特許第6562917号(P6562917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562917
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】クリップされた増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03G 11/00 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   H03G11/00 002
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-533760(P2016-533760)
(86)(22)【出願日】2014年8月14日
(65)【公表番号】特表2016-528832(P2016-528832A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】CA2014050771
(87)【国際公開番号】WO2015021552
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2017年8月4日
(31)【優先権主張番号】61/865,905
(32)【優先日】2013年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506175792
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(73)【特許権者】
【識別番号】510309064
【氏名又は名称】ザ ガヴァナーズ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ アルバータ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】バーグレン,アダム ジョーアン
(72)【発明者】
【氏名】マクリーリー,リチャード
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−334273(JP,A)
【文献】 特開昭62−065460(JP,A)
【文献】 特開2012−151346(JP,A)
【文献】 実開昭56−115188(JP,U)
【文献】 特開平04−211296(JP,A)
【文献】 特開平07−263989(JP,A)
【文献】 実開昭54−153855(JP,U)
【文献】 特開2006−210902(JP,A)
【文献】 米国特許第05032796(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 11/00−H03G 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子オーディオ信号のための歪み回路として使用される回路であって、
前記電子オーディオ信号を受信する入力ラインを備え、高調波成分を含む出力波形を生成するよう構成される増幅器と、
前記増幅器の出力部を前記増幅器の入力部又はグランドに接続するクリッピング回路であり、無機又は有機トンネル接合を含み、該無機又は有機トンネル接合は、接触面と、該接触面に付着した複数の実質的に並列の分子ユニットの単分子層とを備えた基板から形成され、前記単分子層は、前記出力波形の高調波成分の変化及び量子力学的なトンネリングを可能にする厚さを有し、前記出力波形は、周波数が増大するにつれて大きさが小さくなり且つ前記クリッピング回路において前記無機又は有機トンネル接合に代えて一対の並列ダイオードを用いた場合よりも速く低下する高調波を有する、前記クリッピング回路と
を含む、回路。
【請求項2】
前記増幅器が、反転入力部、非反転入力部、及び出力部を有する演算増幅器である、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記クリッピング回路が、前記演算増幅器の前記出力部を前記演算増幅器の前記反転入力部に接続する、請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記入力ラインは、前記演算増幅器の前記非反転入力部に接続される、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
抵抗器を含み、前記入力ラインをグランドに接続するグランドラインを更に含む、請求項4に記載の回路。
【請求項6】
前記入力ラインは、抵抗器を含み、前記演算増幅器の前記反転入力部に接続される、請求項3に記載の回路。
【請求項7】
前記演算増幅器の前記非反転入力部をグランドに接続するグランドラインを更に含む、請求項6に記載の回路。
【請求項8】
