(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562946
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ガス案内装置を備える真空チャンバのガス分配装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
C23C14/34 M
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-561752(P2016-561752)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公表番号】特表2017-510712(P2017-510712A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】EP2015057115
(87)【国際公開番号】WO2015155078
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2016年12月6日
(31)【優先権主張番号】102014105080.0
(32)【優先日】2014年4月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502239900
【氏名又は名称】ビューラー アルツェナウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Buehler Alzenau GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ドゥッゲン
【審査官】
若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−221069(JP,A)
【文献】
特開平01−104768(JP,A)
【文献】
特開平08−176810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ(10)のガス分配装置であって、
前記ガス分配装置は、ガス案内装置を備え、前記ガス案内装置は、少なくとも1つの主通路(25)を有し、前記主通路(25)は、ノズル(27)を有し、前記ノズル(27)からガスが、前記真空チャンバ(10)内に分配可能であり、さらに
前記ガス分配装置は、ガス供給装置を備え、前記ガス供給装置により前記ガス案内装置に、ガスが供給可能であり、
前記少なくとも1つの主通路(25)は、中空形材としてワンピースに形成される構成部材(20)から形成されており、前記中空形材としてワンピースに形成される構成部材(20)により、前記ガス供給装置の少なくとも1つの主ガス供給通路(25a)及び少なくとも1つのチューニングガスを前記真空チャンバ(10)内に分配可能なチューニング通路ノズル(37,37’)を有する少なくとも1つのチューニング通路(30)も形成されている、
ガス分配装置において、
前記構成部材(20)は、連続鋳造形材として形成されている、
ことを特徴とするガス分配装置。
【請求項2】
前記中空形材としてワンピースに形成される構成部材(20)により、少なくとも1つのチューニングガス供給通路(30a,...,30e)も形成されている、請求項1に記載の、ガス案内装置を備える真空チャンバ(10)のガス分配装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのチューニング通路(30)は、通路長手延在方向に沿って相前後して配置される複数のチャンバ状のセグメント(60,60’)を有する、請求項1又は2に記載のガス分配装置。
【請求項4】
少なくとも2つの連続するセグメント(60,60’)は、1つの共通の横方向隔壁(70)を有する、請求項3に記載のガス分配装置。
【請求項5】
各セグメント(60,60’)に少なくとも1つのチューニングガス供給通路(30a,...,30e)を介してチューニングガスが別々に供給されるか、又は供給可能である、請求項3又は4に記載のガス分配装置。
【請求項6】
主通路(25)及びチューニング通路(30)は、1つの共通の長手方向隔壁(32)を有する、請求項2から5までの少なくとも1項に記載のガス分配装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの主ガス供給通路(25a)は、主通路壁(26a)の外側領域に配置されている、請求項2から6までの少なくとも1項に記載のガス分配装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのチューニングガス供給通路(30a,...,30e)は、チューニング通路壁(31a)の外側領域に配置されている、請求項7に記載のガス分配装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの主ガス供給通路(25a)は、前記主通路壁(26a)内に設けられた少なくとも1つの供給開口(28)を介して前記主通路(25)に接続されている、請求項8に記載のガス分配装置。
