特許第6562975号(P6562975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562975有機電子素子の製造方法及び有機電子素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562975
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】有機電子素子の製造方法及び有機電子素子
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/94 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190808BHJP
   C09K 11/06 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   C07F9/94CSP
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   !C09K11/06 660
   !C09K11/06 690
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2017-125621(P2017-125621)
(22)【出願日】2017年6月27日
(62)【分割の表示】特願2017-517338(P2017-517338)の分割
【原出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-206533(P2017-206533A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2017年6月28日
(31)【優先権主張番号】102014114231.4
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成26年7月 2日、フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクでの博士論文口頭試問における発表 (2)平成26年8月12日、フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクのウェブサイト(http://opus4.kobv.de/opus4fau/frontdoor/index/index/docId/5005)に博士論文「Lewis Acid−Base Theory Applied on Evaluation of New Dopants for Organic Light−Emitting Diodes」掲載
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シュミート
(72)【発明者】
【氏名】アナ マルテンベアガー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ペクール
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン レーゲンスブアガー
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/136422(WO,A1)
【文献】 特開平05−085060(JP,A)
【文献】 特開2011−173992(JP,A)
【文献】 特開平06−172751(JP,A)
【文献】 特開2000−191612(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/182389(WO,A1)
【文献】 特表2013−505565(JP,A)
【文献】 LEGRAVE,N. et al.,Efficient Preparation of Anhydrous Metallic Triflates and Triflimides under Ultrasonic Activation,European Journal of Organic Chemistry,2012年,Vol.2012, No.5,p.901-904
【文献】 SEVRYUGINA,Y. et al.,Breaking infinite CuI carboxylate helix held by cuprophilicity into discrete Cun fragments (n = 6, 4, 2),European Journal of Inorganic Chemistry,2008年,No.2,p.219-229
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
H01L
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属原子Mと、金属原子Mと結合する少なくとも3つの配位子Lとを含む金属錯体であって、ここで、前記配位子Lは、互いに無関係に、次の構造:
【化1】
[式中、R1は、−CF3基であり、かつ、Rは、互いに無関係に、1〜10個のC原子を有する、分枝された又は非分枝の、フッ化された又はフッ化されていない脂肪族炭化水素、アリール及びヘテロアリールを含む群から選択されていて、ここで、aは0又は1であってよい]を示し、
前記金属錯体の金属原子Mは、Biである、前記金属錯体。
【請求項2】
前記金属原子Mは、酸化数IIIのビスマスである、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
配位子Lは、互いに無関係に、
【化2】
を含む群から選択されている、請求項1または2に記載の金属錯体。
【請求項4】
配位子Lは、互いに無関係に、
【化3】
を含む群から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の金属錯体。
【請求項5】
配位子Lが
【化4】
である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の金属錯体。
【請求項6】
次の構造;
【化5】
を示す、請求項1から5までのいずれか1項に記載の金属錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子層が気相堆積により得られる有機電子素子の製造方法に関する。本発明は、更に、有機電子素子に関する。
【0002】
有機エレクトロニクスは、光から電流への変換及びその逆の変換のための有機マトリックス材料の適用、及び有機半導体材料を用いた電子素子の構成を取り扱う。第1に挙げたカテゴリーの例は、例えば、図1に略示的に示した、光を電気信号又は電流に変換する受光器及び有機太陽電池、及び有機電子材料を用いて光を作り出すことができる有機発光ダイオード(OLED)(図2参照)である。第2の技術分野では、例えば、図3に略示的に示した、ドーピングが電極と半導体材料との間の接触抵抗を低減する有機電界効果トランジスタ又はバイポーラトランジスタが該当する。
【0003】
全ての適用は、主な機能性の構成要素として、組成に依存して多様な伝導メカニズムを示す電気的な輸送層を含むことが共通している。一般に、有機材料の固有のp型(正孔)伝導性又はn型(電子)伝導性が区別される。この種の有機物質の電荷輸送は原則として不十分であるため、これに層の電荷輸送特性を改善するとされている付加的な化合物が添加される。通常では、これは、金属化合物又は他の有機化合物によるドーピングによって行われる。伝導性の有意な改善を達成するための発端は、金属錯体の添加である。
【0004】
例えば、本発明の発明者により、既に、国際公開第2013/182389号(WO 2013/182389 A2)及び国際公開第2011/033023号(WO 2011/033023 A1)において、有機電子素子用のp型ドーパントとしてのビスマス錯体及び銅錯体の使用が記載された。
【0005】
マトリックス材料を、p型ドーパントとしてのそれぞれの金属錯体と一緒に含む、記載された素子の有機層は、この場合、例えば溶媒プロセスによって、つまり湿式プロセス技術によって得られた。更に、上述の特許文献では、有機層は、点蒸発源の使用下での気相堆積により作製された。
【0006】
湿式プロセス技術の例は、殊に、インクジェット印刷、グラビア印刷及びオフセット印刷のような印刷技術である。更に、スピンコーティング及びスロットコーティングも典型的な溶媒プロセスである。
【0007】
それに対して、真空プロセスによる有機電子素子の層の作製は、昇華により、つまり熱による蒸発により行われる。この場合、有機層を、気相から、基板又は既に存在する層上に堆積させる。
【0008】
後者に挙げられたプロセスにより、現在では、この間にもパイロット生産によっても市場で入手可能である最も有効な有機素子が製造される。有機電子素子の効率は、とりわけ、これらの素子が極めて多くの個別な層から構築されていることにより達成することもできる。これらの層の各々は、素子中の位置に関しても特別な物理的な電気機能を有する。
【0009】
気相からの堆積により有機層を製造する際に、マトリックス材料及びドーピング材を、例えば同時蒸発によって、好ましくは異なる蒸発源から基板又は既に存在する層上に堆積させる。
【0010】
このために、従来では、点蒸発源が使用される。例えば、本発明の発明者により、国際公開第2011/033023号(WO 2011/033023 A1)及び国際公開第2013/182389号(WO 2013/182389 A2)において、ドープされた有機層の気相堆積は、それぞれ点蒸発源によって行われた。
【0011】
点蒸発源からの堆積の際に、堆積されるべき材料を、坩堝中で真空条件下で蒸発させる。材料の蒸発後に、分子は真空中(10-5〜10-6mbar)での最も高い平均自由行程に基づいて、他に衝突することなく基板に当たる。このことは、材料が、分解せずに基板上に堆積するために、熱的に昇華温度を超えて余り安定である必要がないことを意味する。
【0012】
両方の技術の、湿式プロセス技術も、点蒸発源を介して行われる気相からの堆積も、比較的穏やかな技術である。したがって、これらの技術は、多様な金属錯体のために使用可能である。
【0013】
湿式プロセス技術も点蒸発源を用いる気相堆積も、有機電子素子の製造を工業的条件下でも許容するにもかかわらず、上述の技術は、特に大面積基板の被覆のためには限定的に適しているにすぎない。
【0014】
したがって、本発明の課題は、有機電子素子の製造のための他の方法、殊に大面積基板の被覆のためにも適した方法を提供することである。
【0015】
この課題は、請求項1による方法により解決される。
【0016】
したがって、少なくとも1つの有機電子層を備える有機電子素子の製造方法が提案される。有機電子層は、この場合、マトリックスを含み、このマトリックスは、ドーパントとして金属錯体を含む。例えば、上述のドーパントは、p型ドーパントであってよい。上述の金属錯体は、少なくとも1つの金属原子Mと、この金属原子Mと結合する少なくとも1つの配位子Lとを含み、この配位子Lは、互いに無関係に、次の一般構造を示す:
