(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御装置と複数の電装ユニットとが互いに通信可能な状態にて接続され、前記複数の前記電装ユニットの各々が複数の電装品の各々と前記制御装置との間を中継するように配置され、前記複数の電装ユニットの各々が固有の識別子を有する、通信システムであって、
前記複数の前記電装ユニットの各々は、
前記識別子を設定するための抵抗器を有し、
複数の前記抵抗器は、
該複数の該抵抗器が直列に接続された設定用回路を構成し、
前記複数の前記電装ユニットの各々は、
前記設定用回路における自身が有する前記抵抗器における電圧値の大きさを検出し、前記検出した電圧値の大きさを表す信号、及び、自身が中継する前記電装品の種別に関する情報を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、
前記設定用回路上の各々の前記抵抗器における電圧値の大きさに基づいて前記複数の前記電装ユニットの各々の前記識別子を決定し、決定した前記識別子に関する信号を前記複数の前記電装ユニットの各々に与え、
前記設定用回路は、前記制御装置から延びると共に前記複数の前記電装ユニットが並列的に接続される通信線、から独立した別の回路として形成され、
前記設定用回路は、前記制御装置の外部の外部電源から延びると共に前記複数の前記電装ユニットが並列的に接続される電源線、に直接接続されている、
通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、実際に従来システムが電装品の制御を行う際、個々のスレーブ通信装置に対して固有の識別子(ID)を付与することになる。一方、車両においては、車種の違い、グレードの違い、販売地域の違い、及び、ユーザの希望する各種オプション装備の有無等に応じ、システムに接続される電装品(例えば、ランプ及び電気モータ等)の数や種類が変化する。そのため、車両の通信システムにおいては、一般に、実際のシステムの構成および車種に合わせて、スレーブ通信装置の識別子(ID)を適切に定めることになる。
【0007】
例えば、従来システムでは、予め固有の識別子(ID)が割り当てられた多種類のスレーブ通信装置を事前に用意し、最初にネットワークを構築する場合および構築したネットワークに新たな機能の追加を行う場合などにおいて、その都度、接続したスレーブ通信装置の識別子(ID)をマスタECUに認識させるようになっている。しかし、車両には多種多様な電装品に合わせて数多くの電装ユニットが搭載されるため、従来システムでは、識別子(ID)をマスタECUに認識させる工程が煩雑となる可能性がある。システムの構築を出来る限り容易にする観点から、識別子(ID)の割り当ては出来る限り容易に行われることが望まれる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通信システムを構成する電装ユニットの識別子を容易に設定可能な通信システム、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る通信システムは、下記(1)〜(
3)を特徴としている。
(1)
制御装置と複数の電装ユニットとが互いに通信可能な状態にて接続され、前記複数の前記電装ユニットの各々が複数の電装品の各々と前記制御装置との間を中継するように配置され、前記複数の電装ユニットの各々が固有の識別子を有する、通信システムであって、
前記複数の前記電装ユニットの各々は、
前記識別子を設定するための抵抗器を有し、
複数の前記抵抗器は、
該複数の該抵抗器が直列に接続された設定用回路を構成し、
前記複数の前記電装ユニットの各々は、
前記設定用回路における自身が有する前記抵抗器における電圧値の大きさを検出し、前記検出した電圧値の大きさを表す信号、及び、自身が中継する前記電装品の種別に関する情報を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、
前記設定用回路上の各々の前記抵抗器における電圧値の大きさに基づいて前記複数の前記電装ユニットの各々の前記識別子を決定し、決定した前記識別子に関する信号を前記複数の前記電装ユニットの各々に与え
、
前記設定用回路は、前記制御装置から延びると共に前記複数の前記電装ユニットが並列的に接続される通信線、から独立した別の回路として形成され、
