【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高い安定性と発現率でプシコースエピメラーゼを生産できる発現システム、これを用いたGRAS(Generally recognized as safe)微生物、前記GRAS(Generally recognized as safe)微生物を用いた酵素の製造方法、および前記発現システムを用いた微生物および酵素を含むプシコース生産方法に関するものである。
大腸菌由来のプロモーターは発現誘導因子の低い透過性と遺伝子発現抑制物質の不在などの理由でコリネバクテリウム属菌株で相対的に低い活性を示し、またコリネバクテリウム属菌株で生産しようとするプシコースエピメラーゼの発現に適した発現システムを提供しようとする。
【0012】
本発明は、コリネバクテリウム属菌株で高い発現率で安定的にプシコースエピメラーゼを発現できるプロモーター、前記プロモーターを含む調節配列、前記調節配列を含む遺伝子発現カセットを提供し、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを高い発現率で安定的に大量生産することができる。また、本発明者らは食品に適用可能なプシコースを大量生産するために、GRAS(Generally recognized as safe)菌株で安定的であり高い酵素生産活性を有するプシコースエピメラーゼを多量発現するために、前記プロモーターとの組み合わせの際にさらに優れた発現率を示すプシコースエピメラーゼおよびそのコーディングヌクレオチド配列を提供しようとする。
【0013】
本明細書で、「プロモーター」、「プロモーター活性を有する核酸分子」または「プロモーター配列」は、目的ヌクレオチド配列に機能的に連結され前記目的ヌクレオチド配列の転写または発現を調節する核酸を意味し、転写プロモーターおよび発現プロモーターを全て含む。
【0014】
転写対象ヌクレオチド配列は、化学的意味で必ずしもプロモーターへの直接連結を必要とするのではなく、追加的な遺伝子調節配列および/またはリンカーヌクレオチド配列などを含むことができる。転写対象目的ヌクレオチド配列がプロモーター配列の下部に(即ち、プロモーター配列の3'末端に)位置する配列が好ましい。プロモーター配列と転写対象ヌクレオチド配列の間の距離は、好ましくは200個塩基未満、特に好ましくは100個塩基未満である。
【0015】
本明細書で「リボソーム結合部位」(RBS)の配列またはシャイン−ダルガノ配列は、A/G豊富ポリヌクレオチド配列を意味として翻訳するとき、リボソームが結合する部位である。
【0016】
本明細書で「調節配列」は、プロモーターを含み発現対象目的ヌクレオチド配列または遺伝子に機能的に連結され、前記目的核酸または前記遺伝子の発現、即ち、転写および/または翻訳を調節する活性を有する核酸を意味する。したがって、これに関連して前記ヌクレオチド配列は「調節ヌクレオチド配列」とも呼ばれる。
【0017】
本明細書で「発現カセット」は、発現対象目的ヌクレオチド配列、例えばプシコースエピメラーゼのコーディングヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む。したがって、発現カセットは、転写および翻訳を調節するヌクレオチド配列だけでなく転写および翻訳の結果として蛋白質に発現されるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0018】
本発明による核酸分子は、好ましくは、自然に存在しない形態であり(non−naturally occurring)、単離された核酸分子の形態または合成または組換え方法によって製造される核酸分子である。「単離された」核酸分子は前記核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から除去され、追加的に、組換え技術によって製造される場合に本質的に他の細胞性物質または培養培地が存在しないか、化学的に合成される場合には化学的前駆体または他の化学物質が存在しないことがある。
【0019】
本発明の一例はコリネバクテリウム属菌株発現用調節配列の核酸分子に関するものであって、高い安定性と活性を有するプシコースエピメラーゼを、GRAS菌株で高い安定性を有しながらも高収率に生産することができるようにする。
【0020】
以下、本発明をさらに詳しく説明する
本発明の一例はコリネバクテリウム属菌株発現用調節配列の核酸分子に関するものであって、高い安定性と活性を有するプシコースエピメラーゼを、GRAS菌株で高い安定性を有しながらも高収率に生産することができるようにする。
【0021】
本発明のまた他の一例は、プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列;およびその上流(upstream)に作動可能なように連結され、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼの発現を調節する調節配列;を含み、
【0022】
前記調節配列は、配列番号1の核酸配列を含む核酸分子、配列番号63の核酸配列を含む核酸分子、配列番号64の核酸配列を含む核酸分子、および配列番号65の核酸配列を含む核酸分子からなる群より選択されたプロモーターを含む、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現する遺伝子発現カセット(gene expression cassette)を提供する。
【0023】
本発明による調節配列は、GRAS菌株、例えばコリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列を発現するプロモーターまたはこれを含有する調節配列を含む。
【0024】
