(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562986
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】簡易茶器および茶の煎れ方
(51)【国際特許分類】
A47G 19/14 20060101AFI20190808BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
A47G19/14 K
A23F3/16
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-182209(P2017-182209)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-55103(P2019-55103A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2017年11月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517333738
【氏名又は名称】加藤 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋平
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3122793(JP,U)
【文献】
実開昭60−089171(JP,U)
【文献】
特開2008−246187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 19/14
A23F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨て可能な素材で形成され、茶葉が入れられる第1の容器と、
使い捨て可能な素材で形成され、前記第1の容器の内側に重ね合わすことができ、側面にのみ開口が設けられた第2の容器と、
を備え、
可動部が生じるような切り込みにより前記開口が形成され、前記可動部が前記第2の容器の内側に折り込まれる構造を有することを特徴とする簡易茶器。
【請求項2】
使い捨て可能な素材が紙または樹脂である請求項1に記載の簡易茶器。
【請求項3】
前記第2の容器の底部の裏に吸水部材が設けられている請求項1または2に記載の簡易茶器。
【請求項4】
使い捨て可能な素材で形成された第1の容器に適量の茶葉および湯を入れ、湯全体に茶葉を拡散させ、湯に茶葉のエキスを抽出する工程と、
側面にのみ開口が設けられた第2の容器を前記第1の容器の内側に重ね合わせ、茶葉のエキスが抽出された湯を第2の容器の内部に流入させるとともに、第1の容器の底部と第2の容器の底部との間に茶葉を閉じ込める工程と、
を備え、
可動部が生じるような切り込みにより前記開口が形成され、前記可動部が前記第2の容器の内側に折り込まれる構造を有することを特徴とする茶の煎れ方。
【請求項5】
使い捨て可能な素材が紙または樹脂である請求項4に記載の茶の煎れ方。
【請求項6】
前記第2の容器の底部の裏に吸水部材が設けられている請求項4または5に記載の茶の煎れ方。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易に茶を抽出することができる茶器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易に茶を煎れる方法としては、いわゆるティーバッグを用いる方法や、茶こしを湯のみに設置する方法などがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ティーバッグを用いる場合には、茶葉が袋に閉じ込められているため、湯を入れたときに茶葉に湯が十分に触れず、味や香りが物足りないものとなる。また、茶葉を袋詰めする際に機械が使用されるため、1杯当たりのコストが割高となる。一方、先行文献1のような茶こしを用いると、茶葉に湯が接し続けるため、湯に茶葉の余分なエキスが流れ出てしまい、二煎目をおいしく煎れることが難しくなる。
【0005】
このように、従来の簡易に茶を煎れる方法は、簡易さのみに重点が置かれており、茶をよりおいしく煎れることについて目が向けられていなかった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、手軽に茶を煎れることができる茶器において、茶をよりおいしく煎れることができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、簡易茶器である。当該簡易茶器は、使い捨て可能な素材で形成され、茶葉が入れられる第1の容器と、使い捨て可能な素材で形成され、前記第1の容器の内側に重ね合わすことができ、側面に開口が設けられた第2の容器とを備える。
【0008】
上記態様の簡易茶器において、使い捨て可能な素材が紙または樹脂であってもよい。前可動部が生じるような切り込みにより前記開口が形成され、前記可動部が前記第2の容器の内側に折り込まれる構造を有してもよい。また、前記第2の容器の底部の裏に吸水部材が設けられていてもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、茶の煎れ方である。使い捨て可能な素材で形成された第1の容器に適量の茶葉および湯を入れ、湯全体に茶葉を拡散させ、湯に茶葉のエキスを抽出する工程と、側面に開口が設けられた第2の容器を前記第1の容器の内側に重ね合わせ、茶葉のエキスが抽出された