前記設定用回路は、前記制御装置の外部の外部電源から延びると共に前記複数の前記電装ユニットが並列的に接続される電源線、に直接接続されている、
通信システムであること。
(2)
上記(1)に記載の通信システムにおいて、
前記制御装置が、
該通信システムにおける制御対象である複数の
前記電装品の各々の目標作動量を定め、
前記複数の前記電装ユニットの各々が、
前記制御装置に繋がる
前記通信線を接続可能な通信ポートと、
前記外部電源に繋がる
前記電源線を接続可能な電源ポートと、接地線を接続可能な接地ポートと、対応する前記電装品に電力を出力可能な電装品ポートと、前記設定用回路を形成するための設定用ポートと、を有し、
前記通信ポートを介して前記制御装置から前記目標作動量に関する信号を受け取り、前記目標作動量に対応する作動用電力を前記電源ポートを介して得た電力を用いて準備すると共に前記電装品ポートを介して前記電装品に与えることにより、前記電装品の実際の作動量を前記目標作動量に一致させるように前記電装品を作動させる
通信システムであること。
(
3)
上記(1)
又は上記(2)に記載の通信システムにおいて、
前記複数の前記電装ユニットの各々が有する前記抵抗器が、同一の抵抗値を有する、
通信システムであること。
【0010】
上記(1)の構成の通信システムによれば、電装ユニットが備える抵抗器が直列に連なった設定用回路が形成される。設定用回路(直列回路)では抵抗器ごとにその抵抗値に応じた電圧降下が生じるため、各々の抵抗器における電圧値(例えば、抵抗器の下流側直後の電圧値)は、抵抗器ごとに異なることになる。換言すると、各々の抵抗器における電圧値は、電装ユニットごとに異なる値となる。そこで、制御装置は、各々の抵抗器における電圧値の大きさ(電装ユニットごとに異なる値)に基づき、各々の電装ユニットの識別子を決定する。換言すると、識別子は電装ユニットに事前には設定されておらず、通信システムに電装ユニットが取り付けられた後、電装ユニットごとに識別子が設定されることになる。なお、このように設定された識別子は、制御装置から各々の電装ユニットに任意の手法によって通知されればよい。よって、従来システムのように予め識別子が割り当てられた電装ユニットを用いる場合に比べ、通信システムへの電装ユニットの取り付け、及び、識別子の割り当てが容易となる。
【0011】
したがって、本構成の通信システムは、通信システムを構成する電装ユニットの識別子を容易に設定することができる。
更に、通信線とは別の回路を設定用回路として設けているので、識別子の設定用の抵抗器に起因して制御装置から電装ユニットに送られる信号(通信線を伝わる制御信号)が減衰することを避けられる。
【0012】
上記(2)の構成の通信システムによれば、電装ユニットは、電装品を作動させるための機能は備えているものの、自らは電装品の作動量を定めず、制御装置からの指示(目標作動量に関する信号)に応じて電装品を作動させることになる。換言すると、電装ユニットは、電装品の作動に関して自らは何ら判断せず、あくまで制御装置からの指示に従って電装品を作動させるようになっている。
【0013】
よって、本構成の通信システムに含まれる電装ユニットは、電装品の作動に関して判断する機能を排除できる分、従来ユニットに比べ、汎用性が高まる。例えば、電装品がPWM制御されるモータである場合、電装ユニットは、制御装置からの指示に応じてPWM制御に従ったパルスを生成してモータに与える機能のみを有していればよい。そのため、様々なモータに対して共通の電装ユニットを使用できる(即ち、汎用性が高まる)ことになる。よって、この電装ユニットは、汎用性に優れることになる。
【0014】
更に、上記構成の通信システムに含まれる電装ユニットは、他の効果(構造の簡略化)も有する。具体的には、従来ユニット(スレーブ通信装置)のように自らの判断によって電装品を作動させる場合、一般に、比較的複雑な処理が可能であるように構成された制御IC(マイクロコンピュータ等)を電装ユニットに内蔵させることになる。一方、上記構成の通信システムに含まれる電装ユニットは、制御装置からの指示に従って電装品を作動させる(電装品の作動に関して判断する機能を排除できる)ため、制御ICを内蔵するとしても従来ユニットに比べてその構成を簡略化できる。例えば、従来ユニットに比べ、ゲート回路(又はゲートIC)の数を低減できる。更に、例えば、行う処理の内容によっては、いわゆるマイクロコンピュータ等に比べて単純な構成を有するロジックICを用いることができる。その結果、上記構成の通信システムに含まれる電装ユニットは、従来ユニットに比べ、構造を簡略化できる。
