特許第6562905号(P6562905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562905金属材料を処理する製造ラインの焼鈍炉若しくは熱処理炉を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562905
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】金属材料を処理する製造ラインの焼鈍炉若しくは熱処理炉を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20190808BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C21D9/56 101C
   F27D21/00 A
   F27D21/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-514406(P2016-514406)
(86)(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公表番号】特表2016-524041(P2016-524041A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】EP2014060505
(87)【国際公開番号】WO2014187886
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年1月14日
【審判番号】不服2018-3864(P2018-3864/J1)
【審判請求日】2018年3月19日
(31)【優先権主張番号】102013209410.8
(32)【優先日】2013年5月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013225579.9
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ハルトゥング・ハンス−ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ゾマース・ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ベールヴァルト・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ロエスト・アレクサンドル
【合議体】
【審判長】 亀ヶ谷 明久
【審判官】 長谷山 健
【審判官】 平塚 政宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/040823(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/099457(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/090597(WO,A1)
【文献】 特開平5−171258(JP,A)
【文献】 特開2003−147440(JP,A)
【文献】 特開平10−130742(JP,A)
【文献】 特開平4−236724(JP,A)
【文献】 特開平1−219127(JP,A)
【文献】 特開昭59−110737(JP,A)
【文献】 特開昭58−3926(JP,A)
【文献】 特表2006−508803(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2557183(EP,A1)
【文献】 特開平3−193826(JP,A)
【文献】 特開平5−263147(JP,A)
【文献】 特開2000−54032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52-9/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を処理する製造ライン(1)の焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する装置であって、
前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)と、ストリップ処理方向(5)において当該焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)の下流に配置されている少なくとも一つの圧延スタンド(3)及び少なくとも一つのレベラースタンド(4)と、二つの測定装置(7,8,17)とを備え、
前記測定装置は、前記製造ライン(1)にあるストリップ材(6)の少なくとも一つの材料特性を、前記ストリップ材(6)の機械的材料特性を反映した測定値をオンラインで連続して観察を行うことにより検出し、
当該測定値を情報伝達信号として閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニット(18)に伝達し、
前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)と、二つの前記測定装置(7,8,17)と、少なくとも一つの前記圧延スタンド(3)及び少なくとも一つの前記レベラースタンド(4)とは、自動プロセス制御の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路内で協働し、
前記回路が、炉の制御の範囲で前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)を閉ループ制御及び/又は開ループ制御する装置において、
一つの前記測定装置(7)は、ストリップ材処理方向(5)において前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)の直ぐ下流に配置されており、
一つの前記測定装置(8)は、ストリップ材処理方向(5)において前記レベラースタンド(4)の下流に配置されており、