【化1】
【0017】
上記式中、E1及びE2は、互いに無関係に、酸素、硫黄、セレン、NH又はNR′であり、ここで、R′は、アルキル又はアリールを含む群から選択されていて、かつ配位子Lの置換されたベンゼン環と結合されていてよい。
【0018】
置換基R1は、互いに無関係に、1〜10個のC原子を有する分枝した又は非分枝の、フッ化された脂肪族炭化水素を含む群から選択されていて、n=1〜5である。つまり、例えば、1〜5個の置換基R1が存在することもでき、これらの置換基R1は、それぞれ互いに無関係に、1〜10個のC原子を有する分枝した又は非分枝の、フッ化された脂肪族炭化水素を含む群から選択されていてよい。つまり、この場合、例えば複数の同じ置換基R1も複数の異なる置換基R1も存在していてよい。
【0019】
置換基R2は、互いに無関係に、−CN、1〜10個のC原子を有する分枝した又は非分枝の脂肪族炭化水素、アリール及びヘテロアリールを含む群から選択されていて、m=0〜最大5−nである。つまり、例えば、1つ又は複数の置換基R2が存在することも可能であり、この置換基R2は、互いに無関係に、−CN、1〜10個のC原子を有する分枝した又は非分枝の脂肪族炭化水素、アリール及びヘテロアリールを含む群から選択されている。しかしながら、例えば、配位子Lは、置換基R2を含んでいないことも可能である。
【0020】
配位子Lは、したがって、各々の場合に、少なくとも1つの置換基R1を含むが、置換基R2を必ずしも含んでいる必要はない。
【0021】
配位子Lのベンゼン環の置換されていない全ての位置は、水素又は重水素で占められている。
【0022】
金属Mは、例えば典型金属又は遷移金属であってよい。
【0023】
少なくとも1つの有機電子層のドーパントの堆積は、気相堆積用の蒸発源を用いて行われ、この場合、この蒸発源は、ドーパントが蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすように構成されている。
【0024】
本発明の場合に使用されるような蒸発源とは反対に、点蒸発源の場合には、ドーパントを蒸発させる蒸発源の領域と、蒸発源の出口開口部と、ドーパントを堆積させる基板とが、全て直線状に配置されているため、ドーパントは基板に直接到達し、かつ蒸発源の壁部との衝突を回避することができる。
【0025】
本発明の場合に使用されるような蒸発源は、ドーパントを蒸発させる蒸発源の領域と、蒸発源の出口開口部と、基板とは、直線状に配置されていない。この蒸発源は、むしろ、ドーパントが、蒸発源の領域内で蒸発した後で、まだ蒸発源内で、この蒸発源から離れかつ基板に当たる前に変向を受けることを特徴とする。
【0026】
例えば、この場合、ドーパントは、蒸発源の複数の壁部との衝突を起こすこともできる。例えば、ガス流を、ドーパントと一緒に、蒸発源の領域の上方で、例えば管の形で誘導し、その際、ドーパントは蒸発源の壁部との衝突を複数回起こすこともできる。例えば供給源の壁部は加熱されていてもよいので、この壁部は、少なくともドーパントの昇華温度と同じ高さの温度を示す。
【0027】
この種の蒸発源は、従来型の蒸発源と比べて、気相堆積のために、ガス流の改善された案内を許容するという利点を示す。これは、殊に被覆されるべき大面積基板の場合の気相堆積のために利点を示すことができる。
【0028】
本発明による方法の場合に、ドーパントが蒸発源を離れる前に、この際に分解されることなく、ドーパントが例えば蒸発源の壁部との数千回の衝突を起こすことができる。
【0029】
多くの供給源の場合に、堆積されるべきドーパントは、例えばスリット又は複数の穴の形の出口開口部を介して自由な真空内へ進入するまでに、蒸発源の壁部との数千回の衝突を起こす。蒸発源の壁部での材料の堆積を抑制するために、それ自体は、頻繁に堆積されるべきドーパントの本来の昇華温度よりも20〜80ケルビン高い又はそれどころか明らかにより高い温度に加熱される。ドーパントは、気相からの堆積の際に分解されずに、この温度に耐えることができなければならない。
【0030】
本発明の発明者は、有機層中でドーパントとして使用される従来型の金属錯体が、湿式プロセス技術又は点蒸発源による気相堆積を用いた加工のために十分には安定であるが、ドーパントが蒸発源の少なくとも1つの壁部との衝突を起こすような蒸発源を用いて堆積させるためには十分に安定でないことを確認した。
【0031】
例えば、本方法の発明者は、国際公開第2013/182389号(WO 2013/182389 A2)及び国際公開第2011/033023号(WO 2011/033023 A1)のp型ドーパントを、一般に、溶媒プロセスを用いて及び点蒸発源からの気相堆積により、適切なマトリックス材料と一緒に有機層の形で堆積させることができるが、これらの文献に挙げられた化合物の多くは、ドーパントが蒸発源の壁部と衝突を起こすような蒸発源を用いた堆積にとって十分に温度安定性ではないことを観察した。例えば、本発明の発明者は、例えば銅又はビスマスの金属錯体は、R1の形の置換基を備えていない場合には、堆積のために十分に安定ではないことを知見した。例えば、フッ化されたベンゼン環を備えた安息香酸誘導体は、R1の形の置換基なしでは、本発明による方法で使用するために十分に安定でない。
【0032】
本発明の発明者は、請求項1に記載の本発明による方法の場合に使用されるような金属錯体は、意外にも、ドーパントが蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすように構成されている蒸発源を用いて蒸発させかつ堆積させるために十分に熱安定性を示すことを知見した。
【0033】
例えば、発明者は、殊に、1〜10個のC原子を有する分枝した又は非分枝の、フッ化された脂肪族炭化水素である、少なくとも1つの置換基R1の導入が、全体の錯体の熱安定性の明らかな改善を達成でき、それにより請求項1に記載の蒸発源を介した堆積が初めて可能になることを確認した。
【0034】
同時に、本発明による方法の場合に使用されるような金属錯体は、高い温度安定性の他に、同時に十分に良好なドーピング強度を特徴とする。
【0035】
本発明による方法を用いて作製される有機電子素子の層は、更に、可視領域で高い光学的透明性を特徴とする。
【0036】
本発明による方法で製造された金属錯体は、従来型の金属錯体と同等の価格で入手可能であり、かつ更に大きな技術的手間なしに製造可能である。
【0037】
ドーパントが蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源の使用は、全体として、有機電子素子の、余り手間のかからない、時間を節約するかつ低コストの作製を可能にする。したがって、本発明による方法は、工業的規模での適用のために特に良好に適している。殊に大面積基板を被覆するためには、本発明による方法は、例えば点蒸発源を使用する従来の方法よりも明らかに良好に適している。本発明による方法は、大面積被覆法でもある。
【0038】
次に、いくつかの概念の定義を簡単に示す:
【0039】
本発明の意味において、「有機電子素子」の表記は、殊に有機トランジスタ、有機発光ダイオード、発光電気化学セル、有機太陽電池、フォトダイオード及び有機光起電力素子の全般を意味し、かつ/又はこれらを含む。
【0040】
本発明の意味範囲で、「p型ドーパント」の表記は、殊に、ルイス酸性度を示し、かつ/又はマトリックス材料と錯体を形成することができる材料を含むか又はこの材料を意味し、ここでこの材料は(形式的な場合であっても)ルイス酸性に作用する。
【0041】
次に、本発明による方法の一連の好ましい実施形態を詳細に説明する:
【0042】
特に好ましい実施形態の場合に、本発明による方法は、気相堆積の際に線蒸発源を使用する。
【0043】
線蒸発源の場合に、気相からの堆積は、例えば穴の列の形の出口開口部としてのスリットを介して行われる。この場合、分子は、最終的に、スリット又は複数の穴を通過して自由な真空内へ出るまでに、しばしば蒸発源の壁部との数千回の衝突を起こす。線蒸発源の壁部での材料の堆積を防ぐために、この壁部は、しばしば、本来の昇華点を20〜80ケルビン上回る温度に加熱される。更に高い温度に加熱することも可能である。
【0044】
従来のドーパントは、蒸発源の壁部の衝突の際に大抵は分解される。例えば、発明者は、国際公開第2013/182389号(WO 2013/182389 A2)及び国際公開第2011/033023号(WO 2011/033023 A1)の金属錯体の多くが、点蒸発源を用いた堆積のためには十分に安定であるが、実験に示されているように、錯体が蒸発源の壁部と衝突を起こすような線蒸発源を用いて堆積させることができないことを知見した。
【0045】
Schmid et al.、「Fluorinated Copper(I) Carboxylates as Advanced Tunable p-Dopants for Organic Light-Emitting Diodes」、(Advanced Materials 2014, Vol. 26, 6, 878-885)の論文に記載された化合物もp型ドーパント材である。確かに、本発明の発明者により、ここで記載された化合物は、点蒸発源では分解されずに蒸発することができたが、しかしながら線蒸発源に転用することはできなかった。
【0046】
好ましい実施形態の場合には、本発明による方法において、ルイス酸性であり、つまり電子対受容体として機能するような記載された形の金属錯体が使用される。このことは、マトリックス材料との相互作用のために特に好ましいことが明らかになった。
【0047】
本発明の実施形態は、金属錯体が複数の同じ配位子Lを備える、本発明による方法に関する。このような錯体は、多様な配位子Lを備えた金属錯体として、大抵は簡単に製造することができる。
【0048】
本発明の実施形態は、金属錯体が少なくとも2つの異なる配位子Lを備える、本発明による方法に関する。このような錯体も、蒸発源の少なくとも1つの壁部とのドーパントの衝突を引き起こすように構成されている蒸発源で堆積させることができる。
【0049】
本発明の実施形態は、金属錯体が、配位子Lの他に、更に、配位子Lとは異なる式の異なる配位子を含む、本発明による方法に関する。このような錯体も、高い熱安定性を特徴としている。
【0050】
本発明の他の態様の場合に、本発明による方法において、少なくとも1つの空いた又は部分的に利用可能な配位サイトを有する金属錯体が使用される。このことも、同様に、マトリックス材料との相互作用のために特に好ましいことが明らかになった。
【0051】
本発明の好ましい実施形態は、金属錯体の金属Mが典型金属及び遷移金属の群から選択されている、本発明による方法に関する。殊に、金属Mは、周期表の13〜15族の典型金属、及び金属Cu、Cr、Mo、Rh及びRuであることができる。
【0052】