【0015】
なお、上述した電装品の「目標作動量」とは、電装品の作動量(例えば、モータの回転速度など)の目標値だけでなく、電装品の作動開始および作動停止(オンオフ)の目標タイミング等も含む概念である。
【0017】
上記(
3)の構成の通信システムによれば、抵抗値の大きさが同一の抵抗器が、各々の電装ユニットに設けられる。そのため、電装ユニットごとに抵抗器の抵抗値が異なる場合(換言すると、各々の電装ユニットの仕様が異なる場合)に比べ、電装ユニットの製造コストを低減できると共に、電装ユニットの汎用性を高め得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通信システムを構成する電装ユニットの識別子を容易に設定可能な通信システム、を提供できる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る車両用の通信システム(以下「通信システム1」という。)について、説明する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、通信システム1では、複数の電装ユニット30(30a,30b,30c)の各々が、複数の電装品40(40a,40b,40c)の各々と制御装置20との間を中継するように配置され、各電装ユニット30は、中継している電装品40を制御装置20の指示に基づいてそれぞれ作動させる機能を果たす。
【0023】
図2に示す通信システム1では、電装ユニット30として3つの電装ユニット30a,30b,30cが用いられている。しかし、複数の電装ユニット30が用いられる限りにおいて電装ユニット30の数は特に限定されず、2つの電装ユニット30が用いられても、4つ以上の電装ユニット30が用いられてもよい。
【0024】
以下、説明の便宜上、電装ユニット30aのみに関連する構成・要素、電装ユニット30bのみに関連する構成・要素、並びに、電装ユニット30cのみに関連する構成・要素については、それぞれ、符号の末尾に特に「a」、「b」及び「c」を付けて表すものとする。「a」,「b」,「c」を区別して説明する必要がない場合、「a」,「b」,「c」を省略して表現する。電線に関し、幹線は符号の先頭に「W」を付けて表し、幹線から分岐する枝線などの幹線以外の電線は符号の先頭に「w」を付けて表す。
【0025】
図1に示すように、電装ユニット30は、電装ユニット30の全体を覆う樹脂製のハウジング31を備える。ハウジング31には、マイクロコンピュータ等の制御IC(後述する
図3に示す処理部33)及びスイッチング素子(FET。後述する
図3に示す駆動部34)等が内蔵されている。
【0026】
ハウジング31には、相手側コネクタ60を嵌合・接続するためのコネクタ部32が形成されている。コネクタ部32には、後述する各種ポートP1〜P8(
図3を参照)が、ハウジング31の同一側面に並ぶように配置されている。別の言い方をすると、電装ユニット30は、各種ポートP1〜P8が電装ユニット30の同一側面に並ぶように(コネクタ状に)配置された状態にて、樹脂によって一体的にモールドされている。そして、相手側コネクタ60をコネクタ部32に嵌合・接続することにより、各種ポートP1〜P8が、相手側コネクタ60に接続されている各種電線w1〜w8にそれぞれ接続されることになる。
【0027】
電装ユニット30には、自身の識別子(ID)が事前に設定されていない。電装ユニット30のコネクタ部32に相手側コネクタ60を嵌合・接続することによって電装ユニット30が通信システム1に取り付けられた後、後述するように、電装ユニット30ごとに識別子(ID)が設定される。更に、電装ユニット30は、相手側コネクタ60に接続された状態にて、後述するように、中継している電装品40を制御装置20の指示に基づいて作動させる。
【0028】
図2に示すように、通信システム1は、幹線として、電源線W1、通信線W2、及び、接地線W3からなるワイヤハーネスW/Hを備える。電源線W1は、車両の主電源であるバッテリ10(BAT)に接続されている。電源線W1には、電源電力として、バッテリ10の出力電圧Vbat(例えば、12V)の直流電圧が供給される。
【0029】