前記調節配列は、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼをコーディングするヌクレオチド配列の発現を調節する非変形調節配列またはその変形調節配列であってもよい。
【0025】
前記調節配列に含まれているプロモーターは、配列番号1、配列番号63、配列番号64、および配列番号65のヌクレオチド配列を含む核酸分子および機能的変異体から選択されるポリヌクレオチドを含む。本発明の他の例で、前記機能変異体は、配列番号1、63、64、または65のヌクレオチド配列との配列同一性が、少なくとも90%、即ち、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%以上である。
【0026】
前記調節配列に含まれているプロモーター配列の例は、下記表1に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
本発明による調節配列は、プロモーター配列に追加して、リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列、スペーサ配列およびリンカー配列からなる群より選択された1種以上の配列を含むことができる。
前記リボソーム結合領域配列は、少なくとも1回以上、例えば少なくとも1回乃至5回、または2回で含まれてもよい。
前記調節配列は、第1RBS配列および第1スペーサ配列を含むか、第1RBS配列および第1スペーサ配列と第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結される第2リボソーム結合領域を含むか、第1RBS配列および第1スペーサ配列と、第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結される第2RBS配列と第2スペーサ配列を含むことができる。
【0029】
本発明の一例によるSODプロモーター由来、配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーターを例に挙げて説明しようとし、配列番号63、64または65のヌクレオチド配列を有するTac1、Tac2、Trcプロモーターに対して同一に適用される。
具体的に、前記調節配列が一つのRBS配列を含む場合、例えば前記調節配列は配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーター、配列番号2のヌクレオチド配列を含む第1RBS配列および配列番号3乃至配列番号6のヌクレオチド配列から選択されたいずれか一つのヌクレオチド配列を含む第1スペーサを含む核酸分子であってもよい(プロモーター−第1RBS−第1スペーサ)。また、選択的に前記調節配列の第1スペーサの3'末端に連結される1個乃至100個の塩基からなるリンカー配列を含む核酸分子であってもよい(プロモーター−第1RBS−第1スペーサ−リンカー)。
【0030】
前記調節配列が二つのRBS配列を含む場合、例えば、前記調節配列は(i)配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含み、追加的に(ii)配列番号2のヌクレオチド配列を含む第1RBS配列、(iii)配列番号3乃至6のヌクレオチド配列から選択されたいずれか一つのヌクレオチド配列を含む第1スペーサ、(iv)配列番号12のリンカー配列、および(v)配列番号7乃至11のヌクレオチド配列から選択されたいずれか一つのヌクレオチド配列を含む第2スペーサからなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができ、前記RBS配列を1回以上含むことができる。
【0031】
例えば、第2RBS配列を前記第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結されてもよい(プロモーター−第1RBS−第1スペーサ−第2RBSまたはプロモーター第1RBS−第1スペーサ−リンカー−第2RBS)。前記二つのRBS配列を含む調節配列において、第2RBSの3'−末端に連結された第2スペーサ配列を追加的に含むことができる。また、第1RBSと第1スペーサの組み合わせまたは第2RBSと第2スペーサの組み合わせは1回以上、例えば1−5回、2、3、4または5回繰り返して含まれてもよい。
【0032】
本発明による非変形調節配列の具体的な例は以下の通りである。
(1)プロモーターの3'末端に直接またはリンカーを通じて連結されたRBSとスペーサ配列を含むもの(例、プロモーター−第1リンカー−第1RBS−第1スペーサ、またはプロモーター−第1RBS−第1スペーサ)、
(2)プロモーターの3'末端に連結されたRBSとスペーサ配列を2回以上繰り返して含むもの(例、プロモーター−第1RBS−第1スペーサ−第2RBS−第2スペーサ)、および
(3)プロモーターの3'末端に連結されたRBSとスペーサ配列を2回以上繰り返して含み、第1スペーサ配列と第2RBSの間に第2リンカーを追加的に含むもの(例、プロモーター−第1RBS−第1スペーサ−第2リンカー配列−第2RBS−第2スペーサ)。
本発明の一例で、前記調節配列に含まれるリボソーム結合領域(RBS)は配列番号2のヌクレオチド配列を含む7乃至20個の塩基からなるものであってもよく、例えば配列番号2の核酸配列である。
【0033】
前記調節配列に含まれるリンカー配列は1個乃至100個の塩基、または5個乃至80個の塩基を有するヌクレオチド配列であってもよく、例えば配列番号12のヌクレオチド配列を含む核酸分子であってもよい。前記リンカー配列はプロモーターと第1RBSの間に位置するリンカー、第1スペーサと第2RBSの間に位置するリンカーを含むことができ、それぞれのプロモーターに適合するようにリンカーの最適塩基配列を適切に選択して用いることができる。配列番号1のヌクレオチド配列を含むSOD由来プロモーターの場合、第1スペーサと第2RBSの間に位置する第1リンカーとして配列番号12のヌクレオチド配列と共に調節配列に含まれてもよい。Tac1およびTac2由来プロモーターの場合、プロモーターと第1RBSの間に位置する第2リンカーとして、配列番号66のヌクレオチド配列からなる第1リンカーを含むことができる。
