(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の原理の簡単な説明>
実施形態の説明に先立って、本発明の原理を簡単に説明する。
【0013】
上述のように、本発明者は先に上げた特許文献1で示したように、電力幹線に接続される電動機の運転時に、制動力となる{(Z1/P)−1}次数の回転磁束を打ち消す回転磁束を生じさせる高調波電圧を発生させればよいことを見出した。
【0014】
そのために、各種電動機に対応する特定の高調波周波数で所定の振幅の消去用高調波を作成しそれらを合成してこれを電動機に供給することにより、不必要な電力消費を減らしていた。ここで各種電動機とは、モータの構造(固定子のコイル収容の総スロット数と極対数の比)が異なる電動機をいう。
【0015】
電力幹線と本発明の実施形態の高調波発生装置13と、各種類の電動機の接続関係を
図7に示した。後で具体的に説明する。
【0016】
しかし、所定の消去用高調波を合成すると、それらの高調波相互間で相互干渉が生じて、所定の周波数、振幅を必要とする高調波からずれてしまい、それらの干渉を考慮して振幅等を調整することは比較的困難であった。
【0017】
本発明では、上記のように必要な消去用高調波を個別に作成し適切な高調波を得て、それらを時間的に切り替えて加え、接続された電動機に供給するようにした。
【0018】
このようにすれば、所定の時間が経つと複数の高調波が実効的に各種電動機に供給されるようになる。しかも消去用高調波は、コンピュータにより個別に容易に作成できる。
【0019】
<実施形態の説明>
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1には、電力設備を構成する電源変圧器11、電力幹線12、高調波発生装置13、電動機14例えば誘導電動機、の関係を表す。これらは等価回路により示している。電動機14は、
図7に示す複数種類の電動機のうちの例えば1種類の電動機を意味する。
【0021】
高調波発生装置13は、リアクタンス回路15及び高調波電流発生器16からなる。高調波電流発生器16は、図示のように電源変圧器11の近傍に設けるか、又は電力幹線(低圧幹線とも呼ぶ)12の末端に接続された電動機14の入力端子近傍に接続する。
【0022】
電源変圧器11の2次巻線の両端からは、電力幹線(100V,200V,400V等)12が導出されている。電源変圧器11の2次巻線の両端間には電源電圧V1が発生する。また、この2次巻線側には、
図2に示すように電源変圧器11の巻線抵抗Rt及び巻線の漏れリアクタンス+jνXtが存在し、上述したリアクタンス回路15を構成する。
【0023】
また、この電力幹線12間には、ν次(11次、17次、23次等)の高調波を含む高調波電流(連続波電流又はパルス電流)Iν(pls)の発生源となる高調波電流発生器16が接続されている。この高調波電流Iν(pls)はインピーダンスの低い電源変圧器11側に流れる。
【0024】
電源変圧器11及びリアクタンス回路15部分の等価回路は、
図2で示すように書き換えることができる。
図2において、電源変圧器11の1次側漏れリアクタンス11−1は、電源変圧器11の励磁回路のリアクタンス11−eに対して著しく小さいので、1次側漏れリアクタンス11−1はショートされたことと同じとなる。
【0025】
リアクタンス回路15のインピーダンスをZν(pall)とする。このリアクタンス回路15部分には、高調波電流発生器16からの高調波電流Iν(pls)が図示方向に流れることにより、高調波電源電圧Vν(pls)が発生する。すなわち、高調波電流発生器16は、高調波電源電圧Vν(pls)を発生させるためのν次の高調波電流Iν(pls)を流す電流源となる。
【0026】
なお、(slot)は、本来電動機に生じている成分を示し、(pall)(pls)は、本発明の実施形態の高調波発生装置により発生させる成分を意味する。
【0027】
図1に戻って、電力幹線12に接続された電動機14は、固定子14−1部分、及び回転子14−2部分を有している。電動機14の固定子14−1には1次巻線w1が設けられ、回転子14−2には2次巻線w2が設けられている。固定子14−1の1次巻線w1は、電力幹線12に線路リアクタンス分+jXlを介して接続しており、この1次巻線w1自身は抵抗分r1とリアクタンス分+jνx1を有する。
【0028】
また、2次巻線w2は抵抗分r2’及びリアクタンス分+jx2’及び機械的負荷に相当する抵抗r(mk)=(1−Sν) r2’/Sνを有する。
【0029】
ここで、電動機14の図示しない入力端子に、電力幹線12から概略基本波の電源電圧V1を印加すると、電動機14の固定子14−1に設けられた1次巻線w1には、
