(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二口金の前記当接面における前記溝部が形成されている範囲の面積に対する、当該範囲における前記溝部及び前記第二坏土導入孔の開口部分の合計面積の比率が、40〜90%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体成形用口金。
押出成形するハニカム成形体の端面の面積に対する、前記第一口金の前記中央部の面積の割合が、30〜70%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体成形用口金。
前記第一スリットのうちの一つのセルを取り囲むスリットと、前記第二スリットのうちの一つのセルを取り囲むスリットとが、互いに交差する方向に延びるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカム構造体成形用口金。
前記第一スリットによって押出されるハニカム成形体のセル構造の配列方向と、前記第二スリットによって押出されるハニカム成形体のセル構造の配列方向とが、互いに交差する方向に延びるものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のハニカム構造体成形用口金。
前記第一口金は、前記中央部と前記外周部とで、前記第一坏土導入孔の開口径、及びそれぞれの前記第一坏土導入孔の相互間の間隔が同一である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のハニカム構造体成形用口金。
2つ以上の前記第二口金を有し、前記第二口金を交換することにより、前記溝部の溝の深さを変更可能に構成されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のハニカム構造体成形用口金。
2つ以上の前記第一口金を有し、前記第一口金を交換することにより、前記溝部の溝の深さを変更可能に構成されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載のハニカム構造体成形用口金。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1に記載の口金は、原料の押出方向における上流側に位置する第1金型と、下流側に位置する第2金型とを備えたものである。上記第1金型は、押出方向の下流側に周囲から突出する凸部を有し、また、上記第2金型は、凸部に嵌合する貫通孔を有している。そして、特許文献1に記載の口金においては、第1金型の凸部が第2金型の貫通孔に挿入されて、第1金型と第2金型とが一体化されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の口金は、2種類のセル構造を有するハニカム構造体を作製するためのハニカム成形体を成形するための口金とした場合に、設計上の制約があるという問題があった。即ち、通常、ハニカム成形体を成形するための口金においては、口金基材の坏土排出面側に、ハニカム成形体のセル構造に対応した「格子状のスリット」が形成されている。そして、このような口金においては、格子状のスリットの交点部分に連通するように、原料供給穴としての裏孔が形成されている。特許文献1に記載の口金において、第1金型と第2金型とで、それぞれのスリットの形状が異なる場合には、第1金型における全ての裏孔(即ち、第1原料供給穴)と、第2金型における全ての裏孔(即ち、第2原料供給穴)とを完全に一致させることは困難である。全ての裏孔が一致しないと、第1金型と第2金型とを一体化した場合に、口金内における坏土の移動が阻害され、均一な押出成形が困難となる。このため、特許文献1に記載の口金において、第1金型と第2金型に形成するそれぞれのスリットの形状は、上記したような坏土の移動が阻害されないような形状を選択する必要があり、設計上の自由度が非常に低いものであった。
【0008】
特許文献2及び3に記載の口金は、2種類のセル構造を有するハニカム成形体を成形するための口金ではなく、最外周部のみのセル品質の向上を目的とした口金である。そして、特許文献2及び3に記載の口金は、2種類のセル構造の形状、及びその形成範囲が広範囲に亘って変化する種々のハニカム成形体の成形には対応できていないという問題があった。例えば、2種類のセル構造を有するハニカム構造体においては、中央部分のセル構造と外周部分のセル構造の境界に、中央部分のセル構造を囲繞するように配設された境界壁を有することがある。境界壁は、押出成形時において、中央部分及び外周部分のセル構造を構成する隔壁に比して、成形原料としての坏土を大量に必要とする。特許文献2及び3に記載の口金によって、上記のような境界壁を有するハニカム成形体を成形する際に、境界壁を形成するための坏土の供給が追い付かず、境界壁及びその近傍において、成形不良を引き起こすことがある。また、特許文献2及び3に記載の口金は、最外周部のみのセル品質の向上を目的としているため、シェル部の強度に問題があり、シェル部の形成範囲を単に拡張しただけでは、シェル部が変形してしまう等の問題が懸念される。
【0009】
特許文献4に記載の口金は、押出圧を利用して隣接したダイボディ(die body)にくさびで締める、又はかみ合わせる構造であるため、坏土への耐圧性が低く、口金の破損が生じ易いという問題があった。また、特許文献4に記載の口金は、裏孔の位置ずれを誘発し易く、成形不良を生じ易いという問題もあった。
【0010】
