特許第6562939号(P6562939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562939
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】三環系プロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/93 20060101AFI20190808BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C07D307/93CSP
   A61K31/365
   A61P25/28
   A61P29/00
   A61P31/12
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P37/06
   A61P43/00 111
   A61K45/00
【請求項の数】18
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2016-555723(P2016-555723)
(86)(22)【出願日】2015年3月6日
(65)【公表番号】特表2017-509620(P2017-509620A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】EP2015054754
(87)【国際公開番号】WO2015132396
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2018年2月19日
(31)【優先権主張番号】1450263-7
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】313007002
【氏名又は名称】グラクトーン ファーマ デヴェロップメント アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ステルナー オロフ
【審査官】 薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−531051(JP,A)
【文献】 特表2004−501970(JP,A)
【文献】 Eur. J. Org, Chem.,2004年,p.2783-2790
【文献】 Journal of Biological Chemistry,2014年 6月,p.15969-15978
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基、非荷電プロトン化形態の酸、薬学的に許容可能な付加塩、溶媒和物、その塩の溶媒和物、純粋なジアステレオマー、純粋なエナンチオマー、ジアステレオマー混合物、ラセミ混合物、スカレミック混合物、2つのヘテロ原子間の水素移動から得られる対応する互変異性型および/またはケト−エノール互変異性化から得られる対応する互変異性型としての式(I)の化合物
【化1】
(式中、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)
からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)
からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)
からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択され、
は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、C(O)C1−5アルキル、C2−3アルキレンN(C0−5)アルキル(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C(O)N(0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C(O)アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C(O)ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C(O)C1−C3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびC(O)C1−C3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)からなる群から選択され、
は、H、C1−8アルキル、C1−8フルオロアルキル、C3−C8アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C2−5アルキレンOC0−5アルキル、C2−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C2−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、C3−5アルキレンNHC0−5アルキル、C2−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C2−5アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノ、およびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C2−5アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C1−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C1−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C1−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C1−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C1−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C1−3アルキレンSOC0−5アルキル、C1−5アルキレンSOH、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、ならびに式(II)の部分
【化2】
(式中、波線は式(I)における硫黄原子との結合点を示し、
Aは、C1−5アルキレンであり、
Dは、結合、フェニレン、またはヘテロアリーレン(ここで前記ヘテロアリーレンは5または6員ヘテロアリーレンである)であり、
Eは、結合またはC1−5アルキレンであり、
Xは、NC0−C5アルキルまたは「O」(酸素)であり、
R7は、H(但し、XがNC0−C5アルキルであるという条件であり、もしXが「O」(酸素)である場合、R7はHではない)、C1−C10アルキル、C1−5アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C1−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(これらのアミノ酸残基はアミノ酸残基のN末端において式(II)の部分に結合され、任意にC末端においてC1−5一価アルカノール、およびジペプチド、トリペプチドまたはテトラペプチド残基でエステル化され、前記ペプチド残基におけるアミノ酸残基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から独立して選択され、前記ペプチド残基はペプチドのN末端において式(II)の部分に結合され、任意にC末端においてC1−5一価アルカノールでエステル化される)からなる群から選択され、
R8は、C(O)C1−C6アルキル、C(O)OC1−C6アルキル、C(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C(O)C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(II)の部分に結合され、アミノ酸残基は任意にN−アシル化され、前記アシル基はC(O)C1−C6アルキル、およびC(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびジペプチド、トリペプチドまたはテトラペプチド残基(前記ペプチド残基におけるアミノ酸残基はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から独立して選択され、ペプチド残基はペプチドのC末端において式(II)の部分に結合され、ペプチドのN末端は任意にN−アシル化され、前記アシル基はC(O)C1−C6アルキルおよびC(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から選択される)からなる群から選択される)からなる群から選択される)からなる群から選択される)。
【請求項2】
前記化合物が、式(III)
【化3】
の相対立体化学または絶対立体化学を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’が、H、C1−5アルキル、ハロ、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、およびCHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)からなる群から独立して選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
がメチルであり、R’が水素であり、R、R’、RおよびR’の全てが水素であり、RおよびR’がHおよびフェニルからなる群から独立して選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
がHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がハロであり、R’がメチルであり、R、R’、RおよびR’の全てが水素であり、RおよびR’がHおよびフェニルからなる群から独立して選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
がフッ素である、請求項に記載の化合物。
【請求項8】
がHまたはフェニルであり、R’が水素である、請求項4〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
が、C1−8アルキル、C3−C8アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C2−5アルキレンOC0−5アルキル、C1−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C1−5アルキレンSO3、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、ならびに式(II)の部分
(式中、
Dは結合またはフェニレンであり、
は、H(但し、XがNC0−C5アルキルであるという条件であり、もしXが「O」(酸素)である場合、R7はHではない)、C1−C10アルキル、およびC0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から選択され、
は、C(O)C1−C6アルキル、C(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノ、およびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(II)の部分に結合される)からなる群から選択される)からなる群から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が式(IV)の部分
【化4】
(式中、波線は式(I)における硫黄原子との結合点を示し、
Aは、C1−5アルキレンであり、
は、C(O)C1−C6アルキル、C(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(IV)の部分に結合される)からなる群から選択され、
10は、C1−C10アルキルおよびC0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アリール、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から選択される)
である、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、式(V)の化合物
【化5】
(式中、Rは、C(O)C1−C5アルキル、C(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはフッ素、塩素および臭素からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ならびにアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(IV)の部分に結合される)からなる群から選択され、
10は、C1−C6アルキルおよびC1−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはフッ素、塩素および臭素からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から選択される)
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、
【化6】
(式中、示した立体化学は相対立体化学または絶対立体化学である)からなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が、少なくとも1種のさらなる治療剤をさらに含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
療法に使用するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
STAT3シグナル伝達関連障害の治療に使用するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項17】
固形がん、血液がん、良性腫瘍、過剰増殖性疾患、炎症、自己免疫疾患、移植片拒絶または移植組織拒絶、移植片または移植組織の遅延性生理的機能、神経変性疾患ならびに固形がんおよび血液がん由来などのウイルス感染からなる群から選択される疾患または障害の治療に使用するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項18】
前記疾患または障害が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、肺がん(非小細胞)、腎細胞がん、肝細胞がん、胆管がん、卵巣がん、膵臓腺がん、黒色腫、および頭頸部扁平上皮がんからなる群から選択されるがんである、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオールの残基を含む新規三環系化合物、そのような化合物を含む医薬組成物、およびそのような化合物の使用によって病態、特にがんを治療または緩和する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは異種疾患である。したがって腫瘍の位置および遺伝子構造により決定されるがんの所与の種類に対して任意の治療が採用されるべきである。しかしながら、がんは異種疾患であるが、全ての形態のがんは制御されない成長および自己再生を含むいくつかの基本的類似性を示す。したがって異なる遺伝的背景にもかかわらず、異なるがんは共通の特徴を有し、これはある方法で遺伝子発現のパターンによって駆動される。原因にかかわらず、多くの異なる信号が転写因子に集中し、転写因子の活性化が遺伝子転写についての節点であるので、転写因子はがんを治療するための収束した標的であるはずである。
【0003】
転写因子は、ゲノムにおける転写応答要素と結合し、それにより特定の標的遺伝子の転写を開始することによって、発生および環境を含む異なる細胞外信号を媒介する必須の細胞成分である。異常転写因子機能は、多くの場合、異なる疾患と関連し、増加したまたは過剰な遺伝子転写のいずれかを導く。多くの信号および活性化機構は単一の転写因子に集中しているので、それらは例えばがんの治療のための効果的な薬物標的となることができる。
【0004】
潜在的細胞質性転写因子(LCTF)は、それらが、多くの場合、細胞表面受容体−リガンド相互作用の形態で外部信号を介して活性化するまで、不活性形態で細胞質に存在する転写因子である。それらの転写因子の中にはシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)タンパク質のファミリーがある。STATタンパク質は、それらが細胞質を介する信号のトランスデューサーおよび核における転写因子としての機能の両方として作用できるので二重の役割を有する。
【0005】
STAT3は転写因子のSTATファミリーの6つのメンバーのうちの1つである。それは6つのサブユニットまたはドメイン;N末端、コイルドコイル、DNA結合、リンカー、SH2およびトランス活性化ドメインを有する約770アミノ酸長のタンパク質である。STAT3は、サイトカイン、成長因子および非受容体媒介シグナル伝達によって活性化される。STAT3活性化の標準的な機構はSH2ドメインにおけるチロシン705(Y705)のキナーゼ媒介リン酸化である。これは、STAT3二量体の形成を導くSTAT3モノマーの2つのSH2ドメインの相互認識を誘発する。この二量体は、インポーチンの支援を受けて核に転座し、DNAとの結合を介して標的遺伝子の転写が活性化する。核への途中で、STAT3は、セリンリン酸化、リシンアセチル化または低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)タンパク質付着を介してさらに修飾でき、これらの修飾はSTAT3の転写活性を調節するのに役立つ。