二つの前記測定装置(7,8)の測定値を、学習プロセスにおいて、制御回路(11)を介して、前記炉の制御及び少なくとも一つの前記圧延スタンド(3)及び少なくとも一つの前記レベラースタンド(4)の制御のために、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に反映させるか、又は、
ストリップ材処理方向(5)において前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)の上流に一つの前記測定装置(17)が配置されているとともに、下流に一つの前記測定装置(7)が配置されており、
二つの前記測定装置(7,17)の測定値を、学習プロセスにおいて、制御回路(12)を介して、前記炉の制御及び少なくとも一つの前記圧延スタンド(3)及び少なくとも一つの前記レベラースタンド(4)の制御のために、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に反映させるか、又は、
一つの前記測定装置(17)は、ストリップ材処理方向(5)において前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)の上流に配置されており、
一つの前記測定装置(8)は、ストリップ材処理方向(5)において前記レベラースタンド(4)の下流に配置されており、
二つの前記測定装置(17,8)の測定値を、学習プロセスにおいて、制御回路(13)を介して、前記炉の制御及び少なくとも一つの前記圧延スタンド(3)及び少なくとも一つの前記レベラースタンド(4)の制御のために、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に反映させ、
前記閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニット(18)は、過去の炉の挙動に基づいて、炉の条件を変更した際の前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)の反応を学習し、学習した前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)の反応に基づいて、到来するストリップに対して測定値のばらつきを小さくするように炉の条件を調節し、
前記閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路は、その内部に炉モデル制御部の形態で再現ないし格納された炉モデルを有しかつ材料モデルを有することを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
少なくとも一つの前記測定装置(8)は、ストリップ材処理方向(5)において前記製造ライン(1)の最後の機械的な処理装置の下流に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、
少なくとも一つの前記測定装置(7,8,17)が、前記ストリップ材(6)の前記機械的材料特性を映した前記測定値を実時間オンライン測定により検出することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置において、
全ての前記測定装置(7,8,17)が、前記ストリップ材(6)の前記機械的材料特性を映した前記測定値を実時間オンライン測定により検出することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置において、
一又は二以上の炉パラメータが、前記焼鈍炉若しくは熱処理炉(2)の加熱領域及び/又は冷却領域におけるストリップ目標温度、当該ストリップ目標温度のプロセスウィンドウ、ストリップ速度、当該ストリップ速度のプロセスウィンドウ、炉温度、当該炉温度のプロセスウィンドウ、炉温度パターン、炉出力、冷却速度、冷却剤の供給、或いは冷却剤の種類の値のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の装置において、
少なくとも一つの前記測定装置(7,8,17)は、それぞれ、測定値として磁気的な量を検知する残留磁気計測器であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置において、
全ての前記測定装置(7,8,17)は、それぞれ、測定値として磁気的な量を検知する残留磁気計測器であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置において、
製造ライン(1)が、鋼材若しくはアルミニウム材料のための連続的な焼鈍及び/又は亜鉛メッキラインであり、当該製造ライン(1)の構成要素であることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料を処理する製造ラインの焼鈍炉若しくは熱処理炉を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する装置に係り、当該装置は、焼鈍炉若しくは熱処理炉と、少なくとも一つの測定装置とを備え、当該測定装置は、製造ラインにあるストリップ材の少なくとも一つの材料特性を検出し、焼鈍炉若しくは熱処理炉と、少なくとも一つの測定装置とは、自動プロセス制御の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路内で協働し、当該回路が、炉の制御の範囲で焼鈍炉若しくは熱処理炉を閉ループ制御及び/又は開ループ制御する。
【0002】
さらに、本発明は、金属材料を処理する製造ラインの焼鈍炉若しくは熱処理炉を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法に係り、製造ラインは、焼鈍炉若しくは熱処理炉、好ましくはストリップ材処理方向において当該炉に後置された少なくとも一つの圧延スタンド及び/又はレベラースタンド、及び少なくとも一つの測定装置を備え、当該測定装置は、製造ラインにあるストリップ材の少なくとも一つの材料特性を検出し、焼鈍炉若しくは熱処理炉、好ましくは当該炉に後置された既存の少なくとも一つの圧延スタンド及び/又はレベラースタンド、及び少なくとも一つの測定装置は、自動プロセス制御の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路内で協働し、当該回路により焼鈍炉若しくは熱処理炉が、炉の制御の範囲で開ループ制御され且つ/又は閉ループ制御される。
