特許第6562918号(P6562918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562918
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】種々のピッチを有する熱交換プレート
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/04 20060101AFI20190808BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F28F3/04 A
   F28D9/02
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-534662(P2016-534662)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公表番号】特表2016-539305(P2016-539305A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014075957
(87)【国際公開番号】WO2015082348
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月16日
(31)【優先権主張番号】1351451-8
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502298310
【氏名又は名称】スウェップ インターナショナル アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】アンデション スヴェン
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−089482(JP,A)
【文献】 特開2000−337789(JP,A)
【文献】 特開2010−78286(JP,A)
【文献】 特開平4−227480(JP,A)
【文献】 特開昭46−3389(JP,A)
【文献】 国際公開第99/49271(WO,A2)
【文献】 欧州特許出願公開第0014066(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0125584(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00−3/14
F28D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体間の熱交換のためのプレート式熱交換器(100)であって、
スタートプレート、エンドプレート、及び多数の熱交換プレート(110)を含み、
前記熱交換プレートは、隆起部(120)と溝部(130)のプレスパターンが設けられ、
前記熱交換プレートは、前記プレートが互いに重ねられたときに、接点における隣接するプレート(110)の隆起部(120)と溝部(130)の間の接触によって、互いにある距離を置いて維持され、
前記熱交換プレート(110)のプレート長に沿って形成される前記接点を結ぶライン(CP)が曲線状となるように、前記隆起部(120)と前記溝部(130)のピッチを変化させたプレスパターンを有し、
前記プレスパターンは、前記熱交換プレート(110)の、前記プレート長における一方のポート開口部(140)付近から他方のポート開口部(140)付近まで、前記一方のポート開口部付近を最小のピッチとして前記他方のポート開口部付近に向かって前記プレート長にわたって増加させたピッチを有することを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記プレスパターンのピッチは、等差級数に従って増加する、請求項に記載の熱交換器。
【請求項3】
流体間の熱交換のためのプレート式熱交換器(100)であって、
スタートプレート、エンドプレート、及び多数の熱交換プレート(110)を含み、
前記熱交換プレートは、隆起部(120)と溝部(130)のプレスパターンが設けられ、
前記熱交換プレートは、前記プレートが互いに重ねられたときに、接点における隣接するプレート(110)の隆起部(120)と溝部(130)の間の接触によって、互いにある距離を置いて維持され、
前記熱交換プレート(110)のプレート長に沿って形成される前記接点を結ぶライン(CP)が曲線状となるように、前記隆起部(120)と前記溝部(130)のピッチを変化させたプレスパターンを有し、
