特許第6562887号(P6562887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562887
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】分岐構造及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/10 20060101AFI20190808BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20190808BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20190808BHJP
   H01R 11/11 20060101ALI20190808BHJP
   H01R 12/53 20110101ALI20190808BHJP
【FI】
   H02G15/10
   H01B7/00 305
   H01B7/00 301
   B60R16/02 620S
   H01R11/11 G
   H01R12/53
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-210509(P2016-210509)
(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公開番号】特開2018-74705(P2018-74705A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真史
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−294486(JP,A)
【文献】 実公平6−28727(JP,Y2)
【文献】 特開2016−147558(JP,A)
【文献】 実開昭61−123618(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/10
H02G 3/16
B60R 16/02
H01B 7/00
H01R 11/11
H01R 12/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒導体を有する配索材から構成される複数本の幹線が並列に配列された幹線ハーネスと、複数本の分岐線を有する枝線ハーネスと、を接続する分岐構造であって、
前記幹線に電気的に接続されると共に前記幹線と前記分岐線との間の導通経路の少なくとも一部を構成する接続端子、を備え、
前記接続端子は、
前記棒導体の外周面を直接覆う筒形状を有する接続筒部であって、該接続筒部の中空部に収容された前記棒導体の外周面を弾性的に直接押圧する押圧構造を有する接続筒部、を有する、
分岐構造。
【請求項2】
請求項1に記載の分岐構造であって、
前記接続端子が実装された回路基板と、前記回路基板に設けられたコネクタと、前記分岐線に電気的に接続された相手側コネクタと、を更に備え、
前記接続端子、前記回路基板、前記コネクタ及び前記相手側コネクタが、前記導通経路を構成する、
分岐構造。
【請求項3】
請求項1に記載の分岐構造であって、
前記接続端子が、前記接続筒部から延在するバスバー部を有し、
前記バスバー部の端部に設けられたコネクタと、前記分岐線に電気的に接続された相手側コネクタと、を更に備え、
前記接続端子、前記コネクタ及び前記相手側コネクタが、前記導通経路を構成する、
分岐構造。
【請求項4】
所定の電流容量を有する電源系ラインを少なくとも有すると共に車両の車体に配索される前記幹線ハーネスと、
前記車両に搭載された電装品に接続される前記枝線ハーネスと、
前記幹線ハーネスに供給される前記電源系ラインの電力を前記幹線ハーネスに接続される前記枝線ハーネスへ分配する制御ボックスと、を備え、
前記制御ボックスが、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の分岐構造により、前記幹線ハーネスと前記枝線ハーネスとを接続する、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒導体を有する配索材から構成される複数本の幹線を有する幹線ハーネスと、複数本の分岐線を有する枝線ハーネスと、を接続する分岐構造、及び、その分岐構造を用いたワイヤハーネス、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載された電源等と各種の電装品等とを接続するための車両用ワイヤハーネスが知られている。例えば、従来の車両用ワイヤハーネスの一つ(以下「従来ハーネス」という。)では、電源線およびアース線などの幹線を集約した幹線ハーネスと、電装品等に繋がる枝線ハーネスと、を接続するようになっている。換言すると、幹線ハーネスから枝線ハーネスを分岐させるようになっている。具体的には、この従来ハーネスは、分岐機構(分岐ボックス)に内蔵された圧接端子に幹線ハーネスの幹線を圧接させると共に、この圧接端子と枝線ハーネスの分岐線とを接続するようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−227089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来ハーネスに適用されている分岐機構では、圧接端子が一対の圧接刃を有しており、この一対の圧接刃の間に幹線を押し込むことにより、圧接刃が幹線の絶縁層などを貫通して導体芯線に到達し、圧接端子(圧接刃)と幹線(導体芯線)とが電気的に接続されるようになっている。このような接続の原理から、圧接端子は、幹線の押し込みに耐え得る構造(強度および大きさ等)を有するようになっている。
