧縮限界を規定する筒状の右筒部材と、を有しており、
前記左筒部材及び前記右筒部材のうち機体左右方向の他方側に位置する方の軸心方向の長さは、前記左筒部材及び前記右筒部材のうち機体左右方向の一方側に位置する方の軸心方向の長さよりも長くすることにより、前記左マウント装置及び前記右マウント装置のうち機体左右方向の他方側に位置する方のバネ定数は、前記左マウント装置及び前記右マウント装置のうち機体左右方向の一方側に位置する方のバネ定数よりも小さく構成されている作業車。
【請求項2】
前記左マウント装置は、前記キャビンの前部と前記キャビンの後部とにそれぞれ設けられており、
前記右マウント装置は、前記キャビンの前部と前記キャビンの後部とにそれぞれ設けられており、
前側の前記左マウント装置のバネ定数と後側の前記左マウント装置のバネ定数とが同じであり、
前側の前記右マウント装置のバネ定数と後側の前記右マウント装置のバネ定数とが同じである請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記キャビンの下方に、ミッションケースが備えられ、
前記ミッションケースの側部にブラケットが配置されている請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項4】
前記キャビンの下方に、クラッチハウジングとミッションケースとが機体前後方向に並ぶように備えられ、
前記クラッチハウジングの側部に前側ブラケットが配置され、前記ミッションケースの側部に後側ブラケットが配置されている請求項2に記載の作業車。
【請求項5】
前記後側ブラケットは、後側の前記左マウント装置及び後側の前記右マウント装置を介して下方から前記キャビンの後部を支持し、
後側の前記左マウント装置は、前記キャビンの左側部の後部と前記後側ブラケットとに亘って設けられており、
後側の前記右マウント装置は、前記キャビンの右側部の後部と前記後側ブラケットとに亘って設けられている請求項4に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が搭乗するキャビンと、キャビンの左側部を防振支持する左マウント装置と、キャビンの右側部を防振支持する右マウント装置と、を備えている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車として、例えば、特許文献1に記載の作業車が既に知られている。
特許文献1に記載の作業車は、運転者が搭乗するキャビンと、キャビンの左側部を防振支持する左マウント装置(文献では「防振ゴム」)と、キャビンの右側部を防振支持する右マウント装置(文献では「防振ゴム」)と、備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−143209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のような作業車では、キャビンが機体左右方向の一方側に傾かないように、機体左右方向において、キャビンの重心がキャビンの中心上に位置する状態で、キャビンが防振支持されている。しかし、上記のような作業車では、通常、左マウント装置のバネ定数と右マウント装置のバネ定数とが同じである。このため、作業車が平坦でない路(悪路)を走行中に機体が傾くことにより、機体左右方向において、キャビンの重心がキャビンの中心に対して機体左右方向の一方側に偏倚してしまうと、キャビンの左右バランスに応じてキャビンを防振支持することができない。この結果、キャビンが機体前後方向に延びる軸心周りに振動する状態(ローリング振動状態)になり易い。
【0005】
上記状況に鑑み、キャビンがローリング振動状態になり難い作業車が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
運転者が搭乗するキャビンと、
前記キャビンの左側部を防振支持する左マウント装置と、
前記キャビンの右側部を防振支持する右マウント装置と、を備えており、
前記左マウント装置のバネ定数と前記右マウント装置のバネ定数とが異なっており、
機体左右方向において、水平状態であるときの前記キャビンの重心が、前記キャビンの中心に対して機体左右方向の一方側に偏倚しており、
前記左マウント装置は、
上下方向に圧縮可能な左防振ゴムと、