これらの錯体は、有機電子素子の有機層中でのp型ドーパントとして有効であることが実証された。そのルイス酸性度に基づき、上述の金属の錯体を用いて良好なp型ドーピング材作用が達成される。更に、記載された金属錯体は、簡単に製造可能であり、かつ手間のかかる製造方法を必要としない。有機層の伝導性は、更に、言及された金属のドーピング材の濃度によってそれぞれの要件に合わせることができる。
【0053】
本発明の他の態様は、金属錯体の金属Mがビスマス又は銅である、本発明による方法に関する。例えば、これは、酸化数III又はVのビスマスを有する金属錯体であってよい。この場合、酸化数IIIのビスマス錯体が特に好ましい。例えば、金属錯体は、銅(I)錯体又は銅(II)錯体であってよい。この場合、酸化数Iの銅錯体が特に好ましい。
【0054】
銅及びビスマスの金属錯体は、簡単に製造することができる特に有効なp型ドープ材として有効であることが実証された。例えば、上述のドーピング材を含む正孔輸送層を備えた有機電子素子が、特に良好な伝導性により傑出している。更に、相応する錯体は、特に熱的に安定である。
【0055】
特に好ましい実施形態の場合には、置換基R1は、少なくとも二フッ化された置換基であり、つまりR1は、少なくとも2個のフッ素原子を有する。置換基R1は、過フッ化された置換基である場合が、更に好ましい。フッ化の度合いが高くなればそれだけ、金属錯体に関する置換基の安定化効果がより強くなる。
【0056】
本発明の特に好ましい実施形態は、金属錯体中の配位子Lの置換基R1の少なくとも1つが−CF3基である、本発明による方法に関する。
【0057】
本発明の発明者は、この種の金属錯体を用いた本発明による方法が特に好ましいことを知見した。というのも、この種の金属錯体は、特に高い熱安定性を示し、したがって、金属錯体が蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源内での使用の場合でも分解されないためである。
【0058】
発明者は、配位子Lの置換基R1としての−CF3基の電子的及び立体的特性が、特に安定な金属錯体を生じさせることを観察した。殊に、極めて高い熱安定性が可能となるため、配位子Lの置換基R1としての−CF3基を備えた金属錯体は、昇華点をはるかに超える温度で初めて分解する。
【0059】
同様に−CF3基は金属錯体の比較的高いルイス酸性度をサポートし、かつ特に良好なドーピング材強度を生じさせ、このことが製造された有機電子素子の有機層中の伝導性をもたらす。
【0060】
更に、−CF3置換基を備えた配位子は、配位子Lの製造のための出発材料における他のフッ化された脂肪族炭化水素と比べてより普及しているので、置換基R1が−CF3基である配位子が、他の置換基R1を備えた配位子よりもより容易に入手可能でありかつより低コストである。
【0061】
本発明の他の実施形態は、配位子Lが正確に2つの置換基R1を備え、この置換基R1がそれぞれ−CF3基を形成する、本発明による方法に関する。
【0062】
本発明の発明者は、意外にも、2つの−CF3基の使用により、例えば1つだけの−CF3基の使用とは反対に、金属錯体の温度耐性の更なる改善を達成できることを知見した。このことは、ドーピング材、つまりドーパントが蒸発源の壁部の少なくとも1つと衝突を起こすような蒸発源を用いて、ドーピング材として上述の金属錯体を含む有機層を施す際に、特に良好な結果を生じる。
【0063】
本発明の他の実施形態は、配位子Lが正確に2つの置換基R1を備え、この置換基R1がそれぞれ−CF3基を形成し、かつ配位子Lのベンゼン環の3,5位置に配置されている、本発明による方法に関する。
【0064】
本発明の発明者は、上述の連結度の配位子Lを備えた錯体が、特に高い熱安定性を許容することを知見した。発明者は、ベンゼン環の3,5位置に存在する基の立体的要求により、金属錯体の特に良好な安定化を可能にすることを確認した。
【0065】
本発明の別の実施形態は、置換基R2が、互いに無関係に、−CN、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、及び置換された又は非置換のフェニル基を含む群から選択されている、本発明による方法に関する。
【0066】
本発明の発明者は、ドーパントが蒸発源の壁部の少なくとも1つと衝突を起こすような蒸発源を用いたこの種の錯体の蒸発が、錯体の分解なしに可能であることを知見した。つまり、全ての置換基がフッ化された炭化水素ではない配位子Lを備えた錯体も線蒸発源中で使用できる。
【0067】
本発明の他の実施形態は、金属錯体の配位子Lが、置換基R2を備えていない、つまりm=0である、本発明による方法に関する。
【0068】
フッ化されていない炭化水素置換基は、フッ化された炭化水素置換基よりも高い反応性を示すため、置換基R2の省略が、安定性の更なる改善を引き起こし、それと共に、金属錯体が蒸発源の壁部の少なくとも1つと衝突を起こすような蒸発源を用いた気相からのより良好な堆積性を生じさせる。
【0069】
本発明の他の好ましい態様の場合に、金属錯体は、正確に2つの置換基R1を備えるか、又は更に多くの置換基R1を備える。2つ又はそれ以上の置換基R1は、外部からの錯体の特に良好な遮閉を引き起こし、したがって、金属錯体の特に良好な安定化を許容する。
【0070】
本発明の他の態様は、金属錯体の配位子LのE1も、E2も酸素である、本発明による方法に関する。この場合、配位子Lは、安息香酸の、フッ化された炭化水素で置換された誘導体である。
【0071】
本発明の発明者は、この種の金属錯体が、ドーパントが蒸発源の壁部の少なくとも1つと衝突を起こすような蒸発源による堆積を用いた有機電子素子の製造のために特に良好に適していることを確認した、というのも、この金属錯体は容易に製造可能で、良好なドーパント強度の金属錯体を生じさせ、かつ熱安定性に関する特に高い要求を満たすためである。殊に、安息香酸の誘導体は、しばしば、良好に市場で入手可能であるか、又は工業的に高い手間をかけずに製造することができる。
【0072】
本発明の特に好ましい実施形態は、金属錯体の配位子Lが、互いに無関係に
【化2】
を含む群から選択されている、本発明による方法に関する。
【0073】
複数の配位子Lが存在する場合、この際、金属錯体の全ての配位子Lは、互いに無関係に選択されていてよい。例えば、金属錯体中に、記載された配位子Lの複数の異なる配位子が存在するか、又は全ての配位子Lが同じであってもよい。
【0074】
本発明の発明者は、この群からの配位子Lを備えた金属錯体が、特に良好な温度耐性を示し、かつ更に特に良好なドーピング材特性を示すことを確認した。意外にも、この金属錯体は、金属錯体が、蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすが、蒸発源内では分解しないような蒸発源を用いた堆積のために特に適していることが明らかになった。
【0075】
本発明の更に好ましい実施形態は、金属錯体の配位子Lが、互いに無関係に、
【化3】
を含む群から選択されている、本発明による方法に関する。
【0076】
配位子Lについて挙げられた実施例は、許容できる価格で市場で入手可能であり、したがって自社生産する必要はない。したがって、これらは、特に工業的規模での適用のために適している。
【0077】
本発明の更に好ましい実施形態は、金属錯体の配位子Lが、
【化4】
である、本発明による方法に関する。
【0078】
3,5位置に2つの−CF3置換基を備えた安息香酸の誘導体の使用により、昇華温度をはるかに超えてもまだ熱的に安定である金属錯体が得られる。これらの錯体は、この錯体が蒸発源の壁部の少なくとも1つと衝突を起こすような蒸発源、例えば線蒸発源による堆積を含む方法のために特に良好に適している。更に、これは、優れた電気特性を示す有機電子素子を生じさせる。
【0079】
本発明による方法の他の実施形態の場合に、使用された金属錯体は、単核金属錯体、つまり1つだけの中心原子を備えた金属錯体である。
【0080】
本発明による方法の、これとは異なる実施形態の場合には、多核金属錯体を使用する。この方法では、頻繁に、複数のルイス酸性の中心の提供により、堆積されるべき有機層の伝導性を更に良好に調節することができる。
【0081】
本発明の他の態様は、ホモレプチック金属錯体だけを使用する、本発明による方法に関する。この種の錯体は、しばしば余り手間をかけずに製造することができる、というのもこの錯体は、配位子Lの式の配位子の1つの種類だけを含むためである。例えば、潜在的に錯体全体の安定性を低下させかねない他の配位子も導入されない。
【0082】
本発明の他の実施形態は、配位子Lが、互いに無関係に、次の配位の式
【化5】
の1つにより金属錯体の金属原子Mと結合している、本発明による方法に関する。
【0083】
発明者の実験による所見は、金属原子Mとの結合が多様であることがあることを示す。これらの配位子は、温度安定性の向上を引き起こすために、単座で、二座で又は架橋して結合されていてよい。
【0084】
本発明の特に好ましい実施形態は、金属錯体がビスマス錯体であり、かつ配位子Lは、互いに無関係に、次の一般構造:
【化6】
[式中、置換基R1は、1〜10個のC原子を含む、分枝した又は非分枝の、フッ化された脂肪族炭化水素を含む群から選択されていて、
置換基R3は、1〜10個のC原子を含む、分枝した又は非分枝の、フッ化された又はフッ化されていない脂肪族炭化水素、アリール及びヘテロアリールを含む群から選択されていて、aは、0又は1であってよい]を示すことができる、本発明による方法に関する。
【0085】
本発明の発明者は、上述の配位子を備えたビスマス錯体が、特に高い温度耐性を示すことを知見した。したがって、上述の錯体は、錯体が蒸発源の壁部の少なくとも1つと衝突を起こすような蒸発源を用いて良好に堆積することができ、そのためこの方法は、有機電子素子の生産を特に低い技術的な手間で可能にし、それにより特に低コストである。
【0086】
本発明の他の実施形態は、金属錯体が、金属錯体の昇華温度を10ケルビン超えるほど高い、更に20ケルビン超えるほど高い、殊に40ケルビン超えるほど高い分解温度を示す、本発明による方法に関する。最も好ましくは、この分解温度は、金属錯体の昇華温度を70ケルビン超えるほど高い。
【0087】
分解温度が、金属錯体の昇華温度をより大きく超えればそれだけ、この金属錯体は蒸発源の壁部との衝突に対してより安定となる。
【0088】
本発明の他の実施形態は、例えば、金属錯体と一緒に同時蒸発により堆積される有機電子層のマトリックス材料が、例えば正孔輸送層中で使用することができる、次の材料の1つ又は複数を含む群から選択されているか、又は次の材料の1つ又は複数からなる本発明による方法に関する:
【0089】
NPB (N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)、
β−NPB (N,N′−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)
TPD (N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)