【0006】
リン酸化を介するSTAT3活性化および二量化は少なくとも3つの反応を介して達成できる。STAT3はサイトカイン受容体と構造的に結合するJAKキナーゼによってリン酸化され得る。リガンドが結合すると、受容体は凝集し、JAK2タンパク質はリン酸化を介して相互活性化を受け、次いでそれらはSTAT3を動員でき、SH2ドメインとの結合を介してSTAT3を活性化できる。あるいは、成長因子受容体はSTAT3を直接動員でき、それらの受容体チロシンキナーゼ活性を介してSTAT3活性化を導くSTAT3と会合できる。最後に、非受容体キナーゼ、例えばSrcファミリーキナーゼおよびAblもまた、STAT3を活性化できる。さらに非リン酸化STAT3は核内に輸送され、恐らく他のタンパク質との結合によって転写に関与して、機能的異種転写因子を形成できる。
【0007】
核においてSTAT3は、他の転写因子、例えばNF−κBを含むいくつかの他のタンパク質と相互作用できる。
【0008】
STAT3はまた、種々のキナーゼによるセリン727でのリン酸化によって活性化できる。このリン酸化は向上した転写活性を導く。構造的にリン酸化したセリン727は慢性リンパ球性白血病(CLL)を罹患している患者由来の細胞内に広がる。
【0009】
正常な条件下でのSTAT3活性化は一過性であるので、多数の負のフィードバック系が存在する。STAT3シグナル伝達は厳重に調節され、それは正常組織において構造的に活性化されない。STAT3シグナル伝達についてのいくつかの内因性の負の調節因子が見出されており、それらはサイトカインシグナル伝達抑制因子(SOCS、JAKに結合し、不活性化する)および活性化STATのタンパク質阻害剤(PIAS)を含む。SOCSはまた、これを負のフィードバックループとして実証しているSTAT3転写の遺伝子産物である。PIASもしくはSOCS機能の損失または低下した発現はSTAT3活性化を増加させ、これらの調節因子の変異はSTAT3シグナル伝達の増加に関連した疾患に見出されている。
【0010】
最後にSTAT3は異なるホスファターゼにより核内で脱リン酸化され、脱リン酸化されたSTAT3モノマーは核外へ輸送され、それらは再び核に潜在的に存在する。
【0011】
STAT3転写の標的遺伝子は、細胞成長および細胞周期調節(例えばサイクリンD1、c−Myc、p27)、アポトーシス(例えばMcl−1、サバイビン、Bcl−2、およびBcl−xL)、血管形成(VEGF)および転移(例えばMMP−2、MMP−3)に関与する。
【0012】
STAT3は、IL6、LIF、IL−10、IL−1、IL−12、EGF、TGFアルファ、PDGFおよびG−CSFを含むサイトカインおよび成長因子、JAK、JAK2、JAK3、TYK2、Src、Src、Lck、Hck、Lyn、Fyn、Fgr、EGFR、ErbB−2、Grb2、JNK、P38MAPKおよびERKを含む種々のチロシンおよびセリンキナーゼによって活性化できる。
【0013】
STAT3は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、肺がん(非小細胞)、腎細胞がん、肝細胞がん、胆管がん、卵巣がん、膵臓腺がん、黒色腫、頭頸部扁平上皮がんを含む、いくつかのがん形態において実験的に確認されている標的である(非特許文献1)。STAT3シグナル伝達は、増殖、生存、転移、薬剤耐性およびがん細胞の転移に関与し、それはまた、炎症およびがんと関連する。このことは、初代細胞もしくは不死化細胞株を使用してインビトロで、または異種移植モデル(例えば非特許文献2および非特許文献3)を使用してインビボで多くの研究において実証されており、したがってがん療法についての理想的な標的であると考えられる(非特許文献4)。
【0014】
STAT3阻害に対する多くのがん細胞株の感受性はがん遺伝子シグナル伝達依存性を示す。
【0015】
炎症および免疫もまた、がん病因の重要な部分である。がん細胞は腫瘍内微小環境において炎症を促進し、先天性免疫系を回避できる。STAT3シグナル伝達はこのプロセスにおいて重要な二重の役割を果たす。STAT3は炎症性サイトカインシグナル伝達によって活性化され、STAT3活性化はT−ヘルパー細胞抗腫瘍反応を妨害する。STAT3シグナル伝達のアブレーションにより、有効な免疫学的抗腫瘍反応が導かれる。STAT3は、正常組織においてより、免疫細胞に浸潤する腫瘍において活性化され、STAT3の標的化により、治療的抗腫瘍免疫が引き起こされる。
【0016】
要約すると、異常および調節されていないSTAT3は、乳がん、肺がん、脳腫瘍、結腸がん、前立腺がん、リンパ腫および白血病を含む、固形腫瘍および血液系腫瘍の両方において細胞増殖および細胞生存を促進する。したがってSTAT3の直接阻害剤またはSTAT3シグナル伝達の阻害剤はこれらの病的状態を軽減または治癒できるとみなされる。
【0017】
例えばがんのような疾患の予防、排除または低減のための治療は多くの方法において不十分である。したがって、上記のSTATシグナル伝達を調節または阻害するのに効果的な化合物が望まれる。
【0018】
STAT3の直接阻害は、STAT3二量化(STAT3は2つのタンパク質の二量体である)に関与するタンパク質間相互作用を阻害することによって、または転写開始のためにDNAへのSTAT3結合に必要とされるタンパク質−DNA相互作用を遮断することによって達成できる。あるいはSTAT3の生成(生合成)が遮断され得る。
【0019】
直接的なSTAT3阻害に対する代替はSTAT3活性化に関与するシグナル伝達カスケードにおいて上流の分子(例えばJAKキナーゼ)を阻害することである。このアプローチによる欠点は、STAT3を活性化する複数の手段が存在することである。
【0020】
STAT3 SH2はSTAT3−STAT3二量化を遮断するためにペプチド模倣物および非ペプチド低分子(例えばS3I−M2001)で標的化されており、DNA結合はオリゴデオキシヌクレオチドデコイで遮断されているが、STAT3の生成はアンチセンスによって阻害されている。
【0021】
(−)−ガリエララクトンは、IL−6/STAT3シグナル伝達をマイクロモル以下で阻害する、木に存在する菌類から単離された天然産物である。
【化1】
【0022】
特許文献1において、例えば炎症性プロセスの治療のための薬剤としてのガリエララクトンの使用が開示されている。
【0023】
(−)−ガリエララクトンの生物学的効果は一見すると、それらの調節要素へのSTAT3−二量体の結合の直接阻害に起因している(非特許文献5)。この提案された作用機構に基づいて、ガリエララクトンは抗がん剤として評価されている。非特許文献6において、ガリエララクトンはSTAT3を発現するDU145前立腺がん細胞の増殖を阻害することが報告されている。さらに、非特許文献7は、ガリエララクトンがSTAT3に直接結合し、共有結合するので、転写活性を阻害することを示している。したがってガリエララクトンはがんを治療するための候補薬である。
【0024】
しかしながら、ガリエララクトンは経口投与時に制限された血漿曝露を示すことが見出されているので、経口送達に適した薬物を表さないとみなされている。したがって、ガリエララクトンの経口バイオアベイラビリティおよび/または他の薬物様特性を改善する手段が必要とされている。
【0025】
ガリエララクトンの活性および特性を修飾する試みが当該分野において報告されている。非特許文献8において、(−)−ガリエララクトンの個々の官能基の修飾が報告されている。しかしながら得られた類似体のほとんどは、完全に不活性であるか、または(−)−ガリエララクトンよりほとんど活性がないことがわかった。特に、結合した二重結合の修飾は不活性化合物を生成することが報告された。特許文献2において、ガリエララクトン骨格に基づいて、STAT3およびNF−kBシグナル伝達を阻害する新規三環系化合物の調製および使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第6,512,007号明細書
【特許文献2】国際公開第PCT/EP2011/062243号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Johnston,P.A;Grandis,J.R.Mol Interv.2011 11(1):18−26
【非特許文献2】Sansone,P;Bromberg,J.J Clin Oncol.2012;30(9):1005−14
【非特許文献3】Miklossy,G.;Hilliard,T.S.;Turkson,J.Nat Rev Drug Discov.2013 12(8):611−29
【非特許文献4】Yu,H.;Lee,H.;Herrmann,A.;Buettner,R.;Jove,R.Nat Rev Cancer.2014 14(11):736−46
【非特許文献5】Weidlerら,FEBS Letters 2000,484,1−6
【非特許文献6】Hellstenら,Prostate 68:269−280(2008)
【非特許文献7】Hellstenら(「Targeting STAT3 in prostate cancer:Identification of STAT3 as a direct target of the fungal metabolite galiellalactone」 Nicholas Don−Doncow,Zilma Escobar,Martin Johansson,Eduardo Munoz,Olov Sterner,Anders Bjartell,Rebecka Hellsten.AACR−NCI−EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics,October 19−23,2013,Boston,MA.Abstract nr C229;Don−Doncow,N.;Escobar,Z.;Johansson,M.;Kjellstrom,S.;Garcia,V.;Munoz,E.;Sterner,O.;Bjartell,A.;Hellsten,R.J Biol Chem.2014 289(23):15969−78)
【非特許文献8】Nussbaumら、Eur.J.Org.Chem.2004,2783−2790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、これらの修飾誘導体のどれも、経口投与されたときにガリエララクトンの欠点を克服するとは報告されていない。したがって、当該分野において十分な曝露および投薬レジメンを達成するために改善された薬物様特性を有する阻害剤STAT3についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、一態様によれば、以下の式(I)の化合物を提供することによって、上記欠陥の少なくとも1つ、例えば1つ以上を軽減、緩和、回避または排除することを目的とする。遊離塩基、非荷電プロトン化形態の酸、薬学的に許容可能な付加塩、溶媒和物、その塩の溶媒和物、純粋なジアステレオマー、純粋なエナンチオマー、ジアステレオマー混合物、ラセミ混合物、スカレミック混合物、2つのヘテロ原子間の水素移動から得られる対応する互変異性型および/またはケト−エノール互変異性化から得られる対応する互変異性型としての式(I)の化合物
【化2】
(式中、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキルおよびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択され、
は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、C(O)C1−5アルキル、C2−3アルキレンN(C0−5)アルキル(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C(O)N(0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C(O)アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C(O)ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C(O)C1−C3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびC(O)C1−C3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)からなる群から選択され、
は、H、C1−8アルキル、C1−8フルオロアルキル、C3−C8アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C2−5アルキレンOC0−5アルキル、C2−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C2−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、C3−5アルキレンNHC0−5アルキル、C2−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C2−5アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノ、およびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C2−5アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C1−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C1−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C1−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C1−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C2−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C1−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C1−3アルキレンSOC0−5アルキル、C1−5アルキレンSOH、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、ならびに式(II)の部分
【化3】
(式中、波線は式(I)における硫黄原子との結合点を示し、
Aは、C1−5アルキレンであり、
Dは、結合、フェニレン、またはヘテロアリーレン(ここで前記ヘテロアリーレンは5または6員ヘテロアリーレンである)であり、
Eは、結合またはC1−5アルキレンであり、
Xは、NC0−C5アルキルまたは「O」(酸素)であり、
R7は、H(但し、XがNC0−C5アルキルであるという条件であり、もしXが「O」(酸素)である場合、R7はHではない)、C1−C10アルキル、C1−5アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C1−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(これらのアミノ酸残基はアミノ酸残基のN末端において式(II)の部分に結合され、任意にC末端においてC1−5一価アルカノール、およびジペプチド、トリペプチドまたはテトラペプチド残基でエステル化され、前記ペプチド残基におけるアミノ酸残基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から独立して選択され、前記ペプチド残基はペプチドのN末端において式(II)の部分に結合され、任意にC末端においてC1−5一価アルカノールでエステル化される)からなる群から選択され、
R8は、C(O)C1−C6アルキル、C(O)OC1−C6アルキル、C(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C(O)C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(II)の部分に結合され、アミノ酸残基は任意にN−アシル化され、前記アシル基はC(O)C1−C6アルキル、およびC(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびジペプチド、トリペプチドまたはテトラペプチド残基(前記ペプチド残基におけるアミノ酸残基はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から独立して選択され、ペプチド残基はペプチドのC末端において式(II)の部分に結合され、ペプチドのN末端は任意にN−アシル化され、前記アシル基はC(O)C1−C6アルキルおよびC(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から選択される)からなる群から選択される)からなる群から選択される)からなる群から選択される)。
【0030】
別の態様によれば、式(I)の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。このような化合物および組成物は療法に使用される。