【0005】
上述した圧接端子の構造に起因し、幹線ハーネスを構成する幹線同士の間の距離(一の幹線と、その一の幹線に隣接する他の幹線と、の間の間隔)は、少なくとも上述した圧接端子を配置可能な程度の大きさを有する。換言すると、従来ハーネスは、その分岐機構に起因して幹線同士を密着させることが困難であり、その結果、分岐箇所において幹線ハーネスが大きなスペースを専有することになる。車両内(例えば、床下など)の限られたスペースに設置されるという車両用ワイヤハーネスの特性上、一般に、幹線ハーネスの専有スペースは出来る限り小さいことが望ましい。
【0006】
一方、近年、車両用ワイヤハーネスの軽量化および取り扱い性の向上等の観点から、幹線ハーネスの幹線として、アルミニウム等から構成された剛体棒状の導体(棒導体)に絶縁層を設けた配索材が用いられる場合がある。このような配索材に上述した分岐構造(圧接端子)を適用した場合、剛体である棒導体に圧接刃が十分に食い込まず、幹線(棒導体)と圧接端子との電気的接続が不完全となる可能性がある。換言すると、分岐箇所における電気的接続の信頼性が、従来の幹線(撚り線)を用いる場合に比べて低下する可能性がある。分岐箇所における確実な電気的接続を図るため、上述した棒導体を有する配索材に適した新たな分岐構造を確立することが望ましい。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、幹線ハーネスと枝線ハーネスとの分岐箇所における幹線ハーネスの専有スペースの小型化と、その分岐箇所における電気的接続の信頼性の向上と、を両立可能な分岐構造、及び、その分岐構造を用いたワイヤハーネス、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「分岐構造」は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
棒導体を有する配索材から構成される複数本の幹線が並列に配列された幹線ハーネスと、複数本の分岐線を有する枝線ハーネスと、を接続する分岐構造であって、
前記幹線に電気的に接続されると共に前記幹線と前記分岐線との間の導通経路の少なくとも一部を構成する接続端子、を備え、
前記接続端子は、
前記棒導体の外周面を直接覆う筒形状を有する接続筒部であって、該接続筒部の中空部に収容された前記棒導体の外周面を弾性的に直接押圧する押圧構造を有する接続筒部、を有する、
分岐構造であること。
(2)
上記(1)に記載の分岐構造であって、
前記接続端子が実装された回路基板と、前記回路基板に設けられたコネクタと、前記分岐線に電気的に接続された相手側コネクタと、を更に備え、
前記接続端子、前記回路基板、前記コネクタ及び前記相手側コネクタが、前記導通経路を構成する、
分岐構造であること。
(3)
上記(1)に記載の分岐構造であって、
前記接続端子が、前記接続筒部から延在するバスバー部を有し、
前記バスバー部の端部に設けられたコネクタと、前記分岐線に電気的に接続された相手側コネクタと、を更に備え、
前記接続端子、前記コネクタ及び前記相手側コネクタが、前記導通経路を構成する、
分岐構造であること。
【0009】
上記(1)の構成の分岐構造によれば、幹線に電気的に接続される接続筒部は、従来ハーネスの圧接端子のように幹線(導体)に食い込むことに代えて、棒導体の外周面を覆いながらその外周面を押圧する(例えば、接点としての押圧部を有する)ようになっている。よって、従来ハーネスの圧接端子のように導体への食い込みに耐え得るほどの強度・大きさ等を有する必要がなく、圧接端子に比べて小型化が可能である。その結果、分岐箇所における幹線ハーネスの小型化が可能となる。
【0010】
更に、上記構成の分岐構造によれば、接続端子(接続筒部)が棒導体の外周面を弾性的に押圧しながら棒導体と電気的に接続しているため、棒導体に変位・変形などが生じても、棒導体と接続端子との間の電気的接続を維持できる。特に、アルミニウム等の応力緩和が生じ易い材料を用いて棒導体が構成されている場合であっても、接続端子(接続筒部)の押圧構造が棒導体の応力緩和による変形に追従できる。よって、従来ハーネスの圧接端子(そのような追従の度合いが小さい又は追従しない)に比べ、電気的接続の信頼性を向上できる。
【0011】
したがって、上記構成の分岐構造は、幹線ハーネスと枝線ハーネスとの分岐箇所における幹線ハーネスの専有スペースの小型化と、その分岐箇所における電気的接続の信頼性の向上と、を両立可能である。
【0012】
上記(2)の構成の分岐構造によれば、回路基板の導体パターン及びコネクタを通じて、幹線に電気的に接続された接続端子(接続筒部)と分岐線(相手側コネクタ)とが導通される。よって、回路基板に各種のスイッチ及び制御回路などを設けることにより、枝線ハーネスが接続される電装品の相違(枝線ハーネスの分岐線の本数・仕様などの相違)を回路基板にて吸収できる。その結果、接続端子の共通化および形状の単純化を図ることができ、ひいてはワイヤハーネスの製造コストを抑制できる。
【0013】
上記(3)の構成の分岐構造によれば、接続端子(接続筒部から延びるバスバー部)と分岐線(相手側コネクタ)とが、上記(2)のように回路基板を介することなく、直接的に導通される。その結果、分岐構造を構成する部品点数を削減でき、ひいてはワイヤハーネスの製造コストを抑制できる。
【0014】
なお、上記(2)の構成の分岐構造および上記(3)の構成の分岐構造は、ワイヤハーネスの構造、分岐先の電装品の数および種類、並びに、許容し得る製造コスト等を考慮し、より好ましい方の分岐構造が適宜選択されればよい。ワイヤハーネスは、これら分岐構造の何れか一方のみを有してもよく、これら分岐構造の双方を有してもよい。