湯を第2の容器の内部に流入させるとともに、第1の容器の底部と第2の容器の底部との間に茶葉を閉じ込める工程と、を備える。
【0010】
上記態様の茶の煎れ方において、使い捨て可能な素材が紙または樹脂であってもよい。前記第2の容器の側面に設けられ、可動部が生じるような切り込みにより茶の煎れ方が形成され、前記可動部が前記第2の容器の内側に折り込まれる構造を有してもよい。前記第2の容器の底部の裏に吸水部材が設けられていてもよい。
【0011】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易にかつよりおいしく茶を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は、実施形態1に係る簡易茶器の部材として用いられる第1の容器の側面図である。
図1(b)は、第1の容器を水平面と直交する面で切断したときの断面図である。
図1(c)は第1の容器の内部を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、第2の容器の側面図である。
図2(b)は、第2の容器を水平面と直交する面で切断したときの断面図である。
図2(c)は、第2の容器の底部を正面視したときの図である。
【
図3】
図3(a)〜
図3(d)は、実施形態1に係る茶の煎れ方を示す工程概略図である。
【
図4】
図4(a)〜
図4(c)は、実施形態1に係る茶の煎れ方を示す工程概略図である。
【
図6】第1の容器の内側に第2の容器を挿入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態の簡易茶器は、第1の容器および第2の容器を含む。第1の容器および第2の容器はともに使い捨て可能な素材で形成される。当該素材として、紙やプラスチックなどの樹脂が挙げられる。当該素材が紙の場合、第1の容器および第2の容器はいわゆる紙コップであり、両面にラミネート加工が施されていることが好ましい。
【0016】
図1(a)は、第1の容器20の側面図である。
図1(b)は、第1の容器20を水平面と直交する面で切断したときの断面図である。
図1(c)は第1の容器20の内部を示す斜視図である。
【0017】
図1(b)に示すように、第1の容器20の底部22を縁取る脚部24により第1の容器20の底部22と台面との間に隙間が形成される。
【0018】
図1(c)に示すように、第1の容器20の内壁に適量の茶葉を入れる目安となるライン26が描かれている。また、第1の容器20の内壁には、適量の湯を入れる目安となるライン28が描かれている。これにより、茶葉に対して適切な量の湯で茶を抽出することができる。茶葉および湯の適量は、使用する茶葉の種類にもよるが、たとえば、湯200mlに対して茶葉4gである。なお、茶をおいしく煎れるためには、湯200の温度を使用する茶葉に応じた適温とすることが重要である。このため、第1の容器20の内壁に紙状の温度計を貼り付けてもよい。これによれば、茶葉の扱いに慣れていないユーザであっても、適量の茶葉および湯、適温の湯にておいしく茶を煎れることができる。
【0019】
図2(a)は、第2の容器30の側面図である。
図2(b)は、第2の容器30を水平面と直交する面で切断したときの断面図である。
図2(c)は、第2の容器30の底部32を正面視したときの図である。第2の容器30の全体形状は、第1の容器20の全体形状と同様である。
【0020】
図2(a)〜
図2(c)に示すように、第2の容器30の側面には複数の開口80が形成されている。本実施形態では、第2の容器30を台に置いた場合の鉛直方向に開口80が所定間隔で3箇所形成されており、このような列の開口80が第2の容器30の底部を正面視したときに、約90度ごとの4箇所に設けられている。
【0021】
具体的には、開口80は、略平行な2本の切れ込み82、84と、切れ込み82、84の中点間を結ぶ切れ込み86により形成され、切れ込み82、84、86により動かすことができる可動部としての折り込み部87、88が第2の容器30の内側に折り込まれている。なお、開口80は第2の容器30の側面のみに設けられ、底部32には開口が形成されない。第2の容器30の素材として紙や樹脂を用いることにより、カッターなどの刃物で開口80を容易に形成することができる。開口80の数や位置は特に限定されないが、第2の容器30の高さの半分より下の側面に設けることが好ましい。
【0022】
また、
図2(b)に示すように、第2の容器30の底部32を縁取る脚部34により第2の容器30の底部32と台面との間に隙間が形成される。後述するように、茶を煎れる際に、この隙間が茶葉を閉じ込めるための空間となる。
【0023】
図3(a)〜
図3(d)および
図4(a)〜
図4(c)は、実施形態1に係る茶の煎れ方を示す工程概略図である。まず、
図3(a)に示すように、上述した第1の容器20および第2の容器30からなる簡易茶器を用意する。
【0024】
次に、
図3(b)に示すように、第1の容器20に適量の茶葉40を入れる。
【0025】
次に、
図3(c)に示すように、第1の容器20に適量の湯50を入れる。第1の容器20に湯50が入れられ、しばらく経つと、
