特許第6562996号(P6562996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562996
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】銅材料を銅基板から除去する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20190808BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20190808BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L21/205
   H01L21/31 C
   C23C16/02
   C23C16/26
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-238223(P2017-238223)
(22)【出願日】2017年12月13日
(62)【分割の表示】特願2014-558853(P2014-558853)の分割
【原出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-74171(P2018-74171A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年1月9日
(31)【優先権主張番号】61/603,104
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/607,337
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/677,323
(32)【優先日】2012年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エイ ボイド
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/115197(WO,A1)
【文献】 特開2001−007117(JP,A)
【文献】 特開2007−317908(JP,A)
【文献】 特開2006−135052(JP,A)
【文献】 特開平06−140368(JP,A)
【文献】 特開2006−080486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/02
C23C 16/26
H01L 21/31
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅基板から銅材料を除去する方法であって、該方法は、
銅基板を処理チャンバ中のホルダー上に配置するステップと、
前記処理チャンバ内に低減された圧力を与えるステップと、
前記銅基板を、窒素ガスと炭素含有材料を含み、前記炭素含有材料の濃度が0.01%と0.6%の間である雰囲気ガスに曝すステップと、
所定の期間、処理チャンバ内に高周波プラズマを提供するステップと
ッチングプロセスを前記銅基板の少なくとも一部に行うステップと、
前記銅材料を前記銅基板から除去するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
記エッチングプロセスは、室温エッチングプロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低減された圧力は、1mTorrと500mTorrとの間の圧力である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記低減された圧力は、25mTorrと40mTorrとの間の圧力である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの雰囲気ガスが水素をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの雰囲気ガスが、水蒸気または酸素の少なくとも1つを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
記エッチングプロセスを前記銅基板の少なくとも一部に行う間、前記低減された圧力を維持するステップをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板を、前記雰囲気ガスに曝すステップは、前記エッチングプロセスを前記銅基板の少なくとも一部に行うステップの前に行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理チャンバは内表面を有し、前記銅基板からの銅が前記内表面上に堆積する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記内表面上への銅堆積のレベルを測定する計測を行うステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記炭素含有材料がメタン、エタン、プロパンまたはブタンの少なくとも1つを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記銅材料を前記銅基板から除去するステップは、前記エッチングプロセスによって行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
記エッチングプロセスを前記銅基板の少なくとも一部に行うステップは、前記銅基板を前記高周波プラズマに曝すステップを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記炭素含有材料の濃度が100ppm超である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2012年2月24日に出願された、「低減された処理温度でのグラフェ