本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたものである。本発明は、中央部と外周部とのセル構造が異なるハニカム成形体を高品質に成形することが可能なハニカム構造体成形用口金を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって、以下のハニカム構造体成形用口金が提供される。
【0012】
[1] 成形原料としての坏土の押出方向の上流側に配置され、坏土排出面側の中央部が前記押出方向の下流側に向かって突出した凸部を有する第一口金と、
前記第一口金の下流側に配置され、前記凸部と相補的な形状を呈する環状の第二口金と、を備え、
前記第一口金の前記中央部には、第一坏土導入孔と、当該第一坏土導入孔に連通した格子状の第一スリットとが形成され、
前記第一口金の前記中央部を取り囲む外周部には、当該第一口金の前記外周部を貫通するように前記第一坏土導入孔が形成され、
環状の前記第二口金には、前記第一口金の前記外周部に形成された前記第一坏土導入孔から排出された前記坏土が導入される第二坏土導入孔と、当該第二坏土導入孔に連通した格子状の第二スリットとが形成され、
前記第一口金の前記外周部の前記第一坏土導入孔の開口位置と、前記第二口金の前記第二坏土導入孔の開口位置とが、少なくとも一部において一致しておらず、且つ、
前記第一口金の凸部の外周面と環状の前記第二口金の内周面との間に、前記坏土を環状に押出成形するための隙間部を有し、
前記第一口金と前記第二口金の当接面に、前記第一坏土導入孔と前記第二坏土導入孔との相互間で前記坏土の移動が行われる溝部を有する、ハニカム構造体成形用口金。
【0013】
[2] 前記第一スリットの形状と、前記第二スリットの形状とが異なるものである、前記[1]に記載のハニカム構造体成形用口金。
【0014】
[3] 前記溝部が、前記第二口金に形成されている、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体成形用口金。
【0015】
[4] 前記溝部の幅が、0.1〜1.5mmである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0016】
[5] 前記溝部の溝の深さが、0.1〜5.0mmである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0017】
[6]前記第二口金の前記当接面における前記溝部が形成されている範囲の面積に対する、当該範囲における前記溝部及び前記第二坏土導入孔の開口部分の合計面積の比率が、40〜90%である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0018】
[7] 押出成形するハニカム成形体の端面の面積に対する、前記第一口金の前記中央部の面積の割合が、30〜70%である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0019】
[8] 前記第一スリットのうちの一つのセルを取り囲むスリットと、前記第二スリットのうちの一つのセルを取り囲むスリットとが、互いに交差する方向に延びるものである、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0020】
[9] 前記第一スリットによって押出されるハニカム成形体のセル構造の配列方向と、前記第二スリットによって押出されるハニカム成形体のセル構造の配列方向とが、互いに交差する方向に延びるものである、前記[1]〜[8]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0021】
[10] 前記第一口金は、前記中央部と前記外周部とで、前記第一坏土導入孔の開口径、及びそれぞれの前記第一坏土導入孔の相互間の間隔が同一である、前記[1]〜[9]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0022】
[11] 2つ以上の前記第二口金を有し、前記第二口金を交換することにより、前記溝部の溝の深さを変更可能に構成されている、前記[1]〜[10]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0023】
[12] 2つ以上の前記第一口金を有し、前記第一口金を交換することにより、前記溝部の溝の深さを変更可能に構成されている、前記[1]〜[11]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【発明の効果】
【0024】
本発明のハニカム構造体成形用口金は、坏土排出面側の中央部が坏土の押出方向の下流側に向かって突出した凸部を有する第一口金と、第一口金の凸部と相補的な形状を呈する環状の第二口金と、を備えたものである。そして、本発明のハニカム構造体成形用口金においては、第一口金と第二口金の当接面に、第一坏土導入孔と第二坏土導入孔との相互間で坏土の移動が行われる溝部を有することを特徴とする。
【0025】
本発明のハニカム構造体成形用口金によれば、中央部と外周部とのセル構造が異なるハニカム成形体を高品質に成形することができる。即ち、第一口金の第一坏土導入孔と、第二口金の第二坏土導入孔との位置が一致していなくとも、第一口金と第二口金の当接面に形成された溝部により、第二坏土導入孔に導入される坏土の流量分布を均等化することができる。したがって、本発明のハニカム構造体成形用口金によれば、第二口金の第二スリットからの坏土の排出量が均等化され、ハニカム成形体を高品質に成形することができる。
【0026】
また、本発明のハニカム構造体成形用口金によれば、口金交換時やラム成形(