前記増幅器がトランジスタ増幅器である、請求項1に記載の回路。
【請求項9】
抵抗器を含み、前記入力ラインをグランドに接続するグランドラインを更に含む、請求項8に記載の回路。
【請求項10】
前記トランジスタ増幅器が、エミッタ、コレクタ、及びベースを有するバイポーラ接合トランジスタを含み、前記エミッタがグランドに接続され、前記ベースが前記増幅器の前記入力部として接続され、前記コレクタが前記増幅器の前記出力部として接続される、請求項8又は請求項9に記載の回路。
【請求項11】
前記トランジスタ増幅器が、ソース、ドレイン、及びゲートを有する電界効果トランジスタを含み、前記ソースがグランドに接続され、前記ゲートが前記増幅器の前記入力部として接続され、前記ドレインが前記増幅器の前記出力部として接続される、請求項8又は請求項9に記載の回路。
【請求項12】
前記無機又は有機トンネル接合が有機トンネル接合である、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の回路。
【請求項13】
前記無機又は有機トンネル接合が無機トンネル接合である、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の回路。
【請求項14】
前記複数の実質的に並列の分子ユニットの単分子層は、共役結合によって前記接触面に付着される、
請求項1乃至13のうちいずれか一項に記載の回路。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の回路を操作する方法であって、前記無機又は有機トンネル接合の温度を制御することにより前記回路の電子出力を変更するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
増幅器クリッピング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号の増幅は、アナログ、デジタル、及び真空管回路構成を含む、様々な方法を用いて実行され得る。各方法は明白な利点/欠点を有する一方、エレキギター信号の増幅は、ほとんどの場合、真空管ベースの増幅回路を用いて実行される。この応用例に対する真空管増幅器の継続的な人気の理由の一部は、過負荷をかけられる場合に真空管増幅器が応答する方法に伴って生じる。真空管増幅器が過負荷をかけられる場合に、信号は、(他の増幅方法と比較して)異なった方法でクリッピングされ、しばしば、“ソフト”と言われる。半導体増幅器に過負荷をかけることは、“耳障りな”及び“バジーな(buzzy)”音を生成し、それは、しばしば主観的に劣ったものとして評価される。その結果、1970年代後半の初めに(最初の半導体増幅器の導入及び大部分の失敗のすぐ後に)、真空管タイプのクリッピングを明確にエミュレートするように設計された様々なアナログ素子が市場に現れた。これらの素子は、第1目標として利得圧縮(ソフトクリッピング)によって設計された回路構成を使用した。続いて、この市場は、ここ数十年間で、多数の歪み回路を含むように急速に普及した。
【0003】
ソフトクリッピングをシミュレートする最もポピュラーな方法のうちの1つは、反対の極性を有する並列ダイオードを演算増幅器のフィードバックループに配置することを必要とする。様々な構成が、テイクオフ電圧、ダイオードの導通開始の程度、及び他の要因に基づいて使用された。多くの異なる構成が異なった音を提供し、これらは、異なるユーザによって主観的に好まれる。したがって、クリッピングのタイプを調整する(tailor)とともに、異なるタイプの歪み及び“音”を生成することができる新しいコンポーネントに対する著しい要求がある。
【0004】
ソフトクリッピング回路のいくらかの実例が、特許文献において論じられた。全ての従前の実例は、従来のコンポーネントを使用する一般的な回路について論じる。我々は、分子接合の電子特性の非線形の特徴を利用するための分子接合の回路への統合に関する従来技術を発見しなかった。
【0005】
分子接合構造及びその非線形の応答は、オハイオ州立大学に与えられた以前の特許、すなわちUS7,112,366号及びUS7,042,006号の主題である。著者の知る限りでは、以前の特許、発表、又は出版物は、オーディオ歪み、処理、又は増幅回路における分子又はトンネル接合の使用を開示しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例において、ハイブリッドアナログ−分子回路内の分子又は他のトンネリング電子ベースのコンポーネントは、出力に対する拡張された制御を伴うソフト又はハードクリッピング能力を生成するために使用される。分子素子の使用は、製造時に分子接合温度を変えることにより、又は使用中にいくらかの異なる分子接合の中で切り替わることにより、従来のコンポーネントと比較して、波形クリッピング及び加えられた高調波成分の性質を制御するより良い能力を含むいくらかの利点を与える。