Spiro TPD (N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)
Spiro−NPB (N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−スピロ)
DMFL−TPD (Ν,Ν′−ビス(3−メチルフェニル)−Ν,Ν′−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン)
Ν,Ν′−ビス(ナフタレン−1−イル)−Ν,Ν′−ビス(フェニル)−2,2−ジメチルベンジジン
N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−9,9−スピロフルオレン
N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−9,9−スピロフルオレン
DMFL−NPB (Ν,Ν′−ビス(ナフタレン−1−イル)−Ν,Ν′−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン)
DPFL−TPD (Ν,Ν′−ビス(3−メチルフェニル)−Ν,Ν′−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン)
DPFL−NPB (Ν,Ν′−ビス(ナフタレン−1−イル)−Ν,Ν′−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン)
Spiro−TAD (2,2′,7,7′−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9′−スピロビフルオレン)
9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン
9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン
9,9−ビス[4−(N,N′−ビス−ナフタレン−2−イル−N,N′−ビス−フェニル−アミノ)−フェニル]−9H−フルオレン
N,N′−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン
2,7−ビス[N,N−ビス(9,9−スピロ−ビフルオレン−2−イル)−アミノ]−9,9−スピロ−ビフルオレン
2,2′−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]9,9−スピロ−ビフルオレン
2,2′−ビス(N,N−ジ−フェニル−アミノ)9,9−スピロ−ビフルオレン
ジ−[4−(N,N−ジトリル−アミノ)−フェニル]シクロヘキサン
2,2′,7,7′−テトラ(N,N−ジ−トリル)アミノ−スピロ−ビフルオレン
N,N,N′,N′−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン
2,2′,7,7′−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン
Spiro−TTB (2,2′,7,7′−テトラキス−(Ν,Ν′−ジ−p−メチルフェニルアミノ)−9,9′−スピロビフルオレン)
酸化チタン−フタロシアニン
銅−フタロシアニン
2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン
4,4′,4″−トリス(Ν−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン
4,4′,4″−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン
4,4′,4″−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン
4,4′,4″−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン
ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル
Ν,Ν,Ν′,Ν′−テトラキス(4−メトキシフェニル)ベンジジン
【0090】
これらの材料は、有機電子素子中のマトリックス材料として有効であると実証された。
【0091】
本発明の別の実施形態は、この方法により製造された有機電子素子の少なくとも1つの有機電子層が電子遮断層である、本発明による方法に関する。この場合、同時蒸発は、少なくとも部分的に電子伝導性材料と共に、蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源、例えば線蒸発源を用いて行われる。
典型的な導電性材料は、この場合、次のものである:
2,2′,2″−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)
2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール
2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
8−ヒドロキシキノリノラト−リチウム
4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール
1,3−ビス[2−(2,2′−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール
ビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム
6,6′−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2′−ビピリジル
2−フェニル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)−アントラセン
2,7−ビス[2−(2,2′−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン
1,3−ビス[2−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン
2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン
1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5−f][1,10]フェナントロリン。
【0092】
電子の流れを遮断すること及び制限することは、例えば高効率有機発光ダイオード(OLED)のために大きな意味があり、したがって、本発明による方法は、工業的製造の範囲内で大いに役立つ。
【0093】
本発明は、本発明による方法の他に、更に、少なくとも1つの有機電子層を備えた有機電子素子に関する。有機電子層はマトリックスを含み、このマトリックスはドーパントとして、例えばp型ドーパントとしてビスマス錯体を含む。ビスマス錯体は、ビスマス原子と結合する少なくとも1つの配位子Lを備え、この配位子Lは、互いに無関係に、次の一般構造:
【化7】
[式中、置換基R1は、1〜10のC原子を含む、分枝した又は非分枝の、フッ化された脂肪族炭化水素の群から選択されていて、
置換基R3は、1〜10個のC原子を含む、分枝した又は非分枝の、フッ化された又はフッ化されていない脂肪族炭化水素、アリール及びヘテロアリールを含む群から選択され、aは、0又は1であってよい]を示すことができる。
【0094】
本発明の発明者は、この形態の有機電子素子が、従来の有機電子素子よりも明らかに低い技術的手間で作製できることを確認した。
【0095】
これは、本発明による構成要素が、特に高い温度耐性により優れた、まさに記載された形態のビスマス錯体を含むために可能である。したがって、金属錯体のより高い温度耐性を必要とする作成方法を、つまり、気相堆積用の蒸発源中で、錯体が蒸発源の少なくとも1つの壁部との衝突を起こすか又は錯体同士が衝突を起こすような作成方法を使用することもできる。例えば、特に高い耐熱性を必要とする線蒸発源を用いて作製を行うことも可能である。
【0096】
本発明の有機電子素子の別の実施形態は、配位子Lが、互いに無関係に、
【化8】
を含む群から選択されていることにより優れる。
【0097】
この素子は、ビスマス錯体の温度耐性に基づいた特に簡単な作製の他に、更に、特に低コストである。というのも上述の配位子は、許容できる価格で市場で入手可能であり、かつ自社生産の必要がないためである。
【0098】
本発明による有機電子素子の特に好ましい実施形態は、ビスマス錯体の配位子Lが、ベンゼン環の3位及び5位で置換されている、素子に関する。このような錯体は特に安定である。
【0099】
本発明による有機電子素子の特に好ましい実施形態は、ビスマス錯体の配位子Lが
【化9】
である、素子に関する。
【0100】
本発明による有機電子素子の特に好ましい実施形態は、ビスマス錯体が、
【化10】
の錯体である、素子に関する。
【0101】
本発明の発明者は、この錯体が、良好なドーピング特性も、特に高い温度安定性も示すことを観察した。錯体は、錯体の昇華温度を70℃超える温度でもまだ安定であり、したがって、使用されたドーピング材の高い温度耐性を要求する作成方法に対して特に適している。錯体は、錯体の特別な安定性を必要とする蒸発源中での、殊に錯体が蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源中での気相堆積のためにも特に適している。例えば、この錯体は、マトリックス材料と一緒に、線蒸発源を用いた堆積の範囲内で僅かな手間で施すことができる。
【0102】
この理由から、上述の錯体を含む有機電子素子は、大工業規模でも特に簡単にかつ低コストで製造でき、かつ同時に、例えば伝導性の観点で、極めて良好な電気特性を示す有機電子層を備える。
【0103】
上述の、並びに特許請求の範囲及び実施例に記載された、本発明により使用されるべき素子は、そのサイズ、形状、材料選択及び技術的コンセプトに関して特別な例外条件が課されていないので、この適用分野において公知の選択基準を無限定で適用することができる。
【0104】
本発明の主題の更なる詳細、特徴及び利点は、図面及び所属する実施例及び参考例の次の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】有機発光ダイオード(10)の構造の略図を示す。
図2】光(21)を電流に変換する、PIN構造(20)を備えた有機太陽電池の構造の略図を示す。
図3】有機電界効果トランジスタ(30)の考えられる略示断面図を示す。
図4】Creaphys社の点蒸発源による従来技術の構造を示す。
図5】Vecco社の、略示された線蒸発源に関する例示的な線蒸発源の構造を示す。
図6】実施例Iについて、ドープされていないマトリックス材料及びドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。
