特許第6562938号(P6562938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562938
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】炭素繊維を製造するための加熱装置
(51)【国際特許分類】
   D01F 9/32 20060101AFI20190808BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20190808BHJP
   H05B 6/02 20060101ALI20190808BHJP
   D02J 13/00 20060101ALI20190808BHJP
   F27D 11/06 20060101ALI20190808BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20190808BHJP
   F27B 9/06 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   D01F9/32
   H05B6/10 351
   H05B6/02 Z
   D02J13/00 N
   F27D11/06 Z
   F27B9/04
   F27B9/06 E
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-555513(P2016-555513)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公表番号】特表2017-515002(P2017-515002A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】EP2015000457
(87)【国際公開番号】WO2015131990
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2017年11月14日
(31)【優先権主張番号】102014003126.8
(32)【優先日】2014年3月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(73)【特許権者】
【識別番号】516261988
【氏名又は名称】リン・ハイ・サーム・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】デッカー・ダーニエール
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルキ・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァート・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】リン・ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】リン・ルードルフ
(72)【発明者】
【氏名】クンストマン・ユルゲン
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−131879(JP,A)
【文献】 特開平07−118933(JP,A)
【文献】 特開昭63−017381(JP,A)
【文献】 特開昭56−043423(JP,A)
【文献】 米国特許第03883718(US,A)
【文献】 特開平06−129778(JP,A)
【文献】 特開昭48−044306(JP,A)
【文献】 特開平10−272534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 9/08− 9/32
D02J 13/00
F27B 9/04
F27B 9/06
F27D 11/06
H05B 6/02
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状繊維原材料(12)から炭素繊維を製造するための加熱装置(10)であり、その際、該加熱装置(10)は、中央の管形状の誘導加熱素子(14)を有し、該繊維原材料(12)は該素子を通って移動し、該管形状の誘導加熱素子(14)は、断熱材(18)で囲まれ、該断熱材(18)の外側に熱源として誘導コイルが設けられ、そして、該中央の誘導加熱素子(14)には不活性ガスが貫流、熱源が、少なくとも一つの中波〜高周波−誘導コイル(22)から形成され、かつ、前記断熱材(18)の外側には、前記誘導コイル(22)の誘導電磁界に透過性の材料からなる第一及び第二の管型素子(26、28)が環状間隙(30)を介して互いに離間して設けられ、不活性ガスがそこを通って流れる加熱装置であって