【請求項10】
前記供給開口(28)は、前記主ガス供給通路(25a)を貫いて前記主通路の内側領域(26)内まで通される横方向孔として形成されており、前記横方向孔は、前記主ガス供給通路(25a)の壁内の、前記主通路(25)には通じない領域で閉鎖されている、請求項9に記載のガス分配装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのチューニングガス供給通路(30a,...,30e)は、前記チューニング通路壁(31a)内に設けられた少なくとも1つの供給開口(38)を介して前記チューニング通路(30)に接続されている、請求項10に記載のガス分配装置。
【請求項12】
前記供給開口(38)は、前記チューニングガス供給通路(30a,...,30e)を貫いて前記チューニング通路(30)の内側領域(31)内まで通される横方向孔として形成されており、前記横方向孔は、前記チューニングガス供給通路(30a,...,30e)の壁内の、前記チューニング通路(30)には通じない領域で閉鎖されている、請求項11に記載のガス分配装置。
【請求項13】
前記主通路(25)の前記内側領域(26)及び/又は前記チューニング通路(30)の前記内側領域(31)は、長方形の横断面を有する、請求項12に記載のガス分配装置。
【請求項14】
前記ガス案内装置は、前記真空チャンバ(10)の内側領域(11)に割り当てられている領域と、前記真空チャンバ(10)のチャンバ壁(15)に割り当てられている領域とを有し、
少なくとも1つの第1のチューニングガス供給通路(30a,...,30e)が、前記真空チャンバ(10)の前記内側領域(11)に割り当てられている領域内に配置されており、少なくとも1つの第2のチューニングガス供給通路(30a,...,30e)が、前記真空チャンバ(10)の前記チャンバ壁(15)に割り当てられている領域内に配置されている、
請求項2から13までのいずれか1項に記載のガス分配装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念部に記載の、ガス案内装置を備える真空チャンバのガス分配装置に係り、特に、陰極スパッタリング法を用いて基板上に薄膜を被着する装置の真空チャンバのガス分配装置に関する。
【0002】
従来技術
欧州特許第0444253号明細書(EP 0 444 253 B1)において、真空チャンバ内で陰極スパッタリング法を用いて基板上に薄膜を被着する装置が公知であり、コーティングすべき基板は、真空チャンバを通して移動可能である。スパッタリングすべき陰極と陽極との間には、スクリーンが配置されており、基板平面は、陽極の下を延びている。陰極平面に対して平行に、かつ陰極と陽極との間の領域に、複数の通路が設けられている中空形材(Hohlprofil)が設けられており、中空形材は、真空チャンバの壁により保持されており、調温媒体及びプロセスガスが貫流している。その際、プロセスガスのための通路は、開口を有しており、開口は、この通路の長手方向軸線に対して横方向に延びており、真空チャンバ内へのプロセスガスの流出を実現する。
【0003】
調温媒体も、プロセスガスも、ワンピース(einstueckig)に中空形材として形成される構成部材により形成されている通路内を案内され、ガスの流出のための開口は、通路の長手方向軸線に対して横方向に延びている。装置は、丸み付けられた角を有する長方形の横断面を特徴とする中空形材を有している。この形材は、良好にアクセス可能な明確なコンタクト箇所を有し、真空チャンバ外での調温媒体及びプロセスガスの接続を可能にする。
【0004】
発明の開示
本発明の課題は、単純かつ安価な構成でありながら、真空チャンバ内におけるガスの改善された分配、とりわけ動作信頼性の高い分配を実現する、真空チャンバのガス分配装置を提供することである。
【0005】
上記課題は、独立請求項の特徴により解決される。本発明の有利な構成及び利点は、その他の請求項、明細書及び図面から看取可能である。
【0006】
本発明は、本発明の一態様において、真空チャンバのガス分配装置であって、ガス分配装置は、ガス案内装置を備え、ガス案内装置は、少なくとも1つのガス案内通路を有し、ガス案内通路は、ノズルを有し、ノズルからガスが、真空チャンバ内に分配可能であり、さらにガス分配装置は、ガス供給装置を備え、ガス供給装置によりガス案内装置に、ガスが供給可能であり、少なくとも1つのガス案内通路は、中空形材としてワンピースに形成される構成部材から形成されている、ガス分配装置から出発する。真空チャンバは、基板上に薄膜を被着するように形成され、整えられている。中空形材として形成される構成部材が複数設けられている実施の形態も、本発明に包含されることは、自明である。
