(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記可動電極部と複数の前記固定電極部が前記第1方向に交互に並び、前記固定電極部の前記第1方向の両側に前記ストッパが配置されている請求項1または2に記載の角速度取得装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0008】
図1は、実施形態の角速度取得装置のMEMS部10の模式平面図である。
【0009】
図1に示すMEMS部10の要素は、基板上に設けられた膜をパターニングして得られる。基板は例えばシリコン基板であり、MEMS部10の要素を構成する膜は例えばシリコン膜である。
【0010】
MEMS部10は、可動体11と、ドライブ電極20と、センス電極50と、ホールド電極40と、ストッパ30とを有する。
【0011】
可動体11は、Y方向およびX方向に振動することができる。X方向はY方向に対して直交している。可動体11は、主マス部12と、ドライブ・ホールド用の電極17と、センス用の電極13とを有する。主マス部12、電極13、および電極17は、一体に設けられている。
【0012】
一対のドライブ・ホールド用の電極17がY方向に離間して配置され、主マス部12は一対の電極17の間に配置されている。電極17のX方向の側方にアンカー部18とばね部19が配置され、ばね部19はアンカー部18と電極17を連結している。
【0013】
電極17は、X方向に延びる複数のホールド用の可動電極部15と、Y方向に延びる複数のドライブ用の可動電極部14とを有する。複数のホールド用の可動電極部15は、互いに離間してY方向に並んでいる。複数のドライブ用の可動電極部14は、互いに離間してX方向に並んでいる。
【0014】
電極17は、Y方向に延びる支持部16をさらに有する。支持部16のY方向の両端は、複数の可動電極部15のうちのY方向の最も外側に位置する一対の可動電極部15aに固定されている。最も外側の可動電極部15aの内側に配置された複数の可動電極部15bの一端は支持部16に固定され、それら内側の可動電極部15bは支持部16に対して片持ち支持されている。
【0015】
ドライブ用の可動電極部14の近くに、Y方向に延びる複数のドライブ電極20が配置されている。複数のドライブ電極20は、互いに離間してX方向に並んでいる。Y方向に延びるドライブ電極20の一部は、X方向で隣接する可動電極部14の間に位置している。複数の可動電極部14と複数のドライブ電極20が櫛歯パターンで配置されている。複数のドライブ電極20は、パッド部22に接続している。
【0016】
ドライブ電極20にはパッド部22を通じて、可動体11をY方向に強制的に振動させるためのドライブ電圧が与えられる。ドライブ電極20に与えられるドライブ電圧は、例えばAC(alternating current)電圧である。
【0017】
主マス部12のX方向の側方に、Y方向に延びる複数のセンス用の電極13が配置されている。複数の電極13は、互いに離間してX方向に並んでいる。
【0018】
センス用の電極13の近くに、Y方向に延びる複数のセンス電極50が配置されている。1本のセンス電極50は、可動体11のX方向で隣接する電極13間に配置されている。電極13とセンス電極50がX方向に交互に並んでいる。電極13とセンス電極50は、ギャップを隔てて対向している。複数のセンス電極50は、パッド51に接続している。
【0019】
可動体11のドライブ・ホールド用の電極17の内側に、ホールド電極40が配置されている。ホールド電極40は、複数のパッド部42と、X方向に延びる複数の固定電極部41とを有する。複数の固定電極部41は、互いに離間してY方向に並んでいる。複数の固定電極部41はパッド部42に接続している。
【0020】
X方向に延びる可動電極部15と、X方向に延びる固定電極部41とが、Y方向に交互に並んでいる。可動電極部15と固定電極部41とが、ギャップを隔てて対向している。
【0021】
X方向に延びる1本の固定電極部41は、Y方向の一方の側(
図1において下側)で可動電極部15に対向する第1対向面41aと、Y方向の他方の側(
図1において上側)で可動電極部15に対向する第2対向面41bとを有する。
【0022】
