特許第6562934号(P6562934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562934
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】組成物およびスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20190808BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20190808BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20190808BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20190808BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20190808BHJP
   C12R 1/225 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   C12N1/20 A
   A23L33/135
   A61P1/12
   A61P1/04
   A61P3/06
   A61P9/12
   A61P3/10
   A61K35/74 A
   A61K35/747
   A61P9/00
   A61P3/04
   A61P3/00
   C12R1:225
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-551076(P2016-551076)
(86)(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公表番号】特表2016-537019(P2016-537019A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】GB2014053290
(87)【国際公開番号】WO2015067938
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年8月28日
(31)【優先権主張番号】1319531.8
(32)【優先日】2013年11月5日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516128485
【氏名又は名称】オプティバイオティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】オー’ハラ,ステファン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ラスタル,ロバート
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/074496(WO,A1)
【文献】 特表2007−527199(JP,A)
【文献】 特表2006−522766(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0263696(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0214594(US,A1)
【文献】 特表2016−537410(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0274955(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0165670(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/067949(WO,A1)
【文献】 Biotechnology Letters,2013年 9月28日,Vol. 36,p. 153-157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
A23L 5/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆酵素反応によって同じ増殖培地を生成することができる乳酸桿菌プロバイオティクス細菌株、およびそのプロバイオティクス株の増殖によって生成され、かつそれに対して特異的なプレバイオティクス増殖培地を含む、シンバイオティクス組成物であって、前記増殖培地が、前記株の逆β−ガラクトシダーゼ酵素反応によって生成される20%以上のガラクトオリゴ糖(GOS)を含む、シンバイオティクス組成物
【請求項2】
前記プロバイオティクス株によって、前記プレバイオティクス増殖培地の濃度が決定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
記乳酸桿菌細菌株が、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリクス(bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)亜種サリバリウス(salivarius)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)またはラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記株が、105cfu/g〜1012cfu/gの範囲の量で存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記株および/または前記増殖培地が被包されており、前記株を被包するために使用されてもよい、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記株および/または増殖培地が身体の胃腸管環境を通過できるようにするための賦形剤または担体化合物をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
薬品または栄養補助食品として使用するための、請求項1〜のいずれか一項に記載
の組成物。
【請求項8】
飲むことのできる液体の形態であり、かつ/または固体もしくは液体食料品と混合することができる、請求項1からのいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
シンバイオティクス組成物を生成する方法であって、
(a)逆β−ガラクトシダーゼ酵素反応によってガラクトオリゴ糖(GOS)を含むプレバイオティクス増殖培地を生成する乳酸桿菌プロバイオティクス細菌株を選択するステップと、
