特許第6563013号(P6563013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563013プシコースエピメラーゼの発現システムおよびこれを用いたプシコースの生産
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563013
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】プシコースエピメラーゼの発現システムおよびこれを用いたプシコースの生産
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/74 20060101AFI20190808BHJP
   C12N 15/61 20060101ALI20190808BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20190808BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C12N15/74 ZZNA
   C12N15/61
   C12N1/21
   C12P19/02
【請求項の数】22
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-520944(P2017-520944)
(86)(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公表番号】特表2017-531437(P2017-531437A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】KR2015011595
(87)【国際公開番号】WO2016068656
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年4月17日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0149019
(32)【優先日】2014年10月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0072090
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM11593P
(73)【特許権者】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ホ ジン ソル
(72)【発明者】
【氏名】キム ヘ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジョン ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク チョン チン
(72)【発明者】
【氏名】イ ガン ピョ
【審査官】 布川 莉奈
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0041910(KR,A)
【文献】 特表2013−501519(JP,A)
【文献】 特表2009−501547(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1318422(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0021974(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0080282(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0130377(KR,A)
【文献】 国際公開第2008/126896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列;およびその上流(upstream)に作動可能なように連結され、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼの発現を調節する調節配列;を含み、
前記調節配列は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーター、配列番号2のヌクレオチド配列を含む第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列を含むものであり、
前記第1スペーサ配列は、配列番号4乃至配列番号6のヌクレオチド配列からなる群より選択されるものである、
コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現する遺伝子発現カセット。
【請求項2】
前記調節配列は、前記プロモーター、第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列と、
第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結され、配列番号2のヌクレオチド配列を含む第2リボソーム結合領域を含むものである、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項3】
前記調節配列は、前記プロモーター、第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列と、
第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結され、配列番号2のヌクレオチド配列を含む第2リボソーム結合領域と第2スペーサ配列を含み、
前記第2スペーサ配列は、配列番号7乃至配列番号11のヌクレオチド配列からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項4】
前記調節配列は、
配列番号1のプロモーターヌクレオチド配列、
配列番号2の第1RBS及び第2RBSヌクレオチド配列、および
配列番号4乃至配列番号6のヌクレオチド配列からなる群より選択される第1スペーサ配列を含む、請求項1に記載の遺伝子発現カセット(promoter−RBS1−Spacer1:TT、GA、GT、GC−RBS)。
【請求項5】
前記調節配列は、配列番号14乃至配列番号16からなる配列から選択されたヌクレオチド配列を含むものである、請求項4に記載の遺伝子発現カセット(promoter−RBS1−Spacer1:TT、GA、GT、GC)。
【請求項6】
前記調節配列は、配列番号12のリンカー配列を含む、請求項2に記載の遺伝子発現カセット(promoter−RBS1−Spacer1−TT、GA、GT、GC−linker1)。
【請求項7】
前記調節配列は、
配列番号1のプロモーターヌクレオチド配列、
配列番号2のRBSヌクレオチド配列、
配列番号4乃至配列番号6のヌクレオチド配列からなる群より選択される第1スペーサ配列、
配列番号2のRBSヌクレオチド配列、および
配列番号7乃至配列番号11のヌクレオチド配列からなる群より選択される第2スペーサ配列を含む、請求項3に記載の遺伝子発現カセット(promoter−RBS1−Spacer1:TT、GA、GT、GC−RBS2−spacer2−TT、GA、GT、GC、GG)。
【請求項8】
前記調節配列は、配列番号12のリンカー配列を含む、請求項3に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項9】
前記コリネバクテリウム属菌株は、
コリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、
コリネバクテリウムアセトグルタミクム(acetoglutamicum)、
コリネバクテリウムアセトアシドフィルム(acetoacidophilum)、
コリネバクテリウムサーモアミノゲネス(thermoaminogenes)、
コリネバクテリウムメラセコラ(melassecola)および
コリネバクテリウムエフィシエンス(efficiens)からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項10】
前記プシコースエピメラーゼは、
クロストリジウムシンデンス(Clostridium scidens)、
トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)、
エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)または
ルミノコッカストルクエス(Ruminococcus torques)に由来したものである、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項11】
前記プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列は、配列番号33乃至配列番号36のアミノ酸配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を含むペプチドをコーディングするヌクレオチド配列である、請求項10に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項12】
前記プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列は、配列番号37乃至配列番号44のヌクレオチド配列からなる群より選択されたヌクレオチド配列である、請求項11に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項13】
請求項1、請求項2〜8及び請求項9〜12のいずれか1項による発現カセットを含むベクター。
【請求項14】
前記ベクターは、複製起点、リーダー(leader)、選択可能なマーカ、クローニング部位および制限酵素認識部位からなる群より選択された1種以上の配列を追加的に含むものである、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
請求項1、請求項2〜8及び請求項9〜12のいずれか1項による遺伝子発現カセットまたは前記発現カセットを含むベクターで形質転換されたものである、組換えコリネバクテリウム属宿主細胞。
【請求項16】
前記コリネバクテリウム属宿主細胞は、
コリネバクテリウムグルタミクム(glutamicum)、
コリネバクテリウムアセトグルタミクム(acetoglutamicum)、
コリネバクテリウムアセトアシドフィルム(acetoacidophilum)、
コリネバクテリウムサーモアミノゲネス(thermoaminogenes)、
コリネバクテリウムメラセコラ(melassecola)および
コリネバクテリウムエフィシエンス(efficiens)からなる群より選択された1種以上であるものである、請求項15に記載の組換えコリネバクテリウム属宿主細胞。
【請求項17】
請求項1、請求項2〜8及び請求項9〜12のいずれか1項による遺伝子発現カセットまたは前記発現カセットを含むベクターで形質転換されたものである組換えコリネバクテリウム属宿主細胞、前記細胞の菌体、前記細胞の培養物、前記細胞の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含むものである、プシコース生産用組成物。
【請求項18】
請求項1、請求項2〜8及び請求項9〜12のいずれか1項による遺伝子発現カセットを含むベクターで形質転換された組換えコリネバクテリウム属宿主細胞を培養し、
前記細胞の培養物から得られたプシコースエピメラーゼ、前記細胞の菌体、前記細胞の培養物、前記細胞の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を果糖−含有原料と反応してプシコースを生産する方法。
【請求項19】
前記プシコースエピメラーゼまたは前記細胞の菌体が固定化された担体に、果糖−含有原料を接触させてプシコースを生産するものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、銅、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄およびアルミニウムからなる群より選択された1種以上の金属イオンを添加する段階を追加的に含むものである、請求項18に記載のプシコースを生産する方法。
【請求項21】
前記果糖−含有原料は、果糖を40乃至75%(w/w)の濃度で含むものである、請求項18に記載のプシコースを生産する方法。
