(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562936
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】医療装置用昇降柱
(51)【国際特許分類】
A61G 13/06 20060101AFI20190808BHJP
A61G 7/012 20060101ALI20190808BHJP
A61G 1/052 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
A61G13/06
A61G7/012
A61G1/052
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-553010(P2016-553010)
(86)(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公表番号】特表2017-506952(P2017-506952A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】EP2015053652
(87)【国際公開番号】WO2015124745
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年2月13日
(31)【優先権主張番号】102014102308.0
(32)【優先日】2014年2月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513242656
【氏名又は名称】マッケ・ゲゼルシャフトミットベシュレンクターハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】リヴィナス,ロルフ
【審査官】
小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−124277(JP,A)
【文献】
特開2010−240337(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0099654(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0234178(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0002591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00 −13/12
A61G 1/052− 1/06
A61G 7/00 − 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの長手方向に相対移動が可能な少なくとも2つの柱要素(12,14)と、
第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)に固定されると共に、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)の方向を向く第二の柱要素(14)の外側面(18aから18d)に対してスライド可能に取り付けられたスライド面(50)を有する少なくとも1つのスライド要素(40)と、
を備え、
シール化合物(52)が、スライド要素(40)のスライド面(50)と、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)との間の隙間において硬化し、
第一の柱要素(12)が、硬化するシール化合物(52)を充填するための少なくとも1つの貫通穴(30a,30b)を有する
ことを特徴とする医療装置用昇降柱(10)。
【請求項2】
互いの長手方向に相対移動が可能な少なくとも2つの柱要素(12,14)と、
第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)に固定されると共に、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)の方向を向く第二の柱要素(14)の外側面(18aから18d)に対してスライド可能に取り付けられたスライド面(50)を有する少なくとも1つのスライド要素(40)と、
を備え、
シール化合物(52)が、スライド要素(40)のスライド面(50)と、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)との間の隙間において硬化し、
硬化したシール化合物(52)により、スライド要素(40)が、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)に固着する