図3(d)に示すように、湯50全体に茶葉40が拡散する。
【0026】
茶葉40に含まれるエキスを湯50に抽出するために適した時間載置した後、
図4(a)に示すように、第1の容器20の内側に第2の容器30を挿入し、第1の容器20と第2の容器30とを重ね合わせる。第2の容器30の挿入位置は、
図4(b)に示すように、第2の容器30が第1の容器20内で動かなくなる位置である。なお、第2の容器30の全体形状は、第1の容器20の全体形状と同様であるため、第1の容器20の壁面と第2の容器30の壁面との間に余分な隙間が形成されない。第1の容器20に入れられた茶葉40は、第1の容器20の底部22と第2の容器30の底部32との間の隙間に閉じ込められる。つまり、第1の容器20に入れられた茶葉40は余分な湯50と接しない状態となる。
【0027】
第1の容器20の内側に第2の容器30が挿入されると、第2の容器30に設けられた各開口を経由して第1の容器20から第2の容器30内に湯50が流入する。開口は第2の容器の側面のみに設けられており、第2の容器30の底部32は茶葉40を閉じ込める蓋の役割を果たしているため、第2の容器30内に茶葉40が混入せず、主に湯50が流入する。このとき、開口80を第2の容器30の高さの半分より下の側面に設けることにより、効率的に湯50を第2の容器30内に流入させることができる。この観点から、開口80の位置は、容器30の側面のできるだけ低い位置(ただし、脚部32より上方)にあることが好ましい。また、鉛直方向に開口80が複数設けられる場合に、下部にある開口80ほど、開口面積が小さくなるようにしてもよい。これによれば、茶場40が第2の容器30に混入することを抑制しつつ、湯50を第2の容器30に効率的に流入させることができる。
【0028】
また、何らかの理由で、第2の容器30に一旦流入した湯50が逆流しようとしても、
図2(c)に示したような折こみ部87、88が逆止弁の役割を果たすため、湯50の逆流が抑制される。
【0029】
第2の容器30に流入したお茶エキスを含む湯50は、
図2(d)に示すように、湯飲み70に移される。湯飲み70を用いずに、第2の容器30を第1の容器20に挿入した状態で、湯50を飲んでもよい。
【0030】
二煎目を煎れる場合には、第1の容器20に挿入された第2の容器30を取り外した後、
図3(c)以下の工程を繰り返す。
【0031】
本実施形態の簡易茶器10によれば、少なくとも以下の効果が奏される。
【0032】
第1の容器20および第2の容器30を使い捨て素材で形成することにより、場所を選ばず茶を簡易に煎れることができ、かつ飲み終わった後に第1の容器20および第2の容器30を捨てるだけでよいため、後片付けの手間がかからない。特に、第1の容器20および第2の容器30を紙コップで形成することにより、コストを大幅に抑えつつ、茶を煎れることができる。
【0033】
第1の容器20に湯を注いだときに、湯全体に茶葉が広がることにより、茶葉一つ一つが湯に適切に接することができるため、茶本来の味わいを得ることができる。
【0034】
第1の容器20および第2の容器30の容量を大型化し、第1の容器20に入れられる茶葉の量を増大させることにより、必要に応じた量の茶を一度に煎れることができる。
【0035】
第2の容器30を第1の容器20の内側に重ね合わせ、第2の容器30の側面に設けられた開口80から、茶葉から抽出されたエキスを含む湯を第2の容器30の内部に移動させるとともに、茶葉を第1の容器20の底部と第2の容器の底部との間に閉じ込めることにより、抽出後の茶葉40が余分な湯50と触れることを抑制することができる。このため、一煎目で使用された茶葉40から余計な茶エキスが抽出されることが抑制されるため、二煎目の茶をよりおいしく煎れることができる。
【0036】
第2の容器30の内側に折り込まれた折り込み部87、88が逆止弁のような働きをすることにより、第2の容器30に流入した湯が逆流することを抑制することができる。
【0037】
(実施形態2)
図5は、本実施形態の第2の容器30の断面図である。本実施形態では、底部32の裏に吸水部材90が設置されている。吸水部材90は、たとえば、ウレタンシートである。吸水部材90は、接着剤などを用いずに、第2の容器30の裏面形状に合わせて成形し、第2の容器30の裏面に填め込むとよい。
【0038】
本実施形態の第2の容器30を用いると、
図6に示すように、第1の容器20の内側に第2の容器30を挿入して茶を煎れ終わった状態のとき、余分な湯50などの水分が吸水部材90に吸い取られる。これにより、茶葉40の劣化が抑制され、二煎目も風味を損なわず、おいしく煎れることができる。また、第2の容器30を取り外したとき、第1の容器20内に水分がほとんど残らないため、第1の容器20を傾けても水分をこぼさずに済む。
【0039】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0040】
たとえば、上述の各実施形態では、H字状の切れ込みにより第2の容器30の側面に開口を形成しているが、開口の形成方法はこれに限られない。たとえば、三角形の2辺に切れ込みをいれ、可動部となる三角形を第2の容器30の内側に折り込んでもよい。
【符号の説明】
【0041】
20 第1の容器、22 底部、24 脚部、30 第2の容器、32 底部、34 脚部、40 茶葉、50 湯、70 湯飲み、80 開口