可動電極部15と固定電極部41との間に、複数のストッパ30が配置されている。複数のストッパ30は、固定電極部41が延びるX方向に沿って、互いに離間して配置されている。
【0023】
図2は、
図1におけるA部の拡大模式平面図である。
【0024】
X方向に延びる固定電極部41の一端はパッド部42に接続されている。固定電極部41は、パッド部42に接続された一端から、可動体11の電極17の支持部16に向かって延びている。固定電極部41の他端(
図2において左端)は支持部16に対して離間し、固定電極部41はパッド部42に対して片持ち支持されている。
【0025】
固定電極部41のX方向の両端に一対のストッパ30が配置されている。固定電極部41の両端に配置されたストッパ30は、固定電極部41の第1対向面41a側で可動電極部15に対向する端部30aをもつ。
【0026】
第1対向面41a側で可動電極部15に対向するストッパ30の端部30aは、固定電極部41の第1対向面41aよりも、可動電極部15側に突き出て、可動電極部15に近い側に位置する。固定電極部41の第1対向面41aと、その第1対向面41a側に配置されたストッパ30の端部30aとの間の距離dは、例えば0.3μm〜0.5μmである。
【0027】
固定電極部41の第2対向面41b側にもストッパ30が配置されている。第2対向面41b側に配置されたストッパ30のX方向の位置は、固定電極部41の両端に配置されたストッパ30の間にある。
【0028】
第2対向面41b側に配置されたストッパ30は、その第2対向面41b側で可動電極部15に対向する端部30aをもつ。第2対向面41b側で可動電極部15に対向するストッパ30の端部30aは、固定電極部41の第2対向面41bよりも、可動電極部15側に突き出て、可動電極部15に近い側に位置する。
【0029】
固定電極部41の第1対向面41aおよび第2対向面41bには、
図2に示す平面視で凹状の領域が形成され、その凹状の領域にストッパ30が配置されている。ストッパ30と固定電極部41との間にはギャップが形成され、ストッパ30と固定電極部41は接していない。
【0030】
可動体11はY方向に振動することができる。ストッパ30は、可動体11のY方向の移動を
図3に示す所定位置(ホールド位置)で規制する。ストッパ30に可動体11の可動電極部15が接触することで、可動体11の
図1〜3における上方への移動が規制される。
【0031】
固定電極部41を含むホールド電極40には、可動体11の電極17を
図3に示すホールド位置にホールドするためのホールド電圧が与えられる。ホールド電圧は、例えばDC(direct current)電圧である。
【0032】
図3に示すように、固定電極部41の第1対向面41a側に配置されたストッパ30の端部30aに可動電極部15が接触したときに、固定電極部41にホールド電圧が与えられ、固定電極部41と可動電極部15との間に静電引力が生じる。
【0033】
可動体11の電極17が
図3に示すホールド位置にあるとき、可動電極部15はストッパ30に接触し、固定電極部41の第1対向面41aと可動電極部15との間にはギャップg1が存在する。固定電極部41の第2対向面41bと可動電極部15との間にはギャップg2が存在する。
【0034】
ギャップg1を隔てて対向する固定電極部41の第1対向面41aと可動電極部15との間の距離は、ギャップg2を隔てて対向する固定電極部41の第2対向面41bと可動電極部15との間の距離よりも小さい。したがって、固定電極部41の第1対向面41aと可動電極部15との間に働く静電引力は、固定電極部41の第2対向面41bと可動電極部15との間に働く静電引力よりも大きい。そのため、可動電極部15が固定電極部41の第1対向面41a側に引き寄せられた
図3に示すホールド状態が保持される。
【0035】
図1に示すセンス電極50と、このセンス電極50に対向する可動体11の電極13とは、可変キャパシタを構成する。この可変キャパシタのキャパシタンスの変化をパッド部51を通じて検出することができる。このキャパシタンスの変化から可動体11の角速度を検出することができる。
【0036】
可動体11がY方向に振動しているときに、X方向およびY方向に対して垂直な軸のまわりに回転運動をしていると、コリオリ力によって可動体11がY方向に対して垂直なX方向に振動する。一般に、角速度は、可動体11に働くコリオリ力に基づく可動体11のX方向の振動の振幅に比例する。