ことを特徴とする医療装置用昇降柱(10)。
【請求項3】
互いの長手方向に相対移動が可能な少なくとも2つの柱要素(12,14)と、
第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)に固定されると共に、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)の方向を向く第二の柱要素(14)の外側面(18aから18d)に対してスライド可能に取り付けられたスライド面(50)を有する少なくとも1つのスライド要素(40)と、
を備え、
シール化合物(52)が、スライド要素(40)のスライド面(50)と、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)との間の隙間において硬化し、
シール化合物(52)を保持する空間を包囲して、スライド要素(40)と第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)との間にシール(44)が設けられた
ことを特徴とする医療装置用昇降柱(10)。
【請求項4】
シール(44)は、第一の柱要素(12)の長軸に直交する方向へ弾性変形可能である
ことを特徴とする請求項3に記載の医療装置用昇降柱(10)。
【請求項5】
スライド要素(40)が、スライド本体(42)と、スライド面(50)を形成する面を備えたスライド層と、を有し、
スライド面(50)を介して、スライド層が第二の柱要素(14)の外側面(18aから18d)に接触し、スライド本体(42)がシール化合物(52)に接触する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の医療装置用昇降柱(10)。
【請求項6】
スライド本体(42)が四角形形状を有すると共に、スライド層が、第二の柱要素(14)の外側面(18aから18d)の方向を向くスライド本体(42)の面の少なくとも一部の上に配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の医療装置用昇降柱(10)。
【請求項7】
スライド要素(40)が、少なくとも1つの固定要素(46,48)を有し、固定要素(46,48)が第一の柱要素(12)の凹部(24a,24b)の内部に保持されると共に、固定要素(46,48)によってスライド要素(40)が第一の柱要素(12)の長手方向に固定される
ことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の医療装置用昇降柱(10)。
【請求項8】
第一の柱要素(12)及び第二の柱要素(14)の両方が、四角形の横断面を有する
ことを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の医療装置用昇降柱(10)。
【請求項9】
少なくとも1つのスライド要素(40)が、4つのスライド要素を備え、
第一の柱要素(12)の4つの内側面(54aから54d)のそれぞれに、4つのスライド要素のうちの1つがそれぞれ取り付けられる
ことを特徴とする請求項8に記載の医療装置用昇降柱(10)。
【請求項10】
第二の柱要素(14)が、少なくとも1つのスライド要素(40)によって、第一の柱要素(12)の長軸と同軸方向へ案内される
ことを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の医療装置用昇降柱(10)。
【請求項11】
少なくとも2つの柱要素(12,14)が、柱要素(16)を包囲し、
スライド面を有する少なくとも1つのスライド要素を更に備え、
柱要素(16)が、第二の柱要素(14)の内部で同軸方向に案内されると共に、第二の柱要素(14)に対して第二の柱要素(14)の長手方向に移動可能であって、
スライド要素のスライド面が、第二の柱要素(14)の内側面の方向を向く第三の柱要素(16)の外側面に、スライド可能に取り付けられ、
更なるシール化合物が、更なるスライド要素のスライド面と第二の柱要素(14)の内側面との間の空間の内部で硬化する
ことを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の医療装置用昇降柱(10)。
【請求項12】
医療装置用昇降柱(10)の組み立て方法であって、
医療装置用昇降柱(10)は、
互いの長軸方向に相対移動可能な少なくとも2つの柱要素(12,14)と、