【0007】
中空形材としてワンピースに形成される構成部材により、ガス供給装置の少なくとも1つのガス供給通路(従来技術ではガス導管ともいう)も形成されていることを提案する。このような中空形材は、例えば安価に連続鋳造形材(Stranggussprofil)として、例えばアルミニウムから製造可能である。それゆえ、少なくとも1つのガス供給通路は、連続鋳造形材の構成部分であるか、あるいは連続鋳造形材は、少なくとも1つのガス供給通路を包含している。複数のガス供給通路あるいはガス導管も、連続鋳造形材の構成部分であってよいことは、自明である。
【0008】
而して、ガス分配装置の本発明による解決手段は、ガス分配装置、特に真空チャンバ内での陰極スパッタリング法を用いた薄い基板のコーティングに用いられるガス分配装置の単純化及び改良を実現する。ガス分配装置は、様々な機能部材、ガス案内通路及びガス供給装置を1つの特別な構成部材に統合することを可能にする。中空形材、特にアルミニウム中空形材の横断面の好適な選択により、ガス分配装置は、簡単に製造可能である。而して、経済性の理由からのガス分配装置の最適化が可能である。必要な構成部材の数は、大幅に削減可能であり、真空チャンバ内におけるコーティング装置の比較的短い組み立て時間が可能である。
【0009】
而して、ガス分配装置の本発明による解決手段は、例えばガス媒体の供給及び戻し並びにプロセスガスの供給が、それぞれ、別体のマルチピース(mehrstueckig)の管路あるいはガス導管を介して実施され、これにより動作障害を起こしやすく、製造及びメンテナンスに手間を要するという欠点を回避する。すなわち、このような管路は、屈曲部、巻回部、ねじ結合部及びろう接箇所を有し、これらは、装置の作動条件下において真空中にあり、このことは、プロセスに起因した熱の付加的な影響により、管路内のヘアクラック及び不密性に至る虞がある。この不密性(漏れ)は、当初は、陰極スパッタリングプロセス(スパッタ)又は化学気相蒸着(CVD法)の際に、基板上に被着すべき膜の膜品質、例えば付着性を損ね、続いて、不可避的に設備全体を完全故障へと至らしめる虞がある。設備全体の完全故障は、決まってかなりの手間及び大きなコストにつながってしまう。
【0010】
本発明の別の有利な態様では、ガス案内装置を備える真空チャンバのガス分配装置が、主ガスを真空チャンバ内に分配可能な主通路ノズルを有する少なくとも1つの主通路と、少なくとも1つのチューニングガスを真空チャンバ内に分配可能なチューニング通路ノズルを有する少なくとも1つのチューニング通路とを有していてもよい。真空チャンバは、基板上に薄膜を被着するように形成され、整えられている。
【0011】
さらにガス分配装置は、主通路に主ガスを供給可能な少なくとも1つの主ガス供給通路(主ガス・ガス導管)と、チューニング通路にチューニングガスを供給可能な少なくとも1つのチューニングガス供給通路とを有するガス供給装置を備えて形成されていてもよい。さらに、少なくとも1つの主通路は、中空形材としてワンピースに形成される構成部材から形成されていることができる。このような中空形材は、例えば連続鋳造形材として例えばアルミニウムから有利に製造可能である。この場合、有利には、中空形材あるいは連続鋳造形材としてワンピースに形成される構成部材により、少なくとも1つの主ガス供給通路及び/又は少なくとも1つのチューニングガス供給通路も形成されていていることができる。この場合、いわゆる主ガスとして、陰極スパッタリングプロセスのための重要なプロセスガス、例えばアルゴン又は窒素が使用可能である。
【0012】
いわゆるチューニングガスとして、陰極スパッタリングプロセスにおいて薄い基板をコーティングするコーティング材料を形成するのに重要なガス、つまり、例えば化合物を形成する所定の元素が考えられる。また、別のガス、例えば陰極スパッタリングプラズマ中のイオンの運動エネルギを下げるために使用され得る付加的な希ガスが、ガス分配装置内のチューニングガスとして真空容器に供給されてもよい。
【0013】
而るに、有利には、中空形材、特に連続鋳造形材としてワンピースに形成される構成部材により、少なくとも1つのチューニング通路が形成されていてもよい。こうして、広範なガス分配装置が、製造面での高い柔軟性により特に経済的に実現される。本発明は、2つの中空形材、主通路のための第1の中空形材と、チューニング通路のための第2の中空形材とが使用される場合も包含する。
【0014】
有利な一形態において、少なくとも1つのチューニング通路は、通路長手延在方向に沿って相前後して配置される複数のチャンバ状のセグメントを有していてもよい。このような配置は、チューニングガスを真空チャンバの様々な領域に狙いを定めて送り込むことができ、これにより、基板のコーティング時にそれぞれ異なる箇所においてそれぞれ大きく異なるコーティング状況を実現できるという利点を提供する。而して、それぞれ異なる箇所においてそれぞれ異なるコーティングパラメータ又はそれどころかそれぞれ異なる材料を使用することができる。また、それぞれ異なる膜厚さ又はそれぞれ異なる膜特性も有利に達成可能である。膜分布に対する要求次第で、ガス分配装置は、より多数のセグメント用に構成されていてもよい。