【0031】
別の態様によれば、式(I)の化合物およびこのような化合物を含む組成物は、STAT3シグナル伝達関連障害の治療ならびに固形がん、血液がん、良性腫瘍、過剰増殖性疾患、炎症、自己免疫疾患、移植片拒絶または移植組織拒絶、移植片または移植組織の遅延性生理的機能、神経変性疾患ならびに固形がんおよび血液がん由来などのウイルス感染からなる群から選択される疾患および障害の治療に有用である。
【0032】
さらに、本発明の種々の実施形態の有益な特徴は従属請求項に定義され、以下の詳細な説明の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義:本適用および発明の文脈において以下の定義が適用される:
「付加塩」という用語は、薬学的に許容可能な酸、例えば有機酸もしくは無機酸、または薬学的に許容可能な塩基の付加によって形成される塩を意味することを意図する。有機酸は、限定されないが、酢酸、プロパン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸またはマレイン酸であってもよい。無機酸は、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸であってもよい。塩基は、限定されないが、アンモニアおよびアルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物であってもよい。「付加塩」という用語はまた、水和物および溶媒付加形態、例えば水和物およびアルコラートも含む。
【0034】
本明細書に使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
【0035】
本明細書に使用される場合、単独または接尾語もしくは接頭語として使用される「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を有するか、または特定の数の炭素原子が提供される場合、特定の数が意図される分枝および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図する。例えば、「C1−6アルキル」は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキルを示す。アルキル基を示す特定の数が整数0(ゼロ)である場合、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基は存在せず、代わりに水素原子が置換基に存在する。例えば、「N(C0アルキル)」は「NH」(アミノ)と等しく、C0アルキルはH(水素)と等しく、OC0アルキルはOH(ヒドロキシ)と等しい。アルキルの例としては、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。
【0036】
本明細書に使用される場合、単独または接尾語もしくは接頭語として使用される「アルキレニル」または「アルキレン」は、1〜12個の炭素原子を有するか、または特定の数の炭素原子が提供される場合、特定の数が意図される直鎖飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図する。例えば、「C1−6アルキレニル」または「C1−6アルキレン」は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキレニルまたはアルキレンを示す。アルキレニルまたはアルキレン基を示す特定の数が整数0(ゼロ)である場合、1〜12個の炭素原子を有するアルキレニルまたはアルキレン基は存在せず、代わりに結合がアルキレニルまたはアルキレン基の各端部において特定された基に直接連結する。例えば、「NH(C0アルキレン)NH」は「NHNH」(ヒドラジノ)と等しい。本明細書に使用される場合、アルキレンまたはアルキレニル基により連結される基は、アルキレンまたはアルキレニル基の最初および最後の炭素に結合されることを意図する。直前に説明されているように、アルキレニルまたはアルキレン基がC0アルキレニルまたはC0アルキレンである場合、その基は結合を表し、連結した基はしたがって互いに直接連結する。メチレンの場合、最初および最後の炭素は同じである。例えば、「HN(C2アルキレン)NH」、「HN(C3アルキレン)NH」、「N(C4アルキレン)」、「N(C5アルキレン)」および「N(C2アルキレン)NH」は、それぞれ1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、ピロリジニル、ピペリジニルおよびピペラジニルと等しい。アルキレンまたはアルキレニルの例としては、限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレンおよびブチレンが挙げられる。
【0037】
本明細書に使用される場合、「アルコキシ」または「アルキルオキシ」は、酸素架橋を介して結合した示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル基を意味することを意図する。アルコキシの例としては、限定されないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、イソペントキシ、シクロプロピルメトキシ、アリルオキシおよびプロパルギルオキシが挙げられる。同様に、「アルキルチオ」または「チオアルコキシ」は、硫黄架橋を介して結合した示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル基を表す。
【0038】
本明細書に使用される場合、単独または接尾語もしくは接頭語として使用される「フルオロアルキル」、「フルオロアルキレン」および「フルオロアルコキシ」とは、対応するアルキル、アルキレンおよびアルコキシ基の炭素のいずれかに結合した水素の1つ、2つまたは3つがフルオロと置き換えられる基を指す。
【0039】
フルオロアルキルの例としては、限定されないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−フルオロエチルおよび3−フルオロプロピルが挙げられる。
【0040】
フルオロアルキレンの例としては、限定されないが、ジフルオロメチレン、フルオロメチレン、2,2−ジフルオロブチレンおよび2,2,3−トリフルオロブチレンが挙げられる。
【0041】
フルオロアルコキシの例としては、限定されないが、トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、3,3,3−トリフルオロプロポキシおよび2,2−ジフルオロプロポキシが挙げられる。
【0042】
本明細書に使用される場合、単独であるか、または接尾語もしくは接頭語であるかどうかにかかわらず、「非芳香族炭素環」は、シクロプロパニル、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどの3〜8個の環炭素原子を有する非芳香族飽和および不飽和炭素単環(carbomonocycle)を意味することを意図する。C3−C6などの接頭語が与えられる場合、前記炭素環は示した数の炭素原子、例えば3、4、5または6個の炭素原子を含む。したがって、「C6非芳香族炭素環」は、例えばシクロヘキシルおよびシクロヘキセニルを含む。アリールは少なくとも1つの芳香環を含む芳香族環構造を指すので、非芳香族不飽和炭素環はアリールから区別される。
【0043】
本明細書に使用される場合、単独であるか、または接尾語もしくは接頭語であるかどうかにかかわらず、「シクロアルキル」は、シクロプロパニル、シクロペンタニルおよびシクロヘキサニルなどの3〜8個の環炭素原子を有する飽和炭素単環を意味することを意図する。C3−C6などの接頭語が与えられる場合、前記シクロアルキルは示した数の炭素原子、例えば3、4、5または6個の炭素原子を含む。したがって、C6シクロアルキルはシクロヘキシルに対応する。
【0044】
本明細書に使用される場合、単独であるか、または接尾語もしくは接頭語であるかどうかにかかわらず、「シクロアルケニル」は、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどの4〜8個の環炭素原子を有する一価不飽和炭素単環を意味することを意図する。C3−C6などの接頭語が与えられる場合、前記シクロアルケニルは示した数の炭素原子、例えば3、4、5または6個の炭素原子を含む。したがって、C6シクロアルケニルはシクロヘキセニルに対応する。
【0045】
本明細書に使用される場合、「置換可能」という用語は、水素が共有結合でき、別の置換基が水素の代わりに存在できる原子を指す。置換可能な原子の非限定的な例としては、ピリジンの炭素原子が挙げられる。ピリジンの窒素原子はこの定義によれば置換可能ではない。さらに、同じ定義によれば、イミダゾールにおける3位のイミン窒素は置換可能ではないが、1位のアミン窒素は置換可能である。
【0046】
本明細書に使用される場合、「アリール」という用語は、5〜14個の炭素原子から構成される少なくとも1つの芳香族環を含む環構造を指す。5、6、または7個の炭素原子を含有する環構造は単環芳香族基、例えばフェニルである。8、9、10、11、12、13、または14個の炭素原子を含有する環構造は多環式、例えばナフチルである。芳香族環は1つ以上の環位置で置換されていてもよい。「アリール」という用語はまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環と共通している2つ以上の環を有する多環系も含み(環は「縮合環」である)、環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば他の環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってもよい。
【0047】
オルト、メタおよびパラという用語はそれぞれ1,2−、1,3−および1,4−二置換ベンゼンに当てはまる。例えば、1,2−ジメチルベンゼンおよびオルト−ジメチルベンゼンという名称は同義語である。
【0048】
本明細書に使用される場合、「ヘテロアリール」または「ヘタリール」とは、芳香族性(例えば6個の非局在化電子)を有する少なくとも1つの環、または芳香族性(例えば4n+2個の非局在化電子(ここでnは整数である))を有する少なくとも2つの結合した環を有し、最大約14個の炭素原子を含み、少なくとも1つのヘテロ原子環の員、例えば硫黄、酸素または窒素を有する、芳香族複素環を指す。ヘテロアリールまたはヘタリール基としては、単環および二環(例えば2個の縮合環を有する)系が挙げられる。ヘテロアリールまたはヘタリール基の芳香族環は1つ以上の環位置において置換されていてもよい。
【0049】
ヘテロアリールまたはヘタリール基の例としては、限定されないが、ピリジル(すなわちピリジニル)、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、フリル(すなわちフラニル)、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル、テトラヒドロイソキノリル、チエニル、イミダゾリル、チアゾリル、インドリル、ピリル、オキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンズイミダゾリル、インドリニルなどが挙げられる。
【0050】
本明細書に使用される場合、「非芳香族複素環」とは、少なくとも1つのヘテロ原子環の員、例えば硫黄、酸素または窒素を含む単環を指す。このような単環は飽和であってもよいか、または不飽和であってもよい。しかしながら、非芳香族複素環はヘテロアリール基から区別される。
【0051】
非芳香族複素環基の例としては、限定されないが、モルホリニル、ピペラジニル、3H−ジアジリン−3−イル、オキシラニル、アジリジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロ−2H−ピラニルが挙げられる。
【0052】
本明細書に使用される場合、例えば構造の図面を参照する場合などで「相対立体化学」という用語は、例えば構造の置換基または基の相対空間配置に関連している。例えば、相対立体化学が特定の方向における分子の置換基または基を描くことによって示される場合、その分子の対応する鏡像は同じ相対立体化学を有する。他方で、「絶対立体化学」が特定の方向における分子の置換基または基を描くことによって示される場合、その分子の特定のエナンチオマーが意図される。
【0053】
本発明の実施形態
以前は、ガリエララクトンはインビボ研究のために腹腔内(ip)投与されているだけであった。ガリエララクトン(10mg/kg)の経口投与がマウスで調査されたとき、ガリエララクトンの非常に少ない血漿中濃度のみが得られた(Cmax=52ng/mlおよびAUC0−∞=5.7μg/mL.分)。このデータにより、これは不十分な吸収に起因すると示唆された。
【0054】
低い血漿曝露による化合物のバイオアベイラビリティを増加させる1つの方法は活性親薬物のプロドラッグを作製することである。プロドラッグは例えば経口投与後に吸収を増加できる。摂取した後、プロドラッグは好ましくは代謝または自発的化学反応のいずれかを介して活性親化合物に変換されるべきである。改良された薬物のような特性の1つの尺度は経時的に測定した活性親化合物の血漿曝露(AUC)である。
【0055】
ガリエララクトンは反応性マイケルアクセプターである。文献から、反応性マイケルアクセプターは、アミン付加物を得るためにそれらを異なるアミンと反応させることによって改良された薬物のような特性を有するプロドラッグに変換され得ることが知られている(Woodsら Med.Chem.Commun.、2013、4、27−33)。これは例えばパルテノリド(Neelakantanら Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19(2009)4346−4349)およびアルグラビンで行われている。次いでアミン−薬物付加物はインビボで活性親化合物に変換される。
【0056】
したがってガリエララクトンを、潜在的プロドラッグとして作用できるアミン−ガリエララクトン付加物を作製するためにピロリジンと反応させた。しかしながら、マウスに経口投与した場合(10mg/kg)、ガリエララクトンの血漿中濃度はガリエララクトンを経口投与した場合と比較して全く改善されなかった(詳細については以下の実験部分を参照のこと)。
【0057】
ピロリジン−ガリエララクトン付加物の化学安定性を0.1MのPBS(pH7.4)で調査し、それは非常に不安定であり、急速にガリエララクトンに変換されることが見出された。プロドラッグの改善された血漿曝露の欠如はその化学的不安定性に起因し得ることが予測された。一連のアミン−ガリエララクトン付加物をそれらの化学安定性について評価したが、全ては0.1MのPBS(pH7.4)において不安定であることが見出された。
【0058】
また、システインなどのチオールもマイケルアクセプターをプロドラッグに変換するために使用できる。ガリエララクトンのシステインおよびシステインMe−エステル付加物の付加は可逆的であると確認されたので、また、このような付加物は潜在的なプロドラッグ候補を表す。しかしながら、アミン付加物と同様に、ガリエララクトンのシステインおよびシステインMe−エステル付加物は0.1MのPBS(pH7.4)で不安定であったので、プロドラッグとしてのそれらの使用を不可能にした。
【0059】
経口投与後のバイオアベイラビリティを改善しているガリエララクトンのプロドラッグを提供するために、化学的により安定な付加物を提供することが必要であると考えられた。
【0060】
驚くべきことに、ガリエララクトンのアミン付加物に対して見られている一般的に低い安定性は概してチオール付加物の間では見られなかった。特に、N−アセチル化システインMe−エステルの使用により、0.1MのPBS(pH7.4;詳細については以下の実験部分を参照のこと)で化学的に安定であるガリエララクトンのチオール付加物が提供されることが見出された。
【化4】
【0061】
インビボで評価すると、付加物は、ガリエララクトン自体の経口投与と比較してガリエララクトンの血漿曝露を顕著に改善することが見出された。
【0062】
さらに、他のチオール付加物も同様の特性を有することが見出された。いかなる理論にも束縛されないが、システイン付加物のアミノ基は、マイケルアクセプター、すなわちガリエララクトンを放出するレトロマイケル(retro Michael)攻撃を分子内で支援するための手段を提供するように見える。アシル化、アミド化、アミノ基の除去(システイン残基の硫黄原子に対してベータ)の全ての結果、ガリエララクトン自体の経口投与と比較してガリエララクトンの改善された安定性および改善された血漿曝露を有する付加物が得られた。さらに、システイン残基の硫黄原子に対してベータ以外の位置におけるアミノ基は、一見したところ、PBS中で不安定である付加物を生じなかった。一例として、ジペプチドVal−Cysのメチルエステルとガリエララクトンとの反応により、0.1MのPBS中で化学的に安定である化合物(以下の式を参照)が得られた。
【化5】
【0063】
したがって、一実施形態は、遊離塩基、非荷電プロトン化形態の酸、薬学的に許容可能な付加塩、溶媒和物、その塩の溶媒和物、純粋なジアステレオマー、純粋なエナンチオマー、ジアステレオマー混合物、ラセミ混合物、スカレミック混合物、2つのヘテロ原子間の水素移動から得られる対応する互変異性型および/またはケト−エノール互変異性化から得られる対応する互変異性型としての式(I)の化合物
【化6】
(式中、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)
からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)
からなる群から独立して選択され、
は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、C(O)C1−5アルキル、C2−3アルキレンN(C0−5)アルキル(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C(O)N(0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C(O)アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C(O)ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C(O)C1−C3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびC(O)C1−C3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)からなる群から選択され、
は、H、C1−8アルキル、C1−8フルオロアルキル、C3−C8アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C2−5アルキレンOC0−5アルキル、C2−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C2−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、C3−5アルキレンNHC0−5アルキル、C2−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C2−5アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノ、およびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C2−5アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C1−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C1−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C1−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C1−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C2−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C1−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C1−3アルキレンSOC0−5アルキル、C1−5アルキレンSOH、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、ならびに式(II)の部分
【化7】
(式中、波線は式(I)における硫黄原子との結合点を示し、
Aは、C1−5アルキレンであり、
Dは、結合、フェニレン、またはヘテロアリーレン(ここで前記ヘテロアリーレンは5または6員ヘテロアリーレンである)であり、
Eは、結合またはC1−5アルキレンであり、
Xは、NC0−C5アルキルまたは「O」(酸素)であり、
R7は、H(但し、XがNC0−C5アルキルであるという条件であり、もしXが「O」(酸素)である場合、R7はHではない)、C1−C10アルキル、C1−5アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C1−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(これらのアミノ酸残基はアミノ酸残基のN末端において式(II)の部分に結合され、任意にC末端においてC1−5一価アルカノール、およびジペプチド、トリペプチドまたはテトラペプチド残基でエステル化され、前記ペプチド残基におけるアミノ酸残基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から独立して選択され、前記ペプチド残基はペプチドのN末端において式(II)の部分に結合され、任意にC末端においてC1−5一価アルカノールでエステル化される)からなる群から選択され、
R8は、C(O)C1−C6アルキル、C(O)OC1−C6アルキル、C(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C(O)C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(II)の部分に結合され、アミノ酸残基は任意にN−アシル化され、前記アシル基はC(O)C1−C6アルキル、およびC(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびジペプチド、トリペプチドまたはテトラペプチド残基(前記ペプチド残基におけるアミノ酸残基はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から独立して選択され、ペプチド残基はペプチドのC末端において式(II)の部分に結合され、ペプチドのN末端は任意にN−アシル化され、前記アシル基はC(O)C1−C6アルキルおよびC(O)C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から選択される)からなる群から選択される)からなる群から選択される)からなる群から選択される)
に関する。
【0064】
R6が式(II)の部分である化合物において、「D」は結合を表し、「A」は「E」に直接結合している。同様に、R6が式(II)の部分である化合物において、「E」は結合を表し、「D」は式(I)の硫黄原子に直接結合している。R6が式(II)の部分である化合物において、「D」および「E」の両方は結合を表し、「A」は式(I)の硫黄原子に直接結合している(さらに以下の式(IV)を参照のこと)。
【0065】
ジアステレオマーまたはスカレミック(scalemic)混合物における個々のジアステレオマーまたはエナンチオマーのそれぞれは同量で存在してもよいので、後者の場合、または異なる量でラセミ体混合物を構成する。しかしながら、ジアステレオマーまたはエナンチオマーのうちの1つが優勢である場合が好ましい。したがって、ジアステレオマーまたはエナンチオマーのうちの1つが50%超、例えば、75%超、90%超、95%超またはさらに99%超であることが好ましい。
【0066】
一実施形態によれば、式(I)の化合物は、式(III)
【化8】
の相対立体化学または絶対立体化学を有する。
【0067】
式(III)の絶対立体化学を有する化合物は、天然産物であるガリエララクトンの使用によって得ることができる。したがって一実施形態は、式(III)の絶対立体化学を有する式(I)の化合物に関連する。
【0068】
好ましくは、本明細書の化合物のC3−8非芳香族炭素環は、シクロヘキシル、シクロペンチルおよびシクロプロピルからなる群から独立して選択される。さらに、本明細書の化合物の任意のヘテロアリールは、5員ヘテロアリール、例えばチアゾリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピラゾリル、オキサゾリルまたはイソオキサゾリル、および6員ヘテロアリール、例えばピリジルまたはピリミジニルの中から独立して選択される。さらに、本明細書の化合物の3〜8員非芳香族複素環は、好ましくは、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルまたはピロリジニルからなる群から独立して選択される。好ましくは、これらの複素環は置換可能な窒素原子を介して結合される。さらに、本明細書の化合物のアリールは、好ましくは、フェニル基およびナフタレニルの中から独立して選択される。置換される場合、本明細書の化合物のヘテロアリールは置換可能な原子において置換される。
【0069】
好ましくは、任意のハロはフルオロ、クロロまたはブロモである。
【0070】
一実施形態によれば、式(I)の化合物のR、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’は、H、C1−5アルキル、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびC0−3アルキレンヘテロアリールからなる群から独立して選択される。このような実施形態において、Rは、C1−5アルキル、例えばメチルであってもよく、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’は、H、C1−5アルキル、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびC0−3アルキレンヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。さらに、このような一実施形態によれば、RはC1−5アルキル、例えばメチルであってもよく、R’、R、R’、R、R’およびR’は全てHであってもよく、Rは、H、C1−5アルキル、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびC0−3アルキレンヘテロアリールからなる群から選択されてもよい。さらに、式(I)の化合物のRは、H、C1−5アルキル、およびC(O)C1−5アルキルから選択されてもよい。したがって、Rは、H、Me、またはC(O)C1−5アルキルであってもよく、例えばRはHである。
【0071】
一実施形態によれば、式(I)の化合物のR、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’は、H、C1−5アルキル、ハロ、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5員または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、およびCHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5員または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)からなる群から独立して選択される。
【0072】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態において、Rはハロであり、R’はメチルであり、R、R’、R、およびR’は全て水素であり、RおよびR’は、Hおよびフェニルからなる群から独立して選択され、Rは好ましくはHである。これらの実施形態において、Rはフッ素であってもよい。さらに、これらの実施形態において、RはHまたはフェニルであってもよく、R’は水素であり、好ましくはまた、RはHである。
【0073】
一実施形態によれば、式(I)の化合物のR、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’は、H、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールおよびCHヘテロアリールからなる群から独立して選択される。このような実施形態において、Rは、C1−5アルキル、例えばメチルであってもよく、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’は、H、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールおよびCH2ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。さらに、このような実施形態によれば、Rは、C1−5アルキル、例えばメチルであってもよく、R’、R、R’、R、R’、およびR’は全てHであってもよく、Rは、H、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CH2アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールおよびCH2ヘテロアリールからなる群から選択されてもよい。さらに、式(I)の化合物のRはHおよびC1−5アルキルから選択されてもよい。好ましくは、RはHである。
【0074】
一実施形態によれば、RはC1−5アルキル、例えばメチルであり、R’、R、R’、R、およびR’は全てHであるか、またはRはハロ、例えばフッ素であり、R’はC1−5アルキル、例えばメチルであり、R、R’、RおよびR’は全てHであり、RおよびR’は、H、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、およびCHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から独立して選択される。好ましくはまた、R’はこのような実施形態において水素である。
【0075】
一実施形態によれば、式(I)の化合物のR、R’、RおよびR’は全てHである。また、式(I)の化合物のRおよびR’は両方ともHであってもよい。さらに、RおよびR’の一方はメチルであってもよく、他方はHである。
【0076】
一実施形態によれば、式(I)の化合物のRはHであってもよい。
【0077】
一実施形態によれば、式(I)の化合物のR’、R、R’、RおよびR’の少なくとも1つ、例えばR、R’、RおよびR’の1つ、2つ、3つまたは4つ全てはHである。さらに、一実施形態によれば、式(I)の化合物のR’、R、R’、R、R’、RおよびR’は全てHである。さらに、Rはメチルまたは水素であってもよく、例えばメチルである。
【0078】
一実施形態によれば、R、R’、RおよびR’の少なくとも1つ、例えば式(I)の化合物のR、R’、RおよびR’の1つ、2つ、3つまたは4つ全ては水素である。さらにまた、式(I)の化合物のRおよびR’は水素であってもよい。このような実施形態において、RおよびR’は、フッ素、メチルおよび水素からなる群から選択されてもよい。一実施形態において、式(I)の化合物のR、R’、R、R’、RおよびR’は全て水素であり、Rはフッ素であってもよく、R’はメチルであるか、またはRはメチルであってもよく、R’は水素である。
【0079】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物のR、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’の少なくとも1つは、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−C5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールおよびCHヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。特に、式(I)の化合物において、式(I)の化合物のR、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’の少なくとも1つは、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールまたはCH2ヘテロアリールであり、本明細書に開示される化合物のR、R’、R、R’、RおよびR’の少なくとも1つは、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールおよびCH2ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。さらに、式(I)の化合物において、式(I)の化合物のR、R’、R、R’、RおよびR’の少なくとも1つは、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5)アルキル(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールまたはCHヘテロアリールであり、本明細書に開示される化合物のR、R’、RおよびR’の少なくとも1つは、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5)アルキル(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5)アルキル(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールおよびCHヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。さらに、式(I)の化合物において、式(I)の化合物のR、R’、RおよびR’の少なくとも1つは、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5)アルキル(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールまたはCHヘテロアリールであり、本明細書に開示される化合物のRおよびR’の少なくとも1つ、例えばRは、C1−5アルキル、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CH2アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリールおよびCH2ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。特に、Rはアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、またはCH2アリール、例えばフェニルであってもよい。