通信線W2は、電装品40を含む車両に搭載された種々の電装品を制御するための制御装置20(ECU)に接続されている。通信線W2は、制御装置20と各電装ユニット30との間、並びに、電装ユニット30同士間で信号を伝送する機能を果たす。接地線W3は、アースされており、その電位は常に0Vとなっている。
【0030】
各電装ユニット30のコネクタ部32に接続される相手側コネクタ60には、電源線w1、通信線w2、接地線w3、信号線w4、信号線w5、信号線w6、信号線w7、及び、信号線w8の一端がそれぞれ接続されている。各電源線w1の他端は、ワイヤハーネスW/Hの電源線W1に接続され、各通信線w2の他端は、ワイヤハーネスW/Hの通信線W2に接続され、各接地線w3の他端は、ワイヤハーネスW/Hの接地線W3に接続されている。
【0031】
ワイヤハーネスW/Hの長手方向において、各電装ユニット30の電源線w1、通信線w2、及び接地線w3の他端と電源線W1、通信線W2、及び接地線W3との接続箇所は電装ユニット30ごとに異なる。換言すると、ワイヤハーネスW/Hの長手方向において、各電装ユニット30とワイヤハーネスW/Hとの接続箇所は、電装ユニット30ごとに異なる。通信システム1では、電装ユニット30aがワイヤハーネスW/Hの最も上流側(制御装置20に近い側)に接続され、電装ユニット30bが電装ユニット30aよりも下流側(制御装置20から遠い側)に接続され、電装ユニット30cが電装ユニット30bよりも下流側に接続されている。
【0032】
各信号線w5,w6の他端は、対応する電装ユニット30が中継している電装品40に接続されている。各信号線w4の他端は、対応する電装ユニット30が中継している電装品40のオンオフに関するスイッチ、及び/又は、その電装品40のオンオフに関するパラメータを測定するセンサ(以下「スイッチ等50」という。)に接続されている。
【0033】
電装品40とは、車両に搭載された電装品(負荷)であり、具体的には、モータ、ランプ及びソレノイドコイル等を指す。モータとしては、例えば、アウターミラー駆動用のモータ、シートベルトアンカ駆動用のモータ及びサンシェード駆動用のモータ等が挙げられる。ランプとしては、室内足元照明用のランプ、室外足元照明用のランプ及びルーフ照明用のランプ等が挙げられる。ソレノイドコイルとしては、例えば、各種電磁弁に使用されるソレノイドコイル等が挙げられる。
【0034】
電装品40a,40b,40cは、同じ種類の負荷(例えば、全てモータ)であってもよいし、異なる種類の負荷(例えば、モータとランプ)であってもよい。スイッチ等50a、スイッチ等50b及びスイッチ等50cは、それぞれ、電装品40a、電装品40b及び電装品40cのオンオフに関するスイッチ等である。
【0035】
最も上流側の電装ユニット30aに関連する信号線w7aの他端は、電源線W1に接続されている。よって、信号線w7a上の電圧はバッテリ10の出力電圧Vbatである。
【0036】
最も上流側の電装ユニット30aに関連する信号線w8aの他端は、電装ユニット30aの下流側に位置する電装ユニット30bに関連する信号線w7bの他端と接続されている。電装ユニット30bに関連する信号線w8bの他端は、電装ユニット30bの下流側に位置する電装ユニット30cに関連する信号線w7cの他端と接続されている。電装ユニット30cに関連する信号線w8cの他端は、電装ユニット30cの下流側に位置する次の電装ユニット30(図示省略)が存在する場合、その電装ユニット30に関連する信号線w7の他端と接続されている。そして、最も下流側に位置する電装ユニット30に関連する信号線w8の他端は接地される。
【0037】
図3に示すように、各電装ユニット30は、相手側コネクタ60の電源線w1、通信線w2、接地線w3、信号線w4、信号線w5、信号線w6、信号線w7及び信号線w8をそれぞれ接続可能な、電源ポートP1、通信ポートP2、接地ポートP3、信号ポートP4、信号ポートP5、信号ポートP6、信号ポートP7及び信号ポートP8を備える。各電装ユニット30のコネクタ部32に相手側コネクタ60を嵌合・接続することによって、電線w1〜w8とポートP1〜P8とが一度に接続される。
【0038】
図3に示すように、各電装ユニット30は、マイクロコンピュータ等の制御ICからなる処理部33と、複数のスイッチング素子(FET)からなる駆動部34と、抵抗器35と、を備える。各電装ユニット30について、処理部33、駆動部34及び抵抗器35はそれぞれ同一の諸元を有している。即ち、各電装ユニット30について、抵抗器35の抵抗値は同一である。