ンの形成方法」と題した米国仮出願第61/603104号、2012年3月6日に出願
された、「低減された処理温度でのグラフェンの形成方法」と題した米国仮出願第61/
607337号、および2012年7月30日に出願された、「低減された温度で高品質
且つ大面積グラフェンを形成する単一ステップ法」と題した米国仮出願第61/6773
23号の優先権を主張し、全ての目的のためにそれらの開示をここで参照として完全に組
み込む。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、原子が単一原子シートに規則的な六角形パターンで配された炭素の同素
体である。グラフェンの電気的特性は、従来の3次元材料と異なっており、グラフェンは
ゼロバンドギャップ半導体と考えることができる。グラフェンは、高いキャリア移動度を
有することができ、これがグラフェンを電子回路用途の候補材料としている。
【0003】
グラフェンフィルムを形成する現在の方法は、高温、例えば1000℃程度での化学気
相成長(CVD)を含む。CVD成長技術も、高温(例えば1000℃程度)での水素へ
の成長前暴露を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グラフェンフィルムの形成の進歩にも関わらず、当業にはグラフェン製造に関する改善
された方法およびシステムへの要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、概して、材料合成のための方法およびシステムに関するものである。より詳
細には、本発明は、高品質かつ大面積のグラフェンを成長させる方法およびシステムに関
するものである。単なる例として、本発明は、室温かつ減圧雰囲気下でグラフェンを成長
させる方法に適用された。この方法および技術は、CMOS互換半導体成長プロセスを含
む様々なグラフェン成長システムに適用できる。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、グラフェンフィルムを形成する方法が提供される。この
方法は、基板を低減された圧力にて処理チャンバ内に設置するステップと、前記基板の少
なくとも一部に表面処理プロセスを行うステップとを含む。この方法は、炭素含有材料を
前記チャンバ内に供給するステップおよび前記基板を前記炭素含有材料に曝すステップも
含む。この方法はさらに、前記基板上で前記炭素含有材料の部分をグラフェンフィルムに
変換させるステップを含む。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、グラフェンの形成方法が提供される。この方法は、基
板を提供するステップと、前記基板を減圧環境に置くステップとを含む。この方法は、キ
ャリアガスおよび炭素源を提供するステップおよび前記基板の少なくとも部分を前記キャ
リアガスおよび前記炭素源に曝すステップも含む。この方法はさらに、前記基板の前記少
なくとも部分に表面処理プロセスを施すステップと、前記炭素源の部分を前記基板の前記
少なくとも部分上に配置されたグラフェンに変換するステップとを含む。
【0008】
本発明の特定の実施形態によれば、グラフェン製造のためのシステムが提供される。こ
のシステムは、複数のガス源と、複数の質量流量計であって、該複数の質量流量計の各々
は、前記複数のガス源の1つに結合されている質量流量計と、前記複数の質量流量計と流
体的に連絡されている処理チャンバとを備える。このシステムはまた、前記処理チャンバ
においてプラズマを形成するように動作可能なプラズマ源と、前記処理チャンバと流体的
に連絡されている真空ポンプとを含む。この方法はさらに、プロセッサと、前記コンピュ
ータ可読媒体に実体的に実装され、データプロセッサにより実行された時にグラフェン製
造を提供する複数のコンピュータ可読命令を備える非固定コンピュータ可読記憶媒体とを
含む。前記複数の命令は、前記データプロセッサに基板を減圧環境に置かせる命令と、前
記データプロセッサにキャリアガスおよびカーボン源を供給させる命令とを含む。前記複
数の命令は、前記データプロセッサに前記基板の少なくとも部分を前記キャリアガスおよ
び前記炭素源に曝させる命令と、前記データプロセッサに前記基板の前記少なくとも部分
上で表面処理プロセスを実行させる命令とを含む。前記複数の命令はさらに、前記データ
プロセッサに、前記炭素源の部分を前記基板の前記少なくとも部分上に配置されたグラフ
ェンに変換させる命令を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明により従来技術に対して様々な利益を達成できる。例えば、本発明の実施形態は
、炉の必要なしにグラフェンを製造する技術を提供する。また、ここで説明するように、
従来技術よりもより高速にグラフェン成長を実現できる。さらに、ここで説明した低熱予
算処理は、従来法を用いて成長されたグラフェンにおいて観察されるものよりも低いスト
レスにより特徴付けられるグラフェンの成長を可能にする。本発明の幾つかの実施形態は
、炉の必要なしにグラフェンを製造し、従来技術を用いるよりもグラフェン成長を高速に
実現でき、低ストレスグラフェンフィルムを製造しつつ成長時間を著しく低減する(例え
ば5時間から15分に)方法およびシステムを提供する。本発明のこれらおよび別の実施
形態は、その多くの利点および特徴とともに、以下の文章および添付の図面に関連してよ
り詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態によるグラフェン製造のためのシステムを説明する簡略模式図である。
図2】本発明の一実施形態によるグラフェンの製造方法を説明する簡略フローチャートである。
