(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562879
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20190808BHJP
F25D 21/08 20060101ALI20190808BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F25D21/08 B
F25B47/02 570D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-136592(P2016-136592)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2018-9709(P2018-9709A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2018年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 直之
(72)【発明者】
【氏名】小池 暢志郎
(72)【発明者】
【氏名】岡留 慎一郎
【審査官】
山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−057886(JP,A)
【文献】
実開昭58−188582(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室または冷凍室の扉と、
圧縮機と冷却器を有する冷凍サイクルと、
前記冷却器に付着する霜を除霜する除霜手段と、
前記扉の開閉を検知する扉開閉検知手段と、
時間帯毎の前記圧縮機の運転時間を算出する圧縮機運転時間算出手段と、
時間帯毎の前記扉の開時間を算出する扉開時間算出手段と、
圧縮機運転時間および扉開時間を積算した積算値を算出する積算値算出手段と、
を有する冷蔵庫において、
第一期間中に、
前記積算値が第一閾値に達した場合、前記除霜手段による除霜運転を実施し、
前記積算値が第一閾値に達しない場合、前記除霜手段による除霜運転を実施せず、
前記第一期間に続く延長期間中に、前記積算値が前記第一閾値よりも小さい第二閾値に達した場合、前記除霜手段による除霜運転を実施し、
前記延長期間中に前記積算値が前記第二閾値に達しない場合、前記除霜手段による除霜運転を実施しないことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記延長期間に実施される除霜運転は、前記延長期間を分割した複数の時間帯のうち、最後の時間帯に実施されることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷蔵庫において、
前記延長期間中に前記積算値が前記第二閾値に達しない場合、当該延長期間後に同じ長さの延長期間を繰り返すことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1から請求項3何れか一項に記載の冷蔵庫において、
前記延長期間中に前記積算値が前記第一閾値に達した場合は、直ちに前記除霜手段による除霜運転を開始することを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器の除霜運転を行う冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷蔵庫の消費電力量低減化を図るため、圧縮機の積算運転時間と前記圧縮機の運転時間により、除霜周期を延長させるにより低消費電力量の冷蔵庫として、冷凍室にドアスイッチ機構を有せず、圧縮機と減圧器と蒸発器と構成され、冷凍サイクルによって冷却された冷気を庫内に循環させる冷却用ファンと、前記蒸発器に付着した霜を除去させる除霜ヒータを有する冷蔵庫において、前記圧縮機の積算運転時間と前記圧縮機の運転時間により、除霜周期を延長させ除霜ヒータ通電率を低下させることにより、消費電力量を低減するものが開示されている。
【0003】
そして、同文献の例えば
図2から
図4に示される除霜制御では、冷却器に除霜ヒータを配置して、前回の除霜終了時点から圧縮機の運転時間を積算し、その積算値が所定の時間に達した場合に、除霜を実施するかの判断を行っている。
【0004】
また、特許文献2には、実使用状況に合わせて除霜を実行することにより、貯蔵室内の大幅な温度上昇を抑制する冷蔵庫として、7日分の扉の開時間を1時間毎に蓄積し、各時間から3時間単位での扉開時間を加算する。除霜終了時に次の除霜を開始可能な範囲(8時間後から24時間後)を求め、その範囲内で扉開時間の少ない時間単位が存在したら、その時刻を除霜開始予定時刻とする。除霜開始予定時刻前に圧縮機の運転積算時間が所定の時間に達した場合は、その時点で除霜を開始するものが開示されている。
【0005】
そして、同文献の例えば
図4Aに示される除霜制御では、圧縮機運転時間の積算値が所定の時間に達しない場合であっても、前回の除霜運転から既定の除霜間隔時間が経過した場合に、除霜運転を開始している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−64244号公報
【特許文献2】特開2012−57886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の
図2から
図4の除霜制御では、圧縮機の運転時間の積算値が所定時間に達しない限り、除霜運転が開始されないため、冷却器に多量の霜が付着したまま運転が継続されるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2の