【0039】
処理部33は、電源ポートP1、通信ポートP2、接地ポートP3、信号ポートP4、信号ポートP8及び駆動部34と接続されている。駆動部34は、電源ポートP1、接地ポートP3、信号ポートP5、信号ポートP6及び処理部33と接続されている。抵抗器35の一端は信号ポートP7と接続され、抵抗器35の他端は信号ポートP8と接続されている。即ち、処理部33は、抵抗器35の他端の電圧(=信号ポートP8の電圧)を検出可能となっている。
【0040】
ここで、各電装ユニット30の信号ポートP7及びP8に接続される信号線w7及びs8の接続パターンに着目すると、各電装ユニット30が対応する相手側コネクタ60とそれぞれ接続された状態では、「バッテリ10→電源線W1→信号線w7a→抵抗器35a→信号線w8a(=信号線w7b)→抵抗器35b→信号線w8b(=信号線w7c)→抵抗器35c→信号線w8c→・・・→接地」という、同一の抵抗値を有する複数の抵抗器35が直列に接続された回路が構成される。
【0041】
後述するように、この回路は、各電装ユニット30の識別子(ID)の設定に使用される。以下、この回路を「設定用回路」と呼び、信号ポートP8の電圧(抵抗器35の下流側直後の電圧)を「ID設定用電圧値Vid」とも呼ぶ。
【0042】
設定用回路では、各抵抗器35にて電圧降下が発生する。各抵抗器35の電圧降下量をΔVとすると、
図4(a)に示すように、電装ユニット30aの信号ポートP8aの電圧(=Vid)は「Vbat−ΔV」(=Va)となり、電装ユニット30bの信号ポートP8bの電圧(=Vid)は「Vbat−2ΔV」(=Vb)となり、電装ユニット30cの信号ポートP8cの電圧(=Vid)は「Vbat−3ΔV」(=Vc)となる。
【0043】
よって、電装ユニット30は、相手側コネクタ60aに接続された場合には自身の処理部33がID設定用電圧値Vidとして「Va」を検出し、相手側コネクタ60bに接続された場合には自身の処理部33がID設定用電圧値Vidとして「Vb」を検出し、相手側コネクタ60cに接続された場合には自身の処理部33がID設定用電圧値Vidとして「Vc」を検出する、ことができる。処理部33は、このように検出したID設定用電圧値Vidを表す信号を、通信ポートP2から制御装置20に送信する。なお、この送信の際、電装ユニット30が中継する電装品の種別(例えば、モータの型番)に関する情報も併せて送信してもよい。
【0044】
制御装置20は、各々の処理部33からID設定用電圧値Vidを受け取った後、上述した段階的な電圧降下を利用して電装ユニット30ごとの識別子(ID)を決定する。以下、
図5を参照しながら、制御装置20が識別子(ID)設定のために実行する処理について説明する。
図5に示す処理は、各電装ユニット30が相手側コネクタ60に接続された後の所定のタイミングで実行される。
【0045】
この処理はステップ500から開始され、ステップ505にて、制御装置20は、各電装ユニット30の通信ポートP2から送出されたID設定用電圧値Vidを表す信号(信号ポートP8の電圧)を受け取る。次いで、ステップ510にて、制御装置20は、取得したID設定用電圧値Vidの大きさを電装ユニット30ごとに比較する。例えば、
図4(b)に示すように取得したID設定用電圧値Vidの大きさ(Va、Vb及びVc)は電装ユニット30ごとに異なるため、この比較により、このID設定用電圧値Vidの大きさに基づいて各々の電装ユニット30を区別(識別)できる。
【0046】
次いで、ステップ515にて、制御装置20は、上記比較の結果に基づき、電装ユニット30ごとに識別子(ID)を割り当てる。例えば、本例では、ID設定用電圧値Vidが大きい順に(Va>Vb>Vcであるため、Va、Vb及びVcの順に)、電装ユニット30a,30b,30cの識別子(ID)として「IDa」、「IDb」及び「IDc」が割り当てられる。
【0047】
そして、ステップ520にて、制御装置20は、割り当てられた(設定された)識別子(ID)を示す信号を、通信ポートP2を介して各々の電装ユニット30(処理部33)に与えることにより、設定された識別子(ID)を電装ユニット30に通知する。その後、ステップ595にて、一連の処理を終了する。
【0048】