第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)に固定され、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)の方向を向く第二の柱要素(14)の外側面(18aから18d)にスライド可能に取り付けられるスライド面(50)を有する少なくとも1つのスライド要素(40)と、
を備え、
シール化合物(52)が、スライド要素(40)のスライド面(50)と第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)との間の空間へ充填されてそこで硬化する
ことを特徴とする医療装置用昇降柱(10)の組み立て方法。
【請求項13】
スライド要素(40)を第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)に固定するために、次の工程が連続して行われることを特徴とする請求項12に記載の医療装置用昇降柱(10)の組み立て方法。
外側にばねを介してスライド要素(40)が取り付けられた案内要素(90)を、スライド要素(40)の固定要素(46,48)が、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)に形成された対応する凹部(24a,26a,24b,26b)に係止するまで挿入し、スライド要素(40)を第一の柱要素(12)に対して長手方向に固定する。
第二の柱要素(14)を長手方向に第一の柱要素(12)に挿入する。この長手方向への挿入により、固定されたスライド要素(40)に対して案内要素(90)が僅かに移動して、第一の柱要素(12)から取り出される。スライド要素(40)に結合された弾性変形可能なシール(44)が、スライド要素(40)のスライド面(50)を、第二の柱要素(14)の外側面(18aから18d)に押圧する。
【請求項14】
挿入されるスライド要素(40)のスライド面(50)と、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)との間の空間が、少なくとも第一の柱要素(12)の外側面に形成された第一の貫通穴(30a,30b)を通して、シール化合物(52)で充填され、
挿入されるスライド要素(40)のスライド面(50)と、第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)との間の空間に存在する空気が、少なくとも第一の柱要素(12)の内側面(54aから54d)に形成された第二の貫通穴(28a,28b)を通して排出される
ことを特徴とする請求項12または13に記載の医療装置用昇降柱(10)の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置用昇降柱に関する。この医療装置用昇降柱は、互いの長手方向に向かって相対移動する少なくとも2つの柱要素と、第一の柱要素の内側面に固定される少なくとも1つのスライド要素とを備えている。このスライド要素はスライド面を有し、このスライド面は、第一の柱要素の内側面の側を向く第二の柱要素の外側面にスライド可能に取り付けられる。本発明は、更に、そのような昇降柱の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療装置用昇降柱は、例えば、手術台や、保管領域用の運搬装置や、供給車両に用いられている。このような昇降柱に対する要求について、外科手術台を例にして以下説明する。
【0003】
手術台の患者配置面の上に横たわった患者に対して手術を行う前にまたは手術中に、患者配置面は、患者を手術可能な位置へと移動される。本明細書では、患者配置面を水平軸回りに比較的大きな角度だけ回転させる必要がある。手術台の患者配置面の高さは、可能な範囲で最大限に調整可能とすべきである。手術台は更に、患者配置面が非常に低い高さ位置となるように調整可能であることが理想的であって、それによれば手術台の構造を省スペース化することができる。
【0004】
また手術中には、患者の位置、特には患者の高さ位置を変更する必要があるかもしれない。従って、位置変更に寄与する構成要素は、確実に機能しなければならない。具体的には、構成要素は、それらが傾くことなく高さ調整が可能となるよう、十分に正確な方法で案内されなければならない。更に、手術台の移動可能な部品は摩耗しやすいため、特に安定して且つ耐久性を有するように動作する必要がある。
【0005】
典型的には、高さ調整に寄与する構成要素は昇降柱として実施され、当該構成要素においては複数の柱要素が互いの長手方向に沿ってスライドする。柱要素の内側面は、機械工作が行いにくいので、精度が低い状態で、特に面粗さの精度が低い状態で用いられる。従って、柱要素の内側面は、より簡単に機械工作を行うことが可能な柱要素の外側面と比較して、スライド面としては不向きである。