【0015】
更に、前述した目的を達成するために、本発明に係る「ワイヤハーネス」は、下記(4)を特徴としている。
(4)
所定の電流容量を有する電源系ラインを少なくとも有すると共に車両の車体に配索される前記幹線ハーネスと、
前記車両に搭載された電装品に接続される前記枝線ハーネスと、
前記幹線ハーネスに供給される前記電源系ラインの電力を前記幹線ハーネスに接続される前記枝線ハーネスへ分配する制御ボックスと、を備え、
前記制御ボックスが、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の分岐構造により、前記幹線ハーネスと前記枝線ハーネスとを接続する、
ワイヤハーネスであること。
【0016】
上記(4)の構成のワイヤハーネスによれば、所定の電流容量を有する電源系ラインを少なくとも有して車体に配索される幹線ハーネスと、幹線ハーネスに沿って分散配置された複数の制御ボックスを介して電装品である補機を幹線ハーネスに接続する枝線ハーネスとにより、単純な構造を有するワイヤハーネスを構成することができる。更に、幹線ハーネスと枝線ハーネスとの分岐箇所における幹線ハーネスの専有スペースの小型化と、その分岐箇所における電気的接続の信頼性の向上と、を両立できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、幹線ハーネスと枝線ハーネスとの分岐箇所における幹線ハーネスの専有スペースの小型化と、その分岐箇所における電気的接続の信頼性の向上と、を両立可能な分岐構造、及び、その分岐構造を用いたワイヤハーネス、を提供できる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスが配索された車体の概略斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る分岐構造に用いられる分岐ボックスの斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る分岐構造に用いられる分岐ボックスの分解斜視図である。
図4図4は、第1実施形態に係る分岐構造に用いられる分岐ボックスに収容される接続端子の斜視図である。
図5図5は、図3におけるA−A断面図である。
図6図6は、配索経路に屈曲部分を有するワイヤハーネスを説明するワイヤハーネスの平面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る分岐構造に用いられる分岐ボックスの斜視図である。
図8図8は、変形例1を説明する図であって、図8(a)は接続端子及び幹線の斜視図、図8(b)は図8(a)におけるB−B断面図、図8(c)は幹線の接続前における接続筒部の挿入口側から視た側面図、図8(d)は幹線が接続された状態での図8(a)におけるB−B断面図、図8(e)は幹線の接続時における幹線を断面視した接続筒部の挿入口側から視た側面図である。
図9図9は、変形例2を説明する図であって、図9(a)は接続端子及び幹線の斜視図、図9(b)は大径の幹線の接続時における幹線を断面視した接続筒部の挿入口側から視た側面図、図9(c)は小径の幹線の接続時における幹線を断面視した接続筒部の挿入口側から視た側面図である。
図10図10は、変形例3を説明する図であって、図10(a)は接続端子及び幹線の斜視図、図10(b)は図10(a)におけるC−C断面図である。
図11図11は、変形例4を説明する図であって、図11(a)は幹線の接続前における接続端子及び幹線の水平方向に沿う断面図、図11(b)は幹線の接続時における接続端子及び幹線の水平方向に沿う断面図である。
図12図12は、変形例5を説明する図であって、図12(a)は幹線の接続前における接続端子及び幹線の鉛直方向に沿う断面図、図12(b)は幹線の接続時における接続端子及び幹線の鉛直方向に沿う断面図である。
図13図13は、変形例6を説明する図であって、図13(a)は幹線の接続前における接続端子及び幹線の水平方向に沿う断面図、図13(b)は幹線の接続時における接続端子及び幹線の水平方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る分岐構造およびワイヤハーネスについて説明する。
【0021】
図1を参照しながら、本実施形態に係るワイヤハーネスの構成について説明する。図1に示すように、ワイヤハーネス10は、車載のメインバッテリやサブバッテリなどの電源Bの電力を車体1の各部の補機である電装品にそれぞれ供給する電力供給経路や、電装品との信号の送受信を行うために必要な伝送経路等として用いられる。
【0022】
ワイヤハーネス10は、幹線ハーネス11と、複数の枝線ハーネス12とを備えている。幹線ハーネス11は、例えば、剛体棒状の導体である棒導体13(丸棒形状の導体)の周囲に絶縁被覆13aが形成された電源線およびアース線等の幹線21(電源系ライン)と、プラスチック光ファイバ14及び被覆材14aによって構成された信号線22(通信ライン)とが、長手方向に沿って所定間隔でモールド成形された固定部材23(クランプ)によって一体的に保持されており、背骨(バックボーン)のような単純な形状を有する配索材として構成されている。
【0023】
棒導体13は、アルミニウム及びアルミニウム合金等の導電性金属材料から構成された断面円形状の丸棒である。棒導体13は、複数の素線を撚り合わせた撚り線と比較して高い剛性を有する剛体である。棒導体13は、銅線などと比較して軽量である。更に、棒導体13は、必要に応じて、あらゆる方向へ曲げることができる配索経路の自由度の高い配索材である。信号線22として、光ファイバに限らず、例えば銅および銅合金等から構成された素線を撚り合わせた撚り線などを用いることもできる。