ram molding)停止時において、口金に背圧(Back Pressure)が生じたとしても、第二口金の変形を有効に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0029】
(1)ハニカム構造体成形用口金:
本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態について説明する。ここで、
図1は、本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態の坏土排出面側を模式的に示す平面図である。
図2は、
図1に示すハニカム構造体成形用口金の坏土導入面側の平面図である。
図3は、
図1に示すハニカム構造体成形用口金を構成する第一口金の坏土排出面側の平面図である。
図4は、
図1に示すハニカム構造体成形用口金を構成する第二口金の坏土排出面側の平面図である。
図5は、
図1に示すハニカム構造体成形用口金を構成する第二口金の坏土導入面側の平面図である。
図6は、
図1に示すハニカム構造体成形用口金のA−A’断面
を模式的に示す断面図である。
図7は、
図6の一部を拡大した拡大断面図である。なお、
図3及び
図5においては、第一口金と第二口金の当接面を、それぞれハッチングを付して示している。
【0030】
図1〜
図7に示すように、本実施形態のハニカム構造体成形用口金100は、第一口金10と、第二口金20と、を備えたものである。第一口金10は、成形原料としての坏土の押出方向Xの上流側に配置され、坏土排出面18側の中央部15が押出方向の下流側に向かって突出した凸部16を有する。第二口金20は、第一口金10の下流側に配置され、第一口金10の凸部16と相補的な形状を呈する環状の口金である。以下、本実施形態のハニカム構造体成形用口金100を、単に、「口金100」ということがある。坏土の押出方向Xとは、本実施形態の口金100を用いて押出成形する際の押出方向のことであり、坏土導入面19から坏土排出面18に向かう方向のことである。
【0031】
本実施形態の口金100において、第一口金10の中央部15には、第一坏土導入孔12と、当該第一坏土導入孔12に連通した格子状の第一スリット11とが形成されている。第一坏土導入孔12は、格子状の第一スリット11の交点と押出方向Xに対して同軸上に形成されている。即ち、第一坏土導入孔12は、格子状の第一スリット11の交点に連通している。また、第一口金10の中央部15を取り囲む外周部17には、当該第一口金10の外周部17を貫通するように第一坏土導入孔12が形成されている。
【0032】
環状の第二口金20には、第一口金10の外周部17に形成された第一坏土導入孔12から排出された坏土が導入される第二坏土導入孔22と、当該第二坏土導入孔22に連通した格子状の第二スリット21とが形成されている。第二坏土導入孔22は、格子状の第二スリット21の交点と押出方向Xに対して同軸上に形成されている。即ち、第二坏土導入孔22は、格子状の第二スリット21の交点に連通している。また、本実施形態の口金100においては、第一口金10の外周部17の第一坏土導入孔12の開口位置と、第二口金20の第二坏土導入孔22の開口位置とが、少なくとも一部において一致しないように構成されている。
【0033】
本実施形態の口金100においては、第一口金10と第二口金20とが、第一口金10の外周部17の押出方向Xの下流側の端面と、環状の第二口金20の押出方向Xの上流側の端面とが当接するように組み合わされて一体化している。以下、第一口金10の外周部17の押出方向Xの下流側の端面を、「第一口金10の当接面14」といい、環状の第二口金20の押出方向Xの上流側の端面を、「第二口金20の当接面24」ということがある。また、以下、単に、上流側という場合は、押出方向Xの上流側を意味し、単に、下流側という場合は、押出方向Xの下流側を意味する。
【0034】
本実施形態の口金100は、第一口金10と第二口金20の当接面14,24に、第一坏土導入孔12と第二坏土導入孔22との相互間で坏土の移動が行われる溝部31を有する。
【0035】
本実施形態の口金100は、第一口金10の凸部16の外周面と、環状の第二口金20の内周面との間に、坏土を環状に押出成形するための隙間部35を有する。即ち、本実施形態の口金100においては、第二口金20の中央部25における空隙部26が、第一口金10の凸部16の周縁よりも若干大きく形成されている。このように構成することにより、第一口金10の凸部16を、環状の第二口金20の空隙部26に挿入するように組み合わせた際に、第一口金10の凸部16と第二口金20との間に、環状の隙間部35が形成される。この環状の隙間部35が、ハニカム成形体の境界壁を成形するための隙間部35となる。本発明において、「第一口金10の凸部16と相補的な形状を呈する環状の第二口金20」とは、第一口金10の凸部16と同じ形状の空隙部26を有する環状の口金、又は、第一口金10の凸部16より若干大きな空隙部26を有する環状の口金ことを意味する。
【0036】