【0034】
本発明の一例で、配列番号63または64のヌクレオチド配列を有するTac1、Tac2プロモーターを含む調節配列はプロモーター配列に追加して、第2リンカー(例、配列番号66のヌクレオチド配列)、第1RBS配列(例、配列番号2のヌクレオチド配列および第2スペーサ配列(例、配列番号7のヌクレオチド配列)を含むことができる(プロモーター−(第2リンカー乃至第4リンカーから選択された一つのリンカー)−第1RBS−第2スペーサ)。
【0035】
具体的に、配列番号63のヌクレオチド配列を有するTac1プロモーター、1RBS配列(例、配列番号2のヌクレオチド配列)、配列番号66の配列を有する第2リンカーを含むか、追加的に第2リンカーに連結された第2スペーサ配列(例、配列番号7のヌクレオチド配列)を含むことができる。例えば、配列番号70または71のヌクレオチド配列からなる調節配列であってもよい。
【0036】
配列番号64のヌクレオチド配列を有する
Tac2プロモーター、1RBS配列(例、配列番号2のヌクレオチド配列)、配列番号67の配列を有する第3リンカーを含むか、追加的に
第3リンカーに連結された第2スペーサ配列(例、配列番号7のヌクレオチド配列)を含むことができる。例えば、配列番号73または74のヌクレオチド配列からなる調節配列であってもよい。
【0037】
配列番号65のヌクレオチド配列を有する
Trcプロモーター、1RBS配列(例、配列番号2のヌクレオチド配列)、配列番号68の配列を有する第3リンカーを含むか、追加的に第4リンカーに連結された第2スペーサ配列(例、配列番号7のヌクレオチド配列)を含むことができる。例えば、配列番号75のヌクレオチド配列からなる調節配列であってもよい。
【0038】
本発明の一例で、前記調節配列に含まれるスペーサ配列は3乃至15個の塩基を有する核酸分子であり、多様な種類の塩基および長さで製造されてもよく、調節配列にスペーサ配列を含ませることによって下部に位置する遺伝子の発現効率を増加させることができる。また、発現対象目的蛋白質のコーディング核酸配列と対象宿主細胞の種類などを考慮して多様な種類の核酸組成および大きさで製造して使用することができる。
【0039】
本発明による変形調節配列は、前記非変形調節配列の第1スペーサおよび第2スペーサからなる群より選択された少なくとも一つのスペーサのヌクレオチド配列が一つ以上の塩基が置換されたヌクレオチド配列であってもよい。
例えば、前記変形調節配列が一つのRBS配列を含む場合、前記変形調節配列はプロモーター、第1RBSおよび第1スペーサを含み、前記第1スペーサのヌクレオチド配列の一番目および二番目塩基のTTが、GA、GTまたはGC塩基に置換されたものである変形調節配列であってもよい。
【0040】
また、前記変形調節配列が二つのRBS配列を含む場合、第1RBS配列の3'末端に連結された第1スペーサの一番目および二番目塩基のTTがGA、GTまたはGCに置換されるか、第2RBS配列の3'末端に連結された第2スペーサの一番目および二番目塩基のTTがGG、GA、GTまたはGC塩基に置換されるか、または第1スペーサの一番目および二番目塩基のTTがGA、GTまたはGCに置換され、第2RBS配列の3'末端に連結された第2スペーサの一番目および二番目塩基のTTがGG、GA、GTまたはGC塩基に置換された変形調節配列であってもよい。
【0041】
例えば、本発明による第1スペーサ配列は配列番号3乃至6のヌクレオチド配列のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列を含むものであってもよく、第2スペーサ配列は配列番号7乃至11のヌクレオチド配列のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列を含むものであってもよい。
【0042】
本発明による具体的な調節配列に含まれるプロモーター配列、RBS配列、第1スペーサおよび第2スペーサとこれらの変形配列、およびリンカーを下記表2に例示的に記載する。
【0043】
【表2】
【0044】
前記調節配列は、SODプロモーター由来、配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含む場合、配列番号13乃至配列番号32のヌクレオチド配列を含む核酸分子からなる群より選択されたポリヌクレオチドを含み、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現するものであってもよい。
【0045】
【表3】
【0046】
前記調節配列は、Tac1またはTac2プロモーター配列番号63および64のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含む場合、
配列番号66乃至配列番号75のヌクレオチド配列を含む核酸分子からなる群より選択されたポリヌクレオチドを含み、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現するものであってもよい。
【0047】
【表4】
【0048】