【請求項22】
前記方法は、pH6乃至9および40乃至80℃の条件下で行われるものである、請求項18に記載のプシコースを生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プシコースエピメラーゼを高い発現率と安定性で生産することができる発現システム、これを用いたGRAS(Generally recognized as safe)微生物、および前記発現システムを用いた微生物および酵素を含むプシコース生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多様な生合成産物が自然代謝過程によって細胞で生産され、食料品、飼料、化粧品、エサ、食品および製薬産業をはじめとする幾多の産業分野で使用されている。これらはそれぞれの場合に要求される特定物質を多量で生産および分泌するように開発された細菌菌株または他の微生物を用いて大規模に生産される。例えば、コリネバクテリウム菌株は産業的にアミノ酸生産に最も多く用いられる微生物であって、1950年代中盤にグルタミン酸を効率的に生産するコリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)が発見され産業化が行われ、コリネバクテリウムグルタミクムの栄養要求性変異株を用いた発酵法を通じて産業的に多様なアミノ酸を生産している。
【0003】
細胞をエンジニアリングすることには多様な関連遺伝子の発現程度を確実に調節する必要があり、このような遺伝子発現調節は多様な効率的発現システムを要求する。細胞の調節配列の多様な構成成分は当業者に公知されている。これらは、オペレーター(operator)に対する結合部位、−35および−10領域と称されるRNAポリメラーゼ酵素に対する結合部位、およびリボソーム結合部位またはシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と称されるリボソーム16S RNAに対する結合部位に区分されている。
【0004】
発現システムを開発することにはプロモーターの選択が最も重要と認められ、プロモーターが遺伝子の発現程度と発現調節に非常に大きく関与するためである。コリネバクテリウムグルタミクムで利用可能なプロモーターとしてはいくつかが報告されており、主にコリネバクテリウム由来または大腸菌由来のプロモーターである(J.Biotechnol.、104:311−323、2003)。
【0005】
しかし、大腸菌由来のプロモーターは発現誘導因子の低い透過性と遺伝子発現抑制物質の部材などの理由でコリネバクテリウムに比べて相対的に低い活性を示す。また、同じプロモーターであっても目的蛋白質をコーディングする遺伝子によって発現効率が異なることがあり、コリネバクテリウムで用いることができるプロモーターの発現強度も選択の幅が狭いため目的に合うように発現システムを製作することが容易でない。特に代謝経路の構築のように多様な遺伝子の発現を共に調節しなければならない場合にコリネバクテリウムでは大腸菌のように多様な選択をすることができないのが現実である。
【0006】
プシコースはダイエット甘味料として脚光を浴びているが、自然界に極めてめずらしく存在する希少糖に属するため、食品産業に適用するためにはプシコースを効率的に大量生産する技術の開発が必要である。従来のプシコース製造方法は主に化学的合成過程を経て製造する方法が大部分であった。酵素的方法によるプシコース製造に関する技術としては、韓国登録特許10−0744479号に形質転換大腸菌を用いてアグロバクテリウムツメファシエンス由来のプシコースエピメラーゼを大量生産し、生産された酵素を用いて果糖からプシコースを製造する方法を記載している。酵素精製の過程を省略して、製造原価が低くプシコースを高い効率に生産できる菌株を用いてプシコースを生産する方法に関する開示がある。また、韓国登録特許10−1106253にはアグロバクテリウムツメファシエンス由来プシコース−3−エピメラーゼを発現し特定遺伝子が不活性化した形質転換大腸菌を製造し、これら菌株を果糖含み培地に接種して培地内果糖をプシコースに転換する方法に関する技術を開示している。
【0007】
前記韓国登録特許10−1106253に記載された技術は大腸菌を菌株として使用するため、産業的に使用が難しく、一般にGRAS(Generally Recognized As Safe)として認められた菌株ではないため食品素材を生産する菌株として使用するに適しないという問題点があり、アグロバクテリウムツメファシエンス由来のプシコースエピメラーゼは酵素の活性が低く熱安定性が良くないという短所がある。
【0008】
したがって、高い活性を有するプシコースエピメラーゼを、GRAS菌株で、高い安定性を有しながらも高収率に生産する発現システム、これを用いたプシコースエピメラーゼの生産方法、および前記生産された酵素または形質転換GRAS菌株を用いたプシコース生産方法が依然として必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一例は、高い安定性を有しながらも高収率にプシコースエピメラーゼを生産できるプロモーターを提供するものである。
本発明の一例は、前記プロモーターを含み、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼの発現を調節する調節配列を提供するものである。
本発明の他の例は、前記プロモーターまたは調節配列とプシコースエピメラーゼのコーディング配列を含む遺伝子発現カセットを提供するものである。
本発明の他の例は、前記プロモーターまたは調節配列とプシコースエピメラーゼのコーディング配列を含む、コリネバクテリウム属菌株用発現カセットを含むベクターを提供するものである。
【0010】
本発明の他の例は、前記発現カセットで形質転換されるか、または前記発現カセットを含むプシコースエピメラーゼを発現するコリネバクテリウム属宿主細胞を提供する。
本発明の他の例は、前記コリネバクテリウム属菌株を用いて得られたプシコースエピメラーゼ、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、プシコース生産用組成物を提供する。
他の例は、前記コリネバクテリウム属菌株を用いて得られたプシコースエピメラーゼ、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を用いて、果糖−含有原料からプシコースを生産する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高い安定性と発現率でプシコースエピメラーゼを生産できる発現システム、これを用いたGRAS(Generally recognized as safe)微生物、前記GRAS(Generally recognized as safe)微生物を用いた酵素の製造方法、および前記発現システムを用いた微生物および酵素を含むプシコース生産方法に関するものである。
大腸菌由来のプロモーターは発現誘導因子の低い透過性と遺伝子発現抑制物質の不在などの理由でコリネバクテリウム属菌株で相対的に低い活性を示し、またコリネバクテリウム属菌株で生産しようとするプシコースエピメラーゼの発現に適した発現システムを提供しようとする。
【0012】
本発明は、コリネバクテリウム属菌株で高い発現率で安定的にプシコースエピメラーゼを発現できるプロモーター、前記プロモーターを含む調節配列、前記調節配列を含む遺伝子発現カセットを提供し、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを高い発現率で安定的に大量生産することができる。また、本発明者らは食品に適用可能なプシコースを大量生産するために、GRAS(Generally recognized as safe)菌株で安定的であり高い酵素生産活性を有するプシコースエピメラーゼを多量発現するために、前記プロモーターとの組み合わせの際にさらに優れた発現率を示すプシコースエピメラーゼおよびそのコーディングヌクレオチド配列を提供しようとする。
【0013】
本明細書で、「プロモーター」、「プロモーター活性を有する核酸分子」または「プロモーター配列」は、目的ヌクレオチド配列に機能的に連結され前記目的ヌクレオチド配列の転写または発現を調節する核酸を意味し、転写プロモーターおよび発現プロモーターを全て含む。
【0014】
転写対象ヌクレオチド配列は、化学的意味で必ずしもプロモーターへの直接連結を必要とするのではなく、追加的な遺伝子調節配列および/またはリンカーヌクレオチド配列などを含むことができる。転写対象目的ヌクレオチド配列がプロモーター配列の下部に(即ち、プロモーター配列の3'末端に)位置する配列が好ましい。プロモーター配列と転写対象ヌクレオチド配列の間の距離は、好ましくは200個塩基未満、特に好ましくは100個塩基未満である。
【0015】
本明細書で「リボソーム結合部位」(RBS)の配列またはシャイン−ダルガノ配列は、A/G豊富ポリヌクレオチド配列を意味として翻訳するとき、リボソームが結合する部位である。
【0016】
本明細書で「調節配列」は、プロモーターを含み発現対象目的ヌクレオチド配列または遺伝子に機能的に連結され、前記目的核酸または前記遺伝子の発現、即ち、転写および/または翻訳を調節する活性を有する核酸を意味する。したがって、これに関連して前記ヌクレオチド配列は「調節ヌクレオチド配列」とも呼ばれる。
【0017】
本明細書で「発現カセット」は、発現対象目的ヌクレオチド配列、例えばプシコースエピメラーゼのコーディングヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む。したがって、発現カセットは、転写および翻訳を調節するヌクレオチド配列だけでなく転写および翻訳の結果として蛋白質に発現されるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0018】
本発明による核酸分子は、好ましくは、自然に存在しない形態であり(non−naturally occurring)、単離された核酸分子の形態または合成または組換え方法によって製造される核酸分子である。「単離された」核酸分子は前記核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から除去され、追加的に、組換え技術によって製造される場合に本質的に他の細胞性物質または培養培地が存在しないか、化学的に合成される場合には化学的前駆体または他の化学物質が存在しないことがある。
【0019】
本発明の一例はコリネバクテリウム属菌株発現用調節配列の核酸分子に関するものであって、高い安定性と活性を有するプシコースエピメラーゼを、GRAS菌株で高い安定性を有しながらも高収率に生産することができるようにする。
【0020】
以下、本発明をさらに詳しく説明する
本発明の一例はコリネバクテリウム属菌株発現用調節配列の核酸分子に関するものであって、高い安定性と活性を有するプシコースエピメラーゼを、GRAS菌株で高い安定性を有しながらも高収率に生産することができるようにする。
【0021】
本発明のまた他の一例は、プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列;およびその上流(upstream)に作動可能なように連結され、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼの発現を調節する調節配列;を含み、
【0022】
前記調節配列は、配列番号1の核酸配列を含む核酸分子、配列番号63の核酸配列を含む核酸分子、配列番号64の核酸配列を含む核酸分子、および配列番号65の核酸配列を含む核酸分子からなる群より選択されたプロモーターを含む、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現する遺伝子発現カセット(gene expression cassette)を提供する。
【0023】
本発明による調節配列は、GRAS菌株、例えばコリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列を発現するプロモーターまたはこれを含有する調節配列を含む。
【0024】
前記調節配列は、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼをコーディングするヌクレオチド配列の発現を調節する非変形調節配列またはその変形調節配列であってもよい。
【0025】