図3】従来技術を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータおよび本発明の一実施形態を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータを示している。
図4】本発明の別の実施形態によるグラフェンの製造方法を説明する簡略フローチャートである。
図5】従来技術を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータおよび本発明の別の実施形態を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータを示している。
図6】本発明のさらに別の実施形態によるグラフェンの製造方法を説明する簡略フローチャートである。
図7】従来技術を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータおよび本発明の一実施形態を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータを示している。
図8】本発明の一実施例によるグラフェン製造のための連続的ロール・ツー・ロールシステムの簡略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、概して、材料合成のための方法およびシステムに関するものである。より詳
細には、本発明は、高品質かつ大面積のグラフェンを成長させる方法およびシステムに関
するものである。単なる例として、本発明は、室温かつ減圧雰囲気下でグラフェンを成長
させる方法に適用された。この方法および技術は、CMOS互換半導体成長プロセスを含
む様々なグラフェン成長システムに適用できる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、グラフェン製造のための方法およびシステムが提供される
。一実施形態において、プロセスは、炭素前駆体の導入前に基板(例えば銅箔)を水素プ
ラズマに曝すステップを含む。このプロセスは、減圧雰囲気下で実行される。このプロセ
スは、従来のグラフェン成長において利用された高温水素アニールを回避する。よって、
本発明は、低温(例えば室温)にて高品質グラフェンの成長を可能にして、水素中での成
長前高温アニールまたは成長中の高温なしに低温処理を可能にする。
【0013】
CVDによりグラフェンを形成する従来の方法に関連して利用された高い処理温度(例
えば1000℃程度)は、デバイス性能に正反対の結果を生む。より低い熱予算が好まし
く、製造のためのエネルギーコストを低減し、潜在的に低減されたストレスを有するグラ
フェンフィルムを製造する。また、より低い熱予算は、デバイス集積に対して新しい道を
開くことができる。水素アニール中またはCVD成長中において、高い処理温度が従来使
用されている。銅フィルム上のCVD成長に対しては、水素中でのアニールは、自然銅酸
化膜を除去して、上にグラフェン層が成長するむき出しの銅へのアクセスを提供すること
により、銅表面を清浄にすると信じられている。高温水素アニール中に生じる基板クリー
ニングは、処理チューブの内部上への銅の蓄積により証明されている。
【0014】
表面を清浄化する別の方法は、プラズマの使用によるものであり、処理環境に高温を適
用することなく基板の洗浄を可能にする。本発明の実施形態を限定することなく、本発明
者は、プラズマ中のエネルギー種は、銅基板上に存在する自然酸化膜を除去する働きをす
ると信じている。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、従来法に比べて低い熱予算処理を用いて高品質グラフェ
ンを成長させる方法が提供される。この実施形態において、従来の高温水素アニールは、
CVD成長開始前の室温プラズマ洗浄で置き換えられる。よって、このプロセスの全熱予
算は、従来技術に比べて低減される。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態によるグラフェン製造のシステムを説明する簡略模式図で
ある。システムは処理チャンバ110を含む。処理チャンバは、処理チューブとしても参
照されうる。処理チャンバは、プラズマ生成に耐える非反応環境を提供する石英のような
材料から製造される。石英に加えて、アルミナ、ガラス等の別の材料を利用して処理チャ
ンバを製造することができる。高周波プラズマ(例えば、高周波スペクトルの超高周波部
分(UFH)におけるマイクロ波プラズマ)を生成するために、高周波プラズマ発生器1
20(例えば、マイクロ波プラズマの発生に適したエベンソン型キャビティ)および関連
する電源122が設けられている。処理チャンバの部分は、特定の実装に応じた処理チャ
ンバの全てまたは一部を含むことができる。
【0017】
ガス源130、132および134が図1に示されているが、より少ない、あるいはよ
り多いガス源を含むことができる。示された実施形態において、ガス源は、水素、アルゴ
ンおよびメタンであるが、本発明はこれらの特定のガスに限定されない。質量流量計(M
FCs)131、133および135または別の適切な流量計を利用して、ガス源から処
理チャンバへのガスの流量を調整する。
【0018】
リーク弁139が図1に示されており、炭素源の流量をMFCにより提供されるレベル
よりも低いレベルにて制御するのに使用できる。幾つかの実施形態において、MFC13
5は解放条件下で動作し、炭素源の流量は、光学分光計160からのフィードバック信号
を組み込むフィードバックループを用いて制御することができる。代わりに、水素および
メタン(または別の適切な炭素源)の予混合気を利用できる。よって、幾つかの実施形態
は、光学放射スペクトルは、リーク弁の位置の非常に小さな変化に敏感にできるため、光
学放射スペクトルを利用してストリームにおける炭素源(例えば、メタン)の量を調整す
る。
【0019】