(b)前記プレバイオティクス増殖培地の濃度を確立して、所望の量の前記プロバイオティクス細菌株の増殖選択性をもたらすステップと、
(c)前記組成物を形成するために、前記細菌株を前記確立された濃度の増殖培地と組み合わせるステップと
含み、
前記組成物または増殖培地が、前記株によって生成される20%以上のGOSを含む、方法。
【請求項10】
シンバイオティクス組成物を識別し、配合する方法であって、
(a)逆β−ガラクトシダーゼ酵素反応によって、ガラクトオリゴ糖(GOS)を含むプレバイオティクス増殖培地を生成する能力についていくつかの乳酸桿菌プロバイオティクス細菌株を最初にスクリーニングし、このような能力を有する株を識別するステップと、
(b)次に、個々のプロバイオティクス細菌株について選択的な増殖培地となる能力について、前記識別された株の前記プレバイオティクス増殖培地をスクリーニングするステップと、
(c)前記個々のプロバイオティクス細菌株、およびその株に選択的な増殖培地を含む、シンバイオティクス組成物を配合するステップと
含み、
前記選択的な増殖培地が前記株によって生成されるものであり、前記選択的な増殖培地が20%以上のGOSを含む、方法。
【請求項11】
請求項1からのいずれか一項に記載の組成物を形成するために使用される、請求項または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆酵素反応によって同じ増殖培地を生成することができるプロバイオティクス細菌株、およびそのプロバイオティクス細菌種または株の増殖に特異的なプレバイオティクス増殖培地を含む、シンバイオティクス組成物、ならびにこのような組成物を識別し、生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、宿主に健康上の利益を付与する細菌である。典型的に、腸内に天然に存在する細菌集団に添加する、またはそれを増加させるために、プロバイオティクス細菌株の培養物が個体によって消費され、または個体に投与される。数例を挙げると、がん、下痢症および過敏性腸症候群の発生の低減を含むいくつかの健康上の利益が、プロバイオティクスに関連するとされている。また予備研究では、プロバイオティクスが、コレステロールの血清レベルおよび血圧の低下に有用であり、糖尿病をモジュレートする一助になり得ることが示されている。
【0003】
プレバイオティクスは、乳酸桿菌またはビフィドバクテリウム属などの有益な常在性腸内微生物叢を選択的に増強することができる食事性成分であり、食品部門への適用がかなり増大することが見出されている。プレバイオティクスは、非消化性食品成分であり、大腸細菌によって選択的に代謝され、それによって健康の改善に寄与する。したがってプレバイオティクスを使用すると、常在性腸微生物の環境内の有益な変化を促進することができ、したがってプロバイオティクスの生存を助けることができる。プレバイオティクスは、腸内で選択的に代謝されないペクチン、セルロース、キシランなどのほとんどの食物繊維とは明確に異なる。プレバイオティクスとしての分類基準は、胃酸性度、哺乳動物の酵素による加水分解および胃腸管による吸収に抵抗しなければならないこと、腸管ミクロフローラによって発酵されること、ならびに健康および良好な状態と関連する腸管細菌の増殖および/または活性を選択的に刺激することである。乳酸桿菌(Lactobacilli)の公知の選択的プレバイオティクスは、存在していない。
【0004】
フラクトオリゴ糖(FOS、イヌリンおよびオリゴフルクトース)およびガラクトオリゴ糖(GOS)は、プレバイオティクス分類基準を満たすことがヒト介入研究で繰り返し実証されている。
【0005】
シンバイオティクスは、胃腸管におけるプロバイオティクスの生存および移植を改善し、健康を促進する1種または限られた数の細菌の増殖を刺激し、かつ/または代謝を活性化し、したがって宿主のウェルフェアを改善することによって宿主に有益な影響を及ぼす、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの混合物である。オリゴフルクトースのプレバイオティクスおよびビフィドバクテリウム属のプロバイオティクスを含有する生成物は、その混合物が宿主に利益をもたらした場合に、シンバイオティクスであるとみなすことができる。シンバイオティクス生成物は、現在わずかしか知られていない。
【0006】
本発明の一目的は、所与のプロバイオティクス細菌種または株の特異的な増殖を可能にするプレバイオティクス構成成分を有するシンバイオティクス組成物を提供することである。また本発明の一目的は、乳酸桿菌構成成分を組み込むシンバイオティクス組成物を提供することであり、そのプレバイオティクス構成成分は、乳酸桿菌種の増殖に利益をもたらす。本発明のまたさらなる一目的は、宿主の利益を高めるシンバイオティクス組成物を形成するために、プロバイオティクス細菌(およびその株)と選択的プレバイオティクス構成成分を識別し、適合させるためにスクリーニングする方法を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本開示は以下の[1]から[22]を含む。
[1]逆酵素反応によって同じ増殖培地を生成することができるプロバイオティクス細菌株、およびそのプロバイオティクス細菌の属、種または株の増殖に特異的なプレバイオティクス増殖培地を含む、シンバイオティクス組成物。
[2]上記酵素が、糖分解酵素を含む、上記[1]に記載の組成物。
[3]上記プレバイオティクス増殖培地がオリゴ糖を含む、上記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]上記酵素が、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−およびβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、またはβ−キシロシダーゼから選択される、上記[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]上記プレバイオティクス増殖培地の濃度が、上記プロバイオティクス細菌の属、種または株を決定する、上記[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]上記細菌株が、乳酸桿菌を含む、上記[1]から[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]上記乳酸桿菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリクス(bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)亜種サリバリウス(salivarius)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)またはラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)から選択される株を含む、上記[6]に記載の組成物。