前記調節配列に含まれているプロモーターは、配列番号1、配列番号63、配列番号64、および配列番号65のヌクレオチド配列を含む核酸分子および機能的変異体から選択されるポリヌクレオチドを含む。本発明の他の例で、前記機能変異体は、配列番号1、63、64、または65のヌクレオチド配列との配列同一性が、少なくとも90%、即ち、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%以上である。
【0026】
前記調節配列に含まれているプロモーター配列の例は、下記表1に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
本発明による調節配列は、プロモーター配列に追加して、リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列、スペーサ配列およびリンカー配列からなる群より選択された1種以上の配列を含むことができる。
前記リボソーム結合領域配列は、少なくとも1回以上、例えば少なくとも1回乃至5回、または2回で含まれてもよい。
前記調節配列は、第1RBS配列および第1スペーサ配列を含むか、第1RBS配列および第1スペーサ配列と第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結される第2リボソーム結合領域を含むか、第1RBS配列および第1スペーサ配列と、第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結される第2RBS配列と第2スペーサ配列を含むことができる。
【0029】
本発明の一例によるSODプロモーター由来、配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーターを例に挙げて説明しようとし、配列番号63、64または65のヌクレオチド配列を有するTac1、Tac2、Trcプロモーターに対して同一に適用される。
具体的に、前記調節配列が一つのRBS配列を含む場合、例えば前記調節配列は配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーター、配列番号2のヌクレオチド配列を含む第1RBS配列および配列番号3乃至配列番号6のヌクレオチド配列から選択されたいずれか一つのヌクレオチド配列を含む第1スペーサを含む核酸分子であってもよい(プロモーター−第1RBS−第1スペーサ)。また、選択的に前記調節配列の第1スペーサの3'末端に連結される1個乃至100個の塩基からなるリンカー配列を含む核酸分子であってもよい(プロモーター−第1RBS−第1スペーサ−リンカー)。
【0030】
前記調節配列が二つのRBS配列を含む場合、例えば、前記調節配列は(i)配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含み、追加的に(ii)配列番号2のヌクレオチド配列を含む第1RBS配列、(iii)配列番号3乃至6のヌクレオチド配列から選択されたいずれか一つのヌクレオチド配列を含む第1スペーサ、(iv)配列番号12のリンカー配列、および(v)配列番号7乃至11のヌクレオチド配列から選択されたいずれか一つのヌクレオチド配列を含む第2スペーサからなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができ、前記RBS配列を1回以上含むことができる。
【0031】
例えば、第2RBS配列を前記第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結されてもよい(プロモーター−第1RBS−第1スペーサ−第2RBSまたはプロモーター第1RBS−第1スペーサ−リンカー−第2RBS)。前記二つのRBS配列を含む調節配列において、第2RBSの3'−末端に連結された第2スペーサ配列を追加的に含むことができる。また、第1RBSと第1スペーサの組み合わせまたは第2RBSと第2スペーサの組み合わせは1回以上、例えば1−5回、2、3、4または5回繰り返して含まれてもよい。
【0032】
本発明による非変形調節配列の具体的な例は以下の通りである。
(1)プロモーターの3'末端に直接またはリンカーを通じて連結されたRBSとスペーサ配列を含むもの(例、プロモーター−第1リンカー−第1RBS−第1スペーサ、またはプロモーター−第1RBS−第1スペーサ)、
(2)プロモーターの3'末端に連結されたRBSとスペーサ配列を2回以上繰り返して含むもの(例、プロモーター−第1RBS−第1スペーサ−第2RBS−第2スペーサ)、および
(3)プロモーターの3'末端に連結されたRBSとスペーサ配列を2回以上繰り返して含み、第1スペーサ配列と第2RBSの間に第2リンカーを追加的に含むもの(例、プロモーター−第1RBS−第1スペーサ−第2リンカー配列−第2RBS−第2スペーサ)。
本発明の一例で、前記調節配列に含まれるリボソーム結合領域(RBS)は配列番号2のヌクレオチド配列を含む7乃至20個の塩基からなるものであってもよく、例えば配列番号2の核酸配列である。
【0033】
前記調節配列に含まれるリンカー配列は1個乃至100個の塩基、または5個乃至80個の塩基を有するヌクレオチド配列であってもよく、例えば配列番号12のヌクレオチド配列を含む核酸分子であってもよい。前記リンカー配列はプロモーターと第1RBSの間に位置するリンカー、第1スペーサと第2RBSの間に位置するリンカーを含むことができ、それぞれのプロモーターに適合するようにリンカーの最適塩基配列を適切に選択して用いることができる。配列番号1のヌクレオチド配列を含むSOD由来プロモーターの場合、第1スペーサと第2RBSの間に位置する第1リンカーとして配列番号12のヌクレオチド配列と共に調節配列に含まれてもよい。Tac1およびTac2由来プロモーターの場合、プロモーターと第1RBSの間に位置する第2リンカーとして、配列番号66のヌクレオチド配列からなる第1リンカーを含むことができる。
【0034】
本発明の一例で、配列番号63または64のヌクレオチド配列を有するTac1、Tac2プロモーターを含む調節配列はプロモーター配列に追加して、第2リンカー(例、配列番号66のヌクレオチド配列)、第1RBS配列(例、配列番号2のヌクレオチド配列および第2スペーサ配列(例、配列番号7のヌクレオチド配列)を含むことができる(プロモーター−(第2リンカー乃至第4リンカーから選択された一つのリンカー)−第1RBS−第2スペーサ)。
【0035】
具体的に、配列番号63のヌクレオチド配列を有するTac1プロモーター、1RBS配列(例、配列番号2のヌクレオチド配列)、配列番号66の配列を有する第2リンカーを含むか、追加的に第2リンカーに連結された第2スペーサ配列(例、配列番号7のヌクレオチド配列)を含むことができる。例えば、配列番号70または71のヌクレオチド配列からなる調節配列であってもよい。
【0036】
配列番号64のヌクレオチド配列を有するTac2プロモーター、1RBS配列(例、配列番号2のヌクレオチド配列)、配列番号67の配列を有する第3リンカーを含むか、追加的に第3リンカーに連結された第2スペーサ配列(例、配列番号7のヌクレオチド配列)を含むことができる。例えば、配列番号73または74のヌクレオチド配列からなる調節配列であってもよい。
【0037】
配列番号65のヌクレオチド配列を有するTrcプロモーター、1RBS配列(例、配列番号2のヌクレオチド配列)、配列番号68の配列を有する第3リンカーを含むか、追加的に第4リンカーに連結された第2スペーサ配列(例、配列番号7のヌクレオチド配列)を含むことができる。例えば、配列番号75のヌクレオチド配列からなる調節配列であってもよい。
【0038】
本発明の一例で、前記調節配列に含まれるスペーサ配列は3乃至15個の塩基を有する核酸分子であり、多様な種類の塩基および長さで製造されてもよく、調節配列にスペーサ配列を含ませることによって下部に位置する遺伝子の発現効率を増加させることができる。また、発現対象目的蛋白質のコーディング核酸配列と対象宿主細胞の種類などを考慮して多様な種類の核酸組成および大きさで製造して使用することができる。
【0039】
本発明による変形調節配列は、前記非変形調節配列の第1スペーサおよび第2スペーサからなる群より選択された少なくとも一つのスペーサのヌクレオチド配列が一つ以上の塩基が置換されたヌクレオチド配列であってもよい。
例えば、前記変形調節配列が一つのRBS配列を含む場合、前記変形調節配列はプロモーター、第1RBSおよび第1スペーサを含み、前記第1スペーサのヌクレオチド配列の一番目および二番目塩基のTTが、GA、GTまたはGC塩基に置換されたものである変形調節配列であってもよい。
【0040】
また、前記変形調節配列が二つのRBS配列を含む場合、第1RBS配列の3'末端に連結された第1スペーサの一番目および二番目塩基のTTがGA、GTまたはGCに置換されるか、第2RBS配列の3'末端に連結された第2スペーサの一番目および二番目塩基のTTがGG、GA、GTまたはGC塩基に置換されるか、または第1スペーサの一番目および二番目塩基のTTがGA、GTまたはGCに置換され、第2RBS配列の3'末端に連結された第2スペーサの一番目および二番目塩基のTTがGG、GA、GTまたはGC塩基に置換された変形調節配列であってもよい。
【0041】
例えば、本発明による第1スペーサ配列は配列番号3乃至6のヌクレオチド配列のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列を含むものであってもよく、第2スペーサ配列は配列番号7乃至11のヌクレオチド配列のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列を含むものであってもよい。
【0042】
本発明による具体的な調節配列に含まれるプロモーター配列、RBS配列、第1スペーサおよび第2スペーサとこれらの変形配列、およびリンカーを下記表2に例示的に記載する。
【0043】
【表2】
【0044】
前記調節配列は、SODプロモーター由来、配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含む場合、配列番号13乃至配列番号32のヌクレオチド配列を含む核酸分子からなる群より選択されたポリヌクレオチドを含み、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現するものであってもよい。
【0045】
【表3】
【0046】
前記調節配列は、Tac1またはTac2プロモーター配列番号63および64のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含む場合、配列番号66乃至配列番号75のヌクレオチド配列を含む核酸分子からなる群より選択されたポリヌクレオチドを含み、コリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現するものであってもよい。
【0047】
【表4】
【0048】
本発明による調節配列は、その下部に連結されたプシコースエピメラーゼをコリネバクテリウム属菌株で発現できるように調節することができる。よって、本発明による遺伝子発現カセットはコリネバクテリウム属菌株で目的蛋白質の発現のために用いることができ、前記目的蛋白質の例はプシコースエピメラーゼであってもよい。前記プシコースエピメラーゼはクロストリジウムシンデンス(Clostridium) scidens)、トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)、エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)に由来したものであってもよく、アグロバクテリウムツメファシエンス由来プシコースエピメラーゼは酵素の活性が低く熱安定性が良くないという短所があって好ましくない。
【0049】
大腸菌由来のプロモーターは、発現誘導因子の低い透過性と遺伝子発現抑制物質の不在などの理由でコリネバクテリウムで相対的に低い活性を示す。また、同じプロモーターであっても目的蛋白質をコーディングする遺伝子によって発現効率が異なり、コリネバクテリウムで使用できるプロモーターの発現強度も選択の幅が小さくて目的に合うように発現システムを製作することが容易でない。また、コリネバクテリウム属菌株発現用プロモーターであっても特定目的蛋白質によってその転写調節活性が異なることがあり、よって、本発明によるプロモーター、調節配列または遺伝子発現カセットはコリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現するものが適合する。
【0050】
前記目的蛋白質は、コリネバクテリウム属菌株発現用核酸分子の3'末端に直接連結されるか、リンカーを通じて連結されてもよい。