前記左防振ゴムを上下方向に貫通すると共に、締め込みによって前記左防振ゴムに上下方向の圧縮力を付与する左締結具と、
前記左締結具を挿通可能に前記左防振ゴムの内部に設けられていると共に、前記左防振ゴムの圧縮限界を規定する筒状の左筒部材と、を有しており、
前記右マウント装置は、
上下方向に圧縮可能な右防振ゴムと、
前記右防振ゴムを上下方向に貫通すると共に、締め込みによって前記右防振ゴムに上下方向の圧縮力を付与する右締結具と、
前記右締結具を挿通可能に前記右防振ゴムの内部に設けられていると共に、前記右防振ゴムの圧縮限界を規定する筒状の右筒部材と、を有しており、
前記左筒部材及び前記右筒部材のうち機体左右方向の他方側に位置する方の軸心方向の長さは、前記左筒部材及び前記右筒部材のうち機体左右方向の一方側に位置する方の軸心方向の長さよりも長くすることにより、前記左マウント装置及び前記右マウント装置のうち機体左右方向の他方側に位置する方のバネ定数は、前記左マウント装置及び前記右マウント装置のうち機体左右方向の一方側に位置する方のバネ定数よりも小さく構成されていることにある。
【0007】
本特徴構成によれば、左マウント装置のバネ定数と右マウント装置のバネ定数とが異なっているため、機体左右方向において、キャビンの重心がキャビンの中心に対して機体左右方向の一方側に偏倚している場合(例えば、作業車が平坦でない路(悪路)を走行中に機体が傾くことにより、機体左右方向において、キャビンの重心がキャビンの中心に対して機体左右方向の一方側に偏倚してしまった場合)でも、キャビンの左右バランスに応じてキャビンを防振支持することができる。
【0008】
すなわち、機体左右方向において、キャビンの重心がキャビンの中心に対して機体左右方向の一方側(例えば、右側)に偏倚している場合、キャビンが右側に傾き易くなる。しかし、左マウント装置のバネ定数を、右マウント装置のバネ定数よりも小さくすることにより、左マウント装置の支持力が小さく、かつ、右マウント装置の支持力が大きくなるため、キャビンの左右バランスに応じてキャビンを防振支持することができる。この結果、キャビンがローリング振動状態になり難くなる。
【0009】
【0010】
また、本特徴構成によれば、機体左右方向において、キャビンの重心がキャビンの中心に対して機体左右方向の一方側に偏倚しているため、キャビンが機体左右方向の一方側に傾き易くなる。しかし、左マウント装置及び右マウント装置のうち機体左右方向の他方側に位置する方のバネ定数が、左マウント装置及び右マウント装置のうち機体左右方向の一方側に位置する方のバネ定数よりも小さいため、左マウント装置及び右マウント装置のうち機体左右方向の他方側に位置する方の支持力が小さく、かつ、左マウント装置及び右マウント装置のうち機体左右方向の一方側に位置する方の支持力が大きくなる。これにより、キャビンの左右バランスに応じてキャビンを防振支持することができる。この結果、キャビンがローリング振動状態になり難くなる。
【0011】
【0012】
また、本特徴構成によれば、左締結具の締め込みによって左防振ゴムが上下方向に圧縮されることにより、左防振ゴムの上下方向の長さが短くなる程、左防振ゴムのバネ定数が大きくなる。また、右締結具の締め込みによって右防振ゴムが上下方向に圧縮されることにより、右防振ゴムの上下方向の長さが短くなる程、右防振ゴムのバネ定数が大きくなる。
【0013】
ここで、左筒部材及び右筒部材のうち機体左右方向の他方側に位置する方の軸心方向の長さが、左筒部材及び右筒部材のうち機体左右方向の一方側に位置する方の軸心方向の長さよりも長い。このため、左筒部材及び右筒部材のうち機体左右方向の他方側に位置する方の軸心方向の長さが、左筒部材及び右筒部材のうち機体左右方向の一方側に位置する方の軸心方向の長さよりも長い分だけ、左防振ゴム及び右防振ゴムのうち機体左右方向の他方側に位置する方の上下方向の圧縮代が、左防振ゴム及び右防振ゴムのうち機体左右方向の一方側に位置する方の上下方向の圧縮代よりも短くなる。これにより、左防振ゴム及び右防振ゴムがそれぞれ圧縮限界まで上下方向に圧縮された状態において、左防振ゴム及び右防振ゴムのうち機体左右方向の他方側に位置する方のバネ定数が、左防振ゴム及び右防振ゴムのうち機体左右方向の一方側に位置する方のバネ定数よりも小さくなる。
【0014】