図1で示すように、電源の基本波電圧V1に対して90°遅れの、基本波の励磁電流I(0)(1)が流れる。
【0030】
また、固定子14−1と回転子14−2との間には、この励磁電流I(0)(1)に比例して、励磁電流I(0)(1)と同一位相の回転磁束φ1が発生する。そして、この回転磁束φ1に対して90°遅れ(電源電圧V1に対しては180°遅れ)の逆起電力E1が発生する。また、この電圧E1に比例して回転子14−2の2次巻線w2には電圧E1’が誘起される。
【0031】
電動機の固定子14−1には1次巻線w1を収容するスロットが形成されており、このスロットに起因して磁気抵抗が規則的に分布する。すなわち、
図3(a)で示すように、固定子14−1には、上述したように、3相(u,v,w)の一次巻線(コイルとも呼ぶ)w1を収容するスロット21が形成されている。
【0032】
この固定子14−1と回転子14−2との隙間では、コイルを収容しているスロット21の直下と固定子鉄心直下では磁気抵抗(パーミアンス)に差が存在する。このため、基本波による回転磁束φ1の他に、スロット21に起因し、その個数に対応するν次の高調波回転磁束φνが発生する。
【0033】
ここで、固定子14−1の総スロット数をZ1、電機子上の極間隔をτp、極対数をPとすると、スロット21に起因するパーミアンスの分布波kは、次式(1)で示される。
【数1】
【0034】
なお、上式(1)においてkavはパーミアンスの平均値(average)である。
【0035】
図3(b)で示す基本波回転磁束密度はB1をB1sin(π/τ・x)とすると、実際の回転状態における磁束密度波Bνは次式(2)となる。
【数2】
【0036】
上記式(2)から、基本波波形B1に対して90°遅れの{(Z1/P)+1)}次の高調波回転磁束B{(Z1/P)+1}、及び基本波波形B1に対して90°進みの{(Z1/P)−1}次の高調波回転磁束B{(Z1/P)−1}が発生することがわかる。(なお、以下{(Z1/P)−1}、{(Z1/P)+1}は(Z1/P−1)、(Z1/P+1)とも記載する。)
磁束は磁気回路の面積に比例するのでφ1∝B1であり、φ(Z1/P−1)次、及びφ(Z1/P+1)次の回転磁束が発生することを意味する。
【0037】
周知のように、φ(Z1/P+1)次の磁束は、基本波回転磁束波φ1に対して正方向、かつ90°遅れで回転する。また、φ(Z1/P−1)次の磁束は、基本波回転磁束波φ1に対して逆方向、かつ90°進み位相で回転する。通常、電動機の1極当りのスロット数(Z1/P)は、12,18,24個が多用されている。したがって、(Z1/P−1)次としては、11,17,23次の逆回転磁束密度波が、(Z1/P+1)次としては13,19,25次の正回転磁束密度波がそれぞれ発生する。
【0038】
この次数νが(Z1/P+1)次、及び(Z1/P−1)次の高調波回転磁束φν(slot)によって、固定子14−1の1次巻線w1には高調波電圧Vν(slot)が、回転子14−2の2次巻線w2には高調波電圧Vν’(slot)が生じる。
【0039】
このうち、(Z1/P−1)次、即ち11次,17次,23次の高調波電圧Vν’(slot)は、回転子14−2に対して制動力となる回転磁束を生じ、後述するように無駄な電力を消費することになる。したがってこれらの高調波を低減させる必要がある。以下、(Z1/P−1)次の高調波への対応を説明する。
【0040】
本発明では、
図1及び
図2で示したように、電力幹線に高調波電流発生器16を接続して、一定のν次の高調波電流Iν(pls)を、インピーダンスZν(pall)を有するリアクタンス回路15に流している。このことにより、高調波電圧Vν(pls)=Zν(pall)・Iν(pls)を発生させ、増幅する。この高調波電圧Vν(pls)により、前述したスロット21に起因するν次の高調波回転磁束φν(slot)に対して逆位相となる高調波回転磁束φν(pls)を発生させる。
【0041】
このことにより高調波回転磁束φν(slot)を減少させ、高調波回転磁束φν(slot)により発生する高調波電圧Vν(slot),Vν’(slot)を減少させる。その結果、高調波電圧Vν’(slot)により無駄に消費されている電力を低減させることができる。
【0042】
上述した関係を、
図4のベクトル図を用いて以下に説明する。
【0043】
図4は、相の数mが3、1極1相当たりのコイル数qが3で、1極対あたりのスロット数2mq、すなわち、前述した(Z1/P)が18個の電動機における17次高調波について示している。
【0044】