【0080】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物のRおよびR’の少なくとも1つは、C1−5アルキル、例えばメチル、アリール、例えばフェニル、CHアリール、例えばベンジル、ヘテロアリールおよびCHヘテロアリールからなる群から独立して選択される。したがって、RおよびR’の少なくとも1つは、C1−5アルキル、例えばメチルであってもよい。好ましくは、Rはこのような実施形態においてメチルである。あるいは、Rはフッ素であり、R’はメチルである。
【0081】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物のRおよびR’は、H、ハロ、およびメチルからなる群から独立して選択される。RおよびR’の両方はHであってもよいが、RおよびR’の一方がメチルであり、他方がHまたはフッ素であることが好ましい。好ましくは、Rはメチルであり、R’はHである。あるいは、Rはフッ素であり、R’はメチルである。
【0082】
一実施形態によれば、Rはメチルであり、R’は水素であり、R、R’、RおよびR’は全て水素であり、RおよびR’はHおよびフェニルからなる群から独立して選択される。さらに、このような実施形態において、またR’は水素であってもよい。またRが水素である化合物はガリエララクトンから得ることができる。したがって、またRは水素であってもよい。ガリエララクトンにおいてRはHである。したがって、RがHである場合が好適であり得る。しかしながら、第三級ヒドロキシル基はアルキル化およびアシル化などにより修飾されてもよい。
【0083】
一実施形態によれば、Rはフッ素であり、R’はメチルであり、R、R’、RおよびR’は全て水素であり、RおよびR’は、Hおよびフェニルからなる群から独立して選択される。さらに、このような実施形態において、またR’は水素であってもよい。またRが水素である化合物はガリエララクトンから得ることができる。したがって、またRは水素であってもよい。ガリエララクトンにおいてRはHである。したがって、RがHである場合が好適であり得る。しかしながら、第三級ヒドロキシル基はアルキル化およびアシル化などにより修飾されてもよい。R、R’、R、R’、R、R’およびRが全て水素であり、Rがフッ素であり、R’がメチルである化合物はガリエララクトンから得ることができる。
【0084】
一実施形態は、Rが、C1−8アルキル、C3−C8アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C2−5アルキレンOC0−5アルキル、C1−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C2−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C1−5アルキレンSO3、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5員または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、ならびに式(II)の部分からなる群から選択される、本明細書に開示される化合物に関する。Rが式(II)の部分である場合、「D」は結合またはフェニレンであってもよく、さらに「E」は結合であってもよい。
【0085】
は、H(但し、XがNC0−C5アルキルであるという条件であり、もしXが「O」(酸素)である場合、RはHではない)、C1−C10アルキル、例えばメチル、およびC0−3アルキレンアリール、例えばフェニルおよびベンジルからなる群から選択されてもよい。アリールは、置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0086】
は、C(O)C1−C6アルキル、例えばC(O)Me、C(O)C0−3アルキレンアリール、例えばC(O)Ph(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ならびにアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(II)の部分に結合される)からなる群から選択されてもよい。
【0087】
がアミノ酸残基である式(II)の部分は、以下の式:
【化9】
(式中、Rはアミノ酸の置換基を表す)
によって表すことができる。
【0088】
一実施形態は、−SRがシステイン残基、またはシステイン残基の類似体、例えばホモシステイン残基を含む、本明細書に開示される化合物に関する。このような実施形態において、Rは式(IV)の部分
【化10】
(式中、破線は式(I)における硫黄原子との結合点を示し、
AはC1−5アルキレン、例えばメチレンまたはエチレンであり、
は式(I)におけるRに対応し、
10は式(I)におけるRに対応する)
である。
【0089】
が式(IV)の部分である実施形態において、Rは、C(O)C1−C6アルキル、例えばC(O)Me、C(O)C0−3アルキレンアリール、例えばC(O)フェニルまたはC(O)ベンジル(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ならびにアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(IV)の部分に結合される)からなる群から選択されてもよく、R10は、C1−C10アルキル、例えばメチル、およびC0−3アルキレンアリール、例えばフェニルまたはベンジル(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から選択されてもよい。Rが式(IV)の部分である実施形態において、RはC(O)Meであってもよい。
【0090】
本明細書に開示される化合物は、システイン誘導体をガリエララクトンと反応させることによって得ることができる。したがって、一実施形態は式(V)の化合物
【化11】
(式中、Rは式(I)におけるRに対応し、R10は式(I)におけるRに対応する)
に関する。さらに、Rは、C(O)C1−C5アルキル、例えばメチル、C(O)C0−3アルキレンアリール、例えばC(O)フェニール(ここでアリールは置換されていないか、またはフッ素、塩素および臭素からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ならびにアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基(このアミノ酸残基はアミノ酸残基のC末端において式(IV)の部分に結合される)からなる群から選択されてもよい。さらに、R10は、C1−C6アルキルおよびC0−3アルキレンアリール、例えばフェニルまたはベンジル(ここでアリールは置換されていないか、またはフッ素、塩素および臭素からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)からなる群から選択されてもよい。
【0091】
一実施形態によれば、ジアステレオマー、純粋なジアステレオマー、ラセミ体混合物、スカレミック混合物または純水なエナンチオマーの混合物としての式(I)の化合物は、
【化12】
からなる群から選択される。好ましくは、化合物はラセミ体混合物、またはより好ましくは上記の絶対立体化学を有する純粋なエナンチオマーである。
【0092】
一実施形態によれば、ジアステレオマー、純粋なジアステレオマー、ラセミ体混合物、スカレミック混合物または純水なエナンチオマーの混合物としての式(I)の化合物は、
【化13】
からなる群から選択される。好ましくは、化合物はラセミ体混合物、またはより好ましくは上記の絶対立体化学を有する純粋なエナンチオマーである。
【0093】
別の態様によれば、遊離塩基、非荷電プロトン化形態の酸、薬学的に許容可能な付加塩、溶媒和物、その塩の溶媒和物、純粋なジアステレオマー、純粋なエナンチオマー、ジアステレオマー混合物、ラセミ混合物、スカレミック混合物、2つのヘテロ原子間の水素移動から得られる対応する互変異性型および/またはケト−エノール互変異性化から得られる対応する互変異性型としての式(Ia)の化合物
【化14】
(式中、
はハロであり、
’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)
からなる群から選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)
からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C3−8非芳香族炭素環、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、C0−3アルキレンOC1−5フルオロアルキル、C0−3アルキレンOC(O)C1−5アルキル、OC2−3アルキレンN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンNHC0−5アルキル、C0−3アルキレンN(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンN(C0−5アルキル)C(O)C1−5アルキル、C0−3アルキレンNHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンNHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、C0−3アルキレンC(O)NHC0−5アルキル、C0−3アルキレンC(O)N(C1−5アルキル)(ここでC1−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)、C0−3アルキレンC(O)N(C4−5アルキレン)、C0−3アルキレンC(O)OC0−5アルキル、3〜8員非芳香族複素環、C0−3アルキレンアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、C0−3アルキレンヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基、ハロ、C0−1アルキレンシアノ、SC0−5アルキル、C0−3アルキレンSOC0−5アルキル、ニトロ、C(O)C0−C5アルキル、C(O)C1−C5フルオロアルキル、N(C0−C3アルキル)SOC1−C5アルキル、およびN(C0−C5アルキル)SOC1−5フルオロアルキルで置換されている)からなる群から独立して選択される)
が提供される。
【0094】
一実施形態によれば、式(Ia)の化合物は、式(IIIa)
【化15】
に記載の相対立体化学または絶対立体化学を有する。
【0095】
式(Ia)または(IIIa)の化合物のいくつかの実施形態によれば、R’、R、R’、R、R’、RおよびR’は、H、C1−5アルキル、ハロ、アリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、CHアリール(ここでアリールは置換されていないか、またはC1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、C0−5アルキレンOC0−5アルキル、ニトロ、シアノおよびN(C0−5アルキル)(ここでC0−5アルキルは同じであっても、異なっていてもよい)からなる群から独立して選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている)、ヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)、およびCHヘテロアリール(ここで前記ヘテロアリールは5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは置換されていないか、または1つもしくは複数の独立して選択されるC1−5アルキル基で置換されている)からなる群から独立して選択される。
【0096】
式(Ia)または(IIIa)の化合物のいくつかの実施形態において、Rはフッ素である。
【0097】
式(Ia)または(IIIa)の化合物のいくつかの実施形態によれば、R’は、H、C1−5アルキル、C1−5フルオロアルキル、ハロ、アリール、CHアリール、ヘテロアリールおよびCHヘテロアリールからなる群から選択される。
【0098】
式(Ia)または(IIIa)の化合物の一実施形態において、R’はC1−5アルキルである。この実施形態において、R’はメチルであってもよい。
【0099】
式(Ia)または(IIIa)の化合物の一実施形態によれば、R、R’、R、R’、RおよびR’は、H、C1−5アルキル、アリール、CHアリール、ヘテロアリールおよびCHヘテロアリールからなる群から独立して選択される。
【0100】
式(Ia)または(IIIa)の化合物のいくつかの実施形態において、R、R’、R、R’、RおよびR’は全てHである。
【0101】
式(Ia)の化合物の1つの特定の実施形態において、Rはフッ素であり、R’はメチルであり、R、R’、R、R’、RおよびR’は全てHである。
【0102】
一実施形態によれば、式(Ia)の化合物は
【化16】
である。
【0103】
別の態様によれば、式(Ia)の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。式(Ia)のこのような化合物および組成物は療法に有用である。
【0104】
別の態様によれば、式(Ia)の化合物およびそのような化合物を含む組成物は、STAT3シグナル伝達関連障害の治療、ならびに固形がん、血液がん、良性腫瘍、過剰増殖性疾患、炎症、自己免疫疾患、移植片拒絶または移植拒絶、移植片または移植組織の遅発型生理学的機能、神経変性疾患ならびに固形がんおよび血液がん由来などのウイルス感染からなる群から選択される疾患および障害の治療に有用である。
【0105】
理論により束縛されることを望まないが、式(I)または(Ia)の化合物の三環コアにおいて1つ以上のハロゲン原子、例えばフッ素を含むことは、化合物の代謝安定性を増加させ得るので、代謝分解に対して、より耐性になり、その結果、化合物のより望ましい薬物動態プロファイルが得られる。
【0106】
一実施形態によれば、式(I)または(Ia)の化合物は結晶形態であってもよい。例えば、このような結晶形態は式(I)または(Ia)の化合物を含む医薬の製造を容易にすることができる。
【0107】
式(I)または(Ia)の異なる基の各々について与えられている範囲内で、種々の選択が種々の可能な実施形態として上記に個々に記載されているが、これらの選択の任意の組み合わせもまた、可能であり、したがって本発明の範囲内である。したがって、本発明の他の実施形態は、式(I)または(Ia)の少なくとも2つの異なる基、例えば2、3、4、5またはさらなる異なる基が、本明細書に開示される、式(I)または(Ia)の異なる基の各々について与えられる範囲内の種々の選択から選択される、式(I)または(Ia)の化合物に関する。
【0108】
組成物
本明細書に開示される化合物、例えば式(I)または(Ia)の化合物またはその好ましい選択は、従来の医薬組成物、例えば医薬に製剤化されてもよい。一実施形態によれば、したがって、本明細書に開示される化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。この文脈において、「薬学的に許容可能」とは、利用される投薬量および濃度において、用量が投与される患者において望ましくない作用を引き起こさない、賦形剤または担体を意味する。このような薬学的に許容可能な担体および賦形剤は当該分野において周知である。さらに、本明細書に記載される医薬組成物はまた、薬学的希釈剤、安定剤などを含んでもよい。
【0109】
薬学的に許容可能な担体は固体または液体のいずれであってもよい。
【0110】
医薬組成物は、典型的に、固体または液体製剤のいずれかとして提供されてもよい。
【0111】
固体形態製剤としては、限定されないが、粉剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤および座剤が挙げられる。粉剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤は、経口投与に適した固体剤形として使用できるのに対して、座剤は直腸投与に使用できる。
【0112】
固体担体は、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、または錠剤崩壊剤としても作用できる1種以上の物質であってもよい。固体担体はまた、封入材料であってもよい。適切な担体としては、限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが挙げられる。
【0113】
粉剤において、担体は、通常、本明細書に開示される化合物(これも典型的に微粉化されている)との混合物中にある、微粉化された固体である。錠剤において、活性成分は適切な割合で必要な結合特性を有する担体と混合され、所望の形状およびサイズに小型化されてもよい。
【0114】
座剤組成物を調製するために、脂肪酸グリセリドとココアバターの混合物などの低融点ワックスが最初に融解されてもよく、次いで本発明の化合物のような活性成分が、例えば撹拌によってそれらの中に分散されてもよい。次いで融解された均質な混合物は簡便なサイズ合わせされた型内に注がれ、冷却され、凝固されてもよい。
【0115】
組成物という用語はまた、活性成分(他の担体を有するまたは有さない)が担体で囲まれている(したがって担体は活性成分と関連している)カプセル剤を提供する担体として封入材料を有する活性成分の製剤を含むことを意図する。同様にカシェ剤が含まれる。