【0024】
幹線ハーネス11は、フロア幹線ハーネス11aとインパネ幹線ハーネス11bとに大別される。フロア幹線ハーネス11aは、車室内フロアに沿って車体1の左右方向のほぼ中央部において車体1の前後方向に延びるように配置され、インパネ幹線ハーネス11bは、図示しないダッシュパネルの面に沿った箇所でリーンホースとほぼ平行になるように左右方向に向かって直線的に配置されている。インパネ幹線ハーネス11bとフロア幹線ハーネス11aとの接続部は、後述する制御ボックスである分岐制御ボックスEにおける分岐部を経由して互いに電気的に接続可能な状態になっている。即ち、幹線ハーネス11は、インパネ幹線ハーネス11bとフロア幹線ハーネス11aとによってT字状に似た形状に構成されている。
【0025】
枝線ハーネス12は、所定の分岐箇所において幹線ハーネス11から分岐するように幹線ハーネス11に接続されている。枝線ハーネス12は、その端部にコネクタCが接続されており、コネクタCに車体1の各部に設けられた電装品のコネクタが接続される。
【0026】
幹線ハーネス11には、幹線ハーネス11に沿って分散配置された複数の制御ボックスEが設けられている。各制御ボックスEは、幹線ハーネス11に供給される幹線21の電力及び信号線22の信号を幹線ハーネス11に分岐接続される枝線ハーネス12へ分配するための制御部を有している。これにより、各部の電装品には、電源Bからの電力供給及び各制御ボックスEからの信号分配が行われる。なお、後述するように、複数の制御ボックスEのうちの一部の制御ボックス(分岐ボックス100A)が、本発明の第1実施形態に係る分岐構造を有している。
【0027】
ワイヤハーネス10では、幹線ハーネス11と枝線ハーネス12との接続箇所に、分岐ボックス100Aが設けられている。そして、この分岐ボックス100Aによって幹線ハーネス11と枝線ハーネス12とが接続されている。
【0028】
次いで、分岐ボックス100Aにおける分岐構造について説明する。なお、ここでは、分岐構造の説明を容易にするため、幹線ハーネス11の並列に配列された4本の幹線21に枝線ハーネス12の4本の分岐線71を接続する分岐構造を一例として説明する。また同様の理由により、信号線22の接続構造についての説明は省略する。
【0029】
図2及び図3に示すように、分岐ボックス100Aは、収容ケース30を備えている。収容ケース30は、下ケース31と、カバー32と、から構成されている。下ケース31及びカバー32は、それぞれ絶縁性を有する樹脂から形成されている。
【0030】
下ケース31は、矩形状の底面板部33と、底面板部33の周縁に形成された周壁部34とを有している。周壁部34は、互いに対向配置された端面板部35及び側面板部36を有している。それぞれの端面板部35には、対向位置に、複数(本例では4つ)の幹線挿通凹部35aが形成されている。更に、側面板部36の一方には、コネクタ収容凹部36aが形成されている。
【0031】
カバー32は、矩形状の上面板部38と、上面板部38の周縁に形成された周壁部39とを有している。カバー32は、下ケース31に対して、その上方から装着されて固定される。これにより、下ケース31には、その周壁部34の上部における周囲をカバー32の周壁部39が覆うようにカバー32が被せられる。
【0032】
収容ケース30には、幹線ハーネス11を構成する複数(本例では4本)の幹線21が挿し込まれる。図3に示すように、それぞれの幹線21は、分割されており、その端部では絶縁被覆13aが除去されている。そして、この分割された幹線21の絶縁被覆13aが除去された端部が収容ケース30内に挿し込まれる。
【0033】
図4及び図5に示すように、収容ケース30内には、複数の接続端子50が設けられている。これらの接続端子50は、接続筒部51を有している。接続筒部51は、棒状体である幹線21の外周面を覆う筒形状を有している。接続筒部51は、その中空部52が、幹線21の外径より僅かに大きな内径を有しており、接続筒部51には、その一端側である挿入口52aから中空部52内に幹線21が挿し込まれる。
【0034】
各接続筒部51は、押圧片53を有している。押圧片53は、接続筒部51の一部として構成され、接続筒部51の軸方向に沿って延在されている。押圧片53は、その基端側が、接続筒部51の挿入口52a側にて連結されており、先端側が自由端となっている。押圧片53は、自由端である先端部の近傍部分が接続筒部51の中心側へ突出した押圧部53aとされている。接続筒部51の中心側へ突出された押圧片53の押圧部53aと接続筒部51の内周面における押圧部53aとの対向箇所との間隔は、幹線21の外径よりも小さい。これにより、接続筒部51に挿し込まれた幹線21は、押圧片53によって弾性的に押圧されて接続筒部51の内周面に面接触される。これにより、幹線21と接続筒部51とが導通される。このように、接続筒部51は、幹線21の外周面を押圧片53が弾性的に押圧する押圧構造を有している。
【0035】
上記構成の分岐ボックス100Aでは、接続端子50の接続筒部51の挿入口52aから幹線21の端部が挿し込まれると、幹線21は、押圧片53の押圧部53aによって弾性的に押圧されて接続筒部51の内周面に押し付けられて接触され、幹線21と接続筒部51とが導通されることになる。
【0036】
互いに対向する幹線21が挿入される接続端子50は、接続筒部51における挿入口52aと反対側の端部が連結板部55に連結されている。これにより、互いに対向する幹線21が挿入される接続端子50同士は、連結板部55によって互いに導通されている。連結板部55には、接続筒部51の径方向外方である下方へ突出するピン部56が形成されている。
