【実施例】
【0081】
<実施例1>
NT−Lys6による活性化NT(1−13)−AG薬剤の合成
第1ステップにおいて、完全サイズのニューロテンシン:pELYENKPRRPYIL−OH(NT)を、本発明者らが開発した種々の活性化基(AG)にカップリングさせた。目的は、AG/NTの最適な組み合わせを選択することであった。このような分子を合成するために、ニューロテンシン配列中のリシン6側鎖のアミン反応性を利用した。市販のスルホ−EMCS(N−ε−マレイミドカプロイル−オキシスルホコハク酸イミドエステル)を、そのコハク酸イミドエステル部位を介してリシン6にカップリングさせた。精製後、官能化ニューロテンシン(NT−EMCS)を、異なるチオール化AGにコンジュゲートした。
【0082】
したがって、最終的に所望のコンジュゲートを達成するために、3つのステップ(2つの官能化成分、NT−EMCS及びチオール化AG、の合成、並びにこれらの結合)を行った。これらのステップを以下に図示する。
【0083】
【化1】
【0084】
(分析及び精製方法)
反応の進行及び精製のモニタリングは、C18 Kinetex(商標)カラム(5μm、150mm×4.6mm)を備えたDionex UltiMate(登録商標)3000システムにて行った。検出は214nmで行った。溶出系は、H
2O/0.1%TFA(溶液A)及びMeCN/0.1%TFA(溶液B)であった。流速は、4分間で溶液Bを0〜100%の濃度勾配として、2mL/minであった。
【0085】
粗生成物を、C18 Luna(商標)カラム(5μm、100mm×21.2mm)を備えたDionex UltiMate(登録商標)3000システムのRP−HPLCにて精製した。検出は214nmで行った。溶出系は、H
2O/0.1%TFA(溶液A)及びMeCN/0.1%TFA(溶液B)であった。流速は20mL/minであった。
【0086】
1.NT−EMCSの合成
完全サイズのNTをBiochem AG社から購入し、スルホ−EMCS(N−ε−マレイミドカプロイル−オキシスルホコハク酸イミドエステル)をThermo Scientific社(Pierce Biotechnology)から購入した。
【0087】
スルホ−EMCSの溶液(9.2mg、15μmol、1mLのPBS(4倍)において1当量、pH=7.4)を、NTの溶液(25mg、15μmol、1.25mLのPBS(4倍)において1当量、pH=7.4)に加え、官能化NT−EMCSを調製した。反応混合物を室温で撹拌した。反応のモニタリングは、分析RP−HPLCで行った。一晩撹拌した後、30分間で溶液Bを21〜30%の濃度勾配として、粗混合物を調製RP−HPLCで精製した。純度95%を超えるフラクションを回収し、凍結乾燥して、精製白色粉末を得た(m=21mg、収量=75%、純度>95%)。質量を、MALDI−TOF MS分析で確認した(m/z [M+H]
+、計算値=1865.98、実測値=1865.97)。
【0088】
2.チオール化AGの合成
官能化NTのマレイミド部位へのAGコンジュゲートのために、チオール反応基を、候補AG各々に導入した。
【0089】
(ペプチド:Pr−cMaa1RLRaa2aa3−G−OHの合成)
ペプチド固相合成(SPPS)法により、Liberty(商標)(CEM)マイクロ波シンセサイザーで、Fmoc/tBuストラテジーと、Iris Biotech社から購入したFmoc−Gly−Wang樹脂(100〜200メッシュ、1%DVB、ローディング0.7mmol/g)とを用いて、ペプチド:Pr−cMaa1RLRaa2aa3−G−OHを合成した。このような樹脂によって、その側鎖及びC末端において完全に脱保護されているペプチドが合成される。
【0090】
N−α−Fmoc−保護アミノ酸を、標準的な直交側鎖保護で選択した。該N−α−Fmoc−保護アミノ酸は、Fmoc−Cys(Trt)−OH(D型又はL型)、Fmoc−Pen(Trt)−OH(D型又はL型)、Fmoc−Met−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Pip−OH、Fmoc−Thz−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Gly−OH、及びFmoc−Sar−OHである。これらは全て、Iris Biotechから購入した。ピペリジン、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、エタンジチオール(EDT)、トリイソプロピルシラン(TIS)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、及び1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−β]ピリジニウム−3−オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)も同様に、Iris Biotechから購入した。ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)及びプロピオン酸無水物(Pr
2O)は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0091】
aa/DIEA/HBTU=4/4/8(当量、樹脂に対して)を0.25mmolスケール合成で、及び、aa/DIEA/HBTU=5/5/10(当量、樹脂に対して)を0.1mmolスケール合成で用い、n+1アミノ酸の酸官能のマイクロ波活性化によって、アミノ酸をカップリングさせた。カップリング時間は10分間に調整した。aa1導入後のメチオニン及びシステインの組み込みには、ダブルカップリングが必要であった。このようにカップリングされた新規アミノ酸のFmoc基の脱保護は、20%ピペリジンのDMF溶液を用いて行った。ペプチド伸長の間にカップリングされた最終アミノ酸を、50%プロピオン酸無水物又は酢酸無水物のDCM溶液を用いて、プロピオニル化又はアセチル化した。N末端カップリングの目的は、合成したネオペプチドを安定化させることであり、また、例えばC末端位置での共有結合の間の二次反応のリスクを軽減することである。トリチウム標識したプロピオニルコハク酸イミドエステルを用いてN末端アミノ基で時折標識されている、いくつかの放射能標識ペプチドのものと似たN末端化学構造を維持するために、アセチル部位よりもプロピオニル部位を選んだ。それから、TFA/TIS/H
2O/EDT=94/2/2/2の溶液を用い、少なくとも2時間に渡って室温(RT)で、樹脂結合ペプチドを切断した。樹脂1gにつき、最少15mLの切断溶液を用いた。次いで、粗ペプチドを、氷冷エーテルを用いて沈殿させ、3000rpmで8分間遠心分離し、H