電動機14の入力端子に電源電圧V1を印加すると、固定子14−1と回転子14−2との間には、電源の基本波電圧V1に対して90°遅れの回転磁束φ1が発生し、固定子14−1の1次巻線w1には、この回転磁束φ1に対して90°遅れ(電源電圧V1に対しては180°遅れ)の逆起電力E1が発生する。
【0045】
固定子14−1と回転子14−2との隙間では、コイルを収容しているスロット21の数に対応するν次の高調波回転磁束φν(slot)が発生する。この高調波回転磁束φν(slot)は、基本波による回転磁束φ1に対して90°進みである。
【0046】
また、この高調波回転磁束φν(slot)により1次巻線w1には高調波電圧Vν(slot)が発生する。この高調波電圧Vν(slot)は高調波回転磁束φν(slot) に対して90°進みである。
【0047】
これに対し、
図1及び
図2で示した高調波電流発生器16から、電源電圧V1に対して同相のν次の高調波電流Iν(pls)を、電源変圧器11の漏れリアクタンス+jνXtを含むリアクタンス回路15に図示方向で流す。高調波電流Iν(pls)は、上述したリアクタンス回路15に流れることで、そのインピーダンスZν(pall)により、リアクタンス回路15両端に高調波電流による電圧降下が生じる。その高調波電圧をVν(pls)とすると、Vν(pls)=−Zν(pall)・Iν(pls)となる。
【0048】
リアクタンス回路15のインピーダンスZν(pall)は、前述のように、電源変圧器11の漏れリアクタンス+jνXtを含むので、I17(pls)が流れることにより生じる高調波電圧Vν(pls)は、
図4で示すように、電源電圧V1に対して90°遅れの位相となる。
【0049】
ここで、高調波電流発生器16が電力幹線12の末端に接続された場合は、リアクタンス回路15のリアクタンスは、電源変圧器11のリアクタンスXtと、電力幹線12のリアクタンスXlとの合算分となり、インピーダンスZν(pall)が求まる。
【0050】
この高調波電圧Vν(pls)が電動機14の1次巻線w1に印加されると、
図1で示したように、ν次の励磁電流I(0)(ν,pls)が1次巻線w1に流れる。この励磁電流I(0)(ν,pls)は、Vν(pls)に対して90°遅れであるので、励磁電流I(0)(ν,pls)と同相の高調波回転磁束φν(pls)が
図4で示すように発生する。すなわち、高調波電流発生器16に基づく高調波回転磁束φν(pls)は、スロットに起因する高調波回転磁束φν(slot)との位相角θν(slot,pls) が180°で、完全に逆位相となる。
【0051】
したがって、スロットに起因する高調波回転磁束φν(slot)は減少し、この高調波回転磁束φν(slot)によって発生する高調波電圧Vν(slot),及びこれによって2次巻線w2に誘起される高調波電圧Vν’ (slot)が減少する。その結果、高調波電圧Vν’(slot)により無駄に消費されている電力を低減させることができる。
【0052】
ここで、電力幹線12から給電される電動機14は、上述した1極対あたりのスロット数、すなわち、(Z1/P)が18個の1種類の電動機のみではなく、同じ電力幹線12に(Z1/P)が12個、或いは24個の電動機も混在して用いられることが多い。すなわち、前述のように電動機14には、1極当りのスロット数(Z1/P)が12,18,24,30個である複数種類の電動機が多用されている。
【0053】
そこで、電力幹線12に接続する高調波電流発生器16には、電動機14において逆回転トルクを発生する11次、17次、23次、29次の高調波が混合した高調波電流を流すものを用いる。
【0054】
この高調波電流発生器16が流す高調波電流Iν(pls)は、連続波電流又はパルス電流とする。先ず、この高調波電流Iν(pls)の電流波形が、基本電源電圧V1に対して11次、17次、23次、29次の連続波電流を発生する高調波電流発生器16について
図5を用いて説明する。
【0055】
なお、
図5は1相分を示している。実際の電力幹線12は3相系統であるので、
図5で示した1相分の回路を、3相を構成する各相u,v,wの入力電圧に対応するべく3つの回路を設ける。
【0056】
高調波電流発生器16は、
図5で示すように、交流の波形を矩形波に変えるコンパレータ51、所定の高次高調波を作成する高調波作成部52、作成された高次高調波の位相を合せる位相調整部53、高次高調波の振幅を変える可変抵抗部54、これらの位相及ぶ振幅を調整された高次高調波を切り替える高調波切替部55、この高調波切替部55の切替時間を制御する切替時間制御部55s及び切り替えられた高次高調波を出力する出力部56により構成される。
【0057】