以上のように、複数の電装ユニット30が対応する相手側コネクタ60にそれぞれ接続されると、ID設定用電圧値Vidの大きさに基づき、電装ユニット30ごとに識別子(ID)が設定される。識別子(ID)の設定後、電装ユニット30は、相手側コネクタ60に接続された状態にて、中継している電装品40を制御装置20の指示に基づいて作動させる。以下、この点について説明する。
【0049】
処理部33は、スイッチ等50から信号線w4及び信号ポートP4を介して受け取った信号を、通信ポートP2、通信線w2及び通信線W2を介して制御装置20に与える。なお、処理部33は、スイッチ等50から受け取った信号に何らの処理を施すことなくその信号を制御装置20に与えてもよく、その信号に若干の処理(信号の平滑化など)を施した後にその信号を制御装置20に与えてもよい。スイッチ等50からの信号を受け取った制御装置20は、その信号に基づいて電装品40の目標作動量を定め、目標作動量を表す信号を、通信線W2、通信線w2及び通信ポートP2を介して処理部33に与える。制御装置20からの信号を受け取った処理部33は、目標作動量に基づいて駆動信号を生成すると共に、生成した駆動信号を駆動部34に与える。ここで、目標作動量とは、電装品40の作動量(例えば、モータの回転速度)の目標値、及び、電装品40のオンオフの目標タイミングを含む概念である。
【0050】
駆動信号を与えられた駆動部34は、駆動信号に基づいて自身が有する複数のスイッチング素子(FET)を駆動する。この結果、信号ポートP5,P6(信号線w5,w6)を介して駆動部34と接続されている電装品40が、制御装置20の指示(目標作動量)に基づいて作動する。なお、駆動部34は、4つのスイッチング素子(FET)からなるスイッチング回路を有するように構成され得る。スイッチング回路として、例えば、フルブリッジ回路(いわゆるHブリッジ回路)及びハーフブリッジ回路が挙げられる。
【0051】
このように、電装ユニット30は、通信ポートP2を介して制御装置20から目標作動量に関する信号を受け取り、目標作動量に対応する作動用電力を電源ポートP1を介して得た電力を用いて準備すると共に信号ポートP5,P6を介して電装品40に与えている、といえる。
【0052】
<第2実施形態>
次いで、本発明の第2実施形態に係る車両用の通信システム(以下「通信システム2」という。)について、説明する。なお、第2実施形態に含まれる構成要素のうち、第1実施形態と実質的に同一の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
上述した第1実施形態では、
図2及び
図3に示すように、設定用回路が、制御装置20と複数の電装ユニット30との間の通信のための通信線(=ワイヤハーネスW/Hの通信線W2)から独立した回路(別の回路)として形成されている。しかし、
図2及び
図3にそれぞれ対応する
図6及び
図7に示すように、設定用回路が、制御装置20と複数の電装ユニット30との間の通信のための通信線の一部として形成されていてもよい。
【0054】
具体的には、
図6及び
図7に示す例では、各電装ユニット30において、信号線w7及び信号ポートP7が存在せず、且つ、抵抗器35の一端が信号ポートP7に代えて通信ポートP2に接続されている。なお、抵抗器35の他端は、第1実施形態と同様、信号ポートP8に接続されている。
【0055】
本例では、最も上流側の電装ユニット30aに関連する通信線w2aの他端は、第1実施形態と同様、通信線W2に接続されている。最も上流側の電装ユニット30aに関連する信号線w8aの他端は、電装ユニット30aの下流側に位置する電装ユニット30bに関連する通信線w2bの他端と接続されている。電装ユニット30bに関連する信号線w8bの他端は、電装ユニット30bの下流側に位置する電装ユニット30cに関連する通信線w2cの他端と接続されている。電装ユニット30cに関連する信号線w8cの他端は、電装ユニット30cの下流側に位置する次の電装ユニット30(図示省略)が存在する場合、その電装ユニット30に関連する通信線w2の他端と接続されている。
【0056】
このように、最も上流側の電装ユニット30a以外の電装ユニット30については、通信線w2の他端は、通信線W2ではなく、自身の上流側に位置する電装ユニット30の信号線w8と接続している。即ち、制御装置20と複数の電装ユニット30との間の通信のための通信線は、「制御装置20→ワイヤハーネスW/Hの通信線W2→通信線w2a→抵抗器35a→信号線w8a(=通信線w2b)→抵抗器35b→信号線w8b(=通信線w2c)→抵抗器35c→信号線w8c→・・・→接地」という回路で構成される。