【0051】
本発明によるプシコースエピメラーゼは酵素活性および熱安定性に優れたものが好ましく、よって、本発明の具体的な例で、プロモーターまたは調節配列はプシコースエピメラーゼをコーディングする遺伝子との組み合わせが重要であり、本発明に使用されたプシコースエピメラーゼとプロモーターは適正以上の蛋白質発現を提供することができ、プロモーターを用いた場合には蛋白質のフォールディング(folding)が堅固で熱安定性が高い結果が得られてさらに好ましい。
【0052】
本発明の一例で、前記プシコースエピメラーゼはクロストリジウムシンデンス(Clostridium) scidens)、トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)、エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)またはルミノコッカストルクエス(Ruminococcus torques)に由来したものであってもよく、好ましくは配列番号33乃至36のアミノ酸配列のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチドを含むプシコースエピメラーゼであってもよい。
【0053】
前記プシコースエピメラーゼは果糖をプシコースに転換する活性が維持される限り、配列番号33乃至36のアミノ酸配列のうちのいずれか一つのアミノ酸のうちの一部アミノ酸が置換、挿入および/または欠失されたものであってもよい。例えば、前記蛋白質は、配列番号33乃至36のアミノ酸配列のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0054】
前記プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列は、クロストリジウムシンデンス(Clostridium) scidens)、トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)、エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)またはルミノコッカストルクエス(Ruminococcus torques)から得られたプシコースエピメラーゼの暗号化ヌクレオチド配列であるか、大腸菌またはコリネバクテリウム属菌株で発現に最適化することができるように変形されたヌクレオチド配列であってもよい。
【0055】
例えば、前記プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列は、配列番号33乃至36のアミノ酸配列のうちのいずれか一つのアミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列であってもよい。具体的に、前記プシコースエピメラーゼを暗号化するヌクレオチド配列は、配列番号37乃至配列番号44からなる群より選択されたヌクレオチド配列を含む核酸分子であってもよい。または前記ヌクレオチド配列に対して実質的同一性を有する配列を有するものであってもよい。前記の実質的な同一性は、配列番号37乃至配列番号44からなる群より選択されたヌクレオチド配列のヌクレオチド配列と任意の他の配列を最大限に対応するように整列し、その配列を分析して、前記任意の他の配列が配列番号37乃至配列番号44からなる群より選択されたヌクレオチド配列のヌクレオチド配列と70%以上、90%以上、または98%以上の配列相同性を有することを意味する。
【0056】
本発明の一例で、クロストリジウムシンデンス(Clostridium) scidens)に由来したものであって、果糖からプシコースを生産する活性を有する蛋白質(CDPE)は配列番号33のアミノ酸配列を有し、配列番号33のアミノ酸配列を含むペプチドを暗号化するヌクレオチド配列、例えば配列番号37のヌクレオチド配列または配列番号38のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0057】
本発明の一例で、トレポネーマプリミティア(Treponema primitia)に由来したものであって、果糖からプシコースを生産する活性を有する蛋白質(TDPE)は配列番号34のアミノ酸配列を有し、配列番号34のアミノ酸配列を含むペプチドを暗号化するヌクレオチド配列、例えば配列番号39のヌクレオチド配列または配列番号40のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0058】
本発明の一例で、エンシフェルアダエレンス(Ensifer adhaerens)に由来したものであって、果糖からプシコースを生産する活性を有する蛋白質(EDPE)は配列番号35のアミノ酸配列を有し、配列番号35のアミノ酸配列を含むペプチドを暗号化するヌクレオチド配列、例えば配列番号41のヌクレオチド配列または配列番号42のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0059】
本発明の一例で、ルミノコッカストルクエス(Ruminococcus torques)に由来したものであって、果糖からプシコースを生産する活性を有する蛋白質(RDPE)は配列番号36のアミノ酸配列を有し、配列番号36のアミノ酸配列を含むペプチドを暗号化するヌクレオチド配列、例えば配列番号43のヌクレオチド配列または配列番号44のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0060】
本発明による発現カセットは、複製起点、リーダー(leader)、選択可能なマーカ、クローニング部位および制限酵素認識部位からなる群より選択された1種以上の配列を追加的に含むことができる。
【0061】
本発明の追加例は、本発明によるコリネバクテリウム属菌株発現用プロモーター、これを含む調節配列、または前記調節配列およびプシコースエピメラーゼを暗号化するポリヌクレオチドを含む、コリネバクテリウム属菌株用遺伝子発現カセットを提供する。
【0062】
前記コリネバクテリウム属菌株発現用核酸分子、および調節配列とプシコースエピメラーゼは前述の通りである。
【0063】
本発明の一例で、前記発現カセットは、発現のためのポリヌクレオチド配列として、複製起点、リーダー(leader)、選択可能なマーカ、クローニング部位および制限酵素認識部位からなる群より選択された1種以上の配列を追加的に含むことができる。
【0064】
本発明による前記発現カセットは前記ポリヌクレオチドはそれ自体で(naked nucleic acid construct)、または前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターの形態に用いることができる。前記組換えベクターとは、作動可能なように連結された目的ポリヌクレオチドを伝達することができる組換え核酸分子を意味し、前記目的ポリヌクレオチドは、プロモーターおよび転写終結因子などからなる一つ以上の転写調節要素と作動可能に連結されているものであってもよい。
【0065】
前記組換えベクターは、当業界に広く知られた方法を通じてクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築されてもよい(Francois Baneyx、current Opinion Biotechnology 1999、10:411−421)。前記組換えベクターは、遺伝子組換えに用いられてきたベクターであれば何れも使用してもよく、例えば、プラスミド発現ベクター、ウイルス発現ベクター(例、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ連関ウイルス)およびこれらと同等な機能を遂行できるウイルスベクターなどからなる群より選択されたものであり得るが、これらに限定されるのではない。例えば、前記組換えベクターは、pET、pKK223−3、pTrc99a、pKD、pXMJ19、pCES208ベクターなどからなる群より選択されたものから製作されたものであってもよく、好ましくは、E.coli−corynebacterium shuttle vector(pCES208、J.Microbiol.Biotechnol.、18:639−647、2008)であり得る。
【0066】
したがって、本発明による発現カセットを含むベクターは、特にコリネバクテリウム属菌株で増殖可能であり目的蛋白質を発現可能なプラスミドとして発現ベクターなどを含むことができる。
【0067】
前記転写終結因子は、rrnB、rrnB_T1、rrnB_T2、T7ターミネーター(T7 terminator)などであってもよく、好ましくは、pET21aベクター(pET21a vector)からPCRされたT7転写終結因子であり得る。
【0068】
本発明のまた他の一例には、配列番号1、63、64または65のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含むベクターに関するものであって、特に目的蛋白質またはこれを暗号化する目的遺伝子を含まず調節配列のみを含むことができる。前記ベクターは、大腸菌、コリネバクテリウム属菌株などで増殖可能であり、シャトルベクター、複製ベクターまたは発現ベクターなどを含む。
【0069】
具体的に、SODプロモーター由来、配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーターを含む場合、目的ポリヌクレオチド配列の上流に位置し前記目的ポリヌクレオチド配列の発現を調節する調節配列を含み、前記調節配列は配列番号1のヌクレオチド配列を含むプロモーター、第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列を含むものであるベクター、例えば、プラスミドに関するものである。
【0070】
前記調節配列は、プロモーター、第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列と、第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結される第2リボソーム結合領域を含むものであってもよい。また、前記調節配列は、第1リボソーム結合領域(ribosome binding region、RBS)配列および第1スペーサ配列と、第1スペーサの3'−末端に直接またはリンカーを通じて連結される第2リボソーム結合領域と第2スペーサ配列を含むものであってもよい。
【0071】
前記プロモーターを含むベクターで、好ましくは、前記第1スペーサ配列は配列番号3のヌクレオチド配列中の一番目および二番目塩基(TT)がGA、GTまたはGCに置換された塩基を含む配列として配列番号4、5、または6の配列を有するものであってもよい。
【0072】
前記ベクターが第1スペーサと第2スペーサを含む場合、第1スペーサまたは第2スペーサそれぞれにのみ変形塩基を含むか、または第1スペーサまたは第2スペーサの両方ともで変形された塩基を含むことができる。例えば、前記第1スペーサ配列は配列番号3のヌクレオチド配列を有し、第2スペーサ配列は配列番号7のヌクレオチド配列中の一番目および二番目塩基がGA、GT、GCまたはGGに置換された塩基を含むものであってもよく、第1スペーサ配列は配列番号3のヌクレオチド配列を有し、第2スペーサ配列は配列番号8乃至11のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列を有してもよい。
【0073】
或いは、前記第1スペーサ配列は配列番号3のヌクレオチド配列中の一番目および二番目塩基(TT)がGA、GTおよびGCからなる群より選択される塩基に置換され、第2スペーサ配列は配列番号7のヌクレオチド配列中の一番目および二番目塩基がTT、GA、GT、GCおよびGGからなる群より選択される塩基を含むことができ、第1スペーサ配列は配列番号4乃至6のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列であってもよく、第2スペーサ配列は配列番号7乃至11のうちのいずれか一つのヌクレオチド配列であってもよい。
【0074】
本発明によって目的蛋白質またはこれを暗号化する目的遺伝子を含まず調節配列のみを含むベクターで、RBS、リンカー、第1スペーサおよび第2スペーサなどその他の構成要素については、前記プシコースエピメラーゼコーディング配列と調節配列を含有する遺伝子発現カセットおよびこれを含むベクターに前述した内容と同一である。
【0075】