前記不活性ガスが、前記第一と第二の管型素子(26、28)との間の前記環状間隙(30)を通って、かつ、前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)中を対向流でガイドされ、
前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)及び前記第一及び第二の管状素子(26、28)の二つの互いに軸的に反対側の縁部(42、44)のそれぞれに、カバー要素(46、48)が設けられており、及び
一方のカバー要素(46)が、前記第一及び第二の管状素子(26、28)の間の環状間隙(30)から前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)に前記不活性ガスの方向を変え、かつ、他方のカバー要素(48)が、該不活性ガスを前記第一及び第二の管状素子(26、28)の間の環状間隙(30)中へガイドし、かつ、該不活性ガスを、前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)から導出させるために設けられている、
前記加熱装置
【請求項2】
前記第一及び第二の管型素子(26、28)の間の前記環状間隙(30)にガスガイド要素(32)設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記不活性ガスが、前記中央の誘導加熱素子(14)を一つの軸方向で通ってガイドされ、かつ、同時に、前記糸状繊維原材料(12)が該軸方向に対向する方向で該誘導加熱素子(14)を通って移動することを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項4】
少なくとも一つの繊維原材料糸(12)が、前記中央の誘導加熱素子(14)を通って移動することを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項5】
複数の繊維原材料糸(12)が、前記中央の誘導加熱素子(14)を通って同時に移動し、その際、該繊維原材料糸(12)が、互いに離間して、一つの平面又は複数の平面に存在することを特徴とする、請求項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記断熱材(18)が、炭素繊維−フェルト(20)から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記断熱材(18)が、炭素繊維−フェルト(20)からなる内側層(90)及びAl−繊維又はAl/SiO−繊維からなる外側層(92)を有することを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記断熱材(18)が、中央の管形状の誘導加熱素子(14)から環状間隙(94)介して離間しており、前記不活性ガスが該間隙を通って流れることを特徴とする、請求項又はに記載の加熱装置。
【請求項9】
二つのカバー要素(46、48)のそれぞれにおいて、それぞれが外側面に糸状繊維原材料(12)のためのロックデバイス(Schleuseneinrichtung)(66、68)が設けられていることを特徴とする、請求項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記カバー要素(46、48)のそれぞれに冷却装置(70)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の加熱装置。
【請求項11】
前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)が、CFC(=炭素繊維強化カーボン)からなり、その際、強化に使用された炭素繊維が連続繊維から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)中に、軸的に互いに反対側の二つの端部のそれぞれにおいて、放射線スクリーン−穿孔ディスク(80)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項13】
前記断熱材(18)の軸的に互いに反対側の二つの前面(82)のそれぞれに対して、少なくとも一つの放射線スクリーン−リングディスク(84)が隣接していることを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項14】