これらのコンパレータ51、高調波作成部52、位相調整部53、可変抵抗部54、高調波切替部55、切替時間制御部55sは、例えばコンピュータにより構成され、ディジタル的に電動機内でスロットに起因する高調波磁束の高調波(消去用高調波)の作成、位相調整、振幅調整、出力高調波切替え等がなされる。特定の周波数及び振幅を有する消去用高調波が所定時間毎に切り替えられて、出力部56に入力されることになる。
【0058】
出力部56は、半波の信号を出力するが、後続する複数種類の電動機には、所定時間後には各電動機に応じた消去用の高調波が連続的に加えられることになる。動作については後で具体的に述べる。
【0059】
コンパレータ51の入力端子aには、各相(例えばu相)からの入力電圧、すなわち、例えば商用電源の交流の基本電源電圧V1が入力される。入力された基本電源電圧V1はコンパレータ51により、基本電源電圧V1と同相の矩形波又はこれに近い波形が得られ、出力端子bに出力される。
【0060】
高調波作成部521,522,523,524では各々11次、17次、23次、29次の連続的な高調波が作成されている。これら高調波作成部の各出力は位相調整部531,532,533,534に一方の入力端子に入力される。
【0061】
一方、コンパレータ51の出力端子bから出力された矩形波は、並列に位相調整部531,532,533,534に比較出力として他方の入力端子に入力される。
【0062】
位相調整部531,532,533,534の出力端子は可変抵抗部541,542,543,544の入力端子に接続されている。位相調整部531,532,533,534で位相調整された高調波は、可変抵抗部541,542,543,544において振幅を調整される。可変抵抗部541,542,543,544の出力端子は高調波切替部55の入力端子に接続されている。可変抵抗部541,542,543,544で振幅調整された高調波は、高調波切替部55で切り換えられる。
【0063】
高調波切替部55の出力側には、電力幹線12の1相分を構成する線u,v間に設けられた出力部56が接続されている。出力部56は、ダイオード及び抵抗を介して線u,v間に逆並列に接続された最終段出力素子としての電力トランジスタ又はMOS型FET(図ではMOS型FETを示している)561、562を有する。
【0064】
そして、それらのベース又はゲートには、上述した高調波切替部55の出力端子が、それぞれバイアス回路563,564を介して接続されている。
【0065】
このように電力トランジスタ又はMOS型FET561、562のベース又はゲートにそれぞれバイアス回路563,564を設けたことによりアナログ増幅器として機能する。
【0066】
出力部56では、商用交流電圧の正の半周期においては、NPN型MOSFET561が導通する。一方、商用交流電源電圧の負の半周期においては、PNP型MOSFET562が導通する。
【0067】
これらのFET561,562には、バイアス電圧を印加して、B級の動作をさせる。
【0068】
本実施形態の高調波電流発生器16は上述のように構成されている。
【0069】
なお、
図5に示す実施形態において、出力部56に、半波の出力回路を用いている。これは全波の出力を得るためには、トランスを用いる必要があるが、前の段の位相調整部53において、位相を調整しており、位相を変化させることをできるだけ防止するためである。通常、トランスの励磁電流により位相誤差が5度程度発生する。
【0070】
ただし、トランスを用いて全波の出力を得るようにしてもよい。その場合の高調波電流発生器16の回路構成としては、
図6で示すように構成してもよい。すなわち、
図5で示した回路にトランス565を加え、このトランス565を介して、各最終段出力素子561、562に直流電源+VOO,−VOOを接続する。このような構成の出力部を用いると、基本電源電圧V1が負の半サイクルにおいても、直流電源電圧が印加されることにより高調波電流を流すことが可能となる利点がある。
【0071】
<この実施形態の接続関係及び動作の説明>
ここで、この実施形態の接続関係と動作を説明する。
【0072】
電力幹線には、通常、スロット数の異なる複数種類の電動機が接続される。Pを電動機の極対数、Z1を各電動機の固定子の総スロット数とする。3相電源の場合、(Z1/P)は6の倍数であるので、この値は12、18、24、30などとなる。本実施形態の高調波発生装置は、電力幹線と複数種類の電動機の間に接続される。
【0073】
図7に、これらの複数種類の電動機と、これらの電動機と電力幹線の間に付加接続される本発明の高調波発生装置の接続関係を示す。すなわち、本実施形態の高調波発生装置13は、電力幹線12に接続され、この高調波発生装置13は電動機1412、1418a、1418b、1424a、1424b、1430に接続される。