【0037】
したがって、可動体11のX方向の振動の振幅から、可動体11の回転運動に基づく角速度を算出することが可能である。実施形態によれば、Y方向に振動している可動体11がコリオリ力によってX方向に振動すると、センス電極50と可動体11の電極13との間の距離が変化し、センス電極50および電極13を対向電極にもつ可変キャパシタのキャパシタンスが変化する。このキャパシタンスの変化を検出することで、可動体11のX方向の振動の振幅を求めることができ、可動体の角速度を算出することができる。
【0038】
図4は、実施形態の角速度取得装置の構成を示すブロック図である。
【0039】
実施形態の角速度取得装置は、
図1に示すMEMS部10に加えて、ドライブ回路60と、電圧印加回路70と、検出部80と、角速度算出部90とを有する。
【0040】
MEMS部10、ドライブ回路60、電圧印加回路70、検出部80、および角速度算出部90は、同じ半導体基板上に形成され、1チップ化されている。または、MEMS部10と、回路系要素とは別々のチップに形成され、それらチップがインターポーザ(配線基板)に実装され、1つのパッケージ部品を構成している。
【0041】
ドライブ回路60は、ドライブ電極20にドライブ電圧(AC電圧)を与える。ドライブ電極20は、
図1に示すパッド部22およびパッド部22にボンディングされた配線(図示せず)を通じて、ドライブ回路60と電気的に接続されている。
【0042】
電圧印加回路70は、ホールド電極40にホールド電圧(DC電圧)を与える。ホールド電極40の固定電極部41は、
図1に示すパッド部42およびパッド部42にボンディングされた配線(図示せず)を通じて、電圧印加回路70と電気的に接続されている。
【0043】
検出部80は、
図1に示すパッド部51およびパッド部にボンディングされた配線(図示せず)を通じて、センス電極50と電気的に接続されている。
【0044】
検出部80は、Y方向に振動している可動体11に働くコリオリ力に基づく可動体11のX方向の振動の振幅に依存する所定物理量を検出する。所定物理量は、例えば、可動体11の電極13とセンス電極50との間のキャパシタンスに基づく物理量である。
【0045】
すでに述べたように、コリオリ力によって可動体11がX方向に振動すると、センス電極50と可動体11の電極13とで構成される可変キャパシタのキャパシタンスが変化する。このキャパシタンスの変化を検出することで、可動体11のX方向の振動の振幅を求めることができる。具体的には、検出部80は、可変キャパシタのキャパシタンスに基づくセンス電極50と電極13との間の電位差を検出している。この電位差から、可動体11のX方向の振動の振幅を実質的に求めることができる。
【0046】
角速度算出部90は、検出部80で検出された上記所定物理量に基づいて可動体11の角速度を算出する。すでに述べたように、角速度はコリオリ力に基づく可動体11のX方向の振動の振幅に比例するため、検出部80での検出結果に基づいて可動体11の角速度を算出することができる。
【0047】
次に、
図5に示すタイミングチャートを参照して、実施形態の角速度取得装置の動作を説明する。
図5において、縦軸は可動体11のY方向の振幅を、横軸は時間軸を表す。
【0048】
実施形態の角速度取得装置が起動されると、可動体11は初期状態から動作を開始する。初期状態で、可動体11は、
図3に示すホールド位置にホールドされておらず、Y方向の自由振動の中心位置に静止している。
【0049】
そして、ドライブ回路60からドライブ電極20にドライブ電圧を印加し、可動体11をY方向に強制振動させる。
図5において時刻t0から可動体11の強制振動が開始される。ドライブ回路60からドライブ電極20にドライブ電圧が与えられるのは、通常は上述した角速度取得装置の起動時のみである。
【0050】
可動体11のY方向の振動の振幅が一定レベルに達した後、時刻t1で強制振動を停止させる。例えば、可動体11のY方向の振動の振幅がピークに達したときに、ドライブ電極20へのドライブ電圧の印加を停止するとともに、電圧印加回路70からホールド電極40へのホールド電圧の印加を開始する。
【0051】
ホールド電極40の固定電極部41と、可動体11の可動電極部15との間に静電引力が発生し、可動電極部15が固定電極部41の第1対向面41a側に引き寄せられる。