本発明の一例は、前記遺伝子発現カセットを含むか、前記発現カセットを含むベクターで形質転換された組換えコリネバクテリウム属宿主細胞であってもよい。
【0076】
前記組換えベクターで宿主細胞を形質転換させる方法は、当業界に公知された全ての形質転換方法から特別な制限なく選択して用いることができ、例えば、細菌原形質体の融合、電気穿孔法、推進体砲撃(projectile bombardment)、およびウイルスベクターを用いた感染などから選択されたものであってもよい。
【0077】
本発明による形質転換コリネバクテリウム属菌株は高い安定性を有し、導入されたプシコースエピメラーゼを過発現することができ、したがって長期間安定的に高いプシコース転換能を提供することができる。したがって、前記形質転換コリネバクテリウム属菌株はプシコース製造に有用に適用することができ、プシコース生産収率をより増進させることができる。
【0078】
好ましいコリネバクテリウム属菌株はコリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウムグルタミクム(glutamicum)、コリネバクテリウムアセトグルタミクム(acetoglutamicum)、コリネバクテリウムアセトアシドフィルム(acetoacidophilum)、コリネバクテリウムサーモアミノゲネス(thermoaminogenes)、コリネバクテリウムメラセコラ(melassecola)およびコリネバクテリウムエフィシエンス(efficiens)種細菌である。
【0079】
本発明による形質転換された組換えコリネバクテリウム属宿主細胞は、組換えコリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)であってもよい。
【0080】
前記コリネバクテリウム属菌株の培養は、適当な培地で当業界で知られた多様な培養方法によって行うことができる。前記培養方法の例には、回分式、連続式および流加式培養が含まれる。前記流加式培養には注入バッチおよび反復注入バッチ培養が含まれるが、ここに限定されるのではない。本発明によって用いることができる培地は一般に一つ以上の炭素供給源、窒素供給源、無機塩、ビタミンおよび(または)微量元素を含む。好ましい炭素供給源は、単糖類、二糖類または多糖類のような糖類である。溶液中の金属イオンを維持させるために培地にキレーティング剤を添加することができる。培地の全ての成分は加熱(1.5barおよび121℃で20分)または滅菌ろ過によって滅菌させる。
【0081】
本発明のまた他の一例は、形質転換コリネバクテリウム属菌株を用いて得られたプシコースエピメラーゼ、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、プシコース生産用組成物を提供する。
【0082】
また、本発明は、組換えコリネバクテリウム属宿主細胞を用いて得られたプシコースエピメラーゼ、前記細胞の菌体、前記細胞の培養物、前記細胞の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含むプシコース生産用組成物を果糖−含有原料と接触してプシコースを生産する方法を提供する。
【0083】
前記培養物は前記コリネバクテリウム属菌株から生産された酵素を含むものであって、前記菌株を含むか、菌株を含まない無細胞(cell−free)形態であってもよい。前記破砕物は、前記コリネバクテリウム属菌株を破砕した破砕物または前記破砕物を遠心分離して得られた上澄み液を意味するものであって、前記コリネバクテリウム属菌株から生産された酵素を含むものである。本明細書において、別途の言及がない限り、プシコースの製造に使用されるコリネバクテリウム属菌株は、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物および前記菌株の破砕物からなる群より選択された1種以上を意味するものとして使用される。
【0084】
前記プシコース生産方法は、前記コリネバクテリウム属菌株を果糖−含有原料と反応させる段階を含む。一実施形態で、前記コリネバクテリウム属菌株を果糖と反応させる段階は、前記コリネバクテリウム属菌株の菌体を果糖が含まれている培養培地で培養する段階によって遂行できる。他の実施形態で、前記コリネバクテリウム属菌株を果糖と反応させる段階は、前記菌株(菌体、菌株の培養物、および/または菌株の破砕物)を果糖と接触させる段階、例えば、前記菌株を果糖と混合する段階または前記菌株が固定化された担体に果糖を接触させる段階によって遂行できる。このようにコリネバクテリウム属菌株を果糖と反応させることによって果糖をプシコースに転換して果糖からプシコースを生産することができる。
【0085】
前記プシコース生産方法において、効率的なプシコース生産のために、基質として使用される果糖の濃度は、全体反応物基準に40乃至75%(w/v)、例えば、50乃至75%(w/v)であってもよい。果糖の濃度が前記範囲より低ければ経済性が低くなり、前記範囲より高ければ果糖がよく溶解されないので、果糖の濃度は前記範囲にすることが良い。前記果糖は、緩衝溶液または水(例えば、蒸留水)に溶解された溶液状態で用いることができる。
【0086】
前記プシコース生産方法において、前記反応は、pH6乃至9.5、例えば、pH7乃至9、pH7乃至8またはpH8乃至9の条件下で行うことができる。また、前記反応は、30℃以上、例えば40℃以上の温度条件下で行うことができる。温度が80℃以上になれば基質である果糖の褐変現象が起こることがあるので、前記反応は40乃至80℃、例えば、50乃至75℃、60乃至75℃、または68乃至75℃の条件下で行うことができる。また前記反応時間が長いほどプシコース転換率が高まる。例えば、前記反応時間は1時間以上、例えば2時間以上、3時間以上、4時間以上、5時間以上または6時間以上にすることが良い。反応時間が48時間を超過すればプシコース転換率の増加率が微小であるか、むしろ減少するので、反応時間は48時間を超過しないことが良い。したがって、前記反応時間は1乃至48時間、2乃至48時間、3乃至48時間、4乃至48時間、5乃至48時間、または6乃至48時間にすることができ、産業的および経済的側面を考慮して、1乃至48時間、2乃至36時間、3乃至24時間、3乃至12時間、または3乃至6時間程度にすることができるが、これに制限されるわけではない。前記条件は、果糖からプシコースへの転換効率が最大化される条件として選定されたものである。
【0087】
また、前記プシコース生産方法において、使用される菌株の菌体濃度は、全体反応物基準に5mg(dcw:乾燥細胞重量)/ml以上、例えば、5乃至100mg(dcw)/ml、10乃至90mg(dcw)/ml、20乃至80mg(dcw)/ml、30乃至70mg(dcw)/ml、40乃至60mg(dcw)/ml、または45乃至55mg(dcw)/mlであってもよい。菌体濃度が前記範囲未満である場合にはプシコース転換活性が低いかほとんどなく、前記範囲を超過すれば菌体が過度に多くなりプシコース転換反応の全体的な効率が低くなるので、菌体濃度は前記範囲にすることが良い。
【0088】
前記果糖をプシコースに転換させる酵素(例えば、エピメラーゼ)は金属イオンによって活性化が調節されるので、前記プシコース生産において、金属イオンを添加すれば果糖からプシコースへの転換効率、即ち、プシコース生産率が増加できる。
【0089】
したがって、前記コリネバクテリウム属菌株を含むプシコース生産用組成物は、金属イオンを追加的に含むものであってもよい。また、前記コリネバクテリウム属菌株を用いたプシコース生産方法は、金属イオンを添加する段階を追加的に含むことができる。一実施形態で、前記金属イオンは前記培養段階の培養培地に添加されるか、前記培養段階が前記金属イオンが添加された培養培地で行われるものであってもよい。他の実施形態で、前記金属イオンは果糖に添加されるか、前記コリネバクテリウム属菌株と果糖との混合物に添加されてもよい。また他の実施形態で、前記コリネバクテリウム属菌株が固定化された担体に添加されるか(果糖添加前)、前記コリネバクテリウム属菌株が固定化された担体と果糖との混合物に添加されるか(果糖添加後)、または果糖添加時に果糖と混合物の形態でまたはそれぞれ添加されてもよい。
【0090】
前記金属イオンは、銅イオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、アルミニウムイオンなどからなる群より選択された1種以上であり得る。例えば、前記金属イオンは、マンガンイオン、マグネシウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオンなどからなる群より選択された1種以上であってもよく、一例で前記金属イオンは、マンガンイオン、コバルトイオン、またはこれらの混合物であってもよい。プシコース生産収率増進効果を考慮して、前記金属イオンの添加量は0.5mM以上にすることができる。一方、前記金属イオンの添加量が5mMを超過すればその超過量に比べて効果が微小であるため、前記金属イオンの添加量は5mM以下にすることができる。例えば、前記金属イオンの添加量は0.5mM乃至5mM、例えば、0.5mM乃至2mM範囲にすることができる。
【0091】
前記担体は、固定された菌株、または前記菌株から生産される酵素の活性が長期間維持される環境を造成できるものであって、酵素固定化用途に用いることができる公知された全ての担体であり得る。例えば、前記担体としてアルギン酸ナトリウム(soduim alginate)を使用することができる。アルギン酸ナトリウムは、海藻類の細胞壁に豊富に存在する天然コロイド性多糖類であって、マンヌロン酸(β−D−mannuronic acid)とグルロン酸(α−L−gluronic acid)が組成されており、含量面では無作為にベータ−1,4結合を成して形成され、菌株または酵素が安定的に固定され優れたプシコース収率を示すのに有利であり得る。
【0092】
一実施形態で、プシコースの収率をより増進させるために1.5乃至4.0%(w/v)濃度のアルギン酸ナトリウム溶液(例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液)、例えば約2.5%の(w/v)濃度のアルギン酸ナトリウム溶液を菌株の固定化に使用することができる。例えば、菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養液、または前記菌株の破砕物の1乃至2体積倍のアルギン酸ナトリウム水溶液に前記菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養物、または前記菌株の破砕物を添加して混合した後、前記得られた混合液を注射器ポンプと真空ポンプを用いて約0.2Mカルシウムイオン溶液に落としてビードが生成されるようにすることによって、アルギン酸ナトリウム担体に菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養物、または前記菌株の破砕物を固定化させることができる。前記酵素は、前記菌株、菌株培養物または前記菌株の破砕物から通常の方法、例えば透析、沈殿、吸着、電気泳動、親和クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法によって精製されたものであってもよい。
【0093】
一実施形態で、前記酵素蛋白質などを果糖と反応させる段階は、前記酵素蛋白質を果糖と接触させる段階によって行うことができる。一実施形態で、前記酵素蛋白質などを果糖と接触させる段階は、例えば、前記酵素蛋白質などを果糖と混合する段階または前記酵素蛋白質などが固定化された担体に果糖を接触させる段階によって行うことができる。また他の例で前記酵素蛋白質などを果糖と反応させる段階は、前記組換え菌株の菌体を果糖−含有原料と接触して適正温度で反応させて行うことができる。このように前記酵素蛋白質などを果糖と反応させることによって果糖をプシコースに転換して果糖からプシコースを生産することができる。
【0094】
前記効率的なプシコース生産のために、使用される酵素蛋白質の量は、全体反応物基準に0.001mg/ml乃至1.0mg/ml、0.005mg/ml乃至1.0mg/ml、0.01mg/ml乃至1.0mg/ml、0.01mg/ml乃至0.1mg/ml、または0.05mg/ml乃至0.1mg/mlであってもよい。酵素の使用量が前記濃度より低ければプシコース転換効率が低くなることがあり、前記濃度より高ければ産業での経済性が低くなるので、前記範囲が適当である。
【0095】