このように、左筒部材及び右筒部材のうち機体左右方向の他方側に位置する方の軸心方向の長さを、左筒部材及び右筒部材のうち機体左右方向の一方側に位置する方の軸心方向の長さよりも長くするだけで、左マウント装置及び右マウント装置のうち機体左右方向の他方側に位置する方のバネ定数を、左マウント装置及び右マウント装置のうち機体左右方向の一方側に位置する方のバネ定数よりも小さくすることができる。
【0015】
さらに、本発明において、
前記左マウント装置は、前記キャビンの前部と前記キャビンの後部とにそれぞれ設けられており、
前記右マウント装置は、前記キャビンの前部と前記キャビンの後部とにそれぞれ設けられており、
前側の前記左マウント装置のバネ定数と後側の前記左マウント装置のバネ定数とが同じであり、
前側の前記右マウント装置のバネ定数と後側の前記右マウント装置のバネ定数とが同じであると好適である。
【0016】
本特徴構成によれば、前側の左マウント装置のバネ定数と後側の左マウント装置のバネ定数とが同じであるため、前側の左マウント装置と後側の左マウント装置とを共通化することができる。また、前側の右マウント装置のバネ定数と後側の右マウント装置のバネ定数とが同じであるため、前側の右マウント装置と後側の右マウント装置とを共通化することができる。
さらに、本発明において、
前記キャビンの下方に、ミッションケースが備えられ、
前記ミッションケースの側部にブラケットが配置されていると好適である。
さらに、本発明において、
前記キャビンの下方に、クラッチハウジングとミッションケースとが機体前後方向に並ぶように備えられ、
前記クラッチハウジングの側部に前側ブラケットが配置され、前記ミッションケースの側部に後側ブラケットが配置されていると好適である。
さらに、本発明において、
前記後側ブラケットは、後側の前記左マウント装置及び後側の前記右マウント装置を介して下方から前記キャビンの後部を支持し、
後側の前記左マウント装置は、前記キャビンの左側部の後部と前記後側ブラケットとに亘って設けられており、
後側の前記右マウント装置は、前記キャビンの右側部の後部と前記後側ブラケットとに亘って設けられていると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】トラクタを示す左側面図である。
図2】本実施形態に係る防振支持構造を示す正面断面図である。
図3】従来の防振支持構造によるキャビンの振動状態を示す図である。
図4】本実施形態に係る防振支持構造によるキャビンの振動状態を示す図である。
図5】キャビンの加速度変化率とカラーの伸びとの関係を示す図である。
図6】キャビンの加速度変化率と防振ゴムのバネ定数変化率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、図1に示す矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、図2に示す矢印Lの方向を「機体左側」、矢印Rの方向を「機体右側」とする。
【0019】
〔トラクタの全体構成〕
図1には、本発明に係る「作業車」の一例としてのトラクタを示している。このトラクタは、四輪駆動方式の走行機体1を備えている。走行機体1は、駆動可能かつ操舵可能な左右一対の前輪2と、駆動可能かつ制動可能な左右一対の後輪3と、を備えている。
【0020】
走行機体1の前半部には、エンジンEが設けられている。エンジンEは、ボンネット4に収容されている。エンジンEの後部には、クラッチハウジング5が連結されている。クラッチハウジング5の後部には、ミッションケース6が連結されている。
【0021】
走行機体1の後半部には、運転者が搭乗するキャビン7が設けられている。キャビン7の内部には、運転座席8、フロントパネル9及びステアリングホイール10が設けられている。走行機体1の後端部には、ロータリ耕耘装置等の作業装置(図示省略)が、リンク機構11を介して昇降可能かつローリング可能に装着されている。
【0022】
〔キャビン〕
キャビン7の屋根部には、ルーフ部12が設けられている。ルーフ部12は、左右一対のフロントピラー14、左右一対のサイドピラー15及び左右一対のリヤピラー16に支持されている。キャビン7の床部には、フロアパネル13が設けられている。キャビン7の前面部には、フロントガラス17が設けられている。キャビン7の後面部には、リヤガラス18が設けられている。キャビン7の左右両側部には、ドア19がそれぞれ設けられている。ドア19は、上下方向に延びる軸心周りで揺動開閉可能にサイドピラー15に支持されている。