【背景技術】
【0003】
鉄材ないし非鉄金属からなるストリップ材の処理においては、例えば、一又は二以上の圧延工程を実施するのに先立ち、しばしばストリップ材を加熱することが普通で、これにより、引き続き行われる深絞り工程においてストリップ材を良好に加工することができる。例えば、焼鈍処理時に金属プレートが焼鈍炉に送給され、そこで700〜900℃の温度にさらされ、例えば予め冷間圧延されたストリップ材を慣らして、後続の深絞り工程と、場合によってはコーティング処理とにおいてストリップ材が良好に処理できるようにする。
【0004】
これには、常に高まり続ける工業界の要請、それも特に自動車業界の要請により、供給業者にとって、均一な特性を備えた材料を狭い許容帯域内で製造してみせることがますます重要になっていることがある。これを実現するには、自動プロセス制御が欠かせない前提である。
【0005】
処理ライン(Prozesslinie)を制御するこのような装置とこのような方法が特許文献1と特許文献2から公知である。これらの文献から公知の処理ラインは、CAL(Continuous Annealing Line)(連続アニーリングライン)やCGL(Continuous Galvanized Line)(連続メッキライン)の処理ラインである。これらにおいてはまた、ストリップ材の機械的な材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値を検出する測定装置を用いてその場にある焼鈍炉を制御するものとほぼされている。ただし、この場合には、炉のパラメータがそのまま制御されるものとされている。
【0006】
これらの従来技術の欠点は、焼鈍炉に熱的な慣性があり、炉内の条件が素早く変化しないことである。そのため、標準的な制御概念が通用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0219567号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2557183号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、従来公知の技術に対してプロセス制御を向上させることのできる解決手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明により、冒頭に詳述した類の装置において、少なくとも一つの測定装置が、ストリップ材処理方向における焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流に配置され、ストリップ材の機械的な材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値をオンラインで検出し、この測定値を特に情報伝達信号として閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットに伝達することにより解決される。
【0010】
この閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットは、過去の炉の挙動に基づいて、炉の条件を変更した際の炉の反応を学習し、到来するストリップに対して測定値を適したものにするように条件を調節する。これにより、測定値のばらつきが小さくなる。この学習過程(Lernprozess)には、焼鈍炉の前のプロセスについての情報も(測定値であれ設定値であれ)利用することができる。
【0011】
同様に、上述の課題は、本発明に係る方法において、少なくとも一つの測定装置を用いてオンラインでストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値が検出され、この測定値が特に情報伝達信号として閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットに伝達されることにより解決される。
【0012】
この閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットは、過去の炉の挙動に基づいて、炉の条件を変更した際の炉の反応を学習し、到来するストリップに対して測定値を適したものにするように条件を調節する。これにより、測定値のばらつきが小さくなる。
【0013】
特に情報伝達信号は、測定値ないし情報を伝達するのに適した電気的な信号、電子的な信号、電磁波による信号、無線信号、光信号ないし赤外信号とすることができる。
【0014】
本発明により、熱処理されたり焼鈍処理されたりしたストリップ材の全長にわたり、炉の出口か、ストリップ処理方向における焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流において検出が行われることになる。焼鈍処理されたり加熱処理されたりしたストリップ材の機械的特性をこのように好適にも連続して観察することにより、後続のストリップについて、機械的特性が所望の値枠(Wertefenster)内に収まるように、つまり、許容されたばらつき幅やばらつきだけを有するように炉の設定を行うことができる。機械的特性が恒常的かつ連続的にプロセス実行中に観察されるので、機械的特性の実際限界値を、開ループ制御システム及び/又は測定システムの限界値としても用いることができる。プロセスウィンドウは、炉パラメータ(炉領域温度、ストリップ目標温度ないしストリップ速度)の範囲(最小値から最大値まで)であり、その範囲を製造工程で維持することにより、要求されるストリップの機械的特性が実現される。焼鈍サイクルは調整して適正化でき、プロセスウィンドウは変更できる。最良の場合、焼鈍サイクルやそれに関連した限界値といった事前に決められたパラメータに限られなくてもよくなる。これにより、全焼鈍プロセスを経た機械的特性のばらつきは、最適化され、より良好に所望のパラメータと境界条件に適合した状態となる。それどころか、例えば所望の機械的特性を実現するのに要求ないし調整される焼鈍温度等の限界に近づけることができ、それに伴い、より環境に配慮して或いはより経済的にプロセスを実行し、特にはその生産性を高め得ることが可能になる。その上、本発明による測定の仕方により、異なる品質のストリップ材間の移行をより良好に実施でき且つ連続してチューニングすることが可能である。これは、各ストリップ材の選択された機械的特性のそれぞれが重要な量として事前に設定可能とされ、そのため、互いに連続したストリップの重なりを制御することができるからである。