分子素子の分子構造、層厚、及び接触は、出力波形における周波数成分の配分に影響を及ぼし、したがって、望ましい特性を有するように出力を“調整すること(tailoring)”を可能にする。トンネリング(tunneling:トンネル現象)に起因する分子素子の電子特性の非線形の性質は、この機能性の基礎である。分子又は無機素子におけるトンネリングは、適用された電界により、又は、電子的結合により支援され得るとともに、サイト又はトラップの間の複数のトンネリングステップ及び/若しくは酸化還元交換を必要とし得る。増幅器を有する回路は、可聴周波数に制限されないとともに、より高い周波数における異なるアプリケーションを有し得る。
【0007】
増幅器と、増幅器の出力を増幅器の入力又はグランドに接続するとともに、無機又は有機トンネル接合を含むクリッピング回路と
を含む、回路が提供される。
【0008】
各種の実施例において、下記の特徴のうちのいずれか1つ又は複数が含まれ得る。増幅器は、反転入力、非反転入力、及び出力を有する演算増幅器であり得る。クリッピング回路は、演算増幅器の出力を演算増幅器の反転入力に接続し得る。入力ラインが、演算増幅器の非反転入力に接続され得る。抵抗器を含むグランドラインが、入力ラインをグランドに接続し得る。抵抗器を含む入力ラインが、演算増幅器の反転入力に接続され得る。グランドラインは、演算増幅器の非反転入力をグランドに接続し得る。増幅器は、トランジスタ増幅器であり得る。入力ラインが、トランジスタ増幅器の入力、及び、抵抗器を含み入力ラインをグランドに接続するグランドラインに接続され得る。トランジスタ増幅器は、エミッタ、コレクタ、及びベースを有するバイポーラ接合トランジスタを含むことができ、エミッタはグランドに接続され、ベースは増幅器の入力として接続されるとともに、コレクタは増幅器の出力として接続される。トランジスタ増幅器は、ソース、ドレイン、及びゲートを有する電界効果トランジスタを含むことができ、ソースはグランドに接続され、ゲートは増幅器の入力として接続されるとともに、ドレインは増幅器の出力として接続される。回路は、エレキギター信号、又は他の電子オーディオ信号のための歪み回路として使用され得る。回路は、トンネル接合の温度を制御することにより回路の電子出力を変更するステップを含む方法により操作され得る。
【0009】
素子及び方法のこれら及び他の態様は、参照によってここに組み込まれる請求項において提示される。
【0010】
一例として、同様の参照符号が同様の要素を示す図面を参照して、実施例がここで説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来のソフトクリッピング回路(従来技術)のための回路図である。
図2】トンネル接合を使用するソフトクリッピング回路のための回路図であって、下記の[外1]で示すシンボルはトンネル接合を表すために使用される。
図3】従来の(逆極性を有する)一対の並列ダイオードのほかに、並列ダイオードより伝導性がある分子接合及び並列ダイオードより伝導性がない分子接合の電流−電圧特性を示すグラフであって、ここで、分子接合の伝導性は分子コンポーネントの厚みによって制御される。
図4】修正されたBOSS SD−1 Super Overdrive(商標)ペダルへの入力として使用される、約1ボルトの頂点間振幅の400Hz正弦波入力波形、及び分子接合及びダイオードアレーを使用する回路における結果として生じる出力波形を示すグラフであって、曲線のy軸(電圧)の位置は、明確にするために、オフセットして示される。
図5図4からの入力波形のグラフ、そして図4からの分子接合を使用する出力波形及び分子接合との接触が意図的に断たれた修正されたBOSS SD−1 Super Overdrive(商標)ペダルにおける出力波形のグラフであって、曲線のy軸の位置は、明確にするために、オフセットして示される。
図6図4の出力波形のフーリエ解析のグラフであって、曲線のy軸の位置は、明確にするために、オフセットして示される(y軸スケールバーは20dBに対応する長さを有している)。
図7】厚みにおいて2.2nm、2.8nm、3.5nm、又は5.0nmを有する層を含む(従来技術)分子接合における電流−電圧特性のグラフである
図8】反転増幅器構成においてトンネル接合を使用するソフトクリッピング回路のための回路図である。
図9】バイポーラ接合トランジスタ増幅器とともにトンネル接合を使用するクリッピング回路のための回路図である。
図10】バイポーラ接合トランジスタ増幅器とともに一組のダイオードを使用する(従来技術)クリッピング回路を示す回路図である。
図11】電界効果トランジスタ増幅器とともにトンネル接合を使用するクリッピング回路を示す回路図である。
図12】演算増幅器歪み回路とともにトンネル接合を使用するハードクリッピングを示す回路図である。