【0074】
高調波発生装置13は、高調波電流発生器16を内蔵する。電動機1412はZ1/Pが12であり、電動機1418a,1418bはZ1/Pが18のタイプである。また、電動機1412a,1412bはZ1/Pが24であり、電動機143はZ1/Pが30のタイプである。このように複数種類の電動機が高調波発生装置13の出力端子に接続されている
したがって、これらの電動機の運転効率を向上させるために、高調波発生装置13の高調波電流発生器16に各種電動機に対応した逆回転トルクを発生する複数の次数の高調波電流を流すことにより、接続されるトランスの漏れリアクタンスにおいて、複数の次数の高調波電圧を同時に発生させる必要があった。
【0075】
消去のための逆回転方向の高調波の次数(逆高調波次数)νは、{(Z1/P)−1}となる。3相電源の場合、逆高調波次数νの値は、5,11,17,23,29,35,41等が一般的に多く用いられる。そこで、
図5に示した高調波電流発生器16では、11、17、23、29次の連続高調波を作成して位相調整し、その後振幅を調整してこれらの高調波を切り替え、半波出力として出力部56から出力している。
【0076】
次に、
図5に示す高調波電流発生器16の動作につき、まず
図8の波形図を用いてわかりやすく説明する。
図8に示す波形図は、基本的に出力部56からの出力波形を示す。
【0077】
高調波作成部521、522、523、524では、各々上記11、17,23、29次の高調波の連続波が作成されている。これらの高調波は、位相調整部531,532,533,534で位相調整される。その後、可変抵抗部541、542、543、544で各々の高調波の振幅が調整され、高周波切替部55で切り替えられて、出力部56から半波として出力される。
【0078】
図8における、波形821aは、高調波作成部521において作成された11次高調波の連続波波形の上半波を示す。この11次高調波の立ち上がりのゼロクロス点は、交流81の立ち上がりゼロクロス点のタイミングと合うように、位相調整部531において両方向矢印871方向に調整される。したがって、11次高調波の立ち上がりゼロクロス点は交流の立ち上がりゼロクロス点に合致し矢印881の時点となる。11次高調波の立ち下りゼロクロス点は、交流の立ち下りゼロクロス点とも位相を合せられる。
【0079】
また、波形822aは、高調波作成部522において作成された17次高調波の連続波波形の上半波を示す。この17次高調波の立ち上がりのゼロクロス点は、次の周期での交流81の立ち上がりゼロクロス点のタイミングと合うように、位相調整部532において両方向矢印872方向に調整される。したがって、17次高調波の立ち上がりゼロクロス点は交流の立ち上がりゼロクロス点に合致し矢印882の時点となる。
【0080】
同様に、波形823aは、高調波作成部522において作成された23次高調波の連続波波形の上半波を示す。この23次高調波の立ち上がりのゼロクロス点は、次の周期での交流81の立ち上がりゼロクロス点のタイミングと合うように、位相調整部533において両方向矢印872方向に調整される。したがって、23次高調波の立ち上がりゼロクロス点は交流の立ち上がりゼロクロス点に合致し矢印883の時点となる。
【0081】
図8には示していないが、29次高調波についても同様に位相調整部534において位相調整される。
【0082】
振幅値については、可変抵抗部54において調整される。具体的には11次高調波の位相調整部531の出力は可変抵抗部541に振幅調整され、
図8に示すように振幅値I11となる。
【0083】
17次高調波の位相調整部532の出力は可変抵抗部542に振幅調整され、
図8に示すように振幅値I17となる。同様に、23次高調波の位相調整部533の出力は可変抵抗部542に振幅調整され、
図8に示すように振幅値I23となる。
【0084】
図8には示していないが、29次高調波についても、同様に位相調整部534出力は可変抵抗部544で振幅調整される。
【0085】
これらの位相調整及び振幅調整された11次、17次、23次、29次の高調波は、高調波切替部55において交流のほぼ1周期で切り替えられる。
【0086】
この切替時間は切替時間制御部55sにおいて検査のために制御される。この切替制御時間は、通常、交流の1周期よりも長い時間にされる。位相調整及び振幅調整された11次、17次、23次、29次の全波の高調波が出力部56に印加されることになる。
【0087】
出力部56において、