本実施形態の口金100においては、第一口金10の押出方向Xの上流側の端面が、口金100全体の坏土導入面19となっている。したがって、押出成形時においては、まず、成形原料としての坏土が、第一口金10の坏土導入面19に開口した第一坏土導入孔12に導入される。第一口金10の中央部15の第一坏土導入孔12に導入された坏土は、第一坏土導入孔12に連通した格子状の第一スリット11へと移動し、第一口金の坏土排出面18から、第一スリット11の形状に対応した成形体として排出される。一方、第一口金10の外周部17の第一坏土導入孔12に導入された坏土は、第一口金10の当接面14側から排出され、溝部31を経由して、第二口金20の第二坏土導入孔22に導入される。この際、第一口金10の第一坏土導入孔12と、第二口金20の第二坏土導入孔22との位置が一致していなくとも、第一口金10と第二口金20の当接面14,24に形成された溝部31により、坏土の流量分布を均等化することができる。第二口金20の第二坏土導入孔22に導入された坏土は、第二坏土導入孔22に連通した格子状の第二スリット21へと移動し、第二口金の坏土排出面28から、第二スリット21の形状に対応した成形体として排出される。したがって、本実施形態の口金100によれば、第二口金20の第二スリット21からの坏土の排出量が均等化され、ハニカム成形体を高品質に成形することができる。また、溝部31は、坏土を環状に押出成形するための隙間部35にも連通しているため、第一口金10の外周部17の第一坏土導入孔12に導入された坏土は、この溝部31を経由して、隙間部35にも導入される。したがって、隙間部35に導入される坏土の流量分布も均等化することができ、押出成形されるハニカム成形体の境界壁周辺での成形不良の発生についても特に有効に抑制することができる。このため、本実施形態の口金100は、特に、中央部と外周部とのセル構造が異なるハニカム成形体を高品質に成形することができる。
【0037】
本明細書において、「セル構造」は、隔壁厚さ、セル密度、及びセル形状で規定されるハニカム構造体の構造のことを意味する。また、「スリットの形状」は、口金に形成されるスリットの幅、深さ、長さ、及びスリット相互の接続形態で規定されるスリットの形状のことを意味する。
【0038】
また、溝部31が形成された箇所を除いて、第一口金10と第二口金20の当接面14,24は互いに接触した状態となっているため、第二口金20の変形を有効に抑制することができる。例えば、第一口金10の外周部17の下流側の端面と、第二口金20の上流側の端面とが当接せず、第二口金20が片持ち梁のような状態であると、口金交換時やラム成形停止時において、口金100に背圧が生じた際に、第二口金20が変形してしまうことがある。
【0039】
更に、本実施形態の口金100は、ハニカム成形体の中央部と外周部の境界に境界壁を有する場合であっても、境界壁を成形するための坏土の供給を、溝部31によって十分に確保することができる。このため、本実施形態の口金100は、ハニカム成形体の境界壁及びその近傍における成形不良の発生を有効に防止することができる。
【0040】
更に、図示は省略するが、本実施形態の口金においては、第二スリットの形状が異なる数種類の第二口金を別途用意し、成形するハニカム成形体のセル構造に合わせて、第二口金を交換して使用することもできる。第二口金の第二坏土導入孔は、格子状の第二スリットの交点と押出方向に対して同軸上に形成されているため、当接面における第二坏土導入孔の開口位置は、第二口金の第二スリットの形状によってそれぞれ異なることとなる。本実施形態の口金においては、互いの当接面に溝部を有しているため、第二スリットの形状が異なる第二口金を使用した場合であっても、口金内における坏土の移動が阻害されることがなく、中央部と外周部とで、常に均一な押出成形を実現することができる。
【0041】
ここで、本実施形態のハニカム構造体成形用口金によって作製されたハニカム構造体について説明する。
図8は、本発明のハニカム構造体成形用口金によって作製されたハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図9は、
図8に示すハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。
図10は、
図9のB−B’断面
を模式的に示す断
【0042】
図8〜
図10に示すハニカム構造体200は、多孔質の隔壁201、及び隔壁201の外周を囲繞するように配設された外周壁203を有する、柱状のハニカム構造部204を備えたものである。ハニカム構造部204の隔壁201は、流入端面211から流出端面212まで延びる流体の流路となる複数のセル202を区画形成するものである。そして、このハニカム構造部204は、中央セル構造215、外周セル構造216、及び外周セル構造216と中央セル構造215の境界部分に配設された境界壁208を有する。ハニカム構造部204において、中央セル構造215と、外周セル構造216とは、異なるセル構造である。
【0043】
ここで、中央セル構造215とは、ハニカム構造部204のセル202の延びる方向に直交する面において、ハニカム構造部204の中央部分に形成された複数のセル202aによって構成されたセル構造のことである。外周セル構造216とは、上記面において、ハニカム構造部204の中央部分よりも外周寄りに形成された複数のセル202bによって構成されたセル構造のことである。
【0044】
「セル構造」とは、セル202の延びる方向に直交する面において、隔壁201によって区画されたセル202の1個、又は複数個のセル202の組み合わが、1つの繰り返し単位となり、その繰り返し単位の集合によって形成される構造のことをいう。例えば、同一形状のセルが、上記面において規則的に配列している場合、同一形状のセルの存在する範囲が、1つのセル構造となる。また、異なるセル形状のセルであっても、複数個のセルの組み合わせが1つの繰り返し単位となる場合には、その繰り返し単位が存在する範囲が、1つのセル構造となる。
【0045】
2つのセル構造が「異なるセル構造」であるとは、2つのセル構造を比較した場合に、隔壁厚さ、セル密度、セル形状のいずれか1つが異なることを意味する。ここで、「隔壁厚さが異なる」とは、2つのセル構造の隔壁厚さを比較した場合に、25μm以上の差を有することをいう。また、「セル密度が異なる」とは、2つのセル構造のセル密度を比較した場合に、7個/cm
