(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗装区画と洗浄塔とを備える湿式塗装ブースの下方に配置される塗装ブース循環水タンクであって、側方に凸の湾曲板と湾曲板の上端部に側方から近接対峙する塗装区画側壁とで構成されるベンチュリーの構成部材である湾曲板を備える塗装ブース循環水タンクにおいて、塗装区画の直下の第1区画と、洗浄塔に対峙する湾曲板の直下の第2区画と、塗料スラッジ処理区画とを備え、第1区画と塗料スラッジ処理区画とには塗装ブース循環水が貯留され、第1区画と塗料スラッジ処理区画とは連通し、第2区画は塗装ブース循環水が侵入しない水密区画であり、第2区画の頂板が、ベンチュリーを通過した塗装ブース循環水を塗料スラッジ処理区画へ導く傾斜導水路を形成し、当該傾斜導水路は2回直角に折れ曲がった後、塗料スラッジ処理区画に接続し、ベンチュリーを通過した塗装ブース循環水は、先ず塗料スラッジ処理区画へ向けて流れ、次いで2回直角に折れ曲がった後、塗料スラッジ処理区画へ流入することを特徴とする塗装ブース循環水タンク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の塗装ブース循環水タンクにおいては、ベンチュリーの構成部材である湾曲板の直下にも塗装ブース循環水が存在していたので、塗装ブース循環水タンクの保守点検時に、湾曲板直下の狭い空間の点検に時間が掛かり、保守作業の効率を低下させていた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、従来に比べて保守作業の効率が向上した塗装ブース循環水タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、塗装区画と洗浄塔とを備える湿式塗装ブースの下方に配置される塗装ブース循環水タンクであって、側方に凸の湾曲板と湾曲板の上端部に側方から近接対峙する塗装区画側壁とで構成されるベンチュリーの構成部材である湾曲板を備える塗装ブース循環水タンクにおいて、塗装区画の直下の第1区画と、洗浄塔に対峙する湾曲板の直下の第2区画と、塗料スラッジ処理区画とを備え、第1区画と塗料スラッジ処理区画とには塗装ブース循環水が貯留され、第1区画と塗料スラッジ処理区画とは連通し、第2区画は塗装ブース循環水が侵入しない水密区画であり、第2区画の頂板が、ベンチュリーを通過した塗装ブース循環水を塗料スラッジ処理区画へ導く傾斜導水路を形成し、当該傾斜導水路は2回
直角に折れ曲がった後、塗料スラッジ処理区画に接続
し、ベンチュリーを通過した塗装ブース循環水は、先ず塗料スラッジ処理区画へ向けて流れ、次いで2回直角に折れ曲がった後、塗料スラッジ処理区画へ流入することを特徴とする塗装ブース循環水タンクを提供する。
本発明においては、ベンチュリーを構成する湾曲板の直下の第2区画は、塗装ブース循環水が侵入しない水密区画なので、保守時に当該区画は点検の必要がない。この結果、保守作業の効率が向上する。
本発明においては、第2区画の頂板が、ベンチュリーを通過した塗装ブース循環水を塗料スラッジ処理区画へ導く傾斜導水路を形成し、当該傾斜導水路は2回
直角に折れ曲がった後、塗料スラッジ処理区画に接続
し、ベンチュリーを通過した塗装ブース循環水は、先ず塗料スラッジ処理区画へ向けて流れ、次いで2回直角に折れ曲がった後、塗料スラッジ処理区画へ流入する。
第2区画の頂板が形成する傾斜導水路を介して、ベンチュリーを通過した塗料ミストを含む塗装ブース循環水を、塗料スラッジ処理区画の最適部位へ導くことができる。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、マイクロバブル発生装置が塗料スラッジ処理区画に接続されている。
マイクロバブルを塗装ブース循環水に混入させることにより、塗装ブース循環水中の塗料スラッジの分解が促進される。
本発明においては、上記何れかの塗装ブース循環水タンクを備える湿式塗装ブースを提供する。