前記プレスパターンは、前記熱交換プレート(110)の、前記プレート長における一方のポート開口部(140)付近から他方のポート開口部(140)付近まで、前記一方のポート開口部付近を最小のピッチとして前記他方のポート開口部付近に向かって増加させたピッチを有する第1部分と、所定の一定のピッチを有する第2の部分とを含むことを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記隆起部(120)と溝部(130)は、より大きいピッチの部分で分離される、より小さいピッチを有する前記第1部分および前記第2部分によって定義されるグループで分配される、請求項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記隆起部(120)と溝部(130)は、ヘリンボーンパターンに配置される、請求項1〜いずれかに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記隆起部(120)と溝部(130)は、曲線パターンに配置される、請求項1〜いずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
前記隆起部(120)と溝部(130)は、傾斜した直線のパターンに配置される、請求項1〜いずれかに記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体間で熱交換するためのプレート式熱交換器に関し、スタートプレート、エンドプレート、及び多数の熱交換プレート(伝熱プレート)を含み、それら熱交換プレートは、隆起部と溝部のプレスパターンが設けられ、プレートが互いに重ねられたときに、隣接するプレートの隆起部と溝部の間の接点によって、互いにある距離を置いて維持されるものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、液状媒体間の熱交換に利用される。一般に、プレート式熱交換器は、スタートプレート、エンドプレート、及びプレート間に流路を形成するかたちで互いに重ねられる複数の熱交換プレート(伝熱プレート)を含む。一般的に、ポート開口部は、当業者に周知の方式で流路から入出する流体の流れが選択できるように設けられている。
【0003】
プレート式熱交換器の共通の製造方法は、熱交換プレートを組み合わせてロウ付けすることでプレート式熱交換器を形成する。熱交換器をロウ付けすることは、多数の熱交換プレートにロウ付け材料が提供され、その後、熱交換プレートが互いに重ねられ、ロウ付け材料が溶融する十分な温度を有する炉内に入れられることを意味する。ロウ付け材料の溶融とは、熱交換プレートの隆起部と溝部の間の接点といったような熱交換プレートが互いに接近した領域に、ロウ付け材料が(部分的に毛細管力によって)集中するものであり、その後、炉の温度が低くなり、ロウ付け材料が固まると、熱交換プレートは互いに接合されコンパクトで強固な熱交換器を形成する。
【0004】
プレート式熱交換器の熱交換プレート間の流路は、隆起部と溝部のプレスパターンを有する熱交換プレートの提供によって作り出される。このことは当業者によく知られている。上記隆起部と溝部の間の距離は一般にピッチと称される。多数の同一の熱交換プレートは、典型的に、一つおきの熱交換プレートが、隣接する熱交換プレートに対し180度回転して互いに重ねられている。重ねられる際、熱交換プレートの第1の隆起部が隣接する熱交換プレートの溝部と接し、これにより、互いにある距離を保つ。それゆえ、流路が形成される。これらの流路において、液状媒体、例えば第1、第2の液状媒体の間で伝熱が起こり得るように導かれる。
【0005】
典型的な従来技術の熱交換器を図1に示す。従来技術における2つの隣接する熱交換プレートの隆起部Rと溝部Gの間の接点は、熱交換プレートのプレート長に沿って直線上に位置する(点線矢印参照)。これは液状媒体の流路に効率的な伝熱が与えられない線形要素を与える。
【0006】
スウェーデン特許SE523581号には従来技術による熱交換器が示されている。この熱交換器は、ポート開口部に近いプレスパターンのピッチが、結果的に接点がポート開口部に近い、より小さい相互距離で与えられる主伝熱面積のピッチよりも小さいプレートを含む。上記主伝熱面積の接点とポート開口部付近はまた一方、接点が熱交換器の軸に平行に走る直線に沿って分配されるように提供される。
【0007】
イギリス特許GB1339542号ではガスケットが備わる熱交換器が開示されている。その熱交換プレートは波形で乱流誘導形成を備えている。この文献では隣り合うプレートの波形が実際に相互に接触していることが書かれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】スウェーデン特許SE523581号
【特許文献2】イギリス特許GB1339542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、液状媒体間の効率的な伝熱を有するプレート式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、流体間の熱交換のために、隣り合う熱交換プレートの隆起部と溝部の間の接点が、熱交換プレートのプレート長に沿った直線に形成されないように位置される、プレート式熱交換器を提供することによって上記あるいは他の問題を解決する。