2O/0.1%TFA中で凍結乾燥させた。得られた白色固体を、さらなる精製なしで次のステップに供した。
【0092】
(ペプチド:Pr−cMaa1RLRaa2aa3−G−OHの環化)
2つの適した保護CysもしくはPen(L型又はD型)の2つのチオール官能からの分子内環化により、ジスルフィド架橋が得られた。AcOH、K
3[Fe(CN)
6]、及び炭酸アンモニウムは、Sigma−Aldrich社から購入した。粗Pr−cMaa1RLRaa2aa3−G−OHペプチドを、0.5%AcOHに溶解させ、0.5mg/mLの最終濃縮物を得た。炭酸アンモニウム(2N)をペプチド溶液に添加し、塩基性pH8〜9に到達させた。次いで、K
3[Fe(CN)
6](0.01N)を、明るい持続的な黄色となるまで反応混合物に添加した。反応のモニタリングは、分析RP−HPLCにて行った。通常、反応は30分未満で定量的であった。反応混合物を0.45μmの膜で濾過し、調製RP−HPLCで精製した。純度95%を超えるフラクションを回収し、凍結乾燥して、精製白色粉末を得た(最終純度>95%)。詳細な濃度勾配、収量、及び質量分析を以下の表に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
(環化Pr−cMaa1RLRaa2aa3−G−OHペプチド上でのシステアミンカップリング)
2−トリチルチオ−1−エチルアミンヒドロクロリド(Trt−システアミン)はIris Biotech社から購入した。他の成分は前記のとおりである。Trt−システアミン(2当量)、DIEA(4当量)、及び遊離C末端(1当量)を含む環化ペプチドの溶液を、無水DMF(ペプチドに対して0.05M)中で調製した。PyBop(0.13Mの無水DMFにおいて1.1当量)を最終的に混合物に添加した。出発ペプチドの完全な消失が示された2分後、HPLCモニタリングと程なくして、反応の完了に到達した。DMFを真空下で蒸発させ、薄黄色油を得た。トリチルチオール保護を除去するために、DCM/TIS/TFA=3/1/1の溶液を添加した(出発ペプチドの約0.5mL/mg)。反応混合物を室温で撹拌した。反応のモニタリングは、分析RP−HPLCにて行った。次いで、不活性ガスバブリングを用いてDCM及びTFAを蒸発させ、Et
2Oにより粗ペプチド沈殿物を得た。3000rpmで8分間遠心分離した後、粗ペプチドをH
2O/0.1%TFA中で凍結乾燥させ、調製RP−HPLCで精製した。純度95%を超えるフラクションを回収し、凍結乾燥して、精製白色粉末を得た(最終純度>95%)。詳細な濃度勾配、収量、及び質量分析を以下の表に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
3.チオール化AGへのNT−EMCSコンジュゲートによるNT(1−13)−AGの合成
チオール反応基を含むAGをPBS(1倍、1当量、0.003M、pH7.4)中で可溶化させ、NT−EMCS(1当量)に添加した。反応混合物を室温で撹拌した。NT−EMCSの可溶化は通常の超音波により進行した。反応のモニタリングは、分析RP−HPLCにて行った。反応が完了した後、粗生成物を調製RP−HPLCにて精製した。純度95%を超えるフラクションを回収し、凍結乾燥して、精製白色粉末を得た(最終純度>95%)。詳細な濃度勾配、収量、及び質量分析を以下の表に示す。
【0097】
【表7】
【0098】
<実施例2>
インビトロでの本発明の活性化NT薬剤の結合親和性
ニューロテンシンの主要な低体温効果は、NTR−1レセプターの活性化によって介在される。低体温効果等の生物活性を引き起こすために、ニューロテンシンコンジュゲートは、少なくとも生来のニューロテンシンのそれに似た親和性でNTR−1を結合するべきであり、これがすなわち、NT(1−13)である。
【0099】
ニューロテンシンコンジュゲートの結合親和性を、ヒト及びラット双方のニューロテンシンレセプタータイプ1(hNTR−1、rNTR−1)での競合結合アッセイを用いて評価した。hNTR−1用の強化細胞膜は、Perkin Elmer社から購入した。ラットNTR−1は、HEK 293細胞をラットNTSR1プラスミドコンストラクト(Origene社製(ロックビル、アメリカ))に導入することによって得られた。
【0100】
hNTR−1での活性化NT薬剤の結合親和性は、メーカー(Perkin Elmer社)の指示を僅かに変更してなされた。詳細には、安定してヒトNTR−1を発現するCHO細胞から調製された膜ホモジネートを用いて、最終濃度0.5μg/wellで、及び濃度3nMの放射性リガンド[
3H]−ニューロテンシン(比放射能99.8Ci.mmol
−1、Perkin−Elmer社製)で、NTR−1結合を測定した。放射性リガンドの特異結合を、0.81nMのK
D値と、膜たんぱく質1mgあたり34pmolのB
maxとで判定した。5μMのニューロテンシンの存在下、非特異結合が判定された。
【0101】
ラットニューロテンシンレセプタータイプ1(rNTR1)でのアッセイは、rNTR−1を発現するHEK 293細胞からの膜ホモジネートを用いて、最終濃度0.75μg/wellで行った。これらホモジネートでの放射性リガンドの特異結合を、0.93nMのK
D値と、膜たんぱく質1mgあたり2.5pmolのB
maxとで判定した。
【0102】
結合バッファー(50mMのTris−HCl、pH7.4、0.1%BSA)において、総反応容積100μLの96ウェルプレートで、各アッセイを行った。続いてアッセイを室温で24時間インキュベートした。各ウェルの内容物を、MicroBeta FilterMate−96 Harvester(Perkin−Elmer社製)を用いて、Unifliter(登録商標)−96、GF/C(登録商標)フィルター(Perkin−Elmer社製、25μLの0.5%ポリエチレンイミンにて予浸)にて急速に濾過した。次いで、各ウェルを、洗浄バッファー(10mMのTris−HCl、pH7.2)で5回濯いだ。各乾燥フィルターの放射活性(cpm)を、25μLのMicroScint(商標)−O(Perkin社製)を添加して測定し、TopCount NXT(商標) Microplate Scintillation and Luminescence Counter(Perkin−Elmer社製)を用いて定量化した。典型的に、特異結合は総結合の90%以上であった。投与−反応カーブを、KaleidaGraphを用いてプロットし、IC50値を決定した。アッセイは2回行った。チェン−プルソフ式を用いて、平均IC50値からKi値を決定した。
【0103】
【表8】
【0104】