前記断熱材(18)に隣接している少なくとも第一の管状素子(26)の内側及び/又は外側に赤外反射コーティング(86)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状繊維原材料から炭素繊維を製造するための加熱装置であり、その際、該加熱装置は、中央の管形状の誘導加熱素子を有し、該繊維原材料は該素子を介して移動し、該管形状の誘導加熱素子は、断熱材で囲まれ、該断熱材の外側に熱源として誘導コイルが設けられ、そして、該中央の誘導加熱素子には、特に、前記繊維原材料を炭化及び/又は黒鉛化するために不活性ガスが貫流する、該加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4 469 925号明細書(特許文献1)は、炭素粉末からなる第一の断熱層及び炭素とケイ素粉末の混合物からなる第二の断熱層によって、炭素からなるワークピースのための加熱装置を開示している。
【0003】
ドイツ国特許第37 87 582 T2号明細書(特許文献2)からは、炭素繊維フェルト及びセラミック繊維フェルトから構成された断熱材を備えた炭化炉が知られている。該炭素繊維フェルト及びセラミック繊維フェルトは、互いに離間している。
【0004】
ドイツ国特許第30 31 303 C2号明細書(特許文献3)からは、炭素繊維を製造するための加熱装置が知られており、その際、熱源は、高周波の誘導コイルから形成されている。その断熱材は炭素粒子から構成されており、該炭素粒子は、0.5〜1.5mmの平均粒径及び≦35°の安息角を有する。該炭素粒子は、約50〜300μmの平均粒径を有するカーボンブラック粉末をバインダーと共に粒状化し、そして、該バインダーを炭化することによって得られる。この公知の加熱装置の場合、その断熱材は、比較的薄い層からなる炭素繊維−フェルト及びこのフェルト層の周囲に設けられた炭素粒子の層から構成される。該炭素繊維−フェルト層は、その場で、例えば、10〜15mmである。というのも高周波パルスから生じた高周波によって、例えば、第8欄第45〜51行において実施されているように、若干誘導に曝されるからである。この公知の加熱装置の断熱材は、断熱材料からなる管中に、その管に隣接させて設けることができる。断熱材料からなる該管は、互いに軸的に反対側のその二つの端部において、カバー要素により密閉して密にシールされる。これら二つのカバー要素のうちの一方には、不活性ガスのためのガスインレット及びガスアウトレットが設けられる。該不活性ガスは、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4 469 925号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許第37 87 582 T2号明細書
【特許文献3】ドイツ国特許第30 31 303 C2号明細書
【発明の概要】
【0006】
この垂直に配向された加熱装置は、そのエネルギー平衡に関する欠点を有しており、その際、それのエネルギー平衡が、高周波−誘導コイルの代わりに電気抵抗加熱を使用する一般的な加熱装置のエネルギー平衡よりも良好であることは隠すべきではない。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、構造的に本質的に簡単な手段でエネルギー平衡が改善されたこの最初に挙げた種類の加熱装置を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴、すなわち、少なくとも一つの中波〜高周波−誘導コイルから熱源を形成し、そして、断熱材の外側に、該中波〜高周波−誘導コイルを透過する材料からなる第一及び第二の管状要素を設け、それは、環状間隙によって互いに離間しており、そこを通って不活性ガスが流れる、という特徴によって解決される。
【0009】
本発明の加熱装置は、熱源として中波〜高周波−誘導コイルを使用する。該誘導コイルの周波数範囲において、本発明に従い使用される断熱材は透過性である、すなわち、該断熱材における誘導電磁界の望ましくない散逸が無視できるほど低減される。
【0010】
本発明の加熱装置の場合、不活性ガスは、中央の管形状の誘導加熱素子だけでなく、断熱材の外側の、第一と第二の管状要素の間の環状間隙の前の上流も流れることによって、有利な方法で、エネルギーの節約が達成される。というのも、冷たい不活性ガスがその環状間隙において加熱されるため、中央の管形状の誘導加熱素子において、高められた温度で進入し、そして、そこで、望ましく高い温度により、特に、全体として低減されたエネルギー使用量で糸状繊維原材料の炭化及び/又は黒鉛化が達成されるからである。
【0011】