図3に示すように、第1対向面41a側に配置されたストッパ30に可動電極部15が接触し、可動体11の電極17が
図3に示すホールド位置にホールドされる。上述した時刻t0から時刻t1までの期間を初期設定期間P0と呼ぶ。
【0052】
初期設定期間P0が終了すると、センシング期間が開始される。センシング期間では、可動体11は、Y方向に間欠的に振動する。
図5の例では、時刻t1から時刻t2までの期間P1、および時刻t3から時刻t4までの期間P3では、可動体11は上述したホールド位置にホールドされており、可動体11のY方向の振動は停止している。このY方向の振動が停止している期間P1、P3をホールド期間と呼ぶ。
【0053】
時刻t2から時刻t3までの期間P2、および時刻t4から時刻t5までの期間P4では、可動体11はY方向に振動している。この可動体11がY方向に振動している期間P2、P4を振動期間と呼ぶ。時刻t5以降においても同様に、ホールド期間と振動期間とが一定周期で交互に繰り返される。
【0054】
ホールド期間から振動期間へ移行させる際には、ホールド電極40へのホールド電圧の印加を停止する。可動体11は、ホールド位置からY方向への自由振動を開始する。すなわち、振動期間では、ドライブ回路60からドライブ電極20にドライブ電圧は供給されず、可動体11はY方向に自由振動する。
【0055】
可動体11がY方向に自由振動を開始してから所定時間が経過し、可動体11のY方向の振動がピークに達したタイミングで、電圧印加回路70からホールド電極40にホールド電圧が印加される。上述した初期設定期間P0の終了時点(時刻t1)での動作と同様に、ホールド電極40に与えられるホールド電圧によって固定電極部41と可動電極部15との間に静電引力が生じ、可動電極部15が固定電極部41に引き寄せられ、可動体11はストッパ30によって
図3に示すホールド位置で停止する。
【0056】
可動体11がY方向に自由振動している振動期間において、可動体11が回転運動をしていると、コリオリ力によって可動体11がX方向に振動する。すでに述べたように、コリオリ力によって可動体11がX方向に振動すると、センス電極50と、可動体11の電極13とで構成される可変キャパシタのキャパシタンスが変化する。このキャパシタンスの変化を検出することで、可動体11のX方向の振動の振幅を求めることができ、可動体11の角速度を算出することができる。
【0057】
実施形態によれば、ストッパ30とホールド電極40により、可動体11を所定の位置にホールドすることができる。そして、ホールドされた状態から可動体11を解放し自由振動させ、可動体11が自由振動をしている期間内に角速度を検出する。可動体11のホールド動作および可動体11の自由振動で消費される電力は、ドライブ電極20による可動体11の強制振動で消費される電力に比べて非常に小さい。実施形態によれば、低消費電力の角速度取得装置を提供することができる。
【0058】
ストッパ30は、ホールド電極40の固定電極部41と、可動体11の可動電極部15との接触および短絡を防ぐ。ストッパ30の電位はフローティングである。
【0059】
ストッパ30は、X方向に延びる固定電極部41の両端に配置されている。そのため、
図3に示すホールド状態において、可動体11の支持部16に片持ち支持された可動電極部15bのX方向の両端部がストッパ30に接触する。
【0060】
片持ち支持された可動電極部15bは固定電極部41との間に働く静電引力によって、その両端を固定電極部41に近づけるように、たわむことがあり得る。固定電極部41と可動電極部15bとが対向する領域のX方向の両端に配置されたストッパ30は、たわみを持った可動電極部15bの両端が、固定電極部41に接触するのを確実に阻止する。
【0061】
固定電極部41の第2対向面41b側に配置されたストッパ30は、固定電極部41と可動電極部15との間に静電引力が働いていないときのそれら両者の接触を防ぐ。例えば
図1および
図2に示す初期位置にある可動体11に対して下方へ移動させる力が加わったときに、第2対向面41bに対向する可動電極部15が、第2対向面41b側に配置されたストッパ30に接触して、可動電極部15と固定電極部41との接触が阻止される。
【0062】
図6(a)〜
図6(c)は、実施形態のMEMS部10の製造方法を示す模式断面図である。