図8に示すように各高調波は正及び負の半波の波形とされる。
【0088】
なお、高調波作成部52において作成される高調波は、正弦波が最も好ましい。他の高調波成分が含まれないからである。したがって矩形波は他の高調波成分を含むので好ましくない。できるだけ正弦波に近い波形であることが望ましい。
【0089】
<必要な各高調波の振幅値>
ここで、生じている電動機で生ずる高調波を消去するために必要な各高調波の振幅値について説明する。
【0090】
電動機のスロットに起因して発生する高調波回転磁束φνの大きさは、スロットの幾何学的形状に関係する。通常、スロット数が大きくなるほど、高調波回転磁束φν(slot)は小さくなる。
【0091】
電動機のスロットに起因して生ずる高調波磁束によって発生する高調波電圧は小さく、その計測は一般に困難である。
【0092】
本発明者は、電力幹線において、インバータ等の高調波発生機器をまったく有しない幹線において高調波電圧Eνの実測を試みた。
【0093】
その結果を表1に示す。上段に高調波の次数νを、下段にその高調波電圧Eνの基本波に対する含有比率(%)を表している。
【表1】
【0094】
この表から、高調波電圧Eνは高調波次数φνの1.2から1.5乗に逆比例することを見出した。
【0095】
高調波回転磁束φν(slot)により電動機の巻線に発生する電圧Eν(slot)は、上記(2)式により、逆高調波次数νに比例することが理解される。上記表1により高調波回転磁束φν(slot)は高調波次数νの略2.2乗に逆比例することがわかった。数式で表すと次式(3)になる。
【0096】
φν(slot)∝1/ν
2.2 ・・・・・・(3)
電動機の中において発生する高調波起電力Eν(slot)∝ν×φν(slot)であるから、
Eν(slot)∝ ν×φν(slot)=ν×1/ν
2.2=1/ν
1.2 ・・・(4)
となる。
【0097】
このように、電動機で発生する高調波起電力Eν(slot)はν
1.2 に逆比例する。
【0098】
そこで、本発明の一実施形態の高調波発生装置では、上記高調波起電力Eν(slot)を消去するために逆回転の消去用高調波起電力を作成し印加すればよい。
【0099】
図2に示す高調波電流発生器16に流す消去用高調波電流Iν(pls)は 1/ν
2.2 に比例させる。すなわち、次式(5)となる。
【0100】
Iν(pls)∝1/ν
2.2 ・・・・・・・(5)
また、消去用高調波起電力Vν(pls)はν×Iν(pls)に比例するから次式(6)となる。
【0101】
Vν(pls)∝1/ν
1.2 ・・・・・・・(6)
すなわち、消去用高調波起電力Vν(pls)はν
1.2に逆比例させればよい。
【0102】
各高調波の振幅については、表1の各高調波の振幅比を用いる。
【0103】
また、電流については、17次高調波電流を基準とすると、各高調波電流の比率は、表2のようになる。
【表2】
【0104】
事例1、事例2は実際に測定してみた各高調波電流の比率である。電動機においてスロットにより発生する高調波磁束を抑制するために、
図2に示す高調波電流発生器16にIν(pls)を流す。17次高調波を基準とすると大体、23次高調波ではその50%、29次高調波では30%、35次高調波では20%が最適比率となる。
【0105】
また、電力幹線に流す逆回転磁界を発生する各高調波電流の位相は基本波に対して略同位相とすることが好ましい。基本波に対する17次高調波の供給電流の位相は、±10°以内程度とすることが好ましい。
【0106】
<すべりについての説明>
次に、
図1で説明した電動機14の2次巻線w2における電力について詳細に説明する。まず、すべりについて説明する。
【0107】
固定子14−1と回転子14−2との隙間に発生する回転磁束のうち、前述したように11次、17次、23次の成分は、基本波回転磁束に対して逆方向に回転する。これに対し、13次、19次、25次の成分は正方向に回転する。ここで、固定子上のν次高調波の回転磁束の速度をNνとする。回転子は概略基本波の同期速度N0で回転する。ν次高調波のすべりSνは次式(7)で求められる。
【0108】
Sν=(Nν−N0)/Nν ・・・(7)
11次、17次、23次の逆回転磁束の場合、式(7)のNνに−1/11,−1/17,−1/23を代入すると、Sνの値として、+12,+18,+24が得られる。
【0109】
この場合、回転子14−2の等価回路は、
図9に示される。入力抵抗は、r
2‘/Sνで示され、正の値であるので、この次数の高調波電力は電源から回転子に入力される。
【0110】
また、機械的軸出力に相当する等価抵抗r
mkが