【0023】
ここで、図2に示すように、キャビン7の機体左右方向の中心をC、キャビン7の機体左右方向の重心をGとすると、機体左右方向において、キャビン7の重心Gがキャビン7の中心Cに対して右側に偏倚している。なお、キャビン7の重心Gの位置は、例示であり、キャビン7の重心Gの位置は、図2に示す位置に限定するものではない。
【0024】
〔防振支持構造〕
図1及び図2に示すように、キャビン7の左側部は、左マウント装置20Lに防振支持されている。左マウント装置20Lは、キャビン7の左側部において、キャビン7の前部とキャビン7の後部とにそれぞれ設けられている。前側の左マウント装置20Lは、キャビン7の前部(フロアパネル13)と前ブラケット21とに亘って設けられている。後側の左マウント装置20Lは、キャビン7の後部と後ブラケット22とに亘って設けられている。
【0025】
キャビン7の右側部は、右マウント装置20Rに防振支持されている。右マウント装置20Rは、キャビン7の右側部において、キャビン7の前部とキャビン7の後部とにそれぞれ設けられている。前側の右マウント装置20Rは、キャビン7の前部(フロアパネル13)と前ブラケット21とに亘って設けられている。後側の右マウント装置20Rは、キャビン7の後部と後ブラケット22とに亘って設けられている。
【0026】
なお、前側の左マウント装置20Lと後側の左マウント装置20Lとは、同じ構成であるため、以下では、前側の左マウント装置20Lについて詳細に説明する。また、前側の右マウント装置20Rと後側の右マウント装置20Rとは、同じ構成であるため、以下では、前側の右マウント装置20Rについて詳細に説明する。
【0027】
図2に示すように、左マウント装置20Lは、防振ゴム23(本発明に係る「左防振ゴム」に相当)と、ボルト24(本発明に係る「左締結具」に相当)と、左カラー25L(本発明に係る「左筒部材」に相当)と、上下一対の皿26と、を備えている。右マウント装置20Rは、防振ゴム23(本発明に係る「右防振ゴム」に相当)と、ボルト24(本発明に係る「右締結具」に相当)と、右カラー25R(本発明に係る「右筒部材」に相当)と、上下一対の皿26と、を備えている。左マウント装置20Lにおける防振ゴム23、ボルト24及び皿26と、右マウント装置20Rにおける防振ゴム23、ボルト24及び皿26とは、それぞれ同じ構成である。
【0028】
防振ゴム23は、上下方向に圧縮可能に構成されている。防振ゴム23は、上下一対の皿26によって上下両側から挟まれている。防振ゴム23の外周部のうち上中央部分には、周方向に沿う溝状の嵌込部23aが形成されている。前ブラケット21には、嵌込部23aが嵌め込まれる嵌込孔21aが形成されている。後ブラケット22にも、嵌込部23aが嵌め込まれる嵌込孔(図示省略)が形成されている。防振ゴム23のうち嵌込部23aよりも上側の部分は、上側ほど外径が小さくなる形状に形成されている。防振ゴム23のうち嵌込部23aよりも下側の部分は、下側ほど外径が小さくなる形状に形成されている。
【0029】
左カラー25Lは、筒状(例えば、円筒状)であり、ボルト24を挿通可能に左側の防振ゴム23の内部に設けられていると共に、左側の防振ゴム23の圧縮限界を規定している。右カラー25Rは、筒状(例えば、円筒状)であり、ボルト24を挿通可能に右側の防振ゴム23の内部に設けられていると共に、右側の防振ゴム23の圧縮限界を規定している。
【0030】
ここで、左カラー25Lの軸心方向の長さをL1、右カラー25Rの軸心方向の長さをL2とすると、左カラー25Lの軸心方向の長さL1は、右カラー25Rの軸心方向の長さL2よりも長い。すなわち、左カラー25Lの上端と右カラー25Rの上端とは、同じ高さに位置し、かつ、左カラー25Lの下端は、右カラー25Rの下端よりも下側に位置している。
【0031】
なお、図2には、防振ゴム23が圧縮限界まで上下方向に圧縮された状態を示しているが、防振ゴム23が上下方向に圧縮される前の状態(初期状態)において、左側の防振ゴム23の上下方向の長さは、左カラー25Lの軸心方向の長さL1よりも長いと共に、右側の防振ゴム23の上下方向の長さは、右カラー25Rの軸心方向の長さL2よりも長い。
【0032】