【0015】
本発明による装置若しくは本発明による方法の単数又は複数の測定装置は、さらに、それぞれの材料品質(例えばそれぞれの鋼の品質)に関する最善のプロセスウィンドウを決定するため、所定の期間に使用されるのでもよい。
【0016】
本発明は、実施形態において、焼鈍炉若しくは熱処理炉に後置された圧延スタンドやレベラースタンドを備える構成であり、このスタンドは、自動プロセス制御の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路内で焼鈍炉若しくは熱処理炉と協働し且つ少なくとも一つの測定装置と協働する。
【0017】
ここで、さらに、少なくとも一つの測定装置が、ストリップ処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置されているものであってもよく、これが本発明の構成でもある。
【0018】
本発明はさらに、実施形態においては、少なくとも一つの測定装置が、ストリップ材処理方向における焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流且つ圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの上流に配置されているというものである。焼鈍炉若しくは加熱炉の下流だが後続の圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの上流に測定装置を配置することにより、測定されたストリップ材の機械的特性に対する焼鈍処理又は加熱処理の影響だけに基づいて、炉運転の閉ループ制御又は開ループ制御を行うことができる。
【0019】
さらに有利であるのは、少なくとも一つの測定装置が、ストリップ材処理方向において製造ラインの最後の機械的な処理装置の下流に配置されている場合であり、これが本発明の構成でもある。この場合には、ストリップ材の測定された機械的特性に対して、製造ラインにおいて前に行われた全ての材料加工や材料処理が及ぼす影響に基づいて、炉運転及び/又は機械的処理の閉ループ制御又は開ループ制御が行われる。
【0020】
本発明の他の実施形態において、さらに、第一の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流且つ圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの上流に配置されており、第二の測定装置が圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置されている。
【0021】
第二の測定装置が、ストリップ材処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置されていることによって、一又は二以上の圧延スタンド、一又は二以上の、レベラースタンド、スキンパスミルスタンド或いはテンションレベラーを備えていることのできる機械加工ステーションが、それぞれ測定された機械的特性に対して及ぼす影響も特定でき、その影響を、焼鈍炉若しくは熱処理炉の制御の際にも、また機械加工ステーションないし機械加工装置つまりは圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの制御の際にも、考慮することができる。ストリップ材加工方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された測定装置による測定は、成形プロセス後のストリップの機械的特性を考慮することができる点で有利である。特に、このことに関連して、最終製品の機械的特性を、制御のために閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に反映させることが有利であり、そのためにも、加工方向において製造ラインの最後の機械的処理装置の下流に測定装置が配置されている構成とされている。
【0022】
もちろん、炉の制御及び機械加工、並びにそれらと各々に関係する設備及び装置に作用する二つの測定装置を、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路の測定・制御回路(Mess− und Regelkreis)のそれぞれに作用させてもよい。
【0023】
二つの測定装置を使用する際には、一つの測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置されているとともに、第二の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の直ぐ下流か或いは圧延スタンド及び/又はレベラースタンドから形成された機械加工部の下流に配置されているように構成されていてもよい。各測定値は、開ループ制御ユニット/閉ループ制御ユニットに行き、これらが学習機能を介して炉の制御に作用を及ぼし、場合によっては機械加工に作用を及ぼす。これに加えて、本発明は、第一の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流且つ圧延スタンド及び/又はレベラースタンド上流に配置され、さらに他の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置されているように構成される。また、本発明は、この観点に関して、(第二の)測定装置が、ストリップ材処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置され、さらに他の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置されていることに特徴がある。
【0024】