図4Aの除霜制御では、既定の除霜間隔時間が経過した場合に必ず除霜運転を実行するため、冷蔵庫の扉の開時間が短く、圧縮機の運転時間も短いなど、冷却器への霜の付着が少ない場合であっても除霜運転が開始されてしまい、消費電力を抑制できないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、実使用状況に合わせて除霜を実行することにより、貯蔵室内の大幅な温度上昇を抑制することができることに加え、除霜運転の頻度を適切に制御することによって、不要な除霜運転を行うことによる消費エネルギーの増加を抑制することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の冷蔵庫は、冷蔵室または冷凍室の扉と、圧縮機と冷却器を有する冷凍サイクルと、前記冷却器に付着する霜を除霜する除霜手段と、前記扉の開閉を検知する扉開閉検知手段と、時間帯毎の前記圧縮機の運転時間を算出する圧縮機運転時間算出手段と、時間帯毎の前記扉の開時間を算出する扉開時間算出手段と、圧縮機運転時間および扉開時間を積算した積算値を算出する積算値算出手段と、を有し、第一期間中に、前記積算値が第一閾値に達した場合、前記除霜手段による除霜運転を実施し、前記積算値が第一閾値に達しない場合、前記除霜手段による除霜運転を実施せず、前記第一期間に続く延長期間中に、前記積算値が前記第一閾値よりも小さい第二閾値に達した場合、前記除霜手段による除霜運転を実施
し、前記延長期間中に前記積算値が前記第二閾値に達しない場合、前記除霜手段による除霜運転を実施しないこととした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、実使用状況に合わせて除霜を実行することにより、貯蔵室内の大幅な温度上昇を抑制することができることに加え、除霜運転の頻度を適切に制御することによって、不要な除霜運転を行うことによる消費エネルギーの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】一実施例の冷蔵庫の除霜運転制御を説明するタイムチャートである。
【
図6】一実施例の冷蔵庫の除霜運転制御を説明するタイムチャートである。
【
図7】一実施例の冷蔵庫の除霜運転制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施例を
図1から
図6を用いて説明する。
【0014】
図1は本実施例の冷蔵庫1の正面図である。冷蔵庫1は、冷蔵室または冷凍室の扉101〜106を備えており、扉101の前面には操作パネル107を備えている。
【0015】
図2は冷蔵庫1を
図1のA−Aで切断した断面図である。
図2において、9aは冷媒を圧縮循環させる圧縮機、9bは圧縮機9aとともに冷凍サイクルを形成し冷媒を蒸発させる冷却器、10は冷却器9bにより冷却された冷気を冷蔵庫内に循環させる庫内冷却ファン、11は冷却器9bに付着した霜を解かすラジアントヒータなどの除霜ヒータである。
【0016】
次に、
図3の斜視図を用いて、冷却器9bの構造を詳細に説明する。
図3において、冷却器9bはフィン301が複数枚挿入された冷媒配管302を、上下方向に複数段となるように蛇行状に構成している。冷媒配管302の両端に位置して、上段と下段を接続する略U字状の湾曲部は、サイドプレート303a、303bでそれぞれ支持されており、外形が略矩形状の冷却器9bが構成されている。この冷媒配管302の一端にはアキユームレータ304が取り付けられている。
【0017】
パイプヒータ305は、冷却器9bに接触又は近接するように配置されており、一例として上段と下段のフィン301の隙間に位置するように蛇行状に構成されている。さらパイプヒータ305の両端に位置して、上段と下段を接続する略U字状の湾曲部は、サイドプレート303a、303bでそれぞれ支持されている。パイプヒータ305は、一例としてアルミニウム配管内にコードヒータを挿入して形成されたものである。本実施例では、冷却器9bの下方に設けた除霜ヒータ11またはパイプヒータ305によって冷却器9bに付着した霜を融解する構成である。
【0018】
図4は冷蔵庫1の制御ブロック図である。
図4において、5は冷蔵室扉の開閉を検知する冷蔵室扉スイッチ、6は冷凍室扉の開閉を検知する冷凍室扉スイッチ、7は除霜の開始および終了を判定するために冷却器9bの温度を検知する冷却器温度センサ、8は冷蔵庫1の周囲温度を検知する外気温温度センサである。2は制御部であり、冷蔵庫1の全体を制御するマイコン3を搭載し、マイコン3は扉101〜106の開時間、圧縮機9aの運転時間や冷蔵庫の周囲温度などを把握し、それらを内蔵するメモリ4に記憶する。
【0019】
次に、
図5を用いて、本実施例の除霜運転制御を説明する。特許文献2の
図4Aでは、圧縮機積算運転時間が既定の除霜開始運転時間に達した場合に除霜運転を実施していた。一方、圧縮機積算運転時間が当該除霜開始運転時間に達しない場合は、除霜運転が実施されないという問題があった。そこで、本実施例では、圧縮機積算運転時間等が所定の除霜周期内に特許文献2の除霜開始運転時間に相当する第一閾値に達しなかった場合は、第一閾値よりも小さい第二閾値を導入し除霜運転実施の要否を判断するものである。
【0020】
図4の制御ブロック図からも分かるように、マイコン3は、圧縮機9aへの出力信号に基づいて、圧縮機9aの運転時間を把握することができる。また、マイコン3は、冷蔵室扉スイッチ5や冷凍室扉スイッチ6からの入力信号に基づいて、扉の開時間を把握することもできる。これらは所定時間帯毎にまとめられ、