図6(a)〜
図6(c)に示す断面は、
図2におけるA−A’部分の断面に対応する。
【0063】
図6(a)に示すように、基板100上に絶縁膜110が形成され、その絶縁膜110上にMEMS部10を構成する膜120が形成される。例えば、基板100はシリコン基板、絶縁膜110はシリコン酸化膜、膜120はシリコン膜である。
【0064】
膜120は、
図1に示す形状にパターニングされる。シリコン膜である膜120が、例えば、フッ素を含むガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法によりエッチングされる。
図6(b)に示すように、膜120に、絶縁膜110に達するトレンチTが形成される。
【0065】
そのトレンチTに露出する絶縁膜(シリコン酸化膜)110は、例えばフッ酸蒸気を用いてエッチングされる。このエッチングは等方的に進行し、
図6(c)に示すように、可動体11の可動電極部15の下の絶縁膜110が除去される。
【0066】
可動体11の他の部分の下の絶縁膜110も除去される。可動体11、および
図1に示すバネ部19は、基板100から浮いた状態になる。
図1における可動体11およびバネ部19以外の要素は、絶縁膜110を介して基板100上に支持されている。可動体11は、バネ部19を介してアンカー部18に支持されている。
【0067】
膜120は、膜120の上に形成されたマスクを用いてエッチングされる。そのマスクは、
図1に示す形状にパターニングされている。
【0068】
図7は、マスクの一部分30mask、41maskの模式平面図である。
【0069】
膜120は、RIE法により縦方向(膜厚方向)にエッチングされる。そのとき、膜120に対してサイドエッチング(横方向へのオーバーエッチング)も進み、
図7において破線で示すように、膜120の平面サイズがマスク30mask、41maskの平面サイズよりも小さくなる場合がある。膜120のトレンチTに露出する側面がマスク30mask、41maskのエッジよりも内側に後退する。
【0070】
膜120のサイドエッチングのレートは、トレンチTの幅、疎密に依存する傾向がある。ストッパ30と固定電極部41が離れた位置に配置された場合において、それらの配置領域の疎密などに起因してストッパ30と固定電極部41との間でサイドエッチングのレートに大きな差が生じると、可動電極部15とストッパ30の端部30aとの間の距離と、可動電極部15と固定電極部41の第1対向面41aとの間の距離との間の適切な関係を実現できなくなる場合がある。すなわち、可動電極部15がストッパ30に接触する前に、固定電極部41に接触し、可動電極部15と固定電極部41が短絡してしまう可能性がある。
【0071】
実施形態によれば、ストッパ30において可動電極部15に接触する端部30aは、固定電極部41の第1対向面41aに対して略同一辺上で近接して配置されている。そのため、膜120のRIEのとき、ストッパ30の端部30aがマスク30maskのエッジから後退する量と、固定電極部41の第1対向面41aがマスク41maskのエッジから後退する量との間の差を小さくできる。
【0072】
したがって、マスク30mask、41mask上での第1対向面とストッパの端部との間の距離d1と、エッチング後の固定電極部41の第1対向面41aとストッパ30のの端部30aとの間の距離d2との差を小さくできる。すなわち、ほぼ設計値通りの距離d2が得られる。高精度且つ安定した距離d2の実現は、ホールド位置での可動電極部15と固定電極部41との短絡を確実に防ぐ。
【0073】
また、前述したようなプロセスばらつきを考慮して距離d1(d2)を大きめに設計すると、
図3に示すホールド状態での固定電極部41と可動電極部15との間の距離dが大きくなる。これは、ホールド状態を維持するためのホールド電圧の上昇および消費電力の増大につながり得る。
【0074】
実施形態によれば、プロセスばらつきの影響を受けずに高精度に距離dを形成できるため、距離dの狭小化が可能となる。これは、消費電力の低減につながる。
【0075】
図8は、可動電極部15およびホールド電極40の他の例を示す模式平面図である。
【0076】
この実施形態において、可動体11は、
図1に示す電極17の代わりに、
図8に示す電極27を有する。
【0077】