【0057】
換言すると、設定用回路が「制御装置20と複数の電装ユニット30との間の通信のための通信線」の一部として形成されている、といえる。この設定用回路を利用しても、第1実施形態と同じ原理により、電装ユニット30ごとの識別子(ID)を設定することができる。
【0058】
このように、
図6及び
図7に示す例では、「制御装置20と複数の電装ユニット30との間の通信のための通信線」の一部を設定用回路としても利用することによって、通信システム全体の構成が簡略化され、通信システムの構成コストの低減等を期待できる。
【0059】
ただし、この例では、第1実施形態と異なり、電装ユニット30の接続位置が下流側に移動するにつれて、通信に使用される通信線w2の基準電圧がその上流側の抵抗器35の電圧降下に起因して次第に低下していく。そのため、通信線を伝わる制御信号の減衰が発生し得る。この問題に対処するためには、抵抗器35をショートカットするスイッチを設け、識別子(ID)の設定後にこのスイッチをオンとすればよい。
【0060】
以上、第1実施形態及び第2実施形態に係る通信システム1,2によれば、電装ユニット30が備える抵抗器35を繋ぐ設定用回路が形成され、その設定用回路おける抵抗器35の電圧値Vidの大きさに基づき、電装ユニット30ごとの識別子(ID)が設定される。即ち、事前に電装ユニット30に識別子(ID)を設定しておらず、通信システム1に電装ユニット30が取り付けられた後、電装ユニット30ごとの識別子(ID)が設定されることになる。よって、予め識別子(ID)が割り当てられた電装ユニットを用いる場合に比べ、通信システム1への電装ユニット30の取り付け、及び、識別子(ID)の割り当てが容易となる。
【0061】
更に、電装ユニット30は、中継している電装品40を作動させるための機能は備えているものの、自らはその作動量を定めず、制御装置20からの指示に応じてその電装品40を作動させる。そのため、電装ユニット自らが電装品の作動量を決定する場合に比べ、電装ユニット30の汎用性が高い。
【0062】
更に、電装ユニット30は、従来ユニットとは異なり制御装置20からの指示に従って電装品40を作動させる(電装品40の作動に関して判断する機能を排除できる)ため、制御IC(処理部33)の構成を従来ユニットに比べて簡略化できる。例えば、従来ユニットに比べ、ゲート回路(又はゲートIC)の数を低減できる。更に、例えば、行う処理の内容によっては、いわゆるマイクロコンピュータ等に比べて単純な構成を有するロジックICを用いることができる。
【0063】
更に、電装ユニット30は、中継している電装品40を作動させるためのスイッチ等50からの信号を(自らの判断には用いず)制御装置20に伝達する。この結果、スイッチ等50からの信号に基づいて電装ユニット30が自ら判断して中継している電装品40のオンオフを行う場合と比べて、電装ユニット30の汎用性が更に高まる。
【0064】
更に、通信システム1によれば、抵抗値の大きさが同一の抵抗器35が、各々の電装ユニット30に設けられる。そのため、電装ユニット30ごとに抵抗器35の抵抗値が異なる場合(各々の電装ユニット30の仕様が異なる場合)に比べ、電装ユニット30の製造コストを低減できると共に、電装ユニット30の汎用性を高め得る。
【0065】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した各実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0066】
例えば、本発明を、本出願人が別に出願している特願2016−131165(出願日:2016年6月30日)、特願2016−131166(出願日:2016年6月30日)、及び、特願2016−131167(出願日:2016年6月30日)等に記載の車両用回路体に適用することができる。
【0067】
更に、上記各実施形態では、各々の抵抗器35の抵抗値は同一となっている。しかし、抵抗器35の抵抗値は、電装ユニット30ごとに異なってもよい。なお、上記説明(特に、