本発明による調節配列は、その下部に連結されたプシコースエピメラーゼをコリネバクテリウム属菌株で発現できるように調節することができる。よって、本発明による遺伝子発現カセットはコリネバクテリウム属菌株で目的蛋白質の発現のために用いることができ、前記目的蛋白質の例はプシコースエピメラーゼであってもよい。前記プシコースエピメラーゼはクロストリジウムシンデンス(Clostridium) scidens)、トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)、エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)に由来したものであってもよく、アグロバクテリウムツメファシエンス由来プシコースエピメラーゼは酵素の活性が低く熱安定性が良くないという短所があって好ましくない。
【0049】
大腸菌由来のプロモーターは、発現誘導因子の低い透過性と遺伝子発現抑制物質の不在などの理由でコリネバクテリウムで相対的に低い活性を示す。また、同じプロモーターであっても目的蛋白質をコーディングする遺伝子によって発現効率が異なり、コリネバクテリウムで使用できるプロモーターの発現強度も選択の幅が小さくて目的に合うように発現システムを製作することが容易でない。また、コリネバクテリウム属菌株発現用プロモーターであっても特定目的蛋白質によってその転写調節活性が異なることがあり、よって、本発明によるプロモーター、調節配列または遺伝子発現カセットはコリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現するものが適合する。
【0050】
前記目的蛋白質は、コリネバクテリウム属菌株発現用核酸分子の3'末端に直接連結されるか、リンカーを通じて連結されてもよい。
【0051】
本発明によるプシコースエピメラーゼは酵素活性および熱安定性に優れたものが好ましく、よって、本発明の具体的な例で、プロモーターまたは調節配列はプシコースエピメラーゼをコーディングする遺伝子との組み合わせが重要であり、本発明に使用されたプシコースエピメラーゼとプロモーターは適正以上の蛋白質発現を提供することができ、プロモーターを用いた場合には蛋白質のフォールディング(folding)が堅固で熱安定性が高い結果が得られてさらに好ましい。
【0052】
本発明の一例で、前記プシコースエピメラーゼはクロストリジウムシンデンス(Clostridium) scidens)、トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)、エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)またはルミノコッカストルクエス(Ruminococcus torques)に由来したものであってもよく、好ましくは配列番号33乃至36のアミノ酸配列のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチドを含むプシコースエピメラーゼであってもよい。
【0053】
前記プシコースエピメラーゼは果糖をプシコースに転換する活性が維持される限り、配列番号33乃至36のアミノ酸配列のうちのいずれか一つのアミノ酸のうちの一部アミノ酸が置換、挿入および/または欠失されたものであってもよい。例えば、前記蛋白質は、配列番号33乃至36のアミノ酸配列のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0054】
前記プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列は、クロストリジウムシンデンス(Clostridium) scidens)、トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)、エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)またはルミノコッカストルクエス(Ruminococcus torques)から得られたプシコースエピメラーゼの暗号化ヌクレオチド配列であるか、大腸菌またはコリネバクテリウム属菌株で発現に最適化することができるように変形されたヌクレオチド配列であってもよい。
【0055】
例えば、前記プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列は、配列番号33乃至36のアミノ酸配列のうちのいずれか一つのアミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列であってもよい。具体的に、前記プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列は、配列番号37乃至配列番号44からなる群より選択されたヌクレオチド配列を含む核酸分子であってもよい。または前記ヌクレオチド配列に対して実質的同一性を有する配列を有するものであってもよい。前記の実質的な同一性は、配列番号37乃至配列番号44からなる群より選択されたヌクレオチド配列のヌクレオチド配列と任意の他の配列を最大限に対応するように整列し、その配列を分析して、前記任意の他の配列が配列番号37乃至配列番号44からなる群より選択されたヌクレオチド配列のヌクレオチド配列と70%以上、90%以上、または98%以上の配列相同性を有することを意味する。
【0056】
本発明の一例で、クロストリジウムシンデンス(Clostridium) scidens)に由来したものであって、果糖からプシコースを生産する活性を有する蛋白質(CDPE)は配列番号33のアミノ酸配列を有し、配列番号33のアミノ酸配列を含むペプチドを暗号化するヌクレオチド配列、例えば配列番号37のヌクレオチド配列または配列番号38のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0057】