【0011】
本発明の第1の実施態様では、熱交換プレートのプレート長(全長)にわたって、プレスパターンのピッチを変化させる(例えば上記プレート長の間で、プレスパターンのピッチが増加する)ことによって達成される。
【0012】
本発明の第1の実施態様において、プレスパターンのピッチはバーニヤスケールに従って増えている。
【0013】
本発明の実施態様におけるプレスパターンのピッチは、熱交換プレートのプレート長の一部にわたって変化している。
【0014】
本発明の実施態様における隆起部と溝部は、より大きいピッチを有する部分で分離される、より小さいピッチを有する隆起部と溝部の部分によって定義されるグループで分配される。
【0015】
本発明の実施態様におけるプレスパターンのピッチは、熱交換プレートのプレート長の様々な部分で異なっている。
【0016】
実施態様における隆起部と溝部は、へリンボーンパターンに配置される。他の実施態様における隆起部と溝部は、曲線パターンに配置される。他の実施態様において、隆起部と溝部は、傾斜した直線パターンに配置される。
【0017】
本発明の実施態様において、隣り合う熱交換プレートは、異なるデザインのものである。
【0018】
実施態様において、上記熱交換プレートは、一緒にロウ付けされる。このような構成の利点は、熱交換プレートのより良い安定性にある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、以下の図面を参照して記述される。
【0020】
図1図1は、従来の2つの熱交換プレートの概略上面図である。
図2a図2aは、隆起部と溝部のプレスパターンのピッチが変化している2つの熱交換プレートの概略上面図である。
図2b図2bは、本発明に含まれる2つの熱交換プレート間の接点を示す概略上面図である。
図3a図3aは、ピッチの変化した2つの熱交換プレートの概略上面図である。
図3b図3bは、熱交換プレートのプレート長にわたって等差級数的にピッチが増加する2つの熱交換プレートの概略上面図である。
図4a図4aは、本発明による熱交換プレートの概略上面図である。
図4b図4bは、図4aのA−A線に沿う断面図である。
図4c図4cは、図4aのA−A線に沿う断面図である。
図5a図5aは、部分的にピッチが変化し、かつ隆起部と溝部のヘリンボーンパターンを有する熱交換プレートの概略上面図である。
図5b図5bは、部分的にピッチが変化し、かつ傾斜した直線パターンの隆起部と溝部を有する熱交換プレートの概略上面図である。
図6a図6aは、部分的にグループ化したヘリンボーンパターンの隆起部と溝部を有する熱交換プレートの概略上面図である。
図6b図6bは部分的にグループ化したヘリンボーンパターンの隆起部と溝部を有する熱交換プレートの概略上面図である。
図7a図7aは、熱交換プレートのプレート長の様々な部分においてヘリンボーン形状の異なるピッチを有する隆起部と溝部を有する熱交換プレートの概略上面図である。
図7b図7bは、熱交換プレートのプレート長の様々な部分において傾斜した直線の異なるピッチを有する隆起部と溝部を有する熱交換プレートの概略上面図である。
図8a図8aは、曲線パターンの隆起部と溝部を有する熱交換プレートの概略上面図である。
図8b図8bは、曲線パターンの隆起部と溝部を有する熱交換プレートの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
熱交換器の従来例は図1に見られ、従来技術の章で記述されている。
【0022】
図2a、2bにおいて、本発明の第1実施形態による熱交換器100に含まれる2つの熱交換プレート間の接点パターンを示す2つの上面図が示される。熱交換器100は、多数の熱交換プレート(伝熱プレート)110を含み、隣接するものどうしを比べると平面において180°回転した各プレートが互いに重ね合わされたプレートとして、隣接するプレート間に流路を形成するように構成されたプレスされたヘリンボーンパターンの隆起部120と溝部130をそれぞれ含む。同一のプレートが熱交換器のために用いられる場合、プレスパターンのヘリンボーン形状は重要である。熱交換プレートは、当業者によく知られている形で流路を有する流体連結であるポート開口部140を含む。隣り合う熱交換プレートの隆起部120と溝部130の間の接点は、熱交換プレート110のプレート長に沿って形成される接点が直線で結び付くことなく、図2bの曲線CPで結び付くように位置する。
【0023】