【0006】
文献DE202007014791 U1によれば、内側側面と外側側面の両方を備えた昇降柱が知られており、それらは互いの長手方向に向かって相対移動が可能である。2つの側面の間には、セパレータとしてのスライド要素が設けられている。スライド要素それぞれは、一方の側面に取り付けられ、他方の側面に沿ってスライドする。2つの部分から構成される各スライド要素は、くさび形とされる。2つのスライド要素は、調整ネジによって相対移動が可能であるため、総厚みを変化させることが可能である。これらスライド要素の不利な点は、組み立て時にそれらを各側面の内側に固定するのが困難な点である。更に、所定期間だけ使用した後に、これらスライド要素を再調整する必要がある。これにより、面倒な作業が追加的に必要となる。
【0007】
本発明の目的は、組み立てが容易で且つスライド要素の再調整が本質的に不要な手術台用昇降柱を提供することにある。
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する昇降柱、及び独立請求項13の特徴を有する方法によって解決される。本発明の更に好適な実施形態は、従属項において示されている。
【0009】
本発明に係る昇降柱は、互いの長手方向に相対移動が可能な少なくとも2つの柱要素と、第一の柱要素の内側面に固定される少なくとも1つのスライド要素と、を有する。スライド要素は、第一の柱要素の内側面の方向を向く第二の柱要素の外側面に対してスライド可能に取り付けられたスライド面を有する。シール化合物が、スライド要素のスライド面と、第一の柱要素の内側面との間の隙間において硬化する。
【0010】
前述の昇降柱によれば、スライド要素が、シール化合物により、第二の柱要素の外側面に均一に押圧される。特に、第一の柱要素の内側面の加工に起因した凹凸は、事前に製造された固体の部品を使用するよりも、より簡単に平滑化することができる。シール化合物は、容易に充填することができ、また固体の部品のように第一の柱要素への取り付けに労力を要しない。
【0011】
第一及び第二の柱要素は、閉じた横断面を有している。特に、第一の柱要素は、細長い中空の部材である。第二の柱要素は、細長い部材であって、部分的に第一の柱要素のように中空である。シール化合物として、耐圧性が高く収縮量が小さい注型用樹脂を用いることができる。これにより、硬化する過程において体積が減少することを、大幅に防止することができる。シール化合物の耐圧性により、第一の柱要素の内側面と第二の柱要素の外側面との間において、良好な力の伝達が許容される。更に、スライド要素に対して高い機械的性能が要求されることもない。
【0012】
本発明の好適な実施形態としては、第一の柱要素が、硬化するシール化合物を充填するための少なくとも1つの貫通穴を有してもよい。これによれば、スライド面と第一の柱要素の内側面との間の隙間に、外部からシール化合物を容易に充填することができる。好適には、貫通穴は、第一の柱要素の壁面を貫通した穴である。
【0013】
好適には、スライド要素は、移動枠体と、スライド面を形成する面を備えたスライド層とを有している。この場合、スライド層は、スライド面を介し、第二の柱要素の外側壁に接触し、その一方で、移動枠体は、シール化合物に接触する。スライド要素が層状の構造を有しているため、最適なスライド特性と必要な安定性との組み合わせが可能である。好適には、スライド層は複合材料により形成され、移動枠体は金属により形成される。
【0014】
更に、もし、移動枠体が四角形形状を有すると共に、スライド層が、第二の柱要素の外側面の方向を向く移動枠体の面の少なくとも一部の上に配置されれば、好適である。その四角形形状により、通常は四角形の横断面形状を有する昇降柱に対し、スライド要素が容易に嵌合する。そして、最適には、2つの柱要素を、互いの長軸に直交する軸の回りに傾斜しないように安定させる。
【0015】
本発明の更に好適な実施形態としては、硬化したシール化合物により、スライド要素が第一の柱要素の内側面に固着する。これにより、第一の柱要素に対して移動フレームを更に機械的に取り付けることは不要となる。スライド要素は、特に第一の柱要素の内側面に固着し、その第一の柱要素の内側面への固着によって並進移動が不可能となっている。
【0016】
更に、スライド要素が少なくとも1つの固定要素を有し、その固定要素が第一の柱要素に形成された凹部によって保持されると共に、その固定要素によってスライド要素が第一の柱要素に対してその長軸方向に固定されることが好適である。これにより、昇降柱の組み立て時に、スライド要素の挿入が容易になる。
【0017】