図13】バイポーラ接合トランジスタ歪み回路とともにトンネル接合を使用するハードクリッピングを示す回路図である。
図14】電界効果トランジスタ歪み回路とともにトンネル接合を使用するハードクリッピングを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2において例示されたように、トンネル接合は、オーディオ歪み回路を生成するために、演算増幅器のフィードバックループにおいて、従来のコンポーネントの代わりに使用される。図1は、従来のアナログのソフトクリッピング回路を示し、一方、図2は、従来のコンポーネントの代わりにトンネル接合を使用する対応する回路を示す。ここで、シンボル
[外1]
はトンネル接合を表すために使用される。図1は、反転入力14、非反転入力16、及び出力18を備えた演算増幅器12を有するフィードバック回路10を示す。入力ライン20は、演算増幅器の非反転入力に接続される。出力ライン22は、演算増幅器の出力に接続される。フィードバックライン24は、演算増幅器の出力18を演算増幅器の反転入力14に接続する。フィードバックライン24は、並列ダイオード28及び30を有するループ26を含む。抵抗器32は、入力ラインとグランド34に接続される。図2は、並列ダイオード28及び30を有するループ26がトンネル接合36と交換されるということを除けば、図1の回路と同じである回路を示す。図8において示された代替実施例において、フィードバックループは、非反転入力16の代わりに、抵抗器42を通して反転入力14に接続される入力ライン20を有する反転構成で形成されるであろう。フィードバックライン24は、その上、反転入力14にもまだつながるであろう。抵抗器42は、異なる実施例では、異なる値を有し得る。いくつかの実施例において、抵抗器は、非常に低い値の電気抵抗を有し得る。更なるライン38は、演算増幅器の非反転入力を、抵抗器40を通してグランド34に接続するであろう。
【0013】
トンネル接合は、分子接合、例えばUS7,112,366号において開示されたように、特に有機分子接合により提供され得る。法律で許されている部分のUS7,112,366号の内容は、参照によってここに組み込まれる。US7,112,366号において開示された代表的な分子接合は、接触面、及び共役結合によって接触面に付着した複数の実質的に並列の分子ユニットの単分子層を有する、例えば導電性カーボンの基板を含む。分子接合は、参照によってここに組み込まれる下記の論文において説明されたプロセスによって生成され得る。1)“Bergren, A. J.”、“McCreery, R. L.”、“Stoyanov, S. R.”、“Gusarov, S.”、“Kovalenko, A.”、J. Phys. Chem. C 2010、114、15806、これによれば、導体(例えば、カーボン、金)は、芳香族ジアゾニウムイオンを含む溶液(例えば、1mM濃度)における作用電極として使用される。スキャンパラメータを変えることにより、結果として生じる分子層の厚みが2〜6nm範囲に制御されることができる、還元電位プログラムが適用される。一例として、0.2V/sにおける+0.4から−0.6Vまでの1回のスキャンはアゾベンゼンの3.5nmの層になり、一方、同じ範囲における4回のスキャンは、5.0nmの厚みをもたらす。同様に、1回のスキャンに対して−0.6から−0.5Vに負の限界を変更することは、2.8nmの厚みの層をもたらす。2)“Yan, H.”、“Bergren, A. J.”、“McCreery, R. L.”、Journal of the American Chemical Society 2011、133、19168、これによれば、上端の接触面は、(グラファイトロッド源からの)カーボン及びCuを含む導体の電子ビーム蒸着により、1〜6nmの分子層の上端に付けられることができる。3)“Yan, H.”、“Bergren, A.”、“McCreery, R.”、“Della Rocca, M.”、“Martin, P.”、“Lafarge, P.”、“Lacroix, J.”、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2013、110、5326、これによれば、厚み22nmまでの層は、適当な溶媒における先駆物質の溶解により準備される溶液において作用電極として導体を利用することにより、導体上に堆積することができる。先駆物質は、適切な量の亜硝酸tert−ブチルを加えて、15分間かき回し、その後に上述のプログラムと類似した潜在的なプログラムが適用されることにより活性化される。一例として、+0.4Vから−0.6Vまで1回スキャンすることは、4.5nmの厚みをもたらし、一方、10回スキャンすることは、22nmの厚みをもたらす。
【0014】