これらの結果から、本発明の活性化分子は、ナノモル範囲で又はそれよりも小さくとも、NTR−1に対する非常に高い親和性を維持していることが分かる。実際、大抵の場合、AGにより、NTR−1に対する異なるNT薬剤の親和性が大幅に増大した。コンジュゲートによって、どちらかと言えばレセプター結合を逆に妨げることが予期されるので、このような結果は、顕著で、かつ予期されないものである。
【0105】
<実施例3>
インビボでの本発明の活性化NT薬剤の評価
ニューロテンシンの主要な薬理活性での本発明の活性化NT薬剤の薬効を、スイス(CD−1)マウスにおける低体温反応のモニタリングによって調べた(
図1)。8mg/kgのNTを静脈内注射(急速)した後、マウスは、直腸体温において、注射後15分で基準から−1℃の最大効果という、僅かではあるが重要な低下を示した。この効果は24mg/kgで増大し、注射後30分で−2.6℃の最大効果に到達した。これに反して、8mg/kgモル当量の投与量(NTモル当量8mg/kg)で、化合物I(活性化基として配列番号8の配列を含む、本発明の活性化NT薬剤)を静脈内注射すると、注射後15分で重要な効果を示し、注射後30分から60分の間で−3.7℃の最大効果に到達するといった、急速かつ大きな体温の低下が誘発された。その後、注射後3時間以内で基準温度に戻るまで、この薬理低体温は次第に減少した。実験中、これらのマウスにおいて悪寒は観察されなかった。
【0106】
化合物Iについての低投与レベルでの評価により、NTモル当量8mg/kgでのより強い効果はなく、NTモル当量0.5mg/kgの最少有効量(MED)、NTモル当量1.21mg/kgのED
50、及びNTモル当量4mg/kgで観測された約−4℃の最大効果という、投与量依存低体温効果が示された(
図2)。低投与レベルでの注射後15分から高投与レベルでの注射後30〜60分へと投与レベルが高くなるにつれて、最大効果に到達する時間が増大した。8mg/kgのMEDを示すNT単独と比較したとき、この活性化NT薬剤は、主要な低体温効果において16倍の増大を示した。
【0107】
次いで、本発明に係る別の活性化基(AG)を試験した。NTモル当量0.5mg/kgの同じ投与レベルでの化合物Iと比較したとき、例えば、活性化基として配列番号9の配列又は配列番号11の配列を含む活性化NT薬剤、すなわち、化合物II(NT−配列番号9)及び化合物IV(NT−配列番号11)は、マウスにおいて、注射後30分で各々−4.1℃及び−3.4℃の最大効果という、より一層大きな低体温反応を引き起こした(
図3)。化合物IIをさらなる調査に用いた。
【0108】
化合物IIの投与−反応関係性の評価により、NT単独の場合よりも80倍低い、NTモル当量0.1mg/kgのMED、及びNTモル当量1.25mg/kgのED
50が示された(
図4)。高投与レベルで、化合物IIは、注射後60分で、NTモル当量10mg/kgで−7℃の最大効果に到達するといった、より一層強い体温低下を引き起こした。この高投与レベルで、マウスは、低体温効果に適時に匹敵する、低減した自発運動活性を示したが、異種の刺激に対する充分な反応能力を維持していた。また、30℃前後の体温を示すマウスであっても、悪寒は観察されなかった。
【0109】
<実施例4>
本発明の活性化NT薬剤のBBB移送
本発明の活性化ニューロテンシン薬剤のBBB浸透性及びインビトロでの血液安定性を評価した。
【0110】
成体オスC57Bl/6マウスにおける原位置脳潅流技術(in situ brain perfusion technique)を用いて、本発明のコンジュゲートのBBB及び血液網膜関門(BRB)での移送運動を評価した。[3H]Tyr3−NTとAGとのカップリング又はトリチウム標識されたAGのNT分子へのカップリングにより、放射能標識された活性化NT化合物を得た。NTの放射能標識は、トリチウムガスを用いて、ヨードTyr3−NTを触媒脱ハロゲン化することによって行い、一方AGの放射能標識は、トリチウム標識されたプロピオニルコハク酸イミドエステルをAGのN末端にカップリングさせることによって行った。比放射能(SRA)は、典型的には、50Ci/mmolの範囲であった。各合成のための放射能の総量は、通常、100μCiと1000μCiとの間であった。
【0111】
動物において、通常の生理学的及び解剖学的状態のもとで、全身分布のかく乱因子なしで、脳の細胞及び血管新生を維持するために、原位置脳潅流技術によって、人工潅流液の組成の総合的な管理が可能となる。原位置脳潅流は、Dagenaisらによって、最初にラットにおいて開発され、マウスに適用された(Dagenais et al.,2000,J Cereb Blood Flow Metab.,20(2),381−6)。これにより、目的のレセプター、酵素、もしくは異種の流入又は流出移送体について、遺伝子組み換え並びにKO変異マウスにおいて、BBB及びBRBを渡る化合物の移送運動が評価される。
【0112】
放射能標識された本発明の化合物の原位置脳潅流を、2mL/minの潅流液の流速で120秒間行った。初期移送を、移送係数K
in(試験化合物の分布容積(血管容積に換算)と脳潅流時間との関係)として表した。試験化合物の急性毒性がないゆえに、放射能標識されたスクロースと通常はBBBを渡らない化合物との共同潅流により、また、BBBの物理的な完全性の評価がなされた。
【0113】
文献に記載のデータと一致して、NTにより、脳における、〜0.4×10
−4mL/s/(脳組織)gのK
in値という非常に低い初期移送が実証された。眼におけるNT移送はより一層低かった(
図5、白色棒グラフ)。重要であるのは、放射能標識された本発明の活性化NT薬剤で得られた結果により、一致して、脳及び眼への非常に高い移送運動が示されたうえに、本発明の活性化基を備えたNTの活性により、これらの他の非浸透性器官への移送が特に強化されたことが実証されていることである。特に、化合物XIVは、脳において、〜3.65×10
−4mL/s/gのK
in値を示し、これは遊離NTと比較して9倍増であり、また、眼において、〜32.0×10
−4mL/s/gのK
in値を示した(
図5、黒灰色棒グラフ)。さらに、スクロースの脳分布容積がコントロール値と似ているので、化合物Iにより、BBBの完全性は変わらなかった。
【0114】
<実施例5>
インビトロでの本発明の活性化NT薬剤の安定性
本発明の薬剤のインビトロでの血液安定性(半減期t
1/2)を評価し、NT単独の場合と比較した。すなわち、スイス(CD−1)マウスの新鮮な採取血液において、2μMの通常濃度で、各ペプチドを37℃で3時間以下インキュベートした。液体クロマトグラフィー−タンデム質量分光(LC−MS/MS)分析法によって、数回の時点で、血漿蛋白分画において検体を定量化した。インビトロでの半減期(t
1/2)を、各運動プロファイル(一時反応運動:C(t)=C