電極27は、X方向に延びる複数の可動電極部15と、Y方向に延びる複数の支持部16とを有する。可動電極部15のX方向の両端は支持部16に固定され、可動電極部15は両持ち支持されている。可動電極部15の両持ち支持は、片持ち支持に比べて、可動電極部15の機械的強度を高める。
【0078】
上記実施形態と同様、電極27の内側にホールド電極40が配置されている。ホールド電極40は、X方向に延びる複数の固定電極部41を有する。固定電極部41と可動電極部15が、Y方向に交互に並んでいる。
【0079】
電極27は格子状に区切られた複数の領域を有し、1つの領域に1本の固定電極部41が配置されている。1つの領域内に配置された1本の固定電極部41のX方向の両端は、電極27の支持部16に対して離間している。
【0080】
図9は、
図8における一部分の拡大模式平面図である。
【0081】
1本の固定電極部41のX方向の両端に一対のストッパ30が配置されている。それら一対のストッパ30は、固定電極部41の第1対向面41a側で可動電極部15に対向する端部30aを有する。それら一対のストッパ30の端部30aは、固定電極部41の第1対向面41aよりも可動電極部15側に突き出ている。
【0082】
固定電極部41の第2対向面41b側にもストッパ30が配置されている。その第2対向面41b側のストッパ30は、固定電極部41の両端に配置された一対のストッパ30の間に位置し、第2対向面41b側で可動電極部15に対向している。
【0083】
ストッパ30と固定電極部41との間にはギャップが形成され、ストッパ30と固定電極部41は接触していない。
【0084】
図10(a)は
図9におけるB−B’断面図であり、(b)は
図9におけるC−C’断面図である。
【0085】
図6(a)〜(c)を参照して前述したように、固定電極部41およびストッパ30は、基板100上に形成された膜120をパターニングして形成される。したがって、固定電極部41およびストッパ30は、基板100上の同じレイヤーに設けられている。
【0086】
図8および
図9に示すレイアウトをもつMEMS部において、
図10(a)および(b)に示すように、基板100上に絶縁膜110が設けられ、その絶縁膜110上に配線201、202が設けられている。その配線201、202上に絶縁膜130が設けられ、その絶縁膜130上に膜120をパターニングして得られた固定電極部41およびストッパ30が設けられている。
【0087】
絶縁膜130上の膜120にRIE法でトレンチを形成して膜120をパターニングした後、例えばシリコン酸化膜である絶縁膜130をフッ酸蒸気を用いてエッチングして、可動体11の下の絶縁膜130は除去される。
【0088】
固定電極部41は、
図10(a)に示すように、ビア302を介して、配線202に接続している。固定電極部41の下のビア302のまわりの絶縁膜130は残される。
【0089】
ストッパ30は、
図10(b)に示すように、ビア301を介して、配線201に接続している。ストッパ30の下のビア301のまわりの絶縁膜130は残される。
【0090】
配線201および配線202を、
図9において破線で表す。配線202は、ホールド電圧を与える電圧印加回路70に接続されている。配線202は、グランドに接続されている。
【0091】
固定電極部41は、ビア302および配線202を通じて、電圧印加回路70に接続されている。固定電極部41をパッドおよびボンディングワイヤで電圧印加回路70と接続する構成に比べて、ホールド電極40の配置面積の省スペース化を実現できる。
【0092】
ストッパ30は、ビア301および配線201を通じて、グランドに接続されている。そのためストッパ30のチャージアップを防いで、ストッパ30と接触した可動電極部15の電位変動、およびスティクションを抑制することができる。スティクションとは、ストッパ30と可動電極部15がチャージ起因の静電力で吸着してしまい、ホールド電圧の印加をとめてもストッパ30と可動電極部15が離れなくなる動作不良現象を表す。
【0093】
図1に示すレイアウトにおいて、ドライブ電極20およびこのドライブ電極20に対して近接配置された可動体11の電極14は、可動体11の主マス部12と電極17との間に配置してもよい。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。