ボルト24は、防振ゴム23及び上下一対の皿26を上下方向に貫通すると共に、締め込みによって防振ゴム23に上下方向の圧縮力を付与する。左側のボルト24は、左カラー25Lに下方から挿通されている。右側のボルト24は、右カラー25Rに下方から挿通されている。ボルト24のうちキャビン7の床部(フロアパネル13)から上方に突出する部分には、ナット27が取り付けられている。
【0033】
ボルト24を締め込むことにより、上下一対の皿26が接近するのに従って、防振ゴム23に上下方向の圧縮力が付与される。そして、ボルト24の締め込みによって防振ゴム23が上手方向に圧縮されることにより、防振ゴム23の上下方向の長さが短くなる程、防振ゴム23のバネ定数が大きくなる。ここで、「バネ定数」は、防振ゴム23に荷重を加えた時の当該荷重を変位量で除した値(=荷重/変位量)である。
【0034】
そして、左マウント装置20Lにおいて、上下一対の皿26が左カラー25Lの上下両端部にそれぞれ接触すると、左側の防振ゴム23が上下方向に圧縮されなくなる、すなわち、左側の防振ゴム23が圧縮限界まで上下方向に圧縮された状態となる。この状態では、左側の防振ゴム23の上下方向の長さが、左カラー25Lの軸心方向の長さL1となっている。
【0035】
また、右マウント装置20Rにおいて、上下一対の皿26が右カラー25Rの上下両端部にそれぞれ接触すると、右側の防振ゴム23が上下方向に圧縮されなくなる、すなわち、右側の防振ゴム23が圧縮限界まで上下方向に圧縮された状態となる。この状態では、右側の防振ゴム23の上下方向の長さが、右カラー25Rの軸心方向の長さL2となっている。
【0036】
このように、左カラー25Lの軸心方向の長さL1が右カラー25Rの軸心方向の長さL2よりも長い分、すなわち、左カラー25Lの軸心方向の長さL1と右カラー25Rの軸心方向の長さL2との差ΔLだけ、左側の防振ゴム23の上下方向の圧縮代が、右側の防振ゴム23の上下方向の圧縮代よりも短くなる。これにより、左側の防振ゴム23及び右側の防振ゴム23がそれぞれ圧縮限界まで上下方向に圧縮された状態において、左側の防振ゴム23のバネ定数が、右側の防振ゴム23のバネ定数よりも小さくなる。
【0037】
なお、上述のように、前側の左マウント装置20Lと後側の左マウント装置20Lとは、同じ構成であるため、当然のことながら、前側の左マウント装置20Lにおける防振ゴム23のバネ定数と後側の左マウント装置20Lにおける防振ゴム23のバネ定数とは、同じである。また、上述のように、前側の右マウント装置20Rと後側の右マウント装置20Rとは、同じ構成であるため、当然のことながら、前側の右マウント装置20Rにおける防振ゴム23のバネ定数と後側の右マウント装置20Rにおける防振ゴム23のバネ定数とは、同じである。
【0038】
本実施形態によれば、左側の防振ゴム23のバネ定数が右側の防振ゴム23のバネ定数よりも小さいため、キャビン7の重心Gがキャビン7の中心Cに対して右側に偏倚している場合(例えば、トラクタが平坦でない路(悪路)を走行中に、機体の左右の傾きに伴って、キャビン7の重心Gがキャビン7の中心Cに対して右側に偏倚してしまった場合)でも、キャビン7の左右バランスに応じてキャビン7を防振支持することができる。
【0039】
すなわち、機体左右方向において、キャビン7の重心Gがキャビン7の中心Cに対して右側に偏倚しているため、キャビン7が右側に傾き易くなる。しかし、左側の防振ゴム23のバネ定数が、右側の防振ゴム23のバネ定数よりも小さいため、左マウント装置20Lの支持力が小さく、かつ、右マウント装置20Rの支持力が大きくなる。これにより、キャビン7の左右バランスに応じてキャビン7を防振支持することができる。この結果、キャビン7がローリング振動状態になり難くなる。
【0040】
図3には、従来の防振支持構造によるキャビンの振動状態を示している。図4には、本実施形態に係る防振支持構造によるキャビンの振動状態を示している。
【0041】
ここで、従来の防振支持構造について簡単に説明する。従来の防振支持構造は、キャビンの左側部を防振支持する左マウント装置と、キャビンの右側部を防振支持する右マウント装置と、を備えている。左マウント装置のバネ定数と右マウント装置のバネ定数とは、同じである。左マウント装置は、キャビンの前部とキャビンの後部とにそれぞれ設けられている。右マウント装置は、キャビンの前部とキャビンの後部とにそれぞれ設けられている。
【0042】