本発明の一例で、トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)に由来したものであって、果糖からプシコースを生産する活性を有する蛋白質(TDPE)は配列番号34のアミノ酸配列を有し、配列番号34のアミノ酸配列を含むペプチドを暗号化するヌクレオチド配列、例えば配列番号39のヌクレオチド配列または配列番号40のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0058】
本発明の一例で、エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)に由来したものであって、果糖からプシコースを生産する活性を有する蛋白質(EDPE)は配列番号35のアミノ酸配列を有し、配列番号35のアミノ酸配列を含むペプチドを暗号化するヌクレオチド配列、例えば配列番号41のヌクレオチド配列または配列番号42のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0059】
本発明の一例で、ルミノコッカストルクエス(Ruminococcus torques)に由来したものであって、果糖からプシコースを生産する活性を有する蛋白質(RDPE)は配列番号36のアミノ酸配列を有し、配列番号36のアミノ酸配列を含むペプチドを暗号化するヌクレオチド配列、例えば配列番号43のヌクレオチド配列または配列番号44のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0060】
本発明による発現カセットは、複製起点、リーダー(leader)、選択可能なマーカ、クローニング部位および制限酵素認識部位からなる群より選択された1種以上の配列を追加的に含むことができる。
【0061】
本発明の追加例は、本発明によるコリネバクテリウム属菌株発現用プロモーター、これを含む調節配列、または前記調節配列およびプシコースエピメラーゼを暗号化するポリヌクレオチドを含む、コリネバクテリウム属菌株用遺伝子発現カセットを提供する。
【0062】
前記コリネバクテリウム属菌株発現用核酸分子、および調節配列とプシコースエピメラーゼは前述の通りである。
【0063】
本発明の一例で、前記発現カセットは、発現のためのポリヌクレオチド配列として、複製起点、リーダー(leader)、選択可能なマーカ、クローニング部位および制限酵素認識部位からなる群より選択された1種以上の配列を追加的に含むことができる。
【0064】
本発明による前記発現カセットは前記ポリヌクレオチドはそれ自体で(naked nucleic acid construct)、または前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターの形態に用いることができる。前記組換えベクターとは、作動可能なように連結された目的ポリヌクレオチドを伝達することができる組換え核酸分子を意味し、前記目的ポリヌクレオチドは、プロモーターおよび転写終結因子などからなる一つ以上の転写調節要素と作動可能に連結されているものであってもよい。
【0065】
前記組換えベクターは、当業界に広く知られた方法を通じてクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築されてもよい(Francois Baneyx、current Opinion Biotechnology 1999、10:411−421)。前記組換えベクターは、遺伝子組換えに用いられてきたベクターであれば何れも使用してもよく、例えば、プラスミド発現ベクター、ウイルス発現ベクター(例、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ連関ウイルス)およびこれらと同等な機能を遂行できるウイルスベクターなどからなる群より選択されたものであり得るが、これらに限定されるのではない。例えば、前記組換えベクターは、pET、pKK223−3、pTrc99a、pKD、pXMJ19、pCES208ベクターなどからなる群より選択されたものから製作されたものであってもよく、好ましくは、E.coli−corynebacterium shuttle vector(pCES208、J.Microbiol.Biotechnol.、18:639−647、2008)であり得る。
【0066】
したがって、本発明による発現カセットを含むベクターは、特にコリネバクテリウム属菌株で増殖可能であり目的蛋白質を発現可能なプラスミドとして発現ベクターなどを含むことができる。
【0067】
前記転写終結因子は、rrnB、rrnB_T1、rrnB_T2、T7ターミネーター(T7 terminator)などであってもよく、好ましくは、pET21aベクター(pET21a vector)からPCRされたT7転写終結因子であり得る。
【0068】
本発明のまた他の一例には、配列番号1、63、64または65のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含むベクターに関するものであって、特に目的蛋白質またはこれを暗号化する目的遺伝子を含まず調節配列のみを含むことができる。前記ベクターは、大腸菌、コリネバクテリウム属菌株などで増殖可能であり、シャトルベクター、複製ベクターまたは発現ベクターなどを含む。
【0069】
具体的に、SODプロモーター由来、配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含む場合、目的ポリヌクレオチド配列の上流に位置し前記目的ポリヌクレオチド配列の発現を調節する調節配列を含み、前記調節配列は配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーター、第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列を含むものであるベクター、例えば、プラスミドに関するものである。
【0070】