図4)から理解されるように、各々の抵抗器35の抵抗値が異なっても、上記各実施形態と同様、ID設定用電圧値Vidの大小関係に基づいて識別子(ID)を割り当てられる。
【0068】
更に、上記各実施形態では、電装ユニット30は、中継している電装品40のオンオフに関するスイッチ等50からの信号を受信している。しかし、これに代えて、或いはこれに加えて、中継している電装品40とは異なる電装品のオンオフに関するスイッチ等からの信号を代行して受信し、受信したスイッチ等からの信号を制御装置20に伝達してもよい(いわゆる代行入力)。
【0069】
更に、上記各実施形態では、電装ユニット30と電装品40とが信号線w5,w6を介して接続されている。しかし、電装ユニット30と電装品40とを信号線を介することなく直接接続してもよい。この構成は、例えば、電装ユニット30に設けられた第2のコネクタ部に、電装品40に設けられたコネクタ部を嵌合・接続すること等によって達成され得る。この構成によれば、電装ユニット30と電装品40とを電線等を介して接続する場合に比べ、コストを低減できる。
【0070】
更に、上記各実施形態では、電装ユニット30が、信号ポートP4を介して受信したスイッチ等50からの信号を処理部33を介して制御装置20に与えている。しかし、信号ポートP4を介して受信したスイッチ等50からの信号を処理部33を介することなく制御装置20に与えてもよい。更に、電装ユニット30は、スイッチ等50に繋がる信号ポートP4を備えているが、信号ポートP4を備えていなくてもよい。この場合、スイッチ等50からの信号を制御装置20が直接受信するように構成すればよい。
【0071】
ここで、上述した本発明に係る通信システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(4)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
制御装置(20)と複数の電装ユニット(30)とが互いに通信可能な状態にて接続され、前記複数の電装ユニット(30)の各々が固有の識別子(ID)を有する、通信システム(1)であって、
前記複数の前記電装ユニット(30)の各々は、
前記識別子(ID)を設定するための抵抗器(35)を有し、
複数の前記抵抗器(35)は、
該複数の該抵抗器(35)が直列に接続された設定用回路を構成し、
前記制御装置(20)は、
前記設定用回路上の各々の前記抵抗器(35)における電圧値(Vid)の大きさに基づいて前記複数の前記電装ユニット(30)の各々の前記識別子(ID)を決定し、決定した前記識別子(ID)に関する信号を前記複数の前記電装ユニット(30)の各々に与える、
通信システム(1,2)。
(2)
上記(1)に記載の通信システム(1)において、
前記制御装置(20)が、
該通信システム(1)における制御対象である複数の電装品(40)の各々の目標作動量を定め、
前記複数の前記電装ユニット(30)の各々が、
前記複数の電装品(40)の各々と前記制御装置(20)との間を中継するように配置され、且つ、前記制御装置(20)に繋がる通信線(W2)を接続可能な通信ポート(P2)と、外部電源(10)に繋がる電源線(W1)を接続可能な電源ポート(P1)と、接地線(W3)を接続可能な接地ポート(P3)と、対応する前記電装品(40)に電力を出力可能な電装品ポート(P5,P6)と、前記設定用回路を形成するための設定用ポート(P7,P8)と、を有し、
前記通信ポート(P2)を介して前記制御装置(20)から前記目標作動量に関する信号を受け取り、前記目標作動量に対応する作動用電力を前記電源ポート(P1)を介して得た電力を用いて準備すると共に前記電装品ポート(P5,P6)を介して前記電装品(40)に与えることにより、前記電装品(40)の実際の作動量を前記目標作動量に一致させるように前記電装品(40)を作動させる、
通信システム(1,2)。
(3)
上記(2)に記載の通信システム(1)において、
前記設定用回路が、
前記制御装置(20)と前記複数の前記電装ユニット(30)との間の通信のための前記通信線(W2)の一部として形成されている、又は、前記通信線(W2)から独立した別の回路として形成されている、
通信システム(1,2)。
(4)
上記(1)〜上記(3)の何れか一つに記載の通信システムにおいて、
前記複数の前記電装ユニット(30)の各々が有する前記抵抗器(35)が、同一の大きさの抵抗値を有する、
通信システム(1,2)。