0e
−kt)の対数回帰から推量し、t
1/2=ln2/kとした。
【0115】
結果より、血漿分解に対して生来のNTは、インビトロでの半減期がほんの7分間という、非常に低い耐性を有することが確認された。これは、内因性ペプチド及び天然アミノ酸のみを含む通常の小さな線形ペプチドの急速な酵素タンパク質分解と一致する(Foltz et al.,2010,J Nutr.,Jan;140(1):117−8)。著しく対照的に、本発明の全ての活性化NT薬剤では、マウス血液におけるt
1/2が大きく増長し、典型的には1時間を超えた。
【0116】
【表9】
【0117】
纏めると、BBB移送運動、インビトロでの血液安定性、及び増強した中枢低体温効果により、本発明の活性化NT薬剤の、顕著で、かつ予期されない有益な効果が実証される。
【0118】
<実施例6>
NT(x−13)を基礎とする活性化ニューロテンシン分子の合成
実施例1〜5において、配列番号9の配列が、完全サイズのNTの活性化において特に効果的であることが示された。これらの実施例及び後の実施例において、配列番号9の配列について、NTフラグメントに基づく効果的な活性化ニューロテンシン分子を生成する能力を試験した。
【0119】
数種の切断されたニューロテンシン類似体は、特にアミノ酸8−13に相当する最小配列が存在するとき、完全サイズの内因性ニューロペプチドと同様に効果的であることが、文献で報告されている。これに基づき、製造コストを最小限に抑え、NTのN末端部位でタンデムコンジュゲートさせながら、さらに効果的な薬剤の生成を目的として、サイズを小さくしたNT類似体を用いて新規活性化NT薬剤を調製した。
【0120】
完全サイズのニューロテンシンからなるコンジュゲートのために採用されるいくつかのコンジュゲート方法(実施例1参照)によって、3つのニューロテンシンフラグメント:NT(2−13)(ピログルタミン酸のみが欠損);NT(6−13)(最小活性配列からなる);及びLys−NT(8−13)(最小活性配列からなり、さらにAGへのカップリングに用いられるリシン6を少なくとも含む)に重点を置いて、コンジュゲートを合成した。分析及び精製は、実施例1と同様の方法で行った。
【0121】
1.NT(x−13)ペプチド合成
ペプチド固相合成(SPPS)法により、Liberty(商標)(CEM)マイクロ波シンセサイザーで、Fmoc/tBuストラテジーを用いて、切断されたニューロテンシン類似体を合成した。アミノ酸カップリングは、手動でプレローディングしたFmoc−Leu−Wang樹脂(100〜200メッシュ、1%DVB)から行った。このような樹脂によって、その側鎖及びC末端において完全に脱保護されているペプチドが合成される。
【0122】
Wang樹脂(ローディング0.2mmol/g)は、Iris Biotech社から購入した。その他の原料は、先に記載したとおりである。
【0123】
樹脂のプレローディングについて、Fmoc−Leu−OH/HOBt/DIC(6当量/6当量/6当量)のDMF(0.055M、アミノ酸に対して)溶液を樹脂に添加した。次いで、DMAP(1当量)を添加した。一晩機械的に撹拌した後、樹脂を洗浄し、そのローディングを評価した。通常のローディングは、0.1mmol/gと0.16mmol/gとの間である。
【0124】
ペプチド伸長は、先に記載したとおりに行った。50%酢酸無水物のDCM溶液を用いてペプチドN末端をアセチル化し、内因性ペプチド中で発見されたペプチド結合を再現して、代謝安定性を向上させた。樹脂結合ペプチドを前記と同様にして切断し、RP−HPLCで精製した。純度95%を超えるフラクションを回収し、凍結乾燥して、精製白色粉末を得た(最終純度>95%)。詳細な濃度勾配、収量、及び質量分析を以下に示す。
【0125】
【表10】
【0126】
2.NT(x−13)−EMCS合成
NT(x−13)官能化を、実施例1に記載の完全サイズNTと同様の方法で行った。生成したペプチドは、純度が少なくとも95%の精製白色粉末であった。詳細な濃度勾配、収量、及び質量分析を以下に示す。
【0127】
【表11】
【0128】
3.チオール化配列番号9の合成
チオール化配列番号9を、実施例1に記載の方法で合成した。
【0129】
4.コンジュゲートNT(x−13)−配列番号9の合成
配列番号9の配列へのNT(x−13)−EMCSのカップリングは、実施例1に記載のNT(1−13)−AG合成と同じ方法で行った。生成したコンジュゲートは、純度が少なくとも95%の精製白色粉末であった。詳細な濃度勾配、収量、及び質量分析を以下に示す。
【0130】
【表12】
【0131】
<実施例7>
本発明の活性化NT(x−13)薬剤の低体温反応
NTモル当量0.5mg/kgの同じ投与レベルで、各コンジュゲートをスイス(CD−1)マウスに静脈内注射(急速)し、活性化薬剤の低体温反応を評価した。
【0132】
全ての切断されたNTを基礎とする薬剤により、注射後30分で体温低下が最大約−2.5℃という、マウスにおいて同程度の低体温が引き起こされた(
図7)。これらの結果より、最短C末端NT(8−13)フラグメントは、本発明の活性化薬剤と関連して強い生物活性を引き起こすのに充分であることが示される。
【0133】
<実施例8>
ジスルフィド架橋を用いた活性化NT薬剤コンジュゲートの合成
EMCSリンカー及びNT配列において天然に存在するか又は導入されるリシン残基を用いて、実施例1〜4に記載の本発明の活性化NT薬剤コンジュゲートを合成した。新しくリンクしているストラテジーを評価する目的で、NT(8−13)及び配列番号9の配列を、ジスルフィド架橋を介してコンジュゲートした。このような切断可能なリンカーは、脳実質における充分に活性なNT(8−13)の放出を引き起こす可能性があるいくつかの細胞内区画の還元性環境(特にBBBの内皮細胞)において切断され得る一方、体循環において良好な安定性を示す。さらに、リンカーの変更により、別の潜在的に有益なPK、気質、及び代謝特性を備える新しい薬剤が齎される。
【0134】
ジスルフィド架橋は、コンジュゲートされる両成分に天然に存在するか又は導入される2つのチオール基から形成される。本発明と関連して、コンジュゲートされる二成分は、遊離システインを提示せず、それゆえに2つのチオール官能は、AG及びNTに化学的に導入された。このために、チオール活性Npysによって保護されたシステイン残基は、NT(8−13)のN末端で導入された。Npys誘導体化Cysは、遊離チオールに対して特異的に反応性が高く、それゆえにヘテロジスルフィド架橋の形成を好む。NT−EMCSへのコンジュゲートと同様の方法にて、システアミンでのC末端官能化により、チオール化された配列番号9の配列を生成した。両成分を個々に製造した後、最終ステップで互いにコンジュゲートさせた。カップリングステップを以下に図示する。分析及び精製方法は実施例1に記載のとおりである。
