【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明により、冒頭に詳述した類の装置において、少なくとも一つの測定装置が、ストリップ材処理方向における焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流に配置され、ストリップ材の機械的な材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値をオンラインで検出し、この測定値を特に情報伝達信号として閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットに伝達することにより解決される。
【0010】
この閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットは、過去の炉の挙動に基づいて、炉の条件を変更した際の炉の反応を学習し、到来するストリップに対して測定値を適したものにするように条件を調節する。これにより、測定値のばらつきが小さくなる。この学習過程(Lernprozess)には、焼鈍炉の前のプロセスについての情報も(測定値であれ設定値であれ)利用することができる。
【0011】
同様に、上述の課題は、本発明に係る方法において、少なくとも一つの測定装置を用いてオンラインでストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値が検出され、この測定値が特に情報伝達信号として閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットに伝達されることにより解決される。
【0012】
この閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットは、過去の炉の挙動に基づいて、炉の条件を変更した際の炉の反応を学習し、到来するストリップに対して測定値を適したものにするように条件を調節する。これにより、測定値のばらつきが小さくなる。
【0013】
特に情報伝達信号は、測定値ないし情報を伝達するのに適した電気的な信号、電子的な信号、電磁波による信号、無線信号、光信号ないし赤外信号とすることができる。
【0014】
本発明により、熱処理されたり焼鈍処理されたりしたストリップ材の全長にわたり、炉の出口か、ストリップ処理方向における焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流において検出が行われることになる。焼鈍処理されたり加熱処理されたりしたストリップ材の機械的特性をこのように好適にも連続して観察することにより、後続のストリップについて、機械的特性が所望の値枠(Wertefenster)内に収まるように、つまり、許容されたばらつき幅やばらつきだけを有するように炉の設定を行うことができる。機械的特性が恒常的かつ連続的にプロセス実行中に観察されるので、機械的特性の実際限界値を、開ループ制御システム及び/又は測定システムの限界値としても用いることができる。プロセスウィンドウは、炉パラメータ(炉領域温度、ストリップ目標温度ないしストリップ速度)の範囲(最小値から最大値まで)であり、その範囲を製造工程で維持することにより、要求されるストリップの機械的特性が実現される。焼鈍サイクルは調整して適正化でき、プロセスウィンドウは変更できる。最良の場合、焼鈍サイクルやそれに関連した限界値といった事前に決められたパラメータに限られなくてもよくなる。これにより、全焼鈍プロセスを経た機械的特性のばらつきは、最適化され、より良好に所望のパラメータと境界条件に適合した状態となる。それどころか、例えば所望の機械的特性を実現するのに要求ないし調整される焼鈍温度等の限界に近づけることができ、それに伴い、より環境に配慮して或いはより経済的にプロセスを実行し、特にはその生産性を高め得ることが可能になる。その上、本発明による測定の仕方により、異なる品質のストリップ材間の移行をより良好に実施でき且つ連続してチューニングすることが可能である。これは、各ストリップ材の選択された機械的特性のそれぞれが重要な量として事前に設定可能とされ、そのため、互いに連続したストリップの重なりを制御することができるからである。
【0015】
本発明による装置若しくは本発明による方法の単数又は複数の測定装置は、さらに、それぞれの材料品質(例えばそれぞれの鋼の品質)に関する最善のプロセスウィンドウを決定するため、所定の期間に使用されるのでもよい。
【0016】
本発明は、実施形態において、焼鈍炉若しくは熱処理炉に後置された圧延スタンドやレベラースタンドを備える構成であり、このスタンドは、自動プロセス制御の閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路内で焼鈍炉若しくは熱処理炉と協働し且つ少なくとも一つの測定装置と協働する。
【0017】
ここで、さらに、少なくとも一つの測定装置が、ストリップ処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置されているものであってもよく、これが本発明の構成でもある。
【0018】
本発明はさらに、実施形態においては、少なくとも一つの測定装置が、ストリップ材処理方向における焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流且つ圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの上流に配置されているというものである。焼鈍炉若しくは加熱炉の下流だが後続の圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの上流に測定装置を配置することにより、測定されたストリップ材の機械的特性に対する焼鈍処理又は加熱処理の影響だけに基づいて、炉運転の閉ループ制御又は開ループ制御を行うことができる。
【0019】