処理チャンバ110における圧力をモニターするために、逆流防止トラップ144およ
び真空ポンプ146に導く真空ラインにおいて1または複数の圧力計140および142
を利用することができる。追加の真空要素を特定の用途に適切に利用することができる。
また、1または複数の真空制御弁148を利用して処理チャンバにおける圧力を制御でき
る。
【0020】
処理環境およびグラフェン形成処理の特徴付けを提供するために、繊維光学ケーブル1
62を用いて処理チャンバに光学分光計160が設けられる。光学放射分光計(OES)
は、フローストリームにおける炭素源の量を制御して調節するのに使用できるのに加えて
、放射ピークを測定するのに使用できる。幾つかの実施形態において、成長プロセスをモ
ニターしてつじつまの合った結果を生成するように、放射ピークの組の比を使用できる。
別の実装において、光学パイロメーターを使用してサンプル温度が測定される。幾つかの
実施形態において、成長中に光学検査システム(例えば、基板の1または複数の表面への
光学的アクセスを提供するミラー)を利用して銅の除去の状態を特徴付けする。このよう
に、光学分光計に加えて、別の光学検査技術も本発明の範囲に含まれる。
【0021】
様々なシステム要素の制御を提供するために、プロセッサ172およびコンピュータ可
読媒体174を含むコンピュータ170が設けられ、MFCs、真空制御弁148、高周
波プラズマ発生器120および電源、光学放射分光計(OES)160、および別の適切
なシステム要素に結合されている。幾つかの実装において、より少ない、あるいはより多
い要素をコンピュータに結合させることができる。プロセッサ172は、真空圧力、ガス
流量、プラズマ発生および別のシステムパラメータの少なくとも幾つかを制御することに
関する計算を実行するのに使用される。コンピュータ可読媒体174(データベースまた
はメモリとしても参照される)は、プロセッサおよび別のシステム要素によって使用され
るデータを格納するために、プロセッサ172に結合されている。プロセッサ172は、
幾つかの実施形態において、光学分光計160とやりとりして、基板洗浄プロセス、グラ
フェン堆積プロセス等の状態に関するデータを提供する。プロセッサ172、メモリ17
4およびI/Oインターフェース176を使用して、利用者は、システムを動作させてこ
こで説明するようにグラフェンを形成することができる。
【0022】
命令およびデータを実行するように構成されたプロセッサ172は、カリフォルニア州
サンタクララのインテル(登録商標)コーポレーションによって製造された多目的のマイ
クロプロセッサとすることができる。プロセッサ172は、ソフトウェア、ファームウェ
アおよび/またはハードウェアにおいて本発明に従って本発明の方法を実行するための命
令の少なくとも一部を実施する特定用途向け集積回路(ASIC)であっても良い。例え
ば、これらのプロセッサは、専用回路、ASIC、組み合わせ論理回路、別のプログラム
可能プロセッサ、およびそれらの組み合わせ等を含む。
【0023】
メモリ174は、特定の用途に適するように局在または分散させることができる。メモ
リ174は、プロクラムの実行中に命令およびデータの格納のためのメインのランダムア
クセスメモリ(RAM)および固定された命令が格納されているリードオンリーメモリ(
ROM)を含むことができる。このように、メモリ174は、プログラムおよびデータフ
ァイルに対して永続的な(不揮発)記憶装置を提供し、ハードディスクドライブ、フラッ
シュメモリ、関連するリムーバブル媒体に関するフロッピーディスクドライブ、コンパク
トディスクリードオンリーメモリ(CD−ROM)ドライブ、光学ドライブ、リムーバブ
ル媒体カートリッジ、および別の類似の格納媒体を含むことができる。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態によるグラフェンを成長される方法を示す簡略フローチャ
ートである。この方法は、基板を減圧環境に置くステップを含む(ステップ210)。一
実施形態において、基板は(例えば0.025mmの厚みの)銅箔であり、減圧環境は真
空環境(例えば25mTorr〜0.5Torrの範囲の圧力)である。幾つかの実施形
態において、全システム圧は25mTorrと40mTorrとの間であるが、利用する
特定の真空システムに応じてより低くすることができる。ここでより完全に説明するよう
に、幾つかの実装において、処理の間、圧力は500mTorrに維持される。
【0025】
この方法は、基板を洗浄ガス(例えば、水素)の流れに曝すステップ(ステップ212
)と、高周波プラズマを所定の期間の間基板の周囲に形成するステップ(ステップ214
)を含む。幾つかの実施形態において、高周波プラズマ洗浄中の基板の温度は、従来の1
000℃での水素アニールに比べて低減された温度、例えば室温または室温付近である。
このように、本発明の実施形態は、従来技術を用いては利用できない低温処理を可能にす
る。
【0026】
高周波プラズマを消した後、サンプルは成長温度(例えば800℃)まで加熱される(
ステップ216)。幾つかの実施形態において、加熱処理中、基板は水素流とともに真空
条件下に維持して、基板をイナート環境中に保つ。本発明の実施形態を限定することなく
、本発明者は、高周波プラズマは基板の反応性を増加させ、続く炭素含有材料に曝された
ときの成長のための基板を用意すると信じている。幾つかの実施形態では超高真空環境が
必要とされていないため、幾つかの実装において、真空環境(例えば、25mTorr〜
0.5Torr)は、雰囲気(空気、窒素等を含む)からのガスが存在しても良いことに
注意されたい。CVDシステムに精通する者に明らかなように、真空環境の増加された制
御ために、処理チャンバ中に追加のガス制御を設けることができる。
【0027】
その方法は、所定の期間、基板を炭素前駆体の流れに曝すステップをさらに含む(ステ