図7】実施例IIに関して、ビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチル−ベンゾアートでドープされた1−TNataについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図8】実施例IIに関して、ビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチル−ベンゾアートでドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図9】参考例Iに関して、ビスマス(III)−トリス(2,6−ジフルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図10】参考例Iに関して、ビスマス(III)−トリス(2,6−ジフルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図11】参考例IIに関して、ビスマス(III)−トリス(4−フルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図12】参考例IIに関して、ビスマス(III)−トリス(4−フルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図13】参考例IIIに関して、ビスマス(III)−トリス(3−フルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図14】参考例IIIに関して、ビスマス(III)−トリス(3−フルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図15】参考例IVに関して、ビスマス(III)−トリス(3,5−ジフルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図16】参考例IVに関して、ビスマス(III)−トリス(3,5−ジフルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図17】参考例Vに関して、ビスマス(III)−トリス(3,4,5−トリフルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図18】参考例Vに関して、ビスマス(III)−トリス(3,4,5−トリフルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図19】参考例VIに関して、ビスマス(III)−トリス(ペルフルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図20】参考例VIに関して、ビスマス(III)−トリス(ペルフルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図21】参考例VIIに関して、ビスマス(III)−トリス(4−ペルフルオロトルアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図22】参考例VIIに関して、ビスマス(III)−トリス(4−ペルフルオロトルアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図23】参考例VIIIに関して、ビスマス(III)−トリス(トリフルオロアセタート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図24】参考例VIIIに関して、ビスマス(III)−トリス(トリフルオロアセタート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図25】参考例IXに関して、ビスマス(III)−トリス(トリアセタート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
図26】参考例IXに関して、ビスマス(III)−トリス(トリアセタート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0106】
図1は、有機発光ダイオード(10)の構造の略図を示す。発光ダイオードは、ガラス層(1);透明な導電性酸化物(TCO)層又はPEDOT:PPS層又はPANI層(2);正孔注入層(3);正孔輸送層(HTL)(4);エミッタ層(EML)(5);正孔遮断層(HBL)(6);電子輸送層(ETL)(7);電子注入層(8)及びカソード層(9)から構成されている;
【0107】
図2は、光(21)を電流に変換する、PIN構造(20)を備えた有機太陽電池の構造の略図を示す。太陽電池は、酸化インジウムスズからなる層(22);p型にドープされた層(23);吸収層(24);n型にドープされた層(25)及び金属層(26)からなる;
【0108】
図3は、有機電界効果トランジスタ(30)の考えられる略示断面図を示す。基板(31)上に、ゲート電極(32)、ゲート誘電体(33)、ソース及びドレインコンタクト(34+35)並びに有機半導体(36)が設けられている。ハッチングを施された箇所は、コンタクトドーピングが役立つ箇所を示す。
【0109】
図4は、Creaphys社の点蒸発源による従来技術の構造を示す。点蒸発源は、坩堝(41)を使用する。堆積されるべき材料を坩堝中で真空条件下で蒸発させる。材料の蒸発後に、分子は出口開口部(42)を介して点蒸発源を離れる。真空(10-5〜10-6mbar)中での高い平均自由行程に基づき、ドーパントとして機能する分子、例えば金属錯体の分子は、他に衝突せずに基板に当たる。このことは、材料が、分解せずに基板上に堆積するために、熱的に昇華温度を超えて余り安定である必要がないことを意味する。殊に、点蒸発源を用いて堆積されるドーピング材は、蒸発源の壁部に当たらず、蒸発源の開口部に直接配置することにより、被覆されるべき基板上に直接堆積させることができる。ドーパントが蒸発する坩堝の領域及び出口開口部及び基板は、つまり直線的な配置で存在する。殊に、ドーパントは、基板に当たる前に、導管系又は噴霧系を介して迂回されることなく堆積させることができる。
【0110】
図5は、Vecco社の、略示された線蒸発源に関する線蒸発源の構造を例示的に示す。線蒸発源は、取り外し可能な坩堝(51)を使用する。堆積されるべき材料、例えばドーパントを坩堝内で蒸発させた後に、気相の形で存在するドーパントは、導管(53)を介して出口開口部(52)に導かれる。この場合、出口開口部(52)は、例えばスリット状であるか、又は穴の列からなっていてよい。線蒸発源は、ドーパントが基板に対して直接的に線状に到達することを許容せず、ドーパントはむしろ線蒸発源内でしばしば数回変向される。この場合、ドーパントは線蒸発源の壁部との多数回の衝突を起こす。線蒸発源は、更に、制御可能な弁(54)、流量調節器(56)、及び例えば加熱装置又は弁の電気的制御ための対応する配線(55)を備えていてよい。ガス流の適切な案内により、大面積の堆積を特に良好に達成することができる。
【0111】
図6は、実施例Iについて、ドープされていないマトリックス材料及びドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。この場合、マトリックス材料として、正孔導体の2,2′,7,7′−テトラ(Ν,Ν−ジトリル)アミノ−9,9−スピロ−ビフルオレン(略してSpiro−TTB)を使用した。この電流密度−電圧曲線は、正孔導体のSpiro−TTB中での15%Cu(3,5−tfmb)の十分なドーピング挙動を説明する。
【0112】
図7は、実施例IIに関して、ビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチル−ベンゾアートでドープされた1−TNataについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、同じ条件下での比較例との電気特性の比較を可能にするために、点蒸発源を用いて作製されたドープされたマトリックス材料に関して実施した。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。この電圧特性曲線は良好な伝導性を示し、かつビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチル−ベンゾアートの良好なドーピング材強度を証明する。
【0113】
図8は、実施例IIに関して、ビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチル−ベンゾアートでドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0114】
図9は、参考例Iに関して、ビスマス(III)−トリス(2,6−ジフルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0115】
図10は、参考例Iに関して、ビスマス(III)−トリス(2,6−ジフルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0116】
図11は、参考例IIに関して、ビスマス(III)−トリス(4−フルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0117】
図12は、参考例IIに関して、ビスマス(III)−トリス(4−フルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0118】
図13は、参考例IIIに関して、ビスマス(III)−トリス(3−フルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0119】
図14は、参考例IIIに関して、ビスマス(III)−トリス(3−フルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0120】
図15は、参考例IVに関して、ビスマス(III)−トリス(3,5−ジフルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0121】
図16は、参考例IVに関して、ビスマス(III)−トリス(3,5−ジフルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0122】
図17は、参考例Vに関して、ビスマス(III)−トリス(3,4,5−トリフルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0123】
図18は、参考例Vに関して、ビスマス(III)−トリス(3,4,5−トリフルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0124】