2以上の差を有することをいう。
【0046】
本実施形態の口金は、
図8〜
図10に示すようなハニカム構造体200を製造するためのハニカム成形体の成形に好適に用いることができる。以下、本実施形態の口金のより好適な形態について説明する。
【0047】
本実施形態の口金は、
図1〜
図7に示すように、第一スリット11の形状と、第二スリット21の形状とが異なるものであることが好ましい。第一スリット11の形状及び第二スリット21の形状については特に制限はなく、成形するハニカム成形体のセル構造に合わせて適宜選択することができる。
【0048】
第一口金10と第二口金20の当接面14,24に形成される溝部31は、第一口金10側に形成されていてもよいし、第二口金20側に形成されていてもよい。本実施形態の口金100においては、第二口金20側に溝部31が形成されていることが好ましい。第二口金20側に溝部31が形成されていると、口金100の強度の確保および製造容易性の点で好ましい。例えば、第二口金20側に溝部31が形成されることにより、溝部31に対してかかる応力が、圧縮方向の応力となり、溝部31に応力集中が起きたとしても、口金100の強度を確保することができる。
【0049】
溝部31の幅については特に制限はないが、0.1〜1.5mmであることが好ましく、0.3〜0.7mmであることが特に好ましい。溝部31の幅が0.1mm未満であると、押出成形時の押出抵抗が増加する点で好ましくない。一方、溝部31の幅が1.5mmを超えると、第一口金と第二口金が接する面積が過小となり、当接部の変形により流動性が変化する点で好ましくない。
【0050】
溝部31の押出方向Xの溝の深さについては特に制限はないが、0.1〜5.0mmであることが好ましく、0.3〜1.2mmであることが特に好ましい。溝部31の深さが0.1mm未満であると、押出成形時の押出抵抗が増加する点で好ましくない。一方、溝部31の深さが5.0mmを超えると、第二口金の実質厚みが小となり、全体の強度が低下する点で好ましくない。
【0051】
第二口金20の当接面24における溝部31が形成されている範囲32の面積に対する、当該範囲における溝部31及び第二坏土導入孔22の開口部分の合計面積の比率が、40〜90%であることが好ましく、50〜80%であることが特に好ましい。ここで、「第二口金20の当接面24における溝部31が形成されている範囲32」とは、第二口金20の当接面24において、それぞれの溝部31の末端を結ぶ線によって囲われた範囲のことを意味する。
図5において、符号32で示される破線によって囲われた範囲が、「溝部31が形成されている範囲32」である。したがって、上記した溝部31が形成されている範囲32の面積には、当該範囲における溝部31及び第二坏土導入孔22の開口部分の面積が含まれている。上記した比率が40%未満であると、押出成形時の押出抵抗が増加する点で好ましくない。一方、上記した比率が90%を超えると、第一口金と第二口金が接する面積が過小となり、当接部の変形により流動性が変化する点で好ましくない。
【0052】
第二口金20の当接面24における溝部31の形状については特に制限はない。例えば、第二口金20の当接面24における第二坏土導入孔22の開口部のうち、近接する2つの開口部を直線で結ぶような格子状であることが好ましい。このように構成することにより、口金100の強度低下を最小限に抑制することができる。なお、一の第二坏土導入孔22の開口部から、近接する第二坏土導入孔22よりも離れた位置に存在する第二坏土導入孔22の開口部までを結ぶような形状の溝部31を更に含んでいてもよい。
【0053】
本実施形態の口金は、
図1〜
図7に示すように第二口金20の当接面24に溝部31が形成されている場合には、2つ以上の第二口金20を有していてもよい。それぞれの第二口金20は、その当接面24に形成された溝部31の深さが異なっており、第二口金20を交換することにより、溝部31の溝の深さを変更可能に構成されていてもよい。例えば、押出成形時の成形条件に応じて、2つ以上の第二口金20の中から、溝部31の溝の深さが最適となるものを適宜選択して使用してもよい。
【0054】
また、図示は省略するが、第一口金の当接面に溝部が形成されている場合には、2つ以上の第一口金を有していてもよい。それぞれの第一口金は、その当接面に形成された溝部の深さが異なっており、第一口金を交換することにより、溝部の溝の深さを変更可能に構成されていてもよい。例えば、押出成形時の成形条件に応じて、2つ以上の第一口金の中から、溝部の溝の深さが最適となるものを適宜選択して使用してもよい。
【0055】
押出成形するハニカム成形体の端面の面積に対する、第一口金10の中央部15の面積の割合については、成形するハニカム成形体の中央部及び外周部のセル構造(例えば、
図8〜
図10参照)に応じて適宜決定することができる。なお、本実施形態の口金においては、上記割合が、30〜70%であることが好ましく、40〜60%であることが特に好ましい。
【0056】
上述したように、口金100においては、第二口金20の中央部25における空隙部26が、第一口金10の凸部16の周縁よりも若干大きく形成され、第一口金10の凸部16と第二口金20との間に、環状の隙間部35が形成されている。上述した環状の隙間部35の間隔については特に制限はなく、成形するハニカム成形体の境界壁の厚さに応じて適宜選択することができる。例えば、環状の隙間部35の間隔は、0.04〜0.50mmであることが好ましい。
【0057】
第一口金10は、中央部15と外周部17とで、第一坏土導入孔12の開口径、及びそれぞれの第一坏土導入孔12の相互間の間隔が同一であることが好ましい。このように構成することによって、例えば、第一口金10を簡便に且つ低コストに製造することができる。