【0015】
有利には、少なくとも2つの連続するセグメントは、1つの共通の横方向隔壁を有していてもよい。中空形材から製造されるチューニング通路のこのようなセグメントの形成は、中空形材に対して横方向にスリットをフライス加工し、好ましくはアルミニウムからなる仕切り要素、例えばセグメントプレートを嵌め込み(圧入し)、固定、あるいは溶接することで実施可能である。つまり、連続鋳造形材の場合、相応に連続鋳造形材にスリットが入れられる。こうして、2つのセグメントは、1つの共通の横方向隔壁を有して形成され得る。
【0016】
分割したセグメントの利点は、各セグメントに少なくとも1つのチューニングガス供給通路を介してチューニングガスを別々に供給できることにある。而して、チューニングガスとして、陰極スパッタリング法においてそれぞれ異なる化合物のために使用され得るそれぞれ異なるガス種が使用可能である。各セグメントのためのこの個別ガス調量は、構成部材が大面積に構成されるときのそれぞれ異なるコーティング要求又は例えばコーティングの全体構造においてそれぞれ異なる膜が連続するときのそれぞれ異なるコーティング要求を有する複雑な構成部材のために、コーティングプロセスを極めて柔軟に構成することを可能にする。
【0017】
有利には、主通路及びチューニング通路は、1つの共通の長手方向隔壁を有していてもよい。このような構成は、このような構成部材の極めて効率的、ひいては安価な製造を可能にし、構成部材は、これにより、複数の機能を1つのこのような構成部材に統合し、使用することができる。1つの構成部材におけるこのような構成は、コーティング設備内でのガス分配装置の簡略化された組み立てのための機械的な統合解決手段としても、極めて有利である。主通路及びチューニング通路が、別々の長手方向隔壁、つまり、例えば二重壁を有していてもよいことは、自明である。
【0018】
有利な一形態において、少なくとも1つの主ガス供給通路は、主通路壁の外側領域に配置されていてもよい。これにより、主ガス供給通路を、主通路と、場合によってはチューニング通路とを有している場合がある中空形材に効率的に統合し、1つの構成部材として製造することが可能である。こうして、主通路に対する機械的に安定な結合も、自ずと提供されており、このことは、他方、ガス分配装置の効率的な組み立てにとって大きな利点である。
【0019】
同様に有利には、少なくとも1つのチューニングガス供給通路が、チューニング通路壁の外側領域に配置されていてもよい。本形態でも、中空形材として有利に実現され得る一体(integral)の構成部材におけるチューニングガス供給通路とチューニング通路との、機械的に安定であると同時に、組み立て容易であるアッセンブリという同じ利点が成立する。
【0020】
有利な一形態において、少なくとも1つの主ガス供給通路は、主通路壁内に設けられた少なくとも1つの供給開口を介して主通路に接続されていてもよい。こうして、機械的な安定性及び持続的な密封性の要求に応える極めて単純かつ頑強な接続を提供することが可能である。
【0021】
而して、例えば、供給開口を、主ガス供給通路を貫いて主通路の内側領域内まで通される横方向孔として形成し、横方向孔は、主ガス供給通路の壁内の、主通路には通じない領域で閉鎖されているようにすることが可能である。このように形成すると、主ガス供給通路を主通路に接続する横方向孔を中空形材に対して垂直に構成し、続いて、主通路壁内の、外側領域に通じる孔を再び閉鎖することにより、主ガス供給通路と主通路との間の接続を極めて簡単かつ安価に形成することが可能となる。
【0022】
同様に、少なくとも1つのチューニングガス供給通路が、チューニング通路壁内に設けられた少なくとも1つの供給開口を介してチューニング通路に接続されていても、有利である。こうして、機械的な安定性及び持続的な密封性の要求に応える極めて単純かつ頑強な接続を提供することが可能である。
【0023】
この場合も、主ガス供給通路の場合と同様に、供給開口は、チューニングガス供給通路を貫いてチューニング通路の内側領域内まで通される横方向孔として形成されており、横方向孔は、チューニングガス供給通路の壁内の、チューニング通路には通じない領域で閉鎖されていてもよい。このように形成すると、チューニングガス供給通路をチューニング通路に接続する横方向孔を中空形材に対して垂直に構成し、続いて、チューニング通路壁内の、外側領域に通じる孔を再び閉鎖することにより、チューニングガス供給通路とチューニング通路との間の接続を極めて簡単かつ安価に形成することが可能となる。
【0024】