図19は、参考例VIに関して、ビスマス(III)−トリス(ペルフルオロベンゾアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0125】
図20は、参考例VIに関して、ビスマス(III)−トリス(ペルフルオロベンゾアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0126】
図21は、参考例VIIに関して、ビスマス(III)−トリス(4−ペルフルオロトルアート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0127】
図22は、参考例VIIに関して、ビスマス(III)−トリス(4−ペルフルオロトルアート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0128】
図23は、参考例VIIIに関して、ビスマス(III)−トリス(トリフルオロアセタート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0129】
図24は、参考例VIIIに関して、ビスマス(III)−トリス(トリフルオロアセタート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0130】
図25は、参考例IXに関して、ビスマス(III)−トリス(トリアセタート)でドープされた1−TNataについて、点蒸発源を用いた堆積により得られたドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。この測定は、それぞれ3つの異なるドーピング材含有率で実施した。
【0131】
図26は、参考例IXに関して、ビスマス(III)−トリス(トリアセタート)でドープされたマトリックス材料1−TNata、Spiro−TTB及びα−NPBについての電圧に対する電流密度、及び外部電界強度に対する電流密度を示す。
【0132】
次に、実施例I及びIIを紹介する。金属錯体の銅(I)ビス−トリフルオロ−メチルベンゾアート(実施例I)及びビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチルベンゾアート(実施例II)の双方は、それらの昇華温度を明らかに超えた分解温度で極端な温度安定性を示す。双方の錯体は、錯体が、蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源を用いて堆積させることができる。例えば、双方の錯体は、線蒸発源による気相堆積のために十分に高い安定性を示す。これは、いわゆるアンプル試験(Ampullen-Tests)により実験的に確認された。
【0133】
他の全ての参考例、つまり参考例I〜IXは、アンプル試験において十分な安定性を示さなかった。発明者は、これらの物質が、錯体が衝突を起こすような蒸発源を用いた堆積のために適していないことを実験的に確認した。
【0134】
それぞれのドープされた層の電気特性を、以後同様に調査する。参考例I〜IXの金属錯体は、金属錯体が蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源を用いた堆積に対して、それぞれ十分な安定性を示さないため、点蒸発源を用いて堆積された有機電子層についての測定を実施し、かつ互いに比較した。例えば、参考例I〜IXの錯体は、線蒸発源を用いた堆積に対して十分に安定ではない。
【0135】
実施例I
実施例Iは、金属錯体の銅(I)ビス−トリフルオロメチルベンゾアート(以後、Cu(3,5−tfmb)と省略する)に関する。
【0136】
一般に、次の経路で、ベンゾアートのフッ化された誘導体の多くの銅(I)錯体を製造することができる:
【化11】
【0137】
同様に、本発明による方法で使用される多数の金属錯体を製造することができる。
【0138】
例えば、金属錯体の3,5−ビス−(トリフルオロメチル−ベンゾアート)は、Cu(I)−トリフルオロアセタートから次の手法により得ることができる:
【0139】
Cu(I)−トリフルオロアセタート5g(7.08mmol)を、3,5−ビス−(トリフルオロメチル安息香酸)7.5g(29.03mmol)と一緒に、250mlの二口フラスコ内に不活性ガス下(例えばグローブボックス中で)で秤取する。この混合物に、トルエン80ml及びベンゼン70mlを添加し、ここで緑色がかった反応溶液が生じる。これを、軽度の還流下で一晩中加熱し(浴温度約90℃)、その後で溶媒を留去する。クリーム色〜緑色がかった生成物が残留し、これを真空中で乾燥する。収量は、1回の昇華後に6.98g(76%)である。この物質の昇華範囲は、2×10-5mbarで160〜180℃である。
【0140】
アンプル試験により、Cu(3,5−tfmb)は少なくとも225℃まで安定であることを確認することができた。
【0141】
アンプル試験において、10-5〜10-6mbarの基準圧力で、試験されるべき物質の約100〜500mgを溶融させる。引き続きこのアンプルを炉内で加熱し、それぞれの温度で約100時間放置する。光学試験により、金属錯体の分解が生じたかどうかを確認することができる、というのも、分解は変色を、頻繁に褐色化を引き起こすためである。アンプルを、最終的に、第1の温度で約100時間後に、10〜20ケルビンのステップで更に加熱し、炉内でこの新たな温度で再び約100時間放置する。この試験を、最終的に変色により分解が推測できるまで続ける。
【0142】
対照実験において、更に、それぞれ光学的な測定に引き続き、同じく試験されるべき金属錯体の新たな試料を含む別のアンプルを、再び炉内で約100時間加熱する。この場合、この加熱は、光学的に測定された分解温度を僅かに下回る温度で行われる。このように処理された試料を、引き続き元素分析により調査し、かつ元素組成によって錯体の安定性を確認する。
【0143】
実施例Iによる銅(I)ビス−トリフルオロメチルベンゾアートについて、アンプル試験を、3つの異なる温度で実施した:210℃、230℃及び240℃。
【0144】
この測定は、錯体が、少なくとも225℃まで安定であることを証明する。これは、元素分析により確認された。
【0145】
したがって、Cu(3,5−tfmb)は、錯体が蒸発源の壁部の少なくとも1つと衝突を起こすような蒸発源を用いた気相からの堆積のために適している。例えば、線蒸発源による気相からの堆積が可能である。
【0146】
Cu(3,5−tfmb)でドープされた層は、可視領域で極めて良好な光学的透明性を示す。Cu(3,5−tfmb)は、更に、十分に良好なドーピング材強度により優れている。
【0147】
更に図6により示されているように、Cu(3,5−tfmb)でドープされた有機層は、良好な伝導性を示す。
【0148】
実施例II
実施例IIは、金属錯体が、ビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチルベンゾアート(以後、Bi(3,5−tfmb)3と省略する)である、本発明による方法に関する。
【0149】
実施例IIによるビスマス錯体及び次に記載された参考例I〜VIIの金属錯体は、反応式1による次の一般的な方法により製造された:
反応式1:
【化12】
【0150】
Bi(3,5−tfmb)3について、この場合、基RB及びRDは、つまり、3,5位置にある基は、それぞれCF3置換基であり、かつ基RA、RC及びREは、それぞれ水素原子である。
【0151】
Bi(3,5−tfmb)3の取得は、昇華による精製の後に元素分析によって確認した(実測値:炭素 33.5%;水素 0.5%;計算値:炭素 33.06%;水素 0.92%)。
【0152】
ビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチルベンゾアートの熱安定性は、既に実施例Iとの関連で記載されたようなアンプル試験を用いて測定した。それにより、金属錯体は、330℃で144時間の期間にわたる熱処理でも安定である。330℃を下回る温度で、アンプルの変色は観察することはできない。330℃より初めて軽度の変色を見ることができる。元素分析のデータも、この錯体が、330℃まで統計的な誤差の範囲で熱安定性であることを確認する。
【0153】
表1に示されたように、同様の試験を、それぞれ260℃、280℃、315℃及び330℃の温度で144時間実施した。この場合、熱処理された物質の試料を、それぞれ元素分析により調査し、その際に、炭素含有率を決定した。このように測定された炭素含有率の、分解されていない錯体の期待される炭素含有量からの偏差に基づいて、例えばそれぞれの温度処理による錯体の分解程度についての推測が可能である。この試験系列により、発明者は、実施例IIによるビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチルベンゾアートが特に高い熱安定性を示し、かつ統計的誤差の考慮下で、330℃を超える温度で初めて明らかな分解を示すことを証明することができた。
表1:それぞれの物質のアンプル試験の後に分離したアンプルの2つの異なる場所(場所A、場所B)に関する元素分析による炭素含有率の測定。
【0154】
330℃の温度までで測定された炭素含有率の、理論的に計算された含有率(33.06%)からの僅かな偏差は、ビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチルベンゾアートの高い熱安定性を証明する。330℃を超える温度で初めて、錯体の明らかな分解が観察される。
【0155】
【表1】
【0156】
したがって、この元素分析は、統計的誤差の考慮下で330℃まで錯体の安定性を確認する。
【0157】
したがって、高い熱安定性に基づいて、ビスマス(III)−トリス−3,5−トリフルオロメチルベンゾアートの例について見ることができるように、フッ化されたアルキル置換基R1を備えたドーピング材は、特に、金属錯体、つまりドーパントが蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源を用いる気相堆積のために適している。例えば、金属錯体は、線蒸発源によって気相から分解せずに堆積させるために十分に安定である。
【0158】
Bi(3,5−tfmb)3でドープされた層は、可視領域で極めて良好な光学的透明性を示す。
【0159】
Bi(3,5−tfmb)3は、更に、十分に良好なドーピング材強度により優れている。これは、次にまとめられた実験データにより更に明確に示される。
【0160】
Bi(3,5−tfmb)3でドープされた有機層の電気特性を、図7、8及び表2、3にまとめる。
【0161】
表2:Bi(3,5−tfmb)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。殊に、マトリックスに関して3つの異なるドーピング材含有率(1:8、1:4及び1:2)で電気特性が試験される。
【0162】
【表2】
【0163】