前記調節配列は、プロモーター、第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列と、第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結される第2リボソーム結合領域を含むものであってもよい。また、前記調節配列は、第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列と、第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結される第2リボソーム結合領域と第2スペーサ配列を含むものであってもよい。
【0071】
前記プロモーターを含むベクターで、好ましくは、前記第1スペーサ配列は配列番号3のヌクレオチド配列中の一番目および二番目塩基(TT)がGA、GTまたはGCに置換された塩基を含む配列として配列番号4、5、または6の配列を有するものであってもよい。
【0072】
前記ベクターが第1スペーサと第2スペーサを含む場合、第1スペーサまたは第2スペーサそれぞれにのみ変形塩基を含むか、または第1スペーサまたは第2スペーサの両方ともで変形された塩基を含むことができる。例えば、前記第1スペーサ配列は配列番号3のヌクレオチド配列を有し、第2スペーサ配列は配列番号7のヌクレオチド配列中の一番目および二番目塩基がGA、GT、GCまたはGGに置換された塩基を含むものであってもよく、第1スペーサ配列は配列番号3のヌクレオチド配列を有し、第2スペーサ配列は配列番号8乃至11のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列を有してもよい。
【0073】
或いは、前記第1スペーサ配列は配列番号3のヌクレオチド配列中の一番目および二番目塩基(TT)がGA、GTおよびGCからなる群より選択される塩基に置換され、第2スペーサ配列は配列番号7のヌクレオチド配列中の一番目および二番目塩基がTT、GA、GT、GCおよびGGからなる群より選択される塩基を含むことができ、第1スペーサ配列は配列番号4乃至6のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列であってもよく、第2スペーサ配列は配列番号7乃至11のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列であってもよい。
【0074】
本発明によって目的蛋白質またはこれを暗号化する目的遺伝子を含まず調節配列のみを含むベクターで、RBS、リンカー、第1スペーサおよび第2スペーサなどその他の構成要素については、前記プシコースエピメラーゼコーディング配列と調節配列を含有する遺伝子発現カセットおよびこれを含むベクターに前述した内容と同一である。
【0075】
本発明の一例は、前記遺伝子発現カセットを含むか、前記発現カセットを含むベクターで形質転換された組換えコリネバクテリウム属宿主細胞であってもよい。
【0076】
前記組換えベクターで宿主細胞を形質転換させる方法は、当業界に公知された全ての形質転換方法から特別な制限なく選択して用いることができ、例えば、細菌原形質体の融合、電気穿孔法、推進体砲撃(projectile bombardment)、およびウイルスベクターを用いた感染などから選択されたものであってもよい。
【0077】
本発明による形質転換コリネバクテリウム属菌株は高い安定性を有し、導入されたプシコースエピメラーゼを過発現することができ、したがって長期間安定的に高いプシコース転換能を提供することができる。したがって、前記形質転換コリネバクテリウム属菌株はプシコース製造に有用に適用することができ、プシコース生産収率をより増進させることができる。
【0078】
好ましいコリネバクテリウム属菌株はコリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウムグルタミクム(glutamicum)、コリネバクテリウムアセトグルタミクム(acetoglutamicum)、コリネバクテリウムアセトアシドフィルム(acetoacidophilum)、コリネバクテリウムサーモアミノゲネス(thermoaminogenes)、コリネバクテリウムメラセコラ(melassecola)およびコリネバクテリウムエフィシエンス(efficiens)種細菌である。
【0079】
本発明による形質転換された組換えコリネバクテリウム属宿主細胞は、組換えコリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)であってもよい。
【0080】
前記コリネバクテリウム属菌株の培養は、適当な培地で当業界で知られた多様な培養方法によって行うことができる。前記培養方法の例には、回分式、連続式および流加式培養が含まれる。前記流加式培養には注入バッチおよび反復注入バッチ培養が含まれるが、ここに限定されるのではない。本発明によって用いることができる培地は一般に一つ以上の炭素供給源、窒素供給源、無機塩、ビタミンおよび(または)微量元素を含む。好ましい炭素供給源は、単糖類、二糖類または多糖類のような糖類である。溶液中の金属イオンを維持させるために培地にキレーティング剤を添加することができる。培地の全ての成分は加熱(1.5barおよび121℃で20分)または滅菌ろ過によって滅菌させる。
【0081】
本発明のまた他の一例は、形質転換コリネバクテリウム属菌株を用いて得られたプシコースエピメラーゼ、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、プシコース生産用組成物を提供する。
【0082】
また、本発明は、組換えコリネバクテリウム属宿主細胞を用いて得られたプシコースエピメラーゼ、前記細胞の菌体、前記細胞の培養物、前記細胞の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含むプシコース生産用組成物を果糖−含有原料と接触してプシコースを生産する方法を提供する。