【0116】
液体形態の製剤としては、限定されないが、液剤、懸濁剤およびエマルションが挙げられる。例えば、滅菌水または水とプロピレングリコールの混合物中の本明細書に開示される化合物の脱溶媒和(dissolvation)または分散は非経口投与に適した液体製剤を提供できる。液体組成物はまた、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液中で製剤化されてもよい。
【0117】
経口投与用の水溶液は、水中に本発明の化合物のような活性成分を溶解し、所望の場合、適切な着色剤、矯味矯臭剤、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製できる。経口使用のための水性懸濁剤は、天然・合成ガム、樹脂、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および製剤処方の分野において公知の他の懸濁剤などの粘着性物質と一緒に微粉化された活性成分を水中に分散することによって作製できる。経口使用を意図する例示的な組成物は、1種以上の着色剤、甘味剤、香味剤および/または防腐剤を含有してもよい。
【0118】
本明細書に開示される実施形態に記載の医薬組成物は、限定されないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、鼻腔内、皮下、舌下、直腸、経口などの異なる経路を介して、および吸入または送気を介して投与されてもよい。
【0119】
投与様式に応じて、医薬組成物は、約0.05wt%(重量パーセント)〜約99wt%、例えば約0.10wt%〜約50wt%、約0.5wt%〜約30wt%、または約1.0wt%〜約25wt%の本明細書に開示される化合物を含んでもよい(全ての重量パーセントは組成物の全重量に基づく)。
【0120】
療法
本明細書に開示される化合物、例えば式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその好ましい選択、およびこのような化合物を含む医薬組成物は、ヒトまたは哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシまたは他の哺乳動物、特に家畜哺乳動物における種々の疾患または状態の治療のために使用できる。哺乳動物は、ヒトが治療され得るものと同じ疾患および状態について治療されてもよい。
【0121】
療法に使用される場合、本明細書の実施形態に記載の医薬組成物は薬学的に有効な量で患者に投与され得る。「薬学的に有効な量」とは、処置される状態に対して所望の効果を生じるのに十分な用量を意味する。正確な用量は、化合物の活性、投与様式、障害および/または疾患の性質および重症度、ならびに全身状態、例えば患者の年齢および体重に依存し得る。
【0122】
本発明を実施するための治療有効量は、個々の患者の年齢、体重および反応を含む、公知の基準を使用して当業者により決定され得、処置されるかまたは予防される疾患の状況の範囲内で解釈され得る。
【0123】
STAT3シグナル伝達関連障害の治療およびがん細胞増殖の阻害
親化合物ガリエララクトンおよび関連化合物(国際公開第2012/010555号を参照のこと)はSTAT3の共有結合阻害剤であり、STAT3に直接結合し、DNA結合を防ぐ。本明細書上記のように、転写因子STAT3は、様々ながん、例えば去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)を治療するための非常に有望な標的として現れている。CRPCにおいて、STAT3の構成的活性化は、薬物耐性、アンドロゲン非依存性成長の進行、転移、免疫回避および腫瘍成長に関与している。
【0124】
ガリエララクトンは、DU145前立腺がん細胞の増殖を阻害することが実際に見出されている(Hellstenら、Prostate 68、269−280、2008を参照のこと)。いかなる理論にも束縛されないが、ガリエララクトンはSTAT3関連遺伝子を下方制御することによってアポトーシスを誘導すると考えられている。
【0125】
本明細書に開示される化合物は急速に吸収され、マイケルアクセプター、例えばガリエララクトンである親化合物に変換されるので、経口投与される場合、それらはSTAT3シグナル伝達関連障害を治療または予防するために使用され得る。さらに、STAT3シグナル伝達に効果を与えるかどうかに関係なく、本明細書に開示される化合物はがん細胞の増殖を阻害するので、がんの治療に使用され得る。
【0126】
したがって、一実施形態は、STAT3シグナル伝達関連障害の治療または予防に使用するための、本明細書に開示される化合物および医薬組成物、例えば式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその好ましい選択に関する。STAT3シグナル伝達関連障害の例としては、様々ながん、例えば固形がん、血液がん、良性腫瘍、過剰増殖性疾患、炎症、自己免疫疾患、移植片拒絶または移植組織拒絶、移植片または移植組織の遅延性生理的機能、神経変性疾患またはウイルス感染が挙げられる。
【0127】
STAT3に対する効果に加えて、ガリエララクトンはまた、TGF−ベータシグナル伝達を遮断すること(Rudolphら Cytokine.2013 Jan、61(1):285−96)、およびアレルギー性喘息のインビボマウスモデルにおいて効果的であること(Hausdingら Int Immunol.2011 Jan、23(1):1−15)が示されている。
【0128】
STAT3シグナル伝達を干渉するか否かに関係なく、本明細書に開示される化合物および医薬組成物はがんの治療または予防に使用され得る。したがって、別の実施形態は、がん、例えば固形がんまたは血液がんの予防または治療に使用するための本明細書に開示される化合物および医薬組成物に関連する。
【0129】
固形がんの例としては、限定されないが、肉腫、乳がん、前立腺がん、頭頸部がん、脳腫瘍、大腸がん、肺がん、膵がん、子宮頸がん、卵巣がん、黒色腫、胃がん、腎細胞がん、子宮内膜がん、肉腫および肝細胞がんが挙げられる。血液がんの例としては、限定されないが、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキン病、未分化大細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫が挙げられる。
【0130】
さらに、本明細書に開示される化合物および医薬組成物によって治療されるがんは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、肺がん(非小細胞)、腎細胞がん、肺がん、肝細胞がん、胆管がん、卵巣がん、膵臓腺がん、黒色腫、頭頸部扁平上皮がんからなる群から選択される実施形態による。
【0131】
STAT3シグナル伝達を干渉するか否かに関係なく、本明細書に開示される化合物および医薬組成物は良性腫瘍の治療または予防に使用され得る。したがって、別の実施形態は、例えば心臓粘液腫およびキャッスルマン病を含む、良性腫瘍の予防または治療に使用するための本明細書に開示される化合物および医薬組成物に関連する。
【0132】
本明細書に開示される化合物および医薬組成物は、増殖または血管形成を阻害でき、アポトーシスを誘導でき、アポトーシスに感作できるか、またはがん幹細胞、例えば白血病細胞、前立腺細胞および乳がん幹細胞を含む、がん細胞の細胞毒性を引き起こすことができる。好ましくは、がんは、向上したもしくは異常なSTAT3シグナル伝達もしくは活性、構造的にリン酸化されたもしくは活性STAT3、または増加したSTAT3タンパク質発現を示す。一実施形態によれば、したがって、本明細書に開示される化合物および医薬組成物は細胞の成長または移動を阻害するために使用される。これらの細胞は、向上したもしくは異常なSTAT3シグナル伝達もしくは活性、構造的にリン酸化されたもしくは活性STAT3、または増加したSTAT3タンパク質発現を有し得る。したがって、過剰増殖性疾患などの関連する疾患および障害は本明細書に開示される化合物および医薬組成物の使用によって治療または予防され得る。したがって、別の実施形態は、過剰増殖性疾患の予防または治療に使用するための本明細書に開示される化合物および医薬組成物に関する。
【0133】
IL−6はしばしばSTAT3シグナル伝達に関与する。STAT3シグナル伝達に効果を与えるか否かに関係なく、本明細書に開示される化合物および医薬組成物は、IL−6媒介性炎症ならびに/または自己免疫疾患および障害、例えば急性期タンパク質の産生に関連する疾患および障害の治療または予防のために使用され得る。したがって、別の実施形態は、IL−6媒介性炎症ならびに/または自己免疫疾患および障害の予防または治療に使用するための本明細書に開示される化合物および医薬組成物に関する。このような疾患および障害としては、限定されないが、アテローム性動脈硬化症、2型糖尿病、認知症、骨粗鬆症、高血圧、冠動脈疾患が挙げられる。
【0134】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物および医薬組成物は、限定されないが、関節炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、アレルギー、例えばアトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎およびCOPDを含む、炎症および/または自己免疫疾患の予防または治療のために使用される。加えて、本発明の化合物は、移植片拒絶および移植組織拒絶の抑制のため、またはこのような移植後の移植片および移植片組織の生理的機能の改善の開始のために使用され得る。
【0135】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物および医薬組成物は、炎症、自己免疫疾患ならびに限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳卒中および虚血再灌流障害を含む、CNSに影響を及ぼす神経変性疾患の予防または治療のために使用される。
【0136】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物および医薬組成物は、限定されないが、C型肝炎、ヘルペス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)によって引き起こされる感染およびエプスタイン・バール・ウイルス関連感染を含む、慢性ウイルス感染の予防または治療のために使用される。
【0137】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物および医薬組成物は、限定されないが、乾癬を含む、過剰増殖性疾患の予防または治療である。
【0138】
療法に使用される場合、本明細書の実施形態に記載の医薬組成物は薬学的に有効な量で患者に投与され得る。「薬学的に有効な量」とは、治療される状態に関して所望の効果を生じるのに十分な用量を意味する。特定の疾患または障害の治療または予防的処置に必要とされる用量は必然的に、治療される宿主、投与経路および治療される病気の重症度に応じて変化する。さらに、正確な用量は、化合物の活性、投与様式、障害および/または疾患の性質および重症度ならびに全身状態、例えば患者の年齢および体重に依存し得る。
【0139】
本発明を実施するための治療有効量は、個々の患者の年齢、体重および反応を含む公知の基準を使用して当業者により決定され得、治療されるかまたは予防される疾患の状況の範囲内で解釈され得る。
【0140】
明らかに、本明細書に開示される化合物および医薬組成物は、本明細書に開示されるこのような治療および予防に使用するための医薬を製造するために使用され得る。
【0141】
同様に、本明細書に開示される化合物および組成物は、明らかにまた、本明細書に開示されるこのような疾患および障害を治療または予防するための方法に使用され得る。このような方法は、有効量の化合物または医薬組成物を、このような治療を必要とする対象に投与する工程を含む。
【0142】
本明細書の文脈において、「治療」および「処置」という用語は、反対の特定の指示が存在しない限り、予防または防止を含む。「治療的」および「治療的に」という用語は、状況に応じて解釈されるべきである。
【0143】
一実施形態によれば、治療はまた、前処置、すなわち予防的処置を含む。
【0144】
本明細書に使用される場合、「予防/予防すること」は、予防を達成するために本明細書に開示される実施形態に記載の化合物または医薬組成物の使用後に状態および/または疾患が決して再び発生しないことを意味すると解釈されるべきではない。さらに、この用語は、状態を予防するためのこのような使用後に少なくともある程度まで前記状態が発生し得ないことを意味すると解釈されるべきではない。むしろ、「予防/予防すること」は、予防される状態が、このような使用にも関わらず発生する場合、このような使用がないときより重症度が低くなることを意味する。
【0145】
併用療法
既に記載されるように、本明細書に開示される医薬組成物、例えば主な治療剤として作用する式Iの化合物またはその好ましい選択は療法に使用され得る。
【0146】
しかしながら、開示される化合物はまた、さらなる治療活性剤(複数も含む)で補足されてもよい。一実施形態によれば、医薬組成物は1種以上のさらなる治療剤を含む。好ましくは、1種以上のさらなる治療剤は本明細書に開示される化合物の作用機構と異なる作用機構を有する治療剤の中から選択される。次いで治療剤と本明細書に開示される化合物との有益な相乗効果が発生し得、例えば本明細書に開示されるこのような治療剤または化合物のみが使用される場合より、疾患の効果的な処置を可能とする。さらなる治療剤は抗がん剤、例えば化学療法剤であってもよい。さらにまた、本明細書に記載される他の疾患および状態に対して効果的である、他の治療剤が当該分野において周知であり、有益には、例えば相乗効果を達成するために本明細書に開示される化合物と併用して使用されてもよい。
【0147】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物または医薬組成物は、他の治療または療法、特に、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、細胞療法および外科手術を含む、がん治療と併用して使用される。一例として、本明細書に開示される化合物は抗腫瘍免疫介在性細胞毒性を高めることができる。したがって、本明細書に開示される化合物と、別の治療または療法または免疫介在性反応との相乗効果が有益には起こり得る。
【0148】
一実施形態によれば、本明細書の実施形態に記載の医薬組成物は単独で、または他の治療剤と併用して投与され得る。これらの薬剤は同じ医薬組成物の一部として組み込まれてもよいか、または別々に投与されてもよい。同じ医薬において機構的に関連しない治療剤の組み合わせは、例えば異常免疫調節、異常造血、炎症または腫瘍形成によって特徴付けられる状態または疾患の治療において有益な効果を有する場合があることが当該分野において周知である。
【0149】
他の治療剤の例としては、限定されないが、抗がん剤、例えば、アブラキサン、アビラテロン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、三酸化ヒ素、アザシチジン、ベンダムスチン塩酸塩、ベバシズマブ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、ブレオマイシン、カバジタキセル、カペシタビン、カルボプラチン、セツキシマブ、シスプラチン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デガレリクス、デニロイキン・ディフティトックス、デクスラゾキサン塩酸塩、ドセタキセル、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、エルトロンボパグオラミン、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、エルロチニブ塩酸塩、エトポシド、リン酸エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、イブリツモマブチウキセタン、イマチニブメシル酸塩、イミキモド、イリノテカン塩酸塩、イキサベピロン、トシル酸ラパチニブ、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸リュープロリド、シタラビンリポソーム、メトトレキサート、ネララビン、ニロチニブ、オファツムマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パニツムマブ、パゾパニブ塩酸塩、ペグアスパラガーゼ、ペメトレキセド二ナトリウム、プレリキサフォル、プララトレキサート、ラロキシフェン塩酸塩、ラスブリカーゼ、組換えHPV二価ワクチン、組換えHPV四価ワクチン、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、シプリューセル−T(Sipuleucel−T)、トシル酸ソラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ、タルク、クエン酸タモキシフェン、タスキニモド、TAK700、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トシツモマブおよびI 131ヨードトシツモマブ、トラスツズマブ、ビンクリスチン硫酸塩、ボリノスタット、ARN−509、ODM−201、カスチルセン(custirsen)、AT 101、シスプラチン、アボザンチニブ(abozantinib)、ダサチニブ、MK2206、アキシチニブ、サラカチニブ(saracatinib)、チバンチニブ(tivantinib)、リンシチニブ(linsitinib)、GSK2636771、BKM120、ボリノスタット、パノビノスタット、アザシチジン、IPI−504、STA9090、レナリドミド、OGX−427、ゾレドロン酸およびゾフィーゴ(Xofigo)などが挙げられる。