分子コンポーネントの特性、ひいては、結果的に生じるクリッピングのタイプと音は、異なる分子、厚み、接合構造、及び接触材料を用いることにより調整されることができる。さらに、分子接合の使用は、より広い範囲の歪んだ音が生成されることを、結果として生じる波形の高調波成分に対する拡張された制御によって、可能にする。さらなるトンネル接合は、Al/AlOx/Cuトンネル接合、又はAl/AlOx/Auトンネル接合、又は他の無機トンネル接合を含み得る。詳細な性質は接合の詳細な特性に応じて異なるであろうが、接合のトンネル効果がここで説明されたクリッピングの性質をもたらすので、そのようなトンネル接合は、US7,112,366号において開示されたタイプの有機分子接合の代わりに、本発明において使用され得る。AlOx層は、熱酸化によりAl金属上で成長し得るか、又は原子層堆積(ALD)若しくは蒸着を使用して他の導体上で成長し得る。代りに、AlOxは、熱酸化、ALD、又は蒸着によって金属上で成長するいずれかの異なる金属酸化物と交換され得る。可能な酸化物は、Cr、Hf、Ti、Si、Cu、Ag、Zn、Sn、及び他のものの酸化物を含むかもしれないが、しかし、あらゆる場合において、電子的な性質においてUS7,112,366号の分子接合と同様のトンネル接合として働くであろう。
【0015】
図3図6は、一連の波形を作成するために、どのように分子コンポーネントが修正された市販用の歪みユニットにおいて使用されることができるかを示す。図3は、並列ダイオードと2つの異なる分子接合の電子特性を比較する。1つの分子接合は、2つの導体の間に3.5nmの厚みのアゾベンゼンを含み、他方は、2つの導体の間に5.0nmの厚みのアゾベンゼンを含む。分子接合の特性は並列ダイオードをシミュレートするように生成されることができるが、しかし、同様に、分子接合が非常に異なる電子的な性質を生み出すことができることは、図3から明らかである。特に、低電圧における薄い分子接合(3.5nmのアゾベンゼン)のより漸進的な始まりは、概して、ダイオードを使用して現在利用できない方法で制御されることができる望ましい特性を表す。
【0016】
実在の回路において分子接合を使用することの影響をテストするために、市販用の歪みユニット(BOSS SD−1 Super Overdrive(商標))が系統的なテストに適合するように修正された。平凡なダイオードアレーは除去され、表面実装されたジャックへの外部接続が、分子接合を含むあらゆる外部コンポーネントの代用を可能にした。
【0017】
400Hzの1VAC振幅の入力波形が、修正されたSD−1の出力をテストするために使用され、そして様々な成分を有する出力波形が測定された。図4は、平凡な並列ダイオード及び分子接合を含む様々な構成に対する波形の入力及び出力の曲線を示す。分子接合が異なる音を提供するであろうことを示している明瞭な差異が観察される。さらに、前述のように、達成されるクリッピングのタイプは、分子接合の構造を変えることにより調整され得る。さらに、図6において示されたフーリエ解析は、何のコンポーネントが回路に配線されたかに応じた、出力の高調波成分における差異を示す。分子接合を有する回路では、出力は並列ダイオードによるものより更に急速に低下する高調波を有している。
【0018】
図5は、回路に配線された分子接合を有する素子の出力(赤い曲線)と、接合と接触している配線の1つを持ち上げることにより接合との接触が破損している場合(オープンループとラベルが付けられた緑の曲線)との比較を示す。フィードバックループにおいてオープン回路を有する素子の出力は、演算増幅器ベースのハードクリッピングを示し、それは、分子接合を含むことにより明らかに回避される。
【0019】
歪み回路において現在使用されるコンポーネントは、整流器として働くSiダイオード及びGeダイオードに基づいている。電圧及び開始特性に“基づく”ダイオードの選択は、ダイオードの中の半導体接合の固有特性によって制限される。さらに、生成される高調波成分はダイオードの特性によって変わり、“音”の種類が従って制限される。
【0020】
(分子構造及び/又は厚みを変更することにより)調節可能なIV曲線を有する分子接合の使用は、半導体コンポーネントによって現在利用可能であるものより、より広い範囲の歪み音、高調波成分などを提供することができる。非常により多くの種類の分子接合は、特性が半導体と接触材料の組み合わせの小さなセットによって変わる現在のコンポーネントに、多数の選択肢を提供するはずである。一実施例において、歪み回路は、ユーザにより操作されるスイッチによって選択され得る複数のトンネル接合を有するように構成される。異なる実施例において、トンネル接合の特性は、素子温度の変化によって修正され得る。各トンネル接合は、異なる特性を有し得る。
【0021】