好適には、シール化合物が充填される空間を包囲して、スライド要素と第一の柱要素の内側面との間にシールが存在する。このシールの存在により、シール化合物の充填時に、スライド面と第一の柱要素の内側面との間の空間からシール化合物が流出することが防止される。更に、このシールの存在により、空間ができるだけ完全にシール化合物によって満たされ、その結果、耐圧性と固着が最大限に高められる。
【0018】
好適な実施形態としては、第一の柱要素の長軸に直交する方向へシールが弾性変形可能である。シールの弾性により、スライド要素が第二の柱要素の外側面に押圧され、これにより最適なスライド能力が確保される。
【0019】
もし、第一及び第二の柱要素がそれぞれ四角形の横断面を有していれば、更に好適な実施形態としては、少なくとも1つのスライド要素が4つのスライド要素を備え、そして4つのスライド要素のうちの1つが、第一の柱要素の4つの内側面それぞれに取り付けられる。この実施形態では、2つの柱要素の互いに隣接する面の間において、単純で均一な相対的位置が許容される。
【0020】
もし、第二の柱要素が、少なくとも1つのスライド要素によって、第一の柱要素の長軸と同軸方向へ案内されれば、更に好適である。これによれば、第二の柱要素が長手方向へ並進移動する場合に、第二の柱要素の長軸を第一の柱要素の長軸と同軸方向へ案内する更なる案内要素を、スライド可能に取り付ける必要がない。これにより、製造が容易になると共に、摩擦が低減される。
【0021】
本発明の好適な実施形態としては、少なくとも2つの柱要素が、付加的な柱要素を包囲し、スライド面を有する少なくとも1つのスライド要素を更に備え、付加的な柱要素が、第二の柱要素の内部で同軸方向に案内されると共に、第二の柱要素に対して第二の柱要素の長手方向に移動可能である。付加的なスライド要素のスライド面が、第二の柱要素の内側面の方向を向く第三の柱要素の外側面に、スライド可能に取り付けられ、更なるシール化合物が、更なるスライド要素のスライド面と第二の柱要素の内側面との間の付加的な空間の内部で硬化する。この実施形態によれば、互いの内部で伸縮自在に移動可能な3つの柱要素を備えた昇降柱について、単純で均一な相対的位置が許容される。互いの内部で伸縮自在に移動可能な4つ以上の柱要素を備えた昇降柱を実施することも、同様に可能である。
【0022】
本発明の更なる態様は、昇降柱の組み立て方法であって、昇降柱は、互いの長軸方向に相対移動可能な少なくとも2つの柱要素と、第一の柱要素の内側面に固定され、第一の柱要素の内側面の方向を向く第二の柱要素の外側面にスライド可能に取り付けられるスライド面を有する少なくとも1つのスライド要素と、を備える。シール化合物が、スライド要素のスライド面と第一の柱要素の内側面との間の空間へ充填されてそこで硬化する。
【0023】
この方法によれば、苦労してスライド要素を第一の柱要素の内側面に取り付けることなく、昇降柱を容易に組み立てることが可能である。更に、適切なシール化合物を選択することにより、スライド要素をその後に調整する必要がなくなる。
【0024】
本発明に係る方法の好適な実施形態によれば、スライド要素を第一の柱要素の内側面に固定するために、次の工程が連続して行われる。
外側にばねを介してスライド要素が取り付けられた案内要素を、スライド要素の固定要素が、第一の柱要素の内側面に形成された対応する凹部に係止するまで挿入し、スライド要素を第一の柱要素に対して長手方向に固定する。
この長手方向への挿入により、固定されたスライド要素に対して案内要素が僅かに移動して、第一の柱要素から取り出される。スライド要素に結合された弾性変形可能なシールが、スライド要素のスライド面を、第二の柱要素の外側面に押圧する。
【0025】
この実施形態によれば、スライド要素の挿入が一層容易になる。案内要素のばねの影響により、スライド要素がその位置に留まる。スライド要素が、第一の柱要素の内側面に押圧され、その結果、同軸方向に挿入されるべき第二の柱要素が、最初は案内要素の挿入方向の端部に接触するだけであって、スライド要素には接触しない。好適には、案内要素は、スライド要素に対し、柱要素の長手方向にスライド可能に取り付けられる。その結果、第二の柱要素の挿入により、案内要素が第一の柱要素の外部へスライドし、スライド要素にばねを取り付けて案内要素へ延ばしたことが役に立つ。案内要素が取り出された後、好適にはスライド要素が、そのシールにより、現在挿入されている第二の柱要素の外側面に押圧される。
【0026】
更に好適には、挿入されるスライド要素のスライド面と、第一の柱要素の内側面との間の空間が、少なくとも第一の柱要素の外側面に形成された第一の貫通穴を通して、シール化合物で充填されると共に、挿入されるスライド要素のスライド面と、第一の柱要素の外側面との間の空間に存在する空気が、少なくとも第一の柱要素の外側面に形成された第二の貫通穴を通して排出される。これにより、特に空間を気密にシールするシールが存在する時に、空間をシール化合物で容易に充填することができる。