第一と第二の管状要素の間の環状間隙を通して不活性ガスを誘導するために、前述の環状間隙中にガスガイド要素を設けることが有利であることが判明している。そのガスガイド要素は、ガイドリブ、ノブなどであることができる。そのガスガイド要素の助けを借りて、その環状間隙における不活性ガスの滞留時間が規定により増大される。この滞留時間を増大させるために、環状間隙からの出口箇所において不活性ガスを比例的に予熱又は加熱する。
【0012】
ここで、不活性ガスが、第一と第二の管状要素の間の環状間隙を通り、そして中央の管形状の誘導加熱素子を対向流で通る場合、すなわち、不活性ガスが環状間隙を一つの軸方向で通り、そして、中央の管形状の誘導加熱素子をその軸方向に対向する方向で通るようガイドする場合が特に有利である。この不活性ガスの対向流の操作は、構造的に簡単な方法で実現することができる。
【0013】
糸状繊維原材料の最適な炭化及び/又は黒鉛化は、本発明により、不活性ガスを、一つに軸方向で中央の誘導加熱素子に通し、そして同時に、糸状繊維原材料を不活性ガスと対向する方向で該誘導加熱素子に通して移動させることによって達成できる。
【0014】
本発明の加熱装置は、少なくとも一つの繊維原材料(Faden)を中央の管形状の誘導加熱素子に通して移動させる。生産効率の観点から、本発明の加熱装置は、複数の繊維原材料を、同時に、中央の誘導加熱素子を通して移動させ、その際、該繊維原材料が、一つの平面で、又は複数の平面で互いに離間して存在している場合が有利である。最後に挙げた種類のような加熱装置の場合、誘導加熱素子は、円形又は楕円形の環状断面を有することができる。したがって、中央の管形状の誘導加熱素子を取り囲む断熱材は、円形又は楕円形の環状断面に対応した楕円状の外側ジャケット面を有することができる。
【0015】
熱源として、中波から高周波−誘導コイルを使用した本発明の加熱装置が、断熱材が炭素繊維−フェルトから構成される場合に有利であることが実証されている。同様に、該断熱材が、炭素繊維−フェルトからなる内側層及び、例えば、Al−繊維又はAl/SiO−繊維からなる外側層を有することが本発明により可能である。
【0016】
断熱材を、不活性ガスの一部の量が通って流れる環状間隙を介して中央の管形状の誘導加熱素子から離間させる場合に、本発明の加熱装置の効率は、有利な方法でさらに向上する、すなわち、高めることができる。そのために、前述の環状間隙における不活性ガスの流れ、及び中央の管形状の誘導加熱素子における不活性ガスの流れは、合目的的に同じ方向、すなわち、互いに平行方向である。
【0017】
本発明の加熱装置の、中央の管形状の誘導加熱素子の、及び、第一及び第二の管状要素の、互いに軸的に反対側の二つの縁部のそれぞれにはカバー要素が設けられる。これらの二つのカバー要素は、該管状要素の外側を密閉して密にそこに取り付けられる。
【0018】
一方が、第一と第二の管状要素の間の環状間隙から不活性ガスを中央の管形状の誘導加熱素子に偏向させるためのカバー要素であり、そして、他方が、不活性ガスを第一と第二の管状要素の間の該環状間隙中へ不活性ガスを導入させ、そしてその不活性ガスを中央の管形状の誘導加熱素子から導出させるためのカバー要素が設けられる場合に、本発明の加熱装置は有利であることが実証されている。
【0019】
該二つのカバー要素のそれぞれにおいて、好ましくは、それぞれの外側に、炭化すべき及び/又は黒鉛化すべき糸状繊維原材料のためのロックデバイスが設けられる。
【0020】
該カバー要素はそれぞれ、合目的的に、冷却装置を備える。冷媒としては、例えば、水を使用することができる。
【0021】
中央の管形状の誘導加熱素子はCFC(=炭素繊維強化炭素)から構成される場合が有利である。その際、強化するために使用した炭素繊維は連続繊維である場合が特に有利である。
【0022】
中央の管形状の誘導加熱素子において、互いに軸的に反対側のそれら二つの縁部分のそれぞれには、その中央の管形状の誘導加熱素子内の熱損失を可能な限り小さくすることで、加熱装置の効率を最適化するために、合目的的に、放射線スクリーン−穿孔ディスクが設けられる。同じ目的で、断熱材の互いに軸的に反対側のそれら二つの縁部分のそれぞれに、少なくとも一つの放射線スクリーン−リングディスクを隣接させる場合も有用となり得る。
【0023】
本発明の加熱装置のカバー要素は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などから構成することができる。該カバー要素の冷却は、すでに説明したように、例えば水冷である。
【0024】
本発明加熱装置において、少なくとも断熱材に隣接した第一の管状要素の内側及び/又は外側に、赤外線−反射コーティングを設ける場合が有利である。該赤外線−反射コーティングは、全面的な又は部分的なコーティングであることができる。部分的なコーティングである場合、これをストライプ状、ラティス状、点状などに形成することができる。
【0025】