[8]上記増殖培地が、ガラクトオリゴ糖(GOS)を含む、上記[1]から[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]上記組成物または増殖培地が、20%またはそれ超のGOSを含む、上記[8]に記載の組成物。
[10]上記GOS形態が、上記細菌株の逆β−ガラクトシダーゼ反応によって生成された形態と実質的に同じである、上記[8]または[9]に記載の組成物。
[11]上記株が、105cfu/g〜1012cfu/gの範囲の量で存在する、上記[1]から[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]上記株および/または上記増殖培地が被包されている、上記[1]から[11]のいずれかに記載の組成物。
[13]上記増殖培地が、上記株を被包するために使用される、上記[12]に記載の組成物。
[14]上記株および/または増殖培地が身体の胃腸管環境を通過できるようにするための賦形剤または担体化合物をさらに含む、上記[1]から[13]のいずれかに記載の組成物。
[15]上記株が、濃縮され、かつ/またはフリーズドライされる、上記[1]から[14]のいずれかに記載の組成物。
[16]飲むことのできる液体の形態であり、かつ/または固体もしくは液体食料品と混合することができる、上記[1]から[15]のいずれかに記載の組成物。
[17]薬品として使用するための、上記[1]から[15]のいずれか一項に記載の組成物。
[18]栄養補助食品として使用するための、上記[1]から[16]のいずれか一項に記載の組成物。
[19]シンバイオティクス組成物を生成する方法であって、
(a)逆酵素反応によってプレバイオティクス増殖培地を生成することができるプロバイオティクス細菌株を選択するステップと、
(b)上記プレバイオティクス増殖培地の濃度を確立して、所望の量の上記プロバイオティクス細菌株の増殖選択性をもたらすステップと、
(c)上記組成物を形成するために、上記細菌株を上記確立された濃度の増殖培地と組み合わせるステップと
を含む、方法。
[20]上記[1]から[18]のいずれか一項に記載の組成物の生成に使用するための、上記[19]に記載の方法。
[21]シンバイオティクス組成物を識別し、配合する方法であって、
(a)逆酵素反応によってプレバイオティクス増殖培地を生成する能力についていくつかのプロバイオティクス細菌株を最初にスクリーニングし、このような能力を有する株を識別するステップと、
(b)次に、個々のプロバイオティクス細菌株について選択的な増殖培地となる能力について、上記識別された株のプレバイオティクス増殖培地をスクリーニングするステップと、
(c)上記個々のプロバイオティクス細菌株、およびその株に選択的な増殖培地を含む、シンバイオティクス組成物を配合するステップと
を含む、方法。
[22]上記[1]から[18]のいずれか一項に記載のシンバイオティクス組成物を形成するために使用される、上記[21]に記載の方法。
本発明の第1の態様によれば、逆酵素反応によって同じ増殖培地を生成することができるプロバイオティクス細菌株、およびそのプロバイオティクス細菌の属、種または株の増殖に特異的なプレバイオティクス増殖培地を含むシンバイオティクス組成物が提供される。
【0008】
プロバイオティクスに特異的であり、したがって選択的増殖培地として作用し得るプレバイオティクスを生成するためのプロバイオティクス細菌株の逆酵素反応を、シンバイオティクス組成物において利用することができ、それによって、他の細菌株を消費してプロバイオティクスの増殖を促進する。
【0009】
酵素は、糖分解酵素またはグリコシダーゼ酵素を含むことができる、これらの糖分解酵素またはグリコシダーゼ酵素は、細菌または真菌から導出され得る。プレバイオティクス増殖培地は、オリゴ糖を含むことができ、このオリゴ糖は、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−およびβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、またはβ−キシロシダーゼから選択することができる。
【0010】
好ましくは、プレバイオティクス増殖培地の濃度を利用して、プロバイオティクス細菌の属、種または株を決定する。
【0011】
細菌株は、好ましくは乳酸桿菌を含み、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリクス(bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)亜種サリバリウス(salivarius)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)またはラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)から選択される株を含むことができる。
【0012】
増殖培地は、様々な濃度のガラクトオリゴ糖(oligosacharide)(GOS)、グルコオリゴ糖、またはフルクトオリゴ糖(FOS)などのオリゴ糖を含むことができる。増殖培地は、それが選択的である場合には20%またはそれ超のGOSを含むことが、研究で識別された。好ましくは、組成物または増殖培地は、20%またはそれ超のGOSを含む。しかし、組成物または増殖培地は、所望のプロバイオティクス細菌の属、種または株にとってより特異的となるように、より多量に含むことができる。例えば、組成物または増殖培地は、25%もしくはそれ超のGOS、30%もしくはそれ超のGOS、または40%もしくはそれ超のGOSを含むことができる。組成物または増殖培地は、20%〜40%、20%〜30%または20%〜25%の範囲のGOSを含むことができる。オリゴ糖形態は、細菌株のβ−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−およびβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、ならびにβ−キシロシダーゼ逆反応によって生成された形態と実質的に同じであることが好ましい。
【0013】