図10に示され、各Sνを代入すると負の値になる。すなわち、電動機14は、この高調波成分に対して制動機として運転する。したがって、回転子14−2において、逆回転磁束を発生する高調波電力は軸から回転子に回成され2次巻線w2で消費される。
【0111】
13次、19次、25次の正回転磁束の場合は、式(7)から、すべりSνは−12,−18,−24と負の値となる。
【0112】
この場合、回転子14−2の等価回路は
図9であり、入力抵抗r
2‘/Sνは負の値である。この次数の高調波電力は電源から回転子に入力されず、電源側に反射する。また、機械的軸出力に相当する等価抵抗r
mkは、
図10で示され、負の値となる。したがって、回転子14−2において、正回転磁束を発生する高調波電力は軸から回転子を経由して商用電源側に回生される。
【0113】
電動機14の2次巻線w2における基本波による電力についてみる。
図9は、
図1で示した電動機14の回転子14−2部分について、2次巻線w2に基本波電圧E1’が誘起された場合の等価回路である。
【0114】
図9から、基本波の2次入力電力P1’、すべりをS1とすると、2次入力電力P1’は次式(8)で求められる。
【数3】
【0115】
ここで、5.5kwの電動機の一例として、r2=0.3Ω、x2=0.3Ω,S1=0.04とすると、式(4)から、P1’は次式(9)となる。
【0116】
P1’=0.04(E1’)
2/(r2) ・・・(9)
次に、逆回転磁束を発生する高調波が印加された場合の回転子14−2における高調波電圧含有率と消費電力についてみる。
【0117】
図10は、
図1で示した電動機14の回転子14−2部分について、高調波電圧Vν’(slot)が2次巻線w2に誘起された場合の2次巻線w2の等価回路を示している。2次巻線w2における基本波電圧E1’に対するν次の高調波電圧Vν’の含有率をKνとすると、KνはKν=Vν’/E1’で示される。2次巻線w2への高調波入力電力をPν’とすると、
図10により次式(10)が得られる。
【数4】
【0118】
ここで、ν=17とすると、前述した式(3)からSν=+18となる。5.5kwの電動機では、前述のようにr2=0.3Ω、x2=0.3Ωである。
【0119】
ここで、ローター2次回路においては、基本波のすべり電流による比較的大きな磁束上に重畳している。鉄芯のB−H曲線の特性により高調波はB−H曲線の飽和領域で作用している。そのため、高調波における透磁率は基本波に比較して小さくなる。
【0120】
そこで、基本波のX2=0.3Ωに対して1/5とすると、X2=(1/5)×0.5Ωとなり、これらを式(10)に代入すると17次の高調波入力電力P17’は次式(11)となる。
【0121】
P17’=2.722Kν(E1’)
2/(r2’) ・・・(11)
ここで、P17‘次の高調波磁界がN0/νで回転している場合の同期ワットである。
【0122】
実際には、回転子は同期速度N0で回転しているので同期速度に換算すると、ローター2次回路における実際の高調波電力P17‘はν倍となり、次式(12)となる。
【0123】
P17’=2.722νKν(E1’)
2/(r2’) ・・・(12)
上記式(12)にKν=0.0086%を代入し、前述の式(9)との関係からP17’を求めると、P17’=0.1P1‘となる。すなわち、17次高調波電圧の含有率が、0.0086%であると、基本波の10%相当が2次巻線w2の抵抗によって消費される。
【0124】
そこで、この実施形態では、
図4で説明したように、スロットに起因して生じるν次の高調波回転磁束φν(slot)に対して、高調波電流発生器16からの高調波電流Iν(pls)によりリアクタンス回路15に生じたν次の高調波電圧Vν(pls)に基づき逆位相となる高調波回転磁束φν(pls)を発生させる。
【0125】
そして、この逆位相となる高調波回転磁束φν(pls)により、スロットに起因して生じるν次の高調波回転磁束φν(slot)を低減させている。この高調波回転磁束φν(slot)が低減することにより、高調波電圧Vν(slot),及びこれによって2次巻線w2に誘起される高調波電圧Vν’ (slot)が減少する。その結果、高調波電圧Vν’(slot)により2次巻線w2で無駄に消費されている電力を低減させることができる。
【0126】
ここで、前述のように、2次巻線に流入する高調波電力のうち、11次、17次、23次の高調波電力は2次巻線w2で消費され、13次、19次、25次の高調波電力は、電源側に回生されることを説明した。
【0127】
したがって、通常はこの高調波電力分と基本波の機械軸出力電力分とが加算された電力が、電動機14の入力電力である。
【0128】
上述した実施形態では、