適切な実施形態において、本発明はさらに、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流に配置された上記の第一の測定装置及び/又はストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置された他の一つの測定装置が、還元(フィードバック)(Rueckkopplung)により炉の制御に作用を及ぼすことに特徴がある。
【0025】
ここで、本発明は、さらに、ストリップ材処理方向において少なくとも一つの圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流或いは一つの圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された上記の測定装置(特には第二の測定装置)、及び/又は上記の第一の測定装置若しくは他の一つの測定装置(この測定装置は、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流或いは直ぐ下流に配置されている。)が、還元により、炉の制御に作用を及ぼすとともに、上記少なくとも一つの圧延スタンド及び/又はレベラースタンド或いは対応して設けられた圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの制御に作用を及ぼす構成である。
【0026】
特に適切な測定は、実時間オンライン測定である。従って、本発明は、さらに、少なくとも一つの測定装置(好ましくは全ての測定装置)が、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値を実時間オンライン測定により検出することに特徴がある。特に有利な閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路の構成は、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映する測定値が、学習プロセスにおいて、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に、それも特に焼鈍炉若しくは熱処理炉の炉閉ループ制御及び/又は炉開ループ制御に還元(フィードバック)(rueckkoppeln)されるときに実現する。
【0027】
閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路が、その内部に再現され且つ/又は格納された炉モデル制御を有する場合に、本発明により焼鈍炉若しくは熱処理炉が開ループ制御及び/又は閉ループ制御を行うことができることが特に有利且つ適切で、これが本発明の構成でもある。このとき、炉モデル制御は、簡単な線形モデルから熱力学的モデルに至るあらゆるモデルを含むことができ、学習機能及び適応機能とともにあらゆる類の炉モデルが炉モデル制御として格納され得る。
【0028】
加えて、本発明の他の実施形態において、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路が材料モデルを有しているように構成されていてもよい。
【0029】
本発明により構成された閉ループ制御システム及び/又は開ループ制御システムを用いて制御できる適切な炉パラメータは、例えば、焼鈍処理炉及び/又は熱処理炉の加熱領域及び/又は冷却領域におけるストリップ目標温度、プロセスラインにおけるストリップ速度、焼鈍処理炉及び/又は熱処理炉の炉温度ないし炉出力、処理対象のストリップ材の冷却剤の供給、或いは冷却剤の種類である。従って、本発明は、一又は二以上の炉パラメータが、焼鈍炉若しくは熱処理炉の加熱領域及び/又は冷却領域におけるストリップ目標温度、このストリップ温度のプロセスウィンドウ、ストリップ速度、このストリップ速度のプロセスウィンドウ、炉温度、この炉温度のプロセスウィンドウ、炉温度パターン(空間的及び時間的な炉温度の分布)、炉出力、冷却速度、冷却剤の供給、或いは冷却剤の種類の値のうち少なくとも一つを含むことにさらに特徴がある。
【0030】
特に適した測定装置は、残留磁気計測器であり、そのために本発明は、さらに、少なくとも一つの測定装置、それも好ましくは全ての測定装置が、それぞれ、測定値として磁気的な量を検知する残留磁気計測器であるように構成される。
【0031】
機械的特性を検知する測定装置は、レーザ超音波計測器(Laser−Ultraschallgeraet)ないし電磁超音波計測器(elektromagnetisches Ultraschallgeraet)ないしX線透過型計測器(Roentgentransmissionsgeraet)として形成されていてもよい。
【0032】
特に有利であるのは、本発明による装置及び本発明による方法が、鋼材やアルミニウム材料の焼鈍や亜鉛メッキ(Gluehen oder Verzinken)に利用されることである。従って、本発明は、装置が、鋼材やアルミニウム材料のための連続的な焼鈍及び/又は亜鉛メッキラインの構成要素であることに特徴がある。
【0033】
本発明による装置と同様にして、本発明による方法は、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流或いは圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された測定装置を用いて検出された、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した少なくとも一つの測定値により、焼鈍炉若しくは熱処理炉の炉開ループ制御及び/又は炉閉ループ制御、及び/又は、圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの閉ループ制御及び/又は開ループ制御に対して、還元により作用を及ぼすことにさらに特徴がある。
【0034】