本発明に係る湿式塗装ブースにおいては、保守時に塗装ブース循環水タンクのベンチュリー直下の区画を点検する必要がないので、保守作業の効率が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、従来に比べて保守作業の効率が向上した塗装ブース循環水タンクが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜3に示すように、本発明の第1実施例に係る塗装ブース循環水タンク1は、塗装区画100aと洗浄塔100bとを備える湿式塗装ブース100の下方に配置される塗装ブース循環水タンクであって、側方に凸の湾曲板2aと湾曲板2aの上端部に側方から近接対峙する塗装区画側壁100a
1とで構成されるベンチュリー2の構成部材である湾曲板2aを備える塗装ブース循環水タンクである。
塗装ブース循環水タンク1は、塗装区画100aの直下の第1区画1aと、洗浄塔100bに対峙する湾曲板2aの直下の第2区画1bと、第2区画1bを間に挟んで第1区画1aに対峙する塗料スラッジ処理区画1cとを備えている。
第1区画1aと塗料スラッジ処理区画1cとには塗装ブース循環水が貯留されている。第1区画1aと塗料スラッジ処理区画1cとは連通路1dを介して連通している。第2区画1bは塗装ブース循環水が侵入しない水密区画である。
連通路1dは、第1区画1aと第2区画1bと塗料スラッジ処理区画1cとに対峙して、前記3区画の外側に配設されている。
連通路1dは、第1区画1aの底部と塗料スラッジ処理区画1cの底部とを連通させている。
【0017】
第2区画1bの、二つの斜面を有する頂板1b
1が、ベンチュリーを通過した塗装ブース循環水を塗料スラッジ処理区画1cへ導く傾斜導水路を形成している。
頂板1b
1が形成する傾斜導水路の末端1b
2は、塗料スラッジ処理区画1c内の塗装ブース循環水の水面よりも上方に位置決めされている。
【0018】
塗料スラッジ処理区画1cは、第1区画1aとの連通部を形成する一端部1c
1と、一端部1c
1から遠ざかった他端部1c
2との間で延在し、傾斜導水路の末端1b
2は、塗料スラッジ処理区画の他端部1c
2に対峙している。
塗料スラッジ処理区画1cの中央部1c
3に、他端部1c
2から一端部1c
1へ向かう塗装ブース循環水の流れに直交し且つ水面に達しない偏向堰1c
4が、着脱可能に設けられている。
【0019】
塗料スラッジ処理区画1cの一端部1c
1の近傍に、他端部1c
2から一端部1c
1へ向かう塗装ブース循環水の流れに直交する第1堰1e
1と、他端部1c
2から一端部1c
1へ向かう塗装ブース循環水の流れに平行な第2堰1e
2と、によって塗料スラッジ処理区画1cから隔てられた循環ポンプ連通区画1eが形成されている。
第1堰1e
1の上縁は塗料スラッジ処理区画1c内の塗装ブース循環水の水位よりも上方に在る。
第2堰1e
2の上縁部には、開口端幅が閉鎖端幅よりも狭いコ字断面の水位調整板1e
3が第2堰1e
2の上縁部を挟み込んで当該上縁部に弾性係合している。水位調整板1e
3の閉鎖端が形成する第2堰1e
2の上縁は、塗料スラッジ処理区画1cの他端部1c
2及び中央部1c
3内の塗装ブース循環水の水位と同一高さに在る。
第2堰1e
2の下部に開口1e
4が形成され、開口1e
4の面積を調整する調整板1e
5が上下移動可能に且つ所望位置に固定可能に第2堰1e
2に取り付けられている。
【0020】
塗料スラッジ処理区画1cの長手方向一端部1c
1は、他端部1c
2や中央部1c
3に比べて狭幅となり、第2堰1e
2を間に挟んで循環ポンプ連通区画1eに隣接して延在している。
塗料スラッジ処理区画1cの長手方向一端部1c
1は、棚板1c
5によって上部区画1c
6と下部区画1c
7とに分割されている。上部区画1c
6は第2堰1e
2の上縁に対峙し、下部区画1c
7は連通路1dを介して第1区画1aの底部に連通している。棚板1c
5は着脱可能である
塗料スラッジ処理区画1cと循環ポンプ連通区画1eの開放上端を覆う蓋部材3が配設されている。
【0021】
塗装ブース循環水タンク1の作動と作用効果とを説明する。
図3に示すように、塗装ブース循環水タンク1は、塗装区画100aと洗浄塔100bとを備える湿式塗装ブース100の下方に配置され、湿式塗装ブース100に接合されて作動する。
湾曲板2aの上端部と、
図1(b)、(c)に二点鎖線で示し、
図3に一点鎖線で示す、湾曲板2aの上端部に側方から近接対峙する塗装区画100aの側壁100a
1とが協働して、ベンチュリー2を形成している。