ップ218)。例として、炭素前駆体はメタン、アセチレン、シクロヘキサン、トルエン
、PMMA、ポリスチレン、ベンゼン、それらの組み合わせ等を含む複数のガス種の1つ
とすることができる。成長後、基板は冷却されて成長チャンバから除去される。
【0028】
なお、図2に示された特定のステップは、本発明の一実施形態によるグラフェンを成長
させる特定の方法を提供する。代替の実施形態に従って別のステップシーケンスも実行で
きる。例えば、本発明の代替の実施形態は、上で概説されたステップを別の順序で実行で
きる。さらに、図2に示された個々のステップは、個々のステップに適切なように様々な
シーケンスで実行されることができる複数のサブステップを含むことができる。さらにま
た、特定の用途に応じてステップを追加または除去できる。当業者は、多くの変形、変更
および代替を認識するだろう。
【0029】
図2に関連して議論したように、本発明の実施形態を利用して、銅箔上へのグラフェンの成長を約800℃〜約1000℃の範囲の成長温度で実行した。その結果、本発明の幾つかの実施形態により、従来のグラフェン成長温度よりも低い温度での成長が提供される。図3は、従来技術を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータ(プロットA)および図2に関連して説明した方法を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータ(プロットB)を示している。図3に示すように、1000℃で銅単結晶上に成長されたグラフェン(プロットA)および低温プラズマ洗浄プロセスを用いた銅箔上へのグラフェン成長後、800℃での成長(プロットB)は、1580/cm−1および2700/cm−1付近の2つのシャープな特徴により特徴付けられ、1350/cm−1付近の明確な欠陥ピークがなく、本発明の実施形態は、ここで説明したプラズマアシスト条件を利用して高品質なグラフェンフィルムを製造することを示している。
【0030】
2ステップ洗浄/成長プロセスを利用する幾つかの実施形態において、基板を洗浄する
のに使用されるプラズマ処理と成長中の炭素源への暴露との間、基板はイナート環境中に
維持される。基板をイナート環境中に維持(例えば、真空下での処理を維持)できる能力
は、銅は酸素に曝されると速やかに酸化物を形成するため、処理表面を処理された状態に
維持することを可能にする。
【0031】
図1に示したシステムを利用して、グラフェンは以下のように形成された。すなわち、
エベンソン型キャビティを用いて、入力:40W、期間:15分間、水素流量:2scc
mで処理チャンバにおいて基板(銅箔)の近くに高周波プラズマが形成された。高周波プ
ラズマの適用中、マイクロ波キャビティの付近に著しい量の銅が観察されており、これは
、高周波プラズマが基板から銅をエッチングまたは除去していたことを示している。高周
波プラズマが消され、基板は水素流量:2sccm、圧力:42mTorr下で800℃
まで加熱した。
【0032】
その後、流量:35sccmでメタンの流れを追加して、処理チャンバにおける全圧を500mTorrに増加させた。これらの条件の15分後、同一の流れおよび圧力下で基板を冷却した。冷却時、基板を除去してラマン分光を行い(図5におけるプロット)、グラフェンが、サンプルホルダーとしても参照できるサセプタに隣接する基板の裏面側に形成されたことを示している。この手続きを700℃および600℃の成長温度でも繰り返したところ、同様の結果が得られた。本発明の実施形態は、単層のグラフェンに加えて、多層グラフェン、(例えば、VLSプロセスを用いた)カーボンナノチューブ、ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、アモルファスカーボン、フラーレン等を含む、炭素の別の同素体の形成に有益である。当業者は、多くの変形、変更および代替を認識するだろう。
【0033】
図4は、本発明の別の実施形態によるグラフェンの成長方法を示す簡略フローチャートである。この方法は、図5のプロットにおけるラマンスペクトルに関連するグラフェン成長プロセスと幾つかの類似するプロセスを共有しており、この高温(例えば800℃)成長プロセスに関連する説明は、図4において示された成長プロセスに適切に利用できる。
【0034】
この方法は、基板を減圧環境にある処理チャンバ中に設けるステップを含む(ステップ
410)。一実施形態において、基板は銅箔または別の適切な基板とすることができ、減
圧環境は、図1に示した処理チャンバ110における真空環境とすることができ、例えば
、約1〜約500mTorrの範囲の圧力である。幾つかの実装においては、圧力は50
0mTorr未満とすることができる。幾つかの実施形態において、この方法は、例えば
流量:2sccmで水素ガスの流れを導入するステップ(ステップ412)をさらに含む
。窒素、アルゴン、別の希ガス、塩素、別のハロゲン、これらの混合ガス(例えば、塩素
とアルゴン)等を含む、別のガスを利用することもできる。ガスは、プロセスチャンバを
通して流れるが、真空の適用は、ガス流にもかかわらず減圧環境を適用するのに十分であ
る。幾つかの実施形態において、処理チャンバ内の圧力は、所定の圧力値、例えば500
mTorrにて所定の期間維持される。自然酸化膜を効率的に除去するために、減圧環境
における酸素の分圧は、30mTorr未満とすることができ、減圧環境における水素の
分圧は、500mTorr未満とすることができ、減圧環境におけるイナートガスの分圧
および/または水蒸気を含む雰囲気ガスは、500mTorr未満とすることができる。
別の実施形態において、減圧環境における空気の分圧は、30mTorr未満とするか、
あるいは減圧環境におけるキャリアガスおよび炭素源の分圧は、500mTorr未満と
することができる。特定の実施形態において、減圧環境におけるキャリアガスおよび炭素