プロバイオティクス細菌株は、好ましくは、望ましい常在性腸内微生物叢、特にプロバイオティクス細菌株の割合の変化を誘発するために、組成物中に有効量で存在する。好ましくは、プロバイオティクス細菌株は、10cfu/g〜1012cfu/gの範囲の量で存在する。より好ましくは、プロバイオティクス細菌株は、10cfu/g〜10cfu/gの範囲の量で存在する。「cfu」は、細菌細胞量の標準尺度であるコロニー形成単位を指すことを理解されよう。さらに、微生物叢の変化が急速に必要である場合、または組成物が投与されるヒトもしくは動物の体内に現在存在していない新しい細菌株を腸内に播種するために組成物が使用される場合、より多くの量を利用してもよい。
【0014】
増殖培地は、安全性、耐性、および保存期間に影響を及ぼさずに腸内のプロバイオティクス細菌株の最適な増殖および生存をもたらす量で存在することができる。
【0015】
株および/または増殖培地は、被包されていてもよい。多くの被包技術が、当業者には明らかであり、用いられる被包技術は、プレバイオティクス増殖培地および/または株に必要な安定性、ならびに所望の消化通過時間に合わせて調整される。増殖培地は、それ自体を使用して、形成された増殖培地および別の材料の被包マトリックス全体であろうと、またはその一部であろうと、株を被包することができる。プレバイオティクス増殖培地は、標的部位において放出されるように具体的に配合されているプロバイオティクス細菌株を含有する外側コアとして利用されることが好ましい。
【0016】
組成物は、株および/または増殖培地が、身体の胃腸管環境を通過し、腸の下部に効率的に送達され放出されるようにするための賦形剤または担体化合物をさらに含むことができる。株は、濃縮することができ、かつ/またはフリーズドライもしくはスプレー乾燥させることができる。組成物は、いくつかの型式、例えば飲むことができる液体中に存在することができ、かつ/または固体もしくは液体食料品と混合することができる。
【0017】
本発明のさらなる一態様によれば、逆酵素反応によって同じ増殖培地を生成することができるプロバイオティクス細菌株、およびそのプロバイオティクス細菌の属、種または株の増殖に特異的なプレバイオティクス増殖培地を含む、代謝障害を処置するためのシンバイオティクス組成物が提供される。
【0018】
酵素は、糖分解酵素を含むことができる、糖分解酵素は、細菌または真菌から導出され得る。プレバイオティクス増殖培地は、オリゴ糖を含むことができ、このオリゴ糖は、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−およびβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、またはβ−キシロシダーゼから選択することができる。
【0019】
細菌株は、好ましくは乳酸桿菌を含み、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリクス(bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)亜種サリバリウス(salivarius)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)またはラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)から選択される株を含むことができる。
【0020】
増殖培地は、ガラクトオリゴ糖(GOS)、グルコオリゴ糖、またはフルクトオリゴ糖(FOS)などのオリゴ糖を含むことができる。オリゴ糖形態は、細菌株のβ−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−およびβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、ならびにβ−キシロシダーゼ逆反応によって生成された形態と実質的に同じであることが好ましい。
【0021】
プロバイオティクス細菌株は、好ましくは、望ましい常在性腸内微生物叢、特にプロバイオティクス細菌株の割合の変化を誘発するために、組成物中に有効量で存在する。好ましくは、プロバイオティクス細菌株は、10cfu/g〜1012cfu/gの範囲の量で存在する。より好ましくは、プロバイオティクス細菌株は、10cfu/g〜10cfu/gの範囲の量で存在する。さらに、微生物叢の変化が急速に必要である場合、または組成物が投与されるヒトもしくは動物の体内に現在存在していない新しい細菌株を腸内に播種するために組成物が使用される場合、より多くの量を利用してもよい。
【0022】
増殖培地は、安全性、耐性、および保存期間に影響を及ぼさずに腸内のプロバイオティクス細菌株の最適な増殖および生存をもたらす量で存在することができる。培地中のプレバイオティクスの濃度を変更して、株、種、および属の特異性を最適化することができる。
【0023】
株および/または増殖培地は、被包されていてもよい。多くの被包技術が、当業者には明らかであり、用いられる被包技術は、プレバイオティクス増殖培地および/または株に必要な安定性、ならびに所望の消化通過時間に合わせて調整される。増殖培地は、それ自体を使用して、形成された増殖培地および別の材料の被包マトリックス全体であろうと、またはその一部であろうと、株を被包することができる。プレバイオティクス増殖培地は、標的部位において放出されるように具体的に配合されているプロバイオティクス細菌株を含有する外側コアとして利用されることが好ましい。
【0024】
組成物は、株および/または増殖培地が身体の胃腸管環境を通過し、腸の下部に効率的に送達され放出されるようにするための賦形剤または担体化合物をさらに含むことができる。株は、濃縮され、かつ/またはフリーズドライされ得る。組成物は、いくつかの型式、例えば飲むことのできる液体および/または固体もしくは液体食料品との混合であってもよい。
【0025】
組成物は、心疾患、糖尿病または肥満、および他の代謝状態を処置することができる医薬品または薬品として形成され得る。
【0026】
組成物は、1日最大2回または3回用量で投与することができる。投与レジメンによって、治療有効量のプレバイオティクス増殖培地およびプロバイオティクス細菌株が維持されることが好ましい。投与レジメンは、所定の時点または食事時間において食料品(飲料を含む)と併用することができる。
【0027】
本発明のまたさらなる一態様によれば、逆酵素反応によって同じ増殖培地を生成することができるプロバイオティクス細菌株、ならびにそのプロバイオティクスの属、種、または細菌株の増殖に特異的なプレバイオティクス増殖培地を含む、栄養補助食品、健康補助食品または機能的食品として使用するためのシンバイオティクス組成物が提供される。
【0028】