【0027】
本発明の更なる特徴や効果については後述する。そこでは、添付の図面に本発明の典型的な実施形態を示すことにより、本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】2つの柱要素を備えた他の昇降柱の組み立て状態を示す概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、不図示の手術台用の昇降柱10の一部を示す斜視図である。昇降柱10は、第一の柱要素12と、第二の柱要素14と、第三の柱要素16とを備えている。第三の柱要素16は、上方に昇降柱10が配置されたベース板22の上に機械的に固定されている。3つの柱要素12,14,16は、共通の縦軸を有し、その縦軸に沿って互いに相対移動が可能である。3つの柱要素12,14,16がそのように動作する結果、これら柱要素12,14,16は、互いの内部へまたは互いの内部から伸縮自在に移動する。
【0030】
3つの柱要素12,14,16それぞれは、四角形の横断面を有し(
図3を参照)、その内部が空洞である。この横断面の側面は、柱要素12の第一の壁面13aと、第二の壁面13bと、第三の壁面13cと、第四の壁面13dとによって形成され、それらの構造は同一である。以下では、壁面13aから壁面13dの代表として、第一の柱要素12の壁面13aについて説明する。
【0031】
壁面13aは、シール化合物を充填するための充填開口30aと、換気開口28aとを有し、シール化合物を充填する結果として置換される空気が、換気開口28aを通して外部へ排出される。壁面13aは、第一の固定開口24aと、第二の固定開口26aとを更に有し、それらの内部に
図2に示されるスライド要素40の固定要素46,48が挿入されることにより、スライド要素40が第一の柱要素12の内側面に結合される。換気開口28aと、充填開口30aと、固定開口24a,26aは、貫通穴として形成されている。壁面13b,13c,及び13dにおける対応する構成要素の参照符号は、b及びcの文字でそれぞれ補完されている。
【0032】
第二の柱要素14は、第一の柱要素12と同様に構成されており、第一の柱要素12にスライド可能に取り付けられている。第二の柱要素14の壁面には、参照符号15a,15b,15c,及び15dが付されている。対応するようにして、充填開口には参照符号36aから36dが付され、第一の固定開口には参照符号32aから32dが付され、第二の固定開口には参照符号34aから34dが付されている。第二の柱要素14が第一の柱要素12にスライド可能に取り付けられるのと同様に、第三の柱要素16は第二の柱要素14にスライド可能に取り付けられる。第三の柱要素16の壁面には、参照符号17a,17b,17c及び17dが付されている。
【0033】
図2は、柱要素12,14,16の発明に従ってスライドする取り付け具として使用されるスライド要素40を示す斜視側面図である。スライド要素40は、四角形のスライド本体42を有し、その縁部はシール44によって包囲されている。スライド要素40は、前述の2つの固定要素46,48を更に有している。固定要素46及び48は、固定開口24a及び26aに嵌合してそれらによって保持されるように設計されている。固定要素46及び48と逆側に面するスライド要素40の側面は、スライド面を特徴としている。
【0034】
図3は、
図1に示す昇降柱10の横断面図である。以下では、参照符号80aが付されたスライド配列を例に説明するが、このスライド配列では、第二の柱要素14の第一の外側面18aが、スライド要素40によって、第一の柱要素12の内側面54aにスライド可能に取り付けられている。スライド要素40は、機械加工が行いにくく加工に起因した凹凸のある内側面54aに取り付けられている。そしてスライド要素40は、そのスライド面50において第二の柱要素14の外側面18aに沿ってスライドする。
【0035】
スライド要素40の第一の固定要素46と第二の固定要素48は、固定開口24a及び26aによってそれぞれ保持される。そして、この第一の固定要素46と第二の固定要素48により、スライド要素40は、内側面54aと平行に作用する並進力に対抗して固定される。スライド要素40のスライド面50は、周囲の弾性変形可能なシール44により、そして特にはスライド本体42と内側面54aとの間に配置されたシール化合物52により、第二の柱要素14の外側面18aに押圧される。
【0036】