【0083】
前記培養物は前記コリネバクテリウム属菌株から生産された酵素を含むものであって、前記菌株を含むか、菌株を含まない無細胞(cell−free)形態であってもよい。前記破砕物は、前記コリネバクテリウム属菌株を破砕した破砕物または前記破砕物を遠心分離して得られた上澄み液を意味するものであって、前記コリネバクテリウム属菌株から生産された酵素を含むものである。本明細書において、別途の言及がない限り、プシコースの製造に使用されるコリネバクテリウム属菌株は、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物および前記菌株の破砕物からなる群より選択された1種以上を意味するものとして使用される。
【0084】
前記プシコース生産方法は、前記コリネバクテリウム属菌株を果糖−含有原料と反応させる段階を含む。一実施形態で、前記コリネバクテリウム属菌株を果糖と反応させる段階は、前記コリネバクテリウム属菌株の菌体を果糖が含まれている培養培地で培養する段階によって遂行できる。他の実施形態で、前記コリネバクテリウム属菌株を果糖と反応させる段階は、前記菌株(菌体、菌株の培養物、および/または菌株の破砕物)を果糖と接触させる段階、例えば、前記菌株を果糖と混合する段階または前記菌株が固定化された担体に果糖を接触させる段階によって遂行できる。このようにコリネバクテリウム属菌株を果糖と反応させることによって果糖をプシコースに転換して果糖からプシコースを生産することができる。
【0085】
前記プシコース生産方法において、効率的なプシコース生産のために、基質として使用される果糖の濃度は、全体反応物基準に40乃至75%(w/v)、例えば、50乃至75%(w/v)であってもよい。果糖の濃度が前記範囲より低ければ経済性が低くなり、前記範囲より高ければ果糖がよく溶解されないので、果糖の濃度は前記範囲にすることが良い。前記果糖は、緩衝溶液または水(例えば、蒸留水)に溶解された溶液状態で用いることができる。
【0086】
前記プシコース生産方法において、前記反応は、pH6乃至9.5、例えば、pH7乃至9、pH7乃至8またはpH8乃至9の条件下で行うことができる。また、前記反応は、30℃以上、例えば40℃以上の温度条件下で行うことができる。温度が80℃以上になれば基質である果糖の褐変現象が起こることがあるので、前記反応は40乃至80℃、例えば、50乃至75℃、60乃至75℃、または68乃至75℃の条件下で行うことができる。また前記反応時間が長いほどプシコース転換率が高まる。例えば、前記反応時間は1時間以上、例えば2時間以上、3時間以上、4時間以上、5時間以上または6時間以上にすることが良い。反応時間が48時間を超過すればプシコース転換率の増加率が微小であるか、むしろ減少するので、反応時間は48時間を超過しないことが良い。したがって、前記反応時間は1乃至48時間、2乃至48時間、3乃至48時間、4乃至48時間、5乃至48時間、または6乃至48時間にすることができ、産業的および経済的側面を考慮して、1乃至48時間、2乃至36時間、3乃至24時間、3乃至12時間、または3乃至6時間程度にすることができるが、これに制限されるわけではない。前記条件は、果糖からプシコースへの転換効率が最大化される条件として選定されたものである。
【0087】
また、前記プシコース生産方法において、使用される菌株の菌体濃度は、全体反応物基準に5mg(dcw:乾燥細胞重量)/ml以上、例えば、5乃至100mg(dcw)/ml、10乃至90mg(dcw)/ml、20乃至80mg(dcw)/ml、30乃至70mg(dcw)/ml、40乃至60mg(dcw)/ml、または45乃至55mg(dcw)/mlであってもよい。菌体濃度が前記範囲未満である場合にはプシコース転換活性が低いかほとんどなく、前記範囲を超過すれば菌体が過度に多くなりプシコース転換反応の全体的な効率が低くなるので、菌体濃度は前記範囲にすることが良い。
【0088】
前記果糖をプシコースに転換させる酵素(例えば、エピメラーゼ)は金属イオンによって活性化が調節されるので、前記プシコース生産において、金属イオンを添加すれば果糖からプシコースへの転換効率、即ち、プシコース生産率が増加できる。
【0089】
したがって、前記コリネバクテリウム属菌株を含むプシコース生産用組成物は、金属イオンを追加的に含むものであってもよい。また、前記コリネバクテリウム属菌株を用いたプシコース生産方法は、金属イオンを添加する段階を追加的に含むことができる。一実施形態で、前記金属イオンは前記培養段階の培養培地に添加されるか、前記培養段階が前記金属イオンが添加された培養培地で行われるものであってもよい。他の実施形態で、前記金属イオンは果糖に添加されるか、前記コリネバクテリウム属菌株と果糖との混合物に添加されてもよい。また他の実施形態で、前記コリネバクテリウム属菌株が固定化された担体に添加されるか(果糖添加前)、前記コリネバクテリウム属菌株が固定化された担体と果糖との混合物に添加されるか(果糖添加後)、または果糖添加時に果糖と混合物の形態でまたはそれぞれ添加されてもよい。
【0090】
前記金属イオンは、銅イオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、アルミニウムイオンなどからなる群より選択された1種以上であり得る。例えば、前記金属イオンは、マンガンイオン、マグネシウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオンなどからなる群より選択された1種以上であってもよく、一例で前記金属イオンは、マンガンイオン、コバルトイオン、またはこれらの混合物であってもよい。プシコース生産収率増進効果を考慮して、前記金属イオンの添加量は0.5mM以上にすることができる。一方、前記金属イオンの添加量が5mMを超過すればその超過量に比べて効果が微小であるため、前記金属イオンの添加量は5mM以下にすることができる。例えば、前記金属イオンの添加量は0.5mM乃至5mM、例えば、0.5mM乃至2mM範囲にすることができる。