クリッピング回路においてトンネル接合を使用するための多くの可能な方法がある。図1Bにおいて示された回路に加えて、周波数フィルタリング、レベル圧縮、追加の利得ステージ、又は他のタイプのオーディオ処理を使用する回路が想定され得る。例えば、“スタック化した(stacked)”歪みステージが可能であり、ここで、1つの歪み回路の出力は、第2の回路の入力に供給され、そして、いずれか、両方、又は多数のこれらのステージは、従来の回路構成に基づいているか、若しくはトンネル接合を使用することができる。
【0022】
“Bergren”らのJ. Phys. Chem. C 2010において以前に開示されたように、分子接合の非線形抵抗特性は、図7において例示される。図7は、分子層の厚みが変化するときの分子トンネル接合の電流電圧(i−V)特性における変化を例示する。分子層の厚みをサブnm範囲(sub-nm range)で制御する能力と結合された、距離に対する量子力学的トンネリングの大きい感度は、広い範囲の“開始電圧(onset voltages)”(図7において示された曲線の変曲点として大まかに定義される)を可能にする。これらのi−V特性における湾曲の性質は、図2において示された回路で使用される場合に、入力信号に加えられた特定の高調波歪みをもたらす。
【0023】
図9は、バイポーラ接合トランジスタ増幅器52とともにトンネル接合50を使用するクリッピング回路のための回路図を示す。トランジスタ増幅器は反転入力を有していないが、しかし、トンネル接合50並びに抵抗器54及び56を含むフィードバック回路は、出力ライン68を入力ライン70に接続するためにまだ使用されることができる。図9において示されたトランジスタ増幅器は、エミッタ58、コレクタ60、及びベース62を有するバイポーラ接合トランジスタ52であり、エミッタ58は、抵抗器66を通してグラウンド64に接続され、ベース62は、増幅器の入力として接続され、そしてコレクタ60は、増幅器の出力として接続される。この構成は、“共通エミッタ”増幅器として知られている。トンネル接合を用いてクリップされ得るバイポーラ接合トランジスタ増幅器の他の可能な構成は、ベースがグランドに接続され、エミッタが入力として接続され、そしてコレクタが出力として接続される“共通ベース”増幅器、及びコレクタがグランドに接続され、ベースが入力として接続され、そしてエミッタが出力として接続される“共通コレクタ”増幅器を含む。図示された回路は、トランジスタ動作のための正しいバイアス電圧を前提とする。例えば、異なるバイアス電圧が必要とされる場合には、グランドに対する接続は、電源レールに対する接続と交換され得る。図示された実施例において、入力ライン70は、同様に、抵抗器72を通してグラウンドに接続される。図10は、フィードバック回路が、トンネル接合よりむしろ、並列ダイオード76及び78を備えたループ74を有していることを除いて図9における回路と同じである、従来技術の回路を示す。図10に示された回路と同様の回路を使用する従来技術の製品の一例は、electro−harmonix(商標)Big Muff Pi(商標)であり、それは、それぞれが図10に示された回路と同様であり、抵抗器56が省略され、並列ダイオードにキャパシタが直列に追加され、そして抵抗器54に並列に別のキャパシタが追加された、2つの回路を有する。
【0024】
図11は、一般に84として示される電界効果トランジスタ増幅器とともにトンネル接合50を使用するクリッピング回路を示す回路図である。トランジスタ増幅器84は反転入力を有していないが、しかし、トンネル接合50及び抵抗器56を含むフィードバック回路は、出力ライン68を入力ライン70に接続するためにまだ使用されることができる。図11において示されたトランジスタ増幅器は、ソース86、ドレイン88、及びゲート90を有する電界効果トランジスタ84であり、ソース86は、抵抗器66を通してグラウンド64に接続され、ゲート90は、増幅器の入力として接続され、そしてドレイン88は、増幅器の出力として接続される。この構成は、“共通ソース”増幅器として知られている。トンネル接合を用いてクリップされ得る電界効果トランジスタ増幅器の他の可能な構成は、ゲートがグランドに接続され、ソースが入力として接続され、そしてドレインが出力として接続される“共通ゲート”増幅器、及びドレインがグランドに接続され、ゲートが入力として接続され、そしてソースが出力として接続される“共通ドレイン”増幅器を含む。図示された回路は、トランジスタ動作のための正しいバイアス電圧を前提とする。例えば、異なるバイアス電圧が必要とされる場合には、グランドに対する接続は、電源レールに対する接続と交換され得る。
【0025】