塗装ブース循環水タンク1においては、ベンチュリー2を構成する湾曲板2aの直下の第2区画1bは、塗装ブース循環水が侵入しない水密区画なので、保守時に当該区画は点検の必要がない。この結果、保守作業の効率が向上する。
【0022】
洗浄塔100bに配置した排気ファン100b
1が作動し、塗装区画100a内の塗料ミストを含む空気と第1区画1a内の塗装ブース循環水とが、湾曲板2aの凹表面に沿って共に上方へ吸引され、ベンチュリー2を通過して霧化した塗装ブース循環水微粒子に、空気に含まれる塗料ミストが吸収される。
ベンチュリー2を通過した塗料ミストを吸収した塗装ブース循環水は、ベンチュリー2の直上で側壁100a
1に取り付けられた案内板100a
2に案内されて側方下方へ差し向けられ、
図1、
図2(e)に細白抜矢印で示すように、第2区画1bの頂板が形成する二つの斜面を有する傾斜導水絽1b
1を流れて、塗料スラッジ処理区画1cの長手方向他端部1c
2に上方から流れ込む。
第2区画1bの頂板1b
1が形成する傾斜導水路を介して、ベンチュリー2を通過した塗料ミストを含む塗装ブース循環水を、塗料スラッジ処理区画1cの最適部位へ導くことができる。
塗装ブース循環水タンク1においては、第1区画1aとの連通部を形成する一端部1c
1から遠ざかった塗料スラッジ処理区画の他端部1c
2に、塗装ブース循環水を導いたので、塗料ミストを吸収した塗装ブース循環水の塗料スラッジ処理区画内1cでの滞留時間を長くなり、塗料スラッジの浮上が促進されている。
第2区画1bの頂板1b
1が形成する傾斜導水路の末端1b
2が、塗料スラッジ処理区画1c内の塗装ブース循環水の水面よりも上方に位置決めされているので、ベンチュリー2を通過した塗料ミストを含む塗装ブース循環水は、確実に塗料スラッジ処理区画1cに流入することができる。
【0023】
塗料スラッジ処理区画1cの長手方向他端部1c
2に上方から流れ込んだ塗装ブース循環水は、
図1(a)と
図2(e)とに太白抜矢印で示すように、長手方向他端部1c
2の底部まで沈み込み、塗料スラッジ処理区画1cの長手方向一端部1c
1へ向けて流れ、塗料スラッジ処理区画1cの長手方向中央部1c
3に配設された、塗装ブース循環水の流れに直交し且つ水面に達しない偏向堰1c
4によって上方へ差し向けられ、偏向堰1c
4を乗り越えて流れて、塗料スラッジを水面上に浮上させた後、長手方向中央部1c
3の底部まで沈み込み、塗料スラッジ処理区画1cの長手方向一端部1c
1へ向けて流れる。水面上に浮上した塗料スラッジは、適宜人手によりまたは機械により除去される。
塗料スラッジ処理区画1cの他端部1c
2に上方から流入した塗装ブース循環水が、他端部1c
2の底部まで沈み込んだ後、偏向堰1c
4によって上方へ差し向けられ、塗料スラッジが水面上に浮上するので、塗料スラッジの回収作業効率が向上している。
偏向堰1c
4は着脱可能なので、塗装ブース循環水タンク1の保守作業時に、偏向堰1c
4を取り外して、保守作業の効率を向上させることができる。
【0024】
塗料スラッジ処理区画1cの長手方向中央部1c
3の底部まで沈み込み、塗料スラッジ処理区画1cの長手方向一端部1c
1へ向けて流れた塗装ブース循環水は、長手方向一端部1c
1の上部区画1c
6と下部区画1c
7とに流入する。長手方向一端部1c
1は、長手方向他端部1c
2や長手方向中央部1c
3に比べて狭幅なので、長手方向他端部1c
2や長手方向中央部1c
3に比べて長手方向一端部1c
1の水位が上昇する。上部区画1c
6に流入した塗装ブース循環水は、
図1(a)、(c)
図2(e)に二重矢印で示すように、第2堰1e
2の上縁を越えてオーバーフローし、循環ポンプ連通区画1eに流入する。この結果、狭幅の長手方向他端部1c
2や長手方向中央部1c
3を含む塗料スラッジ処理区画1c全体の水位が、延いては連通路1dを介して塗料スラッジ処理区画1cに連通する第1区画1aの水位が、第2堰1e
2の上縁高さ位置に維持される。下部区画1c
7に流入した塗装ブース循環水は、連通路1dを介して第1区画1aに還流する。
【0025】
第2堰1e
2からオーバーフローして循環ポンプ連通区画1eに流入した塗装ブース循環水は、塗装区画100aに還流されて側壁100a
1に沿って流下するウォーターカーテン100a
3となり、また洗浄塔100bに還流されて、案内板100a
2の直上に配設されたズル100b
2から吐出する噴霧水100b