多様な材料について、表2及び他の全ての表中で挙げられた電気特性は、ITO基板(酸化インジウム錫)上に施与された、点蒸発源を用いた同時蒸発により得られた200nmの厚みの有機層に関する測定により実施された。
【0164】
上記表2中、「Exp. molar ratio」は、この場合、それぞれ、マトリックス材料と金属錯体とのモル比を表す。「σ0」は、測定された有機電子層の伝導性を表す。「ρc.;0」は、接触抵抗を表す。「Ebi」は、半導体材料の内部電界の電界強度を表す(英語の専門用語「built-in electric field」;この電界強度は、有機電子素子のアノードとカソードとの間の仕事関数の差から生じる)。「εr」は、同時蒸発により得られた材料の誘電率を定める。
【0165】
一連の他のパラメータは、文献において多様な伝導性理論で記載されているように、有機電子層内での電荷キャリアの輸送様式との関連で決定された。「r」は、この場合、電荷キャリア輸送モデルによる指数分布を記載する経験係数(英語の専門用語「trap distribution factor」)を表す(Steiger et al.、「Energetic trap distributions in organic semiconductors」、Synthetic Metals 2002, 129 (1), 1-7;Schwoerer et al.、「Organic Molecular Solids」、Wiley-VCH, 2007)。「μ0」は、電荷キャリア移動度を表し、かつ「γ」は、電界活性化係数(英語の専門用語「field-activation factor」)を表す。「γ」は、例えば、マーガトロイド方程式(Murgatroyd, P. N.、「Theory of space-charge-limited current enhanced by Frenkel effect」、Journal of Physics D: Applied Physics 1979, 3 (2), 151)による電荷輸送の記載との関連で重要である。
【0166】
表2〜31に利用された「too conductive」、「ballistic」、「no ohmic contact」、「trapping」、「aging」、「no TFLC」、「Compliance」の概念は、この場合、それぞれ次の意味を示す:「too conductive」の概念は、この測定が層の高すぎる伝導性に基づき説得力がないことを表す。「no ohmic contact」の概念は、電気接触が存在しないことを表す。「Compliance」の概念は、測定機器のプリセットされた電流制限が達成されたことを表す。「TFLC」の概念は、上述のSteiger et al.及びSchwoerer et al.の論文による「trap-filled limited regime」を表し、かつ有機電子層の電荷キャリアについての輸送様式に関する。「ballistic」、「trapping」及び「aging」の概念は、それぞれ「バリスティック」、「トラッピング」及び「エージング」を表す。「ballistic」、「trapping」及び「aging」の専門概念は、この場合、文献に記載された多様な伝導性モデルによる多様な輸送様式に関する。多様な伝導性様式は、この場合、電流−電圧依存の指数であると認識することができる。
【0167】
これらのそれぞれの省略形は、表3〜21についても同様に当てはまる。
【0168】
表3:(1:2)のBi(3,5−tfmb)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。多様なマトリックス材料のドーピングの際の電気特性を比較する。
【0169】
【表3】
【0170】
この測定は、Bi(3,5−tfmb)3でドープされたマトリックス材料が良好な電気特性、特に十分に良好な伝導性を示すことを確認する。
【0171】
これは、次に、実施例IによるCu(3,5−tfmb)及び実施例IIによるBi(3,5−tfmb)3とは反対に、アンプル試験においてそれぞれ十分な温度耐性を示さず、したがって蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突が起こるような蒸発源を用いた気相からの堆積のために適していない多数の他の錯体の電気特性との比較により明確に示される。
【0172】
参考例I
参考例Iは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(2,6−ジフルオロベンゾアート)(略してBi(2,6−dfb)3)の使用に関する。
【0173】
Bi(2,6−dfb)3の合成は、反応式1にしたがって実施した。Bi(2,6−dfb)3について、この場合、反応式1において、基RA及びREはそれぞれフッ素原子であり、残りの置換基RB、RC及びRDはそれぞれ水素原子である。
【0174】
Bi(2,6−dfb)3の取得は、昇華による精製の後に元素分析によって確認した(実測値:炭素 36.2%;水素 1.5%;計算値:炭素 37.06%;%水素 1.32%)。
【0175】
Bi(2,6−dfb)3でドープされた有機層の電気特性を、図9、10及び表4、5にまとめる。
【0176】
表4:Bi(2,6−dfb)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0177】
【表4】
【0178】
表5:(1:2)のBi(2,6−dfb)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0179】
【表5】
【0180】
参考例II
参考例IIは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(4−フルオロベンゾアート)(略してBi(4−fb)3)の使用に関する。
【0181】
Bi(4−fb)3の合成は、反応式1にしたがって実施した。Bi(4−fb)3について、この場合、反応式1において、基RA、RB、RD及びREは水素原子であり、RCだけがフッ素原子である。
【0182】
Bi(4−fb)3の取得は、昇華による精製の後に元素分析によって確認した(実測値:炭素 42.4%;水素 2.3%;計算値:炭素 40.26%;水素 1.92%)。
【0183】
Bi(4−fb)3でドープされた有機層の電気特性を、図11、12及び表6、7にまとめる。
【0184】
表6:Bi(4−fb)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0185】
【表6】
【0186】
表7:(1:2)のBi(4−fb)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0187】
【表7】
【0188】
参考例III
参考例IIIは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(3−フルオロベンゾアート)(略してBi(3−fb)3)の使用に関する。
【0189】
Bi(3−fb)3の合成は、反応式1にしたがって実施した。Bi(3−fb)3について、この場合、反応式1において、基RA、RC、RD及びREは水素原子であり、RBだけがフッ素原子である。
【0190】
Bi(3−fb)3の取得は、昇華による精製の後に元素分析によって確認した(実測値:炭素 39.2%;水素 2.3%;計算値:炭素 40.26%;水素 1.92%)。
【0191】
Bi(3−fb)3でドープされた有機層の電気特性を、図13、14及び表8、9にまとめる。
【0192】
表8:Bi(3−fb)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0193】
【表8】
【0194】
表9:(1:2)のBi(3−fb)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0195】
【表9】
【0196】
参考例IV
参考例IVは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(3,5−ジフルオロベンゾアート)(略してBi(3,5−dfb)3)の使用に関する。
【0197】
Bi(3,5−dfb)3の合成は、反応式1にしたがって実施した。Bi(3,5−dfb)3について、この場合、反応式1において、基RA、RC及びREはそれぞれ水素原子であり、残りの置換基RB及びRDはそれぞれフッ素原子である。
【0198】
Bi(3,5−dfb)3の取得は、昇華による精製の後に元素分析によって確認した(実測値:炭素 36.3%;水素 1.4%;計算値:炭素 37.06%;水素 1.32%)。
【0199】
Bi(3,5−dfb)3でドープされた有機層の電気特性を、図15、16及び表10、11にまとめる。
【0200】
表10:Bi(3,5−dfb)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0201】
【表10】
【0202】
表11:(1:2)のBi(3,5−dfb)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0203】
【表11】
【0204】
参考例V
参考例Vは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(3,4,5−トリフルオロベンゾアート)(略してBi(3,4,5−tfb)3)の使用に関する。
【0205】
Bi(3,4,5−tfb)3の合成は、反応式1にしたがって実施した。Bi(3,4,5−tfb)3について、この場合、反応式1において、基RA及びREはそれぞれ水素原子であり、残りの置換基RB、RC及びRDはそれぞれフッ素原子である。
【0206】
Bi(3,4,5−tfb)3の取得は、昇華による精製の後に元素分析によって確認した(実測値:炭素 33.8%;水素 1.2%;計算値:炭素 34.33%;水素 0.82%)。
【0207】
Bi(3,4,5−tfb)3でドープされた有機層の電気特性を、図17、18及び表12、13にまとめる。
【0208】
表12:Bi(3,4,5−tfb)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0209】
【表12】
【0210】
表13:(1:2)のBi(3,4,5−tfb)3でドープしたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0211】
【表13】
【0212】
参考例VI
参考例VIは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(ペルフルオロベンゾアート)(略してBi(pfb)3)の使用に関する。
【0213】
Bi(pfb)3の合成は、反応式1にしたがって実施した。Bi(pfb)3について、この場合、反応式1において、5つの基RA〜REの全てはそれぞれフッ素原子である。
【0214】
Bi(pfb)3の取得は、昇華による精製の後に元素分析によって確認した(実測値:炭素 29.9(6)%;計算値:炭素 29.93%)。