前記効率的なプシコース生産のために、基質として使用される果糖の濃度は、全体反応物基準に40乃至75%(w/v)、例えば、50乃至75%(w/v)であってもよい。果糖の濃度が前記範囲より低ければ経済性が低くなり、前記範囲より高ければ果糖がよく溶解されないので、果糖の濃度は前記範囲にすることが良い。前記果糖は、緩衝溶液または水(例えば、蒸留水)に溶解された溶液状態で用いることができる。
【0096】
前記酵素蛋白質の最適条件を考慮して反応pH、反応温度および酵素の濃度などを適切に選択して行うことができる。例えば、前記反応pHはpH6乃至9、反応温度は温度が80℃を超過すれば基質である果糖の褐変現象が起こることがあるので、30℃以上、例えば40℃以上の温度条件下で行うことができる。また、酵素濃度によって変わるが、大体的に反応時間が長いほどプシコース転換率が高まる。例えば、酵素の熱安定性(例えば、50℃での熱安定性)を考慮して、前記反応時間は1時間以上にすることが良い。反応時間が8時間を超過すればプシコース転換率の増加率が微小であるかむしろ減少するので、反応時間は8時間を超過しないことが良い。
【0097】
また、前記プシコース生産方法において、組換え菌株を使用する場合、使用される菌株の菌体濃度は全体反応物を基準に0.1mg(dcw:乾燥細胞重量)/ml以上であってもよい。
【0098】
他の一実施形態において、前記プシコースの生産方法は、プシコースエピメラーゼを発現する組換え菌株または前記組換え菌株から分離された酵素蛋白質を果糖と反応させる段階を含むものであってもよい。前記プシコース生産方法は、前記反応段階以前にプシコースエピメラーゼを発現する組換え菌株を培養および回収する段階を追加的に含むことができる。
【0099】
本発明の方法によって果糖から得られたプシコースは通常の方法によって精製することができ、このような精製方法は当業者に通常の技術に属する。例えば、遠心分離、ろ過、結晶化、イオン交換クロマトグラフィーおよびこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上の方法によって行うことができる。
【発明の効果】
【0100】
本発明は、果糖からプシコースを大量製造して食品素材として使用できるようにGRAS菌株であるコリネバクテリウム属菌株でプシコースエピメラーゼを発現する遺伝子発現システム、これを含む組換えベクターおよびコリネバクテリウム属菌株を提供し、前記遺伝子発現システムを用いて生産されたプシコースエピメラーゼを用いて果糖−含有原料を用いてプシコースを生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1図1は本発明の一実施形態によってD−プシコース3−エピメラーゼ蛋白質をコリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)で発現するための組換えベクターの開裂地図を示したものである。
図2図2は本発明の一実施形態によってビードビーター(Bead beater)を用いて培養したコリネバクテリウム(corynebacterium)細胞を溶解させた後、SDS−PAGEを通じて蛋白質の発現量を比較した写真である。
図3図3乃至図5は本発明の一実施形態のD−プシコース3−エピメラーゼ蛋白質をコリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)で発現するための組換えベクターの開裂地図であって、図3は組換えベクター(pCES_tac1CDPE)、図4は組換えベクター(pCES_tac2CDPE)、図5は組換えベクター(pCES_trcCDPE)をそれぞれ示したものである。
図4図3乃至図5は本発明の一実施形態のD−プシコース3−エピメラーゼ蛋白質をコリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)で発現するための組換えベクターの開裂地図であって、図3は組換えベクター(pCES_tac1CDPE)、図4は組換えベクター(pCES_tac2CDPE)、図5は組換えベクター(pCES_trcCDPE)をそれぞれ示したものである。
図5図3乃至図5は本発明の一実施形態のD−プシコース3−エピメラーゼ蛋白質をコリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)で発現するための組換えベクターの開裂地図であって、図3は組換えベクター(pCES_tac1CDPE)、図4は組換えベクター(pCES_tac2CDPE)、図5は組換えベクター(pCES_trcCDPE)をそれぞれ示したものである。
図6図6は一実施形態のビードビーター(Bead beater)を用いて培養した細胞を溶解させた後、SDS−PAGEを通じて蛋白質の発現量を比較した写真である。
図7図7は一実施形態のプシコース転換率が直線である区間で細胞初期反応速度を計算して比較したグラフである。
図8図8は一実施形態のCDPEを発現させた細胞の細胞反応進行時、50℃での熱安定性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0102】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これら実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0103】
実施例1.sodプラスミドの製造
実施例1−1:sodプロモーターを用いたベクター製造
クロストリジウムシンデンス(Clostridium scindens ATCC 35704)に由来したプシコースエピメラーゼの暗号化遺伝子(DPE gene;Gene bank:EDS06411.1)を、大腸菌に最適化して変形した形態のポリヌクレオチドを合成してCDPEと命名した。大腸菌に最適化されたポリヌクレオチド(配列番号36)、コリネバクテリウムのgDNAから確保したsod調節配列(配列番号17:sod promoter−RBS−SPACER R1TT−LINKER)、およびpET21aベクターから確保したT7ターミネーターを含む配列をPCRを通じてそれぞれの鋳型として確保し、これをオーバーラップPCR法で一つの鋳型として連結して、T−ベクタークローニング(T−vector cloning)を通じてpGEM T−easy vectorにクローニングしてポリヌクレオチドの配列を確認し、具体的に前記ポリヌクレオチドは配列番号17のsod調節配列、配列番号36のE.coliに最適化配列であるCDPE配列、およびT7−ターミネーターを含む。
【0104】
前記確認された全体ポリヌクレオチドを制限酵素NotIとXbaI(NEB)を用いて発現ベクターのpCES208(J.Microbiol.Biotechnol.、18:639−647、2008)の同一な制限酵素部位に挿入して組換えベクターpCES208/プシコースエピメラーゼ(pCES_sodCDPE)を製造した。前記製造された組換えベクター(pCES_sodCDPE)の開裂地図を図1に開示した。
【0105】
実施例1−2:飽和突然変異誘発(Saturation mutagenesis)を用いたベクター製造
s飽和突然変異誘発(Saturation mutagenesis)を用いたベクター製造を行うために標的部位(target site)を−NN−にしたプライマーを製作した。具体的に、標的部位(Target site)は、クローニングする時追加的に添加した第2RBSとsodプロモーターに前側に位置した第1RBS(GAAGGA)の3'側後部分に位置するTTに定め、この部分を−NN−にしたプライマーを製作した(ゼノテック依頼)。プライマーの配列および飽和突然変異誘発部位(saturation mutagenesis site)、プライマー結合部位(primer binding site)は下記表5に示した。
【0106】
【表5】
【0107】
前記プライマーで−NN−を基点に前部分と後部分断片(fragment)をPCRを通じて確保した後、オーバーラップ(overlap)PCRを通じて一つの鋳型(template)に製作し、その後、pCES208プラスミドにXbaI、NotI部位で連結反応(ligation)して飽和突然変異誘発されたプラスミドを製作した。
【0108】
実施例2.大腸菌の形質転換およびスクリーニング
実施例2−1:大腸菌の形質転換
実施例1で製作したプラスミドを電気穿孔法(electroporation)を用いてE.coli DH10bストレインを形質転換させた。その後、E.coliセルで全体突然変異を対象にスクリーニングを行った。具体的に、1.5mlチューブにカナマイシン(kanamycin)を最終濃度15μg/mlで入れた1ml LB(トリプトン(tryptone)10mg/L、NaCl10mg/L、酵母エキス(yeast extract)5mg/L)を分注した後、プレートから無作為に選別したコロニーを接種し、37℃で約16時間培養した。その後、細胞収穫(cell harvest)を通じて培地を除去し、50mM PIPES緩衝液(pH7.0)に溶かした50%果糖(基質)、1mM Mn2+を添加して60℃で30分間転換反応後、100℃で5分間沸かして反応中止させた。
【0109】
実施例2−2:プシコース転換率を用いたスクリーニング
その後、LC分析を通じてpCES_sodCDPEとのプシコース転換率を比較して、転換率がさらに高い突然変異のみ選定した。具体的に、基質(果糖)と生産物質(プシコース)のピーク確認およびピークのエリア(area)を通じた定量分析する方法で行った。
【0110】
LC分析後、ピークのエリアを比較することによってプシコース生産量と基質の減少する程度を確認することができたが、このような計算のために果糖濃度別サンプル(10、20、50、100、120、150mM)とプシコースの濃度別サンプル(1、2、5、10、20、50mM)を準備し、R自乗値が0.99以上になるように標準曲線(standard curve)をそれぞれ描き、それによる数式を導出してピークのエリアによる果糖およびプシコースの濃度を計算した。
【0111】
最終結果値はプシコース転換率で示して互いに比較し、プシコース転換率とCDPEの発現量は互いに比例するので、プシコース生産量が多いほどCDPEの発現量が増加したとのことを意味する。
【0112】
その結果、R1部位3種、R2部位で3種、総6つの突然変異を選定した。それぞれの突然変異をR1−1、R1−4、R1−8、R2−1、R2−5、およびR2−11と命名した。その後、再確認のためにもう一度LC分析を通じて突然変異を起こさない対照群であるpCES_sod CDPEとのプシコース転換率を比較する再確認実験を行って、転換率がさらに高い突然変異4種のみ選定した。その結果を表6に示した。
【0113】
【表6】
【0114】
上記表6から確認できるように、最終的にR1部位でR1−1およびR1−4の2つ、R2部位でR2−5およびR2−11の2つ、総4つの突然変異でプシコース転換率が向上したのを確認することができ、このような結果を通じてCDPEの発現が増加したと予想することができる。
【0115】
実施例2−3:変異配列の確認
突然変異を起こさないpCES_sodCDPEのプラスミドに含まれている配列番号3のヌクレオチド配列を基準に、R1−1は1番および2番目の塩基がTTからGAに置換されたものであり、R1−4はTTからGGに置換されたものである。
また、突然変異を起こさないpCES_sodCDPEのプラスミドに含まれている配列番号7のヌクレオチド配列を基準に、R2−5およびR2−11は1番目および2番目の塩基がTTからGGに置換されたものである。
【0116】
実施例3.コリネバクテリウム(Corynebacterium)でのCDPE発現率測定
実施例2で選定した4つの突然変異でコリネバクテリウム(corynebacterium)に形質転換を行った後、100ml LBに培養して細胞を確保し、細胞を溶解させた後、His−tag精製を行ってSDS−PAGE上でCDPEの発現率を確認した。
【0117】
具体的に、ビードビーター(Bead beater)を用いて培養した細胞を溶解(lysis)させた後、上澄み液のみ取得してサンプル緩衝液と1:1で混合後、100℃で5分間加熱した。準備したサンプルは12%SDS−PAGEゲル(組成:分離ゲル(running gel)−3.3ml HO、4.0ml 30%アクリルアミド、2.5ml 1.5Mトリス緩衝液(pH8.8)、100μl 10% SDS、100μl、10%APS、4μl TEMED/スタッキングゲル(stacking gel)−1.4ml HO、0.33ml 30%アクリルアミド、0.25ml 1.0Mトリス緩衝液(pH6.8)、20μl 10% SDS、20μl 10% APS、2μl TEMED)に180Vで50分程度電気泳動して蛋白質発現を確認した。