さらに有利であるのは、少なくとも一つの測定装置が、ストリップ材処理方向において製造ラインの最後の機械的な処理装置の下流に配置されている場合であり、これが本発明の構成でもある。この場合には、ストリップ材の測定された機械的特性に対して、製造ラインにおいて前に行われた全ての材料加工や材料処理が及ぼす影響に基づいて、炉運転及び/又は機械的処理の閉ループ制御又は開ループ制御が行われる。
【0020】
本発明の他の実施形態において、さらに、第一の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流且つ圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの上流に配置されており、第二の測定装置が圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置されている。
【0021】
第二の測定装置が、ストリップ材処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置されていることによって、一又は二以上の圧延スタンド、一又は二以上の、レベラースタンド、スキンパスミルスタンド或いはテンションレベラーを備えていることのできる機械加工ステーションが、それぞれ測定された機械的特性に対して及ぼす影響も特定でき、その影響を、焼鈍炉若しくは熱処理炉の制御の際にも、また機械加工ステーションないし機械加工装置つまりは圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの制御の際にも、考慮することができる。ストリップ材加工方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された測定装置による測定は、成形プロセス後のストリップの機械的特性を考慮することができる点で有利である。特に、このことに関連して、最終製品の機械的特性を、制御のために閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に反映させることが有利であり、そのためにも、加工方向において製造ラインの最後の機械的処理装置の下流に測定装置が配置されている構成とされている。
【0022】
もちろん、炉の制御及び機械加工、並びにそれらと各々に関係する設備及び装置に作用する二つの測定装置を、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路の測定・制御回路(Mess− und Regelkreis)のそれぞれに作用させてもよい。
【0023】
二つの測定装置を使用する際には、一つの測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置されているとともに、第二の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の直ぐ下流か或いは圧延スタンド及び/又はレベラースタンドから形成された機械加工部の下流に配置されているように構成されていてもよい。各測定値は、開ループ制御ユニット/閉ループ制御ユニットに行き、これらが学習機能を介して炉の制御に作用を及ぼし、場合によっては機械加工に作用を及ぼす。これに加えて、本発明は、第一の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流且つ圧延スタンド及び/又はレベラースタンド上流に配置され、さらに他の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置されているように構成される。また、本発明は、この観点に関して、(第二の)測定装置が、ストリップ材処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置され、さらに他の測定装置が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置されていることに特徴がある。
【0024】
適切な実施形態において、本発明はさらに、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流に配置された上記の第一の測定装置及び/又はストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置された他の一つの測定装置が、還元(フィードバック)(Rueckkopplung)により炉の制御に作用を及ぼすことに特徴がある。
【0025】
ここで、本発明は、さらに、ストリップ材処理方向において少なくとも一つの圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流或いは一つの圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された上記の測定装置(特には第二の測定装置)、及び/又は上記の第一の測定装置若しくは他の一つの測定装置(この測定装置は、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流或いは直ぐ下流に配置されている。)が、還元により、炉の制御に作用を及ぼすとともに、上記少なくとも一つの圧延スタンド及び/又はレベラースタンド或いは対応して設けられた圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの制御に作用を及ぼす構成である。
【0026】
特に適切な測定は、実時間オンライン測定である。従って、本発明は、さらに、少なくとも一つの測定装置(好ましくは全ての測定装置)が、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値を実時間オンライン測定により検出することに特徴がある。特に有利な閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路の構成は、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映する測定値が、学習プロセスにおいて、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に、それも特に焼鈍炉若しくは熱処理炉の炉閉ループ制御及び/又は炉開ループ制御に還元(フィードバック)(rueckkoppeln)されるときに実現する。