図1で説明した高調波発生装置13を、電源変圧器11から導出された電力幹線12に設けて省電力設備を構成して、高調波電力分を減少させたので、この電力幹線12から給電される電動機14への入力電力が減少する。
【0129】
図11は電動機の回転速度又はすべりに対する電動機14の2次巻線w2への入力電力の関係を示す特性図である。上述した省電力設備を投入する前は曲線aで示す特性であったが、省電力設備を投入した後は曲線bで示す特性に移行する。したがって電動機のすべりはSaからSbに減少し、電動機14への入力電力は減少する。
【0130】
<所定時間後に消費電力が減ることの説明>
図5にその構成例を示し、
図8に示した波形図によりその動作を説明したように本願発明の高調波発生装置では、各逆起電力を発生させるための高次高調波を個々別々に作成し、それらの時間的に切り替えて出力し、その振幅値を変化させて出力部から、各種類の電動機に供給する。
【0131】
図7において、30KWの電動機1430のみを動作させた場合、すなわち逆起電力として29次の高調波を発生させた場合の1日の消費電力量、1時間当たりの最大電力データの変化例を、表3に示す。
【表3】
【0132】
表3では各日付に対して、電動機の1日の消費電力量と、電力発生部を接続していないときの1日の内で1時間当たりの最大電力、電力発生部を付加接続したときの1日のうちで1時間当たりの最大電力を示している。
【0133】
一般的に用いられている電動機は、通常、自動的に動作開始(オン)と動作停止(オフ)を繰り返している。したがって、電動機にある時点において、本発明一実施形態の高調波発生装置13を付加接続しても、電動機は不定期に動作開始と動作停止を行うので、どの時点から高調波発生装置による省電力効果が発生したかを正確に指摘することは困難である。
【0134】
表3に示す電動機は一定の軸出力電力で運転している電動機である。表3に示す消費電力量の変化を見ると、電力発生部を付加接続して9日目あたりから、1日のうちで1時間当たりの最大消費電力が減ってきていることが理解できる。
【0135】
一方、
図7において、複数台の電動機、具体的には10KWの電動機、10台、22KWの電動機2台、30KWの電動機2台を接続した場合の最大消費電力データの変化の例を表4に示す。
【表4】
【0136】
表4では各日付に対して、全電動機の1日の消費電力量と、電力発生部を接続していないときの1日の内の1時間当たりの最大使用電力量、電力発生部を付加接続したときの1日の内の1時間当たりの最大消費電力量を示している。この場合にも、これら複数の電動機も、各々独立して動作開始、動作停止を繰り返している。
【0137】
したがって、本発明一実施形態の電力発生部による省電力効果がどの時点から発生しているかを正確に指摘することは困難である。しかし、表4においても、電力発生部を付加接続してから8日目あたりから、一時間当たりの最大消費電力量が、目立って減ってきていることが理解できる。
【0138】
条件を変えてそのほかの実験も行ったが、やはり、高調波発生装置を付加接続してから、各電動機に省電力効果が現れるまでには、2日から10日くらいかかることがわかった。これは後述するように、電動機の鉄芯などによる保持作用が原因と思われる。
【0139】
このように、接続される各種類の電動機に応じて逆起電力を発生する所定の高次高調波を作成し所定振幅値に調整された高調波を出力する電力設備を付加接続することにより、各電動機において生ずる高調波を削減することによって、省電力効果を得ることが可能となる。
【0140】
本願の発明者は、電動機おけるスロットに起因して発生する回転磁界を抑制するために、微弱な高調波電圧を電動機の端子に印加した場合、省電力効果の遅延作用、及び保持作用があることを見出した。
【0141】
すなわち、微弱な高調波電圧を印加した直後から省電力の効果が現れるまでには、数日、少なくとも2日から5日くらいかかること、また効果が現れた後に本願発明の高調波発生装置を止めても、約10日から20日程度、省電力効果を維持することがわかった。
【0142】
この原因は、電動機を構成する磁気回路の鉄芯に、いわゆるヒステリシス特性に起因する磁気効果が残留しているためと考えられる。
【0143】
<本発明の変形例・応用例>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態では、本発明を誘導電動機に適用する場合について説明した。しかし、回転子に永久磁石を用いるPM電動機にも本発明は適用可能である。
【0144】
これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。