源の全圧は500mTorr未満である。当業者は、多くの変形、変更および代替を認識
するだろう。
【0035】
追加で、この方法は、処理チャンバ中に高周波プラズマを発生させるステップ(ステッ
プ414)と、基板を高周波プラズマに所定の期間曝すステップ(ステップ416)を含
む。高周波プラズマへの暴露の間、基板表面は洗浄および/または処理され、自然酸化膜
を除去してグラフェン堆積のための表面を用意する。高周波プラズマ処理の間、基板は、
例えば真空条件を維持することにより減圧環境中に維持される。例として、高周波プラズ
マ(例えば、処理チャンバにおける水素の流れに合わせて形成される高周波水素プラズマ
)は、入力:40W、期間:15分(例えば、水素流量:2sccm)でエベンソン型キ
ャビティを用いて処理チャンバ中で基板(例えば銅箔)の付近に形成できる。RFプラズ
マの適用中、著しい量の銅がマイクロ波キャビティ付近に観察され、高周波プラズマが基
板から銅をエッチングまたは除去していたことを示している。
【0036】
高周波プラズマ処理の後にプラズマは消され、基板は減圧環境中、例えば水素流量:2
sccmで減圧水素環境中に維持され、結果として42mTorrの圧力となる。この方
法は、炭素前駆体(例えばメタン)を、例えば処理チャンバにおいて500mTorrの
圧力を生成するメタン流量:35sccmで処理チャンバ中に流すステップを含む(ステ
ップ418)。こうして、幾つかの実施形態において基板が炭素含有材料に、例えば50
0mTorr未満の圧力で暴露されている間、減圧雰囲気を維持できる。炭素前駆体の流
れの間の温度は、室温、室温よりも低い温度、または室温より高い温度とすることができ
る。特定の実施形態において、炭素前駆体の流れの間の温度は20℃と30℃の間であり
、例えば室温である。
【0037】
炭素前駆体の流れの間、チャンバ中の圧力は、規定された値(例えば42mTorr)
で固定でき、あるいは特定の用途に応じて時間の関数として変動できる。幾つかの実施形
態において、減圧環境は、炭素前駆体の流れの間維持される。本発明の実施形態によれば
、炭素前駆体の流れは、例えば室温での基板上へのグラフェンの堆積に至る。グラフェン
は、堆積条件に応じて、基板の片側または両側に形成できる。幾つかの実装において、カ
バーまたはキャップを基板のすぐ近くで利用してグラフェン成長を増大させることができ
る。本発明の実施形態を限定することなく、本発明者は、カバーまたはキャップの使用は
、基板表面に隣接する種および/または前駆体の居住時間を増加させ、反応カイネティク
スに強い影響を与えて堆積レートを増加させると信じている。幾つかの実施形態において
、サセプタまたはサンプルホルダーに隣接する基板の裏面側へのグラフェン成長が観察さ
れる。このようなグラフェン成長の増大は、基板とサセプタまたはサンプルホルダーとの
間のメタン流の低い速度、およびカバーまたはキャップされていない別の表面と比較して
、対応する長い居住時間によるものとすることができる。代わりに、ガス流における炭素
源の濃度を低減して、成長表面で利用可能な炭素量を限定して、グラフェン成長を増大さ
せることができる。
【0038】
所定の期間後、水素および炭素前駆体の流量を低減し、例えばゼロにする。処理チャン
バは真空ポンプと連通しているため、処理チャンバは空にして、アルゴンまたは別の適切
なイナートガスで充填される。結果として、基板は処置チャンバから除去されて、堆積さ
れたグラフェンを特徴付ける。幾つかの実施形態において、メタン流の全てまたは一部の
間、全圧は500mTorrまで増加され、例えば15分間維持できる。グラフェン形成
後、基板の特徴付けのための除去する前に、処理チャンバはアルゴンまたは別の適切なイ
ナートガスで満たすことができる。
【0039】
図4に示すように、基板が低減圧力環境中に置かれた後、任意の水素ガス流を用いて(
ステップ412)高周波水素プラズマを処理チャンバ中に発生させることができる(ステ
ップ414)。
【0040】
なお、図4に示された特定のステップは、本発明の一実施形態によるグラフェンの特定の
成長方法を提供する。代替の実施形態に従って別のステップシーケンスも実行することが
できる。例えば、本発明の代替の実施形態は、上で概説したステップを別の順序で実行す
ることができる。また、図2に示した個々のステップは、個々のステップに適切なように
様々なシーケンスで実行されることができる複数のサブステップを含むことができる。さ
らにまた、特定の用途に応じて、ステップを追加または除去できる。当業者は、多くの変
形、変更および代替を認識するだろう。
【0041】
図5は、従来技術を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータと本発明の別の実施形態を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータを示している。図5に、従来技術を用いて1000℃で銅単結晶上に成長されたグラフェンに対するラマンスペクトルをプロットAとして示している。プロットBは、プラズマ洗浄後に銅箔上に800℃で成長されたグラフェンに対するラマンスペクトルを示している。プロットCは、図4に示した方法、すなわち高周波洗浄プロセスに続いてグラフェンの室温堆積を用いて銅箔上に成長されたグラフェンに対するラマンスペクトルを示している。図5においてデータ収集のために使用されたグラフェンフィルムは全て、35sccmのメタンおよび2sccmの水素を15分間500mTorrの全圧下で成長された。図5に示したように、室温(つまり24℃)および800℃で成長されたグラフェンは、1000℃で熱CVDにより成長されたグラフェンと類似したラマンスペクトルを有している。1580/cm−1および2700/cm−1付近の2つのシャープの特徴および1350/cm−1付近の明確な欠陥ピークが存在しないことは、双方のフィルムは良好な品質であることを示している。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態は、幾つかの方法の1つを利用して成長前に基板表面を処理