図3a、3bにおいて、一つの熱交換プレート110’及び隣り合う一つの熱交換プレート110’’が示される。熱交換プレート110’は、熱交換プレート110’’の上に置かれる。熱交換プレート110’、110’’は、隆起部120’、120’’と溝部130’、130’’がそれぞれ設けられている。隆起部と溝部のパターンは、隣り合う熱交換プレートが互いに重なり合う際、隆起部120’、120’’と溝部130’、130’’の間に接することで、互いの熱交換プレートの離間距離を保つように構成されている。ポート開口部140’、140’’は、当業者によく知られている方式で異なる高さが与えられる。ポート開口部を様々な高さに置くことで、熱交換プレートの対によって区切られた一つの空間に流量が与えられるポートを提供することが可能であるとともに、別の、多くの場合、熱交換プレート110’、110’’で区切られる隣り合う空間によって区切られた他の空間への流量の閉鎖が可能である。
【0024】
上記により得られた熱交換器100は、隆起部と溝部間の接点によって結合される熱交換流体のための流路を示す。流路を通じては一直線に流れるように位置することは不可能になる。言い換えれば、第1、第2の液状媒体における熱交換経路は、より乱流化して流れる。
【0025】
このような熱交換経路の乱流化は、たいていの場合、大変望ましい。しかしながら、乱流生成の要求度合いは状況によって変化し得る。
【0026】
このような熱交換流体の利点は、より効果的な伝熱をもたらす、より乱流化した流入にある。
【0027】
図4a,4bにおいて、より明確に非線形性を表す実施形態が示される。図4aにおける矢印A−Aは、熱交換プレート110を通しての断面を意味し、その断面は図4bに示される。隆起部120aと溝部130aの間の最小ピッチの距離Xは、隆起部120bと溝部130bの間の次のピッチの距離X+Yよりも小さく、該距離X+Yは、同様にして次の隆起部120cと溝部130cの間のピッチの距離X+Zよりも小さい。互いに関し180°反転した2つの熱交換プレートの組み合わせの場合、隣り合う熱交換プレートの隆起部120と溝部130の間の接点は、熱交換プレート110のプレート長に沿う直線で形成されないように位置される。
【0028】
図5a,5bにおいては、熱交換プレート110のプレート長の第1部分500にわたって、変化する熱交換プレート110のプレスパターンのピッチを表すとともに、熱交換プレート110のプレート長の第2部分510にわたって、プレスパターンのピッチが一定である実施形態が示される。熱交換プレート110のプレート長はまた、変化するピッチと一定のピッチを交互に有する、2つ以上の部分に分けることも可能である。熱交換プレート110のプレート長は、例えば50/50、70/30、30/70、33/33/33、25/25/50等、あらゆる適切な比率に従って変化するピッチと一定のピッチを交互に有する部分に細分され得る。
【0029】
図6a、6bによる実施形態では、隆起部と溝部は、より大きいピッチ610を有する部分で分離される、より小さいピッチ600の隆起部と溝部の部分によって定義されるグループで分配される。幾つもの隆起部と溝部は、個数が例えば3、4、5、6、7、8の隆起部と溝部など、より小さいピッチ600を有する隆起部と溝部の部分によって定義されたグループで使用され得る。
【0030】
図7a、7bにおいて、熱交換プレート110のプレスパターンのピッチについて、熱交換プレート110のプレート長の第1部分700にわたって一定のもの、そして熱交換プレート110のプレート長の第2部分710にわたって異なるもの、を表す実施形態が示される。熱交換プレート110のプレート長はまた、異なる値のピッチで二つ以上の部分に分けることが可能である。熱交換プレート110のプレート長は、図5a,5bに示した実施形態に従って異なる値のピッチで二つ以上の部分に分けることが可能である。
【0031】
隣接する熱交換プレートの隆起部と溝部が接点において相互作用する場合、直線的な流路が形成されないように接点が位置されるよう上記熱交換プレートが互いに重ねられたときに、互いに離間した熱交換プレートを維持するために、隆起部と溝部の異なるパターンが用いられ得る。図5a、図6a、図7aによれば、実施形態は、ヘリンボーンパターンが用いられる。図5b、図6b、図7bによれば、実施形態は、傾斜した直線のパターンが用いられる。図8によれば、さらなる実施形態は、曲線パターンが用いられる。隆起部と溝部との離間距離のあらゆる可能な組み合わせ、あるいは隆起部と溝部のあらゆる可能なグループ化または分布は、熱交換プレートを重ねる際、熱交換プレートを180°回転させて、あるいは180°回転させることなく、一直線の流路が形成されないように位置される接点が得られる限りは、あらゆるパターンと組み合わせて用いられ得る。
【0032】
熱交換プレートどうしは、例えばロウ付け、加圧形成、その他、当業者に知られているあらゆる手段で固定され得る。
【0033】
本発明は、添付の請求項で定義されたように、本発明の要旨を逸脱しない範囲で有意に変更可能である。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b