プロバイオティクスに特異的であり、したがって選択的増殖培地として作用し得るプレバイオティクスを生成するためのプロバイオティクス細菌株の逆酵素反応を、シンバイオティクス組成物において利用することができ、それによって、他の細菌株を消費してプロバイオティクスの増殖を促進する。
【0029】
酵素は、糖分解酵素を含むことができる、糖分解酵素は、細菌または真菌から導出され得る。プレバイオティクス増殖培地は、オリゴ糖を含むことができ、このオリゴ糖は、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−およびβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、またはβ−キシロシダーゼから選択することができる。
【0030】
細菌株は、好ましくは乳酸桿菌を含み、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリクス(bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)亜種サリバリウス(salivarius)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)またはラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)から選択される株を含むことができる。
【0031】
増殖培地は、ガラクトオリゴ糖(GOS)、グルコオリゴ糖、またはフルクトオリゴ糖(FOS)などのオリゴ糖を含むことができる。オリゴ糖形態は、細菌株のβ−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−およびβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、ならびにβ−キシロシダーゼ逆反応によって生成された形態と実質的に同じであることが好ましい。
【0032】
プロバイオティクス細菌株は、好ましくは、望ましい常在性腸内微生物叢、特にプロバイオティクス細菌株の割合の変化を誘発するために、組成物中に有効量で存在する。好ましくは、プロバイオティクス細菌株は、10cfu/g〜1012cfu/gの範囲の量で存在する。より好ましくは、プロバイオティクス細菌株は、10cfu/g〜10cfu/gの範囲の量で存在する。さらに、微生物叢の変化が急速に必要である場合、または組成物が投与されるヒトもしくは動物の体内に現在存在していない新しい細菌株を腸内に播種するために組成物が使用される場合、より多くの量を利用してもよい。
【0033】
増殖培地は、安全性、耐性、および保存期間に影響を及ぼさずに腸内のプロバイオティクス細菌株の最適な増殖および生存をもたらす量で存在することができる。培地中のプレバイオティクスの濃度を変更して、株、種、および属の特異性を最適化することができる。
【0034】
株および/または増殖培地は、被包されていてもよい。多くの被包技術が、当業者には明らかであり、用いられる被包技術は、プレバイオティクス増殖培地および/または株に必要な安定性、ならびに所望の消化通過時間に合わせて調整される。増殖培地は、それ自体を使用して、形成された増殖培地および別の材料の被包マトリックス全体であろうと、またはその一部であろうと、株を被包することができる。プレバイオティクス増殖培地は、標的部位において放出されるように具体的に配合されているプロバイオティクス細菌株を含有する外側コアとして利用されることが好ましい。
【0035】
組成物は、株および/または増殖培地が、身体の胃腸管環境を通過し、腸の下部に効率的に送達され放出されるようにするための賦形剤または担体化合物をさらに含むことができる。株は、濃縮され、かつ/またはフリーズドライされ得る。組成物は、いくつかの型式、例えば飲むことができる液体中に存在することができ、かつ/または固体もしくは液体食料品と混合することができる。
【0036】
さらに組成物は、既存の食料品、例えばヨーグルトに組み込むことができ、または食料品と容易にブレンドすることができ、もしくは液体飲料に作製することができる粉末として組み込むことができる。組成物は、ミネラル、ビタミンおよび抗酸化剤などの他の活性成分と組み合わせることができる。
【0037】
本発明のさらなる一態様によれば、シンバイオティクス組成物を生成する方法であって、
(a)逆酵素反応によってプレバイオティクス増殖培地を生成することができるプロバイオティクス細菌株を選択するステップと、
(b)組成物を形成するために、その細菌株を増殖培地と組み合わせるステップと
を含む、方法が提供される。
【0038】
該方法は、本明細書に先に記載した組成物を生成するために使用されることが好ましい。
【0039】
本発明のまたさらなる一態様によれば、シンバイオティクス組成物を識別し、配合するための方法であって、
(a)逆酵素反応によってプレバイオティクス増殖培地を生成する能力についていくつかのプロバイオティクス細菌株を最初にスクリーニングし、このような能力を有する株を識別するステップと、
(b)次に、個々のプロバイオティクス細菌株について選択的な増殖培地となる能力について、識別された株のプレバイオティクス増殖培地をスクリーニングするステップと、
(c)個々のプロバイオティクス細菌株、およびその株に選択的な増殖培地を含む、シンバイオティクス(symbiotic)組成物を配合するステップと
を含む、方法が提供される。
【0040】
好ましくは、該方法は、本明細書に先に記載したシンバイオティクス組成物を形成するために使用される。
【0041】
本発明の詳細な説明
ここで、本発明の実施形態を、以下の図面の詳細な説明を単なる例として用い、および参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A-B】A MRSブロス、B 1%ラクトース基本培地およびC 5%ラクトース基本培地中、OD420で測定したβ−ガラクトシダーゼ活性についてスクリーニングした、様々な乳酸桿菌種の結果を示すグラフである。
図1C】A MRSブロス、B 1%ラクトース基本培地およびC 5%ラクトース基本培地中、OD420で測定したβ−ガラクトシダーゼ活性についてスクリーニングした、様々な乳酸桿菌種の結果を示すグラフである。
図2A】A MRSブロス、B 1%ラクトース基本培地およびC 5%ラクトース基本培地中、o−NP(uM)で測定したβ−ガラクトシダーゼ活性についてスクリーニングした、様々な乳酸桿菌種の結果を示すグラフである。
図2B-C】A MRSブロス、B 1%ラクトース基本培地およびC 5%ラクトース基本培地中、o−NP(uM)で測定したβ−ガラクトシダーゼ活性についてスクリーニングした、様々な乳酸桿菌種の結果を示すグラフである。