【0058】
また、本実施形態の口金は、第一スリットのうちの一つのセルを取り囲むスリットと、第二スリットのうちの一つのセルを取り囲むスリットとが、互いに交差する方向に延びるものであってもよい。ここで、「セル」とは、成形するハニカム成形体において、隔壁によって区画形成された空間を意味する。例えば、
図11に示す口金300は、
図1に示す口金100に対して、第一口金10の第一スリット11が時計回りに45°回転した状態となるように作製されている。このため、口金300においては、第一スリット11のうちの一つのセルを取り囲むスリットと、第二スリット21のうちの一つのセルを取り囲むスリットとが、平行な位置関係を有していない。本実施形態の口金は、上述したように、第一スリット及び第二スリットにおいて、各セルを取り囲むスリットが互いに交差するような場合でも、坏土の流量分布を均等化することができる。したがって、第二口金の第二スリットからの坏土の排出量が均等化され、ハニカム成形体を高品質に成形することができる。
【0059】
本実施形態の口金100は、
図1に示すように、第一スリット11によって押出されるハニカム成形体のセル構造の配列方向と、第二スリット21によって押出されるハニカム成形体のセル構造の配列方向とが、平行となっている。即ち、第一口金10の第一スリット11の延びる方向と、第二口金20の第二スリット21の延びる方向とが、平行となっている。但し、
図11に示す口金300のように、第一スリット11によって押出されるハニカム成形体のセル構造の配列方向と、第二スリット21によって押出されるハニカム成形体のセル構造の配列方向とが、互いに交差する方向に延びるものであってもよい。
図11は、本発明のハニカム構造体成形用口金の他の実施形態の坏土排出面側を模式的に示す平面図である。
図11に示す口金300において、
図1に示す口金100と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0060】
図11に示す口金300においても、第一口金10と第二口金20の当接面14,24(
図7参照)に、第一坏土導入孔12と第二坏土導入孔22との相互間で坏土の移動が行われる溝部31(
図7参照)を有している。このため、
図11に示す口金300のように、第一口金10の第一スリット11の延びる方向と、第二口金20の第二スリット21の延びる方向とが、互いに交差するような場合でも、坏土の流量分布を均等化することができる。したがって、第二口金20の第二スリット21からの坏土の排出量が均等化され、ハニカム成形体を高品質に成形することができる。
【0061】
図11に示す口金300は、予め、第一口金10の第一スリット11が時計回りに45°回転した状態となるように作製されたものである。ただし、例えば、
図1に示す口金100において、第一口金10を時計回りに45°回転させて使用することもできる。
図1に示す口金100の第一口金10を時計回りに45°回転させた場合でも、
図6及び
図7に示すように、第一口金10と第二口金20の当接面14,24には溝部31が存在するため、口金100内における坏土の移動が阻害されることはない。従来の溝部を有しない口金は、例えば、第一口金の第一坏土導入孔と、第二口金の第二坏土導入孔とが、坏土の押出方向において一致するように設計されている。このため、第一口金のみを回転させて使用した場合には、口金内における坏土の移動が阻害されてしまう。
【0062】
図1〜
図7に示すような本実施形態の口金において、第一口金10の厚さ、第一口金10の凸部16の突出高さ、及び第二口金20の厚さについては特に制限はない。第一口金10の厚さとしては、10〜50mmであることが好ましい。第一口金10の凸部16の突出高さとしては、5〜30mmであることが好ましい。第二口金20の厚さとしては、5〜30mmであることが好ましい。なお、第一口金10の凸部16の突出高さと、第二口金20の厚さとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、環状の第二口金20の空隙部26内に、第一口金10の凸部16を挿入した際に、第一口金10の坏土排出面18の位置と、第二口金20の坏土排出面28の位置とが、一致していてもよいし、一致していなくともよい。
【0063】
第一口金10を構成する第一口金基材13、及び第二口金20を構成する第二口金基材23の材料としては、ハニカム構造体成形用の口金の材料として一般的に用いられている金属又は合金を挙げることができる。以下、第一口金基材及び第二口金基材を総称して、単に「口金基材」ということがある。例えば、口金基材の材料として、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びアルミニウム(Al)から構成される群より選ばれる少なくとも一つの金属を含む金属又は合金を挙げることができる。
【0064】
口金基材の材料として使用される合金の一例として、ステンレス合金、より具体的には、SUS630を挙げることができる。このようなステンレス合金は、加工が比較的に容易であるとともに、安価な材料である。また、口金基材を構成する合金の他例として、耐摩耗性に優れた炭化タングステン基超硬合金等を挙げることができる。炭化タングステン基超硬合金等によって構成された口金基材を用いることにより、スリットの磨耗が少ないハニカム構造体成形用口金を製造することができる。
【0065】
本実施形態の口金を製造する方法については特に制限はない。例えば、本実施形態の口金は、従来公知の口金の製造方法に準じて製造することができる。