主通路の内側領域及び/又はチューニング通路の内側領域は、長方形の横断面を有すると、有利である。このような構成は、長方形の横断面が平らな面に有利に設置され、省スペースに組み付けられるので、有利な製造方法と、高い機械的な安定性及び組み立て容易性とを結び付けることを可能にする。主通路の内側領域及び/又はチューニング通路の内側領域が、別の横断面形状、例えば円形又は楕円形の横断面を有していてもよいことは、自明である。
【0025】
有利な一形態において、ガス案内装置は、真空チャンバの内側領域に割り当てられている領域と、真空チャンバのチャンバ壁に割り当てられている領域とを有し、少なくとも1つの第1のチューニングガス供給通路が、真空チャンバの内側領域に割り当てられている領域内に配置されており、少なくとも1つの第2のチューニングガス通路が、真空チャンバのチャンバ壁に割り当てられている領域内に配置されていてもよい。こうして、できる限り多くのチューニングガス供給通路が、1つのチューニング通路に接して格納される。さらに、チューニングガス供給通路を真空チャンバの内側領域内で直接使用することが有利な場合もあり、これにより、例えばチューニングガス供給通路から直接、チューニングガスを真空チャンバ内に送給することが可能である。チューニングガスを調温すべく、このチューニングガス供給通路を、真空チャンバの外壁に接続する領域に接して格納することが有利なこともあり、その結果、壁を介してチューニングガスの調温が実施可能である。
【0026】
その他の利点は、以下の図面を参照しながら行う説明から看取可能である。図面は、本発明の複数の実施例を示している。図面、明細書及び特許請求の範囲は、多数の特徴の組み合わせを含んでいる。当業者は、これらの特徴を目的に応じて個別に観察し、意義ある別の組み合わせに組み換えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】主通路及びチューニング通路を備え、真空チャンバの一部分内に配置されている本発明の一実施例に係るガス分配装置の横断面図である。
【
図2】2つの中空形材からなり、供給通路が供給ラインを介して接続されている本発明の一実施例に係るガス分配装置の等角投影図である。
【0028】
発明の実施の形態
図中、同一又は同種の構成要素には、同一の符号を付した。図は、例示にすぎず、限定的に解すべきものではない。
【0029】
図1は、主通路及びチューニング通路を備え、真空チャンバ10の一部分内に配置されている本発明の一実施例に係るガス分配装置の横断面図である。ガス案内装置を備える真空チャンバ10のガス分配装置は、ガス案内通路として、主ガスを真空チャンバ10内に分配可能な主通路ノズル27を有する主通路25と、少なくとも1つのチューニングガスを真空チャンバ10内に分配可能なチューニング通路ノズル37,37’を有するチューニング通路30とを備えている。さらにガス分配装置は、主通路25に主ガスを供給可能な主ガス供給通路25aと、チューニング通路30にチューニングガスを供給可能なチューニングガス供給通路30a,30b,30c,30d,30eとを有するガス供給装置を備えている。主通路25は、中空形材としてワンピースに形成される構成部材20から形成されており、中空形材としてワンピースに形成される構成部材20から、主ガス供給通路25a及びチューニングガス供給通路30a,30b,30c,30d,30eも形成されている。構成部材20は、好ましくは連続鋳造形材として形成されている。中空形材として形成される構成部材20により、チューニング通路30も形成されている。主通路25とチューニング通路30とは、直接上下に配置されているので、1つの共通の長手方向隔壁32を有している。主ガス供給通路25aは、主通路壁26aの外側領域に配置されており、真空チャンバ10のチャンバ壁15に当接している。チューニングガス供給通路30a,30b,30cも同様に、チューニング通路壁31aの外側領域に配置されており、同様に、チャンバ壁15に当接している。別の実施の形態では、主ガス供給通路及び/又はチューニングガス供給通路は、チャンバ壁に当接していない。
【0030】
主通路25の内側領域26及びチューニング通路30の内側領域31は、長方形の横断面を有している。ガス案内装置は、真空チャンバ10の内側領域11に割り当てられている領域と、真空チャンバ10のチャンバ壁15に割り当てられている領域とを有している。この場合、チューニングガス供給通路30d,30eは、真空チャンバ10の内側領域11に割り当てられている領域内に配置されており、チューニングガス供給通路30a,30b,30cは、真空チャンバ10のチャンバ壁15に割り当てられている領域内に配置されている。
【0031】