図3】L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976による168時間にわたるGOS、ラクトースおよび単糖の収率を示すグラフである。
図4】L.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226による168時間にわたるGOS、ラクトースおよび単糖の収率を示すグラフである。
図5】L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976に関する継時的な糖(GOS、ラクトースおよび単糖)の量およびGOS%のグラフである。
図6】L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976に関する継時的な糖(GOS、ラクトースおよび単糖)の量およびGOS%のグラフである。
図7】L.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226に関する継時的な糖(GOS、ラクトースおよび単糖)の量およびGOS%のグラフである。
図8】L.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226に関する継時的な糖(GOS、ラクトースおよび単糖)の量およびGOS%のグラフである。
図9】18U.のL.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976に関する継時的な糖(GOS、ラクトースおよび単糖)の量およびGOS%のグラフである。
図10】18U.のL.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226に関する継時的な糖(GOS、ラクトースおよび単糖)の量およびGOS%のグラフである。
図11】30U.のL.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976に関する継時的な糖(GOS、ラクトースおよび単糖)の量およびGOS%のグラフである。
図12】30U.のL.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226に関する継時的な糖(GOS、ラクトースおよび単糖)の量およびGOS%のグラフである。
図13】L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976から生成されたGOS混合物上で増殖した様々な細菌の相対的増殖プロファイルを示すグラフである。
図14】L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976から生成されたGOS混合物上で増殖したより小さい範囲の細菌の相対的増殖プロファイルを示す第2のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
機構的に、グリコシダーゼは、それらの好ましいアクセプター分子として水を使用するすべてのトランスフェラーゼである。しかし、これらの酵素は、高濃度の基質炭水化物などの適切な状況下では、単糖部分を、基質(グリコシルドナーとして作用する)から他の基質または非基質炭水化物(グリコシルアクセプターとして作用する)に転移させる。典型的に、これらの反応の生成物は、すべての可能なグリコシド連結を異なる量で含有する複合体混合物である。反応は動力学的に制御されるので、合成された連結プロファイルは、生成する酵素による連結の加水分解の速度定数に対してマッピングすべきである。結果的にオリゴ糖は、胃腸管の生態系において、生成する生物によって他の生物よりも容易に代謝され得る。この手法は、実験室での試験で見込みがあることが示されている。
【0044】
しかし、多くの酵素合成反応では、ラクトースに加えてアクセプターとして作用する他の炭水化物を含むことが可能である。このように、新規な構造を含有する新規な混合物を構築することができた。
【0045】
乳酸桿菌およびビフィドバクテリウム属などのプロバイオティクス種は、高度に糖分解性であり、しばしば様々なグリコシダーゼ酵素を生成する。これらの酵素は、転移活性を有することができ、オリゴ糖を合成することができる。この活性は、β−ガラクトシダーゼについては広く報告されているが、α−ガラクトシダーゼ、α−およびβ−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、またはβ−キシロシダーゼなどの他の酵素については集中的に研究されていない。スクロース依存性グリコシルトランスフェラーゼを使用して、オリゴ糖を合成することも可能である。これらは、フルクトースまたはグルコース部分のいずれかを、スクロースからスクロースアクセプターに転移し、多糖体の長鎖を構築する。しかしこれらは、適切なアクセプターが存在する状態では、しばしばヘテロ−オリゴ糖を合成する。これは、デキストランスクラーゼおよびアルテルナンスクラーゼ(alternansucrase)と共に生じることが示されており、レバンスクラーゼ(laevansucrase)と共に生じる場合もある。
【0046】
ある合成反応の生成物を、その後の反応においてアクセプターとして使用する戦略を探求するための実験が求められている。プロバイオティクスがβ−ガラクトシダーゼおよびレバンスクラーゼを生成する場合、例えば酵素抽出物は、ガラクトオリゴ糖を合成するために使用することができた。次に、この生成物混合物を、同じ抽出物およびグリコシルドナーとしてのスクロースと併用すると、フルクタンを合成することができた。これらのフルクタンの多くは、アクセプターとして作用し得るガラクトオリゴ糖上に構築され得る。このようにして、生成する生物によって発酵が高度に調整されるはずである、新規な複合体混合物を生成することができた。
【0047】
微生物においてβ−ガラクトシダーゼを可逆的に使用するために、ある特定の実験を実施した。普通は、β−ガラクトシダーゼは、ラクトースを消化するはずである。しかし、基質および温度に関して反応条件を変化させることによって、酵素は可逆的に作用し、ラクトース(GOS)のオリゴ糖版を産生する。
【0048】
乳酸桿菌は、ビフィドバクテリウム属であるプロバイオティクスとしてより頻繁に使用されているが、乳酸桿菌に選択的なプレバイオティクスは存在していない。またこれらのプロバイオティクスは、β−ガラクトシダーゼ活性を備えているので、これらのプロバイオティクスに特異的なGOSが生成された。GOSなどのプレバイオティクスの代謝作用は、種に特異的であり(バイ−イムノ(Bi-Immuno)細菌およびビフィド(Bifido)細菌によって証明される通り)、したがって乳酸桿菌のGOSは、乳酸桿菌の増殖、生存性、および健康上の利益を潜在的に増強する。最終的に、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスを組み合わせることによって、有効なシンバイオティクスを産生した(プレバイオティクスの腸内生存を改善するはずである)。