このときさらに有利であるのは、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流且つ圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの上流に配置された第一の測定装置、及びストリップ材処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された第二の測定装置、及び/又はストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置されたさらに他の測定装置により、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値がオンラインでそれぞれ検出されるとともに閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットに伝達されるときであり、これも本発明の構成である。
【0035】
同じく、本発明は、ストリップ材処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された(第二の)測定装置、及びストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流或いは直ぐ下流に配置された第二の測定装置或いはさらに他の測定装置により、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映する測定値がオンラインで検出されるとともに閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットに伝達されることに特徴がある。
【0036】
このときやはり適切であるのは、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映する測定値が、実時間オンライン測定により検出され且つ/又は学習プロセスにおいて閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に、それも特に焼鈍炉若しくは熱処理炉の炉開ループ制御及び/又は炉閉ループ制御に対して還元(フィードバック)されることであり、これも本発明の構成である。
【0037】
最後に、本発明による装置は、請求項1乃至17の少なくともいずれか一項に係る装置を用いて実行される方法に特徴がある。
【0038】
以下に、図面に基づき例により本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1a】接続を変えた本発明に係る装置の一実施例を概略的に示す図である。
図1b】接続を変えた本発明に係る装置の一実施例を概略的に示す図である。
図1c】接続を変えた本発明に係る装置の一実施例を概略的に示す図である。
図1d】接続を変えた本発明に係る装置の一実施例を概略的に示す図である。
図1e】接続を変えた本発明に係る装置の一実施例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図は、本発明に係る方法を実施するための接続を変えた本発明に係る装置の五つの実施例を、一つの図面の五つの部分図a)〜e)において概略的に示すものである。五つの部分図a)〜e)全てにおいて同じ部材には同じ符号を付してある。
【0041】
ただ一つの図面が、部分図a)〜e)において、全部1が付されたCAL(Continuous Annealing Line)(連続アニーリングライン)形態の製造ラインをそれぞれ概略的に示している。この製造ラインは、概略的に示された複数の要素を備え、焼鈍炉若しくは熱処理炉2、当該焼鈍炉若しくは熱処理炉2にそれぞれ後置されたスキンパスミルスタンドとして構成されている圧延スタンド3、そしてストリップ材処理方向5において当該圧延スタンドにさらに後置されたテンションレベラー形態のレベラースタンド4を備えている。矢印5の方向に、金属材料、それも特には鉄、さらに好ましくは鋼材からなるストリップ材6か、或いは非鉄金属、それも特にはアルミニウムからなるストリップ材6が、焼鈍炉若しくは熱処理炉2へ、そこから圧延スタンド3へ、そしてそこからレベラースタンド4へ、そしてそこからさらに製造ライン1の外へと導かれる。さらに、部分図a)、c)及びd)による実施形態のそれぞれにおいて、製造ライン1における焼鈍炉若しくは熱処理炉2と圧延スタンド3との間に、第一の測定装置7が配置されており、この測定装置が、ストリップ材6の少なくとも一つの材料特性を検知する。特に、測定装置7は、残留磁気計測器とすることができる。この計測器は、ストリップ材6の特性として磁気量を検知する。部分図b)、c)及びe)による実施形態の場合には、加えて、レベラースタンド4の下流であると同時にストリップ材6の機械加工を最後に施す製造ライン1の機械的処理装置の下流でもある位置に、第二の測定装置8が配置されている。この測定装置は、同じくストリップ材6の少なくとも一つの材料特性、それも好ましくは第一の測定装置7のものと同じ材料特性を検知する。部分図d)及びe)による実施形態の場合には、焼鈍炉若しくは熱処理炉2の上流に(さらに他の)測定装置17がある。ここで、測定装置7,8においても測定装置17においても、観察すべき或いは特定すべき或いは検知すべきストリップ材6の機械的材料特性が間接的にのみこのとき検知されるようにできる。いずれにしても、測定装置7や測定装置8をそれぞれ用いることで、ストリップ材6の所望の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映する測定値が検知される。この測定値は、次いで、詳細不図示の測定・制御回路(Mess− und Regelkreis)或いは詳細不図示の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路内で、電気的な信号や情報伝達信号に変換され、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路或いはこれらと協働する個々の測定・制御回路に伝達される。
【0042】
詳細不図示の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路は、自動プロセス制御の構成要素である。このプロセス制御は、焼鈍炉若しくは熱処理炉2を開ループ制御し且つ/又は閉ループ制御し、場合によっては、焼鈍炉若しくは熱処理炉2に後置された圧延スタンド3及び/又はレベラースタンド4を開ループ制御し且つ/又は閉ループ制御する。部分図a)〜e)に関連して後述されるように、測定装置7及び/又は測定装置8及び/又は測定装置17により検知された測定値やこれから導出された電気的な信号は、還元(フィードバック)により、対応する制御回路(Regelkreis)9,10,11,12,13(これらは、自動プロセス制御の詳細不図示の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に作用するものか或いはその構成要素である。)を介して、焼鈍炉若しくは熱処理炉2の制御部のために、炉の制御部及び/又は圧延装置3の制御部及び/又はレベラースタンド4の制御部に供給される。