図5(a)(b)に示す、圧縮機運転時間データ、扉開時間データとしてメモリ4に記憶される。また、マイコン3は、
図5(a)の圧縮機運転時間、
図5(b)の扉開時間それぞれに所定の係数をかけ積算したものを、
図5(c)に示す積算値としてメモリ4に記憶する。
【0021】
ここでは、両者に同じ係数をかけたと仮定して積算値を演算しているが、外気温、扉の大きさなどの状況に応じて、係数を変えても良い。例えば、外気温温度センサ8から得た外気温が高い場合は扉開時間にかける係数を大きくし、外気温が低い場合は扉開時間にかける係数を小さくするなどである。
【0022】
本実施例の冷蔵庫1では、例えば24時間間隔などの既定の除霜周期が用意されている。以下では、最初の除霜周期を、「第一期間」と称し、これに続く除霜周期を「延長期間」、「第二期間」、「第三期間」などと称する。なお、以下では「第一期間」と「延長期間」の長さを等しくした例で説明を行うが、両者の長さを異ならせても良い。
【0023】
図5の例では、第一期間中は積算値が第一閾値に達しておらず、最終時間帯で第一閾値よりも小さい第二閾値にも達していないため、第一期間中には除霜運転が実施されない。
図5(d)では当該期間中に除霜運転が実施されなかったことを「×」で示している。第一期間に続く第二期間(延長期間ともいう)では、第二期間の最終時間帯には積算値が第二閾値にも達しないため、第二期間中には除霜運転が実施されない。一方、第三期間の最終時間帯には積算値が第二閾値に達するため、第三期間の最終時間帯に除霜運転が実施される。
【0024】
除霜運転が実行されると、次の期間は第一期間となり、積算値がゼロにリセットされる。
【0025】
なお、ここで実施される除霜運転とは、単に圧縮機9aを停止して除霜ヒータ11やパイプヒータ305に通電することに限定されるものではなく、除霜前のプリクール運転や、霜冷却運転を含んでも良い。霜冷却運転とは、圧縮機9aを停止後、除霜ヒータ11やパイプヒータ305の通電前に庫内冷却ファン10を運転し、冷却器9bに付着した霜の冷気を循環させ、庫内を冷却する冷却方法である。
【0026】
以上で説明した
図5に示す除霜運転制御によれば、圧縮機運転時間が短い場合や、扉開時間が短い場合など、霜の付着が少なく除霜運転の必要がないと判断できる場合は、既定の除霜間隔毎の除霜運転をスキップすることで、除霜運転でのエネルギー消費を回避し、冷蔵庫1の消費エネルギーを抑制するとともに、続く除霜周期中はより小さい閾値を用いて除霜要否を判断することで、長時間除霜が行われないという不都合を回避することができる。
【0027】
次に、
図6を用いて、他の除霜運転制御を説明する。なお、
図5と重複する説明は省略するものとする。
図6でも第二期間中の積算値は第二閾値を超えていないため、第二期間の最終時間帯では除霜運転は行われない。一方、第三期間の最初の時間帯の圧縮機運転位より積算値が第二閾値を超えるが、第二閾値は除霜周期の最終時間帯に除霜運転を実行するかの判断に用いるものであるため、この時点では除霜運転は実行されない。その後、扉が長時間解放されるなどした結果、積算値が第一閾値を超えると、次の時間帯に除霜運転を開始し、除霜運転の終了後に積算値がゼロにリセットされるとともに、新たに第一期間を開始する。
【0028】
このように、
図6の例では、延長期間中に積算値が第一閾値を超え、霜が急激に付着していると判断されたときには、直ちに除霜運転を実施することで、冷却器9bの冷却性能を適宜回復させることができる。
【0029】
図7は、
図5、
図6で説明した除霜運転制御を、フローチャート表現したものである。S702では、
図5、
図6の(a)〜(c)に示したように、圧縮機運転時間、扉開時間の積算値を求める。次に、S703では、積算値が第一閾値を超えているか判定する。積算値が第一閾値を超えている場合は、霜の付着が急増した予想できるため、直ちに臨時除霜を実行するとともに、積算値をリセットする(S707)。
【0030】
一方、積算値が第一閾値を超えていない場合は、直ちに除霜運転をする必要性が低いと判断できるため、当面は除霜運転を実行しない。
【0031】
しかしながら、前回の除霜運転実行後から所定の時間が経過し、第一期間の最終時間帯、もしくは第二期間、第三期間などの延長期間に入っている場合には、圧縮機9aの運転時間が短い場合であっても、冷却器9bへの霜付着量が多くなっていると考えられるため、積算値が第一閾値よりも小さい第二閾値を超えているかを基準に除霜運転を実施するか判定する(S704、S705)。積算値が第二閾値を超えている場合は、霜の付着量が多くなったと予測できるため、当該除霜周期の最終時間帯に定期除霜を実行するとともに、積算値をリセットする(S706)。
【0032】
以上で説明した本実施例の構成のよれば、冷蔵庫1の使用状況に合わせて除霜を実施するので、庫内の温度上昇を抑制できる。また、圧縮機の運転が頻繁に行われて冷却器への着霜が多くなるような状況下では、扉の開時間の多少に関わらず、圧縮機の運転状況に応じて除霜を実施するよう制御を切替えるので、冷却能力の低下を防ぐことができる。総じて食品への影響を抑えることが可能な冷蔵庫を得ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 冷蔵庫、2 制御部、3 マイコン、4 メモリ、5 冷蔵室扉スイッチ、6 冷凍室扉スイッチ、7 冷却器温度センサ、8 外気温温度センサ、9a 圧縮機、9b 冷却器、10 庫内冷却ファン、11 除霜ヒータ、101〜106 扉、107 操作パネル、301 フィン、302 冷媒配管、303a、303b サイドプレート、304 アキユームレータ、305 パイプヒータ