【0135】
【化2】
【0136】
1.ペプチドC(Npys)−NT(8−13)の合成
Boc−Cys(Npys)−OH及びDIC(ジイソプロピルカルボジイミド)は、Iris Biotechから購入した。
【0137】
N末端を制限しなかったほかは実施例6と同様にして、H−NT(8−13)を調製した。Boc−Cys(Npys)−OH(5当量)及び無水DMF(0.33M)におけるDIC(5当量)の溶液を10分間室温で前活性化させ、樹脂に添加した。一晩機械的に撹拌した後、樹脂をDMF及びDCMで洗浄し、樹脂結合ペプチドを切断して、先の実施例と同様の方法で処置した。30分間で溶液Bを17〜26%の濃度勾配として粗ペプチドを精製し、精製薄黄色粉末を得た(m=25.9mg、収量=24%、純度>95%)。質量を、MALDI−TOF MS分析で確認した(m/z [M+H]
+、計算値=1074.49、実測値=1074.47)。分析の間にMALDI−TOFにおいてNpys保護が切断されたとき、この基を有さない生成物も観察された(M −Npys+H+H]
+、計算値=920.51、実測値=920.475)。
【0138】
2.チオール化配列番号9の合成
チオール化配列番号9を、実施例1に記載の方法で製造した。
【0139】
3.活性化NTコンジュゲートNT(8−13)−SS−配列番号9(化合物VIII)の合成
不活性雰囲気(0.02M)下、脱ガスした10%酢酸溶液にC(Npys)−NT(8−13)(1.3当量)を溶解させた。不活性雰囲気(0.015M)下、脱ガスした10%酢酸溶液にチオール化された配列番号9の配列(1当量)を溶解させ、すぐにC(Npys)−NT(8−13)溶液に添加した。不活性雰囲気下、反応混合物を室温で撹拌した。反応のモニタリングは、分析RP−HPLCで行った。48時間撹拌後、反応混合物にC(Npys)−NT(8−13)(0.45当量)を再度添加した。反応の完了後、30分間で溶液Bを17〜27%の濃度勾配として、粗混合物を調製RP−HPLCにて精製し、精製白色粉末を得た(m=7.8mg、収量=52%、純度>95%)。質量を、MALDI−TOF MS分析で確認した(m/z [M+H]
+、計算値=2050.00、実測値=2051.08)。
【0140】
<実施例9>
NT(8−13)−SS−配列番号9活性化薬剤コンジュゲートの低体温反応
NTモル当量10mg/kgの投与レベルでスイス(CD−1)マウスに静脈内注射(急速)し、NT(8−13)−SS−配列番号9(化合物VIII)の低体温反応を評価して、システアミン−EMCSリンカーを用いて得られた薬剤、すなわち化合物IIと比較した。
【0141】
化合物VIIIは、化合物IIと同程度に、マウスにおいて有効な低体温を引き起こした。両化合物は、各々、注射後45分で体温低下が最大−5.8℃、及び注射後1時間で体温低下が最大−6.7℃という低体温を引き起こした(
図8)。このように、ジスルフィドリンカーを用いたNT(8−13)のカップリングにより、NTを活性化するのに適したストラテジーが発現され、一方、脳毛細血管内皮細胞等の還元性環境において、NTがおそらく放出される。
【0142】
<実施例10>
タンデムAG−NT活性化薬剤の合成
NT及びAG成分を個々に調製し、官能化させ、次いでこれらをカップリングさせることにより、先の実施例で開示した活性化NT薬剤を合成した。本実施例において、タンデム合成及びSPPS適合スペーサーを用い、活性化NT薬剤の新シリーズを製造した。一方、ペプチド結合により、NT及びAG成分を直接カップリングさせた。これらの薬剤の合成は、タンデムにおいて2つのステップのみで行うことができる。2つのステップとは、支持体上でのペプチドの伸長、及びAGジスルフィド結合形成である。このストラテジーを用い、最適なNT(8−13)フラグメント及びその類似体に基づく活性化NT薬剤を、35%以下の全収量で調製した。さらに、タンデム合成により、AG成分とNTポリペプチドとの間のスペーサーとして、多数のリンカーの使用が可能となる。重要なのは、遊離カルボキシル末端は、NTレセプターへの結合のために必須であるので、NTポリペプチドは、コンジュゲートのC末端で導入されたことである。これらの中で、一般的なリンカーは、トリグリシン等のアミノ酸を基礎とするリンカーである。また、アミノヘキサン酸も選択された。この非天然アミノ酸は、ペプチドと他の成分との間の距離を増大させるために用いられる、一般的な疎水性リンカーである。最終的には、2つのPEGスペーサーがまた、コンジュゲートに、より親水性を付与し、それゆえにより水溶性かつ生物学的な耐性を付与するかを評価した。2つのPEG分子を試験し、その生物活性に対する、AGとNTポリペプチドとの間の距離の影響を評価した。薬剤コンジュゲートに導入された全てのリンカー/スペーサーにより、NTポリペプチドによるターゲット−レセプターの最適認識にとって重要な適応性が、薬剤に付与された。分析及び精製は、実施例1に記載の方法で行った。
【0143】
1.配列番号9−NT(8−13)、配列番号9−GGG−NT(6−13)、配列番号9−Ahx−NT(6−13)、及び配列番号9−Ahx−NT(8−13)の合成
ペプチド固相合成(SPPS)法により、Liberty(商標)(CEM)マイクロ波シンセサイザーで、Fmoc/tBuストラテジーと、前記方法にて手動でプレローディングしたFmoc−Leu−Wang樹脂(100〜200メッシュ、1%DVB、ローディング0.09mmol/g)とを用いて、化合物IX(配列番号9−NT(8−13))、化合物X(配列番号9−GGG−NT(6−13))、化合物XI(配列番号9−Ahx−NT(6−13))、及び化合物XII(配列番号9−Ahx−NT(8−13))を合成した。
【0144】
Fmoc−Ahx−OHは、Iris Biotechから購入した。他の原料については、前記のとおりである。
【0145】
ペプチド伸長、切断、及び処置は、先の実施例に記載のものと同じ方法で行った。D−Cys、Met、及びNT−Arg9アミノ酸について、ダブルカップリングを行った。50%プロピオン酸無水物のDCM溶液を用い、ペプチドN末端をプロピオニル化した。30分間で溶液Bを15〜25%の濃度勾配として、調製RP−HPLCにて粗ペプチドである配列番号9−GGG−NT(6−13)を精製した。スペーサーなし(ペプチド結合のみ)か、又はAhxスペーサーを含む粗ペプチドを、さらに精製することなく、次の環化ステップに用いた。
【0146】
実施例1で詳細に説明したものと同じプロトコルを用い、AGに含まれる2つのシステイン(1及び8位)からの分子内環化により、ジスルフィド架橋を得た。白色粉末の精製薬剤を得た(最終純度>95%)。詳細な濃度勾配、収量、及び質量分析を以下に示す。