主ガス供給通路25aは、主通路壁26a内に設けられた少なくとも1つの供給開口28又は複数の供給開口28を介して主通路25に接続されており、供給開口28は、主ガス供給通路25aを貫いて主通路の内側領域26内まで通される横方向孔として形成されており、横方向孔は、主ガス供給通路25aの壁内の、主通路25には通じない領域で閉鎖されている。チューニングガス供給通路30a,30b,30c,30d,30eも同様に、チューニング通路壁31a内に設けられた少なくとも1つの供給開口38又は複数の供給開口38を介してチューニング通路30に接続されており、供給開口38は、チューニングガス供給通路30a,30b,30c,30d,30eを貫いてチューニング通路30の内側領域31内まで通される横方向孔として形成されており、横方向孔は、チューニングガス供給通路30a,30b,30c,30d,30eの壁内の、チューニング通路30には通じない領域で閉鎖されている。
図1の図平面内には、チューニングガス供給通路30bの供給開口38が示されている。その他のチューニングガス供給通路30a,30c,30d,30eの供給開口は、ガス分配装置の別の図平面内にある。
【0032】
チャンバ壁15に対して垂直にかつチューニング通路30の下面に当接して、ガイド板21が配置されている。ガイド板21は、ガスが主通路25及びチューニング通路30から真空チャンバ10内へ流出する際にガスを好適に流動させ得る。
図1の図平面内には、主通路25の壁内に、真空チャンバ10の内側領域11へ通じるように設けられた、主ガスを真空チャンバ10内に流入させ得る1つの主通路ノズル27と、チューニングガスを真空チャンバ10内に流入させ得る1つのチューニング通路ノズル37とが示されている。主ガスを真空チャンバ10内に流入させ得る別の主通路ノズル27及びチューニングガスを真空チャンバ10内に流入させ得る別のチューニング通路ノズル37は、別の平面内にある。
【0033】
図2は、2つの中空形材の形態のワンピースの構成部材20,20aからなる本発明の一実施例に係るガス分配装置の等角投影図であり、そのガス供給通路25a,30a,30b,30c,30d,30eは、供給ライン40を介して接続されている。供給ライン40は、真空フィードスルー41を介して真空チャンバ10(図示せず)に接続され、ガス分配装置の両構成部材20,20aの両主通路25及びチューニング通路30に並列供給する。ガス分配装置のチューニング通路30は、相前後して配置される複数のチャンバ状のセグメント60,60’を有し、2つの連続するセグメント60,60’は、1つの共通の横方向隔壁70あるいは1つのセグメントプレートを有している。
【0034】
チューニング通路30を個々のセグメント60,60’に分割した利点は、各々のセグメント60,60’に少なくとも1つのチューニングガス供給通路30a,30b,30c,30d,30eを介してチューニングガスを別々に供給できることにある。このような配置は、チューニングガスを真空チャンバ10の様々な領域に狙いを定めて送り込むことができ、これにより、基板のコーティング時にそれぞれ異なる箇所においてそれぞれ大きく異なるコーティング状況を実現できるという利点を提供する。而して、それぞれ異なる箇所においてそれぞれ異なるコーティングパラメータ又はそれどころかそれぞれ異なる材料を使用することができる。また、それぞれ異なる膜厚さ又はそれぞれ異なる膜特性も有利に達成可能である。膜分布に対する要求次第で、ガス分配装置は、より多数のセグメント用に構成されていてもよい。而して、チューニングガスとして、陰極スパッタリングリング法においてそれぞれ異なる化合物のために使用され得るそれぞれ異なるガス種が使用可能である。各セグメント60,60’のためのこの個別ガス調量は、構成部材が大面積に構成されるときのそれぞれ異なるコーティング要求又は例えばコーティングの全体構造においてそれぞれ異なる膜が連続するときのそれぞれ異なるコーティング要求を有する複雑な構成部材のために、コーティングプロセスを極めて柔軟に構成することを可能にする。
【0035】
その際、真空チャンバ内でのガス案内は、ガイド板21及び36により好適に構成され得る。主ガスは、主通路25から主通路ノズル27を介して、チューニングガスは、チューニング通路30からチューニング通路ノズル37を介して、真空チャンバ10内に流入可能であり、ガイド板21及び36を介して真空中でも好適にガイド可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 真空チャンバ
11 真空チャンバの内側領域
15 チャンバ壁
20 構成部材
20a 構成部材
21 ガイド板
25 主通路
25a 主ガス供給通路
26 主通路の内側領域
26a 主通路壁
27 ノズル
28 供給開口
30 チューニング通路
30a チューニングガス供給通路
30b チューニングガス供給通路
30c チューニングガス供給通路
30d チューニングガス供給通路
30e チューニングガス供給通路
31 チューニング通路の内側領域
31a チューニング通路壁
32 長手方向隔壁
36 ガイド板
37 ノズル
37’ ノズル
38 供給開口
40 供給ライン
41 真空フィードスルー
60 セグメント
60’ セグメント
70 横方向隔壁、セグメントプレート