【0037】
収容ケース30内には、硬質のプリント配線基板から構成された回路基板60が幹線21の配列方向に沿って設けられている。回路基板60には、接続端子50を連結する連結板部55のピン部56が挿入される挿通孔61(スルーホール)が形成されている。挿通孔61は、幹線21の配列と同ピッチにて回路基板60に形成されている。接続端子50を連結する連結板部55のピン部56は、挿通孔61へ挿し込まれており、回路基板60に形成された導体パターン(図示略)にはんだ付けされて電気的に接続されている。
【0038】
更に、回路基板60には、一側縁部に、コネクタ62が設けられている。コネクタ62は、ハウジング63を有しており、ハウジング63の内部には、接続ピン64が設けられている。コネクタ62の接続ピン64は、回路基板60の導体パターンに電気的に接続されている。コネクタ62は、収容ケース30の下ケース31に形成されたコネクタ収容凹部36aに配置され、ハウジング63の一部が収容ケース30から外部に露出されている。
【0039】
コネクタ62には、枝線ハーネス12に設けられた分岐側コネクタ70が接続される。分岐側コネクタ70には、枝線ハーネス12を構成する分岐線71の端部に接続された端子(図示略)が収容されている。そして、分岐側コネクタ70をコネクタ62へ接続すると、この分岐側コネクタ70に設けられた端子がコネクタ62の接続ピン64に電気的に接続される。これにより、枝線ハーネス12を構成する分岐線71が、接続ピン64、回路基板60の導体パターン及び接続端子50を介して幹線ハーネス11の幹線21と電気的に接続される。
【0040】
このように、上記の分岐ボックス100Aを用いた第1実施形態に係る分岐構造によれば、筒形状の接続筒部51は、従来の圧接端子に比べ、幹線21の配列方向(例えば、図5における左右方向)の大きさを小さくできる。よって、幹線21同士の間隔を極力狭めることができ、分岐箇所における幹線ハーネス11の小型化が可能となる。
【0041】
更に、接続端子50が棒導体である幹線21の外周面を弾性的に押圧しながら幹線21と電気的に接続しているため、幹線21と接続端子50との間の電気的接続の信頼性を向上できる。特に、棒導体である幹線21がアルミニウム等の応力緩和し易い材料で形成されている場合であっても、このような弾性的な押圧が無い場合に比べ、長期間安定した電気的接続を図り得る。
【0042】
更に、回路基板60の導体パターンを通じて、幹線21に接合された接続端子50と分岐線71とを導通させることができるため、接続端子50の共通化および形状の単純化を図ることができ、ひいてはワイヤハーネス10の製造コストを抑制できる。
【0043】
そして、この分岐構造を備えた本実施形態に係るワイヤハーネス10によれば、所定の電流容量を有する電源系ライン(幹線21)を少なくとも有して車体1に配索される幹線ハーネス11と、幹線ハーネス11に沿って分散配置された複数の制御ボックスEを介して電装品である補機を幹線ハーネス11に接続する枝線ハーネス12とにより、単純な構造を有するワイヤハーネス10を構成することができる。更に、幹線ハーネス11と枝線ハーネス12との分岐箇所における幹線ハーネス11の専有スペースの小型化と、その分岐箇所における電気的接続の信頼性の向上と、を両立できる。
【0044】
特に、実施形態に係る分岐構造によれば、分割された幹線21同士を、それぞれ接続端子50によって電気的に接続するため、接続端子50の接続筒部51の向きを変えて幹線21の接続方向を調整すれば、分割された幹線21同士が所定の角度をなすように接続箇所に分割された幹線21を接続できる(例えば、図6を参照)。これにより、必要に応じて幹線ハーネス11の配索経路を屈曲させることができ、配索の自由度を高めることができる。また、接続筒部51への幹線21の挿入箇所において、幹線ハーネス11の配索経路の長さのばらつきを吸収しつつ配索することができ、配索作業性を向上させることができる。
【0045】
例えば、ワイヤハーネス10は、車体1の形状等に応じて、幹線ハーネス11の配索経路を屈曲させる必要が生じる場合がある。このように幹線ハーネス11の配索経路を屈曲させる場合、上記の分岐ボックス100Aを用いれば、幹線ハーネス11の配索経路を容易に屈曲させることができる。
【0046】
ここで、図6を参照しながら、幹線ハーネス11の配索経路を屈曲させたワイヤハーネス10について、より詳細に説明する。図6に示すように、このワイヤハーネス10は、幹線ハーネス11に対する枝線ハーネス12の分岐箇所で幹線ハーネス11の配索経路が屈曲されている。このようなワイヤハーネス10では、幹線ハーネス11と枝線ハーネス12との接続箇所に、幹線ハーネス11の配索方向を屈曲させることが可能な分岐ボックス100Aが設けられる。これにより、このワイヤハーネス10では、分岐ボックス100Aによって幹線ハーネス11と枝線ハーネス12とが電気的に接続されて幹線ハーネス11から枝線ハーネス12が分岐されており、更に、幹線ハーネス11の配索経路が屈曲されている。
【0047】
<第2実施形態>
次いで、第2実施形態に係る分岐構造ついて説明する。なお、以降の説明では、上記第1実施形態と同一構成部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
図7に示すように、第2実施形態に係る分岐構造では、分岐ボックス100Bを用いて幹線ハーネス11と枝線ハーネス12とを接続する。
【0049】