【0150】
本明細書に開示される実施形態に記載の化合物が、医薬などの医薬組成物中に抗がん剤などの少なくとも別の治療剤と組み合わされる場合、医薬組成物の治療有効量は、同じ疾患または状態の予防または治療のために単独で投与される場合、それぞれの確立された治療有効量の成分、すなわち本発明の化合物または治療剤より1〜10倍少なく含んでもよい。
【0151】
したがって、本明細書に開示される実施形態に記載の化合物を、抗がん剤などの別の治療剤と組み合わせることによって、本発明の化合物または他の治療剤が単独でのみ投与される場合と比較して相乗効果を達成することが可能となり得る。
【0152】
例えば、本明細書に開示される化合物、例えば式Iの化合物は、薬物耐性を反転させるため、および/または抗がん剤の効果を高めるために使用され得るので、副作用を回避するために抗がん剤の用量を低下させるおよび/または有効性を高める可能性を与える。
【0153】
薬理学的手段
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物は、類似の活性を有する他の化合物の評価のためのインビトロおよびインビボ試験システムの開発および標準化における薬理学的手段として有用である。このようなインビボ試験システムは、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ブタ、ヤギ、モルモット、ラットおよびマウスなどの実験動物における試験を含む。さらに、本明細書に開示される化合物は、STAT3シグナル伝達にとって適切である標的などの、それらの作用の標的を識別および/または位置付けるために分子プローブとして使用されてもよく、さらにインビボ、エキソビボもしくはインビトロで疾患または状態の診断のための診断手段として、またはこのようなプローブに対する合成前駆体として利用されてもよい。
【0154】
分子プローブは、構成原子の1つまたは複数が放射能または他の手段である検出可能な同位体によって、および当業者に周知の蛍光化合物で高められた本明細書に開示される化合物に基づく。したがって、本明細書に開示される化合物は、1つまたは複数の原子が、水素の重水素に対する置換、炭素12の炭素13もしくは炭素14への置換、および/または窒素14の窒素15への置換などの、より重い同位体で置換されている化合物を含んでもよい。
【0155】
本発明は特定の例示的な実施形態を参照して上記されているが、本明細書に記載される特定の形態に限定することを意図していない。上述の実施形態の任意の組み合わせは本発明の範囲内であると理解されるべきである。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲のみによって限定され、上記の特定以外の他の実施形態が同様にそれらの添付の特許請求の範囲内で可能である。
【0156】
請求項において、「含む/含んでいる」という用語は他の種または工程の存在を排除しない。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれてもよいが、それらは可能で有益であれば組み合わされてもよく、異なる請求項を含めることは、特徴の組み合わせが実行可能ではない、および/または有益ではないことを意味するものではない。さらに、単数形の参照は複数形を排除するわけではない。「一つの(a、an)」、「第1の」、「第2の」などの用語は複数を排除しない。
【0157】
調製方法
別の実施形態は、それらの遊離塩基、酸、または塩としての本明細書に開示される化合物、例えば式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその好ましい選択を調製する方法に関する。さらに、追加的な実施形態は、それらの遊離塩基、酸、または塩としての式(I)の化合物の合成に有用である合成中間体に関する。このような中間体の特定および一般的な例を以下に与える。さらに、このような中間体は式(I)に記載の別の化合物を生成するために使用され得る、式(I)の化合物を含んでもよい。
【0158】
このような方法の以下の説明全体を通して、必要に応じて、有機合成の分野の当業者によって容易に理解されるように適切な保護基が種々の反応物および中間体に結合され、後でそれらから除去されることは理解される。このような保護基を使用する従来の手順および適切な保護基の例は当該分野において周知である。さらにこのような手順および基は、「Protective Groups in Organic Synthesis」,第3版,T.W.Green,P.G.M.Wuts、Wiley−Interscience,New York(1999)などの文献に記載されている。
【0159】
また、化学操作による基または置換基の別の基または置換基への変換が最終生成物に対する合成経路上で任意の中間体または最終生成物で行われてもよく、可能な種類の変換は、変換に利用される条件または試薬に対する、その段階で分子が保有している他の官能基の固有の不和合性によってのみ制限されることは理解される。このような固有の不和合性、ならびに適切な順序で適切な変換および合成工程を実施することによってそれらを回避する手段は有機合成の当業者に容易に理解される。
【0160】
変換の例は以下に与えられ、記載される変換は、変換が例示されている一般基または置換基のみに限定されないことは理解される。
【0161】
他の適切な変換の参照および説明は、例えば、「Comprehensive Organic Transformations − A Guide to Functional Group Preparations」,第2版,R.C.Larock,Wiley−VCH,New York(1999)に与えられている。他の適切な反応の参照および説明は当業者に周知の有機化学の教科書、例えば「March’s Advanced Organic Chemistry」,第5版,M.B.Smith,J.March,John Wiley & Sons(2001)または「Organic Synthesis」,第2版,M.B.Smith,McGraw−Hill(2002)に記載されている。
【0162】
以下に与えられる様々なスキームにおいて、R−基などの一般基は、具体的に定義されない限り、本明細書上記に与えられているものと同じ意味を有する。
【0163】
中間体(VI)と(VII)との反応による式(I)の最終化合物の調製方法(スキーム1)
【化17】
構造(I)の生成物は、(VI)の構造を、触媒としての適切な塩基または酸の存在下または化学量論で共役付加によりチオール(VII)と反応させることによって調製できる。
【0164】
中間体(VI)と(VIII)との反応による式(I)の最終化合物の調製方法(スキーム2)
【化18】
【0165】
構造(I)の生成物は、(VI)の構造を、触媒としての適切な塩基もしくは酸の存在下または化学量論量で共役付加によりインサイチュ生成チオールと反応させることによって調製できる。インサイチュ生成チオールは、適切な還元剤、例えばNaBH、PPh、P(nBu)を用いて対応するジスルフィド(VIII)を還元することによって形成される。
【0166】
中間体(II)と(V)の反応による式(I)の最終化合物の調製方法(スキーム3)
【化19】
【0167】
構造(XII)の生成物は、(VI)の構造を、触媒としての適切な塩基もしくは酸の存在下または化学量論量で共役付加によりアミノ酸チオール(IX)と反応させることによって調製できる。中間体アミノ酸(X)は遊離窒素基でアルキル化またはアシル化されて、構造(XI)の中間体を得ることができる。これらのカルボン酸は、公知の方法を使用して、例えば(XI)を酸塩化物に変換するか、または活性試薬を使用してエステル化して、構造(XII)の最終化合物を得ることができる。
【0168】
式(VII)および(VIII)の中間体化合物の調製方法は、例えば、Rayner,C.M.Contemp.Org.Synth.,1995,2,409−440に記載されている。
【0169】
構造(II)の中間体の合成は、国際公開第2012/010555号、国際公開第2012/011864号、Org Lett.2010 12(22),5100−3およびJ Antibiot 2002 55(7),663−5に記載されている。
【実施例】
【0170】
実験
略語
TEA トリエチルアミン
Boc t−ブチルオキシカルボニル
eq 当量
【0171】
化合物実施例
中間体の調製
以下は式(I)の化合物の調製に有用な中間体の合成における非限定的な実施例を示す。
【0172】
最終化合物の調製
以下は式Iの最終化合物の合成における非限定的な実施例を示す。
【0173】
一般的方法
全ての材料は市販の供給源から得、他に示さない限り、さらに精製せずに使用した。THFはナトリウムおよびベンゾフェノンから蒸留した。NMRスペクトル(CDCl、CDODまたはDMSO−d6において)は400MHzにてBruker DRX 400またはBruker Ultrashield 400分光計で記録した。全ての化学シフトは、内部標準(TMSに対してそれぞれ7.26、3.31または2.50ppm)としてCDCl中の残留CHClピーク、またはCDOD中の残留CDHODピーク、または(CDSO中の残留CDSOCDHピーク、および記録において現れている信号の微細分割(s:一重項、d:二重項、t:三重項、q:四重項、m:多重項、br:広域信号)を使用してTMSに対してデルタスケール(δ)でppmである。60Å 35〜70μm Davisilシリカゲルを使用してフラッシュクロマトグラフィーを実施した。TLC分析をシリカゲル60 F254(Merck)プレートで行い、254/365nm UV−ランプ下で可視化した。
【0174】
中間体および最終生成物を精製するための技術としては、例えば、カラムまたは回転プレート上の順相および逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、再結晶、蒸留および液体−液体または固体−液体抽出が挙げられ、これらは当業者により容易に理解される。
【0175】
「室温」および「周囲温度」という用語は、他に指定されない限り、16〜25℃の温度を意味する。「還流」という用語は、他に指定されない限り、指名される溶媒の沸点の温度またはそれをわずかに上回る温度を使用して利用される溶媒に関する。電子レンジが反応混合物を加熱するために使用されてもよいことは理解される。
【0176】
「フラッシュクロマトグラフィー」または「フラッシュカラムクロマトグラフィー」という用語は、移動相として有機溶媒、またはその混合物を使用したシリカ上の分取クロマトグラフィーを意味する。
【0177】
【化20】
スキーム4
チオールの共役付加のための一般的手順(スキーム4)
0.17mmol 1.0eq(VI)を2mlのMeOHに溶解し、チオール0.18mmol 1.1eq(VII)、続いて0.017mmol TEA0.1eqを加えた。反応混合物を一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(溶媒系、収率および分析データは各化合物について与える)を使用して生成物(I)を精製した。
【0178】
実施例1
3β−(ブチルチオ)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化21】
(ヘプタン/EtOAc 7:3)
収率:72%
H NMR(CDCl)δ4.59(m,1H),3.20(m,1H),3.06(m,1H),2.65(s,1H),2.61(m,2H),2.23(m,1H),2.12(m,1H),2.08(m,1H),2.00(m,1H),1.78(m,1H),1.64(m,1H),1.63(m,2H),1.51(m,1H),1.43(m,2H),1.15(d,3H),0.93(m,3H),0.78(m,1H)。
HRMS:C15H25O3S(M+H)についての計測値285.1524、実測値285.1524。
【0179】
実施例2
3β−(フェニルチオ)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化22】
(ヘプタン/EtOAc 7:3)
収率:72%
H NMR(CDCl)δ7.45(m,2H),7.34(m,2H),7.25(m,1H),4.50(m,1H),3.63(m,1H),3.15(m,1H),2.39(s,1H),2.25(m,1H),2.15(m,1H),2.06(m,1H),2.00(m,1H),1.84(m,1H),1.75(m,1H),1.51(m,1H),1.22(d,3H),0.85(m,1H)。
HRMS:C17H21O3S(M+H)についての計測値305.1211、実測値305.1219。
【0180】
実施例3
3β−(N−アセチルL−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化23】
(EtOAc 100%)
収率:62%
H NMR(CDCl)δ6.50(d,1H),4.90(m,1H),4.60(m,1H),3.81(s,3H),3.43(m,1H),3.08(m,2H),3.02(m,1H),2.21(m,1H),2.11(m,1H),2.08(s,3H)2.03(m,2H),1.85(m,1H),1.57(m,1H),1.42(m,1H),1.13(d,3H),0.74(m,1H)。
HRMS:C17H26NO6S(M+H)についての計測値372.1481、実測値372.1499。
【0181】
実施例4
3β−(N−アセチルL−システインエチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化24】
(EtOAc 100%)
収率:44%
H NMR(CDCl)δ6.59(d,1H),4.86(dd,1H),4.59(t,1H),4.25(m,2H),3.41(m,1H),3.08(m,2H),3.00(m,1H),2.20(m,1H),2.10(m,1H),2.02(s,3H),2.02(m,2H),1.85(m,1H),1.59(m,2H)1.32(t,3H),1.12(d,3H),0.73(m,1H)。
HRMS:C18H28NO6S(M+H)についての計測値386.1637、実測値386.1623。
【0182】
実施例5
3β−(N−ピバロイルL−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化25】
(ヘプタン/EtOAc 2:3)
収率:72%
H NMR(CDCl)δ6.52(d,1H),4.85(m,1H),4.59(m,1H),3.79(s,3H),3.47(m,1H),3.06(m,2H),2.99(m,1H),2.47(m,1H),2.19(m,1H),2.09(m,1H),2.01(m,2H),1.84(m,1H),1.57(m,1H),1.39(m,1H),1.18(d,3H),1.16(d,3H),1.11(d,3H),0.71(m,1H)。
HRMS:C19H30NO6S(M+H)についての計測値400.1794、実測値400.1780。
【0183】
実施例6
3β−(N−(tert−ブチルカルボネート)−L−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化26】
(ヘプタン/EtOAc 7:3)
収率:70%
H NMR(CDCl)δ5.48(d,1H),4.57(m,1H),4.56(d,1H),3.78(s,3H),3.37(m,1H),3.05(m,2H),3.01(m,1H),2.20(m,1H),2.09(m,1H),2.02(m,2H),1.82(m,1H),1.59(m,1H),1.44(s,9H),1.12(d,3H),0.73(m,1H)。
HRMS:C20H31NO7SNa (M+Na)についての計測値452.1719、実測値452.1736。
【0184】
実施例7
3β−(N−アセチルL−システインアミド)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化27】
(CHCl/MeOH 9:1+3%酢酸)
収率:65%
H NMR(CDCl)δ7.21(d,1H),4.82(m,1H),4.61(m,1H),3.43(m,1H),3.18(m,1H),3.10(m,1H),2.95(d,1H),2.19(m,1H),2.12(m,1H),2.01(m,2H),1.88(m,1H),1.64(m,1H),1.38(m,1H),1.11(d,3H),0.70(m,1H)。
【0185】
実施例8
3β−(エチルスルホネート)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトンナトリウム
【化28】
抽出により精製した。
収率:定量的
H NMR(CDOD)δ4.52(m,1H),3.40(m,1H),3.15(m,2H),3.03(d,1H),3.01(m,2H),2.20(m,1H),2.11(m,1H),1.98(m,2H),1.92(m,1H),1.63(m,1H),1.14(d,3H),0.64(m,1H)。
【0186】
実施例9
3β−(グルタチオン)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化29】
MeOH/HO 9:1でSephadexし、次いでCHCl/MeOH 1:1+3%酢酸でフラッシュした。
収率:62%