さらなる構成要素、特徴及び利点は、図中に概略的に示した本発明の加熱装置の実施形態に関する以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、加熱装置の実施形態の半分に切断した断面を示しており、その際、互いに軸的に反対側の二つのカバー要素が、該加熱装置の自立型の中央本体から軸的に離間している該装置を、部分的に断面的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、糸状繊維原材料12から炭素繊維を製造するための加熱装置10の構造を概略的に示している。該糸状繊維原材料12は、炭素繊維を製造するのに適した炭素含有の繊維材料であり、好ましくは、PAN(=ポリアクリルニトリル)をベースとする繊維材料である。
【0028】
糸状繊維原材料は、炭素繊維を製造するために、より知られた方法で、第一のプロセス工程において、400℃までの温度で酸化され、引き続いて、400℃〜約1600℃で炭化され、そしてその後、1600℃〜2800℃で黒鉛化される。本発明の加熱装置は、特に、糸状繊維原材料を炭化するのに使用される。しかしながら、本発明の加熱装置は、少なくとも一つの中波〜高周波−誘導コイルを適当に寸法調整することにより、糸状繊維原材料の黒鉛化を達成するのにも使用することができる。場合によっては、本発明の炭化するための加熱装置は、別の本発明による黒鉛化するための加熱装置と組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、別の可能な構成は、本発明の加熱装置に複数のゾーンを設ける、つまり、中波〜高周波−誘導コイルを複数の部分に構成するように構成し、その際、少なくとも一つの中波〜高周波−誘導コイルは糸状繊維原材料を炭化するように、かつ、少なくとも別の一つの中波〜高周波−誘導コイルは糸状繊維原材料を黒鉛化するように設けられる。
【0030】
加熱装置10は、中央の管形状の誘導加熱素子14を有し、これにより、該糸状繊維原材料がそこを通って移動する。その糸状原材料12が移動する方向は、矢印16によって示されている。
【0031】
中央の管形状の誘導加熱素子14は、好ましくは、CFC(=炭素繊維強化炭素)からなる。ここで特に有利なのは、強化するのに使用された炭素繊維が連続繊維であることである。当然のことながら、中波〜高周波−誘導コイルの誘導電磁界に誘導的に連結される、耐熱性の別の材料、例えば、タングステンなども使用することができる。しかしながら、最後に挙げた種類のような材料に比較して、CFCは、購入価格が低いという実質的な利点を有する。
【0032】
中央の管形状の誘導加熱素子14は、断熱材18で周囲が取り囲まれている。断熱材18は、炭素繊維−フェルト20からなる。
【0033】
炭素繊維−フェルト20からなる断熱材18の外側には、熱源として誘導コイルが設けられていて、この場合、中波−高周波−誘導コイル22であり、これは、例えば、約5kHz〜約40kHzの周波数で駆動され、その際、別の周波数でも使用できるよう企図されている。適用された周波数の範囲において、炭素繊維−フェルト20からなる断熱材18は、誘導コイル22から生じる誘導電磁界に対して透過性である、すなわち、該誘導電磁界の断熱材18中への結合は無視できるほど低減される。
【0034】
中央の管形状の誘導加熱素子14は、糸状繊維原材料12を炭化及び/又は黒鉛化するために、不活性ガスを通して流す。これは、矢印24で示されている。
【0035】
図1から明らかなように、不活性ガスは、中央の管形状の誘導加熱素子14を通って矢印24で示されるように軸方向にガイドされる。同時に、炭化及び/又は黒鉛化すべき糸状原材料12は、矢印16で示されている、対向する方向に、中央の管形状の誘導加熱素子14を通って移動する。
【0036】
本発明により、匹敵する高い効率レベルの加熱装置10を達成するために、断熱材18の外側に、第一の管状要素26及びそこから放射状に離間した第二の管状要素28が設けられており、これらは、誘導コイル22の誘導電磁界に透過性の材料から構成されている。この材料は、例えば、石英ガラスである。第一の管状要素26を、例えば、石英ガラスから構成し、かつ、第二の管状要素28をホウケイ酸ガラスから構成することも可能である。
【0037】
二つの管状要素26と28は、環状間隙30によって互いに離間している。該リンクスペーサ30を通って不活性ガスが流れる。不活性ガスの流れがその環状間隙30内に画定されるよう調整するために、かつ、このように画定された環状間隙30内の不活性ガスを長く保持するために、環状間隙30中に多数のガスガイド要素32を設けることが有利であることが判明した。ガスガイド要素32は、それら自体が、合目的的に、第一及び/又は第二の管状要素28のような材料からなる。