【0147】
【表13】
【0148】
2.配列番号9−PEG2−NT(8−13)及び配列番号9−PEG6−NT(8−13)の合成
PEGスペーサーを手動で導入した以外は、ペプチド固相合成(SPPS)法により、Liberty(商標)(CEM)マイクロ波シンセサイザーで、化合物XIII(配列番号9−PEG2−NT(8−13))及び化合物XIV(配列番号9−PEG6−NT(8−13))を合成した。Fmoc/tBuストラテジーと、前記方法にて手動でプレローディングしたFmoc−Leu−Wang樹脂(100〜200メッシュ、1%DVB、ローディング0.09mmol/g)とを用いた。
【0149】
Fmoc−12−アミノ−4,7,10−トリオキサドデカン酸(Fmoc−PEG2−OH)及びFmoc−21−アミノ−4,7,10,13,16,19−ヘキサオキサヘンエイコサン酸(Fmoc−PEG6−OH)は、PolyPeptide Laboratoriesから購入した。他の原料については、前記のとおりである。
【0150】
ペプチド伸長は、先の記載と同じ方法で、Liberty(商標)マイクロ波シンセサイザーにて、PEG導入まで、及びその手動導入後に行った。D−Cys、Met、及びNT−Arg9アミノ酸について、ダブルカップリングを行った。手動カップリングとして、PEGアミノ酸(2当量)を、COMU(2当量)及び無水DMF(PEGに対して0.2M)におけるDIEA(4当量)にて、5分間前活性化させた。次いで、活性化PEGを樹脂に添加し、混合物を一晩、室温で機械的に撹拌した。50%プロピオン酸無水物のDCM溶液を用い、ペプチドN末端をプロピオニル化した。通常の切断及び処置の後、粗ペプチドを、さらに精製することなく、次の環化ステップに用いた。
【0151】
実施例1で説明したものと同じプロトコルを用い、AGに含まれる2つのシステイン(1及び8位)からの分子内環化により、ジスルフィド架橋を得た。白色粉末の精製コンジュゲートを得た(最終純度>95%)。詳細な濃度勾配、収量、及び質量分析を以下に示す。
【0152】
【表14】
【0153】
3.配列番号9−[Tle12]NT(8−13)、配列番号9−[Lys8,Tle12]NT(8−13)、配列番号9−[Lys9,Tle12]NT(8−13)、配列番号9−[Trp11,Tle12]NT(8−13)、配列番号9−[Lys8,Trp11,Tle12]NT(8−13)、及び配列番号11−[Lys8,Tle12]NT(8−13)の合成
ペプチド固相合成(SPPS)法により、Liberty(商標)(CEM)マイクロ波シンセサイザーで、化合物XV(配列番号9−[Tle12]NT(8−13))、化合物XVI(配列番号9−[Lys8,Tle12]NT(8−13))、化合物XVII(配列番号9−[Lys9,Tle12]NT(8−13))、化合物XVIII(配列番号9−[Trp11,Tle12]NT(8−13))、化合物XIX(配列番号9−[Lys8,Trp11,Tle12]NT(8−13))、及び化合物XX(配列番号11−[Lys8,Tle12]NT(8−13))を合成した。Fmoc/tBuストラテジーと、前記方法にて手動でプレローディングしたFmoc−Leu−Wang樹脂(100〜200メッシュ、1%DVB、ローディング0.09mmol/g)とを用いた。
【0154】
Fmoc−Lys−OH、Fmoc−Trp−OH、及びFmoc−Tle−OHは、Iris Biotechから購入した。他の原料については、前記のとおりである。
【0155】
ペプチド伸長、切断、及び処置は、先の実施例に記載のものと同じ方法で行った。D−Cys、Met、及びNT−Arg9アミノ酸について、ダブルカップリングを行った。50%プロピオン酸無水物のDCM溶液を用い、ペプチドN末端をプロピオニル化した。通常の切断及び処置の後、粗ペプチドを、さらに精製することなく、次の環化ステップに用いた。
【0156】
【表15】
【0157】
<実施例11>
タンデムAG−NT活性化薬剤の低体温反応
タンデム合成手段を用いて得られた活性化NT薬剤の低体温効果を実証するために、各薬剤を、化合物IIと同様に、NTモル当量10mg/kgの投与レベルでスイス(CD−1)マウスに静脈内注射(急速)し、注射後3時間に渡って直腸体温をモニタリングした。
【0158】
試験した全ての薬剤は、マウスにおいて有効な同程度の低体温反応を引き起こした。全ての薬剤は、注射後60分で約−6/−7℃に到達し、同じように体温及び動態が最も低下した(
図9)。
【0159】
化合物XIVは、注射後60分で−6.7℃に到達し、この投与レベルで大きな低体温効果を示す一方、最も良好な耐性プロファイルを提示した。化合物XIVのED
50は、NTモル当量1.53mg/kgであり、これは、化合物I及び化合物IIについての測定値と似ている。化合物Iと比較すると、化合物XIVは、脳及び眼におけるK
inが、各々3.65×10
−4mL/s/g及び3.30×10
−4mL/s/gと増大しており(
図5、黒色棒グラフ)、高い血液安定性を示し、推定半減期が96分であった(
図6)。NTモル当量20mg/kgでマウスに注射したとき、化合物XIVは、さらなる安全性の懸念なしで、まだ充分に耐性があった。この投与レベルで、さらなる体温の低下は観察されず、NTモル当量10mg/kgで薬理的低体温反応の飽和状態であることが示された。最大耐量(MTD)はNTモル当量40mg/kgであり、LD
50(致死量、50%)には到達しなかった(>NTモル当量40mg/kg)。MEDは、NTモル当量約0.1mg/kgであり、この薬力学/毒性プロファイルは、
i)それは、激化した薬理的低体温による潜在的致死過量投与を阻止する、かつ、
ii)静脈内(急速)投与モードを用い、MEDとMTDとの間の増加倍率として表される治療ウィンドウが、最大低体温反応を誘発する投与レベルと軽度/無致死毒性を引き起こす投与レベルとの間が4倍の安全保障で、約400である
ので、優れた安全性の前提条件を構成する。
【0160】
<実施例12>
置換NTからなるタンデム活性化薬剤の低体温反応
タンデム合成手段を用いて得られたNT(8−13)の置換体を含む活性化NT薬剤の低体温効果を実証するために、各薬剤を、非置換化合物IXと同様に、NTモル当量5mg/kgでスプラーグドーリーラットに静脈内注射(急速)し、注射後3時間に渡って直腸体温をモニタリングした。
【0161】
NT(8−13)配列における安定置換体を含む全ての薬剤は、非置換化合物IXと比較して、ラットにおいてより高い低体温反応を引き起こした(