【0049】
実施した実験は、以下の通りであった。
1.様々なプロバイオティクスの乳酸桿菌を集め、GOSを産生するそれらの能力について試験し、β−ガラクトシダーゼ活性を測定すること、
2.逆酵素手順を使用してプレバイオティクスGOSを産生すること、
3.新規な分子をスケールアップして、インビトロ試験を行うこと、
4.プロバイオティクスおよびシンバイオティクスを試験する一連の「腸モデル」実験において、プレバイオティクスが存在しない状態および存在する状態で、乳酸桿菌の生存および増殖を比較すること、
5.乳酸桿菌のための被包材料としてGOSを使用できる可能性を調査すること、ならびに
6.被包材料の送達特性を試験すること。
【0050】
特定の株によって産生されたGOSプレバイオティクスは、GOSを生成するだけでなく代謝する、最適化された代謝作用を有する(逆酵素手順から産生される通り)。したがってGOSは、プロバイオティクスにとって非常に選択的な環境を作り出すことができるシンバイオティクスに、プロバイオティクスと共に組み込むことができる。プロバイオティクスは、健康上の特定の利益を有することができるので、健康上の特定の利益に合わせて調整されるシンバイオティクス配合物を産生することができる。
【0051】
本発明の一態様によるシンバイオティクス組成物を識別し、配合するためのスクリーニング方法は、以下のステップに従う。
(a)健康上の必要性を識別するステップ、
(b)プロバイオティクス作用、例えばBSH活性、コレステロール同化および心疾患にとって非常に重要な交差(interjection)点を識別するステップ、
(c)ハイスループットスクリーニング方法を使用するプロバイオティクスライブラリーをスクリーニングするステップ、
(d)潜在的な活性および健康上の利益を有する株を識別するステップ、
(e)発酵過程を使用して活性の発現を最適化するステップ、
(f)グリコシダーゼ(例えば、ベータガラクトシダーゼ)活性について株をスクリーニングするステップ、
(g)新規なオリゴ糖(例えば、GOS)を産生するステップ、
(h)インビトロ試験を可能にするためにスケールアップするステップ、
(i)プレバイオティクスが存在しない状態および存在する状態で、インビトロプレートアッセイおよび腸モデルを使用して、プロバイオティクスの生存および増殖を比較するステップ(株が特徴付けられたら、集団変化を経時的に研究するための分子方法論を使用する。このことは、数の増大または活性の増大に起因して影響を受ける場合にわかる)、ならびに
(j)プレバイオティクスおよびプロバイオティクスを組み合わせて、組み合わされたプレバイオティクスおよびプロバイオティクスのオプティバイオティック効果を調査するステップ。
【実施例】
【0052】
新規なL.ロイテリ(reuteri)GOSの嫌気的利用の評価
これらの実験では、嫌気性培養物を試験して、蛍光in situハイブリダイゼーションおよび短鎖脂肪酸(SCFA)を使用して24時間目の腸内細菌群の集団をモニタすることによって、新規なラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)のガラクトオリゴ糖のインビトロ利用を評価した。フラクトオリゴ糖(FOS)、メリビオースおよびラフィノースを、参照炭水化物として使用した。以下の表は、これらの実験結果を示している。
【0053】
【表1】
【0054】
結果は、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuterri)のGOSが、ビフィドバクテリウム属および乳酸桿菌の集団数において有意な増大を示し、プレバイオティクス効果を呈することを示している。さらにGOSは、いかなる他の糖よりも乳酸桿菌の増殖速度を108%も増大し、属の特異性を示唆した。ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuterri)の株を添加すると、プレバイオティクス効果が増大し、ビフィドバクテリウム集団が120%増大した。
【0055】
このことは、GOSを生成する生物を、その生物によって生成されたGOSに添加すると、GOS単独よりも腸ミクロフローラ集団に対する効果が大きかったことを示唆している。
【0056】
乳酸桿菌β−ガラクトシダーゼのスクリーニングアッセイ
これらの実験では、10種類の乳酸桿菌種を、β−ガラクトシダーゼ活性について、標準酵素アッセイを使用してo−NPGを基質として用いて三連でスクリーニングした。実験は、MRS、基本培地中1%および5%ラクトースの3種類の異なる培地で実施した。ラクトースは、β−ガラクトシダーゼのための一次基質なので、最高活性を呈すると予測された。活性を0〜24時間の間の時点で測定し、最高活性は、24時間後に示された。図1〜2に示されている通り、一般に、5%ラクトースは、最高酵素活性を呈し、MRSブロス(炭素源としてグルコースだけを含有する)よりも高い傾向がある。高い酵素活性は、GOSを産生するために必須であり、全体的に高い活性を示す3種類の生物は、両方のL.ファーメンタム(fermentum)株およびL.カゼイ(casei)を含む。
【0057】
L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976およびL.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226から長時間かけて生成されたGOS
これらの実験では、L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976およびL.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226を、それらのGOS、ラクトースおよび単糖の生成(および消費)に関して168時間かけて評価した。
【0058】
L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976のGOS、ラクトースおよび単糖の収率を、以下および図3に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
L.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226のGOS、ラクトースおよび単糖の収率を、以下および図4に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