【0038】
環状間隙30において、不活性ガスは、中波〜高周波−誘導コイル22の誘導電磁界によって加熱される。加熱された不活性ガスは、その後、管形状の誘導加熱要素14の中央の空間34中へ導入される。これは、図1において、弧状の矢印36で示されている。非常によくわかるように、不活性ガスは、第一と第二の管状要素26と28との間の環状間隙30を通って、矢印38で示されている方向に、そして引き続いて、中央の管形状の誘導加熱素子14を通って、矢印24で示されているように、対向する方向、つまり、対向流でそこを通ってガイドされる。
【0039】
特に、本発明の加熱装置10が、例えば、実験用装置等の加熱装置である場合、該加熱装置10は、繊維原材料12のために設けられる。工業用の使用においては、加熱装置10は、好ましくは、多数の繊維原材料12を、同時に、中央の管形状の誘導加熱素子14を通って移動できるように設計され、その際、該繊維原材料12は、好ましくは、少なくとも一つの一緒の平面か又は互いにわずかに離間した複数の平面に存在させる。この平面又は複数の平面は、図1の平面に対して垂直である。
【0040】
中央の管形状の誘導加熱素子14は、断熱材18、第一及び第二の管状要素26と28、及び中波〜高周波−誘導コイル22と共に、加熱装置10の自立型の中央本体40を形成していて、互いに軸的に反対側のそれの端部42、44のそれぞれにカバー要素46、48が設けられている。該カバー要素46及び48は、図1において、非常に概略的に、かつ、中央本体40から離間して描かれている。組み立てた状態の加熱装置10において、カバー要素46、48は、外側の第二の管状要素28の縁部50、52を密閉してシールする。これは、例えば、シーリングビード54、56で示されており、これらはカバー要素46、48に設けられている。
【0041】
カバー要素46は、第一と第二の管状要素26、28の間の環状間隙30から中央の管形状の誘導加熱素子14に不活性ガスを方向転換させる、すなわち、その中央の空間34において、弧状の矢印36で示すように方向転換させる。この目的のために、カバー要素46には、好ましくは、不活性のための(図示されていない)転換空間が形成されている。同様の他方のカバー要素48は、第一と第二の管状要素26、28の間の環状間隙30中へ不活性ガスを導入し、そして中央の管形状の誘導加熱素子14の中央の空間34からその不活性ガスを導出させるために設けられている。この目的のために、同様に、非常に概略的に示されているカバー要素48には、不活性ガスのためのインレット58及びこれを導出させるためのアウトレット60が設けられており、その際、該カバー要素48には、同様に、インレット58とアウトレット60とを関連づけるための(図示されていない)部分空間が形成されている。
【0042】
不活性ガスのカバー要素48中への導入は矢印62によって、そして、不活性ガスのカバー要素48からの導出は矢印64によって示されている。
【0043】
カバー要素46にはその外側にエアロックデバイス66が、そしてカバー要素48にはその外側にエアロックデバイス68が、炭化すべき及び/又は黒鉛化すべき、又は炭化された及び/又は黒鉛化された糸状繊維原材料12のために設けられている。それぞれのカバー要素46、48には、それぞれに冷却装置70が形成されており、これは、例えば、水冷器である。符号72はそれぞれの冷媒インレットを、そして符号74は、それぞれの冷媒インレット72に対応した冷媒アウトレットを示している。
【0044】
それぞれのカバー要素46、48の内側には、わずかに傾斜した、切りかけ形状の、テーパードのポジショニングタップ及びセンタリングタップ76が設けられており、これらは、カバー要素46、48が中央本体40と組み立てられた状態で、第一と第二の管状要素26、28の間の環状間隙30中へ、ほぼ自由な状態で突出している。カバー要素46、48の内側には、それ以外に、ポジショニングタップ及びセンタリグタップ78が設けられており、これらは、加熱装置10の組み立てられた状態において、中央の管形状の誘導加熱素子と共に、いわば自由に協働する。
【0045】
中央の管形状の誘導加熱素子14において、互いに軸的に反対側の二つの縁部のそれぞれに、誘導加熱素子14から生じた熱を中央空間34に局在化させるために放射線スクリーン−穿孔ディスク80が設けられている。断熱材18の、互いに軸的に反対側の二つの前面82のそれぞれには、少なくとも一つの放射線スクリーン−リングディスク84が隣接している。図1では、二つの放射線スクリーン−リングディスク84が、互いに軸的に若干離間して示されている。
【0046】