図10)。NTモル当量5mg/kgでの体温の最大低下は、化合物IXについて、注射後30分で−1.2℃であり、化合物XV、XVI、XVII及びXXについて、注射後60〜90分で−2℃前後であり、化合物XVIII及びXIXについて、注射後90分で−2.8℃前後であった。
【0162】
<実施例13>
本発明の活性化NT薬剤の反復投与
本発明の活性化NTをマウスに反復投与した際の低体温反応性を実証するために、NTモル当量4mg/kgで、化合物XIVを、スイス(CD−1)マウスに4日間毎日静脈内注射(急速)することを試みた。各日注射後3時間の間に、直腸体温をモニタリングした。
【0163】
1日目に、マウスは典型的に、注射後45分で−5.5℃という体温の最大低下を示した(
図11)。2日目に低体温反応は僅かに低くなったが、その後、注射後30分で−3℃という平均した体温低下で、効果は有意にかつ安定して維持された(2日目〜4日目)。
【0164】
3日間の反復投与で効果を示さない安定NT類似体(Boules et al.,2003,Brain Res.,987(1):39−48)に反して、これらの結果によって、本発明の活性化NT薬剤は、効果的かつ安全な投与レベルでの反復又は亜慢性投与が可能であり、限られた耐性で固有の薬力学的特性を提示することが実証される。
【0165】
<実施例14>
本発明の活性化NT薬剤の解熱効果
ナイーブマウスに静脈内注射したときに有意な低体温効果を誘発することに加えて、酵母誘発高熱を伴うマウスにおける本発明の活性化NT薬剤の解熱効果を評価した。つまり、まず、オスNMRIマウスの直腸温度を、直腸プローブを用いて試験の14時間前に測定した(ベースライン1、最低5分間のインターバルで2回独立して測定)。次いで、高熱反応を誘発する酵母懸濁液(512mg/kg)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の0.9%生理食塩水液を、マウスに皮下注射した。ベースライン温度での酵母又はHPMC注射の効果を評価するために、14時間後、再度マウスの直腸温度を測定した(ベースライン2、最低5分間のインターバルで2回独立して測定)。次いで、マウスを無作為に選出して、活性化ニューロテンシン分子(化合物XIV)又はコントロール(0.9%生理食塩水)を静脈内注射し、15、30、45、60、120、及び180分後に再度直腸温度を測定した。
【0166】
酵母懸濁液を注射し、生理食塩水を与えたコントロールマウスは、典型的な0.6〜1℃の高熱を示した。本発明の活性化NT分子の解熱効果を、誘発された高熱を覆す自身の能力として評価した。結果により、化合物XIVは、注射後15分で同じ動物のベースライン2と比較した場合、又は生理食塩水で処置しており、注射後の時間が一致した動物と比較した場合、−2.2℃という最大効果を示して、NTモル当量2mg/kgのマウスにおいて急激に、高熱を大きく覆すことが示された(
図12)。化合物XIVの解熱効果は、NTモル当量6mg/kgの投与レベルで、4.7℃へと体温をさらに低下させる可能性を伴って、投与−反応関係性を示した。この顕著な結果により、コントロールされた正常体温、又は本発明の活性化NT分子によって誘発された穏やかな治療的低体温でさえも、局所的脳虚血、深刻な外傷性脳損傷、ICH、ウィルス、細菌又は寄生虫感染、及び局所的炎症反応が高熱を誘発するかもしれない何らかの急性疾患等の、高熱に起因した急性疾患における神経保護に対して、使用可能であることが示された。
【0167】
<実施例15>
てんかん及び興奮毒性神経細胞死のマウスモデルにおける、活性化NT薬剤の抗痙攣、神経保護並びに抗神経刺激効果
本実施例において、本発明の活性化NT薬剤の、痙攣及び発作に起因した興奮毒性の後の神経保護を促進する能力を評価した。その他の細胞よりもさらに、神経細胞は特に、酸素及びグルコース除去、グルタミン酸塩の大量放出を誘発する状況、神経細胞の主な興奮性神経伝達物質に対して敏感である。神経細胞による過剰のグルタミン酸塩放出により、次に、過剰の神経細胞活性が誘発され、これは急速な神経細胞死及び有害な神経炎症を起こす。この興奮毒性のプロセスは、脳虚血の全ての形態、すなわち、次の突然の心停止(全体的な脳虚血)、次の卒中(局所的虚血)、及び新生児虚血にとって一般的である。興奮毒性はまた、発作の間、並びにてんかん、次の脳及び脊髄外傷において起こる。全てのケースで、興奮毒性に対して神経細胞が特に敏感な、海馬等の神経系の領域において観察される急速な神経細胞死により、しばしば重篤なハンディキャップ又は死を伴うような元の状態に戻せない神経細胞損傷が導かれる。発作はまた、異常軸索新芽形成、特に、発作の始まりから数週間における海馬の苔状線維のそれに起因する。
【0168】
本ケースにおいて、興奮毒性は、てんかん重積状態(SE)を誘発すると知られている副駆虫剤であるカイニン酸(KA)の皮下(s.c.)注射によって誘発された。該てんかん重積状態は、KA投与後3〜7日で観察される興奮毒性、神経炎症、及び海馬における重篤な神経細胞損傷、並びにKA投与後7〜8週間で観察される歯状回苔状線維の異常軸索新芽形成を伴って誘発される。化合物XIVについて
i)てんかん活性(反復性発作の持続性)
ii)神経変性、神経炎症、及び結果として生じた脳組織損傷、並びに
iii)歯状回苔状線維の異常軸索新芽形成
の効果を試験した。
【0169】
FVB/N成長オスマウスに、KAを単回投与(40〜45mg/kg、s.c.)で注射し、SEの保証として自然再発する発作を伴うマウスを得た。マウスのネガティブコントロール群に、KAの代わりに0.9%生理食塩水を投与し、さらなる処置は何も行わなかった(「SHAM」、n=5)。SE発現後30分で、NTモル当量4mg/kgの投与量で化合物XIVを(処置グループ「SE+HT」、n=5)、又は0.9%生理食塩水を(グループ「SE」、n=5)、又は15mg/kgの高投与量で有効抗痙攣及び抗てんかん薬剤のジアゼパム(DZP)を(ポジティブコントロールグループ「SE+DZP」)、マウスに急速静脈内(尾血管)注射した。直腸プローブを用い、KA注射の前、及びその後6時間の間に15分ごとに、体温をモニタリングした。この期間中、運動発作の発生及び重症度についてマウスを評価した。1週間後、この興奮毒性のモデルにおいて、脳内の主要構成である海馬体が組織損傷を示しており、これらの動物について、冠状切片上の神経細胞死の組織学的評価を断念した。同じ処置を行った別の動物グループについては、8週間で歯状回苔状線維の異常軸索新芽形成の組織学的評価を断念した。
【0170】
1)てんかん重積状態における体温及び発作強度に対する活性化NT薬剤の効果:抗痙攣特性を有する化合物XIV