図3及び図4において、縦軸は、キャビンの加速度を示している。縦軸において、+側は、加速度の方向が上方向であることを示し、−側は、加速度の方向が下方向であることを示している。また、図3及び図4において、ALFは、キャビンの左側部における前部の加速度を示し、ARFは、キャビンの右側部における前部の加速度を示し、ALBは、キャビンの左側部における後部の加速度を示し、ARBは、キャビンの右側部における後部の加速度を示している。
【0043】
従来の防振支持構造では、図3に示すように、加速度ALFの方向は、下方向(−側)であり、加速度ARFの方向は、上方向(+側)であり、加速度ALBの方向は、下方向(−側)であり、加速度ARBの方向は、上方向(+側)である。このように、従来の防振支持構造では、キャビンの左側部における前部の加速度ALFの方向とキャビンの右側部における前部の加速度ARFの方向とが異なっており、かつ、キャビンの左側部における後部の加速度ALBの方向とキャビンの右側部における後部の加速度ARBの方向とが異なっている。すなわち、従来の防振支持構造では、キャビンが機体前後方向に延びる軸心周りに振動する状態(ローリング振動状態)になっている。
【0044】
これに対して、本実施形態に係る防振支持構造では、図4に示すように、加速度ALFの方向は、上方向(+側)であり、加速度ARFの方向は、上方向(+側)であり、加速度ALBの方向は、下方向(−側)であり、加速度ARBの方向は、下方向(−側)である。このように、本実施形態に係る防振支持構造では、キャビンの左側部における前部の加速度ALFの方向とキャビンの右側部における前部の加速度ARFの方向が同じであり、かつ、キャビンの左側部における後部の加速度ALBの方向とキャビンの右側部における後部の加速度ARBの方向とが同じである。すなわち、本実施形態に係る防振支持構造では、ローリング振動状態になっていない。
【0045】
なお、本実施形態に係る防振支持構造では、キャビンの左側部における前部の加速度ALFの方向とキャビンの左側部における後部の加速度ALBの方向とが異なっており、かつ、キャビンの右側部における前部の加速度ARFの方向とキャビンの右側部における後部の加速度ARBの方向とが異なっている。すなわち、本実施形態に係る防振支持構造では、キャビンが機体左右方向に延びる軸心周りに振動する状態(ピッチング振動状態)になっている。
【0046】
図5には、キャビンの加速度変化率とカラーの伸びとの関係を示している。図5において、縦軸は、キャビンの加速度変化率を示し、横軸は、カラーの伸びを示している。
【0047】
ここで、「カラーの伸び」は、カラーが基準カラーに対してどの程度長いかを示すものである。横軸において、+側は、カラーが基準カラーよりも長いことを示し、−側は、カラーが基準カラーよりも短いことを示している。
【0048】
また、「キャビンの加速度変化率」は、基準加速度に対するキャビンの加速度の変化率を示すものである。具体的には、「キャビンの加速度変化率」は、キャビンの加速度を基準加速度で除した値(=キャビンの加速度/基準加速度)である。
【0049】
図6には、キャビンの加速度変化率と防振ゴムのバネ定数変化率との関係を示している。図6において、縦軸は、キャビンの加速度変化率を示し、横軸は、防振ゴムのバネ定数変化率を示している。ここで、「防振ゴムのバネ定数変化率」は、基準バネ定数に対する防振ゴムのバネ定数の変化率を示すものである。具体的には、「防振ゴムのバネ定数変化率」は、防振ゴムのバネ定数を基準バネ定数で除した値(=防振ゴムのバネ定数/基準バネ定数)である。
【0050】
次に、図5及び図6を用いて、左側の防振ゴム23のバネ定数が右側の防振ゴム23のバネ定数よりも小さいことについて検証する。ここで、左カラー25Lが右カラー25R(基準カラー)に対してどの程度長いか、すなわち、左カラー25Lの伸びは、左カラー25Lの軸心方向の長さL1と右カラー25Rの軸心方向の長さL2との差ΔLである。
【0051】
図5において、左カラー25Lの伸びがΔLである場合、キャビンの加速度変化率が0.85となる。図6において、キャビンの加速度変化率が0.85である場合、左側の防振ゴム23のバネ定数変化率が0.9となる。以上より、左カラー25Lの伸びがΔLである場合、左側の防振ゴムのバネ定数変化率が0.9となる。すなわち、左側の防振ゴム23のバネ定数は、右側の防振ゴム23のバネ定数よりも10パーセント小さい。