組み立て時に、シール化合物52は、充填開口30aを通して流体の状態で充填され、スライド本体42と内側面54aとの間の隙間から流出することがシール44によって阻止される。シール化合物52は、その流動性により、平坦でない内側面54aの全体と接触する。そしてその後、シール化合物52は硬化し、スライド本体42に対して均一な圧力を作用させる。更に、シール化合物52はスライド本体42及び内側面54aに固着し、その結果、スライド要素40が第一の柱要素12に固定される。
【0037】
第一の柱要素12の他の3つの壁面13b,13c及び13dそれぞれには、他のスライド配列が設けられ、そのそれぞれには80a,80b及び80cの参照符号がそれぞれ付されている。そして、そのスライド配列では、第一の柱要素12が、第二の柱要素14に取り付けられてその縦軸に沿ってスライド可能となっている。
【0038】
同様に、第二の柱要素14が、4つのスライド配列82a,82b,82c及び82dを介して第三の柱要素16に取り付けられて、第三の柱要素16の縦軸に沿ってスライド可能となっている。
【0039】
図4を参照しながら、本発明に係る昇降柱の組み立て方法について以下説明する。
【0040】
図4は、昇降柱100の概略縦断面図であって、この例では昇降柱100は2つの柱要素12,14だけを備えている。昇降柱10の場合と同様に、柱要素12及び14は、同一の構成を有すると共に、同一のスライド配列80aから80dによって互いにスライド可能に取り付けられている。第一の柱要素12においては、案内要素90と4つのスライド配列とからなる集合体が(そのうちの第一のスライド要素40aと第三のスライド要素40cだけが
図4に図示されている)、スライド要素40aから40dの固定要素46によって、第一の柱要素12の内側面54aから54dそれぞれに挿入されて係止される。昇降柱100の固定にのみ使用される案内要素90は、それにより第一のスライド要素40aと第三のスライド要素40cを、第一の柱要素12の対向する内側面54aから54cに押圧する。その結果、弾性変形可能なシール44a及び44cが、外側へ(
図4における左方向及び右方向のそれぞれへ)押される。案内要素90の案内本体92は、第一のばね要素94aを介して第一のスライド要素40aに取り付けられると共に、第二のばね要素94bを介して第三のスライド要素40cに取り付けられている。
【0041】
そして、第二の柱要素14が、縦軸Zと同軸上に位置するようにして、第一の柱要素12に挿入される。挿入方向が、矢印によって示されている。これにより、案内要素90が、スライド要素40a,40cを第一の柱要素12の内側面54a,54cそれぞれに押圧する。その結果、第二の柱要素14それぞれの外側面と、第一の柱要素12の対応する内側面54a,54cとの間の距離D1が、スライド要素40a,40cのスライド面50a,50cと、第一の柱要素12の対応する内側面54a,54cとの間の距離D2より大きくなる。
【0042】
前述のような配列の結果、第二の柱要素14が挿入される時、
図4に示す案内本体92だけが第二の柱要素14の下端に接触され、挿入方向へ移動する。その後、ばね要素94a及び94cが案内本体92と共に、スライド要素40a,40cのスライド面50a,50cに対してスライドすることにより移動し、それらがスライド要素40a,40cの下端に達すると、スライド要素40a,40cから離間する。その結果、案内要素90が第一の柱要素12の底から外部へ落下する。そして、スライド要素40a,40cのスライド面50a,50cが、弾性変形可能なシール44a,44cによって、第二の柱要素14の外側面それぞれに押圧される。上述の工程を行った後、第二の柱要素14が、スライド要素40a,40cのスライド面50a,50cを介して、第一の柱要素12にスライド可能に取り付けられる。
【符号の説明】
【0043】
10 昇降柱
12 第一の柱要素
13aから13d 第一の柱要素の第一から第四の壁面
14 第二の柱要素
15aから15d 第二の柱要素の第一から第四の壁面
16 第三の柱要素
17aから17d 第三の柱要素の第一から第四の壁面
18aから18b 第二の柱要素の第一から第四の外側面
22 ベース板
24a,24b 第一の固定開口
26a,26b 第二の固定開口
28a,28b 換気開口
30a,30b 充填開口
32a,32b 第一の固定開口
34a,34b 第二の固定開口
36a,36b 充填開口
40 スライド要素
42 スライド本体
44 シール
46 第一の固定要素
48 第二の固定要素
50 スライド面
52 シール化合物
54aから54d 第一の柱要素の内側面
80aから80d スライド配列
82aから82d スライド配列
90 案内要素
92 案内本体
94a,94c ばね要素
100 他の昇降柱
Z 第一の柱要素の縦軸