分岐ボックス100Bは、分岐ボックス100Aのような回路基板60を備えず、バスバー部57を有する接続端子50Bを備えている。バスバー部57は、連結板部55の下端から下方へ延び、更に、幹線ハーネス11の長手方向と直交する幹線21の配列方向へ延在されている。各幹線21には、コネクタ62に接続される枝線ハーネス12との距離に応じてバスバー部57の長さが異なる接続端子50Bが接続される。そして、それぞれの接続端子50Bのバスバー部57の端部は、接続ピンとしてコネクタ62のハウジング63内に収容される。
【0050】
分岐ボックス100Bの下ケース31には、幹線収容溝31a及びバスバー部収容溝31bが形成されている。幹線収容溝31aには、幹線ハーネス11の各幹線21が挿し込まれる接続端子50Bの接続筒部51が収容されて保持される。バスバー部収容溝31bには、各接続端子50Bの連結板部55から延びるバスバー部57が収容されて保持される。
【0051】
第2実施形態では、分岐ボックス100Bのコネクタ62に枝線ハーネス12の分岐側コネクタ70が接続される。これにより、枝線ハーネス12を構成する分岐線71が、接続端子50Bを介し、幹線ハーネス11の幹線21と電気的に接続される。
【0052】
この第2実施形態の場合においても、筒形状の接続筒部51を備えることにより、幹線21同士の間隔を極力狭めることができ、分岐箇所における幹線ハーネス11の小型化が可能となる。
【0053】
更に、接続端子50Bが棒導体である幹線21の外周面を弾性的に押圧しながら幹線21と電気的に接続しているため、幹線21と接続端子50Bとの間の電気的接続の信頼性を向上できる。特に、棒導体である幹線21がアルミニウム等の応力緩和し易い材料によって形成されている場合であっても、このような弾性的な押圧が無い場合に比べ、長期間安定した電気的接続を図り得る。
【0054】
特に、第2実施形態では、接続筒部51から延びるバスバー部57が接続端子50Bに設けられることにより、回路基板60を用いずに、幹線21と接合された接続端子50Bと分岐線71とを導通させることができる。これにより、分岐構造を構成する部品点数の削減により、ワイヤハーネス10の製造コストを下げることができる。
【0055】
第2実施形態に係る分岐構造を備えたワイヤハーネス10によれば、所定の電流容量を有する電源系ラインを少なくとも有して車体1に配索される幹線ハーネス11と、幹線ハーネス11に沿って分散配置された複数の制御ボックスを介して補機を幹線ハーネス11に接続する枝線ハーネス12とにより、単純な構造を有するワイヤハーネス10を構成することができると共に、幹線ハーネス11における枝線ハーネス12の分岐箇所における幹線ハーネスの小型化が可能となる。
【0056】
第2実施形態の場合においても、接続端子50Bの接続筒部51の向きを変えて幹線21の接続方向を調整すれば、分割された幹線21の接続箇所に角度を付けることができる。これにより、必要に応じて幹線ハーネス11の配索経路を屈曲させることができ、配索の自由度を高めることができる(図6を参照)。更に、接続筒部51への幹線21の挿入箇所において、幹線ハーネス11の配索経路の長さのばらつきを吸収しつつ配索することができ、配索作業性を向上させることができる。
【0057】
ところで、上記第1実施形態および第2実施形態における分岐ボックス100A,100Bには、種々の接続端子を用いることができる。以下、接続端子の変形例について説明する。なお、上記第1,2実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
<変形例1>
図8を参照しながら、変形例1について説明する。
【0059】
図8(a)〜図8(c)に示すように、変形例1に係る接続端子50Cは、筒形状の接続筒部51が、断面視U字形状の接触板部81と、平板状の押圧板部82と、を有している。接触板部81は、円弧状に形成された円弧部81aを有している。この円弧部81aは、幹線21の外径と同一内径の円弧に形成されている。接続筒部51には、押圧板部82に押圧片53が形成されており、この押圧片53に対して対向位置に円弧部81aが設けられている。
【0060】
図8(d)及び図8(e)に示すように、接続端子50Cでは、接続筒部51の挿入口52aから幹線21の端部が挿し込まれると、幹線21は、押圧板部82の押圧片53の押圧部53aによって弾性的に押圧されて接触板部81に押し付けられる。これにより、幹線21は、その外周面が、幹線21の外径と同一内径の円弧状に形成された接触板部81の円弧部81aに面接触されることとなる。
【0061】
このように、変形例1に係る接続端子50Cによれば、幹線21の外周面が、幹線21の外径と同一の内径の円弧状に形成された接触板部81の円弧部81aに面接触されるため、幹線21と接続筒部51とを確実に面接触させて大きな接触面積を確保できる。
【0062】
<変形例2>
図9を参照しながら、変形例2について説明する。
【0063】
図9(a)及び図9(b)に示すように、変形例2に係る接続端子50Dにおいても、筒形状の接続筒部51が、断面視U字形状の接触板部81と、平板状の押圧板部82とを有しており、接触板部81は、円弧状に形成された円弧部81aを有している。
【0064】
接続端子50Dでは、押圧板部82の板厚が厚くされて剛性が高められており、これにより、押圧片53の弾性力も高められている。これに対し、接触板部81は、板厚が薄くされて容易に変形可能とされている。
【0065】
図9(b)に示すように、接続端子50Dでは、例えば、外径が円弧部81aの内径と同一の幹線21の端部が接続筒部51の挿入口52aから中空部52に挿し込まれると、幹線21は、押圧板部82の押圧片53の押圧部53aによって弾性的に押圧されて接触板部81に押し付けられ、その外周面が接触板部81の円弧部81aに面接触される。
【0066】