【0027】
閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路が、その内部に再現され且つ/又は格納された炉モデル制御を有する場合に、本発明により焼鈍炉若しくは熱処理炉が開ループ制御及び/又は閉ループ制御を行うことができることが特に有利且つ適切で、これが本発明の構成でもある。このとき、炉モデル制御は、簡単な線形モデルから熱力学的モデルに至るあらゆるモデルを含むことができ、学習機能及び適応機能とともにあらゆる類の炉モデルが炉モデル制御として格納され得る。
【0028】
加えて、本発明の他の実施形態において、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路が材料モデルを有しているように構成されていてもよい。
【0029】
本発明により構成された閉ループ制御システム及び/又は開ループ制御システムを用いて制御できる適切な炉パラメータは、例えば、焼鈍処理炉及び/又は熱処理炉の加熱領域及び/又は冷却領域におけるストリップ目標温度、プロセスラインにおけるストリップ速度、焼鈍処理炉及び/又は熱処理炉の炉温度ないし炉出力、処理対象のストリップ材の冷却剤の供給、或いは冷却剤の種類である。従って、本発明は、一又は二以上の炉パラメータが、焼鈍炉若しくは熱処理炉の加熱領域及び/又は冷却領域におけるストリップ目標温度、このストリップ温度のプロセスウィンドウ、ストリップ速度、このストリップ速度のプロセスウィンドウ、炉温度、この炉温度のプロセスウィンドウ、炉温度パターン(空間的及び時間的な炉温度の分布)、炉出力、冷却速度、冷却剤の供給、或いは冷却剤の種類の値のうち少なくとも一つを含むことにさらに特徴がある。
【0030】
特に適した測定装置は、残留磁気計測器であり、そのために本発明は、さらに、少なくとも一つの測定装置、それも好ましくは全ての測定装置が、それぞれ、測定値として磁気的な量を検知する残留磁気計測器であるように構成される。
【0031】
機械的特性を検知する測定装置は、レーザ超音波計測器(Laser−Ultraschallgeraet)ないし電磁超音波計測器(elektromagnetisches Ultraschallgeraet)ないしX線透過型計測器(Roentgentransmissionsgeraet)として形成されていてもよい。
【0032】
特に有利であるのは、本発明による装置及び本発明による方法が、鋼材やアルミニウム材料の焼鈍や亜鉛メッキ(Gluehen oder Verzinken)に利用されることである。従って、本発明は、装置が、鋼材やアルミニウム材料のための連続的な焼鈍及び/又は亜鉛メッキラインの構成要素であることに特徴がある。
【0033】
本発明による装置と同様にして、本発明による方法は、閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路が、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流或いは圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された測定装置を用いて検出された、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した少なくとも一つの測定値により、焼鈍炉若しくは熱処理炉の炉開ループ制御及び/又は炉閉ループ制御、及び/又は、圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの閉ループ制御及び/又は開ループ制御に対して、還元により作用を及ぼすことにさらに特徴がある。
【0034】
このときさらに有利であるのは、ストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の下流且つ圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの上流に配置された第一の測定装置、及びストリップ材処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された第二の測定装置、及び/又はストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流に配置されたさらに他の測定装置により、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映した測定値がオンラインでそれぞれ検出されるとともに閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットに伝達されるときであり、これも本発明の構成である。
【0035】
同じく、本発明は、ストリップ材処理方向において圧延スタンド及び/又はレベラースタンドの下流に配置された(第二の)測定装置、及びストリップ材処理方向において焼鈍炉若しくは熱処理炉の上流或いは直ぐ下流に配置された第二の測定装置或いはさらに他の測定装置により、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映する測定値がオンラインで検出されるとともに閉ループ制御ユニット及び/又は開ループ制御ユニットに伝達されることに特徴がある。
【0036】
このときやはり適切であるのは、ストリップ材の機械的材料特性を再現し且つ/又は反映する測定値が、実時間オンライン測定により検出され且つ/又は学習プロセスにおいて閉ループ制御回路及び/又は開ループ制御回路に、それも特に焼鈍炉若しくは熱処理炉の炉開ループ制御及び/又は炉閉ループ制御に対して還元(フィードバック)されることであり、これも本発明の構成である。
【0037】
最後に、本発明による装置は、請求項1乃至17の少なくともいずれか一項に係る装置を用いて実行される方法に特徴がある。
【0038】
以下に、図面に基づき例により本発明を詳しく説明する。