【0118】
CDPEの発現をSDS−PAGEゲル上で確認後、正確な発現量の測定のためにNi−NTA樹脂を用いたHis−tag精製を行って、計算式(発現率(%)=(精製タンパク質(Purified protein)(mg)/総可溶性タンパク質(Total soluble protein)(mg))*100)を用いて発現率を計算し下記表7に示した。
【0119】
下記表7で、菌株内全体蛋白質はプシコースエピメラーゼを発現する菌株内部に含まれている全体蛋白質であり、プシコースエピメラーゼはそのうちのプシコースエピメラーゼのみを精製して確保したものである。したがって、発現率は菌株に存在する全体蛋白質で目的蛋白質がどの程度の比率で発現されるか計算した値である。
【0120】
【表7】
【0121】
上記表7から確認できるように、組換えベクター(pCES_sodCDPE)の形質転換体と比較した時、R1−1の精製したCDPEの濃度が約1.5倍高いのを確認することができた。反面、残りサンプルは低い発現率を示すのを確認した。
【0122】
実施例4.酵素反応を通じたプシコース生産
実施例2による4つの突然変異であるR1−1、R1−4、R2−5、およびR2−11でコリネバクテリウム(corynebacterium)に形質転換を行った後、100ml LBに培養して細胞を確保し、精製しない助酵素を用いて、50mM果糖を含有する原料からプシコース生産量を分析した。
【0123】
具体的に、50mM濃度の果糖を含有する原料に1mM Mn2+添加した高濃度基質条件に、実施例2で得られた、CDPE発現突然変異細胞を破砕して蛋白質を含んでいる上澄み液を確保した後、全体蛋白質の濃度が0.007mg/mlになるように定量してpH7.0 PIPES 50mMおよび60℃条件で5、10、15分間反応を行った後に100℃で5分間沸かして反応中止した。
【0124】
その後、LC分析を通じてプシコース転換率を比較した。具体的に、液体クロマトグラフィー(LC)分析を基質(果糖)と生産物質(プシコース)のピーク確認およびピークのエリア(area)を通じて行った。前記液体クロマトグラフィー分析はAminex HPX−87Cカラム(BIO−RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)の屈折率検出器(Refractive Index Detector)を用いて行い(Agilent 1260 RID)、移動相溶媒は水を使用し、温度は80℃、流速は0.6ml/minにして行った。その後、転換率をLCのピーク面積(peak area)を通じてプシコース生産量と残っている果糖の量を測定し、下記の計算式を通じて計算した。その結果を表8に示した。
【0125】
[計算式]
転換率(%)=プシコース生産量(g/l)/(プシコース生産量+残っている果糖)(g/l)*100
【0126】
【表8】
【0127】
上記表8から確認できるように、sod−CDPEIIと比較してR1−1の転換率が高い結果を得ることができた。その他の突然変異はsod−CDPEと比較して若干減少した転換率を示すのを確認した。
【0128】
実施例5.コリネバクテリウムの細胞反応を通じたプシコース生産
実施例2による4つの突然変異であるR1−1、R1−4、R2−5およびR2−11でコリネバクテリウム(corynebacterium)に形質転換を行った後、100ml LBに培養して細胞を確保し、細胞反応を用いて固形分含量基準に50重量%果糖を含有する原料からプシコースを生産してプシコース転換率を比較した。
【0129】
具体的に、固形分含量基準に50重量%果糖を含有する原料に1mM Mn2+添加した高濃度基質条件に、実施例2で得られたCDPE発現細胞を0.5乃至2mg/mlの濃度でpH7.0 PIPES 50mMおよび60℃条件で反応を行った後に100℃で5分間沸かして反応中止した。それぞれの細胞を用いて前記条件で細胞反応を行い、LC分析を通じてプシコース転換率を比較した。具体的に、液体クロマトグラフィー(LC)分析を基質(果糖)と生産物質(プシコース)のピーク確認およびピークのエリア(area)を通じて分析を行った。前記液体クロマトグラフィー分析はAminex HPX−87Cカラム(BIO−RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)の屈折率検出器(Refractive Index Detector)を用いて行い(Agilent 1260 RID)、移動相溶媒は水を使用し、温度は80℃、流速は0.6ml/minにして行った。その後、転換率をLCのピーク面積(peak area)を通じてプシコース生産量と残っている果糖の量を測定して下記の計算式を通じて計算した。その結果を表9に示した。
【0130】
[計算式]
転換率(%)=プシコース生産量(g/l)/(プシコース生産量+残っている果糖)(g/l)*100
【0131】
【表9】
【0132】
上記表9に示されているように、sod−CDPEIIと比較してR1−1の転換率が高い結果を得ることができた。その他の突然変異はsod−CDPEと比較して若干減少した転換率を示すのを確認した。
【0133】
実施例6:コリネバクテリウムの細胞反応熱安定性比較
プシコースエピメラーゼを高発現率で生産する菌株も重要であるが、安定的に生産する菌株が産業的に有用であるので、プシコースエピメラーゼを生産する菌株自体の熱安定性を確認するために本実験を行った。
【0134】
細胞反応進行時、50℃での熱安定性を確認するために、乳化剤前処理過程まで完了した細胞1.0mg/mlを50mM PIPES緩衝液(pH7.0)に再懸濁させた後、50℃の水に湯煎して熱を加えた。その後、時間別に細胞をサンプリングして、基質として50%果糖(fructose)を使用しMn2+を1mM添加した状態で50℃で60分間転換反応を実施した。時間別にサンプリングした細胞に対するプシコース転換率および各細胞の活性減少程度を、各サンプルに対するデータを転換率と0分を基準にした時の活性の減少程度を計算した値を表10に示した。
【0135】
【表10】
【0136】
上記表10から分かるように、既存のpCES_sodCDPEとR1−1の熱安定性を比較した結果、大きい差がないと確認され、R1−1も熱安定性が非常に優れていることを確認した。R1−1の半減期は約1800分程度に予想される。
【0137】
実施例7:変異調節配列の製造およびCDPE発現
7−1:変異調節配列を含むベクター製造
【0138】
標的部位(Target site)をクローニングする時に追加的に添加した第2RBSとsodプロモーター(promoter)に前側に位置した第1RBS(GAAGGA)の3'−側後部分に位置するTTに定め、この部分をそれぞれGT、GC、またはGGにしたプライマーを製作した(ゼノテック依頼)。プロモーターの配列は下記表11に示した。
【0139】
【表11】
【0140】
前記プライマーで−NN−を基点に前部分と後部分断片(fragment)をPCRを通じて確保した後、オーバーラップ(overlap)PCRを通じて一つの鋳型(template)に製作し、その後、pCES208プラスミドにXbaI、NotI部位で連結反応して飽和突然変異誘発されたプラスミドを製作した。
【0141】
7−2:CDPE発現率測定
前記変異調節配列を含むプラスミドでコリネバクテリウム(corynebacterium)に形質転換を行った後、100ml LBに培養して細胞を確保し、細胞を溶解させた後、Ni−NTA樹脂でHis−tag精製を行って、総蛋白質の濃度と精製蛋白質(CDPE)の濃度をブラッドフォードアッセイ(Bradford assay)法で測定した後、目的蛋白質の発現率を計算した。具体的に、ビードビーター(Bead beater)を用いて培養した細胞を溶解(lysis)させた後、上澄み液のみ取得してサンプル緩衝液と1:1で混合後、100℃で5分間加熱した。準備したサンプルは12%SDS−PAGEゲル(組成:分離ゲル(running gel)−3.3ml HO、4.0ml 30%アクリルアミド、2.5ml 1.5Mトリス緩衝液(pH8.8)、100μl 10% SDS、100μl、10% APS、4μl TEMED/スタッキングゲル(stacking gel)−1.4ml HO、0.33ml 30%アクリルアミド、0.25ml 1.0Mトリス緩衝液(pH6.8)、20μl 10% SDS、20μl 10% APS、2μl TEMED)に180Vで50分程度電気泳動した。図2は本発明の一実施形態によってビードビーター(Bead beater)を用いて培養したコリネバクテリウム(corynebacterium)細胞を溶解させた後、SDS−PAGEを通じて蛋白質の発現量を比較した写真である。
【0142】
その後、正確な発現量の測定のためにNi−NTA樹脂を用いたHis−tag精製を行って、計算式(発現率(%)=(精製タンパク質(Purified protein)(mg)/総可溶性タンパク質(Total soluble protein)(mg))*100)を用いて発現率を計算して下記表12に示した。
【0143】
【表12】
【0144】
上記表12から確認できるように、pCES_sodCDPEと比較した時、CDPEの発現率によって一点突然変異(one point mutation)菌株中ではR1GA、R1GTが活性が増加したのを確認することができ、R1GCはほとんど類似の活性を有し、R1GGは活性が減少したのを確認することができた。
【0145】
7−3:細胞反応を用いたプシコース生産
実施例4と実質的に同様な方法で、コリネバクテリウム(corynebacterium)に形質転換を行った後、100ml LBに培養して細胞を確保し、細胞反応を行ってプシコース転換率を比較した。その結果を下記表13に示した。
【0146】
【表13】
【0147】
上記表13に示されているように、一点突然変異(one point mutation)菌株は、R1GGのプシコース転換率を100にした時、R1GAは213、R1GTは200、R1GCは161、R1TTは147であって、全て活性が増加したのを確認することができた。
【0148】
7−4:細胞反応時の熱安定性比較
プシコースエピメラーゼを高発現率で生産する菌株も重要であるが、安定的に生産する菌株が産業的に有用であるので、プシコースエピメラーゼを生産する菌株自体の熱安定性を確認するために本実験を行った。
【0149】
細胞反応進行時、50℃での熱安定性を確認するために、乳化剤前処理過程まで完了した細胞1.0mg/mlを50mM PIPES緩衝液pH7.0)に再懸濁させた後、50℃の水に湯煎して熱を加えた。その後、時間別に細胞をサンプリングして、 基質として50%果糖(fructose)を使用しMn2+を1mM添加した状態で50℃で60分間転換反応を実施した。
【0150】
各細胞の活性減少程度を、各サンプルに対するデータを転換率と0分を基準にした時の活性の減少程度を計算した値を測定して表14に示した。
【0151】
【表14】
【0152】
実施例8:変異調節配列の製造およびCDPE発現
8−1:変異調節配列を含むベクター製造
第1RBSと第2RBSの部位を指定して飽和突然変異誘発(Saturation mutagenesis)実験を行った結果、第1RBSのTTがCDPEの発現に影響を与える部位とのことを確認し、これに基づいて第1RBSのTTがGT、GC、またはGGに突然変異、および機能が向上した突然変異であるR1−1(第1RBSのTTのGA突然変異)を鋳型にして、第2RBSのTTをGA、GT、GC、またはGGに突然変異させて比較実験を行った。
【0153】
鋳型としては前記実施例5で確保した突然変異(R1−1を使用し、以下のプライマーを用いてそれぞれの二重突然変異体(double mutant)を含むプラスミドを製作した。プロモーターの配列は下記表15に示した。
【0154】
【表15】
【0155】
8−2:CDPE発現率測定
実施例7−2と実質的に同様な方法で、前記変異調節配列を含むプラスミドでコリネバクテリウム(corynebacterium)に形質転換し、CDPE発現率を測定し、その結果を下記表16に示した。
【0156】
下記表16で、菌株内全体蛋白質はプシコースエピメラーゼを発現する菌株内部に含まれている全体蛋白質であり、プシコースエピメラーゼはそのうちのプシコースエピメラーゼのみを精製して確保したものである。したがって、発現率は菌株に存在する全体蛋白質で目的蛋白質がどの程度の比率で発現されるか計算した値である。
【0157】
【表16】