少なくとも、断熱材18に隣接している第一の管状要素26の内側、及び/又は外側には、赤外線−反射コーティング86を設けることができる。その赤外線−反射コーティングは、全面的に又は部分的に形成することができる。部分的なコーティングの場合、これは、例えば、ストライプ状、ラティス状、点状に散乱させて、又は格子状に配置して形成することができる。
【0047】
符号88は、軸的に配向させた縁部要素(Leistenelement)88を示しており、これを使って、中波〜高周波−誘導コイル22のコイル(Windungen)を互いに連結し、そして、互いに一定に離間させる。
【0048】
図1では、加熱装置10の構造が概略的に示されており、この場合、断熱材18は−言及したように−炭素繊維−フェルト20からなる。一方、図2は、中央本体40の長手方向に切断した部分的な断面を示しており、その際、断熱材18は、内側層90及び外側層92を有している。その内側層90は、炭素繊維−フェルト20からなり、そして、該外側層92は、例えば、Al−繊維からなる。
【0049】
同じ構成要素は、図2において、図1と同じ符号で示されているため、図2に関して、全ての個々の要素について再度詳細に説明する必要はない。
【0050】
図3は、図2に類似して、本発明の加熱装置の自立型の中央本体40の、長手方向に切断した部分的な断面を示している。この実施形態は、図2において概略的に明示した実施形態とは、断熱材18が、中央の管形状の誘導加熱素子14から、環状間隙94によって離間しているおり、そこを通って不活性ガスが流れる点で異なっている。これは、矢印96で示されている。
【0051】
同じ構成要素は、図3において、図1及び図2と同じ符号で示されているため、図3に関して、全ての個々の要素について再度詳細に説明する必要はない。
【符号の説明】
【0052】
10 加熱装置(12のための)
12 糸状繊維原材料
14 中央の管形状の誘導加熱素子(10のための)
16 矢印/移動方向(12のための)
18 断熱材(14のための10の)
20 炭素繊維フェルト(18の)
22 中波−高周波−誘導コイル(14のための10の)
24 矢印/不活性ガス(12のための)
26 第一の管状素子(10の)
28 第二の管状素子(10の)
30 環状間隙(26と28との間)
32 ガスガイド要素(30中)
34 中央空間(14の)
36 弧状の矢印(30と34との間)
38 矢印(30中)
40 自立型中央本体(10の)
42 縁部(40の)
44 縁部(40の)
46 カバー要素(42における)
48 カバー要素(44における)
50 端部(28の)
52 端部(28の)
54 シーリングビード(50のための46の)
56 シーリングビード(52のための48の)
58 インレット(48における)
60 アウトレット(48における)
62 矢印(52における58と30との間)
64 矢印(34と60との間)
66 ロックデバイス(Schleuseneinrichtung)(46、48における)
68 ロックデバイス(48、48における)
70 冷却装置(46、48のための)
72 冷却媒体−インレット(70のための46における)
74 冷却媒体−アウトレット(70のための46における)
76 ポジショニングタップとセンタリングタップ(32のための46、48における)78 ポジショニングタップとセンタリングタップ(14のための46、48における)80 放射線スクリーン−穿孔ディスク(34中)
82 前面(18の)
84 放射線スクリーン−リングディスク(82における)
86 赤外線反射コーティング(26及び/又は28の)
88 縁部要素(Leistenelement)(22の)
90 内側層(18の)
92 外側層(18の)
94 環状間隙(14と18との間)
96 矢印(94中)

本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
糸状繊維原材料(12)から炭素繊維を製造するための加熱装置(10)であり、その際、該加熱装置(10)は、中央の管形状の誘導加熱素子(14)を有し、該繊維原材料(12)は該素子を通って移動し、該管形状の誘導加熱素子(14)は、断熱材(18)で囲まれ、該断熱材(18)の外側に熱源として誘導コイルが設けられ、そして、該中央の誘導加熱素子(14)には、特に、前記繊維原材料(12)を炭化及び/又は黒鉛化するために不活性ガスが貫流する、該加熱装置であって、熱源が、少なくとも一つの中波〜高周波−誘導コイル(22)から形成され、かつ、前記断熱材(18)の外側には、前記誘導コイル(22)の誘導電磁界に透過性の材料からなる第一及び第二の管型素子(26、28)が環状間隙(30)を介して互いに離間して設けられ、不活性ガスがそこを通って流れることを特徴とする、上記の加熱装置。
2.