KAの投与(40〜45mg/kg、s.c.)により特徴的な連続的行動の変化が引き起こされた。注射直後、すべての動物において不動症が発現した(ステージ1)。KA注射後30分以内で、点頭痙攣での自動症、前肢クローヌス、及び循環行動が観察された(ステージ2〜3)。次いで、ほとんどの動物について進展が一時中断し(ステージ4)、前肢クローヌス及び落下行動を伴う継続した飼育が続いた(ステージ5)。何匹かのマウスでは、激しい全身強直性間代性発作があった(ステージ6)。少なくともラシーヌステージ5発作に到達した動物のみが、研究に含まれた。KA注射後2時間前後で発生したSEは、ステージ5〜6発作によって特徴づけられ、しばしば高熱に起因した(
図13(a))。SE発現後30分(SE30)で投与された化合物XIVにより、常に、少なくとも2時間は持続する一時的な低体温へと導かれた(
図13(a))。SE30+化合物XIV動物について、SE動物と比較して、体温(BT)の平均低下度として、−2.5℃及び−3.6℃が各々記録された(F=52.34、***P<0.001)。この低体温は、SEグループと比較して、SE30+化合物XIVグループにおける発作の大きな減少に起因していた(F=823.96、***P<0.001、
図13(b))。SE30+化合物XIV動物により、実験の休止期間に、ステージ2発作の平均又はそれ未満が提示された。動物のサブセットに、高投与量のジアゼパム(DZP)を腹腔内投与した。SE30+化合物XIV動物についてのように、実験の休止期間に、DZP処置動物は急速なステージ1〜2発作を示し、これらの動物において、低体温もまた観察された(F=823.96、***P<0.001、
図13(a)(b))。SEが始まった30分後にニューロテンシンNT(8−13)を投与した場合、SE動物と比較して、BT又は発作強度の重要な変化は観察されなかった。このように、SE動物(SE+HTグループ)においてNTモル当量4mg/kgの投与量で化合物XIVを投与することにより、薬剤の有効な抗痙攣効果が実証され、運動発作の明確な減少又は穏やかな抑制が誘発された。この効果は、2.5時間の間に体温が−3〜−6℃低下したことと関連があった。
【0171】
2)てんかん重積状態後の海馬における、活性化NT薬剤による神経保護の促進
各々神経細胞特定核タンパク質及び神経細胞死をラベルする抗NeuN抗体及びFluoro−jade Cを用い、SHAM動物と比較すると(
図14(a)−パネルA)、コントロールSE動物の海馬におけるいくらかの歯状門神経細胞だけでなく、CA1及びCA3錐体細胞の広範囲な損失が観察された(
図14(a)−パネルB)。SE発現後30分で化合物XIV又はDZPを投与した際には、SE動物で観察された神経変性はかなり減少したが(
図14(a)(b))、NT(8−13)を投与した際には、変化がなかった。SE30+化合物XIV動物について得られた結果は、SE30+NT(8−13)グループで観察された結果と大きく異なっていたが、SE30+DZPマウスで観察された結果とは差異がなかった。
【0172】
3)てんかん重積状態後の海馬における、活性化NT薬剤によるグリア介在性炎症反応の軽減
SE誘発グリオーシスは、ミクログリア及びアストログリア細胞型を引き起こした。GFAP及びIba1免疫ラベリングを用い、神経炎症に対する化合物XIVの効果を評価した。SHAM動物において、GFAP及びIba1についての基本的なラベリングがHF中で検出された(
図14(a)−パネルD)。SE動物において、グリア細胞の非常に強力な活性が、全海馬層中で発生した(
図14−パネルE、H)。SE発現後30分で化合物XIV又はDZPを投与した際には、この炎症反応は著しく低減したが(
図14−パネルF、I)、NT(8−13)を投与した際には、変化がなかった。SE30+化合物XIV動物について得られた結果は、SE30+NT(8−13)グループで観察された結果と大きく異なっていたが、SE30+DZPマウスで観察された結果とは差異がなかった。
【0173】
4)てんかん重積状態後の海馬における、活性化NT薬剤による苔状線維発芽の低減
一般に、KA処置マウス及びてんかんにおいて、苔状線維(歯状回顆粒細胞の軸索)の発芽は、充分に証明されている。この異常軸索は、門細胞損失に応答して内部分子層(IML)において起こることが提議されてきている。化合物XIVの神経保護効果をさらに研究するために、SE後8週間で苔状線維発芽の程度を評価した。亜鉛イオンにおいて、苔状線維末端は非常に強化されており、
図15に示すように、亜鉛小胞輸送体3(ZnT3)に対する免疫組織化学的ラベリングを用い、苔状線維の発芽を検出した。全てのSHAM動物において、苔状線維末端は、CA3領域の門部及び淡明層に存在し、DGのIMLで末端は観察されなかった(
図15(a)−パネルA、B、
図15(b))。SE動物において、苔状線維末端は、SHAMマウスのように肺門及びCA3領域で観察されただけでなく、IML内部でも観察された(
図15(a)−パネルC、D、
図15(b))。SE動物と比較して、SE発現後30分で化合物XIV又はDZPを投与した動物において、IMLを神経支配する末端の数は著しく減少したが(
図15(a)−パネルE、F、
図15(b))、NT(8−13)を投与した場合には、著しい変化はなかった(
図15(b))。
【0174】
本発明の活性化NT分子は、興奮毒性神経細胞死及び神経炎症による脳組織損傷を阻害する魅力的なアプローチを表すだけでなく、恐らく、低体温によって神経細胞活性を低減して運動発作を抑制する効力を有することが、これら全ての結果によって明確に実証されている。
【0175】
<実施例16>
タンデム活性化NT薬剤の抗侵害受容効果
活性化NT薬剤の抗侵害受容性効力を評価するために、化合物XIVについて、マウスにおける実験疼痛モデルで試験を行った。急性内臓疼痛のモデルとしてライジング試験を用い、静脈内投与後の化合物XIVの効果を評価した。化合物XIVを投与されたマウスにおいて、体温が最も低下する時間が注射後45分前後であることを考えると、この疼痛モデルにおいて、類似した薬力学的動力学が仮定された。マウスにまず、投与レベルを増加させて化合物XIVを静脈内注射(急速)し、その後30分で、続いて0.7%酢酸を腹腔内注射した(10mL/kg)。コントロールマウスにおいて、酢酸の腹腔内注射により、早くも注射後2〜3分で、特徴的かつ定量化可能な腹部ストレッチ(体の伸長及び前肢の拡張)を得て、注射後5〜15分の間でピークに到達した。したがって、NTモル当量0.5、1、又は5mg/kgで生理食塩水もしくは化合物XIVを投与したマウスにおける腹部ストレッチの数(10分間を超える観察でのライジングカウント)の評価に、この時間ウィンドウを用いた。
【0176】
このモデルにおいて、化合物XIVにより、NTモル当量0.5mg/kgでは効果がなく、NTモル当量1及び5mg/kgでは、ライジングカウントが各々50%及び64%低減するという、重大であり、かつ投与量に依存した抗侵害受容効果が得られた(
図16)。