20%ラクトース培地中、L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976から24時間かけて生成されたGOS
この実験では、L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976のβ−ガラクトシダーゼからのGOSの合成を調査した。溶解した後、粗製抽出物を、20%ラクトース中、24時間かけてインキュベートし、試料を0時間目および24時間目に得た。
【0063】
以下の表は、T0において存在している糖を示す。
【0064】
【表4】
【0065】
以下の表は、T24において存在している糖を示す。
【0066】
【表5】
【0067】
L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976およびL.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226から短時間に生成されたGOS
この実験では、GOSを、L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976およびL.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226から生成し、糖の酵素活性対GOS%を、先の実験中にほとんどの活性が生じたとき、そのままの状態で50時間にわたって評価した。
【0068】
プロトコル
GOSを、以下のプロトコルを使用して生成した。
1.L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976およびL.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226のために、2%ラクトースを補充した改変MRSブロス中、終夜の培養物50mlをセットアップする。
2.2%ラクトースを含有するmMRSブロス1Lに、終夜の培養物50mlを懸濁させる。
3.嫌気性キャビネット中で37℃においてインキュベートする。
4.L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976については14時間。
5.L.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226については8時間。
6.OD660を測定する。
7.培養物を10000g×10分で遠心分離処理する。
8.リン酸ナトリウム緩衝液中、40%ラクトースを作製する。400g/L。
9.上清を捨てる。
10.ペレットをリン酸ナトリウム緩衝液に再懸濁させる(50mM、pH6.8)。
11.falcon50mlにペレットをプールする。
12.液体窒素で3回凍結融解させる。
13.フレンチプレスする。30,000PSI、1回通過、5滴/分。
14.溶菌液を遠沈させる−15,000g×45分。
15.上清を新しいfalconに注ぐ。
16.βガル活性アッセイを実施して、酵素濃縮を行う。
17.遊離細胞抽出物を、40%ラクトース/リン酸ナトリウム緩衝液と共にインキュベートする。
18.200μlを50時間にわたって2時間ごとにサンプリングする。
19.試料を凍結させる。
20.0.2μmフィルタを介してすべての試料を滅菌濾過する。
21.HPLCで分析する。
【0069】
結果−GOSの生成
図5〜8に示されている通り、ラクトース変換は30〜45%であり、GOS収率は10%であった。
【0070】
酵素活性
L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976およびL.ファーメンタム(fermentum)NCIMB30226から生成されたGOSの酵素活性(したがって効率)を確認するために、さらなる実験を実施した。
【0071】
培養物を、1L中でFは8時間増殖させ、Fについては14時間増殖させ、12,000g×10分で収集した。細胞を溶解し、細胞抽出物を15,000g×45分で遠心沈殿させた。次にこれを、40%ラクトースリン酸ナトリウム緩衝液+MgCl中、同じUの酵素/反応と共に40℃でインキュベートし、活性を、HPLCにより36時間かけて2時間の時点で分析した。
【0072】
酵素単位の算出は、以下の通りであった。
【0073】
【表6】
【0074】
結果
図9〜12に示されている通り、ラクトース変換は40〜50%であり、GOS収率は15〜20%であった。
【0075】
乳酸桿菌の特異性とGOS純度
この実験では、この種に特異的なGOSが任意の増殖特異性を提供するかどうかを知るために、L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976から生成されたGOSを、様々な細菌の増殖培地の一部として使用した。
【0076】
GOSの合成
L.ファーメンタム(fermentum)ATCC11976を、2%ラクトースを補充した改変MRS中、培養物1Lにおいて14時間増殖させた。培養物を遠心沈殿させ、リン酸ナトリウム緩衝液に再懸濁させた。細胞を、液体窒素およびフレンチプレスを使用して溶解し、溶菌液をスピンして、遊離細胞抽出物を得た。遊離細胞抽出物を、40%ラクトースと共にインキュベートし、試料を50時間にわたって2時間ごとに得た。試料を、分析のためにすべての時点後にHPLCに搭載した。
【0077】
20%GOS混合物の増殖曲線
初期に生成された不純GOSの1%を、mMRS hungate9mlに添加した。この混合物上で、以下の様々な生物の増殖を分析した。クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)ATCC11976、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)およびラクトバチルス・デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueccki)。実験を、列挙したものを用いて、0、3、6、8、16および24時間において3回の反復で三連で実施した。
【0078】
結果
図13および14に示されている通り、C.ディフィシレ(difficile)には増殖はほとんど見出されなかったが、最良の増殖が、L.ラムノサス(rhamnosus)に見出された。20%GOS混合物は、一般に、乳酸桿菌に対してより選択的であった。
【0079】
前述の実施形態は、特許請求の範囲によって与えられる保護範囲を制限するものではなく、本発明を実施することができる方法を例示する。
図1A-B】
図1C
図2A
図2B-C】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14