【0043】
第一の測定装置7及び第二の測定装置8やさらに他の測定装置17は、ストリップ材6の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値をオンラインで実時間オンライン測定により検出ないし取得する。この各測定値ないしこれから導出された電気的な信号は、閉ループ法(Closed−Loop−Verfahren)により、製造ライン1の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に、それも特に焼鈍炉若しくは熱処理炉2の炉開ループ制御及び/又は炉閉ループ制御に還元(フィードバック)される。好ましくは、この閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路は、その内部に炉モデル制御部の形態で再現ないし格納された炉モデルを有している。また、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路は、材料モデル部を有してもよい。
【0044】
特に、炉開ループ制御及び/又は炉閉ループ制御に関連する、且つ/又は、炉開ループ制御及び/又は炉閉ループ制御と協働する、学習する閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットを用いることで、一又は二以上の炉パラメータが制御され、これにより、ストリップ材6の、測定ないし検出された機械的材料特性又は検出された複数の機械的材料特性の予め与えられた値ないし値領域が得られるか或いは設定される。これらの炉パラメータは、焼鈍炉若しくは熱処理炉の加熱領域及び/又は冷却領域におけるストリップ目標温度2、ストリップ速度、炉温度、炉出力、冷却剤の供給つまりはストリップ材6に冷却剤を供給する仕方や冷却剤の種類の値のうちの少なくとも一つとすることができる。
【0045】
測定装置7,8,17は、とりも直さず、それぞれ、測定値として磁気量を検知する残留磁気計測器とすることができる。しかし、各測定装置7,8は、測定装置により観察されるストリップ材6の機械的特性の直接的ないし間接的な検出を可能にする他の任意の種類の測定装置とすることができる。
【0046】
好ましくは、図面の部分図a)〜e)に示された製造ライン1は、鋼材料ないしアルミニウム材料のための連続的な焼鈍及び/又は亜鉛メッキライン(Verzinkungslinie)である。
【0047】
部分図a)に示された実施形態の場合、ただ一つだけの測定装置7が焼鈍炉若しくは熱処理炉2と圧延スタンド3との間に配置されているに過ぎず、この測定装置が、制御回路9を介して閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に、それも本実施例ではとりわけ炉の制御部に戻るように接続(還元)されている。
【0048】
部分図b)による実施例では、ストリップ材6の加工方向5において機械加工装置の下流、つまり、圧延スタンド3とレベラースタンド4の下流に、第二の測定装置8が配置されている。この測定装置は、制御回路10を介して閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に戻るように接続(還元)されており、炉2の制御にも、圧延スタンド3及び/又はレベラースタンド4の制御にも作用を及ぼす。
【0049】
部分図c)に係る実施形態の場合、第一の測定装置7が焼鈍炉若しくは熱処理炉2と圧延スタンド3との間に配置されているとともに、第二の測定装置8が加工方向5においてレベラースタンド4の下流に配置されている。
【0050】
制御ユニット18は、測定装置7,8から測定値を入手する。これらの測定値は、制御回路11により焼鈍炉2と圧延スタンド3とレベラースタンド4に戻って作用を及ぼす。
【0051】
部分図d)による実施例では、第一の測定装置7が、焼鈍炉若しくは熱処理炉2と圧延スタンド3との間に配置され、さらに他の測定装置17が、ストリップ材処理方向5に関して焼鈍炉若しくは熱処理炉2の上流に配置されている。制御回路12を介することで、測定装置7,17から制御ユニット18に供給された測定値は、焼鈍炉若しくは熱処理炉2の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に還元される。
【0052】
部分図e)による実施例は、一実施形態を示し、この実施形態では、第二の測定装置8が、ストリップ材処理方向5においてレベラースタンド4の下流に再び配置されているとともに、さらに他の測定装置17が、焼鈍炉若しくは熱処理炉2の上流に配置されている。第二の測定装置8と他の測定装置17から制御ユニット18に供給された測定値は、制御回路13により、焼鈍炉若しくは熱処理炉2、圧延スタンド3及びレベラースタンド4の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に還元される。
【0053】
図には示されていないやり方で、第一の測定装置7及び第二の測定装置8やさらに他の測定装置17を、これらからそれぞれ導出される制御回路に接続することで、図示されたものとは違った作用をさせることができる。こうすれば、例えば、第一の測定装置7も、第二の測定装置8もいずれも、炉の制御にも、個々の或いは全ての機械加工装置の制御にも作用させることが可能になる。同様にして、測定装置の単に部分的な作用と、それから得られる単に個々の装置や炉だけへの制御回路との考えられ得るあらゆる組み合わせが、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路の範囲内で考えられ得るし、可能である。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図1d)】
図1e)】