従来技術において、ソフトクリッピングは、概して、増幅器の出力を入力へ接続するフィードバック回路の一部としての並列ダイオードを用いて行われ、ハードクリッピングは、概して、増幅器の出力をグランドに接続する並列ダイオードを用いて行われる。図12は、演算増幅器歪み回路とともにトンネル接合102を使用するハードクリッピングを示す回路図である。出力ライン98は、演算増幅器100の出力につながり、そして出力ライン98は、トンネル接合102を通してグランドに接続される。図示された実施例において、入力ライン104は、演算増幅器100の反転入力につながり、フィードバックライン106は、フィードバックライン上の抵抗器108によって出力ライン98を入力ライン104に接続する。図示された実施例において、演算増幅器100の非反転入力は、抵抗器110を通してグランドに接続される。図示された実施例において、入力ライン104は、抵抗器112を有している。従来技術の一例は、MXR Distortion Plus(商標)及びProCo Rat(商標) Distortionを含む。
【0026】
図13は、バイポーラ接合トランジスタ歪み回路とともにトンネル接合102を使用するハードクリッピングを示す回路図である。出力ライン98は、トランジスタ増幅器114の出力につながり、そして出力ライン98は、トンネル接合102を通してグランドに接続される。入力ライン104は、トランジスタ増幅器114の入力につながる。図示された実施例において、入力ライン104は、抵抗器118を通して電源レール116に接続されるとともに、出力ライン98は、抵抗器120を通して電源レール116に接続される。図示された実施例において、入力ライン104は、抵抗器122を通してグランドに接続される。図9に関して示されたように、図示された実施例において、トランジスタ増幅器は、共通エミッタ配置において接続される。図示された回路図は、トランジスタ動作のための正しいバイアス電圧を前提とする。バイアス電圧は、例えば、電源レールに対する接続をグランドに対する接続に変更することにより調整されることができ、そして逆もまた同じである。
【0027】
図14は、電界効果トランジスタ歪み回路とともにトンネル接合102を使用するハードクリッピングを示す回路図である。図11に関して説明されたように、図示された実施例において、電界効果トランジスタ124は、共通ソース配置において接続される。出力ライン98は、トランジスタ増幅器124の出力につながり、そして出力ライン98は、トンネル接合102を通してグランドに接続される。入力ライン104は、トランジスタ増幅器124の入力につながる。図示された実施例において、出力ライン98は、抵抗器126を通して入力ライン104に接続される。図示された回路図は、トランジスタ動作のための正しいバイアス電圧を前提とする。バイアス電圧は、例えば、電源レールに対する接続をグランドに対する接続に変更することにより調整されることができ、そして逆もまた同じである。
【0028】
上記の開示において、入力抵抗器及びフィードバック抵抗器は、オーディオ信号を処理する際に使用されるトンネル接合の非線形性の量を修正することにより、クリッピングのレベルを制御するために使用され得る。トンネル接合の電子特性と入力抵抗器のサイズとの間の関係は、出力サウンドを“調整する”ために使用され得る。
【0029】
オーディオクリッピング回路に加えて、非線形性を利用する様々な他の実施例が可能である。分子接合の周波数応答は、分子層を横断する電子の移動時間によっておそらく制限され、それは、10nmの分子層の厚み、及び1Vの印加電圧に対して、“<0.1ピコ秒”であると計算される。これは、“>1000GHz”の周波数の上限に対応し、分子接合の非線形の特性は、テラヘルツ範囲の極超短波まで持続するはずであることを示唆する。そのような周波数は、通信、画像処理、及び関連する困難なアプリケーションにおいて重要であり、又は、従来のトランジスタ及び半導体コンポーネントで扱うことが不可能であるかもしれない。
【0030】
原則としては、動作周波数は材料の特定の選択と素子の構造に依存するだけであるが、ここで開示されたトンネル接合の周波数の代表的な範囲は、10Hzから50kHz、50kHzから1GHz、及び1GHzから10THzを含む。
【0031】
重要でない修正が、請求項によってカバーされる範囲からはずれずに、ここで説明された実施例に対して行われるかもしれない。請求項において、単語“含む(comprising)”は、その包括的な意味で使用されるとともに、存在する他の要素を除外しない。請求項の特徴の前の不定冠詞“a”及び“an”は、存在する特徴の1つより多くを除外しない。ここで説明された個々の特徴の各々は、1つ又は複数の実施例において使用され得るとともに、ここで説明されるだけの理由で請求項によって定義された全ての実施例に不可欠であると解釈されるべきではない。
図1
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図10
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図14