これに対し、図9(c)に示すように、円弧部81aの内径よりも小さな外径を有する幹線21が接続筒部51の挿入口52aから中空部52に挿し込まれた場合、幹線21は、押圧板部82の押圧片53の押圧部53aによって弾性的に押圧されて接触板部81に押し付けられることにより、板厚の薄くされた接触板部81が押圧された幹線21により、その外形に沿って変形する。これにより、幹線21の外周面に接触板部81が面接触される。
【0067】
このように、変形例2に係る接続端子50Dによれば、板厚の薄くされた接触板部81が押圧された幹線21により、その外形に沿って変形するため、異なる外径の幹線21と接続する際、幹線21の外周面に接触板部81を確実に面接触させることができ、幹線21と接続筒部51とを確実に面接触させて大きな接触面積を確保できる。
【0068】
<変形例3>
図10を参照しながら、変形例3について説明する。
【0069】
図10(a)及び図10(b)に示すように、変形例3に係る接続端子50Eにおいても、筒形状の接続筒部51が、断面視U字形状の接触板部81と、平板状の押圧板部82とを有しており、接触板部81は、円弧状に形成された円弧部81aを有している。
【0070】
接続端子50Eでは、押圧片53の先端が係止端53bとされており、係止端53bは、押圧片53の押圧部53aよりも接続筒部51の中心側へ突出されている。
【0071】
更に、接続端子50Eに挿し込まれる幹線21の端部近傍には、周方向に沿って係止溝21bが形成されている。
【0072】
接続端子50Eでは、接続筒部51の挿入口52aから幹線21の端部が中空部52に挿し込まれると、幹線21は、押圧片53の押圧部53aによって弾性的に押圧されて接触板部81に押し付けられる。これにより、幹線21は、その外周面が、幹線21の外径と同一内径の円弧状に形成された接触板部81の円弧部81aに面接触される。
【0073】
更に、接続端子50Eでは、接続筒部51の中空部52に幹線21の端部が挿し込まれることにより、幹線21の端部近傍に形成された係止溝21bに、押圧片53の先端の係止端53bが入り込む。これにより、幹線21は、その端部近傍が押圧片53の係止端53bによって係止され、接続筒部51の抜けが防止される。
【0074】
このように、変形例3に係る接続端子50Eによれば、押圧片53の係止端53bが幹線21の端部近傍を係止することにより、幹線21が接続筒部51から抜け止めされるため、幹線21と接続筒部51との良好な接続状態を確実に維持させることができる。
【0075】
<変形例4>
図11を参照しながら、変形例4について説明する。
【0076】
図11(a)に示すように、変形例4に係る接続端子50Fでは、押圧片53の先端が当接端53cとされており、この当接端53cは、接続筒部51から側方へ突出されている。押圧片53は、互いに隣接する一対の接続端子50Fの対向位置に形成されている。
【0077】
互いに隣接する一対の接続端子50Fにおいて、接続筒部51の押圧片53の当接端53cは、互いに近接する方向へ突出されており、当接端53c同士の間には、絶縁材料から形成された板状の絶縁部材91が配置されて互いに絶縁されている。そして、互いに隣接する一対の接続端子50Fでは、押圧片53の当接端53c同士が絶縁部材91を介して互いに突き合わされている。
【0078】
図11(b)に示すように、接続端子50Fでは、接続筒部51の挿入口52aから幹線21の端部が中空部52に挿し込まれると、幹線21は、押圧片53の押圧部53aによって弾性的に押圧されて接続筒部51の内周面に押し付けられる。これにより、幹線21は、その外周面が接続筒部51の内周面に面接触される。このとき、互いに隣接する一対の接続端子50Fでは、押圧片53の先端の当接端53cが絶縁部材91を介して互いに突き合わされているため、押圧片53は、接続筒部51の外側への変位が規制される。したがって、隣接する接続筒部51の押圧片53からの反力により、幹線21に対する押圧片53の弾性力が高められ、幹線21は、接続筒部51の内周面に対して高い接触荷重で接触される。
【0079】
このように、変形例4に係る接続端子50Fによれば、隣接する接続筒部51の押圧片53からの反力により、幹線21に対する押圧片53の弾性力を高めることができ、これにより、幹線21を接続筒部51の内周面に高い接触荷重で接触させ、幹線21と接続筒部51とを確実に接触させることができる。
【0080】
<変形例5>
図12を参照しながら、変形例5について説明する。
【0081】
図12(a)に示すように、変形例5に係る接続端子50Gにおいても、押圧片53の先端が当接端53cとされている。押圧片53は、接続筒部51における回路基板60側に形成されている。接続筒部51の押圧片53の当接端53cは、回路基板60側へ突出されて回路基板60の表面に突き当てられている。また、接続端子50G同士を連結する連結板部55は、ネジ95及びナット96によって回路基板60に固定されている。
【0082】
図12(b)に示すように、接続端子50Gでは、接続筒部51の挿入口52aから幹線21の端部が中空部52に挿し込まれると、幹線21は、押圧片53の押圧部53aによって弾性的に押圧されて接続筒部51の内周面に押し付けられる。これにより、幹線21は、その外周面が接続筒部51の内周面に面接触される。このとき、接続筒部51の押圧片53の先端の当接端53cが回路基板60に突き当てられているため、押圧片53は、接続筒部51の外側への変位が規制される。したがって、回路基板60からの反力により、幹線21に対する押圧片53の弾性力が高められ、幹線21は、接続筒部51の内周面に対して高い接触荷重で接触される。
【0083】