【0066】
第一坏土導入孔及び第二坏土導入孔については、第一口金基材及び第二口金基材に対して、ドリル加工、放電加工、電解加工、及びレーザー加工等の公知の機械加工を用いて形成することができる。
【0067】
第一スリット及び第二スリットについては、第一口金基材及び第二口金基材に対して、研削加工、放電加工、電解加工、レーザー加工等の公知の機械加工を用いて形成することができる。
【0068】
第一口金と第二口金との当接面の溝部は、研削加工、放電加工、レーザー加工等の公知の機械加工を用いて形成することができる。
【0069】
第一口金の中央部を構成する凸部は、研削加工、放電加工、あるいは二部材の接合によって形成することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
実施例1では、
図8〜
図10に示すようなハニカム構造部204の中央セル構造215と外周セル構造216とが異なるセル構造のハニカム構造体200を作製するための口金を製造した。より具体的には、実施例1では、最終製品としてのハニカム構造体が、以下のように構成されたハニカム構造体となるような口金を作製した。最終製品としてのハニカム構造体は、端面の直径が100mmの円柱状であり、当該端面における中央セル構造の直径が70mmである。中央セル構造と外周セル構造の境界には、厚さ0.1mmの境界壁を有する。中央セル構造は、セルの形状が四角形で、隔壁厚さが0.09mm、セル密度が93個/cm
2である。外周セル構造は、セルの形状が四角形で、隔壁厚さが0.11mm、セル密度が62個/cm
2である。なお、上記のハニカム構造体に各寸法については、製造公差を含んでいない。
【0072】
まず、実施例1では
、縦200mm、横200mm、厚さ20mmの板
状の第一口金基材を用意した。用意した第一口金基材の一方の表面を坏土排出面とし、放電加工により突出長が10mmとなるよう凸部を形成した。
【0073】
次に、第一口金基材の凸部の坏土排出面に、格子状の第一スリットを形成した。格子状の第一スリットは、上述した最終製品としてのハニカム構造体の中央セル構造を構成する隔壁を押出成形可能なスリット形状とした。第一スリットの形成は、研削加工によって行った。
【0074】
次に、第一口金基材の坏土導入面に、第一スリットの交点部分に連通するように、開口径が1.2mmの第一坏土導入孔を形成した。また、第一口金基材については、凸部を有していない外周部についても、凸部を有する中央部と同一のピッチで第一坏土導入孔を形成した。第一口金基材の外周部の第一坏土導入孔は、第一口金基材の坏土導入面から、後述する第二口金との当接面まで連通する貫通孔とした。以上のようにして、実施例1の口金における第一口金を作製した。
【0075】
次に、縦200mm、横200mm、厚さ10mmの板状の第二口金基材を用意した。口金基材は、ステンレス製のものとした。用意した第二口金基材の中央部分を、円形状にくり抜いて、第二口金基材を環状のものとした。
【0076】
次に、第二口金基材の凸部の坏土排出面に、格子状の第二スリットを形成した。格子状の第二スリットは、上述した最終製品としてのハニカム構造体の外周セル構造を構成する隔壁を押出成形可能なスリット形状とした。第二スリットの形成は、研削加工によって行った。
【0077】
次に、第二口金基材の坏土排出面とは反対側の面に、第二スリットの交点部分に連通するように、開口径が1.2mmの第二坏土導入孔を形成した。第二口金基材の坏土排出面とは反対側の面が、第二口金基材と第一口金基材とを組み合わせた際に、第一口金基材の外周部と接触する当接面となる。
【0078】
次に、第二口金基材の上記当接面に、第一坏土導入孔と第二坏土導入孔との相互間で坏土の移動が行われる溝部を形成した。この溝部は、第二坏土導入孔の開口部のうちの近接する2つの開口部を直線で結ぶような格子状とした。溝部の幅は0.5mmとし、溝部の押出方向の深さは0.5mmとした。溝部の形成は、研削加工によって行った。以上のようにして、実施例1の口金における第二口金を作製した。
【0079】
次に、第二口金の中央部の空隙部に、第一口金の中央部の凸部を挿入するようにして、第二口金と第一口金とを組み合わせ、実施例1の口金を製造した。第二口金の当接面における溝部が形成されている範囲の面積に対する、当該範囲における溝部の開口部分の面積の比率は、71%であった。以下、上記した溝部の開口部分の面積を、「溝部の面積比率」ということがある。表1に、「口金構造」、「溝部の有無」、「溝部の幅(mm)」、「溝部の深さ(mm)」、「溝部の面積比率(%)」を示す。なお、実施例1の口金のように、第一口金と第二口金を組み合わせて1つの口金を製造したものについて、「口金構造」の欄において「二体組付」と記す。一方、1つの口金基材に対して、中央部と外周部とでスリットの形状が異なるようにして製造した口金について、「口金構造」の欄において「一体構造」と記す。
【0080】
実施例1の口金の製造に要した総作業時間は、70時間であった。実施例1の口金を用いて、以下に示すような方法で、「成形品品質」、[押出抵抗]及び「第二口金の変形の有無」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
[成形品品質]
作製した口金を用いて、コージェライト組成からなるハニカム構造体を押出成形した。押出成形したハニカム構造体を目視で確認し、ハニカム構造体の品質を以下の評価基準で評価した。外観不良なき場合を「良」とする。外観不良ある場合、又は成形不可である場合を「不可」とする。ここで、「外観不良」とは口金各部における押出速度ばらつきにより、ハニカム構造体を構成する隔壁が湾曲することを指す。