【0052】
〔別実施形態〕(1)上記実施形態では、左カラー25Lの軸心方向の長さL1を右カラー25Rの軸心方向の長さL2よりも長くすることにより、左側の防振ゴム23のバネ定数を右側の防振ゴム23のバネ定数よりも小さくしている。しかし、これに代えて、左側の防振ゴム23の材質と右側の防振ゴム23の材質とを異ならせることにより、左側の防振ゴム23のバネ定数を右側の防振ゴム23のバネ定数よりも小さくしてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、機体左右方向において、キャビン7の重心Gがキャビン7の中心Cに対して右側に偏倚している。しかし、これに代えて、機体左右方向において、キャビン7の重心Gがキャビン7の中心Cに対して左側に偏倚していてもよい。この場合、右側の防振ゴム23のバネ定数を左側の防振ゴム23のバネ定数よりも小さくすることになる。また、機体左右方向において、キャビン7の重心Gがキャビン7の中心C上に位置していてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、左カラー25L及び右カラー25Rは、円筒状である。しかし、これに代えて、左カラー25L及び右カラー25Rは、他の筒状(例えば、角筒状)であってもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、前側の左マウント装置20L(防振ゴム23)のバネ定数と後側の左マウント装置20L(防振ゴム23)のバネ定数とが同じであり、前側の右マウント装置20R(防振ゴム23)のバネ定数と後側の右マウント装置20R(防振ゴム23)のバネ定数とが同じである。しかし、これに代えて、前側の左マウント装置20L(防振ゴム23)のバネ定数と後側の左マウント装置20L(防振ゴム23)のバネ定数とが異なっており、前側の右マウント装置20R(防振ゴム23)のバネ定数と後側の右マウント装置20R(防振ゴム23)のバネ定数とが異なっていてもよい。
【0056】
これにより、機体前後方向において、キャビン7の重心がキャビン7の中心に対して機体前後方向の一方側に偏倚している場合(例えば、作業車が平坦でない路(悪路)を走行中に機体が前後に傾くことにより、機体前後方向において、キャビン7の重心がキャビン7の中心に対して機体前後方向の一方側に偏倚してしまった場合)でも、キャビン7の前後バランスに応じてキャビン7を防振支持することができる。
【0057】
すなわち、機体前後方向において、キャビン7の重心がキャビン7の中心に対して機体前後方向の一方側(例えば、後側)に偏倚している場合、キャビンが後側に傾き易くなる。しかし、前側の左マウント装置20L(防振ゴム23)のバネ定数を、後側の左マウント装置20L(防振ゴム23)のバネ定数よりも小さくすると共に、前側の右マウント装置20R(防振ゴム23)のバネ定数を、後側の右マウント装置20R(防振ゴム23)のバネ定数よりも小さくすることにより、前側の左マウント装置20Lの支持力が小さく、かつ、後側の左マウント装置20Lの支持力が大きくなると共に、前側の右マウント装置20Rの支持力が小さく、かつ、後側の右マウント装置20Rの支持力が大きくなるため、キャビン7の前後バランスに応じてキャビン7を防振支持することができる。この結果、キャビン7がピッチング振動状態になり難くなる。
【0058】
(5)上記実施形態では、本発明に係る「作業車」がトラクタである。しかし、これに代えて、本発明に係る「作業車」がコンバイン又は建設作業車であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、運転者が搭乗するキャビンと、キャビンの左側部を防振支持する左マウント装置と、キャビンの右側部を防振支持する右マウント装置と、を備えている作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
7 キャビン
20L 左マウント装置
20R 右マウント装置
23 防振ゴム(左防振ゴム、右防振ゴム)
24 ボルト(左締結具、右締結具)
25L 左カラー(左筒部材)
25R 右カラー(右筒部材)
C 中心
G 重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6