H NMR(CDOD+10%DO)δ4.64(m,1H),4.60(m,1H),3.92(s,2H),3.83(t,1H),3.42(m,1H),3.15(m,1H),2.98(m,1H),2.87(m,1H),2.55(m,2H),2.19(m,1H),2.15(m,1H),2.11(m,1H),1.99(m,2H),1.92(m,1H),1.65(m,1H),1.27(m,1H),1.22(d,3H),0.62(m,1H)。
【0187】
実施例10
3β−(N−アセチルL−システインi−プロピルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化30】
(EtOAc 100%)
収率:11%
H NMR(CDCl)δ6.52(d,1H),5.09(m1H),4.81(m,1H),4.59(m1H),3.45(m,1H),3.07(m,2H),3.04(m,1H),2.21(m,1H),2.08(s,3H),2.05(m,1H),2.02(m,2H),1.85(m,1H),1.59(m,1H),1.42(m,1H),1.31(d,3H),1.30(d,3H),1.13(d,3H),0.74(m,1H)。
【0188】
実施例11
3β−(N−アセチルL−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロ−7−フェニル−ガリエララクトン
【化31】
H NMR(CDCl)δ7.33(m,2H),7.31(m,2H),7.25(m,1H),6.62(d,1H),4.88(m,1H),4.64(d,1H),3.79(s,3H),3.53(m,1H),3.53(m,1H),3.12(m,1H),3.07(m,1H),3.01(m,1H),2.54(m,1H),2.26(m,1H),2.09(s,3H),1.99(m,1H),1.69(m,1H),1.61(1H,m),1.17(d,3H),0.82(m,1H)。
【0189】
実施例12
3β−(N−アセチル−L−ホモシステインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化32】
30mgのガリエララクトン(0.154mmol)を3mlのMeOHに溶解した。25mgのホモシステイン(0.17mmol)を加え、続いて2μlのTEA(0.015mmol)を加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去した。粗生成物を5mlのCH2Cl2に溶解し、27μlのTEA(0.289mmol)を加えた。溶液を15分間撹拌し、次いで0℃に冷却した。17μlの塩化アセチル(0.238mmol)を加え、反応混合物を0℃にて2.5時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、粗製物を2mlのMeOHに溶解した。溶液を0℃に冷却し、次いで30μlの塩化チオニルを加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、フラッシュクロマトグラフィー(100%EtOAc)により24mg(40%)の標題化合物を得た。
H NMR(CDCl)δ6.47(d,1H),4.68(m,1H),4.55(m,1H),3.74(s,3H),3.41(m,1H),2.96(m,1H),2.71(m,2H),2.18(m,1H),2.17(m,2H),2.10(m,2H),2.07(m,2H),2.00(s,3H),1.98(m,2H),1.87(m,1H),1.67(m,1H),1.36(m,1H),1.13(d,3H),0.69(m,1H)。
HRMS:C18H27NO6SNa(M+Na)についての計測値408.1457、実測値408.1454。
【0190】
【化33】
スキーム5
【0191】
N−(2−フルオロベンゾイル)−L−システインメチルエステル
300mgのL−システインメチルエステル塩酸塩(1.74mmol)を20mlのCH2Cl2に溶解する。0.25mlのTEA(2.61mmol)をN2下で加え、次いで溶液を0℃に冷却し、続いて0.23mlの2−フルオロベンゾイルクロリド(1.92mmol)を加える。反応混合物を一晩撹拌し、次いでNaHCO3(飽和)を加え、得られた混合物をEtOAcで3回抽出した。合わせた有機相をろ過し(Na2SO4)、揮発性物質を減圧下で除去する。粗生成物を次の工程に直接使用する。
【0192】
実施例13
3β−(N−(2−フルオロベンゾイル)−L−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化34】
20mgのガリエララクトン(0.103mmol)を2mlのMeOHに溶解した。60mgのN−(2−フルオロベンゾイル)−L−システインメチルエステル(0.257mmol)を加え、続いて2μlのTEA(0.015mmol)を加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EtOAc 7:3)により、31mg(67%)の標題化合物を得た。
H NMR(CDCl)δ8.04(m,1H),7.64(d,1H),7.51(m,1H),7.27(m,1H),7.15(m,1H),5.09(m,1H),4.57(m,1H),3.84(s,3H),3.45(m,1H),3.21(m,2H),3.03(m,1H),2.19(m,1H),2.09(m,1H),2.02(m,2H),1.81(m,1H),1.58(m,1H),1.41(m,1H),1.11(d,3H),0.72(m,1H)。
HRMS:C22H27FNO6S(M+H)についての計算値452.1543、実測値452.1520。
【0193】
【化35】
スキーム6
【0194】
3β−(N−(N−Boc−L−バリン)−L−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
1.5mlのMeOH中の138mgのN−Boc−バリン−システイン(0.411mmol)の溶液を1.5mlのMeOH中の20mgのガリエララクトン(0.103mmol)の溶液に加え、続いて4μlのTEA(0.03mmol)を加える。反応混合物を一晩撹拌し、次いで揮発性物質を減圧下で除去する。粗製物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EtOAc 7:3)により精製して32mgのBoc保護標題化合物を得る。
【0195】
実施例14
3β−(N−(L−バリン)−L−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン
【化36】
56mgの3β−(N−(N−Boc−L−バリン)−L−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトン(0.182mmol)を3mlのジエチルエーテルに溶解する。ジエチルエーテル中の1MのHCl4mlをゆっくり加える。24時間後、揮発性物質を除去し、残留物をCH2Cl2/Et2O 1:1に溶解する。溶液を氷浴で冷却し、形成した沈殿物を濾過により回収する。濾液をフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2 10%MeOH)により精製して30mg(74%)の標題生成物を得る。
HRMS:C20H33N2OS(M+H)についての計測値429.2059、実測値429.2067。
【0196】
【化37】
【0197】
実施例15
4α−フルオロ−ガリエララクトン
【化38】
イソ−ガリエララクトン
1.6g(10.30mmol)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)をCHCl中の500mg(2.57mmol)のガリエララクトンの溶液に加え、室温にて一晩撹拌した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EtOAc 7:3)により精製して450mgのイソ−ガリエララクトン(90%)を得た。
H NMR(CDCl)δ5.05(m,1H),4.78(m,1H),3.19(s,1H),2.85(m,1H),2.37(m,1H),2.21(m,1H),1.95(m,1H),1.90(m,1H),1.90(m,1H),1.76(s,1H),1.65(m,1H),1.42(m,1H)。
【0198】
4α−フルオロ−ガリエララクトン
イソ−ガリエララクトンをCHClに溶解し、1.5mmol(1.5当量)のN−フェニルセレニルフタルイミドを加え、続いて6mmol(6当量)のTEA−3HFを加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌し、ジエチルエーテルで希釈し、NaHCO(水溶液)で洗浄した。有機相を乾燥させ、減圧下で濃縮した。
【0199】
2mlのCHCl中の得られた粗セレニル化生成物(38mg、0.1mmol)の溶液に、N下で0℃にてH(12μL)を加え、3時間撹拌した。反応物を0℃にて2mlの飽和NaHCOでクエンチし、CHCl(5ml×3)で抽出し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EtOAc 7:3)により精製して、16mgの4α−フルオロ−ガリエララクトン(65%)を得た。
H NMR(CDCl)δ6.91(d,1H),4.86(d,1H),2.42(m,1H),2.29(m,1H),2.19(m,1H),2.14(m,1H),1.80(m,1H),1.75(m,1H),1.61(d,3H),1.60(m,1H)。
【0200】
実施例16
4α−フルオロ−3β−(N−アセチルL−システインメチルエステル)−2αβ,3−ジヒドロ−ガリエララクトン
【化39】
15mgの4α−フルオロ−ガリエララクトン(0.071mmol)を2mlのMeOHに溶解した。14mgのN−アセチル−L−システインメチルエステル(0.078mmol)を加え、続いて2μlのTEA(0.015mmol)を加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EtOAc 7:3)により、12mg(43%)の標題化合物を得た。
H NMR(CDCl)δ6.64,(d,1H),4.90(m,1H),4.65(m,1H),3.47(m,1H),3.43(m,1H),3.21(m,1H),3.12(m,1H),2.24(m,1H),2.07(s,3H),2.05(m,1H),1.96(m,1H),1.90(m,1H)1.83(m,1H),1.81(m,1H),1.80(m,1H),1.57(s,3H)。
【0201】
生物学的実施例
異なる形態のがんを治療、無効化、軽減、緩和および/または予防するために使用され得る三環系化合物の血漿曝露を増強させるためにプロドラッグとして本明細書の実施形態に定義される化合物の有用性を、マウスにおけるインビボ薬物動態(PK)研究において評価した。
【0202】
実施例17 薬物動態(PK)研究
試験物の用量を、50mMのクエン酸緩衝液(クエン酸/クエン酸ナトリウム)(pH4.0)中の5%DMSO中で0.5mg/mLの薬物濃度に調製した。
【0203】
経口用量を20mL/kg(10mg/kg)の体積で24匹のマウスの群に投与し、投与後8時間まで、死に至るバルビツール酸麻酔下で8回の時点にて血液試料を採取した(1回の時点につきn=3のマウス)。
【0204】
採取後、実施可能になるとすぐに、血液試料を、抗凝固剤としてEDTAを含有する管に移し、試料を遠心分離して血漿を得、それを即座に凍結して分析を待った。血液採取後、可能な将来の分析のために脳を全ての動物から除去し、液体窒素に浸すことによって即座に凍結した。LC−MS/MSを使用して全ての試料を分析した。
【0205】
血漿試料分析
血漿タンパク質を沈殿させ、分析的内部標準(レセルピン)を含有する3容積のアセトニトリルを加えることによって化合物を抽出した。Sorvall bench遠心分離機において3452gにて30分間試料を遠心分離し、上清画分をMS分析のために除去した。
【0206】
活性化合物、例えばガリエララクトンの定量化を、対照マウス血漿において作成した較正線から外挿により行い、実験試料および対照マウス血漿において調製した品質管理(QC)試料と同時に分析した。化合物がマウス血漿に不安定である場合、血漿試料中で見られる信号との定性的MS比較のために較正線を水中で構築した。
【0207】
薬物動態分析
各時点においてn=3のマウスから平均データを使用して試験物の薬物動態パラメーターを決定した。Summit Research Services製のソフトウェアパッケージPK Solutions 2.0を使用してノンコンパートメント分析を実施した。台形法によりAUC値を算出した。
【0208】
用語の定義:
AUC 0−t:0分から最後の定量可能なデータ点までの血漿薬物濃度/時間曲線下面積
AUC 0−∞:外挿された0分から無限大までの曲線下面積
GL:ガリエララクトン
【0209】
【表1】
【0210】
表1から理解できるように、特許請求の範囲によって定義されたプロドラッグ化合物の経口投与は、ガリエララクトン自体の経口投与と比較してガリエララクトンの経時的血漿曝露(AUC)を増加させる。3β−(N−ピロリジン)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトンによって例示されるアミン付加物はAUCを増加させないことは注目すべきである。
【0211】
実施例18 リン酸緩衝生理食塩水中での化学安定性
試験化合物の化学安定性を96ウェルプレートフォーマットにおいて決定した。DMSOストック溶液中の化合物を、必要なマトリクス(0.1Mのリン酸緩衝生理食塩水)中で10μM(2%のDMSO最終)の濃度に希釈し(n=2)、オービタルシェーカーで室温にて混合し、試験のために2および4時間にアリコートを取り除いた。分析的内部標準を含有するDMSOをアリコートに加え、ボルテックスにより混合し、LC−MS/MSにより即座に分析した。等価のT=0試料も含み、指定時刻のアリコートおよびT=0試料の連続注射を可能にするために試料調製物を配置した。
【0212】
T=0試料(内部標準のために正規化した)のものに対して各試料中のMS反応からの残存化合物の量(%として表す)を決定した。
【0213】
残存%のLnプロットを使用して、以下の関係:
1/2(分)=−0.693/λ(式中、λはLn濃度対時間曲線の傾きである)
から化合物消失の半減期を決定した。
【0214】
【表2】
【0215】
表2から理解され得るように、システインおよびガリエララクトンならびにシステインMe−エステルおよびガリエララクトンの付加物はPBS緩衝液中で低い安定性を有した(t1/2<30分)。これはピロリジン付加物3β−(N−ピロリジン)−2αβ,3−ジヒドロガリエララクトンの低い安定性に匹敵し、それは経口投与後、ガリエララクトンのインビボ血漿曝露においていかなる改善も与えなかった(表1を参照のこと)。したがって、低い化学安定性を有するこれらの付加物は効果的なプロドラッグとして機能しない。反対に、特許請求の範囲によって規定される化合物は著しく増加した化学安定性を有し、それはインビボ血漿曝露におけるそれらの改善と十分に相関する(表1を参照のこと)。したがってそれらはプロドラッグとして効果的である。
【0216】
実施例19 実施例15(4α−フルオロ−ガリエララクトン)の抗増殖活性
WST−1細胞増殖アッセイ
ガリエララクトンと比較した実施例15の機能活性を、DU145、PC−3、LNCaPまたはIL−6刺激LNCaPにおいてWST−1増殖アッセイ(J.Biol.Chem.2014、289:15969−15978)を使用して評価した。細胞を96ウェルプレート(200μlの培地中に2000細胞/ウェル)において培養し、24時間静置した。細胞を10μMの4α−フルオロ−ガリエララクトンまたはガリエララクトンで72時間処理した。試料を3連で作製した。20μlのWST−1溶液(Roche Applied Science)をウェルごとに加え、37℃にて4時間インキュベートした。スキャニングマルチウェル分光光度計、450nmの波長および690nmの参照波長にてELISAリーダーを使用して各ウェルの吸光度を測定した。以下の表3に示した結果は未処理の対照細胞のパーセントとして提示する。
【0217】
前立腺がん細胞におけるpSTAT3のウェスタンブロット分析
試料を7.5%のプレキャストゲル(Mini−PROTEAN TGX;Bio−Rad)または8%のTris Bisセルフキャストゲル上で分離した。ゲルをPVDF膜上にブロットし、5%ミルクまたは5%BSAで遮断した。膜を、室温にて1時間、5%ミルクもしくは5%BSA中で希釈した一次抗体、または4℃にて一晩、STAT3、pSTAT3 tyr−705もしくはpSTAT3 ser−727(Cell Signaling Technology)に対して産生させた抗体とインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE Healthcare Life Sciences)と結合した二次抗体マウスまたは抗ウサギ抗体とのインキュベーション後、膜を改良された化学発光試薬(Santa Cruz BiotechnologyまたはMillipore)で処理し、続いてX線フィルムに曝露したか、またはChemidoc XRSシステム(Bio−Rad)を使用して可視化した。
【0218】
【表3】
【0219】
表3はpSTAT3陰性細胞株PC3の増殖を示し、LNCaPはガリエララクトンより4α−フルオロ−ガリエララクトンによる影響をほとんど受けていない(両方10μM)。他方で、pSTAT3陽性細胞は4α−フルオロ−ガリエララクトンおよびガリエララクトンと同等に感受性がある。これは、4α−フルオロ−ガリエララクトンが、ガリエララクトンよりSTAT3に対して顕著に選択的であることを示す。