している。例として、銅箔基板は低温処理を用いて洗浄することができ、その結果、石英
処理チューブの内側に銅が蓄積するが、これは洗浄プロセス中に箔からの銅の除去の証拠
およびグラフェン製造のための成長表面の準備の証拠である。幾つかの実施形態において
、処理チャンバの内側、例えば基板付近上への銅堆積量を測定する、および/またはエベ
ンソン型キャビティプラズマ処理として、計量学を実行することができる。1つの基板処
理プロセスは、銅表面に隣接して形成される高周波水素プラズマを利用する。当業者には
明らかなように、高周波プラズマはガス分子を高周波電圧でイオン化する真空処理である
。プラズマ中でエネルギーを持ち活性な粒子は、自然表面層または表面汚染を除去するこ
とにより、表面を洗浄またはエッチングするように機能する。本発明の幾つかの実施形態
は、水素アニールに通常関連する高温を必要としない低温高周波プラズマ処理を利用する
【0043】
一実装において、エベンソン型キャビティを2450MHzの励起周波数でプラズマ源
として使用した。エベンソン型キャビティは、静止したガスおよび流れるガスの双方にお
いて、数mTorr〜数百Torrまでの範囲の圧力にて放電を励起することができる。
この特定の高周波マイクロ波キャビティの利益は、石英真空チューブ上に直接設置してそ
の場でプラズマを発生できることである。
【0044】
銅基板に加えて、ニッケル、白金、鉄、アルミニウム、コバルト、ルテニウム、酸化マ
グネシウム、これらの合金、シリコン、炭化シリコン、これらの組み合わせ等を含む別の
基板が本発明の実施形態とともに使用するのに適している。
【0045】
成長前処理または1ステップ成長表面処理に対する高周波プラズマの使用に加えて、酸
エッチングのような化学的方法、物理的機械加工のような機械的方法、イオンビーム注入
、超音波洗浄、研磨、レーザー蒸発、蒸発、物理エッチング、反応性イオンエッチング、
電気的研磨、アルゴンプラズマエッチングのような化学機械法、電子ビーム暴露、電子ビ
ーム加熱、誘導加熱、ジュール加熱のような電気的方法、および電気化学的方法を含む、
別の表面準備方法を利用できる。
【0046】
図6は、本発明のさらに別の実施形態によるグラフェンの成長方法を示す簡略フローチ
ャートである。図6に示したグラフェン形成方法は、図4に示したグラフェン形成方法と
幾つかの類似点を共有している。よって、図6に示した方法に関連する説明は、図4にお
いて示されたプロセスおよび材料に適切に利用できる。当業者は、多くの変形、変更およ
び代替を認識するだろう。
【0047】
図6に示したように、本発明の実施形態は、低減された温度で単一のステップで高品質
かつ大面積のグラフェン(例えばグラフェンフィルム)を成長させる方法を提供する。ま
とめると、本方法は、基板(例えば銅箔)を微量のメタンを含有する水素プラズマに曝す
ステップを含む。そのプロセスは、減圧環境において行われる。この処理は、従来のグラ
フェン成長において使用される高温水素アニールおよび関連する複数の処理ステップを避
けることができる点で有利である。この態様において、高品質グラフェンの成長は、1ス
テップかつ低減された温度で、高温での水素アニールを必要とすることなく起こることが
できる。
【0048】
図6を参照すると、本方法は、基板(例えば銅箔)を処理チャンバ中に設置するステッ
プ(ステップ610)を含む。一実施形態において、処理チャンバは、内径10mm、外
径12.5mmの石英チューブである。本方法は、処理チャンバを真空、例えば500m
Torr以下の圧力下に置くステップも含む(ステップ612)。キャリアガス(例えば
水素)の流れは、処理チャンバ中に、例えば水素流量:2sccm〜5sccm、例えば
2sccm、および微量の炭素源(例えばメタン)の流れを、例えば、メタン流量:0.
0008sccm(つまり水素流量の0.04%)でキャリアガスの流れに追加される(
ステップ614)。処理チャンバ中の圧力は、所定の値、例えば500mTorr以下に
固定されており、本方法は、基板付近で高周波プラズマを形成できるエベンソン型キャビ
ティを用いて、例えば入力:40Wを用いて処理チャンバ中で高周波プラズマを発生させ
るステップを含む(ステップ616)。幾つかの実施形態において、炭素源の量は、ガス
流の少量、例えば0.6%未満、例えば0.01%〜0.6%である。幾つかの実装にお
いて、炭素源の量は100ppm超えである。このように、本発明の実施形態は、メタン
を炭素源として微量含む水素の高周波プラズマを提供する。本発明の実施形態によれば、
エベンソン型キャビティに加えて、例えば誘導的に結合されたプラズマ源等の別のプラズ
マ源を利用できる。プラズマ中のガスも、例えばアルゴンイオンを含むプラズマ、塩素イ
オンおよびメタンベースのラジカルを含むプラズマ、これらの組み合わせ、塩素、アルゴ
ンおよびメタン等に変更できる。また、加熱されたワイヤー(例えばホットワイヤー)フ
ィラメント技術を使用して、ここで説明したプラズマベースグラフェン成長技術に類似し
た処理におけるグラフェン成長に適した活性種を形成できる。プラズマ技術の組み合わせ
および加熱されたワイヤーフィラメント技術も本発明の範囲に含める。
【0049】
キャリアガスとしての水素の使用に加えて、窒素、アルゴン、別の希ガス、塩素、別の
ハロゲン、これらの混合ガス(例えば、塩素およびアルゴン)等を含む別のガスを利用で
きる。炭素源としてのメタンの使用に加えて、アセチレン(エチン、C)、2,2
−ジメチルプロパン(ネオペンタン、C12)、アレン(プロパジン、C)、
エタン(C)、1,2−ブタジエン(C)、エチルアセチレン(1−ブチン