【0091】
前記担体は、固定された菌株、または前記菌株から生産される酵素の活性が長期間維持される環境を造成できるものであって、酵素固定化用途に用いることができる公知された全ての担体であり得る。例えば、前記担体としてアルギン酸ナトリウム(soduim alginate)を使用することができる。アルギン酸ナトリウムは、海藻類の細胞壁に豊富に存在する天然コロイド性多糖類であって、マンヌロン酸(β−D−mannuronic acid)とグルロン酸(α−L−gluronic acid)が組成されており、含量面では無作為にベータ−1,4結合を成して形成され、菌株または酵素が安定的に固定され優れたプシコース収率を示すのに有利であり得る。
【0092】
一実施形態で、プシコースの収率をより増進させるために1.5乃至4.0%(w/v)濃度のアルギン酸ナトリウム溶液(例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液)、例えば約2.5%の(w/v)濃度のアルギン酸ナトリウム溶液を菌株の固定化に使用することができる。例えば、菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養液、または前記菌株の破砕物の1乃至2体積倍のアルギン酸ナトリウム水溶液に前記菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養物、または前記菌株の破砕物を添加して混合した後、前記得られた混合液を注射器ポンプと真空ポンプを用いて約0.2Mカルシウムイオン溶液に落としてビードが生成されるようにすることによって、アルギン酸ナトリウム担体に菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養物、または前記菌株の破砕物を固定化させることができる。前記酵素は、前記菌株、菌株培養物または前記菌株の破砕物から通常の方法、例えば透析、沈殿、吸着、電気泳動、親和クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法によって精製されたものであってもよい。
【0093】
一実施形態で、前記酵素蛋白質などを果糖と反応させる段階は、前記酵素蛋白質を果糖と接触させる段階によって行うことができる。一実施形態で、前記酵素蛋白質などを果糖と接触させる段階は、例えば、前記酵素蛋白質などを果糖と混合する段階または前記酵素蛋白質などが固定化された担体に果糖を接触させる段階によって行うことができる。また他の例で前記酵素蛋白質などを果糖と反応させる段階は、前記組換え菌株の菌体を果糖−含有原料と接触して適正温度で反応させて行うことができる。このように前記酵素蛋白質などを果糖と反応させることによって果糖をプシコースに転換して果糖からプシコースを生産することができる。
【0094】
前記効率的なプシコース生産のために、使用される酵素蛋白質の量は、全体反応物基準に0.001mg/ml乃至1.0mg/ml、0.005mg/ml乃至1.0mg/ml、0.01mg/ml乃至1.0mg/ml、0.01mg/ml乃至0.1mg/ml、または0.05mg/ml乃至0.1mg/mlであってもよい。酵素の使用量が前記濃度より低ければプシコース転換効率が低くなることがあり、前記濃度より高ければ産業での経済性が低くなるので、前記範囲が適当である。
【0095】
前記効率的なプシコース生産のために、基質として使用される果糖の濃度は、全体反応物基準に40乃至75%(w/v)、例えば、50乃至75%(w/v)であってもよい。果糖の濃度が前記範囲より低ければ経済性が低くなり、前記範囲より高ければ果糖がよく溶解されないので、果糖の濃度は前記範囲にすることが良い。前記果糖は、緩衝溶液または水(例えば、蒸留水)に溶解された溶液状態で用いることができる。
【0096】
前記酵素蛋白質の最適条件を考慮して反応pH、反応温度および酵素の濃度などを適切に選択して行うことができる。例えば、前記反応pHはpH6乃至9、反応温度は温度が80℃を超過すれば基質である果糖の褐変現象が起こることがあるので、30℃以上、例えば40℃以上の温度条件下で行うことができる。また、酵素濃度によって変わるが、大体的に反応時間が長いほどプシコース転換率が高まる。例えば、酵素の熱安定性(例えば、50℃での熱安定性)を考慮して、前記反応時間は1時間以上にすることが良い。反応時間が8時間を超過すればプシコース転換率の増加率が微小であるかむしろ減少するので、反応時間は8時間を超過しないことが良い。
【0097】
また、前記プシコース生産方法において、組換え菌株を使用する場合、使用される菌株の菌体濃度は全体反応物を基準に0.1mg(dcw:乾燥細胞重量)/ml以上であってもよい。
【0098】
他の一実施形態において、前記プシコースの生産方法は、プシコースエピメラーゼを発現する組換え菌株または前記組換え菌株から分離された酵素蛋白質を果糖と反応させる段階を含むものであってもよい。前記プシコース生産方法は、前記反応段階以前にプシコースエピメラーゼを発現する組換え菌株を培養および回収する段階を追加的に含むことができる。
【0099】
本発明の方法によって果糖から得られたプシコースは通常の方法によって精製することができ、このような精製方法は当業者に通常の技術に属する。例えば、遠心分離、ろ過、結晶化、イオン交換クロマトグラフィーおよびこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上の方法によって行うことができる。