【0158】
上記表16から確認できるように、二重突然変異(Double mutation)菌株はpCES_sodCDPEとCDPEの発現率を比較した時、R1GA/R2GA、R1GA/R2GT、R1GA/R2GC、R1GA/R2GGが全て活性が増加したのを確認することができた。
【0159】
8−3:細胞反応を通じたプシコース生産
実施例8−2による二重突然変異体(double mutant)をコリネバクテリウム(corynebacterium)に形質転換を行った後、100ml LBに培養して細胞を確保し、細胞反応を行ってプシコース転換率を比較した。下記表17に示した。
【0160】
前記得られた生産物を確認するために、液体クロマトグラフィー(LC)分析を基質(果糖)と生産物質(プシコース)のピーク確認およびピークのエリア(area)を通じた定量分析を行った。その結果、多様な乳化剤溶液に対する細胞のプシコース生産に関する初期反応速度(Unit/g−DCW)を下記表17に示した。
【0161】
前記液体クロマトグラフィー分析は、Aminex HPX−87Cカラム(BIO−RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)の屈折率検出器(Refractive Index Detector)を用いて(Agilent 1260 RID)行った。移動相溶媒は水を使用し、温度は80℃、流速は0.6ml/minにした。
【0162】
【表17】
【0163】
上記表17に示されているように、R1GGプシコース転換率を100にした時、二重突然変異(Double mutation)菌株であるR1GA/R2GCは217であって活性が増加するのを確認することができた。
【0164】
8−4:細胞反応時熱安定性比較
プシコースエピメラーゼを高発現率で生産する菌株も重要であるが、安定的に生産する菌株が産業的に有用であるので、プシコースエピメラーゼを生産する菌株自体の熱安定性を確認するために本実験を行った。
【0165】
細胞反応進行時、50℃での熱安定性を確認するために、乳化剤前処理過程まで完了した細胞1.0mg/mlを50mM PIPES緩衝液(pH7.0)に再懸濁させた後、50℃の水に湯煎して熱を加えた。その後、時間別に細胞をサンプリングして 基質として50%果糖(fructose)を使用しMn2+を1mM添加した状態で50℃で60分間転換反応を実施した。
【0166】
各細胞の活性減少程度を、各サンプルに対するデータを転換率と0分を基準にした時の活性の減少程度を計算した値を測定して表18に示した。
【0167】
【表18】
【0168】
上記表18から分かるように、pCES_sodCDPEと二重突然変異(Double mutation)菌株の間の熱安定性を比較した結果、大きい差がないと確認され、RBSの配列(sequence)変化によってCDPEの発現には影響を与えたが、発現蛋白質の熱安定性には大きく影響を与えないということが熱安定性実験を通じて分かった。
【0169】
実施例9.プラスミドの製造
実施例9−1:sodプロモーターを用いたベクター製造
クロストリジウムシンデンス(Clostridium scindens ATCC 35704)に由来したプシコースエピメラーゼの暗号化遺伝子(DPE gene;Gene bank:EDS06411.1)を、大腸菌に最適化して変形した形態のポリヌクレオチドに合成してCDPEと命名した。大腸菌に最適化されたポリヌクレオチド(配列番号38)とコリネバクテリウム(corynebacterium)gDNAとpET21aベクターから確保したsodプロモーター(配列番号17)とT7ターミネーターをPCRを通じてそれぞれの鋳型に確保し、これをオーバーラップPCR法で一つの鋳型に連結してT−ベクタークローニング(T−vector cloning)を通じてpGEM T−easy vectorにクローニングしてポリヌクレオチドの配列を確認し、具体的に前記ポリヌクレオチドは配列番号6のsodプロモーター、配列番号38のE.coliに最適化された配列であるCDPE配列およびT7−ターミネーターを含む。
【0170】
前記確認された全体ポリヌクレオチドを制限酵素NotIとXbaI(NEB)を使用して発現ベクターであるpCES208(J.Microbiol.Biotechnol.,18:639−647、2008)の同一な制限酵素部位に挿入して組換えベクターpCES208/プシコースエピメラーゼ(pCES_sodCDPE)を製造した。前記製造された組換えベクター(pCES_sodCDPE)の開裂地図を図1に開示した。
【0171】
9−2:tac1プロモーターを用いたベクター製造
pCES_sodCDPEII以外び目的蛋白質の発現および活性比較のためにクローニングを行うために次のようなプラスミドも製造した:
【0172】
pET21a_CDPEからCDPE(配列番号38)をPCRして確保し、pKK223−3ベクターにXmaI、HindIIIでクローニングしてpKK_CDPEを製造し、pKK_CDPEを鋳型にしてtacプロモーター(配列番号69)からrrnターミネーターまでPCR方法で挿入する遺伝子を確保した後、pCES208プラスミドにNotI、XbaI部位でクローニングして組換えベクター(pCES_tac1CDPE)を製造した。前記製造された組換えベクター(pCES_tac1CDPE)の開裂地図を図3に開示した。
【0173】
9−3:tac2プロモーターを用いたベクター製造
pET21a_CDPEからCDPE(配列番号38)をPCRして確保し、pKDベクターにNcoI、SalIでクローニングしてpKD_CDPEを製造し、pKD_CDPEを鋳型ににしてtac2プロモーター(配列番号72)からrrnBターミネーターまでPCRでインサート(insert)を確保した後、pCES208プラスミドにXbaI部位でクローニングしてpCES_tac2CDPEを製造した。前記製造された組換えベクター(pCES_tac2CDPE)の開裂地図を図4に開示した。
【0174】
9−4:trcプロモーターを用いたベクター製造
pET21a_CDPEからCDPE(配列番号38)をPCRして確保し、pTrc99aベクターにXmaI、HindIIIでクローニングしてpTrc_CDPEを製造し、pTrc_CDPEを鋳型にしてtrcプロモーター(配列番号73)からrrnBターミネーターまでPCRでインサート(insert)を確保した後、pCES208プラスミドにXbaI部位でクローニングしてpCES_trcCDPEを製造した。前記製造された組換えベクター(pCES_trcCDPE)の開裂地図を図5に開示した。
【0175】
実施例10.宿主細胞形質転換
実施例9で製作した4種類のプラスミドを電気穿孔法(electroporation)を用いてコリネバクテリウムグルタミクムを形質転換させた。コロニーを採取(picking)してカナマイシン(Kanamycin)を最終濃度15ug/mlで添加したLB培地(トリプトーン10g/L、NaCl10g/L、酵母抽出物5g/L)4mlに接種した後、培養条件30℃および250rpmで約16時間培養した。その後、前記培養液のうちの1mlを収得して15ug/mlのカナマイシンを含んでいる100ml LB培地に接種して、本培養を16時間以上行った。具体的に、前記実施例9−1の組換えベクター(pCES_sodCDPE)でコリネバクテリウムグルタミクムを形質転換して得られた組換え菌株を大韓民国ソウル市西大門区弘済内2ガギル25に住所をおいた韓国微生物保存センター(Korea Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2014年10月29日寄託して寄託番号KCCM11593Pを受けた。
【0176】
実施例11.目的蛋白質発現確認
ビードビーター(Bead beater)を用いて培養した細胞を溶解(lysis)させた後、上澄み液のみ取得してサンプル緩衝液と1:1で混合後、100℃で5分間加熱する。準備したサンプルは、12%SDS−PAGEゲル(組成:分離ゲル(running gel)−3.3ml HO、4.0ml 30%アクリルアミド、2.5ml 1.5Mトリス緩衝液(pH8.8)、100μl 10%SDS、100μl、10%APS、4μl TEMED/スタッキングゲル(stacking gel)−1.4ml HO、0.33ml 30%アクリルアミド、0.25ml 1.0Mトリス緩衝液(pH6.8)、20μl 10%SDS、20μl 10%APS、2μl TEMED)に180Vで50分程度電気泳動して蛋白質発現を確認する。その結果を図6に示した。
【0177】
CDPEの発現をSDS−PAGEゲル上で確認後、正確な発現量の測定のためにNi−NTA樹脂を用いたHis−tag精製を行って、計算式(発現率(%)=(精製タンパク質(Purified protein)(mg)/総可溶性タンパク質(Total soluble protein)(mg))*100)を用いて発現率を計算して以下の表19に示した。前記表19で、菌株内全体蛋白質はプシコースエピメラーゼを発現するコリネバクテリウム菌株内部に含まれている全体蛋白質であり、プシコースエピメラーゼはそのうちのプシコースエピメラーゼのみを精製して確保したものである。したがって、発現率はコリネバクテリウム菌株に存在する全体蛋白質で目的蛋白質がどの程度の比率で発現するのか計算した値である。
【0178】
【表19】
【0179】
実施例12.細胞反応を通じたプシコース生産
固形分含量基準に50重量%果糖を含有する原料に1mM Mn2+添加した高濃度基質条件に、実施例2で得られたCDPE発現細胞を0.5乃至2mg/mlの濃度でpH7.0PIPES 50mMおよび60℃条件で反応を行った後に100℃で5分間沸かして反応中止した。それぞれの細胞を用いて前記条件で細胞反応を行い、反応時間別にサンプリングした後に、各組換え菌株別プシコース生産量と細胞初期反応速度を計算した。プシコース転換率が直線である区間で単位細胞当り初期反応速度を計算(計算式:単位細胞当り初期反応速度=プシコース生産量(g/l)/時間(min)/反応に使用した細胞の量(g))して次の表20および図7に示した。
【0180】
前記得られた生産物を確認するために、液体クロマトグラフィー(LC)分析を基質(果糖)と生産物質(プシコース)のピーク確認およびピークのエリア(area)を通じた定量分析を行った。その結果、多様な乳化剤溶液に対する細胞のプシコース生産に関する初期反応速度(Unit/g−DCW)を下記表20に示した。前記液体クロマトグラフィー分析は、Aminex HPX−87Cカラム(BIO−RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)の屈折率検出器(Refractive Index Detector)を用いて(Agilent 1260 RID)行った。移動相溶媒は水を使用し、温度は80℃、流速は0.6ml/minにした。
【0181】
最終結果値は初期反応速度で示して比較し、この時、初期反応速度とは一直線速度区間の反応地点での生産物質の生産量を反応に使用した細胞の量と反応時間で割った値をいう。即ち、初期反応速度の値が大きいほど同一細胞当り、時間当り生産されるプシコースの量が多いということを意味する。
【0182】
【表20】
【0183】
上記表20に示されているように、発現率が最も良かったtacCDPEが最も高い活性を示し、その次にtac2、sod、trcの順に示された。したがって、細胞初期反応速度とCDPE発現量は比例するということが確認された。
【0184】
実施例13:細胞反応時熱安定性比較
プシコースエピメラーゼを高発現率で生産する菌株も重要であるが、安定的に生産する菌株が産業的に有用であるので、プシコースエピメラーゼを生産する菌株自体の熱安定性を確認するために本実験を行った。
【0185】
細胞反応進行時、50℃での熱安定性確認するために、実施例2で得られたCDPEを発現させた組換え菌株細胞を50℃で培養して熱を加えた後、細胞反応を行った。各細胞の半減期(時間、min)を測定して表21および図8に示した。
【0186】
【表21】
【0187】
上記表21から分かるように、tac/CDPEが最も優れた細胞活性を示したが、50℃での熱安定性を見た時、sod/CDPEが半減期が1800分であって、最も安定的であった。工程上で細胞反応を通じてプシコースを生産しようとする時、活性も重要であるが、適正な水準の活性のみ確保されれば、その以後には熱安定性が経済性にさらに大きく作用するので、sod/CDPEが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]