Bi(pfb)3でドープされた有機層の電気特性を、図19、20及び表14、15にまとめる。
【0215】
表14:Bi(pfb)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0216】
【表14】
【0217】
表15:(1:2)のBi(pfb)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0218】
【表15】
【0219】
参考例VII
参考例VIIは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(4−ペルフルオロトルアート)(略してBi(4−pftl)3)の使用に関する。
【0220】
Bi(4−pftl)3は、この場合、反応式1において、基RA、RB、RD及びREはそれぞれフッ素原子であり、RCはCF3基である。
【0221】
Bi(4−pftl)3の取得は、昇華による精製の後に元素分析によって確認した(実測値:炭素 30.0%;計算値:炭素 29.03%)。
【0222】
Bi(4−pftl)3でドープされた有機層の電気特性を、図21、22及び表16、17にまとめる。
【0223】
表16:Bi(4−pftl)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0224】
【表16】
【0225】
表17:(1:2)のBi(4−pftl)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0226】
【表17】
【0227】
アセタート及びトリフルオロアセタートを基礎とする配位子を備えた他の従来型の金属錯体も、発明者により、本発明による方法で使用される錯体との比較のために考慮された:
【0228】
参考例VIII
参考例VIIIは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(トリフルオロアセタート)(略してBi(tfa)3)の使用に関する。この製造は文献に記載されている(例えば、Suzuki, H.;Matano, Y.、Organobismut Chemistry、Elsevier 2001)。
【0229】
Bi(tfa)3でドープされた有機層の電気特性を、図23、24及び表18、19にまとめる。
【0230】
表18:Bi(tfa)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0231】
【表18】
【0232】
「After TFLC, the slope decreases to a limit near 3/2 (ballistic)」及び「Just before exponentially increasing (aging)」により、1つの電荷輸送様式から他の電荷輸送様式への移行が示唆される。
【0233】
表19:(1:2)のBi(tfa)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0234】
【表19】
【0235】
これらのデータから、フッ化されていない配位子を備えた錯体も、フッ化された配位子を備えた錯体よりも明らかに悪くドープすることが明らかとなる。これらの錯体も、他の参考例と同様に、蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源に適していない。
【0236】
参考例IX
参考例IXは、気相堆積のための金属錯体としての、ビスマス(III)−トリス(トリアセタート)(略してBi(ac)3)の使用に関する。この錯体は市場で入手可能である。
【0237】
Bi(ac)3でドープされた有機層の電気特性を、図25、26及び表20、21にまとめる。
【0238】
表20:Bi(ac)3でドープされた1−TNataの電気特性のまとめ。
【0239】
【表20】
【0240】
表21:(1:2)のBi(ac)3でドープされたマトリックス材料1−TNata、α−NPB及びspiro−TTBの電気特性のまとめ。
【0241】
【表21】
【0242】
多数の記載された実施例、実施例I、実施例II及び大抵の参考例は、十分に良好なドーピング材強度を示す。これらの錯体でドープされたマトリックス材料は、実施例I及びIIの場合に、並びに多数の参照例の場合にも、十分に良好な電気伝導性を示す。
【0243】
しかしながら、錯体安定性、殊に熱安定性に関して、実施例I及び実施例IIの金属錯体だけが、錯体が蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすような蒸発源を用いた堆積のための高い要求を満たす。参考例の錯体の中から、それに対して、いずれの錯体も、蒸発源の壁部と衝突を起こすような蒸発源を用いて気相から堆積させるために、十分な安定性を示さなかった。
【0244】
例えば、実施例I及び実施例IIの錯体だけは、線蒸発源を用いて堆積させることができるが、参考例の錯体はできない。全ての錯体は、点蒸発源を用いた堆積のために十分に安定であるが、少なくとも1つの置換基R1を備えた錯体だけが高い安定性の要求を満たす。
【0245】
既に言及された実施態様の構成要素及び特徴の個々の組み合わせは例示的なものであり;この文献中に含まれている教示を、引用された文献の他の教示と置き換える及び交換することも、同様に明確に検討される。当業者は、変形、変更及びここに記載された他の実施が、この発明思想及び発明の範囲から逸脱せずに、同様に生じることができることを認識する。
【0246】
したがって、上述の説明は例示であり、かつ本発明を制限するものとは見なされない。特許請求の範囲に使用された単語「含有する(umfassen)」は、他の構成要素又は工程を排除するものはない。不定冠詞の「ein」は、複数の意味を排除するものではない。複数の所定の基準が相互に異なる請求項において再引用されるという単なる事実は、この基準の組み合わせが好ましく利用できないことを明確に示すものではない。この発明の範囲は、次の特許請求の範囲に定義されていて、かつそれに属する等価なものを定義している。
【0247】
この特許出願は、ドイツ国特許出願第102014114231.4号の優先権を主張し、この開示内容は、これに関して引用によって取り込まれる。
さらに、本発明の好適な実施態様につき、以下に示す。
1.有機電子素子の製造方法であって、前記素子は、マトリックスを含む少なくとも1つの有機電子層を備え、前記マトリックスは、ドーパントとして金属錯体を含み、前記金属錯体は、少なくとも1つの金属原子Mと、金属原子Mと結合する少なくとも1つの配位子Lとを含み、前記配位子Lは、互いに無関係に、次の構造:
【化13】
[式中、E1及びE2は、互いに無関係に、酸素、硫黄、セレン、NH又はNR′であってよく、ここで、R′は、アルキル又はアリールを含む群から選択されていて、かつ配位子Lの置換されたベンゼン環と結合されていてよく;かつ
置換基R1は、互いに無関係に、1〜10個のC原子を有する、分枝された又は非分枝の、フッ化された脂肪族炭化水素を含む群から選択されていて、ここで、n=1〜5であり;かつ
置換基R2は、互いに無関係に、−CN、1〜10個のC原子を有する、分枝された又は非分枝の脂肪族炭化水素、アリール及びヘテロアリールを含む群から選択されていて、ここで、m=0〜最大5−nである]を示し、
ここで、前記少なくとも1つの有機電子層のドーパントの堆積は、蒸発源を用いた気相堆積によって行われ、ここで、前記蒸発源は、前記ドーパントが、前記蒸発源の少なくとも1つの壁部と衝突を起こすように構成されている、前記有機電子素子の製造方法。
2.前記気相堆積は、線蒸発源を用いて行われる、上記1.に記載の方法。
3.前記金属錯体の金属Mは、周期表の13〜15族の典型金属及び金属Cu、Cr、Mo、Rh及びRuを含む群から選択されている、上記1.又は2.に記載の方法。
4.前記金属錯体の金属Mは、Bi又はCuである、上記1.2.または3.に記載の方法。
5.置換基R1の少なくとも1つが、−CF3基である、上記1.2.3.または4.に記載の方法。
6.配位子Lは、正確に2つの置換基R1を備え、置換基R1はそれぞれ−CF3基を形成する、上記1.2.3.4.または5.に記載の方法。
7.配位子Lは、正確に2つの置換基R1を備え、置換基R1は、それぞれ−CF3基を形成し、かつ配位子Lのベンゼン環の3,5位置に配置されている、上記1.2.3.4.5.または6.に記載の方法。
8.置換基R2は、互いに無関係に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、及び置換された又は非置換のフェニル基を含む群から選択されている、上記1.2.3.4.5.6.または7.に記載の方法。
9.E1も、E2も、酸素である、上記1.2.3.4.5.6.7.または8.に記載の方法。
10.配位子Lは、無関係に、
【化14】
を含む群から選択されている、上記1.2.3.4.5.6.7.8.または9.に記載の方法。
11.前記金属錯体は、ビスマス錯体であり、かつLは次の一般構造:
【化15】
[式中、置換基R1は、1〜10個のC原子を有する、分枝された又は非分枝の、フッ化された脂肪族炭化水素を含む群から選択されていて、かつ
置換基R3は、1〜10個のC原子を有する、分枝された又は非分枝の、フッ化された又はフッ化されていない脂肪族炭化水素、アリール及びヘテロアリールを含む群から選択されている]を示すことができる、上記1.2.3.4.5.6.7.8.9.または10.に記載の方法。
12.前記金属錯体は、前記金属錯体の昇華温度を10ケルビン超えるほど高い、殊に40ケルビン超えるほど高い、最も好ましくは70ケルビン超えるほど高い分解温度を示す、上記1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.または11.に記載の方法。
13.少なくとも1つの有機電子層を備えた有機電子素子において、前記有機電子層は、マトリックスを含み、前記マトリックスは、ドーパントとしてビスマス錯体を含み、前記ビスマス錯体は、ビスマス原子に結合した少なくとも1つの配位子Lを備え、配位子Lは、互いに無関係に、次の一般構造:
【化16】
[式中、置換基R1は、1〜10個のC原子を有する、分枝された又は非分枝の、フッ化された脂肪族炭化水素を含む群から選択されていて、かつ
置換基R3は、1〜10個のC原子を有する、分枝された又は非分枝の、フッ化された又はフッ化されていない脂肪族炭化水素、アリール及びヘテロアリールを含む群から選択されていて、ここで、aは、0又は1であってもよい]を示すことができる、有機電子素子。
14.Lは、無関係に、
【化17】
を含む群から選択されている、上記13.に記載の有機電子素子。
15.前記ビスマス錯体は、錯体
【化18】
である、上記13.又は14.に記載の有機電子素子
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