)、1,3−ブタジエン(C)、エチレン(エテン、C)、イソブ
タン(2−メチルプロパン)、n−ヘキサン(C14)、n−ブタン(C10
、1−ブテン(C)、メチルアセチレン(プロピン、C)、シス2−ブテン
(C)、イソペンタン(2−メチルブタンまたは3−メチルブタン、C12
、トランス2−ブタン(C)、n−ペンタン(C12)、イソブチレン(2−
メチルプロパン、C)、プロパン(C)、シクロプロパン(C)、プ
ロピレン(プロペン、C)、ジメチルアセチレン(2−ブチン、C)、トル
エン(C)ジメチルエーテル(CO)、ビニルアセチレン等を含む別のガス
を利用できる。
【0050】
本方法は、基板を高周波プラズマに所定の期間、例えば15分曝すステップ(ステップ
618)を含み、その間、キャリアガスおよび炭素源の流れは、減圧にて動作している間
は継続される。幾つかの実施形態において、ファンまたは冷却装置(例えば液体窒素を有
するチューブを通して流れる冷却ガスを流す)を高周波プラズマが形成される処理チュー
ブの領域に適用され、処理環境の温度を、例えば室温未満の温度に低減した。例として、
このような冷却は、処理チャンバ(つまり石英チューブ)の外側の温度を90℃または別
の同程度の温度に低減できる。このように、本発明の実施形態は、グラフェンフィルムの
室温成長を指すことができるが、本発明は室温での成長に具体的に限定されず、別の同程
度の温度を含むことができる。従って、室温は、本開示の目的のために、高周波プラズマ
プロセスの結果生成されうる熱を除いて基板の外部加熱のない処理環境を含むことを意図
している。実際、上述のように、基板および該基板に隣接する処理チャンバの領域の冷却
を使用して、高周波プラズマ処理中に生成される一部または全ての熱を除去できる。
【0051】
図6に示した方法において、微量のメタンまたは別の炭素源の水素プラズマへの添加は
、プラズマ中でC、CH、CHおよびCHのような反応炭素種を形成できる
。酸化銅の除去とグラフェンの堆積が同時に起こるため、これらの活性種は、水素原子に
加えて、基板上へのグラフェンの堆積をもたらす。本発明の実施形態を限定することなく
、本発明者は、グラフェン成長処理は、同時または並行の酸化銅の除去を含み、基板表面
を表面上で触媒作用を及ぼす活性炭素種に曝し、グラフェン層を残すと信じている。
【0052】
グラフェン層の形成後、プラズマを消し、処理チャンバはアルゴンで大気圧まで充填さ
れ、基板は処理チャンバから取り除かれる。本発明者は、図6に示した処理において、高
周波プラズマが基板表面に本来存在する自然酸化銅膜を除去した結果、マイクロ波キャビ
ティの近くに著しい量の動画観察されることに気づいた。
【0053】
なお、本発明の一実施形態によれば、図6に示した特定のステップは、グラフェンを成
長させる特定の方法を提供する。本発明の別の実施形態によれば、別のシーケンスステッ
プも行うことができる。例えば、本発明の代替の実施形態は、上で概説したステップを異
なる順序で実行することができる。また、図6に示された個々のステップは、個々のステ
ップに適切なように様々なシーケンスで実行されることができる複数のサブステップを含
むことができる。さらに、特定の用途に応じて、ステップを追加または除去できる。当業
者は、多くの変形、変更および代替を認識するだろう。
【0054】
図7は、従来技術を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータおよび本発明の一実施形態を用いて成長されたグラフェンフィルムに対するデータを示している。図7に示すように、プロットAは、1000℃で実行された従来の成長プロセスのためのラマンスペクトルを示している。プロットBは、図6に関連して説明された単一ステップ室温成長プロセスに対するラマンスペクトルを示している。双方のフィルムは、単結晶銅上に成長された。1580/cm−1および2700/cm−1付近の2つの特徴および1350/cm−1付近の明確な欠陥ピークが存在しないことは、双方のフィルムは良好な品質であることを示している。
【0055】
図8は、本発明の一実施形態によるグラフェン製造のための連続的ロール・ツー・ロー
ルシステムの簡略模式図である。図8に示すように、グラフェンを製造するためのロール
・ツー・ロールシステムは、ロール状の銅箔810を含み、この銅箔810は、処理要素
815を用いてプラズマ(例えば高周波水素プラズマ)に曝され、その後あるいは同時に
、グラフェン層を形成するようにメタンガスが噴射される。グラフェンを有する銅箔は、
出力ロール820上に巻かれる。図8に示した実施形態を用いて、ロール・ツー・ロール
処理は、大面積グラフェンフィルムの連続製造に使用できる。減圧雰囲気は、少なくとも
処理領域において低要されるが、銅箔およびグラフェンを有する銅箔の一方または双方の
ロールを含むこともできる。なお、図8に示したロール・ツー・ロール処理は、ここで説
明したグラフェン製造の方法の1または複数に適用できる。図8において、グラフェンは
、銅箔の表側の表面上に形成されたように示されているが、特定の実装に応じて、銅箔の
裏側の表面または両面上に形成できる。さらに、サポートまたはキャップ構造を用いて、
成長表面に隣接する種および/または前駆体の居住時間を変更できる。
【0056】
図8は、銅箔基板およびメタンを炭素源として用いたロール・ツー・ロール処理を示し
ているが、本明細書全体に説明されているように、別の基板および炭素源も図8に示した
システムの範囲に含まれる。当業者は、多くの変形、変更および代替を認識するだろう。
【0057】
ここで説明した例および実施形態は説明目的のみのためであり、それらを考慮して様々
な変更および変形が当業者に示唆され、本願の要旨および範囲、並びに添付の請求項の範
囲に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8