3となる。第2堰1e
2からオーバーフローした塗装ブース循環水を湿式塗装ブース100に還流させることにより、塗装ブース循環水タンク1の水位を適正値に維持しつつ、塗装ブースに塗装ブース100に塗装ブース循環水を供給することができる。
塗料スラッジ処理区画1c内の塗装ブース循環水の流れに平行に延在する第2堰1e
2から塗装ブース循環水をオーバーフローさせることにより、塗装ブース循環水の流れに直交する堰から塗装ブース循環水をオーバーフローさせる場合に比べて、循環ポンプ連通区画1eへの塗料スラッジの流入を抑制することができる。
水位調整板1e
3を配設したので、塗装ブース循環水タンク1の水位をベンチュリー2に最適な値に調整することができる。
循環ポンプの作動時に、循環ポンプ連通区画1eの水位が下がり、循環ポンプがエアを吸い込む事態が発生する可能性がある。第2堰1e
2の下部に開口1e
4を形成し、開口1e
4の面積を調整可能としたので、循環ポンプ連通区画1eの水位を、循環ポンプがエアの吸い込まず且つ塗料スラッジ処理区画との間に水位差が生ずる値に維持することができる。
【0026】
第2堰1e
2に平行に延在する塗料スラッジ処理区画の一端部1c
1を、棚板1c
5を配設して、2堰1e
2の上縁に対峙する上部区画1c
6と、連通路1dを介して第1区画1aの底部に連通する下部区画1c
7とに分割したので、第1区画1aへの塗料スラッジの流入が防止されている。
棚板1c
5を着脱可能としたので、塗装ブース循環水タンク1の保守作業時に、棚板1c
5を取り外して、保守作業の効率を向上させることができる。
【0027】
塗料スラッジ処理区画1cを、第2区画1bを間に挟んで第1区画1aに対峙させたので、塗料スラッジ処理区画1cの長さを、第1区画1aの長さ、ひいては湿式塗装ブースの塗装区画100aの長さと同一長さとして、塗料ミストを吸収した塗装ブース循環水の塗料スラッジ処理区画1c内での滞留時間を長くし、塗料スラッジの浮上を促進することができる。
第1区画1aと塗料スラッジ処理区画1cとの間の連通路1dが、第1区画1aと第2区画1bと塗料スラッジ処理区画1cとに対峙して前記3区画の外側に配設されているので、前記3区画の構造が簡素化され、塗装ブース循環水タンク1の保守作業の効率が向上している。
第1区画1aの底部と塗料スラッジ処理区画1cの底部とが連通路1dを介して連通しているので、第1区画1aへの塗料スラッジの流入が防止されている。
【0028】
図3から分かるように、塗装ブース循環水タンク1を、塗装区画100aと洗浄塔100bとを備える湿式塗装ブース100の下方に配置すると、第1区画1aは塗装ブースの塗装区画100aで覆われ、第2区画1bは塗装ブースの洗浄塔100bで覆われるが、塗料スラッジ処理区画1cは外部環境に暴露されることになる。塗料スラッジ処理区画1cの開放された上端を覆う蓋部材3を配設したので、塗料スラッジ処理区画1c内の塗装ブース循環水に、外部環境から異物が混入する事態の発生が防止されている。
【0029】
図示しないマイクロバブル発生装置を塗料スラッジ処理区画1cに接続しても良い。
マイクロバブルを塗装ブース循環水に混入させることにより、塗装ブース循環水中の塗料スラッジの分解が促進される。
塗装ブース循環水タンク1が取り付けられた湿式塗装ブース100は、保守時に塗装ブース循環水タンク1の湾曲板2a直下の第2区画1bを点検する必要がないので、保守作業の効率が向上する。
【0030】
図4に示すように、本発明の第2実施例に係る塗装ブース循環水タンク1’の構成は、塗料スラッジ処理区画1cが、第1区画1aと第2区画1bとに対峙して前記2区画の外側に配設されている点と、塗料スラッジ処理区画1cの底部が第1区画1aの底部に直接連通している点を除いて、第1実施例に係る塗装ブース循環水タンク1と同様である。
図1と
図4とを比較すれば分かるように、塗料スラッジ処理区画1cを、第1区画1aと第2区画1bとに対峙して前記2区画の外側に配設したので、塗装ブース循環水タンク1’は、塗装ブース循環水タンク1に比べて小型化されている。
また、塗料スラッジ処理区画1cは第1区画1aに直接連通しているので、塗装ブース循環水タンク1のように第1区画1aと塗料スラッジ処理区画1cとの間の連通路1dを別個設ける場合に比べて、塗装ブース循環水タンク1’の構造は簡素化されている。