【0082】
[押出抵抗]
作製した口金の上流側に圧力センサーを配置し、圧力センサーを配置した口金を用いて、コージェライト組成からなるハニカム構造体を押出成形した。押出成形時における口金の上流側の圧力を圧力センサーによって測定し、測定した圧力を、評価対象の口金の押出抵抗とした。押出成形時の押出抵抗を以下の評価基準で評価した。通常のハニカム製品の生産時の圧力の範囲を「標準」とし、「標準」よりも押出抵抗が高い場合を「大」とし、「標準」よりも押出抵抗が低い場合を「小」とする。
【0083】
[第二口金の変形の有無]
作製した口金を用いて、成形品品質の評価と同条件の押出成形を3回行い、押出成形が終了した段階で、第二口金の変形の有無を目視で確認した。第二口金に変形が確認された場合を「有り」とし、第二口金に変形が確認されなった場合を「無し」とする。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例2〜4)
「溝部の幅(mm)」、「溝部の深さ(mm)」、及び「溝部の面積比率(%)」を表1に示すような値となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で口金を製造した。実施例2〜4の口金を用いて、実施例1と同様の方法で、「成形品品質」、[押出抵抗]及び「第二口金の変形の有無」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例1)
比較例1では、縦200mm、横200mm、厚さ20mmの板状の口金基材を用意した。口金基材は、ステンレス製のものとした。用意した口金基材の一方の表面を坏土排出面とし、その坏土排出面側の中央部分に、実施例1の口金の第一スリットと同形状のスリットを形成した。次に、口金基材の坏土排出面側の外周部分に、実施例1の口金の第二スリットと同形状のスリットを形成した。次いで、実施例1の隙間部に相当する位置に第一スリットと第二スリットの端部を繋ぎ合せる環状のスリットを形成した。次に、口金基材の坏土導入面側から、各スリットの交点部分に連通するように、開口径が1.2mmの坏土導入孔を形成した。以上のようにして、比較例1の口金を製造した。
【0087】
比較例1の口金の製造に要した総作業時間は、100時間であった。比較例1の口金を用いて、実施例1と同様の方法で、「成形品品質」、[押出抵抗]及び「第二口金の変形の有無」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例2)
比較例2では、まず、実施例1の口金の第一口金と同様に構成された第一口金を作製した。次に、比較例2では、実施例1の口金のように、第二口金基材の当接面に溝部を形成せずに第二口金を作製した。このような第二口金の中央部の空隙部に、第一口金の中央部の凸部を挿入するようにして、第二口金と第一口金とを組み合わせ、比較例2の口金を製造した。
【0089】
比較例2の口金の製造に要した総作業時間は、60時間であった。比較例2の口金を用いて、実施例1と同様の方法で、「成形品品質」、[押出抵抗]及び「第二口金の変形の有無」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例3)
比較例3では、まず、実施例1の口金の第一口金と同様に構成された第一口金を作製した。次に、比較例3では、実施例1の口金のように、第二口金基材の当接面に溝部を形成するのではなく、第二口金基材の当接面から押出方向の0.5mmの範囲を放電加工によって取り除いた第二口金を作製した。このような第二口金の中央部の空隙部に、第一口金の中央部の凸部を挿入するようにして、第二口金と第一口金とを組み合わせ、比較例3の口金を製造した。比較例3の口金は、第一口金の外周部の下流側の端面と第二口金の上流側の端面とが当接せず、第二口金が片持ち梁のような状態で第一口金と組み合わされたものであった。
【0091】
比較例3の口金の製造に要した総作業時間は、70時間であった。比較例3の口金を用いて、実施例1と同様の方法で、「成形品品質」、[押出抵抗]及び「第二口金の変形の有無」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(結果)
実施例1〜4の口金は、比較例1の口金に比して製造時間を短縮することができるとともに、成形品品質の評価も良好なものであった。また、第二口金の変形の有無の評価においても、第二口金の変形は確認されなかった。
【0093】
比較例1の口金は、成形品品質の評価において、不可という結果となった。その理由としては、口金の中央部と外周部とでスリットの形状が異なっていると、口金内の坏土の流量分布が不均一になり易く、スリットからの坏土の排出量が均等にならないためと推測される。また、比較例1の口金を用いて押出成形を行った場合には、境界壁を形成するための坏土の供給が追い付かず、境界壁及びその近傍においても成形不良が多く確認された。
【0094】
比較例2の口金は、第一口金の第一坏土導入孔と、第二口金の第二坏土導入孔との位置が一致していない箇所において、坏土の移動が阻害されており、成形品品質の評価において、不可という結果となった。また、比較例2の口金を用いて押出成形を行った場合には、境界壁を形成するための坏土の供給が追い付かず、境界壁及びその近傍においても成形不良が著しく確認された。
【0095】
比較例
3の口金は、成形品品質の評価は良好なものであったが、第二口金の変形の有無の評価において、第二口金の変形が確認された。第二口金の変形が顕著になると、成形品品質への影響が生じることがある。また、第二口金の変形が生じ易いものであると、口金の交換等に伴い、製品の製造コストが増大することが懸念される。