前記第一及び第二の管型素子(26、28)の間の前記環状間隙(30)にガスガイド要素(32)が設けられていることを特徴とする上記1に記載の加熱装置。
3.
前記不活性ガスが、前記第一と第二の管型素子(26、28)との間の前記環状間隙(30)を通って、かつ、前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)中を対向流でガイドされることを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
4.
前記不活性ガスが、前記中央の誘導加熱素子(14)を一つの軸方向で通ってガイドされ、かつ、同時に、(特に黒鉛化される)前記糸状繊維原材料(12)が該軸方向に対向する方向で該誘導加熱素子(14)を通って移動することを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
5.
少なくとも一つの繊維原材料糸(12)が、前記中央の誘導加熱素子(14)を通って移動することを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
6.
総数の繊維原材料糸(12)が、前記中央の誘導加熱素子(14)を通って同時に移動し、その際、該繊維原材料糸(12)が、互いに離間して、一つの平面又は複数の平面に存在することを特徴とする、上記5に記載の加熱装置。
7.
前記断熱材(18)が、炭素繊維−フェルト(20)から構成されていることを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
8.
前記断熱材(18)が、炭素繊維−フェルト(20)からなる内側層(90)及びAl−繊維又はAl/SiO−繊維からなる外側層(92)を有することを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
9.
前記断熱材(18)が、中央の管形状の誘導加熱素子(14)から環状間隙(94)を介して離間しており、前記不活性ガスが該間隙を通って流れることを特徴とする、上記7又は8に記載の加熱装置。
10.
前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)及び前記第一及び第二の管状素子(26、28)の二つの互いに軸的に反対側の縁部(42、44)のそれぞれに、カバー要素(46、48)が設けられていることを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
11.
一方のカバー要素(46)が、前記第一及び第二の管状素子(26、28)の間の環状間隙(30)から前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)に前記不活性ガスの方向を変え、かつ、他方のカバー要素(48)が、該不活性ガスを前記第一及び第二の管状素子(26、28)の間の環状間隙(30)中へガイドし、かつ、該不活性ガスを、前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)から導出させるために設けられていることを特徴とする、上記10に記載の加熱装置。
12.
二つのカバー要素(46、48)のそれぞれにおいて、それぞれが外側面に糸状繊維原材料(12)のためのロックデバイス(Schleuseneinrichtung)(66、68)が設けられていることを特徴とする、上記10又は11に記載の加熱装置。
13.
前記カバー要素(46、48)のそれぞれに冷却装置(70)が設けられていることを特徴とする、上記10〜12のいずれか一つに記載の加熱装置。
14.
前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)が、CFC(=炭素繊維強化カーボン)からなり、その際、強化に使用された炭素繊維が連続繊維から形成されていることを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
15.
前記中央の管形状の誘導加熱素子(14)中に、軸的に互いに反対側の二つの端部のそれぞれにおいて、放射線スクリーン−穿孔ディスク(80)が設けられていることを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
16.
前記断熱材(18)の軸的に互いに反対側の二つの前面(82)のそれぞれに対して、少なくとも一つの放射線スクリーン−リングディスク(84)が隣接していることを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
17.
前記断熱材(18)に隣接している少なくとも第一の管状素子(26)の内側及び/又は外側に赤外反射コーティング(86)が設けられていることを特徴とする、上記1に記載の加熱装置。
図1
図2
図3