このように、変形例5に係る接続端子50Gによれば、回路基板60からの反力により、幹線21に対する押圧片53の弾性力を高めることができ、これにより、幹線21を接続筒部51の内周面に高い接触荷重で接触させ、幹線21と接続筒部51とを確実に接触させることができる。
【0084】
<変形例6>
図13を参照しながら、変形例6について説明する。
【0085】
図13(a)及び図13(b)に示すように、変形例6に係る接続端子50Hは、押圧片53のない接続筒部51を有している。接続筒部51は、円筒状に形成されており、その両端を除く部分の内径が幹線21の外径よりも僅かに小径に形成されている。また、接続筒部51の挿入口52aは、幹線21の挿入方向に向かって次第に窄まるテーパ形状に形成されている。
【0086】
接続端子50Hでは、幹線21の外径よりも僅かに小径に形成された接続筒部51の中空部52内に幹線21の端部が圧入される。これにより、幹線21の外周面には、接続筒部51の内周面が密着されて面接触される。
【0087】
更に、接続端子50Hでは、接続筒部51の挿入口52aから幹線21の端部を圧入する際、テーパ形状の挿入口52aによって幹線21が中空部52内に案内される。これにより、接続筒部51への幹線21の圧入を円滑に行うことができる。
【0088】
このように、変形例6に係る接続端子50Hによれば、接続筒部51の中空部52内に圧入された幹線21の外周面に接続筒部51の内周面が密着されて面接触されるため、幹線21と接続筒部51との良好な導通状態を確保することができる。しかも、幹線21の外径のばらつきも吸収することができ、また、押圧片53のない単純形状であるため、製造コストを削減できる。
【0089】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0090】
例えば、上記実施形態および変形例では、幹線ハーネス11を構成する幹線21の配索材として丸棒状の棒導体13が用いられている。しかし、棒導体13は、丸棒状に限らず、角棒などの断面多角形の剛体でも良い。丸棒状の棒導体13は、軸回りに回転しても断面円形の接続筒部51と均一に面接触させ易い。更に、上下左右のどの方向にも容易に曲げられる。そのため、丸棒状の棒導体13を用いることが好ましい。なお、断面多角形の剛体からなる棒導体を有する配索材を幹線21として用いる場合、接続端子50の接続筒部51として、幹線21の外周面に面接触する断面形状を有する筒形状を有するものを用いることが好ましい。
【0091】
更に、円筒状の接続筒部51に複数の押圧片53を設けても良い。この場合、複数の押圧片53は、周方向に等間隔に配置するのが好ましい。
【0092】
更に、幹線21は、接続端子50(接続筒部51)との接続の際に予め設けられた絶縁被覆13aを除去することによって接続箇所を露出させても良く、接続端子50(接続筒部51)との接続の後に接続箇所を除く他の部分に後工程にて絶縁被覆13aを設けても良い。
【0093】
ここで、上述した本発明に係る分岐構造およびワイヤハーネスの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(4)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
棒導体を有する配索材から構成される複数本の幹線(21)を有する幹線ハーネス(11)と、複数本の分岐線(71)を有する枝線ハーネス(12)と、を接続する分岐構造であって、
前記幹線(21)に電気的に接続されると共に前記幹線(21)と前記分岐線(71)との間の導通経路の少なくとも一部を構成する接続端子(50)、を備え、
前記接続端子(50)は、
前記棒導体(13)の外周面を覆う筒形状を有する接続筒部(51)であって、該接続筒部(51)の中空部(52)に収容された前記棒導体(13)の外周面を弾性的に押圧する押圧構造を有する接続筒部(51)、を有する、
分岐構造。
(2)
上記(1)に記載の分岐構造であって、
前記接続端子(50)が実装された回路基板(60)と、前記回路基板(60)に設けられたコネクタ(62)と、前記分岐線(71)に電気的に接続された相手側コネクタ(70)と、を更に備え、
前記接続端子(50)、前記回路基板(60)、前記コネクタ(62)及び前記相手側コネクタ(70)が、前記導通経路を構成する、
分岐構造。
(3)
上記(1)に記載の分岐構造であって、
前記接続端子(50B)が、前記接続筒部(51)から延在するバスバー部(57)を有し、
前記バスバー部(57)の端部に設けられたコネクタ(62)と、前記分岐線(71)に電気的に接続された相手側コネクタ(70)と、を更に備え、
前記接続端子(50B)、前記コネクタ(62)及び前記相手側コネクタ(70)が、前記導通経路を構成する、
分岐構造。
(4)
所定の電流容量を有する電源系ラインを少なくとも有すると共に車両の車体(1)に配索される前記幹線ハーネス(11)と、
前記車両に搭載された電装品に接続される前記枝線ハーネス(12)と、
前記幹線ハーネス(11)に供給される前記電源系ラインの電力を前記幹線ハーネス(11)に接続される前記枝線ハーネス(12)へ分配する制御ボックス(E)と、を備え、
前記制御ボックス(E)が、
(1)〜(3)のいずれかに記載の分岐構造により、前記幹線ハーネス(11)と前記枝線ハーネス(12)とを接続する、
ワイヤハーネス。
【符号の説明】
【0094】
1 車体
10 ワイヤハーネス
11 幹線ハーネス
12 枝線ハーネス
21 幹線(棒導体)
50,50B〜50H 接続端子
51 接続筒部
57 バスバー部
60 回路基板
62 コネクタ
70 分岐側コネクタ(相手側コネクタ)
71 分岐線
E 制御ボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13